「家内労働者等の必要経費の特例」とは?

 事業所得又は雑所得(公的年金等以外の雑所得)の金額は、総収入金額から実際にかかった必要経費を差し引いて計算することになっています。
 しかし、家内労働者等が事業所得又は雑所得を有する場合において、実際にかかった必要経費の額が55万円(2019(令和元)年分以前は65万円。以下同じ)に満たないときは、これらの所得金額の計算上、必要経費の額を合計で55万円まで算入することが認められています。これを、家内労働者等の必要経費の特例といいます。
 今回は、この特例について確認します。

1.家内労働者等とは?

 家内労働者等とは、家内労働法に規定する家内労働者や、外交員、集金人、電力量計の検針人のほか、特定の者に対して継続的に人的役務の提供を行うことを業務とする者をいいます。
 具体的には、下表のとおりです。

① 家内労働法に規定する家内労働者(家内労働法2条)
 物品の製造、加工、改造、修理、浄洗、選別、包装、解体、販売又はこれらの請負を業とする者から、主として労働の対償を得るために、その業務の目的物たる物品(物品の半製品、製品、附属品又は原材料を含む)について委託を受けて、物品の製造、加工、改造、修理、浄洗、選別、包装又は解体に従事する者であって、その業務について同居の親族以外の者を使用しないことを常態とする者をいいます。
② 外交員、集金人、電力量計の検針人
③ 特定の者に対して継続的に人的役務の提供を行うことを業務とする者
 例えば、クリーニング取次業、写真現像焼付の取次業、宅配便の取次業、損保代理業、シルバー人材センターの業務に就業する者などが一般に該当します。
 ピアノ教師や学習塾については、特定の業者が主宰するものは対象となりますが、自らが営むものは対象となりません。

2.特例の対象となる者

 次のいずれにも該当する者は、家内労働者等の必要経費の特例の対象となります。

(1) 事業所得又は雑所得を有する家内労働者、外交員、集金人、電力量計の検針人又は特定の者に対して継続的に人的役務の提供を行うことを業務とする者
(2) 事業所得の金額及び雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額と給与所得の収入金額との合計額が55万円に満たない者

 具体的には、以下のような場合には、この特例の対象となるか否かについて注意が必要です。

自宅で生徒数人を教えている教師が、家内労働者等の特例を適用している。
→ピアノ教師や学習塾経営者などのように、その業務の性質上、不特定の者を対象として人的役務を提供するものは家内労働者等に含まれません。
 ただし、ヤマハ、カワイ等のピアノ教室の専属講師は、家内労働者等の特例の適用があります。
洋服の寸法直し業を一般の多数の人を相手に営んでいるのに、家内労働者等の特例を適用している。
→特定の販売店の専属として洋服の寸法直し業を営んでいる場合には、家内労働者等の特例の適用がありますが、一般の多数の人を相手に営んでいる場合は適用することができません。
ヤクルト販売で、売上、仕入を計上している者が、家内労働者等の特例を適用している。
→売上、仕入を計上している者は販売業となるため、家内労働者等の特例の対象とはなりません。
 ただし、ヤクルト販売会社と販売役務提供契約等を締結して役務提供の対価を得ている場合には、家内労働者等の特例の対象となります。
損保代理業やクリーニング(写真現像焼付、宅配便)の取次業で、役務の提供先が3か所ということで、家内労働者等の特例の適用がないとしている。
→「特定の者」は必ずしも単数の者をいうのではなく、人的役務の提供先が特定している限り、複数の者であっても差し支えありません。
ホステス報酬で、接客した不特定多数の客から支払われたものを経営者が代理受領している場合に、家内労働者等の特例を適用していない。
→家内労働者等の特例を適用できるのは、特定の者に対して人的役務の提供をしている者であることから、ホステスの報酬が時間給による場合等であれば家内労働者等の特例を適用して差し支えありません。

3.特例の計算方法

 冒頭で述べたように、この特例は、家内労働者等が事業所得又は雑所得を有する場合において、実際にかかった必要経費の額が55万円に満たないときは、これらの所得金額の計算上、必要経費の額を合計で55万円まで算入することを認めるというものです。
 ただし、次の点に注意しなければなりません。

(1) 特例の必要経費額は、事業所得や公的年金等以外の雑所得の収入金額が限度です。
(2) 他に給与所得を有する場合には、55万円から給与所得控除額を控除した残額と実際にかかった経費との高い方が必要経費となります。

 これらの注意点を踏まえて、家内労働者等の事業所得又は雑所得とそれ以外の所得がある場合の所得金額の計算方法を、以下の例で確認します。

(1) 公的年金等以外の雑所得が2種類ある場合

① 生命保険契約に基づく年金の収入金額が100万円、必要経費が80万円
② シルバー人材センターからの収入金額が100万円、必要経費が30万円
 生命保険契約に基づく年金及びシルバー人材センターの必要経費の合計が 55万円以上であるため、家内労働者等の特例の適用はありません。
 したがって、所得金額の計算は次のようになります。
① 生命保険契約に基づく年金分:100万円-80万円=20万円
② シルバー人材センター分:100万円-30万円=70万円
∴ 公的年金等以外の雑所得の金額:①+②=90万円

(2) 公的年金等の雑所得と公的年金等以外の雑所得がある場合

① 公的年金等の収入金額が150万円(年齢は70歳)
② 生命保険契約に基づく年金の収入金額が30万円、必要経費が15万円
③ シルバー人材センターからの収入金額が80万円、必要経費が10万円
 生命保険契約に基づく年金及びシルバー人材センターの必要経費の合計が 55万円未満であるため、家内労働者等の特例を適用できます。
 したがって、所得金額の計算は次のようになります。
① 公的年金等分:150万円-公的年金等控除額 110万円=40万円
② 生命保険契約に基づく年金分及び③シルバー人材センター分:30万円+80万円-55万円=55万円
∴公的年金等の雑所得の金額:40万円、公的年金等以外の雑所得の金額:55万円

(3) 給与所得と公的年金等以外の雑所得がある場合

① 給与の収入金額が 40万円
② シルバー人材センターからの収入金額が40万円、必要経費が10万円
 家内労働者等の必要経費の特例で認められる 55万から給与の収入金額 40万円を差し引いた15万円と実際にかかった経費10万円との高い方である15万円が必要経費となります。
 したがって、所得金額の計算は次のようになります。
① 給与分:給与の収入金額 40万円-給与所得控除 40万円=0円
② シルバー人材センター分:40万円-15万円=25万円
∴給与所得の金額0円、公的年金等以外の雑所得の金額:25万円

 

4.青色申告特別控除、更正の請求との関係

 最後に、家内労働者等の特例と青色申告特別控除及び更正の請求との関係について述べます。

(1) 青色申告者が家内労働者等の特例を受ける場合でも、青色申告特別控除の適用を受けることができます。
 家内労働者等の特例により必要経費を計算する場合においては、青色申告特別控除の適用に関し何らかの制限があるわけではありませんので、青色申告特別控除の適用を受けることができます。
(2) 家内労働者等の特例を受けずに確定申告をした場合は、更正の請求をすることができます。
 家内労働者等の事業所得又は雑所得の計算上必要経費に算入される金額が55万円に満たない場合には、所得税法第37条(必要経費)の規定にかかわらず55万円とされることから、家内労働者等の特例を適用しなかったことは、国税通則法第23条第1項第1号に規定する「課税標準額等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあった」ことにあたるため、更正の請求をすることができます。
 なお、家内労働者等の特例については申告要件とされていないことから、この特例を適用して課税所得がなくなる場合は、所得税の申告は不要となります。

コインパーキングの所得は不動産所得ではありません

 所得税には10種類の所得区分(利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得)があります。
 個人事業者が所得税の確定申告をする際に、自分の所得がどの所得区分に該当するのかについて気をつけなければなりませんが、その判断に迷う場合もあります。
 以下では、迷いやすい例として、駐車場の貸付けを行う個人事業者の所得区分について確認します。

1.所得区分の判断基準(所得税基本通達27-2)

 駐車場の貸付けによる所得がどの所得区分に該当するかを考えるとき、まず「不動産所得」が思い浮かびますが、これは間違っていません。
 実際に所得税法第26条には、次のように不動産所得の意義が規定されています。

 不動産所得とは、不動産、不動産の上に存する権利、船舶又は航空機(以下この項において「不動産等」という。)の貸付け(地上権又は永小作権の設定その他他人に不動産等を使用させることを含む。)による所得(事業所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。

 したがって、駐車場という不動産の貸付けによる所得が不動産所得に該当するという判断は、間違っていません。
 しかし、もう少し細かく見ていくと、所得税基本通達27-2(有料駐車場等の所得)には、次のような記載があります。

 いわゆる有料駐車場、有料自転車置場等の所得については、自己の責任において他人の物を保管する場合の所得は事業所得又は雑所得に該当し、そうでない場合の所得は不動産所得に該当する。

 この所得税基本通達27-2によって、駐車場の貸付けによる所得でも、不動産所得ではなく事業所得又は雑所得に該当する場合があることがわかります。そして、その判断基準は「自己の責任において他人の物を保管する」か否かということになります。

 この判断基準に従うと、自己(駐車場を経営する個人事業者)の責任において他人の物(車両)を保管するいわゆる「時間貸し駐車場」による所得は、事業所得又は雑所得に該当することになります。
 したがって、コインパーキングによる所得は、事業所得か雑所得になります

 所得税法第26条における不動産の貸付けのうち、駐車場については、車両の管理責任のないいわゆる「月極駐車場(青空駐車場のような単に土地のみの貸付けやアスファルト敷等の簡易な構築物を設置しての貸付け)」を想定しているといえます。
 なお、不動産の貸付けによる所得は、事業として行われている場合であっても事業所得とはならず不動産所得になりますが、これも駐車場に関しては月極駐車場の場合です。

※ 駐車場の貸付けによる所得が事業所得と雑所得のどちらになるのかについては、不動産の貸付けが事業的規模で行われているか否かの判定基準が参考になりますが、これについては、本ブログ記事「土地の貸付けの事業的規模の判定基準」をご参照ください)。

2.駐車場経営に関する「所得の帰属」の注意点

 今回のメインテーマである駐車場経営における所得区分について簡単にまとめると、次のようになります。

貸付形態 所得区分
時間貸し駐車場 事業所得又は雑所得
月極駐車場 不動産所得

 ここで、駐車場経営におけるもう一つの根本的な注意点として、誰が申告すべきかという「所得の帰属」を挙げます。例えば、次のような例です。

土地を無償で借りて駐車場経営を行っている場合の所得は、土地の貸し手と借り手のどちらが申告すべきか?

  土地を無償で借りて、借り手が月極駐車場として貸付け(青空駐車場のような単に土地のみの貸付けやアスファルト敷等の簡易な構築物を設置しての貸付け)を行っている場合は、その土地の所有者(名義人)の不動産所得となります(所得税基本通達12-1)。したがって、土地の貸し手が申告(不動産所得)することになります。

 土地を無償で借りていても、借り手が時間貸し駐車場として貸付け(借り手が建物・設備等を設置して、単に土地の使用料ではなく、サービス・管理等を伴い借り手の経営する要素が大であるような貸付け)の場合は、借り手の事業所得又は雑所得となります。したがって、土地の借り手が申告(事業所得又は雑所得)することになります。

※ 未分割の相続財産から生じる不動産所得の帰属については、本ブログ記事「未分割の相続財産から生じた不動産所得の帰属は?」をご参照ください。

源泉徴収税額0円の給料・士業報酬は納付書「支給額」欄に含める?含めない?

 源泉所得税の納付書を書く際に、源泉徴収されていない給料や士業に対する報酬を「支給額」欄に含めて記載するかどうか迷ったことはありませんか?
 以下において、源泉徴収税額が0円の場合の「支給額」欄の記載について確認します。

1.給料等の場合

 扶養の範囲内で働きたいアルバイトやパートの方は、勤務時間や日数を調整して、毎月の給料から源泉所得税を引かれない程度に給与を抑えることがあります(扶養控除等申告書を会社に提出して「甲」欄が適用される場合)。
 例えば、社長とアルバイト従業員(AとBの2名)に対して、7月25日に次のように給料を支給したとします。

  支給額 社会保険 源泉所得税
社長 200,000円 28,520円 3,770円
アルバイトA 50,000円 0円 0円
アルバイトB 30,000円 0円 0円
合計 280,000円 28,520円 3,770円

 この場合、社長の給料200,000円と源泉徴収税額3,770円を納付書に記載することに疑問の余地はありません。
 問題は、源泉徴収税額が0円であるアルバイトA・Bの給料も納付書に記載するかどうかです。
 源泉徴収税額が0円なので、AとBの給料を記載しなくても納付税額に影響はありません。しかし、このような場合でもAとBの給料は納付書に記載しなければなりません。
 つまり、源泉徴収されていない給料についても、納付書の「支給額」欄には記載しなければならないということです。
 したがって、納付書の「支給額」欄には「280,000」、「税額」欄には「3,770」と記載します。

 
 また、上記の例において社長の給料がなく、アルバイトのAとBだけに給料を支給した場合の納付書の記載は、次のようになります。
 この場合、納付すべき税額が0円であっても、納付書を税務署に持参又は郵送により提出します。

 
 ちなみに、給料の支給額も0円、源泉徴収税額も0円のときは、納付書を税務署に提出する必要はありません。

2.士業の報酬の場合

 給料と同様に、税理士や司法書士などの個人経営の士業に対して支払った報酬についても所得税を源泉徴収して納付しなければなりません。一般的には、これらの士業の請求書等には、あらかじめ所得税の源泉徴収税額が記載されています。
 しかし、以下のように、士業の請求書等に源泉徴収税額が記載されていないケースもあります。

(1) 個人経営の司法書士報酬等について

 個人経営の司法書士や土地家屋調査士等に対する報酬については、1回に支払われる金額から10,000円を差し引いた残額に10.21パーセントの税率を乗じて源泉徴収税額を算出します。
 例えば、税理士Cと司法書士D・Eに対して、7月15日に次のように報酬を支払ったとします。

  報酬支払額 源泉所得税
税理士C 30,000円 3,063円
司法書士D 50,000円 4,084円
司法書士E 10,000円 0円
合計 90,000円 7,147円

※ Dに50,000円の報酬を支払った場合は、(50,000円-10,000円)×10.21%=4,084円が源泉徴収税額となります。
 Eに10,000円の報酬を支払った場合は、(10,000円-10,000円)×10.21%=0円となり、源泉徴収税額は発生しません。

 上記の場合、税理士Cと司法書士Dに対する報酬80,000円と源泉徴収税額7,147円を納付書に記載することに疑問の余地はありません。
 問題は、源泉徴収税額が0円である司法書士Eの報酬10,000円も納付書に記載するかどうかです。
 源泉徴収税額が0円なので、Eの報酬を記載しなくても納付税額に影響はありません。しかし、このような場合でもEの報酬は納付書に記載しなければなりません。
 つまり、源泉徴収されていない個人経営の司法書士報酬についても、納付書の「支給額」欄には記載しなければならないということです。
 したがって、納付書の「支給額」欄には「90,000」、「税額」欄には「7,147」と記載します(納付書の「摘要」欄には、「司」と表示し、その人員、支給額及び税額を記載します)。

(2) 税理士法人等に対する報酬について

 上記(1)は「個人経営」の税理士、司法書士等の報酬に対する源泉徴収のケースでしたが、税理士法人や司法書士法人等の「法人」に支払う報酬については、「所得税」の源泉徴収は不要です。
 例えば、司法書士法人Fに対して50,000円の報酬を支払ったとしても、その報酬から所得税の源泉徴収はしません。
 ここで、司法書士法人Fに対して支払った報酬も納付書の「支給額」欄に記載すべきかどうかという疑問が生じます。
 源泉徴収されていないという点では、個人の司法書士Eの報酬と同じですが、源泉所得税の納付書は「個人」の士業に対する報酬のみを記載することとなっています。
 したがって、税理士法人や司法書士法人等の「法人」に支払った報酬は、納付書には記載しません。

3.源泉所得税納付書の記載例

 例えば、7月中に次の給料(7月25日支給)・報酬(7月15日支払)の支払をした場合の源泉所得税納付書の記載例を示します。

  支給額 源泉所得税
社長 200,000円 3,770円
アルバイトA 50,000円 0円
アルバイトB 30,000円 0円
小計 280,000円 3,770円
税理士C 30,000円 3,063円
司法書士D 50,000円 4,084円
司法書士E 10,000円 0円
司法書士法人F 50,000円 0円
小計 140,000円 7,147円

自家用車を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却費の計算

 個人事業主として起業した際に、それまで自家用車(プライベート用)として使用していた車両を、業務用として使用することがあります。

 新車で購入した車両を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却費の計算には、2つのステップが必要です。次の設例により、計算方法を確認します。

【設例】
 2021(令和3)年6月10日に新車を購入し自家用車として使用していましたが、個人事業主として起業した際に、当該車両を2022(令和4)年4月1日から事業用の車両として使用することにしました。この場合の2022(令和4)年分の減価償却費の計算はどうなりますか。

 ・新車は2021(令和3)年6月10日に購入したものである。
 ・新車の取得価額:200万円
 ・新車の法定耐用年数:6年

 

1.業務用に転用した日における未償却残高

(1) 非業務用期間中の耐用年数と償却率
法定耐用年数の1.5倍に相当する年数※1及び償却率※2を求めます。
 6年×1.5=9年→0.111(9年の償却率)

※1 1年未満の端数があるときは切り捨てます。
※2 償却率は、旧定額法の償却率を適用します(非業務用資産の減価の額の計算 は、2007(平成19)年4月1日以後に取得した資産であっても、旧定額法により計算することとなります)

(2) 非業務用期間中の減価の額
非業務用期間における減価の額を旧定額法で計算します。
2021(令和3)年6月10日から2022(令和4)年3月31日まで→9か月と22日→1年
 2,000,000円×0.9×0.111×1年=199,800円

※ 非業務用期間に係る年数に1年未満の端数があるときは、6月以上の端数は1年とし、6月に満たない端数は切り捨てます。

(3) 業務用に転用した日における未償却残高
 2,000,000円-199,800円=1,800,200円

2.業務用に転用後の減価償却費の計算

(1) 2022(令和4)年分の減価償却費の計算
2,000,000円×0.167×9/12=250,500円

※ 車両の取得年月日が2007(平成19)年4月1日以後のため、定額法(償却率 0.167)で計算します。

(2) 2022(令和4)年12月31日の未償却残高
 1,800,200円-250,500円=1,549,700円

※ 中古取得資産のケースについては、本ブログ記事「中古建物を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却費の計算」をご参照ください。

翌月に支給する給与の年末調整と会計処理

 給与規定により、前月の21日から当月の20日までの勤務実績に基づき、当月の25日に給与を支給することになっている場合は、年末調整の対象となる給与は1月分(1月25日支給)~12月分(12月25日支給)となります。
 では、当月の1日から当月末日までの勤務実績に基づき、翌月の10日に給与を支給することになっている場合は、年末調整の対象となる給与はどのようになるのでしょうか?
 以下では、いわゆる「当月締め・翌月払い」の給与の年末調整について確認します。

1.年末調整の対象となる給与とは?

 冒頭で挙げた「当月20日締め・当月25日払い」の給与の場合は、1月分(1月25日支給)~12月分(12月25日支給)の給与が年末調整の対象となります。
 ここで一つの疑問が生じます。
 「1月分」給与の計算の基となる期間は、前年12月21日~当年1月20日であり、ここには前年の12月21日~12月31日分が含まれています。この給与を純粋に「1月分」と呼べるでしょうか?
 また、「12月分」給与の計算の基となる期間は、当年11月21日~当年12月20日であり、当年の12月21日~12月31日分が含まれていません。この給与を純粋に「12月分」と呼んでしまっていいのでしょうか?

 これらの疑問は、「給与の計算の基となる期間」を基準に「〇月分」給与をとらえようとすることに起因しています。
 しかし、年末調整の対象となる給与を「給与の計算の基となる期間」を基準に考えてはいけません。
 結論を先に述べると、年末調整の対象となる給与は、その年の1月~12月に「支給」する(「支給日」が到来する)給与です。
 年末調整は、本年中に支払の確定した給与、すなわち給与の支払を受ける人からみれば収入の確定した給与の総額について行います。
 この場合の収入の確定する日(収入すべき時期)は、契約又は慣習により支給日が定められている給与についてはその支給日、支給日が定められていない給与についてはその支給を受けた日をいいます(所得税基本通達36-9(1))。
 したがって、給与規定により25日が支給日と定められている場合は、1月から12月までの毎月25日に支払われる給与が年末調整の対象となります(「〇月分」という呼称は関係ありません)。

2.翌月支給の場合の年末調整の対象となる給与

 そうすると、当月の1日から当月末日までの勤務実績に基づき、翌月の10日に給与を支給する場合、いわゆる「当月締め・翌月払い」の給与の年末調整にも、おのずと答えが出ます。
 例えば、前年の12月1日~12月31日を給与の計算期間とし、当年の1月10日に支給する給与は、当年の年末調整の対象となります(この給与を「12月分」と呼ぶか「1月分」と呼ぶかにかかわらずです)。
 また、当年の12月1日~12月31日を給与の計算期間とし、翌年の1月10日に支給する給与は、当年ではなく翌年の年末調整の対象となります。

 つまり、「当月締め・当月払い」の場合でも「当月締め・翌月払い」の場合でも、年末調整の対象となる給与は、その年の1月~12月に「支給」する(「支給日」が到来する)給与です。 

※ 給与の計算期間(12月1日~12月31日)に着目すると「12月分」になり、発生主義に基づいた呼称といえます。また、支給日(1月10日)に着目すると「1月分」になり、現金主義的な呼称といえます。

3.給与計算期間に応じた会計処理

 年末調整の対象となる給与については以上のとおりですが、ここで新たな疑問が生じます。
 当年の12月1日~12月31日を給与の計算期間とし、翌年の1月10日に支給する給与は、当年ではなく翌年の年末調整の対象となりますが、例えば12月決算の法人は、この給与をどのように会計処理したらいいのでしょうか?当年の年末調整の対象とならないので会計処理をしなくてもいいのでしょうか?
 答えは、発生主義に基づき「未払計上をする」です。
 12月1日~12月31日を計算期間とする給与は「12月分」として発生(債務確定)していますので、「未払金」を計上することになります。

 一方、「当月20日締め・当月25日払い」の場合、例えば11月21日~12月20日を計算期間とする給与は12月25日に支給されますので、未払計上はしません(資金繰り等の何らかの事情で年内に支給されなかった場合は、未払計上します)。
 ただし、12月21日~12月31日分の給与については、毎期継続適用を要件として、経過勘定項目の「未払費用」を計上することができます。

※ 年末調整の対象となる給与は、1月1日から12月31日までの間に支払うべきことが確定した給与をいいますので、当年中に支給期の到来した給与は、未払のものがあっても、これを含めたところで年末調整を行うことになります。
 この場合、「給与所得の源泉徴収票」の作成日現在で未払の給与がある場合には、その未払額及び徴収未済の税額を、「支払金額」欄及び「源泉徴収税額」欄に内書することになっています。
 

源泉徴収税額表の「月額表」「日額表」の使い方と「甲欄」「乙欄」「丙欄」

1.「月給=月額表、日給=日額表」ではない

 給料から天引き(源泉徴収)する所得税及び復興特別所得税の額は、「給与所得者の源泉徴収税額表」を使用して求めることができます。
 この源泉徴収税額表には「月額表」と「日額表」があり、前者には「甲欄」と「乙欄」、後者には「甲欄」「乙欄」「丙欄」の各欄が設けられています。
 「甲欄」と「乙欄」の使い分けについては、「給与所得者の扶養控除等申告書」の提出がある場合は甲欄、同申告書の提出がない場合(「従たる給与についての扶養控除等申告書」の提出がある場合を含みます)は乙欄になります(「従たる給与についての扶養控除等申告書」については、本ブログ記事「『従たる給与についての扶養控除等申告書』とは?」をご参照ください)。

 では、「月額表」と「日額表」はどのようにして使い分けるのでしょうか?
 例えば、雇用期間3か月、日給1万円で週に3~4日の勤務、給料は月末締め・翌月10日払い、という雇用条件の場合は、「日額表」を使うのでしょうか?
 結論を先に述べると、上記のような日給制の場合は「日額表」ではなく「月額表」を使って源泉徴収税額を求めます。
 月額表と日額表の使い分けは、月給=月額表、日給=日額表ということではなく、以下のようになります。

2.月額表・日額表の使用区分は給与等の支給方法による

 源泉徴収税額表の月額表と日額表は、次のように給与の支給方法(月払い、週払い、日払いなどの支給期間の単位)によって使い分けます。

(1) 月額表を使う場合

 「月額表」を使うのは、次のような給与を支払う場合です。

月ごとに支払うもの
半月ごと10日(旬)ごとに支払うもの
月の整数倍の期間ごとに支払うもの

 月給制であれば、支給方法は①の1か月ごとの支給が一般的だと思われますが、②の半月ごとや10日ごとの支給、③の整数倍の期間ごと(例えば2か月ごと)の支給の場合も、月額表によって源泉徴収税額を求めます。
 一方、日給制の場合でも給与の支給方法が①~③であれば、月額表によって源泉徴収税額を求めます。
 また、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人に支払う給与については「甲欄」を、その他の人に支払う給与については「乙欄」を使って源泉徴収税額を求めます。

(2) 日額表を使う場合

 「日額表」を使うのは、次のような給与を支払う場合です。

毎日支払うもの
週ごとに支払うもの
日割で支払うもの
日雇賃金
※ ①~③は日雇賃金を除きます。

 「日額表」を使用するのは、①の毎日支払う給与の場合です。また、②の1週間ごとに支払う給与や③の日割り計算して支払う給与も「日額表」を使用します。
 例えば、②の1週間ごとに給与を支払う場合は、日額表で毎日の給与から源泉徴収する税額を計算し、1週間分を合計したものが実際の源泉徴収税額になります。

 上記の①から③に掲げる給与のうち、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人に支払う給与については「甲欄」を、その他の人※1に支払う給与については「乙欄」を、④の日雇賃金については「丙欄」を使って税額を求めます。
 ④の日雇賃金とは、日々雇い入れられる人が、労働した日または時間によって算定され、かつ、労働した日ごとに支払を受ける(その労働した日以外の日において支払われるものも含みます)給与等をいいます。
 ただし、1か所の勤務先から継続して2か月を超えて給与等が支払われた場合には、その2か月を超える部分の期間について支払われるものは、ここでいう日雇賃金には含まれません(別途、建設業従事者の特例があります※2)。
 なお、パートやアルバイトの人に対して日給や時間給で給与を支払う場合は、あらかじめ雇用契約の期間が2か月以内と決められていれば、「日額表」の「丙欄」を使って税額を求めます※2

※1 その他の人とは、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出していない人(「従たる給与についての扶養控除等申告書」を提出している人を含みます)をいいます。

※2 建設業従事者の特例やパート・アルバイトに対する丙欄の使用については、本ブログ記事「パートやアルバイトの給与を丙欄で源泉徴収するときの注意点と建設業の特例」をご参照ください。

 源泉徴収税額表の「月額表」「日額表」の使用区分と「甲欄」「乙欄」「丙欄」についてまとめると、下表のようになります。

税額表 給与の支給方法 税額表の使用する欄
月額表 ① 月ごとに支払うもの
② 半月ごと、10日ごとに支払うもの
③ 月の整数倍の期間ごとに支払うもの
甲欄:「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人に支払う給与
乙欄:その他の人に支払う給与
日額表

① 毎日支払うもの
② 週ごとに支払うもの
③日割りで支払うもの
※ ①~③は日雇賃金を除く

甲欄:「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人に支払う給与
乙欄:その他の人に支払う給与
日雇賃金 丙欄

親から土地と借入金の贈与を受けた場合の贈与税等の課税関係

 先日、次のような質問を受けました。

 「兄弟2人(兄をA、弟をBとします)で親から土地の贈与を受けることを考えているが、親がその土地を取得したときの借入金が残っており、その借入金をAが全額負担した場合でも、Aに贈与税がかかるのか?」

 これは、借入金付きで土地の贈与を受ける「負担付贈与」といわれるものです。この質問に答えるために、次の数値例を設定します(Aが借入金の債務者となることにつき、銀行の承諾を得ているものとします)。

・土地の相続税評価額・・・4,000万円
・土地の時価・・・5,000万円
・借入金残高・・・2,500万円

1.借入金を全額負担しても贈与税はかかるか?

 例えば、贈与を受ける土地の割合がA:B=3:2だとしたら、借入金を全額負担したとしてもAには贈与税がかかります。
 本来、贈与税を計算するときの評価は相続税評価額によりますが、不動産の負担付贈与の場合は、時価で評価をします。
 一方、負担付贈与の場合は、贈与財産の価額から負担額を差し引いた価額が贈与税の課税対象になります。
 したがって、Aの贈与税の計算をするときの課税対象は、5,000万円×3/5-2,500万円=500万円となり、この500万円から基礎控除110万円を引いた390万円に対して贈与税がかかります。

 また、贈与を受ける土地の割合がA:B=1:1だとしたら、借入金を全額負担したAには贈与税はかかりません。
 この場合のAの贈与税の課税対象は、5,000万円×1/2-2,500万円=0円となるからです。

2.贈与した親に所得税・住民税がかかる可能性がある

 通常の贈与であれば無償で資産を譲渡するので、贈与者である親が課税されることはありません。
 しかし、今回のような借入金付きで土地の贈与をする負担付贈与の場合は、親の借入金(債務)が消滅し、親は債務の消滅という経済的利益を得ることになるのでみなし譲渡課税の対象になります(所得税法第59条)。
 つまり、2,500万円の借入金が消滅するということは、土地を2,500円で売却したのと同じとみなされ、親には所得税・住民税がかかる可能性があります。
 例えば、土地の取得価額が2,000万円だったとしたら、2,500万円-2,000万円=500万円の譲渡益となり、所得税・住民税がかかります(各種特例は考慮していません)。
 一方、土地の取得価額が3,000万円だったとしたら、2,500万円-3,000万円=△500万円の譲渡損となり、所得税・住民税はかかりません。

 

令和4年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の書き方と記載例

 年末調整では、勤務先に各種申告書(扶養控除等申告書、基礎控除・配偶者控除等・所得金額調整控除申告書、保険料控除申告書、住宅借入金等特別控除申告書)を提出することで、いろいろな控除を受けることができます。
 これらの申告書のうち、今回は2022(令和4)年分扶養控除等申告書の書き方を確認します。扶養控除等申告書には2023(令和5)年分もありますが、令和4年分は今年(令和4年)の年末調整の計算に使用するため、令和5年分は来年(令和5年)1月から支払う給与の計算に使用するため、勤務先に提出します。
 令和4年分扶養控除等申告書は、昨年(令和3年)の年末調整時に提出済み、途中入社の方は入社時に提出済みだと思われますが、今年(令和4年)の年末調整で修正事項(結婚や出産により扶養者が増えた等)の有無を確認するため、勤務先より配布されます。
 以下で、令和4年分扶養控除等申告書の書き方について確認します。

※ 令和4年分基礎控除・配偶者控除等・所得金額調整控除申告書については、本ブログ記事「令和4年分基礎控除・配偶者控除等・所得金額調整控除申告書の書き方と記載例」を、令和4年分保険料控除申告書については「令和4年分給与所得者の保険料控除申告書の書き方と記載例」を、年末調整で勤務先に提出する書類については「年末調整に必要な書類(各種申告書と証明書等)」をご参照ください。

1.氏名、住所などの記入

(1) 所轄税務署長等
 給与の支払者(勤務先)の所在地等の所轄税務署長とあなた(給与所得者)の住所地等の市区町村長を記載します。

(2) 給与の支払者の法人(個人)番号
 この申告書を受理した給与の支払者が、給与の支払者の個人番号又は法人番号を付記します。給与の支払者が法人の場合は、給与の支払者の法人番号をあらかじめ記載(印字)して、給与所得者に配付しても差し支えありません。

(3) あなたの個人番号
 あなたの個人番号を記載する必要がありますが、一定の要件の下、個人番号の記載を要しない場合がありますので、給与の支払者に確認してください。
※本ブログ記事「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」のマイナンバー記載を省略する方法」をご参照ください。

(4) あなたの住所又は居所
 令和4年分は、令和4年12月31日時点の住所を記載します(給与の支払者の指示に従ってください)。令和5年分は、令和5年1月1日時点の住所を記載します。

(5) 配偶者の有無
 ここでいう配偶者とは、一定の要件を満たす必要のある源泉控除対象配偶者のことではありません。単に配偶者がいれば「有」に○、いなければ「無」に○を付けます。

(6) 従たる給与についての扶養控除等申告書の提出
 2か所以上から給与の支払を受けている人が、他の給与の支払者に「従たる給与についての扶養控除等申告書」を提出している場合に◯を付けます。

2.源泉控除対象配偶者、控除対象扶養親族の記入

(1) 源泉控除対象配偶者
 配偶者が「源泉控除対象配偶者」となるには、以下の要件を満たす必要があります。
① あなたの所得金額が900万円以下である(給与収入のみならば年収1,095万円以下)
② 配偶者の所得金額が95万円以下である(給与収入のみならば年収150万円以下)
③ あなたと生計を一にする配偶者である
※「生計を一にする」については、本ブログ記事「所得控除における『生計を一にする』の判定基準」をご参照ください。
④ 青色事業専従者として給与の支払を受ける人及び白色事業専従者のいずれにも該当しない
 上記4要件を満たす場合は、配偶者の情報を記入します。なお、年末調整において配偶者(特別)控除の適用を受けるには、この欄の記載の有無に関わらず「給与所得者の配偶者控除等申告書」の提出が必要です。

(2) 控除対象扶養親族
 親族が「控除対象扶養親族」となるには、以下の要件を満たす必要があります(①~③は扶養親族の要件)。
① 親族の所得金額が48万円以下である(給与収入のみならば年収103万円以下)
② あなたと生計を一にする親族である
③ 配偶者、青色事業専従者として給与の支払を受ける人及び白色事業専従者のいずれにも該当しない
④ 年齢16歳以上である(平成19年1月1日以前生)
 上記4要件を満たす場合は、親族の情報を記入します。なお、児童福祉法の規定により養育を委託されたいわゆる里子や老人福祉法の規定により養護を委託されたいわゆる養護老人で、あなたと生計を一にし、令和4年中の合計所得金額の見積額が48万円以下の人も扶養親族に含まれます。

(3) 個人番号
 源泉控除対象配偶者及び控除対象扶養親族の個人番号を記載する必要がありますが、一定の要件の下、個人番号の記載を要しない場合がありますので、給与の支払者に確認してください(上記1.(3)参照)。

(4) 老人扶養親族
 控除対象扶養親族が年齢70歳以上(昭和28年1月1日以前生)の場合には、次のとおりいずれかに✓を付けます。
① その人があなた又はあなたの配偶者の直系尊属で、あなた又はあなたの配偶者のいずれかと同居を常況としている人であるとき→「同居老親等」に✓を付けます。
② その人が①以外の人であるとき →「その他」に✓を付けます。

(5) 特定扶養親族
 控除対象扶養親族が年齢19歳以上23歳未満(平成12年1月2日~平成16年1月1日生)の場合に、✓を付けます。

(6) 非居住者である親族
 源泉控除対象配偶者又は控除対象扶養親族が非居住者である場合に○を付けます。この場合、親族関係書類の添付等が必要です。
※「非居住者」とは、国内に住所を有せず、かつ、現在まで引き続いて1年以上国内に居所を有しない個人をいいます。

3.障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生の記入

(1) 同一生計配偶者
 同一生計配偶者が一般の障害者、特別障害者又は同居特別障害者に該当する場合には、該当する欄に✓を付けます。
※「同一生計配偶者」とは、あなたと生計を一にする配偶者(青色事業専従者として給与の支払を受ける人及び白色事業専従者を除きます)で、令和4年中の合計所得金額の見積額が48万円以下の人をいいます。

(2) 扶養親族
 扶養親族が一般の障害者、特別障害者又は同居特別障害者に該当する場合には、該当する欄に✓を付けます。
 なお、障害者控除の対象となる扶養親族は、控除対象扶養親族とは異なり、年齢16歳未満(平成19年1月2日以後生)の扶養親族も対象となります。

(3) 寡婦、ひとり親、勤労学生
 あなたが寡婦、ひとり親、勤労学生に該当する場合に✓を付けます
 寡婦は、ひとり親に該当しない女性で、以下のいずれかに当てはまる人です。
① 所得金額が500万円以下で、夫と離婚した後に婚姻をしておらず、扶養親族がいる
② 所得金額が500万円以下で、夫と死別した後婚姻をしていない、もしくは夫の生死が明らかでない
 ひとり親は、現在婚姻していない人、もしくは配偶者の生死が明らかでない一定の人のうち、以下のすべてに当てはまる人です。
① 所得金額が500万円以下である(給与収入のみならば、年収6,777,778円以下)
② 生計を一にする子がいる
③ 事実上の婚姻関係にある人がいない
※寡婦、ひとり親については、本ブログ記事「ひとり親控除の新設と寡婦(夫)控除の改正」をご参照ください。
 勤労学生は、以下のすべてに当てはまる人です。
① あなたが学生である(小学校、中学校、高等学校、高等専門学校、大学の学生、国や地方公共団体、学校法人などが設立した専修学校、各種学校、または職業訓練学校のうち一定の要件を満たす学校の学生)
② アルバイトなどの勤労による所得金額が75万円以下である(収入が1つの勤務先からのアルバイト代(給与収入)のみならば、年収130万円以下)

(4) 障害者又は勤労学生の内容
 左記の障害者又は勤労学生に該当する(人がいる)場合、その該当する事実やその人の氏名を記載します。
(例)障害者の場合・・・障害の状態又は交付を受けている手帳などの種類と交付年月日、障害の程度(等級)などの障害者に該当する事実を記載します。
(注)寡婦、ひとり親に該当する方について、死別、離婚、生死不明の別、生計を一にする子の氏名及びその子の所得の見積額など、寡婦又はひとり親に該当する事実の記載は必要ありません。

4.他の所得者が控除を受ける扶養親族等の記入

 他の所得者が控除を受ける扶養親族等の欄については、共働きなどで子供を扶養親族としなかった方が子供の氏名等を記入する欄ですが、空欄でも構いません。記入しなかったとしても「控除額が減り、損をする」というわけではありません。

5.住民税に関する事項の記入

(1) 16歳未満の扶養親族
 年齢16歳未満(平成19年1月2日以後生)の扶養親族について記載します。16歳未満の扶養親族は「扶養控除」の対象外ですが、住民税の計算で利用するためあわせて記載します。

(2) 控除対象外国外扶養親族
 国内に住所を有しない扶養親族に該当する場合に○を付けます。

不動産外交員の歩合給と「給与課税されない固定給」とは?

1.歩合給と固定給の税法上の取扱い

 不動産外交員の報酬は、販売実績に基づく歩合給(変動給)であることが一般的です。そのため、販売実績がよかった月は多額の報酬を得ることが可能ですが、仮に販売実績がなかった月は報酬も0になります。
 そこで、不動産外交員の生活保障のために、歩合給とは別に固定給を支給する場合があります。固定給は販売実績とはかかわりなく支給され、例えば販売実績がなくても支給されます。
 歩合給と固定給では税法上の取扱いが異なり、歩合給を支給した場合は消費税法上の課税取引となるので仕入税額控除ができますが、固定給を支給した場合は給与課税され仕入税額控除はできません。
 また、歩合給と固定給では、所得税の源泉徴収税額の計算方法も異なります。歩合給の場合は、外交員に支払う報酬の金額から12万円を控除した残額に10.21%(復興税を含む)を乗じて計算します(具体的な計算方法の詳細については、本ブログ記事「外交員報酬に係る源泉徴収税額の計算方法」をご参照ください)。
 一方、固定給の場合は、「給与所得の源泉徴収税額表」を使用して、給与に対する源泉徴収税額を求めます。
 このように、不動産外交員に支払う固定給は基本的には給与として課税されますが、所得税基本通達204-22には「給与課税されない固定給」が記載されています。

2.所得税基本通達204-22

 所得税基本通達204-22には、外交員又は集金人の業務に関する報酬又は料金について、次のように規定されています(下線は筆者による)。

 外交員又は集金人がその地位に基づいて保険会社等から支払を受ける報酬又は料金については、次に掲げる場合に応じ、それぞれ次による。

(1) その報酬又は料金がその職務を遂行するために必要な旅費とそれ以外の部分とに明らかに区分されている場合  法第9条第1項第4号《非課税所得》に掲げる金品に該当する部分は非課税とし、それ以外の部分は給与等とする。

(2) (1)以外の場合で、その報酬又は料金が、固定給(一定期間の募集成績等によって自動的にその額が定まるもの及び一定期間の募集成績等によって自動的に格付される資格に応じてその額が定めるものを除く。以下この項において同じ。)とそれ以外の部分とに明らかに区分されているとき  固定給(固定給を基準として支給される臨時の給与を含む。)は給与等とし、それ以外の部分は法第204条第1項第4号に掲げる報酬又は料金とする。

(3) (1)及び(2)以外の場合  その報酬又は料金の支払の基因となる役務を提供するために要する旅費等の費用の額の多寡その他の事情を総合勘案し、給与等と認められるものについてはその総額を給与等とし、その他のものについてはその総額を法第204条第1項第4号に掲げる報酬又は料金とする。

 上記通達のとおり、固定給は給与として取り扱われますが、(2)の下線部のものは給与課税される固定給から除くとされています(つまり、「給与課税されない固定給」です)。
 下線部の「一定期間の募集成績等によって自動的にその額が定まるもの及び一定期間の募集成績等によって自動的に格付される資格に応じてその額が定めるもの」とは、具体的には「前月の販売実績により、その一定割合の固定給(上限額あり)を当月に支払う場合」などが該当します。
 例えば、前月の販売実績が100万円の場合は、その一定割合(5%)の固定給5万円を当月に支給し、前月の販売実績が1,000万円の場合は、その一定割合(5%)の固定給20万円(上限額20万円とします)を当月に支給します。
 この支給方法によると、仮に当月の販売実績が0でも、前月の販売実績によっては当月に報酬が支給されます。当月の販売実績に基づいた報酬ではないため「固定給」という名称を用いていますが、当然その支給額は月によって増減しますので実質的には歩合給(変動給)であり、給与ではなく外交員報酬といえます。
 したがって、実質的には歩合給であることから、上記通達の(2)では、給与として取り扱われる固定給から除くものとされています。

3.給与課税されない固定給の源泉徴収税額の計算方法

 給与課税される固定給であれば、先に述べたように「給与所得の源泉徴収税額表」を使用して、給与に対する源泉徴収税額を求めます。
 所得税基本通達204-22における「給与課税されない固定給」は、実質的には歩合給(変動給)である外交員報酬ですので、その源泉徴収税額は、外交員報酬に係る源泉徴収税額の計算方法によって算出します。
 例えば、当月の販売実績に基づく歩合給が30万円、前月の販売実績に基づく固定給(給与課税されない固定給)が5万円だとしたら、当月の源泉徴収税額は次のようになります。

 源泉徴収税額={(30万円+5万円)-12万円}×10.21%=23,483円

事前確定届出給与を支給しなかった場合のリスクを回避するための手続き

 従来は臨時的な役員賞与は損金算入が認められていませんでしたが、事前確定届出給与の制度を利用すれば、役員賞与であっても届出通りの支給をした場合は損金算入が可能です(届出書等の書き方については、本ブログ記事「『事前確定届出給与に関する届出書』等の書き方と記載例」をご参照ください)。

 届出通りの支給をしなかった場合、例えば届出書に記載した支給時期や支給額と異なる時期や金額の支給をした場合は、その役員賞与は損金不算入となります

 事前確定届出給与の届出はしたけれども実際には全く支給しなかった場合は、そもそも支給額が0円なので損金不算入額も0円となり、特段のリスクはないように見えます。
 しかし、事前確定届出給与の支給をしなかった場合のリスクはあります。
 今回は、事前確定届出給与の支給をしなかった場合のリスクと、そのリスクを回避するための手続きについて確認します。

※ 事前確定届出給与を届出通りに支給しなかった場合でも、損金算入できることがあります。詳細については、本ブログ記事「事前確定届出給与(複数回支給)を届出通りに支給しなかった場合」及び「事前確定届出給与(複数人支給)を特定の役員だけ届出通りに支給しなかった場合」をご参照ください。

1.事前確定届出給与の支給をしなかった場合のリスク

 事前確定届給与は法人の節税対策として用いられる側面がありますが、実際の利益が当初見込んでいた利益よりも少なくなる場合は、事前確定届出給与の支給をやめることがあります。

 例えば、事前確定届出給与100万円の支給時期が到来したけれどもその支給をしなかった場合は、そもそも支給額が0円なので損金不算入額も0円です。
 しかし、この場合は次のようなリスクがあることに留意しなければなりません。

借方 金額 貸方 金額
役員賞与 100万円 未払金 100万円
未払金 100万円 債務免除益 100万円

 届出額100万円と異なる金額を支給した場合は、その全額が損金不算入となりますが、支給額が0円なのでそもそも損金算入する金額がなく、損金不算入額も0円です。
 会社としては株主総会等で役員賞与を支給しないという意思決定をしたため、会計上は役員賞与や未払金を認識(上記1行目の仕訳)することはありません(上記1行目の仕訳をするのは、会社に役員賞与を支払う意思がある場合です)。

 しかし、支給日が到来した段階で役員に報酬請求権が発生するため、会社側には報酬を支給する債務(未払金)が発生します。つまり、税務上は上記1行目の仕訳のように考えます。
 そうすると、税務上は役員賞与100万円を認識することになるので、これに対する所得税の源泉徴収が必要になります
 また、株主総会等の決議の際に役員は辞退届を提出して報酬請求権を放棄したと考えられるため、会社側に生じた報酬を支給する債務(未払金)は消滅しますが、役員賞与の支給義務が免除されたことに対する収益(債務免除益)を会社側では認識することになります(上記2行目の仕訳)。

※ 根拠条文は、次の所得税法第183条第2項(源泉徴収義務)です。
2 法人の法人税法第二条第十五号(定義)に規定する役員に対する賞与については、支払の確定した日から一年を経過した日までにその支払がされない場合には、その一年を経過した日においてその支払があつたものとみなして、前項の規定を適用する。

2.リスクを回避するための手続き

 事前確定届出給与を支給しなかった場合のリスクは、会社側では役員賞与を支払っていないにもかかわらず、①役員賞与に対する所得税の源泉徴収義務が生じる、②債務免除益に対して課税される、役員側では役員賞与をもらっていないにもかかわらず、所得税が課税されることです。

 これらのリスクは、事前確定届出給与の支給日に役員の報酬請求権が発生することに端を発しています。
 つまり、これらのリスクがあるのは、事前確定届出給与の支給日が到来した後(すでに役員の報酬請求権が発生した後)に、役員からの辞退届を受領したり株主総会等で不支給の決議をした場合です。

 したがって、これらのリスクを回避するためには、事前確定届出給与の支給日が到来する前に、役員からの辞退届を受領して株主総会等で不支給の決議をすることが必要です。
 所得税基本通達28-10(給与等の受領を辞退した場合)には、次のように規定されています。

28-10 給与等の支払を受けるべき者がその給与等の全部又は一部の受領を辞退した場合には、その支給期の到来前に辞退の意思を明示して辞退したものに限り、課税しないものとする。

 なお、事前確定届出給与を支給しなかった場合に、支給しなかったことについて税務署へ届出(報告)する必要はありません。