家屋と一体の建築設備は家屋と償却資産のどちらに該当するか?

 家屋(建物)には、家屋と一体となって家屋の効用を高める設備(電気設備、給排水設備、衛生設備、空調設備、消火設備、運搬設備等の建築設備)が取り付けられていますが、固定資産税においては、これらを家屋と償却資産に区分して評価します。

 家屋として評価するものには固定資産税が課され、償却資産として評価するものについては償却資産税が課されますので、家屋と償却資産の区分は重要です。

 しかし、家屋と一体となっているが故に、その区分が判然としないケースもあります。区分のポイントは、家屋と設備の所有者が同じであるか否かという点です。
 この観点から、建築設備における家屋と償却資産の区分について確認します。

1.家屋と設備の所有者が同じ場合

 家屋と一体となって家屋の効用を高める建築設備のうち、取り外しが容易で別の場所に自在に移動のできるもの、屋外に設置された配線又は配管、特定の生産又は業務の用に供されるもの等については、償却資産として取り扱います。

 家屋と建築設備の所有者が同じである場合の家屋と償却資産の区分について、代表的なものを以下に例示します。

建築設備の種類 設備の分類 設備の内容 家屋 償却資産
建築工事 内装・造作等 床・壁・天井仕上、造作・建具、外壁の仕上げ等
店舗造作等工事一式
 
電気設備 受変電設備 設備一式(配線・配管を含む)  
予備電源設備 発電機設備、蓄電池設備、無停電電源設備等(配線・配管を含む)  
中央監視設備 設備一式(配線・配管を含む)  
動力照明設備 屋外設備一式、特定の生産又は業務用設備(ネオンサイン、投光器、スポットライト等)  
屋内設備一式、分電盤  
電力引込設備 引込工事  
動力配線設備 特定の生産又は業務用設備(工場等機械の動力源である動力配線)  
上記以外の設備  
電話設備 電話機、交換機等の機器  
配管・配線、端子盤等  
LAN設備 設備一式  
放送・拡声設備 マイク、スピーカー、アンプ等の機器  
配管・配線等  
監視カメラ
( ITV)設備
受像機(テレビ)、カメラ、録画装置等の機器  
配管・配線等  
給排水衛生設備 給排水設備 屋外設備、引込工事、特定の生産又は業務用設備  
配管、高架水槽、受水槽、ポンプ等  
給湯設備 局所式給湯設備(電気温水器・湯沸器用)  
局所式給湯設備(ユニットバス用、床暖房用等)、
中央式給湯設備
 
ガス設備 屋外設備、引込工事、特定の生産又は業務用設備  
屋内の配管、バルブ、排気筒等  
衛生設備 設備一式(洗面器、大小便器等)  
消火設備 消火器、避難器具、ホース及びノズル、ガスボンベ等  
消火栓設備、スプリンクラー設備等  
空調設備 空調設備 壁掛型ルームエアコン、特定の生産又は業務用設備  
上記以外の設備  
換気設備 特定の生産又は業務用設備  
上記以外の設備  
その他の設備等 運搬設備 工場用ベルトコンベア、垂直搬送機  
エレベーター、エスカレーター、小荷物専用昇降機  
厨房設備 顧客の求めに応じるサービス設備(飲食店・ホテル・百貨店等)、寮・病院・社員食堂等の厨房設備  
上記以外の設備  
その他の設備 冷凍・冷蔵倉庫における冷却装置、ろ過装置、POSシステム、広告塔、文字看板、袖看板、簡易間仕切(衝立)、機械式駐車設備(ターンテーブルを含む)、駐輪設備、ゴミ処理設備、メールボックス、カーテン・ブラインド等  
外構工事 外構工事 工事一式(門・塀・フェンス・植栽等)  

2.家屋と設備の所有者が異なる場合

 賃貸ビル等を借り受けて事業をしている賃借人(テナント)が、自己の費用により附加施工又は譲渡等によって取得した建築設備で事業の用に供することができるものについては、賃借人(テナント)がその建築設備を償却資産として申告することとなります。

 この場合(家屋と建築設備の所有者が異なる場合)上記1の表において「家屋」と区分されているものについても、償却資産として申告しなければなりません。

 具体的には、次のとおりです(は上記1の表において家屋と区分されているものです)。

建築設備の種類 設備の分類 設備の内容 家屋 償却資産
建築工事 内装・造作等 床・壁・天井仕上、造作・建具、外壁の仕上げ等
店舗造作等工事一式
 
電気設備 受変電設備 設備一式(配線・配管を含む)  
予備電源設備 発電機設備、蓄電池設備、無停電電源設備等(配線・配管を含む)  
中央監視設備 設備一式(配線・配管を含む)  
動力照明設備 屋外設備一式、特定の生産又は業務用設備(ネオンサイン、投光器、スポットライト等)  
屋内設備一式、分電盤  
電力引込設備 引込工事  
動力配線設備 特定の生産又は業務用設備(工場等機械の動力源である動力配線)  
上記以外の設備  
電話設備 電話機、交換機等の機器  
配管・配線、端子盤等  
LAN設備 設備一式  
放送・拡声設備 マイク、スピーカー、アンプ等の機器  
配管・配線等  
監視カメラ
( ITV)設備
受像機(テレビ)、カメラ、録画装置等の機器  
配管・配線等  
給排水衛生設備 給排水設備 屋外設備、引込工事、特定の生産又は業務用設備  
配管、高架水槽、受水槽、ポンプ等  
給湯設備 局所式給湯設備(電気温水器・湯沸器用)  
局所式給湯設備(ユニットバス用、床暖房用等)、
中央式給湯設備
 
ガス設備 屋外設備、引込工事、特定の生産又は業務用設備  
屋内の配管、バルブ、排気筒等  
衛生設備 設備一式(洗面器、大小便器等)  
消火設備 消火器、避難器具、ホース及びノズル、ガスボンベ等  
消火栓設備、スプリンクラー設備等  
空調設備 空調設備 壁掛型ルームエアコン、特定の生産又は業務用設備  
上記以外の設備  
換気設備 特定の生産又は業務用設備  
上記以外の設備  
その他の設備等 運搬設備 工場用ベルトコンベア、垂直搬送機  
エレベーター、エスカレーター、小荷物専用昇降機  
厨房設備 顧客の求めに応じるサービス設備(飲食店・ホテル・百貨店等)、寮・病院・社員食堂等の厨房設備  
上記以外の設備  
その他の設備 冷凍・冷蔵倉庫における冷却装置、ろ過装置、POSシステム、広告塔、文字看板、袖看板、簡易間仕切(衝立)、機械式駐車設備(ターンテーブルを含む)、駐輪設備、ゴミ処理設備、メールボックス、カーテン・ブラインド等  
外構工事 外構工事 工事一式(門・塀・フェンス・植栽等)  

償却資産税の申告対象となる資産とは?

 償却資産に対する固定資産税を償却資産税といいます。
 償却資産とは、土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産で、所得税法又は法人税法の所得の計算上減価償却の対象となる資産です。

 毎年1月1日現在において償却資産を所有している法人や個人事業者は、1月31日までにその償却資産を市役所等に申告しなければなりません。

 しかし、実際に申告書を作成する際には、どの資産が申告対象であるのか判断に迷うケースもありますので、以下では償却資産税の申告対象となる資産について、基本的事項の確認をします。

1.申告対象となる資産

 申告対象となる資産は、毎年1月1日現在において事業の用に供することができる資産です。
 なお、次に掲げる資産も申告が必要ですのでご注意ください。

(1)建設仮勘定で経理されている資産
(2)簿外資産(帳簿に記載されていない資産)
(3)償却済資産(減価償却を終わって帳簿上残存価額のみ計上されている資産)
(4)遊休資産(稼働を休止しているが利用可能な資産)
(5)未稼働資産(既に完成または据付済であるが未だ稼働していない資産)
(6)大型特殊自動車(陸運局への登録の有無にかかわらず償却資産に該当)
(7)賃貸ビル等を借り受けて事業をしている者が、自己の費用で付加施工した内部造作等及び譲渡等によって取得した内部造作等で、事業の用に供することができる資産
(8)美術品等のうち取得価額が1点100万円未満であるもの
(9)使用可能期間が1年未満又は取得価額が20万円未満の償却資産であっても個別に減価償却しているもの
(10)租税特別措置法の規定を適用し、即時償却等をしているもの(中小企業者等の少額資産(取得価額30万円未満)の損金算入の特例適用資産

※ 下記3をご参照ください。

2.申告対象とならない資産

 次の(1)~(9)に該当する資産は、償却資産税の課税対象にならないので申告の必要はありません。

(1)使用可能期間が1年未満又は取得価額が10万円未満の償却資産で、税務会計上一時に損金算入または必要経費に算入しているもの(固定資産として計上しないもの)
(2)取得価額が20万円未満の償却資産で、税務会計上3年間で一括償却しているもの
(3)無形減価償却資産(ソフトウェア、営業権、特許権等)
(4)繰延資産(創立費、開業費等)
(5)自動車税又は軽自動車税の課税対象となる自動車等
(6)平成20年4月1日以降に締結されたリース契約のうち、法人税法第64条の2第1項又は所得税法第67条の2第1項に規定するリース資産(所有権移転外リース及び所有権移転リース)で、取得価額20万円未満のもの
(7)生物(ただし、観賞用・興行用のものは申告対象)、立木、果樹
(8)美術品等のうち取得価額が1点100万円以上であるもの
(9)1月2日以降に取得し、翌年1月1日までの間に減少した資産

※ 下記3をご参照ください。

3.少額の減価償却資産の取扱い

 地方税法第341条第4号及び地方税法施行令第49条の規定により、下記(1)~(3)の資産については、償却資産税の申告対象から除かれます。

(1)取得価額10万円未満の資産のうち一時に損金算入したもの
(2)取得価額20万円未満の資産のうち3年間で一括償却したもの
(3)平成20年4月1日以降に締結されたリース契約のうち、法人税法第64条の2第1項又は所得税法第67条の2第1項に規定するリース資産で、取得価額20万円未満のもの

 一方、中小企業者等の少額資産(取得価額30万円未満)の損金算入の特例適用資産は、償却資産税の申告対象となっています。

 少額の減価償却資産の償却資産税における取扱いをまとめると、次のようになります。

区分 償却資産税の申告
少額の減価償却資産の損金(必要経費)算入の対象となる減価償却資産(使用可能期間1年未満又は取得価額10万円未満) 申告対象外
一括償却資産の損金(必要経費)算入の対象となる減価償却資産(取得価額20万円未満) 申告対象外
リース資産でそのリース資産の所有者が取得した際における取得価額が20万円未満のもの 申告対象外
中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金(必要経費)算入の対象となる減価償却資産(取得価額30万円未満) 申告対象
取得価額10万円未満又は20万円未満でも個別償却を選択したもの 申告対象

4.まとめ

 上記1~3について、償却方法と取得価額により申告対象をまとめると、次のようになります。

  10万円未満 10万円以上20万円未満 20万円以上30万円未満 30万円以上
一時損金算入 申告対象外      
3年一括償却 申告対象外 申告対象外    
リース資産 申告対象外 申告対象外 申告対象 申告対象
中小企業特例 申告対象外 申告対象 申告対象  
個別減価償却 申告対象 申告対象 申告対象 申告対象

調整給付金(定額減税補足給付金)の算定方法と疑問点の検証

 調整給付金は、2024(令和6)年度に実施される所得税・個人住民税所得割の定額減税を十分に受けられない人に対して、市区町村から支給される給付金(定額減税を補足する給付金)です。

 具体的には、定額減税可能額が2024(令和6)年分の推計所得税額または2024(令和6)年度分の個人住民税所得割額を上回る人に対して、当該上回る額の合計額を基礎として1万円単位で切り上げて算定した額が、2024(令和6)年7月下旬~8月に支給されます。

 今回は、調整給付金の算定方法と、調整給付金について想定される疑問点を検証します。

1.調整給付金の算定方法

 先に述べたように、調整給付金は、定額減税可能額が2024(令和6)年分の推計所得税額または2024(令和6)年度分の個人住民税所得割額を上回る人に対して、当該上回る額の合計額を基礎として1万円単位で切り上げて算定した額が支給されるというものです。

 定額減税可能額は、次のとおりです。

【所得税分】 3万円 × 減税対象人数(納税者本人+同一生計配偶者+扶養親族の数)
【住民税分】 1万円 × 減税対象人数(納税者本人+控除対象配偶者+扶養親族の数)

※ 同一生計配偶者とは、納税者と生計を一にする配偶者(青色専従者等を除く)のうち、合計所得が48万円以下の人です。
※ 控除対象配偶者とは、同一生計配偶者のうち、納税者の所得が1,000万円以下で、配偶者の合計所得が48万円以下の人(配偶者控除の対象者)です。
※ 扶養親族には16歳未満の扶養親族も含みます。
※ 非居住者(国外居住者など)は、減税対象人数に含みません。

 調整給付金は、例えば、家族構成4人(本人、配偶者、子ども2人)、令和6年分推計所得税額10万円、令和6年度分個人住民税所得割額3万5千円の場合を前提とすると、次のように算定します。

【所得税】
定額減税可能額=3万円 × 減税対象人数4人=12万円
控除不足額=定額減税可能額12万円-推計所得税額10万円=2万円
【住民税】
定額減税可能額=1万円 × 減税対象人数4人=4万円
控除不足額=定額減税可能額4万円-住民税所得割額3万5千円=5千円
【調整給付金】
調整給付金=所得税の控除不足額2万円+住民税の控除不足額5千円=2万5千円→3万円(1万円単位に切り上げ)

2.調整給付金に関するQ&A

 調整給付金の算定方法は上記1のとおりですが、以下では調整給付金に関する疑問点をQ&A形式で検証します。

(1) 令和6年分推計所得税額はどのようにして算出しているのか?

 調整給付金の算定において、所得税の控除不足額は定額減税可能額から令和6年分推計所得税額を引いて算定しますが、この推計所得税額は2023(令和5)年分所得等を基に市区町村で算出しています。

 国からの通知に基づき、国の算定ツールを用いて算出するため、2023(令和5)年分確定申告書や勤務先から交付された2023(令和5)年分源泉徴収票の所得税額とは一致しない場合があります。
 特に住宅ローン控除を所得税で引ききっている場合(住民税で控除の適用がない場合)などは、算定ツールの仕様上、実際の所得税額と一致しません。

 このような場合には、次の(2)の対応になります。

(2) 調整給付金の支給額が不足していることが判明した場合は?

 調整給付金の算定に用いる令和6年分推計所得税額や令和6年度分個人住民税所得割額が実際の数値と異なる場合でも、基本的に調整給付金の変更は行われません。

 令和6年分推計所得税額は実額による算出ではないことを踏まえ、令和6年分所得税額が確定した後(年末調整または確定申告)に調整給付金の支給額に不足が生じていること(令和6年分推計所得税額>令和6年分確定所得税額)が判明した場合は、当該不足額が2025(令和7)年度に追加で給付される予定です。

(3) 調整給付金の支給額が過大となっていることが判明した場合は?

 上記(2)とは逆に、令和6年分所得税額が確定した後(年末調整または確定申告)に調整給付金の支給額に過大額が生じていること(令和6年分推計所得税額<令和6年分確定所得税額)が判明した場合は、当該過大額を返還しなければならないのでしょうか?

 答えは「否」です。調整給付金の支給額に過大額が生じていたとしても、返還は不要です。
 国は、給付しすぎた部分については返還を求めないとの方針を公表しています。

(4) 令和6年度住民税所得割も令和5年分所得税も課税されていない場合、調整給付の対象になるか?

 2024(令和6)年度住民税所得割(定額減税前の税額)も2023(令和5)年分所得税も課税されていない(0円)場合は、調整給付(当初給付)の対象となりません。

 ただし、世帯全員の令和6年度住民税所得割が非課税で、令和5年度に実施された(令和5年度個人住民税で判定)非課税世帯を対象とする給付金(7万円)、均等割のみ課税世帯を対象とする給付金(10万円)の対象となっていない世帯であれば、令和6年度低所得者支援給付金の対象となる場合がありますので、支給要件をご確認ください。

(5) 定額減税後に控除しきれない額が3,000円ある場合、均等割(5800円)から控除するのか?

 個人住民税には、所得に応じた負担を求める「所得割」と、所得にかかわらず定額の負担を求める「均等割」があり、所得の水準に基づき、市区町村において税額(所得割額・均等割額)が決定されます。
 今回の定額減税は「所得割」から控除するものであるため、均等割からは控除されません。

(6) 調整給付金は課税対象や差押えの対象となるか?

 調整給付金は課税対象ではありません。また、法律により差押えが禁止されています。

「合計所得金額」「総所得金額」「総所得金額等」の違いとは?

 年末調整や確定申告において所得控除を適用する場合に、適用可能かどうかを判定するための基準として所得金額が設けられています。

 例えば、配偶者控除の適用要件は配偶者の所得金額が48万円以下とされていますが、ここでいう所得は「合計所得金額」です。
 一方、寄附金控除額は寄附した金額と所得金額の40%のいずれか少ない金額から2,000円を控除した額とされていますが、ここでいう所得は「総所得金額等」です。

 また、個人住民税においては、均等割の非課税限度額は「合計所得金額」で判定するのに対して、所得割の非課税限度額は「総所得金額等」で判定します。

 このように「合計所得金額」や「総所得金額等」(さらに「総所得金額」もあります)は、所得税や個人住民税の計算に用いられています。
 どれも所得の合計を表すよく似た用語ですが、税法上少しずつ違いがありますので、それらが用いられる場面によって使い分けが必要です。

 以下では、「合計所得金額」、「総所得金額」、「総所得金額等」という3つの用語について確認します。

1.課税所得金額の計算過程のどの金額か?

 国税庁のホームページや書籍等では、「合計所得金額」、「総所得金額」、「総所得金額等」について詳細な説明がされています。
 例えば、国税庁ホームページでは、「合計所得金額」について以下のように説明されています。

次の①と②の合計額に、退職所得金額、山林所得金額を加算した金額です。

※ 申告分離課税の所得がある場合には、それらの所得金額(長(短)期譲渡所得については特別控除前の金額)の合計額を加算した金額です。

① 事業所得、不動産所得、給与所得、総合課税の利子所得・配当所得・短期譲渡所得及び雑所得の合計額(損益通算後の金額)
② 総合課税の長期譲渡所得と一時所得の合計額(損益通算後の金額)の2分の1の金額


ただし、「◆総所得金額等」で掲げた繰越控除を受けている場合は、その適用前の金額をいいます。

 確かにこの説明を読みくだいていけば「合計所得金額」がどういうものであるかがわかります。
 また、「総所得金額」と「総所得金額等」についても説明を読み解けば個々の理解はできます。
 しかし、3者の違いまでわかろうとすると、説明文を読むだけでは困難だと思われますので、ここでは図を用いて理解の一助とします。

 「合計所得金額」、「総所得金額」、「総所得金額等」は、課税所得金額の計算過程で出てくる用語ですので、これらの違いを理解するには、課税所得金額の計算構造を示した下図が参考になると思われます。

 課税所得金額は、各種所得の金額を一定の順序に従い損益通算し、純損失、雑損失等の繰越控除をして課税標準を求め、その課税標準から所得控除額を差し引いて計算します。
 詳細な説明は省きますが、「合計所得金額」、「総所得金額」、「総所得金額等」の違いを理解するにあたっては、これらが課税所得金額の計算過程のどの時点で出てくるかに注目することがポイントです。
 つまり、損益通算の前なのか後なのか、繰越控除の前なのか後なのか、分離課税の譲渡所得の特別控除の前なのか後なのか、所得控除の前なのか後なのか、ということです。

2.合計所得金額で判定するもの

 合計所得金額を用いて判定するものには、以下のものがあります。

・配偶者控除(本人の所得1,000万円以下、配偶者の所得48万円以下等)、配偶者特別控除
・扶養控除(扶養親族の所得48万円以下等)
・寡婦、ひとり親控除(500万円以下)
・基礎控除(2,500万円以下)
・住宅借入金特別控除(2,000万円以下)
・均等割の非課税限度額
・障がい者、未成年者、寡婦、ひとり親の非課税限度額 等

3.総所得金額で判定するもの

 総所得金額には分離所得が含まれていないので、判定基準として使用されることはあまりありません。

4.総所得金額等で判定するもの

 総所得金額等を用いて判定するものには、以下のものがあります。

・雑損控除
・医療費控除
・寄附金控除
・所得割の非課税限度額 等

個人住民税(市・県民税)の申告の要否について

 2024(令和6)年度の個人住民税(市・県民税)は、2023(令和5)年中の所得等により計算され、2024(令和6)年1月1日に居住していた市区町村で課税されます。
 2023(令和5)年分の所得税確定申告期間は、2024(令和6)年2月16日(金)から3月15日(金)までとなっています。
 この間に所得税の確定申告をした人は、原則として個人住民税の申告をする必要はありません。
 一方、所得税の確定申告をする必要のない人(例えば、公的年金等の収入金額が400万円以下で公的年金等以外の所得金額が20万円以下の人)でも、個人住民税の申告はしなければなりません(確定申告不要制度については、本ブログ記事「給与所得者と公的年金等受給者の確定申告不要制度の注意点」をご参照ください)。
 以下では、個人住民税の申告の要否について確認します。

1.住民税の申告が必要な人

 以下の人は、2024(令和6)年度個人住民税の申告が必要です。

(1) 賦課期日(令和6年1月1日)現在において市内に在住し、かつ前年(令和5年)中の合計所得金額が43万円を超える人
(2) 賦課期日(令和6年1月1日)現在において市内に在住し、前年(令和5年)中の合計所得金額が43万円以下の人のうち課税(所得)証明書が必要な人
(3) 賦課期日(令和6年1月1日)現在において市外に在住し、市内に事業所や事務所がある個人事業者

※ 例えば、宝塚市に住んでいる人が西宮市の事業所で事業を行っている個人事業者である場合は、宝塚市には均等割と所得割を納付し、西宮市には均等割を納付することになります。

出所:西宮市ホームページ

2.住民税の申告が不要な人

 以下の人は、2024(令和6)年度個人住民税の申告は不要です。

(1) 所得税の確定申告をする人※1
(2) 前年(令和5年)中に所得がなかった人※2
(3) 前年(令和5年)中の所得が給与のみで、勤務先から市役所に給与支払報告書が提出されている人
(4) 前年(令和5年)中の所得が公的年金のみで、扶養・配偶者などの控除が前年(令和5年)分の公的年金などの源泉徴収票に記載されている内容どおりの人※2

※1 所得税の確定申告をする場合でも、確定申告書第2表の住民税に関する事項に記入もれ等があると、所得税額に影響がなくても個人住民税額等に影響する場合がありますので注意が必要です。

出所:宝塚市ホームページ

※2 上記(2)に該当する人でも健康保険の手続きなどで所得申告が必要な場合や、上記(4)に該当する人でも生命保険料控除や医療費控除などを追加する場合は、申告が必要となることがあります。

2024(令和6)年度から改正される個人住民税

 2024(令和6)年度から適用される個人住民税に関連する改正項目について、以下で確認します。

1.上場株式等の配当所得等に係る課税方式の統一

 上場株式等に係る配当所得等及び譲渡所得等に係る所得の課税方式を、所得税と住民税で一致させることとなりました。
 これまでは、上場株式等の配当所得等・譲渡所得等については所得税と住民税で異なる課税方式を選択できましたが、2024(令和6)年度課税分からは所得税において選択した課税方式が個人住民税にも適用され、所得税と住民税で異なる課税方式を選択することができなくなりました
 この改正により、扶養控除や配偶者控除等の適用、非課税判定、国民健康保険税の保険料算定など、各種行政サービスに影響する場合がありますのでご注意下さい。

※ これに伴い、2023(令和5)年分所得税確定申告書(第二表)における「住民税・事業税に関する事項」の「住民税」のうち、「特定配当等・特定株式等譲渡所得の全部の申告不要」欄が削除されています。

2.国外居住親族に係る扶養控除等の見直し

 30歳以上70歳未満の国外居住親族(国内に住所がなく、かつ、1年以上国内に居住していない親族)は、「扶養控除等の適用」及び「非課税限度額を算定するための扶養親族」の対象外となります。
 ただし、以下のいずれかに該当する人は対象となります。

(1) 留学により国外居住者となった人
(2) 障碍者
(3) 扶養親族等を申告する納税義務者から、生活費又は教育費に充てるための支払いを、税額の計算対象となる年(2024(令和6)年度の個人住民税の場合は2023(令和5)年中)において38万円以上受けている人

 これらに該当する人に係る扶養控除等の適用を受けようとする場合には、年末調整や確定申告等の際に各種証明書類を添付する必要があります(関連記事:「令和6年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の書き方と記載例」)。

3.森林環境税(国税)の課税開始

 森林環境税は、温室効果ガス排出削減目標の達成や災害防止を図るため、森林の整備などに必要な地方財源を安定的に確保するための国税で、年額1,000円が個人の市・県民税の均等割と併せて課税されます。
 その税収は全額が森林環境贈与税として国から自治体へ譲与され、森林整備などに充てられます。
 一方、東日本大震災からの復興を図ることを目的とした均等割1,000円(市・県500円ずつ)の課税は、2023(令和5)年度で終了します。
 これにより、個人住民税均等割と森林環境税の合計額は従前の個人住民税均等割の額と同額となります(下表は兵庫県宝塚市の場合)。

税目 平成26~令和5年度 令和6年度~
森林環境税 1,000円
市民税均等割 3,500円 3,000円
県民税均等割 2,300円 1,800円
合計 5,800円 5,800円

事務所・店舗等を移転した場合の償却資産申告書の記載例

1.償却資産税の申告対象

 償却資産とは、土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産で、所得税法又は法人税法の所得の計算上減価償却の対象となる資産をいいます。
 例えば、飲食店を営む個人事業主であれば、店舗で使用している冷蔵庫やレジスター、エアコン等が該当します。

 償却資産は毎年1月1日現在での所有状況を、1月31日までにその償却資産の所在地の市区町村へ申告することになっています。

 1月1日現在において事業の用に供することができる資産であれば、遊休資産(稼動を休止しているが、維持補修が行われている資産)、未稼働資産(すでに完成しているが、まだ稼働していない資産)、償却済み資産(減価償却を終わり、残存価額のみ帳簿に計上されている資産)なども申告対象となります
 一方、自動車税・軽自動車税の課税対象となる車両無形固定資産(ソフトウェア、鉱業権、漁業権、特許権等)、繰延資産(創立費、開業費、試験研究費等)などは申告対象とはなりません
 また、少額の減価償却資産については、取得価額10万円未満の資産のうち一時に損金算入したもの、取得価額20万円未満の資産のうち3年間で一括償却したものなどは申告対象から除外されますが、中小企業者等が取得価額30万円未満の減価償却資産の合計額 300万円までを損金算入した場合(中小企業者等の少額資産特例)は申告対象となります

※ 取得価額が10万円未満の資産であっても、一時に損金算入せず個別に減価償却しているものは償却資産税の申告対象となります。

2.移転前と移転後の両方の所在地に申告が必要

 先に述べたように、償却資産は毎年1月1日現在での所有状況を、1月31日までにその償却資産の所在地の市区町村へ申告することになっています。
 もし、本店や事務所、店舗等を移転し償却資産の所在地が変わった場合は、移転後の所在地だけではなく移転前の所在地の市区町村に対しても償却資産申告書を提出する必要があります。
 次の設例を用いて、飲食業を行っている法人が店舗を移転した場合の償却資産申告書記載例を示します。

 株式会社ITAMIは、兵庫県伊丹市○○1-2-3に所在する店舗で飲食業を行っていたが、令和5年9月29日にその店舗を廃止し、令和5年9月30日から兵庫県宝塚市○○町4-5-6へ店舗を移転(開設)した。
 令和6年1月26日に、令和6年度償却資産申告書を伊丹市と宝塚市に提出した。

 旧店舗の所在地の伊丹市には、償却資産申告書の「備考」欄(下図の赤枠内)に必要事項を記入して、申告書だけを提出します。
 種類別明細書(増加資産・全資産)は提出する必要はありません(ただし、これは兵庫県伊丹市の例であって、市区町村によっては種類別明細書の提出も求められることがあります)。

 新店舗の所在地の宝塚市には、償却資産申告書と種類別明細書(増加資産・全資産)を提出します。
 償却資産申告書の書き方のポイントは、次のとおりです。

(1) 伊丹市の申告書に記載されている「前年前に取得したもの(イ)」欄の金額を、宝塚市の申告書の「前年中に取得したもの(ハ)」欄に転記します。下図記載例では令和5年1月2日以降に取得した償却資産が無いことを前提としていますが、もし取得した償却資産があればその金額も加算します。

(2) 申告書の「異動事項」欄に異動日の日付を記入し、該当項目を〇で囲みます。今回はア~オに該当する項目がありませんので、「備考」欄に伊丹市より転入と記載します。

 種類別明細書(増加資産・全資産)の書き方のポイントは、次のとおりです。

(1) 「資産の種類」、「資産の名称等」、「数量」、「取得年月」、「取得価額」、「耐用年数」の各欄は、伊丹市の種類別明細書(増加資産・全資産)に記載されている内容を転記します。
 「増加事由」欄は3(移動による受け入れ)を〇で囲み、「摘要」欄に伊丹市よりと記入します。

(2) もし令和5年1月2日以降に取得した償却資産がある場合は、その取得の記入をします。


 

登記簿上の名目本店に均等割はかかるのか?(異動届の記載例あり)

1.名目本店とは?

 法人を設立する際に、代表者の自宅を法人の本店として登記し、事業は本店所在地とは別の場所に設けた店舗で行うことがあります
 本店と店舗の所在地が同一市内(例えばA市とします)にあれば、法人市民税の均等割は本店と店舗が所在するA市に対して納付します。

 しかし、本店の所在地はそのままで、店舗だけを他の市に移転した場合は、均等割は本店と店舗の両方の所在地に対して納付するのでしょうか?
 例えば、代表者の自宅を本店登記地としてA市に残し、店舗だけをB市に移転した場合は、A市とB市の両方に均等割を納付するのでしょうか?

 本店でも事業を行っているのであれば、本店と店舗が所在するA市とB市に対して均等割を納付しなければなりませんが、本店で事業を行っていない場合は、本店が所在するA市に対して均等割を納付する必要はありません。このような登記簿上のみの本店のことを「名目本店」といいます

 もう少し具体的に言うと、例えば飲食業を行う法人が、代表者の自宅が所在するA市を本店登記地として残したまま店舗だけをB市に移転した場合は、その本店で事業活動(飲食業)を行っていないのであれば、その本店は登記簿上の「名目本店」に該当し、A市に均等割を納める必要はありません。

 名目本店に均等割はかかりませんが、店舗を移転した場合はA市とB市に異動届を提出しなければなりません。

※ 関連記事:「令和6年10月1日から登記申請時に社長の住所を非公開にできます

2.異動届の記載例

 次の設例によって、名目本店の所在地と店舗の移転先に提出する異動届の記載について確認します。

 飲食業を行う株式会社ITAMIは、代表者の自宅がある伊丹市○○1-2-3を本店所在地として登記している。
 本店は登記簿上の名目本店であり、営業は伊丹市△△7-8-9にある店舗で行っている。
 同社は令和5年11月29日に伊丹市△△7-8-9に所在する店舗を廃止し、令和5年12月5日に宝塚市○○町4-5-6へ店舗を移転(開設)した。
 これら店舗の移転に関する異動届を、令和5年12月12日に伊丹市と宝塚市へ提出し、伊丹市と宝塚市を管轄する兵庫県阪神北県税事務所にも同様の異動届を提出した(県税事務所への異動届は記載例省略)。
 なお、登記を伴う異動ではないことから、本店所在地の伊丹市を管轄する伊丹税務署へは異動届を提出していない。

・代表者の自宅の所在地:兵庫県伊丹市〇〇1-2-3
・名目本店の所在地:兵庫県伊丹市〇〇1-2-3
・店舗の元々の所在地:兵庫県伊丹市△△7-8-9
・移転した店舗の所在地:兵庫県宝塚市○○町4-5-6

 上記設例における伊丹市への異動届の記載例は、次のとおりです。異動届の備考欄に、登記簿上の本店が名目本店であり、事業活動を行っていない旨を記載します。

 宝塚市への異動届の記載例は、次のとおりです。登記簿謄本(履歴事項全部証明書)の写しと定款の写しを異動届に添付します。

パート・アルバイトの税制上と社会保険制度上の年収の壁

 年末が近づいてくると、パートやアルバイトで働く人の中には、ある一定の年収を超えないように就業調整をする人が出てきます。
 例えば、年収103万円を超えると配偶者控除や扶養控除の対象から外れるため、労働時間を抑制して103万円というラインを超えないようにします。
 この103万円というラインのことを一般に「年収の壁」と呼びますが、年収の壁は103万円だけではありません。
 以下においては、パートやアルバイトで働く給与所得者を前提として、税制上と社会保険制度上の年収の壁について確認します。

1.100万円の壁(住民税)

 年収の壁としてまず直面するのは、住民税における100万円の壁です。給与収入が年間で100万円を超えると住民税がかかります(兵庫県宝塚市や西宮市の場合)。
 住民税は、所得金額に応じて課税される「所得割と、定額で課税される「均等割」から成りますが、住んでいる地域や家族構成によって住民税が非課税となる所得金額は異なります。
 例えば、宝塚市で均等割が非課税となる所得は、次の算式で算出します。

 35万円×(同一生計配偶者+扶養親族数+本人)+10万円+21万円(同一生計配偶者または扶養親族を有する場合のみ)

 単身の場合は、35万円×1+10万円=45万円が非課税となる所得であり、給与収入に置き換えると100万円(45万円+給与所得控除55万円)となります。
 詳しくは本ブログ記事「住民税非課税世帯とは?」をご参照ください。

2.103万円の壁(所得税)

 年収の壁として広く一般に認識されているのは、所得税における103万円の壁です。
 配偶者控除や扶養控除の対象となるには合計所得金額が48万円以下であることが必要ですが、年収が103万円であれば、給与収入103万円-給与所得控除55万円=48万円となるので、配偶者控除や扶養控除の対象となります。
 また、年収が103万円であれば、給与収入103万円-給与所得控除55万円-基礎控除48万円=0円となるので本人にも所得税はかかりません。

3.106万円の壁(社会保険)

 社会保険制度上の年収の壁として、106万円の壁があります。
 ①従業員が101人以上(2024(令和6)年10月からは51人以上)、②週の労働時間が20時間以上、③月収8.8万円以上(年収106万円以上)、④2か月を超える雇用の見込、⑤学生でない、といった条件を満たす場合は、パートやアルバイト従業員が自ら社会保険被保険者となり社会保険の扶養から外れます(関連記事「従業員51人以上の会社で働くパート・アルバイトの社会保険加入義務(令和6年10月1日~)」)。

4.130万円の壁(社会保険)

 所得税における103万円の壁と同様に広く一般に認識されているのが、社会保険における130万円の壁です。
 130万円の壁とは、社会保険被保険者である給与所得者(例えば夫)が扶養する者(例えば妻)については、夫が負担する社会保険料のみで妻の健康保険料及び国民年金保険料まで賄われるという年収の分岐点のことをいいます。
 従業員が101人以上(2024(令和6)年10月からは51人以上)の企業では106万円、それより規模の小さい企業では130万円が年収の壁となっています(関連記事「年収130万円以上となっても社会保険の扶養のまま働ける?」)。

5.150万円の壁(所得税)

 年収103万円を超えると配偶者控除の対象から外れますが(上記2)、年収150万円以下であれば、配偶者特別控除は満額の38万円が適用されます(ただし、給与所得者の合計所得金額が900万円以下の場合です)。
 年収150万円を超えると、段階的に配偶者特別控除が減っていきます。

6.180万円の壁(社会保険)

 意外と見落とされやすいのが、社会保険における180万円の壁です。
 60歳以上や障がい者の方は、年収130万円ではなく年収180万円までは社会保険の扶養に入ることができます(関連記事「扶養判定における遺族年金の取扱いは所得税と社会保険で異なる!」)。

7.201万円の壁(所得税)

 年収150万円を超えると段階的に配偶者特別控除が減っていきますが(上記5)、年収201万円を超えると配偶者特別控除はゼロとなります。
 201万円の壁とは、配偶者特別控除が適用されるか否かの年収の分岐点のことをいいます。

海外転勤者の税金と社会保険

1.国外転出届により国内住所がなくなる

 1年以上の予定で海外転勤となる場合は、居住している自治体に国外転出届を提出します。この届出により国内に住所はなくなりますが、国内に住所がなくなることで、住所を基に課される税金や社会保険の扱いも変わってきます。

※ 国外に居住することとなった者は、国外における在留期間が契約等によりあらかじめ1年未満であることが明らかであると認められる場合を除き、「国外において継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有する者」として、非居住者として取り扱われます。

2.非居住者の所得税・住民税

 国内に住所がなくなると、所得税法上の納税義務者区分は非居住者となります。
 非居住者は、給与以外の所得がなければ日本での所得税の課税はなく、勤務先国での税法に従った課税となります(駐在期間中の自宅を他人用の賃貸に出すなど、給与以外の日本国内源泉所得がある場合は、日本での確定申告が必要となることもあります)。

 個人住民税は、その年の1月1日時点で市町村(都道府県)に住所がある者に対して課税されます。そのため、住所がなくなった翌年からは、帰国して住所を持つこととなるまで、住民税は課されないことになります。

※ 非居住者(内国法人の役員等一定の者を除きます)の国外勤務に係る給与が、非居住者の国内口座に振り込まれている場合でも、振込額の全額が日本での課税対象とはなりません。日本での課税対象となるものは、非居住者が支払を受ける給与のうち国内勤務に係る給与です。

3.非居住者の社会保険

 赴任前の国内会社から継続して国内払い給与があれば、海外赴任中も各種社会保険(健康保険、厚生年金保険、雇用保険など)の被保険者資格は継続となります
 厚生年金につき、赴任先国と日本との間で年金協定があれば、2つの国での二重払いを回避できます。

 健康保険が継続していると、海外赴任中に急な病気やけがなどによりやむを得ず現地の医療機関で診療等を受けた場合に、申請により一部医療費の払い戻しを受けられる海外療養費制度が使えます。

 一方、雇用主が駐在先の現地法人となる場合には、現在の日本での被保険者資格を喪失することになります。その場合は厚生年金から国民年金への切り替えや健康保険の任意継続などの手続きが必要となります。

 国民年金は、日本国籍者であれば、海外居住でも任意加入できます。国民年金に任意加入する目的としては、年金をもらう条件として必要な加入期間を充足させることと将来もらえる年金額を減らさないためなどです。
 なお、海外在住者に国民健康保険の任意加入制度はありません。

※ 健康保険および厚生年金保険は、適用事業所に勤務する限り、国内における住所の有無を問わず加入します。なお、社会保障協定を結んでいる国で働く場合、外国の社会保障制度の加入が免除される場合があります。