固定資産税・不動産取得税の免税点の引き上げ(令和8年度税制改正)

 2026(令和8)年度税制改正で、固定資産税と不動産取得税の免税点が引き上げられています。
 以下では、改正前と改正後の免税点について確認します。

1.固定資産税の免税点

 固定資産税の免税点の見直しは、1991(平成3)年以来となります。

 固定資産税の課税対象(課税客体)は土地、家屋、償却資産ですが、今回の税制改正では、家屋に係る免税点が30万円(改正前は20万円)に、償却資産に係る免税点が180万円(改正前は150万円)に引き上げられています。

 土地に係る免税点については、1991(平成3)年よりも地価が下落していることから、従前の30万円で据え置きとなっています。

 改正前と改正後の固定資産税の免税点は、次のとおりです。改正後の免税点は、2027(令和9)年度以後の年度分の固定資産税について適用されます。

固定資産税の課税対象 改正前 改正後
土地 30万円 30万円
家屋 20万円 30万円
償却資産 150万円 180万円

※ 償却資産税に関連する参考記事は、次のとおりです。
・「償却資産税の申告対象となる資産とは?
・「償却資産の申告で迷いやすいケース
・「家屋と一体の建築設備は家屋と償却資産のどちらに該当するか?
・「事務所・店舗等を移転した場合の償却資産申告書の記載例
・「償却資産申告書の修正方法(修正申告)

2.不動産取得税の免税点

 不動産取得税の免税点の見直しは、1973(昭和48)年以来となります。

 不動産取得税の課税対象は土地と家屋です。不動産取得税は、土地や家屋の購入、贈与、家屋の建築などで不動産を取得(相続などの場合は除く)した際に、取得した人に対して課される税金です。

 今回の税制改正で、不動産取得税の免税点は、土地に係る免税点が16万円(改正前は10万円)に、家屋に係る免税点のうち建築に係るもの(建築分)は66万円(改正前は23万円)に、その他のもの(承継分:建築以外で取得)は34万円(改正前は12万円)に引き上げられています。

 改正前と改正後の不動産取得税の免税点は次のとおりです。改正後の免税点は、2026(令和8)年度以後の年度分の不動産取得税について適用されます。

不動産取得税の課税対象 改正前 改正後
土地 10万円 16万円
家屋(建築分) 23万円 66万円
家屋(承継分) 12万円 34万円

令和8年度税制改正で年収の壁はこのように変わった!

 2026(令和8)年度税制改正による所得税の基礎控除や給与所得控除の引き上げに伴い、配偶者控除や扶養控除などの所得要件も見直されています※。

 以下では、令和8年度税制改正を踏まえて、令和8年分と令和9年分の給与・賞与について適用される年収の壁について確認します。

※ 令和8年度税制改正の内容については、「基礎控除・給与所得控除の引き上げと源泉徴収事務・年収の壁への影響(令和8年度税制改正)」、「扶養控除・配偶者(特別)控除・ひとり親控除・特定親族特別控除の所得要件の見直し(令和8年度税制改正)」をご参照ください。

1.106万円の壁(社会保険)

 令和8年度税制改正は、以下の社会保険制度上の年収の壁である106万円(105.6万円)の壁には影響ありません。

 下記①~⑤の条件を満たす場合は、パートやアルバイトで働く人は社会保険の扶養から外れ、自ら国民健康保険・国民年金の被保険者となり保険料を負担することになります(関連記事「従業員51人以上の会社で働くパート・アルバイトの社会保険加入義務(令和6年10月1日~)」)。

 ①従業員が51人以上の会社で働いている(2024(令和6)年10月以降)※1
 ②週の労働時間が20時間以上30時間未満である
 ③月収8.8万円以上(年収106万円以上)である※2
 ④2か月を超える雇用の見込がある
 ⑤学生でない(休学中・夜間学生は除く)

※1 2025(令和7)年6月13日に成立した年金制度改正法により、2027(令和9)年10月から、「企業規模要件」が段階的に撤廃されます。

※2 2025(令和7)年6月13日に成立した年金制度改正法により、法律の公布から3年以内に「賃金要件」は撤廃されます。2026(令和8)年10月に賃金要件は撤廃される予定ですので、「106万円の壁」はなくなる見込みです。

2.119万円の壁(住民税)

 令和8年度税制改正で給与所得控除の最低保障額が65万円から74万円に引き上げられたことにより、住民税が非課税となる年収が119万円に変わりました(令和9年度・10年度の住民税について適用)。

 住民税は、所得金額に応じて課税される「所得割と、定額で課税される「均等割」から成りますが、住んでいる地域や家族構成によって住民税が非課税となる所得金額は異なります。

 例えば、兵庫県宝塚市で均等割が非課税となる所得は、次の算式で算出します。

 35万円×(同一生計配偶者+扶養親族数+本人)+10万円+21万円(同一生計配偶者または扶養親族を有する場合のみ)

 単身の場合は、35万円×1+10万円=45万円が非課税となる所得であり、給与収入に置き換えると119万円(45万円+給与所得控除74万円)となります。

 したがって、年収が119万円を超えると住民税がかかります(自治体によって異なりますのでご注意ください)。

3.130万円の壁(社会保険)

 令和8年度税制改正は、上記1と同様に、社会保険制度上の年収の壁である130万円の壁には影響ありません。

 130万円の壁とは、本人の年収が130万円以上になると、パートやアルバイトで働く人が自ら国民健康保険・国民年金の被保険者となり、社会保険の扶養から外れる年収ラインのことをいいます。

 なお、年収130万円以上であるかどうかを判定する際の年収の取扱いが、2026(令和8)年4月1日から変わっています。詳細は、「令和8年4月1日から「130万円の壁」の年間収入は労働契約の内容で判定されます」をご参照ください。

4.136万円の壁(所得税:配偶者控除・扶養控除)

 令和8年度税制改正で基礎控除と給与所得控除の最低保障額が引き上げられたことにより、配偶者控除と扶養控除を適用できる年収の壁も136万円に変わっています。

 改正により、配偶者控除や扶養控除の対象となる合計所得金額が58万円以下から62万円以下に変わりましたので、配偶者や扶養親族の年収が136万円以下であれば、配偶者控除や扶養控除の対象となります(合計所得金額62万円+給与所得控除74万円=給与収入136万円)。

5.150万円の壁(社会保険)

 2025(令和7)年度税制改正によって、所得税における19歳以上23歳未満の扶養親族(以下「大学生年代」といいます)の特定扶養控除の要件の見直し等が行われたことを踏まえ、社会保険制度についても、扶養認定日が2025(令和7)年10月1日以降で、扶養認定を受ける人(被扶養者)が19歳以上23歳未満の場合(被保険者の配偶者を除く)における年収の壁が「年間収入150万円未満」に変わりました

 2026(令和8)年度税制改正が行われましたが、現時点でこの150万円の壁について変更はありません。

 上記3でみたように、年収が130万円以上になると社会保険の扶養から外れますが、大学生年代については、年収が130万円以上となっても150万円未満であれば社会保険の扶養に入ることができます。

 年収が150万円以上になると、大学生年代が自ら国民健康保険・国民年金の被保険者となり保険料を負担することになります。

 150万円の壁とは、社会保険の扶養に入れるかどうかの年収の分岐点のことをいいます。

※ 社会保険の150万円の壁については、「令和7年10月1日から19歳以上23歳未満の人の健康保険の被扶養者認定基準が年収150万円未満に変わります」をご参照ください。

6.159万円の壁(所得税:特定親族特別控除)

 上記4でみたように、扶養親族の年収が136万円を超えると扶養控除の対象から外れますので、年齢19歳以上23歳未満の扶養親族について、63万円の扶養控除を適用することができません。

 しかし、大学生年代については、年収が136万円を超えても特定親族特別控除を適用することができ、年収が159万円以下であれば、特定親族特別控除について満額の63万円を適用することができます。

 さらに、大学生年代の年収が159万円を超えても197万円以下であれば、納税者本人は段階的に逓減する特定親族特別控除を受けることができます。

7.163万円の壁(所得税:勤労学生控除)

 令和8年度税制改正で基礎控除と給与所得控除の最低保障額が引き上げられたことにより、勤労学生本人が受けられる勤労学生控除の合計所得金額の要件が、従前の85万円以下から89万円以下に変わりました。

 したがって、勤労学生本人の給与収入が163万円以下であれば、勤労学生控除27万円を受けることができます(89万円+給与所得控除74万円=給与収入163万円)。

8.169万円の壁(所得税:配偶者特別控除)

 上記4でみたように、配偶者の年収が136万円を超えると配偶者控除の対象から外れますが、配偶者特別控除を適用することができます。
 この配偶者特別控除について満額の38万円を適用できる年収の壁が、従前の160万円から169万円に変わりました。

 満額の38万円を適用できる合計所得金額の上限は従前どおりの95万円ですが、給与所得控除最低保障額が74万円に引き上げられたことにより、配偶者の年収が169万円以下であれば、納税者本人は配偶者特別控除38万円の適用を受けることができます(ただし、納税者の合計所得金額が900万円以下の場合です)。

 また、配偶者の年収が169万円を超えても207万円以下であれば、納税者本人は段階的に逓減する配偶者特別控除を受けることができます。

9.178万円の壁(所得税)

 税制改正で基礎控除と給与所得控除の最低保障額が引き上げられたことにより、所得税が非課税となる年収が178万円に変わりました。

 2025(令和7年)度税制改正で、所得税がかからない年収の壁として広く知られていた103万円の壁が160万円の壁に変わりましたが、さらに2026(令和8)年度税制改正により178万円の壁に変わりました。

 給与所得者の年収が178万円以下であれば、給与所得者本人に所得税はかかりません(給与所得控除74万円+基礎控除104万円=給与収入178万円)

10.197万円の壁(所得税:特定親族特別控除)

 大学生年代の年収が159万円を超えると段階的に特定親族特別控除が減っていき、年収197万円を超えると特定親族特別控除はゼロとなります(上記6)。

 197万円の壁とは、特定親族特別控除が適用されるか否かの年収の分岐点のことをいいます。

11.207万円の壁(所得税:配偶者特別控除)

 配偶者の年収が169万円を超えると段階的に配偶者特別控除が減っていき、年収207万円を超えると配偶者特別控除はゼロとなります(上記8)。

 207万円の壁とは、配偶者特別控除が適用されるか否かの年収の分岐点のことをいいます。

基礎控除・給与所得控除の引き上げと源泉徴収事務・年収の壁への影響(令和8年度税制改正)

 2025(令和7)年度税制改正において、所得税の基礎控除と給与所得控除の引き上げが行われましたが、2026(令和8)年度税制改正において、さらにその範囲が拡大されました。

 この改正は、原則として2026(令和8)年分以後の所得税から適用されます。

 以下では、基礎控除と給与所得控除の引き上げの内容と、これらの引き上げが2026(令和8)年の源泉徴収事務や、いわゆる年収の壁に与える影響について確認します

※ 年収の壁については、「令和8年度税制改正で年収の壁はこのように変わった!」をご参照ください。

1.基礎控除の引き上げ

 令和8年度税制改正により、合計所得金額が2,350万円以下である個人の基礎控除額が58万円から4万円引き上げられ、62万円となりました。

 さらに、令和8年分および令和9年分に限り、基礎控除の特例(時限措置)として、合計所得金額に応じて基礎控除額の上乗せが行われています。

 なお、基礎控除の改正は所得税のみの改正であり、住民税の基礎控除額は従前通りの43万円です。

 改正後の所得税の基礎控除額は、下表のとおりです。

合計所得金額
※カッコ内は令和8・9年分の収入が給与だけの場合の収入金額※2
基礎控除額
改正前 令和8・9年分 令和10年分以後
132万円以下
(206万円以下)
95万円 104万円※1 99万円※1
132万円超~336万円以下
(206万円超~475万1,999円以下)
88万円 62万円
336万円超~489万円以下
(475万1,999円超~665万5,556万円以下)
68万円
489万円超~655万円以下
(665万5,556円超~850万円以下)
63万円 67万円※1
655万円超~2,350万円以下
(850万円超~2,545万円以下)
58万円 62万円
2,350万円超~2,400万円以下
(2,545万円超~2,595万円以下)
48万円※3
2,400万円超~2,450万円以下
(2,595万円超~2,645万円以下)
32万円※3
2,450万円超~2,500万円以下
(2,645万円超~2,695万円以下)
16万円※3
2,500万円超
(2,695万円超)
0円※3

※1 基礎控除の特例として、62万円にそれぞれ42万円、5万円、37万円を加算した金額となります(この加算は居住者についてのみ適用があります)。
※2 特定支出控除や所得金額調整控除の適用がある場合は、表の金額とは異なります。
※3 合計所得金額2,350万円超の場合の基礎控除額に改正はありません(合計所得金額については、「『合計所得金額』『総所得金額』『総所得金額等』の違いとは?」をご参照ください)。

2.給与所得控除の引き上げ

 令和8年度税制改正により、給与所得控除額の最低保障額が65万円から69万円に引き上げられ、かつ、令和8年分および令和9年分に限り5万円が上乗せされます。

 給与所得控除の改正は、所得税だけではなく住民税にも適用されます(令和8年分以後の所得税及び令和9年度以後の住民税)。

 改正後の給与所得控除額は、下表のとおりです。

給与の収入金額(A) 改正前 令和8・9年分 令和10年分以後
190万円以下 65万円 74万円 A×30%+8万円(69万円未満となる場合は69万円)
190万円超~220万円以下 A×30%+8万円
220万円超~360万円以下 A×30%+8万円 同左 同左
360万円超~660万円以下 A×20%+44万円
660万円超~850万円以下 A×10%+110万円
850万円超 195万円(上限)

 令和8年分および令和9年分の給与等の収入金額が69万1,000円以上220万円未満である場合には、その給与等に係る給与所得の金額については、上表にかかわらず、次の金額とすることとされました。

給与等の収入金額 69万1,000円以上74万1,000円未満 74万1,000円以上219万1,000円未満 219万1,000円以上219万3,000円未満 219万3,000円以上219万6,000円未満 219万6,000円以上220万円未満
給与所得の金額 なし その収入金額-74万円 145万1,000円 145万3,000円 145万6,000円

 なお、令和8年度税制改正により、基礎控除額と給与所得控除額は、物価上昇に連動して2年ごとに見直されることが想定されています。

3.源泉徴収事務と年収の壁への影響

 上記1及び2の税制改正は、原則として、2026(令和8)年分以後の所得税及び2027(令和9)年度以後の住民税について適用されます。

 そのため、2026(令和8)年12月に行う年末調整など、2026(令和8)年12月以後の源泉徴収事務に変更が生じますが、11月までの給与の源泉徴収事務に変更は生じません。

 したがって、2026(令和8)年分の給与の源泉徴収事務においては、2026(令和8)年12月に行う年末調整の際に、改正後の基礎控除額と「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」に基づいて1年間の税額を計算し、改正前の「源泉徴収税額表」によって計算した源泉徴収税額との精算を行います。

 なお、基礎控除と給与所得控除の改正により、所得税が課税されない給与収入(いわゆる年収の壁)が、令和7年分の160万円(基礎控除95万円+給与所得控除65万円)から、令和8年分は178万円(基礎控除104万円+給与所得控除74万円)に変わります。

 また、給与所得控除の改正により、住民税が課税されない給与収入については、令和8年度の110万円(45万円+給与所得控除65万円)から、令和9年度は119万円(45万円+給与所得控除74万円)に変わります(各自治体によって異なります)。

 これらの年収の壁の詳細については、「令和8年度税制改正で年収の壁はこのように変わった!」をご参照ください。

割賦購入した資産やリースで借りている資産は誰が償却資産の申告をすべきか?

 償却資産の申告は、賦課期日(毎年1月1日)現在において償却資産を所有している人が行います。
 しかし、誰が償却資産の申告をすべきか迷うケースもありますので、今回はこの点について確認します。

1.割賦販売契約で購入した償却資産

 償却資産の申告は、その償却資産の所有者が行います。通常は、償却資産を購入したら、購入者がその償却資産を所有することになりますので、償却資産の申告は購入者が行います。

 では、割賦販売契約により購入した償却資産の申告は、購入者と販売者のどちらがするのでしょうか?

 割賦販売契約においては、販売代金が完済されるまで所有権は売主に留保されます。つまり、購入者が代金を分割で支払っている間は、所有権は販売者にありますので、償却資産の所有者は販売者ということになります。

 償却資産の申告義務が所有者にあることからすると、割賦販売契約で売買した償却資産の申告は販売者がしなければならないように思えます。

 しかし、割賦販売契約のような、いわゆる「所有権留保付割賦販売」の資産については、原則として購入者が償却資産の申告を行うこととなっていますのでご注意ください。

2.リース契約で賃借している償却資産

 償却資産の申告は、その償却資産の所有者が行います。償却資産を他に賃貸している場合でも、その所有権は貸主にありますから、償却資産の申告は貸主が行います。

 では、リース契約により賃貸借している償却資産の申告は、貸主と借主のどちらがするのでしょうか?

 この点については、リースの契約形態により取扱いが異なります。

 例えば、オペレーティング・リースのように、リース期間満了後に貸主(リース会社)に機械等を返還するというリース取引の場合は、貸主が償却資産の申告を行う必要があります。

  また、所有権移転外ファイナンス・リースは、リース期間中もリース期間満了後も貸主に所有権がありますので、貸主が償却資産の申告を行う必要があります

 ただし、リース期間満了後に無償又はそれに近い価格で譲渡することとなっているなど、実質的に所有権留保付割賦販売とみられるようなもの(所有権移転ファイナンス・リース)については、借主が償却資産の申告を行う必要がありますのでご注意ください。

※ 所有権移転外ファイナンス・リース取引において、貸主が所有するリース資産で取得価額が20万円未満の償却資産は、申告の対象になりません。

償却資産の申告で迷いやすいケース

 償却資産とは、土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産で、所得税法又は法人税法の所得の計算上減価償却の対象となる資産です。

 毎年1月1日現在において償却資産を所有している法人や個人事業者は、1月31日までにその償却資産を市役所等に申告しなければなりません。

 しかし、実際に申告書を作成する際には、どの資産が申告対象であるのか判断に迷うケースもありますので、以下では具体例を挙げて、償却資産の申告対象となるかどうかについて確認します。

※ 償却資産の申告対象についての基本的な考え方については、「償却資産税の申告対象となる資産とは?」をご参照ください。

1.自己所有建物に取り付けた内装など

 テナント等の借家人が、その建物(借家)に内装等の附帯設備を取り付けた場合は、建物本体との附合の有無及び賃貸借契約書の内容のいかんにかかわらず、テナント等の借家人がその附帯設備を償却資産として申告する必要があります。

 では、自己所有の建物に内装等の附帯設備等を取り付けた場合は、その附帯設備は償却資産の申告対象となるのでしょうか?

 建物が自己所有の場合、一般的には、建物に取り付けられ建物と構造上一体となって建物の効用を高めるものについては建物の一部として取り扱われますので、その附帯設備は償却資産の申告対象ではありません。

 逆に、取り外しが容易で、別の場所に自在に移動できるものや、建物と一体となっていないものは、建物とは別個に償却資産として取り扱われますので、償却資産の申告対象となります。
 
  また、特定の生産用や業務用の設備は、建物自体の効用を高めることとは関係しないため、償却資産の申告対象となります。

 なお、単に移動を防止する程度に建物に取り付けたものは、償却資産の申告対象となります。

※ 参考記事:「家屋と一体の建築設備は家屋と償却資産のどちらに該当するか?

2.自動車に取り付けたカーナビ・カーステレオなど

 自動車税や軽自動車税の課税対象となる乗用車やトラック(以下「自動車」といいます)は、償却資産の申告対象ではありません。

 では、自動車に取り付けたカーナビやカーステレオなどは、償却資産の申告対象となるのでしょうか?

 自己所有の車に取り付けた自己所有のカーナビ、カーステレオなどについては、性能、型式、構造等が自動車用として特別に設計され、自動車固有の装置と認められるものであれば、自動車と一体をなしているものと考えられるため、償却資産の申告対象とはなりません。

  ただし、ポータブルナビゲーションのように、その使用形態が持ち運び自由な携帯型として使用することが常態となっている機器については、自動車と一体をなしているとは考えられませんので、償却資産の申告対象となります。

 また、自動車の所有者と車載機器の所有者が異なる場合は、その機器は自動車そのものと一体をなしているとは認められないため、償却資産の申告対象となります。

3.家庭用にも事業用にも使用している資産

 償却資産の申告対象となるのは事業用の資産です。例えば、飲食店の厨房に設置されている電気冷蔵庫は、申告対象となります。

 では、家庭用にも事業用にも使用している電気冷蔵庫は、償却資産の申告対象となるのでしょうか?

 家庭用にも事業用にも使用される電気冷蔵庫は、事業の用に供することができる資産であるため、その電気冷蔵庫全体が償却資産の申告対象になります。

 なお、家庭用・事業用の両方に使用している場合は、資産全体の取得価格を申告する必要があります。
 1つの資産を課税される部分と課税されない部分とに分けることはできませんので、ご注意ください。

ふるさと納税の寄附金控除の計算方法とよくある誤解(令和7年度個人住民税)

 ふるさと納税は、「生まれ育ったふるさとに貢献できる制度」、「自分の意思で応援したい自治体を選ぶことができる制度」として創設されました。

 「納税」という言葉がついていますが、実際には、都道府県、市区町村への「寄附」のことをいい、ふるさと納税の限度額をきちんと把握しておけば、ふるさと納税額から2,000円を除いた全額が寄附金控除の対象となります。

 所得税からの寄附金控除は、ふるさと納税を行った年の所得税から控除され、個人住民税からの寄附金控除は、ふるさと納税を行った翌年度の個人住民税から控除されます。

 以下では、個人住民税におけるふるさと納税の寄附金控除の計算方法を確認し、ふるさと納税に関するよくある誤解について解説します。

1.個人住民税からの控除額の計算方法

 個人住民税からの控除には「基本分」と「特例分」があり、それぞれ次のように計算します。

① 個人住民税からの控除(基本分)=(ふるさと納税額-2,000円)×10%
 控除の基本分は、上記①の計算式で計算します。なお、控除の対象となるふるさと納税額は、総所得金額等の30%が上限です。
② 個人住民税からの控除(特例分)=(ふるさと納税額-2,000円)×個人住民税の課税総所得金額から人的控除差調整額を控除した金額に応じた割合
 控除の特例分は、この特例分が個人住民税所得割額の2割を超えない場合は、上記②の計算式で計算します。なお、「個人住民税の課税総所得金額から人的控除差調整額を控除した金額に応じた割合」は、下表のとおりです。
課税総所得金額から人的控除差調整額を控除した金額 割合
0円以上195万円以下 84.895%
195万円超330万円以下 79.79%
330万円超695万円以下 69.58%
695万円超900万円以下 66.517%
900万円超1,800万円以下 56.307%
1,800万円超4,000万円以下 49.16%
4,000万円超 44.055%
 この特例分が個人住民税所得割額の2割を超えない場合は、個人住民税からの控除額は①(基本分)と②(特例分)の合計額となります。
③ 住民税からの控除(特例分)=個人住民税所得割額×20%
 上記②で計算した特例分が個人住民税所得割額の2割を超える場合は、上記③の計算式で計算します。このときの個人住民税からの控除額は、①(基本分)と③(特例分)の合計額となります。

2.個人住民税からの控除額の計算例

 以下の説例で、個人住民税からの寄附金控除額を計算してみます。

・個人住民税の課税総所得金額:150万円(基礎控除43万円のみ適用あり)
・ふるさと納税額:2万5千円(ふるさと納税の限度額の範囲内)

① 個人住民税からの控除(基本分)=(25,000円-2,000円)×10%=2,300円
市民税分:2,300円×3/5=1,380円
県民税分:2,300円×2/5=920円

② 個人住民税からの控除(特例分)=(25,000円-2,000円)×84.895%=19,525.85円
市民税分:19,525.85円×3/5=11,715.51円≒11,716円(端数切り上げ)
県民税分:19,525.85円×2/5=7,810.34円≒7,811円(端数切り上げ)

 したがって、個人住民税額からの寄附金控除の合計額は、①+②=21,827円(=1,380円+920円+11,716円+7,811円)となります。

3.ふるさと納税のよくある誤解

 ふるさと納税の個人住民税からの寄附金控除額は上記のように計算しますが、この寄附金控除額に関して、納税者の方から次のような質問をよく受けます。

(1) ふるさと納税から2千円を引いた全額が住民税から控除されていないのはなぜか?

 例えば、上記2の計算例では、25,000円のふるさと納税に対して、個人住民税から控除された額は21,827円となっています。このときに次の質問をよく受けます。

 「ふるさと納税額25,000円から自己負担額の2,000円を引いた23,000円が個人住民税から控除されるはずなのに21,827円しか控除されていないのはなぜですか?」

 これに対する回答は、次のとおりです。

 「ふるさと納税は、限度額の範囲内で行う限り、所得税(復興特別所得税を含む)と個人住民税を合わせて23,000円の控除となるようになっています。

 所得税から(25,000円-2,000円)×所得税率5%=1,150円、復興特別所得税から(25,000円-2,000円)×0.1021%≒23円、合計1,173円が控除されていますので、個人住民税からの控除額21,827円と合わせると23,000円になります。」

(2) ワンストップ特例を受けたら所得税から寄付金控除が受けられない?

 給与所得しかない納税者の方で医療費控除などの所得控除を受けない方は、ふるさと納税のワンストップ特例を適用することができます。

 この場合、所得税の確定申告をする必要はないのですが、確定申告をしないということは、個人住民税ではふるさと納税の寄附金控除を受けることができても所得税では寄附金控除を受けられないのではないか?という疑問を持つ納税者の方もいます。

 確かに、ふるさと納税のワンストップ特例を適用した場合は、所得税で寄附金控除を受けることはありません。
 ただし、この場合は、個人住民税から(ふるさと納税額-2,000円)の全額が控除されます
(先の説例では25,000円-2,000円=23,000円が個人住民税から控除されます)。

 ワンストップ特例を適用して損をするということはありませんので、ご安心ください。

不足額給付の続報-対象者判定のためのフローチャート

 兵庫県宝塚市では、2024(令和6)年8~10月に、定額減税しきれないと見込まれる方へ給付金(調整給付)が支給されました
 調整給付は2023(令和5)年の課税情報に基づき算定されていましたので、2024(令和6)年分所得税や定額減税の実績額が確定した際に、調整給付に不足が生じる方がいます。
 また、青色事業専従者など、税制度上定額減税の対象外であった方もいます。

 これらの方が定額減税を補足する給付金(不足額給付)の対象となるか否かについては、本ブログ記事「定額減税調整給付金(不足額給付)の対象となる人の具体例と給付額の計算例」、「所得税・住民税が非課税でも青色事業専従者等は定額減税調整給付金(不足額給付)の対象となる!」において詳細を記載しています。

 2025(令和7)年7月23日に、宝塚市のホームページにおいて不足額給付に関する情報が更新され、不足額給付の対象となるか否かを判定するためのフローチャート(下図)が公表されました。

出所:宝塚市ホームページ

 
 宝塚市では、不足額給付の対象者には、2025(令和7)年8月下旬に市から書面が送付されます
 申請受け付けは、2025(令和7)年9月頃から開始される予定です

 なお、不足額給付の対象者のうち、転入者(2024(令和6)年1月2日~2025(令和7)年1月1日に宝塚市へ転入した方)については、転入前の自治体で発行された調整給付支給要件確認書(調整給付額の算出根拠となる資料)を添えて、2025(令和7)年9月~10月末(予定)にご自身で申し出・申請を行う必要があります。

 転入者については、当初調整給付に関する情報を宝塚市で把握できず、対象者を特定できないことから宝塚市から通知書面などは送付されませんのでご注意ください。

 宝塚市における不足額給付の申請手続き等については、「不足額給付の申請受付開始時期と提出書類(兵庫県宝塚市の場合)」をご参照ください。

※ 2025(令和7)年9月1日に宝塚市のホームページが更新されました。それによると、8月29日に支給事前通知書(お知らせ)・確認書が発送され、9月1日~5日に順次お手元に届く予定とのことです。
 なお、一部の方については支給額の算定に時間を要しているため、9月中旬頃をめどに確認書が送付されるようです。
 黄色の封筒で届きますので、届き次第、内容の確認をしてください。

毎年7月10日は事務手続き期限の集中日

 毎年7月10日は、事務手続きの期限が集中します。代表的なものを挙げると、労働 保険(労災保険・雇用保険)の年度更新、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の算定基礎届、納期の特例(源泉所得税)、新年度の特別徴収住民税の納付開始などがあります。

 以下では、これらの手続きの概要について確認します。

1.労働保険の年度更新

 労災保険と雇用保険をあわせて労働保険といいます。

 労働保険の保険料は、前年4月1日から当年3月31日までの1年間を単位として計算し、その額はすべての労働者(雇用保険については被保険者)に支払われる賃金の総額※1に、その事業ごとに定められた保険料率を乗じて算定します※2

 事業主は、新年度の概算 保険料を納付するための申告・納付と、前年度の保険料を精算するための確定保険料の申告・納付の手続きが必要です。これを年度更新といいます。

 この年度更新の手続きは、毎年6月1日から7月10日までの間(土日祝日を除く)に行わなければなりません。

※1 賃金の総額には、通勤手当等の交通費(非課税分、現物支給の定期代等)を含みます。

※2 2025(令和7)年度の保険料率については、「令和7年度の雇用保険料率が改定されます(労災保険料率・子ども子育て拠出金率は据え置き)」をご参照ください。

2.社会保険の算定基礎届

 健康保険と厚生年金保険をあわせて社会保険といいます。

 事業主は、社会保険の被保険者の実際の報酬と標準報酬月額との間に大きな差が生じないように、7月1日現在で使用している全被保険者の当年3か月間(4月、5月、6月)に支払った給与等を算定基礎届によって届出をする必要があります。

 このように、毎年1回標準報酬月額の見直しを行うことを定時決定といい、見直し後の標準報酬月額は、原則として当年9月から翌年8月までの各月に適用されます。

 算定基礎届(届出用紙)は、6月中旬以降に事業所あてに送付され、5月中旬頃までに届出された被保険者の氏名、生年月日、従前の標準報酬月額等が印字されています※3

 算定基礎届の提出期間は、毎年7月1日から7月10日まで(10日が土曜または日曜の場合は、翌営業日が提出期限)とされています※4

※3 定時決定は、7月1日現在で事業所に在籍している全被保険者(従業員・役員)を対象として行われる標準報酬月額の見直しであるため、6月30日以前に退職・退任した従業員・役員については定時決定の対象外となります。
 したがって、6月30日以前に退職・退任した従業員・役員の情報が印字されている場合には、算定基礎届の「備考」欄の「9 その他」欄に「退職・退任年月」を記入します。

※4 算定基礎届送付時に同封されている返信用封筒により事務センターへ郵送する場合は、7月1日より前に郵送すると事務センターに届かずに戻ってくることがあるようですので、算定基礎届は提出期間内に提出する必要があります。

3.納期の特例

 事業主は、源泉徴収した所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」といいます)を、原則として、給与などを実際に支払った月の翌月10日までに国に納めなければなりません。

 ただし、給与の支給人員が常時10人未満である事業主は、源泉徴収した所得税等を半年分まとめて納めることができる特例があります。これを納期の特例といいます※5

 この特例の適用を受けていると、その年の1月から6月までに源泉徴収した所得税等は7月10日、7月から12月までに源泉徴収した所得税等は翌年1月20日が、それぞれ納付期限となります。

 ただし、この特例の適用対象となるのは、給与や退職金から源泉徴収をした所得税等と、税理士、弁護士、司法書士などの一定の報酬から源泉徴収をした所得税等に限られています※6

※5 納期の特例については、「納期の特例の要件である「常時10人未満」とは?」、「納期の特例はいつから適用される?」、「納期の特例の要件に該当しなくなった場合の届出と納期限」をご参照ください。

※6 納期の特例の対象とならない外交員報酬などについては、報酬を支払った月の翌月10日までに、源泉徴収した所得税等を納めなければなりません(関連記事:「外交員報酬に係る源泉徴収税額の計算方法」、「ホステス等に支払う報酬・料金の源泉徴収税額の計算方法」、「セミナー講師料を支払った場合の源泉徴収」)。

4.特別徴収した新年度の住民税の納付開始

 特別徴収とは、毎月の給与から差し引いた個人住民税を、事業主(給与支払者)が従業員(納税義務者)に代わり納付する制度で、所得税等の源泉徴収と同じ仕組みのものです。

 特別徴収義務者である事業主は、従業員の給与から個人住民税を毎月天引きして、翌月10日までに納付しなければなりません。

 新年度の個人住民税は6月に支給する給与から特別徴収を開始し、その特別徴収した新年度の個人住民税は、7月10日までに納付しなければなりません。年度が変わって特別徴収する個人住民税の額が変わりますので、注意が必要です。

 なお、毎月納付する手間を減らす方法として、源泉徴収した所得税等と同様に、従業員が常時10人未満である事業主には納期を年2回とする納期の特例が個人住民税にも認められています。

 源泉徴収した所得税等の納期限は7月10日(1月~6月徴収分)と1月20日(7月~12月徴収分)ですが、個人住民税の納期限は6月10日(12月~5月徴収分)と12月10日(6月~11月徴収分)となり、所得税等と個人住民税では納期限が異なります※7

※7 個人住民税を毎月納付する手間を減らすには、納期の特例を受けることになりますが、所得税等と納期限がズレていますので、それを煩雑に感じる場合もあります。
 そのような場合は、1年分(当年6月分~翌年5月分)の納付書を持参して一括納付することができる市区町村もあります。
 特に届出は必要ありませんが、市区町村によって取扱いが異なりますので、事前に市区町村に相談・確認する必要があります。

個人住民税を普通徴収することが認められる場合とは?

 個人の都道府県民税と市区町村民税をあわせて一般に「個人住民税」といい、事業主(給与支払者)には、従業員の個人住民税を特別徴収することが義務付けられています。

 個人住民税の特別徴収とは、事業主が給与を支払う際に、所得税と同様に毎月の給与から個人住民税を天引きし、従業員に代わって毎月納付する制度です。

 事業主には個人住民税の特別徴収義務がありますので、事業主や従業員の希望により普通徴収(従業員自らが納付書で年4回に分けて納付すること)を選択することはできません。

 しかし、一定の要件に該当する場合は、個人住民税を普通徴収することも認められています。
 今回は、個人住民税の特別徴収制度の仕組みと普通徴収の要件について確認します。

1.特別徴収制度の仕組み

 個人住民税の特別徴収の事務の流れは、次のとおりです。

出所:兵庫県ホームページ「パンフレット」

(1) 給与支払報告書の提出(図表①)

 事業主は、毎年1月31日までに従業員が1月1日現在に居住している市町村に給与支払報告書を提出します。

(2) 特別徴収税額決定通知書の送付(図表③④)

 個人住民税の徴収期間は、6月から翌年5月までの12か月間です。毎年5月31日までに、従業員が居住している市町村から事業主あてに「特別徴収税額決定通知書(特別徴収義務者用・納税義務者用)」が送付されます
 この通知書に年税額と月割額が記載されていますので、6月に支給する給与から特別徴収(給与から天引き)を開始します。

納税義務者用の通知書には、通知した税額の算出根拠となる所得金額や所得控除の適用状況等が記載されています。
 これらの個人情報を保護するため、個人情報保護シールを貼付した状態で送付されますので、シールを貼付した状態で従業員に渡し、必ず従業員本人がシールをはがして内容を確認するようにしてください。

(3) 納期と納付方法(図表⑤⑥)
 
 事業主は給与から天引きした個人住民税を、翌月の10日までに市町村から送付される納付書により納付します。

 なお、従業員が常時10名未満の事業主は、市町村への申請により年12回の納期を年2回(第1回:12月10日、第2回:6月10日)とする「納期の特例」の適用を受けることができます。

2.普通徴収の要件と手続き

 原則として従業員の個人住民税は特別徴収しなければなりませんが、下記の要件に該当する従業員については、給与支払報告書を提出する際に「普通徴収切替理由書兼仕切紙」を添付することで、該当者の個人住民税を普通徴収とすることができます。

a.退職者または給与支払報告書を提出した年の5月31日までの退職予定者
b.給与支払額が少なく、個人住民税を特別徴収しきれない人
c.給与の支払が不定期(毎月支給されていない)な人
d.他の事業者から支払われる給与から特別徴収されている人(乙欄適用者)


 普通徴収とするための具体的な手続きは、上記のa.~d.に該当する従業員がいる場合、給与支払報告書提出時に「普通徴収切替理由書兼仕切紙」を添付のうえ、給与支払報告書個人別明細書摘要欄に略号(a~d)を記載します

 上記のa.~d.に該当する旨を申し出ない場合は、普通徴収の要件に該当するかどうかを市町村で確認できないため、特別徴収となります。

エルタックス(eLTAX)で提出する場合も、「普通徴収」欄へのチェックに加え、摘要欄に略号(a~d)を記載する必要があります。

出所:兵庫県ホームページ

令和7年度税制改正で年収の壁はこのように変わった!

 2025(令和7)年度税制改正において、物価上昇局面における税負担の調整や就業調整対策の観点から、所得税の基礎控除や給与所得控除の引き上げ、特定親族特別控除の創設等が行われました※。

 以下では、これらの税制改正により、従前からあった給与所得者の年収の壁がどのように変わったのかについて確認します(2026(令和8)年の年収の壁については、「令和8年度税制改正で年収の壁はこのように変わった!」をご参照ください)。

※ 令和7年度税制改正の内容については、「基礎控除・給与所得控除の引き上げと源泉徴収事務・年収の壁への影響(令和7年度税制改正)」、「特定親族特別控除の創設と源泉徴収事務への影響(令和7年度税制改正)」、「扶養親族等の所得要件・住宅借入金等特別控除・生命保険料控除の見直し(令和7年度税制改正)」をご参照ください。

1.110万円の壁(住民税)

 改正で給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられたことにより、住民税が非課税となる年収が、従前の100万円から110万円に変わりました。

 住民税は、所得金額に応じて課税される「所得割と、定額で課税される「均等割」から成りますが、住んでいる地域や家族構成によって住民税が非課税となる所得金額は異なります。

 例えば、兵庫県宝塚市で均等割が非課税となる所得は、次の算式で算出します。

 35万円×(同一生計配偶者+扶養親族数+本人)+10万円+21万円(同一生計配偶者または扶養親族を有する場合のみ)

 単身の場合は、35万円×1+10万円=45万円が非課税となる所得であり、給与収入に置き換えると110万円(45万円+給与所得控除65万円)となります。

2.123万円の壁(所得税)

 従前の103万円の壁は、年収の壁として広く一般に認識されていたものと思われます。

 改正で基礎控除と給与所得控除最低保障額がそれぞれ10万円ずつ引き上げられたことにより、この103万円の壁が123万円の壁に変わりました。

 また、改正により、配偶者控除や扶養控除の対象となる合計所得金額が48万円以下から58万円以下に変わりましたので、配偶者や扶養親族の年収が123万円以下であれば、配偶者控除や扶養控除の対象となります(給与収入123万円-給与所得控除65万円=58万円)。

 ただし、123万円の壁は配偶者控除や扶養控除の対象となる給与収入を意味するものであり、従前の103万円の壁が持っていた納税者本人に所得税がかからない給与収入という意味はありません。

 納税者本人に所得税がかからない年収の壁については、下記4をご参照ください。

3.150万円の壁(所得税):2つの意味

 従前からあった150万円の壁は、配偶者特別控除について満額の38万円を適用できる年収の壁でしたが、改正により、150万円の壁の意味は以下のように変わりました。

 扶養親族の年収が123万円を超えると扶養控除の対象から外れますので(上記2)、年齢19歳以上23歳未満の扶養親族(以下「大学生年代」といいます)についても、年収が123万円を超えると63万円の扶養控除を適用することができません。

 しかし、大学生年代については、年収が123万円を超えても、令和7年度税制改正で新設された特定親族特別控除を適用することができ、年収が150万円以下であれば、特定親族特別控除について満額の63万円を適用することができます。

 さらに、大学生年代の年収が150万円を超えても188万円以下であれば、納税者本人は段階的に逓減する特定親族特別控除を受けることができます。

 また、勤労学生本人が受けられる勤労学生控除の合計所得金額の要件が、改正により従前の75万円以下から85万円以下に変わりましたので、勤労学生本人の給与収入が150万円以下であれば、勤労学生控除27万円を受けることができます(給与収入150万円-給与所得控除65万円=85万円)。

 なお、社会保険における150万円の壁については、下記8をご参照ください。

4.160万円の壁(所得税):2つの意味

 改正後の年収160万円の壁については、以下の二つの意味があります。

 第一に、納税者本人に所得税がかからない従前の103万円の壁が、160万円の壁に変わりました。

 改正により基礎控除の10万円の引き上げが行われましたが、さらに低~中所得者層の税負担への配慮から、特例として最大95万円の基礎控除が設けられました。

 したがって、給与所得控除最低保障額65万円と合わせて、年収160万円以下であれば、納税者本人に所得税はかかりません(給与収入160万円-給与所得控除65万円-基礎控除95万円=給与所得0円)。

 第二に、配偶者特別控除について満額の38万円を適用できる年収の壁が、従前の150万円から160万円に変わりました。

 満額の38万円を適用できる合計所得金額の上限は従前どおりの95万円ですが、給与所得控除最低保障額が10万円引き上げられたことにより、配偶者の年収が160万円以下であれば、納税者本人は配偶者特別控除38万円の適用を受けることができます(ただし、納税者の合計所得金額が900万円以下の場合です)。

 また、配偶者の年収が160万円を超えても201万円以下(正確には201万5,999円以下)であれば、納税者本人は段階的に逓減する配偶者特別控除を受けることができます。

5.188万円の壁(所得税)

 大学生年代の年収が150万円を超えると段階的に特定親族特別控除が減っていきますが、年収188万円を超えると特定親族特別控除はゼロとなります(上記3)。

 188万円の壁とは、特定親族特別控除が適用されるか否かの年収の分岐点のことをいい、改正後に新しくできた年収の壁です。

6.201万円の壁(所得税)

 配偶者の年収が160万円を超えると段階的に配偶者特別控除が減っていきますが、年収201万円(正確には201万5,999円)を超えると配偶者特別控除はゼロとなります(上記4)。

 201万円の壁とは、配偶者特別控除が適用されるか否かの年収の分岐点のことをいいますが、改正後もこの部分は変わっていません。

7.106万円の壁(社会保険)

 令和7年度税制改正は、以下の社会保険制度上の年収の壁である106万円の壁には影響ありません。

 下記条件を満たす場合は、パートやアルバイトで働く人が自ら社会保険の被保険者となり社会保険の扶養から外れます(関連記事「従業員51人以上の会社で働くパート・アルバイトの社会保険加入義務(令和6年10月1日~)」)。

 ①従業員が51人以上の会社で働く(2024(令和6)年10月以降)※1
 ②週の労働時間が20時間以上
 ③月収8.8万円以上(年収106万円以上)※2
 ④2か月を超える雇用の見込がある
 ⑤学生でない

※1 2025(令和7)年6月13日に成立した年金制度改正法により、2027(令和9)年10月から、「企業規模要件」が段階的に撤廃されます。
※2 2025(令和7)年6月13日に成立した年金制度改正法により、法律の公布から3年以内に「賃金要件」は撤廃されます。

8.130万円の壁と150万円の壁(社会保険)

 令和7年度税制改正によって19歳以上23歳未満の親族等を扶養する場合における特定扶養控除の要件の見直し等が行われたことを踏まえ、扶養認定日が2025(令和7)年10月1日以降で、扶養認定を受ける人(被扶養者)が19歳以上23歳未満の場合(被保険者の配偶者を除く)は、現行の「年間収入130万円未満」が「年間収入150万円未満」に変わりますなお、この「年間収入要件」以外の要件に変更はありません。

 年齢要件(19歳以上23歳未満)は、扶養認定日が属する年の12月31日時点の年齢で判定します。
 例えば、扶養認定を受ける人が令和7年11月に19歳の誕生日を迎える場合には、令和7年(暦年)における年間収入要件は150万円未満となります。

 令和7年10月1日以降の届出で、令和7年10月1日より前の期間について認定する場合、19歳以上23歳未満の被扶養者にかかる年間収入の要件は130万円未満で判定します。

 130万円又は150万円の壁とは、社会保険被保険者である給与所得者(例えば親)が扶養する者(例えば子)については、親が負担する社会保険料のみで子の健康保険料及び国民年金保険料まで賄われるという年収の分岐点のことをいいます。

 従業員が51人以上(2024(令和6)年10月以降)の企業では106万円、それより規模の小さい企業では130万円又は150万円が年収の壁となります。

※ 社会保険の150万円の壁については、「令和7年10月1日から19歳以上23歳未満の人の健康保険の被扶養者認定基準が年収150万円未満に変わります」をご参照ください。