パートやアルバイトの給与を丙欄で源泉徴収するときの注意点と建設業の特例

1.丙欄で源泉徴収するための要件

 パートやアルバイトで働く人に支払う給与は、日給(勤務した日)や時間給(勤務した時間)で計算することが多いと思われますが、これらの人に給与を支払う際に源泉徴収する税額は、一般の従業員と同様に「給与所得の源泉徴収税額表」の「月額表」または「日額表」の「甲欄」または「乙欄」を使って求めます(源泉徴収税額表の月額表、日額表、甲欄、乙欄、丙欄の使い分けの判断基準については、本ブログ記事「源泉徴収税額表の『月額表』『日額表』の使い方と『甲欄』『乙欄』『丙欄』」をご参照ください)。

 一方、パートやアルバイトの人の給与を日給または時間給によって計算していることのほか、次のいずれかの要件に当てはまる場合には、「日額表」の「丙欄」を使って源泉徴収する税額を求めます。

(1) あらかじめ定められている雇用契約の期間が2か月以内であること
(2) 日々雇い入れている場合には、継続して2か月を超えて支払をしないこと

 したがって、2か月以内の短期間(有期雇用)で募集するパートやアルバイトの人に対して日給や時間給で支払う給与は、「日額表」の「丙欄」を使うことになります。

 パートやアルバイトで断続的に勤務する人に対して支払う給与について、日額表の丙欄を使って源泉徴収をすると、日額(その日の社会保険料等控除後の給与等の金額)が9,300円未満であれば源泉徴収税額は0円になります。
 これは、同じ日額表の甲欄や乙欄を使って源泉徴収する場合よりも税額を抑えることができます(給与が日額9,200円以上9,300円未満の区分であれば、甲欄では250円(扶養親族等の数が0人の場合)、乙欄では1,530円の源泉徴収が必要です)。

 ただし、丙欄で源泉徴収するための要件については、常に確認する必要があります。

2.契約期間や支払期間が2か月を超えた場合

 前述したように、2か月以内の短期間(有期雇用)で募集するパートやアルバイトの人に対して日給や時間給で支払う給与は、次のいずれかの要件に基づき「日額表」の「丙欄」を使って源泉徴収をします。

(1) あらかじめ定められている雇用契約の期間が2か月以内であること
(2) 日々雇い入れている場合には、継続して2か月を超えて支払をしないこと

 (1)の要件については、最初の契約期間が2か月以内の場合でも、雇用契約の期間の延長や、再雇用のため2か月を超えることがあります。
 この場合には、契約期間が2か月を超えた日から、「日額表」の「丙欄」を使うことができず、「月額表」または「日額表」の「甲欄」または「乙欄」を使って源泉徴収する税額を求めることになります。

 なお、雇用契約の期間を2か月ごとに更新することとしている場合もあると思います。例えば、5月~6月の2か月を一つの雇用期間とし、この雇用期間が過ぎれば新たに7月~8月の2か月を一つの雇用期間として更新する場合です。
 また、5月~6月の雇用契約が終了した後に、7月は雇用契約をせずに、8月~9月の2か月について新たに雇用契約する場合もあります。
 一つ一つの雇用契約の期間を見れば2か月以内ですが、いずれの場合も雇用契約の期間の延長や再雇用に該当するため、2か月を超えると判断されます。つまり、「日額表」の「丙欄」は使えないということです。

 (2)の要件については、日々雇い入れている場合には、継続して2か月を超えて支払をしないこととなっています。
 日雇賃金については、「日額表」の「丙欄」を使って源泉徴収をしますが、継続して2か月を超えて給与等が支払われた場合には、その2か月を超える部分の期間に支払われるものは日雇賃金にはならず、「日額表」の「丙欄」は使えません。したがって、「月額表」または「日額表」の「甲欄」または「乙欄」を使って源泉徴収をすることになります。

 (2)の要件で少し気になるのは、「継続して」の部分です。
 例えば、5月に8日間、6月に10日間雇い入れて日雇賃金を支払った後、7月は雇い入れずに、8月にまた雇い入れる場合、8月の給与は日雇賃金になるのでしょうか?
 この場合の8月に支払う給与は、日雇賃金にはなりません。5月・6月と8月の間に1か月の空きがありますが、この場合も継続して2か月を超えて給与等が支払われたと判断されますので、8月に支払う給与については「日額表」の「丙欄」は使えません。

 しかし、5月・6月はA社で日雇賃金が支払われ、8月はB社で給与が支払われる場合は、8月の給与は日雇賃金になり「日額表」の「丙欄」を使って源泉徴収をします。
 つまり、1か所の勤務先から継続して2か月を超えて給与等が支払われなければ、「日額表」の「丙欄」を使って源泉徴収をすることになります。

3.建設業従事者の特例

 原則として、雇用契約の期間や日雇賃金の支払期間が2か月を超えると「日額表」の「丙欄」は使えませんが、建設業従事者の場合は、雇用期間等が2か月を超えていても8か月を超えなければ、「日額表」の「丙欄」を使って源泉徴収をすることになります。

 具体的な要件は、次のとおりです(参考:国税庁ホームページ「建設労務者に支払う給与に対する源泉所得税の取扱いに関する要望について」)。

(1) 同一事業主に継続して雇用されることを常態としない
(2) 同一事業主に雇用される期間が継続して8か月を超えない
(3) 同一事業主に継続して1か年を超えて雇用されない

扶養控除等申告書に障害者等の記載があった場合の源泉徴収税額

1.扶養控除等申告書の用途は年末調整だけではない

 年末調整では、勤務先に各種申告書(扶養控除等申告書、基礎控除・配偶者控除等・所得金額調整控除申告書、保険料控除申告書、住宅借入金等特別控除申告書)を提出することで、いろいろな控除を受けることができます。
 これらの申告書のうち、令和4年分扶養控除等申告書については、昨年(令和3年)の年末調整時に勤務先に提出(令和4年中に途中入社した方は入社時に提出)していると思いますが、今年(令和4年)の年末調整時に修正事項(結婚や出産により扶養者が増えた等)の有無を確認するため、勤務先より再度配布されます。
 また、令和5年分扶養控除等申告書は、来年(令和5年)1月から支払う給与の計算に使用するため、今年(令和4年)の年末調整時に勤務先に提出します。
 年末調整のタイミングで扶養控除等申告書を提出することが多いので、なんとなく扶養控除等申告書は年末調整で所得控除を受けるために提出するものと思われがちですが、そうではありません。
 扶養控除等申告書の用途は年末調整だけではなく、毎月の給与から天引きする所得税額(源泉徴収税額)を計算する際にも使用します。つまり、源泉徴収税額は扶養控除等申告書に記載された内容を反映するものでなければなりません。
 以下では、扶養控除等申告書に障害者等の記載があった場合の源泉徴収税額の求め方について確認します。

2.甲欄の「扶養親族等の数」

 扶養控除等申告書の提出があった人の源泉徴収税額は、源泉徴収税額表より次のステップで求めます。

(1) まず、その人のその月の給与等の金額から、その給与等の金額から控除される社会保険料等の金額を控除した金額を求めます。

(2) 次に、上記(1)により求めた金額に応じて「その月の社会保険料等控除後の給与等の金額」欄の該当する行を求め、その行と扶養控除等申告書により申告された扶養親族等の数に応じた甲欄の「扶養親族等の数(0人~7人)」欄との交わるところに記載されている金額を求めます。この金額が源泉徴収税額です。

 ここで注意しなければならないのが、源泉徴収税額表における「扶養親族等」の意味です。
 源泉徴収税額表における「扶養親族等」とは、控除対象扶養親族※1だけではなく源泉控除対象配偶者※2も含みます。つまり「扶養親族等の数」とは、源泉控除対象配偶者と控除対象扶養親族(老人扶養親族又は特定扶養親族を含みます)との合計数をいいます。

※1 控除対象扶養親族とは、扶養親族のうち、年齢16歳以上の人をいいます。
 扶養親族とは、給与等の支払を受ける人と生計を一にする親族等(配偶者、青色事業専従者として給与の支払を受ける人及び白色事業専従者(以下「青色事業専従者等」といいます)を除きます)で、令和 4年中の所得の見積額が48万円以下の人をいいます。
 ここにいう親族等には、児童福祉法の規定により養育を委託されたいわゆる里子や、老人福祉法の規定により養護を委託されたいわゆる養護老人も含まれます。

※2 源泉控除対象配偶者とは、給与等の支払を受ける人(合計所得金額が900万円以下である人に限ります)と生計を一にする配偶者(青色事業専従者等を除きます)で、令和 4 年中の所得の見積額が95万円以下の人をいいます。

 また、提出された扶養控除等申告書に障害者等の記載がある場合は、その内容を次のように源泉徴収税額表の「扶養親族等の数」に反映させなければなりません。

(3) 扶養控除等申告書に、給与等の支払を受ける人本人が障害者(特別障害者を含みます)、寡婦、ひとり親又は勤労学生に該当する旨の記載があるときは、扶養親族等の数にこれらの一に該当するごとに1人を加算した数を、上記(2)における「扶養親族等の数」とします。

(4) 扶養控除等申告書に、給与等の支払を受ける人の同一生計配偶者※3や扶養親族(年齢16歳未満の人を含みます)のうちに障害者(特別障害者を含みます)又は同居特別障害者に該当する旨の記載があるときは、扶養親族等の数にこれらの一に該当するごとに1人を加算した数を、上記(2)における「扶養親族等の数」とします。

※3 同一生計配偶者とは、給与等の支払を受ける人と生計を一にする配偶者(青色事業専従者等を除きます)で、令和 4 年中の所得の見積額が48万円以下の人をいいます。

 したがって、提出された扶養控除等申告書に障害者等の記載があった場合は、(年末調整で過不足の精算が行われるとはいえ)毎月の給与の源泉徴収税額にも影響がありますのでご注意下さい。