贈与契約書に貼る印紙はいくら?

 相続税対策として、親から子へ現金や不動産などの生前贈与を行うことがあります。贈与契約自体は口頭だけでも成立しますが、後のトラブルを避けるためにも贈与契約書を作成しておく必要があります。
 この贈与契約書には、以下のように、何を贈与するかによって、収入印紙の貼付けが必要な場合と不要の場合があります。

1.不動産の贈与契約

 例えば、次のような土地建物の贈与契約書を作成した場合、印紙の貼付けは必要でしょうか?

 収入印紙を貼るべき課税文書は、印紙税法別表第1「課税物件表」に掲げられている20項目のうち、非課税文書に該当しない文書です。不動産の譲渡に関する契約書は、次のように課税文書(第1号の1文書)に該当します。

文書の種類
第1号の1文書 不動産、鉱業権、無体財産権、船舶若しくは航空機又は営業の譲渡に関する契約書

 上記の不動産の贈与に関する契約書は、黄色マーカー部分の文言より、土地と建物の所有権を甲から乙へ移転する内容のものですが、このように対価を受けずに無償で贈与する場合は課税文書(第1号の1文書)に該当するのでしょうか?
 不動産をその同一性を保持させつつ他人に移転させることを内容とするものは、対価を受けるかどうかを問わず、第1号の1文書(不動産の譲渡に関する契約書)に該当します
 また、本事例の契約書には、土地の評価額が1,500万円、建物の評価額が300万円と記載されています(水色マーカー部分)。
 しかし、贈与は無償契約ですから、贈与契約書に土地と建物の評価額が記載されていても、その評価額は不動産譲渡の対価としての金額ではありませんので、印紙税額表の記載金額には該当しません
 したがって、本事例の贈与契約書は「記載金額のない第1号の1文書」となり、印紙税額は200円となります。

2.不動産以外の贈与契約

 不動産の贈与契約書については印紙税の課税対象となりますが、例えば、高価な時計や車、現金や株式などの贈与契約書は印紙税の課税対象にはなりません
 先に述べたように、収入印紙を貼るべき課税文書は、印紙税法別表第1「課税物件表」に掲げられている20項目のうち、非課税文書に該当しない文書です。時計や車、現金、株式などの贈与(無償の譲渡)はこの20項目に含まれていないため、課税文書にはなりません。

変更契約書における「重要な事項」の変更とは?

1.印紙税額一覧表における「契約書」は7項目

 収入印紙を貼るべき課税文書は、印紙税額の一覧表に掲げられている20項目のうち、非課税文書に該当しない文書です。
 これらの文書のうち、「契約」に関する文書(契約書)を抽出すると、次の各項目が該当します。

文書の種類
第1号文書 1 不動産、鉱業権、無体財産権、船舶若しくは航空機又は営業の譲渡に関する契約書
2 地上権又は土地の賃借権の設定又は譲渡に関する契約書
3 消費貸借に関する契約書
4 運送に関する契約書
第2号文書 請負に関する契約書
第7号文書 継続的取引の基本となる契約書
第12号文書 信託行為に関する契約書
第13号文書 債務の保証に関する契約書
第14号文書 金銭又は有価証券の寄託に関する契約書
第15号文書 債権譲渡又は債務引受けに関する契約書

2.変更契約に関する「重要な事項」の一覧表

 上記1の契約書を作成した後に、原契約書の内容を変更する文書(以下「変更契約書」といいます)を作成する場合があります。この変更契約書が課税文書に該当するかどうかは、その変更契約書に「重要な事項」が含まれているかどうかにより判定することとされています。
 すなわち、重要な事項を変更するために作成した変更契約書は課税文書となり、印紙の貼付けが必要です。一方、重要な事項を含まない変更契約書は課税文書に該当しないことになり、印紙の貼付けは不要です。
 この場合の「重要な事項」とは、次の印紙税法基本通達別表第2「重要な事項の一覧表」において、文書の種類ごとに例示されています。

(1) 第1号の1文書
第1号の2文書のうち、地上権又は土地の賃借権の譲渡に関する契約書
第15号文書のうち、債権譲渡に関する契約書
①目的物の内容
②目的物の引渡方法又は引渡期日
③契約金額
④取扱数量
⑤単価
⑥契約金額の支払方法又は支払期日
⑦割戻金等の計算方法又は支払方法
⑧契約期間
⑨契約に付される停止条件又は解除条件
⑩債務不履行の場合の損害賠償の方法
(2) 第1号の2文書のうち、地上権又は土地の賃借権の設定に関する契約書
①目的物又は被担保債権の内容
②目的物の引渡方法又は引渡期日
③契約金額又は根抵当権における極度金額
④権利の使用料
⑤契約金額又は権利の使用料の支払方法又は支払期日
⑥権利の設定日若しくは設定期間又は根抵当権における確定期日
⑦契約に付される停止条件又は解除条件
⑧債務不履行の場合の損害賠償の方法
(3) 第1号の3文書
①目的物の内容
②目的物の引渡方法又は引渡期日
③契約金額(数量)
④利率又は利息金額
⑤契約金額(数量)又は利息金額の返還(支払)方法又は返還(支払)期日
⑥契約期間
⑦契約に付される停止条件又は解除条件
⑧債務不履行の場合の損害賠償の方法
(4) 第1号の4文書
第2号文書
①運送又は請負の内容(方法を含む。)
②運送又は請負の期日又は期限
③契約金額
④取扱数量
⑤単価
⑥契約金額の支払方法又は支払期日
⑦割戻金等の計算方法又は支払方法
⑧契約期間
⑨契約に付される停止条件又は解除条件
⑩債務不履行の場合の損害賠償の方法
(5) 第7号文書
①令第26条《継続的取引の基本となる契約書の範囲》各号に掲げる区分に応じ、当該各号に掲げる要件
②契約期間(令第26条各号に該当する文書を引用して契約期間を延長するものに限るものとし、当該延長する期間が3か月以内であり、かつ、更新に関する定めのないものを除く。)

 

※具体的には、以下の事項が該当します。
①目的物の種類
②取扱数量
③単価
④対価の支払方法
⑤債務不履行の場合の損害賠償の方法又は再販売価格、契約期間

(6) 第12号文書
①目的物の内容
②目的物の運用の方法
③収益の受益者又は処分方法
④元本の受益者
⑤報酬の金額
⑥報酬の支払方法又は支払期日
⑦信託期間
⑧契約に付される停止条件又は解除条件
⑨債務不履行の場合の損害賠償の方法
(7) 第13号文書
①保証する債務の内容
②保証の種類
③保証期間
④保証債務の履行方法
⑤契約に付される停止条件又は解除条件
(8) 第14号文書
①目的物の内容
②目的物の数量(金額)
③目的物の引渡方法又は引渡期日
④契約金額
⑤契約金額の支払方法又は支払期日
⑥利率又は利息金額
⑦寄託期間
⑧契約に付される停止条件又は解除条件
⑨債務不履行の場合の損害賠償の方法
(9) 第15号文書のうち、債務引受けに関する契約書
①目的物の内容
②目的物の数量(金額)
③目的物の引受方法又は引受期日
④契約に付される停止条件又は解除条件
⑤債務不履行の場合の損害賠償の方法

3.「重要な事項」の留意点等

 印紙税法は、契約上重要な事項を変更する変更契約書を課税対象とすることとし、その重要な事項の範囲は上記2の 印紙税法基本通達別表第2「重要な事項の一覧表」 に定められていますが、ここに掲げられているものは例示事項であり、これらに密接に関連する事項や例示した事項と比較してこれと同等、若しくはそれ以上に契約上重要な事項を変更するものも課税対象になります。
 また、変更契約書は、変更する事項がどの号に該当する重要な事項であるかにより文書の所属を決定することになるのですが、2以上の号の重要な事項が2以上併記又は混合記載されている場合とか、一つの重要な事項が同時に2以上の号に該当する場合には、それぞれの号に該当する文書として原契約書の所属の決定方法と同様に所属を決定することになります。

※ 所属の決定については、本ブログ記事「複数の課税文書に該当する場合の「所属の決定」をご参照ください。

印紙が必要な領収書とは?

 外出中に得意先から急な集金の依頼があった場合、領収書が手元に無いこともあると思います。このような場合に、例えば白紙や名刺の裏などに「○○円領収しました」と手書きして、後日正式な領収書を発行することがあります。このとき、領収書代わりの名刺などに印紙を貼る必要はあるのでしょうか?
 印紙税法における領収書(受取書)は、金銭等の受取りを証する書類となっていますので、名刺の裏などであっても、領収した事実を証明している限り印紙の貼付けが必要になります。
 領収書(受取書)は印紙税法上の第17号文書のことですが、印紙税が課税される文書の中でも最もよく作成されるものの一つです。今回は領収書(第17号文書)について確認します。

1.第17号文書の「売上代金」「売上代金以外」とは?

 第17号文書は、いわゆる領収書のことです。売上代金を受け取って領収書を発行すると、領収書に記載した金額に応じて印紙税がかかります。

 上表は印紙税額の一覧表のうち第17号文書の欄を抜粋したものですが、印紙税がかかるのは売上代金等の受取書(第17号の1文書)だけではないことがわかります。例えば、借入金や保険金、損害賠償金なども、それらの受取書は売上代金以外の受取書(第17号の2文書)として、1通あたり200円の印紙税がかかります。
 第17号の1文書と第17号の2文書の違いは、領収したものが売上に係る金銭等か、売上代金以外の金銭等かという点にあります。
 売上に係る金銭とは、具体的には次のものをいいます(第17号の1文書)。

資産を譲渡することによる対価 商品の売上代金、不要資産の売却代金、手形割引の代金、無体資産や債権の譲渡代金
資産を使用させることによる対価 不動産の賃貸料、機械や備品などのリース料、貸付金の利息、賃貸借に係る権利金
役務を提供することによる対価 請負代金、修繕料、宿泊料、出演料、広告料、運送料、委託報酬、保管料、仲介料

 また、売上代金以外の金銭とは、次のものをいいます(第17号の2文書)。

売上代金以外 借入金、保険金、敷金、損害賠償金、補償金、割戻金、過払金の返還金など

 売上代金等を領収する場合は第17号の1文書に当たり、記載金額に応じて印紙税額が異なります。一方、売上代金以外の金銭等を領収する場合は第17号の2文書に当たり、記載金額に関係なく印紙税額は一律200円となります。
 両者ともに記載金額が5万円未満のものは非課税です。

2.第17号文書でいう「有価証券」の範囲とは?

 第17号文書は、金銭の受領だけではなく、有価証券の受取も範囲に含まれます。
 印紙税法上の有価証券とは、財産価値のある権利を表彰する証書で、その権利の移転、行使がそれをもってなされることを要するものとされています。一般的に考えられている有価証券よりも取扱範囲が広く、プリペイドカード、商品券、小切手、手形、株券、受益証券や船荷証券なども、印紙税法上の有価証券に該当します。
 なお、船荷証券や株券、手形などは、それ自体が課税文書となるので注意が必要です。

3.非課税文書「営業に関しないもの」とは?

 印紙税額の一覧表の第17号文書の欄を見ると、主な非課税文書に「営業に関しないもの」が挙げられています。
 印紙税法における「営業」とは、旧商法における商人の範囲を意味しているといわれます。旧商法以外の業法により業務内容が定められている弁護士・税理士等の個人の士業などは、「営業者」から除かれます。
 加えて「法人」については、配当ができるか否かという点を基本に「営業者」になるかならないか、を考えます。
 そのため、医療法人など法令等により剰余金の配当ができないものは、営業者とはなりません。また、公益法人もその公益性等を勘案して、営業者とは取り扱わないこととされています。
 したがって、このような医療法人や公益法人、弁護士等の個人の士業が発行する領収書には印紙を貼る必要がありません。
 また、個人が私的に取引する場合も営業にはならないとされています。個人が私的に取引する場合とは、居住用財産を売却したり、主婦や会社員が個人の立場でフリーマーケットで不要品を売却する場合などです。このような場合に発行する領収書には、印紙を貼る必要はありません。

印紙税の節税方法5選

 印紙税は契約書などに課される税金ですが、印紙を貼っていなくても、その文書の法的な効力がなくなるわけではありません
 とはいえ、正式な契約の成立の証しとして作成する契約書に印紙を貼っていないと、契約の相手方が不安や物足りなさを感じるかもしれません。たとえ、合法的に印紙の貼り付けを不要にできる方法があったとしてもです。しかし、親子会社間や同族会社間の取引であれば、活用できる余地はあると思われます。
 そこで今回は、親子会社間や同族会社間で活用できる印紙税の節税方法について確認します(以下の方法は、親子会社間や同族会社間に限定した節税方法ではなく、双方の合意があれば、契約の相手方が誰であっても有効な方法です)。

1.コピーに印紙は不要

 契約書の文面に、「甲はこの契約書の原本を保有し、乙はそのコピーを保有する」と記載すれば、乙の保有するコピーに印紙を貼る必要はありません。これで、印紙代は半分に節約できます。
※ 詳しくは、本ブログ記事「契約書のコピーに印紙は必要?不要?」をご参照ください。

2.契約書を電子メール、ファックスで送る

 印紙税は、相手に渡したり、双方で取り決めをした「紙」の文書に課される税金です。電子メールやファックスは紙の文書を送っているわけではなく、電子データ(電子メール)や通信データ(ファックス)を送っています。
 したがって、電子メールやファックスでデータを送信しても課税文書を作成したことにはならず、印紙税の課税原因は発生しません
 例えば、注文請書に記名押印した後にPDFファイル等の電磁的記録に変換し、そのPDFファイルを注文先に電子メールで送信したとしても、現物を注文者に交付しなければ、それは課税文書に該当しません。送信用の現物(原本)を相手に交付せずに社内で保管する場合は、印紙税の課税対象外となります。
 ただし、電子メールで送信した後に注文請書の現物を別途持参するなどの方法により相手方に交付した場合には、課税文書の作成に該当し、現物の注文請書に印紙税が課されます
 一方、受信者側が送信された注文請書をプリンタで印刷しても、現物の交付がなされない場合は、コピーした文書と同様のものと認められるため、印紙税は課税されません

3.記載金額を分割する

 例えば、親子会社間あるいは同族会社間で金銭の貸し借りをする場合に、金銭消費貸借契約書を1枚にせず、金額を分割します。
 仮に、金額が1,000万円なら、500万円の金銭消費貸借契約書を2枚作成します。記載金額が1,000万円なら印紙税は1万円ですが、500万円なら印紙税は2,000円です。500万円の金銭消費貸借契約書を2枚作っても、合計で4,000円の印紙税で済みます。

4.消費税、源泉所得税は区分表示する

 第1号文書(不動産等の譲渡等に関する契約書)、第2号文書(請負に関する契約書)、第17号文書(売上得代金等に係る金銭又は有価証券の受取書)は、消費税を区分表示した場合は消費税抜きの金額を記載金額とするという規定(消費税の特例)があります。
 また、第17号文書については、源泉所得税も区分表示すれば、税抜きの金額が記載金額とされます
※ 消費税の特例については、本ブログ記事「契約書・領収書の記載金額における消費税の特例」をご参照ください。

5.印紙を金券ショップや格安チケット屋で購入する

 郵便局で購入する収入印紙には、消費税が課税されません。消費税では、日本郵便株式会社や簡易郵便局等で譲渡される収入印紙は非課税とされています(消費税基本通達6-4-1)。
 一方、郵便局以外の場所、例えば金券ショップや格安チケット屋などで譲渡される収入印紙には、消費税が課税されます。
 金券ショップ等を利用すれば、額面金額よりもわずかながら安く購入することができ、さらに消費税の課税事業者で本則課税を採用している事業者であれば、印紙の購入額を課税仕入れとして処理できます
 印紙税の節税というよりは消費税の節税ですが、特に印紙の購入額が大きい不動産業や建設業の方には、活用していただきたい節税方法です。

請求書に印紙は必要?不要?

 印紙税の課税文書のうち、代表的なものとして領収書があります。売上代金を受領した際に発行する領収書について、そこに記載された受取金額が5万円以上の場合は、印紙を貼らなければならないことはよく知られています。
 一方、請求書を発行する際は、その請求金額にかかわらず基本的に印紙を貼る必要はありませんが、内容によっては印紙が必要となるケースもあります。
 今回は、請求書と印紙について確認します。

1.請求書に印紙は原則として不要

 印紙税が課税されるのは、印紙税法で定められた課税文書に限られています。この課税文書とは、次の3つのすべてに当てはまる文書をいいます。

(1) 印紙税法別表第1(課税物件表)に掲げられている20種類の文書により証されるべき事項(課税事項)が記載されていること
※ 課税物件表については、国税庁ホームページ「印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」及び「印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで」をご参照ください。
(2) 当事者の間において課税事項を証明する目的で作成された文書であること
(3) 印紙税法第5条(非課税文書)の規定により印紙税を課税しないこととされている非課税文書でないこと

 請求書は、上記(1)の課税物件表に掲げられている課税文書に該当しませんので、原則として印紙を貼る必要はありません。
 しかし、課税文書に該当するかどうかは、その文書に記載されている内容に基づいて判断しなければなりません。当事者の約束や慣習により文書の名称や文言は種々の意味に用いられるため、その文書の内容判断に当たっては、その名称、呼称や記載されている文言により形式的に行うのではなく、その文書に記載されている文言、符号等の実質的な意味を汲み取って行う必要があります。

2.請求書に印紙が必要となる場合

 例えば、売掛金の請求書に「済」や「了」と表示してあり、その「済」や「了」の表示が売掛金を領収したことの当事者間の了解事項であれば、その文書は売上代金の受領書(第17号の1文書)に該当することになります。
 つまり、請求書が領収書を兼ねる場合(請求書内で「領収済」というような請求代金の受け取りを証明する文言がある場合)は、タイトルが請求書となっていたとしても領収書の扱いになりますので、印紙を貼る必要があります。
 この場合は、記載金額によって印紙税額が変わります。印紙税額については、上記課税物件表(印紙税額の一覧表)の第17号文書をご参照ください。

印紙税の過怠税と時効

 税務調査の際に、契約書等の印紙の貼り忘れを指摘されることがあります。印紙の貼り忘れ(印紙税の納付もれ)には、過怠税というペナルティーが科されます。
 今回は、印紙税の過怠税について確認します。

1.印紙の貼り忘れ・消印忘れ

 印紙税は、課税文書を作成するときに、その文書に所定の額面の収入印紙を貼り付け、印章又は署名で消印することによって納付します。
 もし、税務調査の際に、収入印紙を貼るべき課税文書に印紙を貼っていないことがわかると、その納付しなかった印紙税の額に加えて、その2倍に相当する金額(つまり、本来納付すべきだった印紙税額の3倍)が過怠税として徴収されます(印紙税法20条1項)。
 また、正しく印紙を消印していなかったときには、その印紙の額面金額に相当する金額が過怠税として徴収されます(印紙の消印方法については、本ブログ記事「印紙の消印方法~意外に知らないことが多い!?」をご参照ください)。

2.自主的に申し出れば過怠税は1.1倍

 ただし、税務調査で納付漏れが明らかになる前に、所轄税務署長に対して印紙税を納めていない旨を自ら申し出た場合、過怠税は本来納めるべきだった印紙税額の1.1倍に軽減されます(印紙税法20条2項)。
 過怠税が3倍になるか1.1倍で済むか、この差は大きいと言えますが、実際の税務調査では、うっかりミスや誤認識による納付漏れであれば、過怠税は1.1倍になるケースが多いようです。
 3倍の過怠税が徴収されるのは、収入印紙の使い回しや仮装隠ぺい等の脱税行為など、悪質なケースに限られるようです。

3.過怠税は損金不算入

 過怠税は、その全額が法人税の損金や所得税の必要経費には算入されません。
 前述したように、過怠税はその納付しなかった印紙税の額とその2倍に相当する金額との合計額、つまり、本来納付すべき印紙税額の3倍になります。
 例えば、本来納付すべき印紙税額が1万円の場合、その2倍に相当する2万円との合計額である3万円が過怠税になります。
 ここで注意を要するのは、あくまでも損金不算入となる過怠税は3万円であるということです。本来納付すべき印紙税額1万円が本税、その2倍に相当する2万円が過怠税ということではありません。
 なお、印紙税の不納付に加算税や延滞税は課されません。

4.印紙税の時効は5年

 印紙税に限らず、法人税や所得税、相続税等の国税の徴収権は、その国税の法定納期限から5年間行使しないことによって時効により消滅します(国税通則法72条)。
 印紙税の場合、納期限はその課税文書を作成する時までですから、その課税文書を作成した時から5年が過ぎれば時効ということになります。
 もし、契約書等に印紙を貼り忘れていたことに気づいたとしても、あわてて印紙を貼るのではなく、時効が過ぎていないかどうか、まずその作成日を確認してみてください。

契約書のコピーに印紙は必要?不要?

 一般的な商取引では、同じ契約書を2通作成し、契約当事者がそれぞれ1通づつを保管します。その契約書は、契約の成立を証明するために作成された文書であり、契約当事者の署名や押印がありますので、それぞれの契約書に収入印紙を貼る必要があります。
 では、契約当事者の一方が原本を持っていて、他の者がその原本のコピーを持っている場合、そのコピーに収入印紙を貼る必要はあるのでしょうか?
 今回は、この点について確認します。

1.コピーに印紙が不要となる場合

 一般的な契約書には、「契約成立の証として本書2通を作成し、甲乙各自署名押印のうえ、各自1通を保管する。」などの文言が記載されています。
 このような文言のある契約書でも、例えば、役所などに提出するために契約書をコピーする場合や、弁護士や税理士などに契約書のコピーを渡す場合などは、印紙は不要です。
 つまり、契約書のコピーが単に複写しただけのもの(原本をコピーしたままのもので署名押印もコピーされているもの)の場合は、そのコピーに印紙は不要です。

 また、契約書の作成段階で、上記文言を「契約成立の証として本書1通を作成し、甲が保管する」や「甲はこの契約書の原本を保有し、乙はそのコピーを保有する」に変えて記載すれば、乙の保有するコピーに印紙を貼る必要はありません。
 この方法で印紙代は半分に節約できます。親子会社間、同族会社間での契約に活用できると思います。

2.コピーに印紙が必要となる場合

 ただし、次の場合は契約の成立を証明する文書に該当しますので、コピーであっても印紙を貼る必要があります(契約当事者の一方(甲)が原本を所持し、他の者(乙)がコピーを所持しているケース)。

(1) 契約当事者の署名押印があるもの(コピー後の用紙に署名押印しているもの)
(2) コピーに「原本と相違ない」「正本と相違ない」と記述しているもの
(3) 原本とコピー(副本)に割り印のあるもの
(4) 「契約成立の証として本書2通を作成し、甲乙各自が1通を保管する」という文言があるもの

※上記1において、このような文言のある契約書でも、単に複写しただけのものは印紙は不要であることを確認しました。
 これは、契約段階で契約書原本が2通作成されており、甲も乙もそれぞれ原本を1通づつ所持していることが前提です。そのうえで、その契約書のコピーをとっても、コピーに印紙を貼る必要はないということです。
 それに対し、上記2(4)は、契約段階で作成された契約書2通のうち1通がコピーであり、甲が原本を所持し、乙はそのコピーを所持していることが前提です。この場合、乙の所持するコピーは契約の成立を証明する文書に該当しますので、コピーであっても印紙を貼る必要があります。

海外企業との契約書に印紙を貼る?貼らない?

 日本の印紙税法が適用されるのは、日本国内に限られます。では、海外企業との取引において交わす契約書に印紙を貼る必要はあるのでしょうか?
 今回は、海外企業との契約書に印紙を貼るのか否かについて確認します。

1.作成された場所は国内か海外か?

 例えば、日本の企業が日本国内にある不動産の売買契約を海外企業と交わす場合を考えてみます。
 まず、日本の企業が日本国内で売買契約書を2通作成し、日本側の代表者の署名押印をしたものを2通とも海外企業に郵送します。海外企業は現地でこれに署名し、そのうち1通を日本の企業に返送します。
 この場合、返送されてきた契約書に印紙を貼る必要はありません。なぜなら、契約書が作成された場所が国外だからです。

 繰り返しになりますが、日本の印紙税法が適用されるのは、日本国内に限られます。したがって、課税文書の作成が国外で行われる場合には、たとえその文書に基づく権利の行使(=不動産の売買)が国内で行われるとしても、また、その文書の保存が国内で行われるとしても、印紙税は課税されません。
 つまり、契約書のように双方が署名押印する方式で作成する文書は、いつ、どこで作成されたものであるかを判断すれば、課税となるかどうかが決まることになります。

2.いつ作成されたのか?

 上述したように、印紙を貼るか貼らないかは、いつ、どこで作成されたものであるかが判断基準になります。作成場所が海外であることはわかりましたが、今回のケースにおいては、どの段階で契約書が作成されたといえるのでしょうか(いつ、作成されたといえるでしょうか)?

 印紙税法の課税文書の作成とは、単なる課税文書の調製行為をいうのではなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これをその文書の目的に従って行使することをいいます。
 そのため、契約書のように当事者の意思の合致を証明する目的で作成する課税文書は、その意思の合致を証明する時になります。
 今回の売買契約書は、双方が署名押印する方式の文書ですから、日本の企業が契約書を作成してこれに署名押印した段階では、まだ契約当事者の意思の合致を証明する文書になりません。
 もう一方の契約当事者である海外企業が署名する時が課税文書の作成された時であり、その作成場所は海外ですから、この契約書には日本の印紙税法は適用されないことになります。
 つまり、日本の企業も海外企業も契約書に印紙を貼る必要はありません。

 また、返送されてきた契約書は、日本の企業で保存されることになりますから、いつ、どこで作成されたものであるかを明らかにしておかなければなりません。後日、印紙税が納付されていない契約書とみなされ、税務調査などでトラブルが発生することも予想されるからです。
 したがって、契約書上に作成場所を記載するとか、契約書上作成場所が記載されていなければ、別途その事実を付記しておく等の措置が必要になります。

 ちなみに、文書の作成方法が逆の場合、つまり、海外企業が海外で売買契約書を2通作成し、海外企業の署名をした上で2通とも日本の企業に送付し、これに日本の企業が日本で署名押印して1通を海外企業に返送する場合には、日本の企業が保存するものだけではなく、海外企業に返送する契約書にも印紙を貼る必要があります。

印紙を貼り間違えたときは返金してもらいましょう

1.還付の対象となるもの

 本来の印紙税額を超えて多めに収入印紙を貼ってしまったときや、印紙を貼る必要のない文書に誤って収入印紙を貼ってしまったときなどは、印紙税の還付を受けることができます。
 具体的には、以下のようなケースが還付の対象になります。

(1) 請負契約書や領収書などの印紙税の課税文書に貼り付けた収入印紙が過大となっているもの
(2) 委任契約書などの印紙税の課税文書に該当しない文書を、印紙税の課税文書と誤認して収入印紙を貼り付けてしまったもの
(3) 印紙税の課税文書の用紙に収入印紙を貼り付けたものの、使用する見込みのなくなったもの

 なお、収入印紙は、印紙税の納付のみでなく、登録免許税やパスポート引換えの際の手数料又は訴訟費用の納付等多くの用途に用いられます。このうち、印紙税法第14条の規定により還付の対象になるのは、印紙を納付する目的で、印紙税の納付の必要がない文書に誤って印紙を貼り付けたり、課税文書に所定の金額を超える印紙を貼り付けたりした場合等です。
 したがって、印紙により納付することになっている登録免許税や訴訟費用等を納付するための文書に印紙を貼り付けたものは、たとえ誤って貼り付けたものであっても印紙の納付が目的ではないため、印紙税の還付を受けることができません。

2.還付を受ける方法

 印紙税法による還付を受けるためには、税務署に用意されている「印紙税過誤納確認申請書」に必要事項を記入のうえ、納税地の税務署長に提出します。この場合の納税地は、文書の種類や記載内容などによってそれぞれ異なる場合がありますので、ご注意ください(印紙税過誤納[確認申請・充当請求]手続については、国税庁ホームページを参照)。
 なお、還付の申請に当たっては、印紙税が過誤納となっている文書と印鑑、法人の場合は代表者印が必要となります。
 還付される税金は、銀行口座振込あるいは郵便局を通じての送金となるため、還付金を受け取るまでに若干の日数がかかります。
 また、過誤納した印紙税の還付を請求できるのは、その請求をすることができる日(文書を作成した日)から5年以内です。5年を経過すると、印紙税を含めた国税に係る過誤納金を国に請求できる権利は消滅します。

3.印紙税の納税地

 印紙税の納税地は、印紙を購入した場所ではありません。基本的には、課税文書にその作成場所が記載されている場合は、その作成場所が納税地になります(印紙税法第6条第4号)。
 しかし、契約書に「○○県○○市○○区○-○-○にて作成」というように、その作成場所を明確に記載することはあまりないと思われます。
 作成場所が明らかでない場合は、次のようにして納税地を決定します。

(1) 課税文書の作成者が1人の場合(単独作成)

 受取書等のように、課税文書の作成者が1人の場合で、その作成者の事業に係る事務所、事業所、その他これらに準ずるものの所在地が記載されている場合には、その所在地が納税地になります。
 また、事業に係る事務所等が記載されていない場合には、受取書等の作成時における作成者の住所(住所がない場合には居所)が納税地になります。

(2) 2人以上が共同で課税文書を作成した場合(共同作成)

 例えば、不動産売買契約書のように、売主と買主が共同で課税文書を作成した場合には、それぞれの作成者が課税文書を所持している場所が納税地となります。
 また、課税文書の作成者以外の者が課税文書を所持している場合は、その文書に最初に記載されている作成者の所在地又は住所地が納税地となります。

印紙の消印方法~意外に知らないことが多い!?

 顧問先様からの質問は多岐にわたります。会計のこと、税務のこと、経営のこと、融資のこと・・・。すぐに答えられるものもあれば、少し時間を頂いて調べてから答えるものもあります。
 先日も「契約書に貼った印紙の消印は、契約書に押した判子と同じものでしなければならないか?」というご質問を受けました。印紙の消印方法・・・?これまであまり考えたことがなく、なんとなく契約書に押印したものと同じ判子で消印していましたが、改めて問われると、本当にそれでいいのか疑問が生じました。
 そこで、調べてみると、国税庁ホームページ(質疑応答事例)に詳細な記載がありました。今回は、その内容を一問一答形式で紹介します。

1.消印する人は文書の作成者に限られるか?

 答えは「否」です。印紙税法施⾏令第5条では、印紙を消す⽅法は、⽂書の作成者⼜は代理⼈、使⽤⼈その他の従業者の印章⼜は署名によることになっています。
 したがって、消印する⼈は⽂書の作成者に限られておらず、作成者、代理⼈、使⽤⼈、従業者でもよいことになっています。

2.契約者が数⼈いる場合には、その全員で消印をしなければいけないか?

 答えは「否」です。消印は印紙の再使⽤を防⽌することを⽬的とするという趣旨のものですから、複数の⼈が共同して作成した⽂書に貼り付けた印紙は、その作成者のうち誰か1⼈の者が消せばよいことになっています。
 例えば、甲と⼄とが共同して作成した契約書については、甲と⼄の双⽅が消印しても甲と⼄のどちらか1⼈が消印しても差し⽀えありません(印紙税法基本通達第64条)。

3.契約書などに押した印で消印しなければならないか?

 答えは「否」です。上記1で見たように、印紙税法施⾏令第5条では、印紙を消す⽅法は、⽂書の作成者⼜は代理⼈、使⽤⼈その他の従業者の印章⼜は署名によることになっています。
 したがって、⽂書の消印は、その⽂書に押した印だけではなく、署名によることもできます。

4.斜線を引いて消印してもいいか?

 答えは「否」です。署名は⾃筆によるのですが、その表⽰は⽒名を表すものでも通称、商号のようなものでも構いません
 しかし、単に「印」と表⽰したり斜線を引いたりしてもそれは印章や署名には当たりませんから、消印したことにはなりません

5.ゴム印でも消印はできるか?

 答えは「正」です。消印は印紙の再使⽤を防⽌するためのものですから、それに使⽤する印章は通常印判といわれているもののほか、⽒名、名称などを表⽰した⽇付印、役職名、名称などを表⽰したゴム印のようなものでも差し⽀えありません(印紙税法基本通達第65条)。

6.鉛筆で消印してもいいか?

 答えは「否」です。印紙税の課税対象となる⽂書に印紙を貼り付けた場合には、その⽂書と印紙の彩紋とにかけて判明に印紙を消さなければならないことになっています(印紙税法第8条第2項)。⼀⾒して誰が消印したかが明らかとなる程度に印章を押し⼜
は署名することが必要であり、かつ、通常の⽅法では消印を取り去ることができないことが必要です。
 したがって、鉛筆で署名したもののように簡単に消し去ることができるものは、消印をしたことにはなりません

 これまでなんとなく消印していましたが、調べてみると、知らないことも多かったです。