事前確定届出給与を支給しなかった場合のリスクを回避するための手続き

 従来は臨時的な役員賞与は損金算入が認められていませんでしたが、事前確定届出給与の制度を利用すれば、役員賞与であっても届出通りの支給をした場合は損金算入が可能です。
 届出通りの支給をしなかった場合、例えば届出書に記載した支給時期や支給額と異なる時期や金額の支給をした場合は、その役員賞与は損金不算入となります
 事前確定届出給与の届出はしたけれども実際には全く支給しなかった場合は、そもそも支給額が0円なので損金不算入額も0円となり、特段のリスクはないように見えます。
 しかし、事前確定届出給与の支給をしなかった場合のリスクはあります。
 今回は、事前確定届出給与の支給をしなかった場合のリスクと、そのリスクを回避するための手続きについて確認します。

※ 事前確定届出給与を届出通りに支給しなかった場合でも、損金算入できることがあります。詳細については、本ブログ記事「事前確定届出給与(複数回支給)を届出通りに支給しなかった場合」及び「事前確定届出給与(複数人支給)を特定の役員だけ届出通りに支給しなかった場合」をご参照ください。

1.事前確定届出給与の支給をしなかった場合のリスク

 事前確定届給与は法人の節税対策として用いられる側面がありますが、実際の利益が当初見込んでいた利益よりも少なくなる場合は、事前確定届出給与の支給をやめることがあります。
 例えば、事前確定届出給与100万円の支給時期が到来したけれどもその支給をしなかった場合は、そもそも支給額が0円なので損金不算入額も0円です。
 しかし、この場合は次のようなリスクがあることに留意しなければなりません。

借方 金額 貸方 金額
役員賞与 100万円 未払金 100万円
未払金 100万円 債務免除益 100万円

 届出額100万円と異なる金額を支給した場合は、その全額が損金不算入となりますが、支給額が0円なのでそもそも損金算入する金額がなく、損金不算入額も0円です。
 会社としては株主総会等で役員賞与を支給しないという意思決定をしたため、会計上は役員賞与や未払金を認識(上記1行目の仕訳)することはありません(上記1行目の仕訳をするのは、会社に役員賞与を支払う意思がある場合です)。
 しかし、支給日が到来した段階で役員に報酬請求権が発生するため、会社側には報酬を支給する債務(未払金)が発生します。つまり、税務上は上記1行目の仕訳のように考えます。
 そうすると、税務上は役員賞与100万円を認識することになるので、これに対する所得税の源泉徴収が必要になります
 また、株主総会等の決議の際に役員は辞退届を提出して報酬請求権を放棄したと考えられるため、会社側に生じた報酬を支給する債務(未払金)は消滅しますが、役員賞与の支給義務が免除されたことに対する収益(債務免除益)を会社側では認識することになります(上記2行目の仕訳)。

※ 根拠条文は、次の所得税法第183条第2項(源泉徴収義務)です。
2 法人の法人税法第二条第十五号(定義)に規定する役員に対する賞与については、支払の確定した日から一年を経過した日までにその支払がされない場合には、その一年を経過した日においてその支払があつたものとみなして、前項の規定を適用する。

2.リスクを回避するための手続き

 事前確定届出給与を支給しなかった場合のリスクは、会社側では役員賞与を支払っていないにもかかわらず、①役員賞与に対する所得税の源泉徴収義務が生じる、②債務免除益に対して課税される、役員側では役員賞与をもらっていないにもかかわらず、所得税が課税されることです。
 これらのリスクは、事前確定届出給与の支給日に役員の報酬請求権が発生することに端を発しています。
 つまり、これらのリスクがあるのは、事前確定届出給与の支給日が到来した後(すでに役員の報酬請求権が発生した後)に、役員からの辞退届を受領したり株主総会等で不支給の決議をした場合です。
 したがって、これらのリスクを回避するためには、事前確定届出給与の支給日が到来する前に、役員からの辞退届を受領して株主総会等で不支給の決議をすることが必要です。
 所得税基本通達28-10(給与等の受領を辞退した場合)には、次のように規定されています。

28-10 給与等の支払を受けるべき者がその給与等の全部又は一部の受領を辞退した場合には、その支給期の到来前に辞退の意思を明示して辞退したものに限り、課税しないものとする。

 なお、事前確定届出給与を支給しなかった場合に、支給しなかったことについて税務署へ届出(報告)する必要はありません。

会社が役員から建物を借りる場合の税務上の注意点

 同族会社と役員の間で建物や土地の貸借を行う場合は、契約条件や賃料(家賃)等に恣意性が介入する余地があるため、第三者間の貸借にはない税務上の制約があります。
 今回は、同族会社が役員から事業用の建物を借りる場合の税務上の注意点について確認します。

1.実際の家賃が標準の家賃より低い場合

 会社が役員から建物を借りる場合の家賃については、第三者に貸す際の標準の家賃を基準としますが、会社と役員の間で決めた実際の家賃が標準の家賃より低い場合があります。
 この場合、会社側では実際の家賃と標準の家賃との差額が役員からの受贈益(益金)となりますが、同額の支払家賃(損金)が発生しますので、法人税の課税上問題となるケースはほとんどありません。
 
(税務上の仕訳)支払家賃×××/受贈益×××

 また、個人の所得税の課税上も認定課税の規定はないため、特段の問題は生じません。
 ただし、会社が役員所有の建物を役員から一括借上げし、その建物を第三者に転貸するような場合(いわゆるサブリース)は、会社が役員に支払う家賃の設定には注意しなければなりません。

2.実際の家賃が標準の家賃より高い場合

 実際の家賃が標準の家賃よりも高い場合については、その高い部分の金額が役員給与と認定される可能性があります。この場合、役員給与とみなされた部分の金額について源泉徴収が必要になります。
 また、役員給与とみなされた部分の金額が、株主総会等で決議された役員給与の金額の限度額の範囲内であれば、定期同額給与として損金算入できます。
 しかし、役員給与とみなされた部分の金額が、株主総会等で決議された役員給与の金額の限度額を超える場合は、その超える部分の金額が損金不算入とされ、法人税の課税上問題が生じます。
 例えば、次のような場合を想定してみます。

・会社が役員に支払う実際の家賃:月額50万円
・第三者に貸す場合の標準の家賃:月額20万円
・株主総会で決議された役員給与の限度額:月額60万円

(1) 役員給与が月額25万円のとき
 実際の家賃50万円と標準の家賃20万円との差額30万円が役員給与とみなされますので、役員給与は25万円+30万円=55万円となります。
 これは株主総会で決議された役員給与の限度額60万円の範囲内ですので、定期同額給与に該当し、55万円全額が損金算入されます。

(2) 役員給与が月額60万円のとき
 実際の家賃50万円と標準の家賃20万円との差額30万円が役員給与とみなされますので、役員給与は60万円+30万円=90万円となります。
 これは株主総会で決議された役員給与の限度額60万円を超えていますので、その超える部分の金額30万円(90万円-60万円)が損金不算入とされます。
 

届出不要の事前確定届出給与とは?

1.事前確定届出給与の意義

 事前確定届出給与とは、その役員の職務につき、所定の時期に確定額を支給する定めに基づいて支給する給与(定期同額給与及び業績連動給与を除く)で、一定の日までに納税地の所轄税務署長に対して、あらかじめ確定している支給時期、支給金額の他、必要事項を記載した届出をしている場合の当該給与をいいます(法人税法34条1項2号、法人税法施行令69条3項)。
 従来は臨時的な役員賞与は損金算入が認められていませんでしたが、この事前確定届出給与の制度を利用すれば、臨時的な給与(賞与)であっても損金算入が可能です。
 この事前確定届出給与については、国税庁ホームページにもその意義が次のように記載されています(下線は筆者、一部省略)。

 事前確定届出給与とは、その役員の職務につき所定の時期に、確定した額の金銭又は確定した数の株式(カッコ内省略)若しくは新株予約権若しくは確定した額の金銭債権に係る特定譲渡制限付株式若しくは特定新株予約権を交付する旨の定め(カッコ内省略)に基づいて支給される給与で、定期同額給与及び業績連動給与のいずれにも該当しないもの(承継譲渡制限付株式又は承継新株予約権による給与を含み、次に掲げる場合に該当する場合には、それぞれ次に定める要件を満たすものに限ります。)をいいます。
(1) その給与が次のいずれにも該当しない場合 事前確定届出給与に関する届出をしていること
イ 定期給与を支給しない役員に対して同族会社に該当しない法人が支給する金銭による給与
ロ 省略

2.非同族会社が非常勤役員に支給する給与は届出不要

 ここで気になるのが、(1)の部分です。(1)では「定期給与を支給しない役員(非常勤役員)に対して同族会社に該当しない法人(非同族会社)が支給する金銭による給与」に該当しない場合は、「事前確定届出給与に関する届出をしていること」が事前確定届出給与の要件とされています。
 裏を返せば「非常勤役員に対して非同族会社が支給する金銭による給与」に該当する場合は、「事前確定届出給与に関する届出をしていること」が事前確定届出給与の要件ではないということです。
 つまり、非同族会社が非常勤役員に支給する金銭による給与は、届出をしていなくても事前確定届出給与になるということです。
 このことは、次の法人税基本通達9-2-12(定期同額給与の意義)の注意書きにも記載されています(下線筆者)。

9-2-12 法第34条第1項第1号《定期同額給与》の「その支給時期が1月以下の一定の期間ごと」である給与とは、あらかじめ定められた支給基準(慣習によるものを含む。)に基づいて、毎日、毎週、毎月のように月以下の期間を単位として規則的に反復又は継続して支給されるものをいうのであるから、例えば、非常勤役員に対し年俸又は事業年度の期間俸を年1回又は年2回所定の時期に支給するようなものは、たとえその支給額が各月ごとの一定の金額を基礎として算定されているものであっても、同号に規定する定期同額給与には該当しないことに留意する。

(注) 非常勤役員に対し所定の時期に確定した額の金銭を交付する旨の定めに基づいて支給する年俸又は期間俸等の給与のうち、次に掲げるものは、同項第2号《事前確定届出給与》に掲げる給与に該当する

(1) 同族会社に該当しない法人が支給する給与
(2) 同族会社が支給する給与で令第69条第4項《事前確定届出給与》に定めるところに従って納税地の所轄税務署長に届出をしているもの

 上記基本通達は、非常勤役員に対して所定の時期に支給する給与は定期同額給与に該当しないことを述べています(同族会社・非同族会社を問わず)。
 そのうえで、注意書きの(1)において、非同族会社が非常勤役員に対して所定の時期に支給する確定した額の金銭による給与は、届出をしていなくても事前確定届出給与に該当することを述べています。
 なお、同族会社が非常勤役員に対して所定の時期に支給する確定した額の金銭による給与は、届出をしていないと事前確定届出給与に該当しないことを(2)において述べています。

中古資産を法定耐用年数で償却した後に見積法や簡便法への変更はできない

1.中古資産でも原則は法定耐用年数で償却

 減価償却資産の耐用年数については、会計上はその資産の実情に応じた耐用年数を企業等が独自に決定することを理想としていますが、税法上は公平性等の観点よりそのような自主性を認めていません。
 他方、中古資産については、個々の資産の経過年数が異なること、残存耐用年数の把握がしやすい場合があること等により、残存耐用年数を見積ることが認められています(見積法)。
 また、資料の不足等により、企業等が適正にその中古資産の残存耐用年数を見積もることができない場合(見積法の適用が困難な場合)には、簡便法の取扱いが設けられています。
 これら中古資産の耐用年数については、以下の減価償却資産の耐用年数等に関する省令(以下「省令」といいます)第3条第1項に規定されています(太字は筆者による)。

第3条 個人において使用され、又は法人(人格のない社団等を含む。以下第5条までにおいて同じ。)において事業の用に供された所得税法施行令第6条各号(減価償却資産の範囲)又は法人税法施行令第13条各号(減価償却資産の範囲)に掲げる資産(中略)の取得(中略)をしてこれを個人の業務又は法人の事業の用に供した場合における当該資産の耐用年数は、前2条の規定にかかわらず、次に掲げる年数によることができる
 ただし、当該資産を個人の業務又は法人の事業の用に供するために当該資産について支出した所得税法施行令第181条(資本的支出)又は法人税法施行令第132条(資本的支出)に規定する金額が当該資産の取得価額(中略)の100分の50に相当する金額を超える場合には、第2号に掲げる年数についてはこの限りでない。
一 当該資産をその用に供した時以後の使用可能期間(中略)の年数
二 次に掲げる資産(別表第1、別表第2、別表第5又は別表第6に掲げる減価償却資産であつて、前号の年数を見積もることが困難なものに限る。)の区分に応じそれぞれ次に定める年数(その年数が2年に満たないときは、これを2年とする。)
イ 法定耐用年数(中略)の全部を経過した資産 当該資産の法定耐用年数の100分の20に相当する年数
ロ 法定耐用年数の一部を経過した資産 当該資産の法定耐用年数から経過年数を控除した年数に、経過年数の100分の20に相当する年数を加算した年数

 本規定はいわゆる「できる規定」であって、中古資産を取得したときでも、原則は法定耐用年数で減価償却します。
 また、見積法(省令第3条第1項第1号)が適用困難な場合に簡便法 (省令第3条第1項第2号) を採用することになりますが、実務的には簡便法を用いることが多いと思われます。
 簡便法の計算式は、次のとおりです。

1.法定耐用年数の全部が経過しているもの
 法定耐用年数×0.2

2.法定耐用年数の一部が経過しているもの
 (法定耐用年数―経過年数)+経過年数×0.2

3.中古資産に支出した改良費>再調達原価×0.5のとき
 法定耐用年数

(注)計算した年数に1年未満の端数があるときは切捨て、2年に満たない場合は2年とします。

2.見積法・簡便法による耐用年数の算定は事業供用年度のみ可

 中古資産の残存耐用年数を見積法や簡便法で算定する場合の留意点は、以下の耐用年数の適用等に関する取扱通達1-5-1に記載されていいます(太字は筆者による)。

1-5-1 中古資産についての省令第3条第1項第1号に規定する方法(以下1-7-2までにおいて「見積法」という。)又は同項第2号に規定する方法(以下1-5-7までにおいて「簡便法」という。)による耐用年数の算定は、その事業の用に供した事業年度においてすることができるのであるから当該事業年度においてその算定をしなかったときは、その後の事業年度(その事業年度が連結事業年度に該当する場合には、当該連結事業年度)においてはその算定をすることができないことに留意する。
(注) 法人が、法第72条第1項に規定する期間(以下「中間事業年度」という。)において取得した中古の減価償却資産につき法定耐用年数を適用した場合であっても、当該中間事業年度を含む事業年度においては当該資産につき見積法又は簡便法により算定した耐用年数を適用することができることに留意する。


 本通達は、中古資産についての見積法・簡便法による耐用年数の算定は、当該中古資産を取得してこれを事業の用に供した最初の事業年度に限りすることができ、当該事業年度において算定しなかったときは、その後の事業年度において算定することはできない旨を定めています。
 見積法・簡便法はあくまでも法定耐用年数の特則であること、そして、いつでも変更が可能であるとすると利益調整等のために納税者によって恣意的に変更される可能性があることから、特則である見積法・簡便法の適用を望む企業等は、中古資産を事業の用に供した最初の事業年度において、自らその意思を表示してその適用を受けることを要し、その意思を表示しなかった場合には原則どおり法定耐用年数が適用され、これを事後的に変更することはできない、ということです。

未払計上した決算賞与に係る社会保険料は未払計上できない

1.決算賞与の損金算入の要件

 利益が出ている法人では、決算対策として使用人賞与を未払計上することがあります(いわゆる決算賞与です)。例えば、3月決算法人が3月末の決算仕訳で使用人賞与を未払計上し、実際に支給するのが翌期になる場合です。
 使用人賞与については、実際に支給をした日の属する事業年度に損金算入するのが原則ですが 、その例外として以下の要件を満たせば、未払計上した使用人賞与を損金算入することができます。

(1) 支給額を各人別に、かつ、同時期に支給を受ける全ての使用人に対して通知をしていること
(2) その支給額につき(1)の通知をした日の属する事業年度終了の日の翌日から1か月以内に賞与を支給すること
(3) その支給額につき(1)の通知をした日の属する事業年度において損金経理をしていること

 上記3要件を満たす使用人賞与については、通知日の属する事業年度に損金算入することができます。
 一般に、賞与はその支給額を通知するのとほぼ同時に支給されるのが慣行となっているものの、事業年度末において各人別に支給額が通知され、たまたま支給が遅れているような場合にまで一切損金算入することを認めないのは適当でないことから、一定範囲で通知をした日の属する事業年度においても損金の額に算入することを認めた上で、取扱いの統一性を確保し恣意性を排除する観点から、上記3要件が規定されています。

2.未払計上した決算賞与に係る社会保険料

 では、さらなる節税対策として、上記1の損金算入要件を満たす未払決算賞与について、その社会保険料を未払計上して損金算入することはできるのでしょうか?
 結論を先に述べると、未払計上した決算賞与に係る社会保険料を未払計上しても、法人の支払債務が確定していないため損金算入することはできない、ということになります。
 社会保険料の損金算入時期については、法人税基本通達9-3-2で次のように規定されています(下線は筆者による)。

9-3-2 法人が納付する次に掲げる保険料等の額のうち当該法人が負担すべき部分の金額は、当該保険料等の額の計算の対象となった月の末日の属する事業年度の損金の額に算入することができる。
(1) 健康保険法第155条《保険料》又は厚生年金保険法第81条《保険料》の規定により徴収される保険料
(2) 旧効力厚生年金保険法第138条《掛金》の規定により徴収される掛金(同条第5項《設立事業所の減少に係る掛金の一括徴収》又は第6項《解散時の掛金の一括徴収》の規定により徴収される掛金を除く。)又は同法第140条《徴収金》の規定により徴収される徴収金
(注)同法第138条第5項又は第6項の規定により徴収される掛金については、納付義務の確定した日の属する事業年度の損金の額に算入することができる。


 法人税基本通達9-3-2では、当該保険料等の額の計算の対象となった月の末日の属する事業年度の損金の額に算入することができるとされています。
 この「保険料等の額の計算の対象となった月の末日」とは、具体的にはいつを指すのでしょうか?
 健康保険の各月の保険料の計算については、健康保険法156条1項において、各被保険者の標準報酬月額及び標準賞与額にそれぞれ保険料率を乗じる旨が規定されており、同法45条1項において、被保険者が賞与を受けた月において、その月に当該被保険者が受けた賞与額に基づき、これに千円未満の端数を生じたときは、これを切り捨てて、その月における標準賞与額を決定する旨が規定されています。
 すなわち、賞与に係る保険料は標準賞与額に保険料率を乗じて計算しますが、その標準賞与額が決定されるのは被保険者が賞与を受けた月ということになります。
 また、健康保険の保険料の納付義務については、健康保険法161条2項において、事業主がその使用する被保険者及び自己の負担する保険料を納付する義務を負うことが規定されていますが、同法156条3項では、前月から引き続き被保険者である者がその資格を喪失した場合には、その月分の保険料は算定しない旨が規定されています。
 すなわち、被保険者である従業員等が退職等の理由によりその月に被保険者の資格を喪失した場合には、事業主はその退職した従業員等に係る保険料の納付義務を負わないことになります。
(厚生年金保険の保険料の計算と納付義務についても、厚生年金保険法81条1~3項、19条1項、24条の3第1項に規定されていますが、健康保険と同様の理論構成になりますので、ここでは省略します。)

 以上から、法人が納付する健康保険及び厚生年金保険の保険料は、その保険料の額の計算の対象となった月の末日において、その時点で使用している被保険者(従業員等)に係るものについて、その納付義務が確定する性質と解されるものであるから、法人税基本通達9-3-2は、その納付告知又は実際の納付を待たずに、損金算入することができる旨を明らかにしています。そして、賞与に係る保険料は、被保険者が賞与を受けた月に、その受領額を基に標準賞与額を決定し、その標準賞与額に保険料率を乗じて計算されるのであるから、同通達に定める「保険料の額の計算の対象となった月の末日」とは、被保険者が賞与を受けた月(雇用者である法人側からみれば、賞与を支払った月)の末日をいうものと認められます。
 つまり、「保険料等の額の計算の対象となった月の末日」(債務の確定する日)とは、実際に賞与を支給した月の末日を指します。
 したがって、 未払計上した決算賞与に係る社会保険料を未払計上しても、法人の支払債務が確定していないため損金算入することはできないことになります。

自宅家賃を法人の経費にするには?

 個人事業主が賃貸住宅を自宅兼事務所として使用する場合は、その家賃の一部を必要経費とすることができます。例えば、自宅の総床面積に占める事務所部分の面積の割合が20%だとしたら、家賃の20%を地代家賃として必要経費にすることができます。
 では、このような取り扱いは、法人にもあるのでしょうか?創業間もない法人は、自宅である賃貸住宅を本店所在地として登記し、個人事業主と同じように自宅の一角を事務所部分として使用することがあります。この場合、その家賃は法人の経費にできるのでしょうか?

1.個人名義の賃貸借契約の場合

 法人の社長が個人名義で賃貸借契約をしている場合、社長が貸主(不動産オーナー)に支払った家賃の一部は、地代家賃として法人の経費とすることができます。
 家賃のうち経費にできるのは、個人事業主の場合と同様に、自宅の総床面積に占める事務所部分の面積の割合に応じた部分です。
 この場合、法人から賃貸借契約の名義人である社長へ家賃を支払うことになります。したがって、勘定科目内訳書(地代家賃等の内訳書)の貸主欄には、不動産オーナーではなく社長の氏名・住所を記載します。
 ここで気になるのが、法人から家賃を受け取る社長に不動産所得が発生し、所得税の負担がかかるのではないかということですが、社長は不動産オーナーにも家賃を支払っているため所得は発生しません。
 注意しなければならないのは、社長と法人との間で賃貸借(転貸借)契約を締結して契約書を残しておくということです。
 また、もともとの不動産オーナーと社長との賃貸借契約書に、転貸禁止条項や商用利用禁止条項がないことを確認しておくことも必要です。

2.法人名義の賃貸借契約の場合

 社長の自宅である賃貸住宅を、社長名義ではなく法人名義で賃貸借契約をした場合は、家賃のうち自宅兼事務所の事務所部分だけではなく、自宅部分の一部も経費にすることができます。法人が住宅を借り上げて社宅として取り扱うことによって、その家賃の住居部分の経費化が可能になります。
 この場合、社長は法人に対して社宅家賃を支払うことになりますが、その月額賃貸料は次の(1)と(2)のいずれか多い方の金額となります。

(1) 法人が支払う賃借料の額の50%に相当する金額
(2) 仮にその住宅を法人が所有しているとした場合に、次の算式により計算した金額
{その年度の家屋の固定資産税の課税標準額×12%(木造家屋以外の家屋については10%)+その年度の敷地の固定資産税の課税標準額×6%}×1/12

 ただし、その貸与した家屋の床面積(2以上の世帯を収容する構造の家屋については、1世帯として使用する部分の床面積。)が132㎡(木造家屋以外の家屋については99㎡)以下であるものに係る通常の賃貸料の額は、上記にかかわらず、次に掲げる算式により計算した金額となります。

その年度の家屋の固定資産税の課税標準額×0.2%+12円×当該家屋の総床面積(㎡)/3.3(㎡)+その年度の敷地の固定資産税の課税標準額×0.22%

 例えば、総床面積100㎡、事務所部分20㎡、家賃10万円の賃貸マンションを法人名義で借りた場合、法人の実質的な経費は次のようになります(便宜上、法人が支払う住居部分の賃借料の50%を社宅家賃としています)。

(1) 事務所部分:10万円×20㎡/100㎡=2万円
(2) 社長が法人に支払う社宅家賃:(10万円-2万円)×50%=4万円
(3) 法人の実質的な経費:10万円-4万円=6万円

 法人は貸主である不動産オーナーに10万円の家賃を支払って地代家賃で費用処理しますが、社長から受け取る社宅家賃4万円を雑収入で収益計上するため、法人の実質的な経費は10万円-4万円=6万円となります。

災害による保険金収入の課税の繰延べと経理処理

1.災害損失特別勘定の繰入れによる損金算入

 昨今の台風や地震などの自然災害の大型化により、被災地では被害が甚大になるケースがあります。
 この被災地の被害に対して、最近では損害保険会社は保険金を迅速に支払うようになってきています。一方、被害が甚大な場合は、修理業者に修理を依頼しても、資材や人員の不足などから実際に修理をしてもらうまでに長期間待たされることもあります。
 その結果、被災事業年度に保険金の支払いを受けたにもかかわらず、実際に修理が行われるのが翌事業年度にずれるという事態も起こります。そうすると、被災事業年度においては保険金収入だけが計上(益金算入)されることになり、翌事業年度の修理に充てられる資金が目減りしてしまうという問題が生じます。
 このような場合には、修理業者の見積額など合理的に見積もった金額を災害損失特別勘定繰入額として損金経理し、保険金収入があった被災事業年度の損金の額に算入することによって、保険金収入に係る課税を繰り延べることができます(法人税基本通達12-2-6)。
 また、被災資産の修繕費用等の見積額は、その修繕等を行うことが確実な被災資産につき、例えば次の金額によるなど合理的に見積もるものとされています (法人税基本通達12-2-8) 。

(1) 建設業者、製造業者等による当該被災資産に係る修繕費用等の見積額
(2) 相当部分が損壊等をした当該被災資産につき、次のイからロを控除した金額
 イ 再取得価額又は国土交通省建築物着工統計の工事費予定額から算定した建築価額等 を基礎として、その取得の時から被災事業年度終了の日まで償却を行ったものとした場合に計算される未償却残額
 ロ 被災事業年度終了の日における価額

 なお、この制度の適用を受けようとする場合は、災害損失特別勘定繰入額を損金経理により損金算入した事業年度の法人税の確定申告書に「災害損失特別勘定の損金算入に関する明細書」を添付する必要があります (法人税基本通達12-2-9) 。

2.災害損失特別勘定の経理処理

 以下において、簡単な数値例で経理処理を確認します(勘定科目名は一例です)。

(1) 被災資産につき、修理業者から見積もりを取って損害保険会社に保険金の支払いを請求したところ、1,000万円の保険金が支払われた。

借方 金額 貸方 金額
現金預金 1,000万円 保険金収入
(P/L特別利益)
1,000万円

(2) 修理業者の修理は翌事業年度に行われることになった。保険金収入の課税を繰り延べるため、決算で災害損失特別勘定1,000万円を設定した。

借方 金額 貸方 金額
災害損失特別勘定繰入損
(P/L特別損失)
1,000万円 災害損失特別勘定(B/S流動負債) 1,000万円

(3) 翌事業年度になって、950万円の修理が行われた。

借方 金額 貸方 金額
災害損失
(P/L特別損失)
950万円 現金預金 950万円
災害損失特別勘定 950万円 災害損失特別勘定取崩額
(P/L特別利益)
950万円

※ 災害のあった日から1年を経過する日の属する事業年度において、災害損失特別勘定の残額がある場合には、その残額を取り崩して益金の額に算入することとなりますが、やむを得ない事情により修繕等が遅れているときは、税務署長の確認を受けることにより、その修繕等が完了すると見込まれる日の属する事業年度まで、災害損失特別勘定の残額の益金算入を延長することができます。

(4) 決算で災害損失特別勘定の残額を取り崩した。

借方 金額 貸方 金額
災害損失特別勘定 50万円 災害損失特別勘定取崩額
(P/L特別利益)
50万円

役員報酬月額を低額に抑えて賞与を支給する社会保険料節約術の税務上のリスク

1.社会保険料節約スキーム

 社会保険料の負担を軽減するため、役員の報酬月額を極端に低く抑え、その代わりに賞与(事前確定届出給与)を支給するという方法を、数年前から耳にするようになりました。
 この方法では社会保険料の負担を減らすことができますが、それは、賞与に係る健康保険料と厚生年金保険料に上限が設けられているためです。
 賞与に係る社会保険料の上限は、賞与の支給額が健康保険料については年間累計で573万円、厚生年金保険料については1回の支給につき150万円となっています。
 つまり、賞与の支給額がこれらの上限を超える場合、例えば1,000万円の賞与を支給したとしても、健康保険料については573万円、厚生年金保険料については150万円をベースに社会保険料が計算されることになります。
 したがって、毎月の役員報酬を低く抑える一方、上限を超える役員賞与を支給すると、上限を超える部分の社会保険料は支払わなくてよいことになるので、社会保険料の節約になります。

 例えば、毎月100万円(年間1,200万円)の役員報酬の支給を、毎月10万円の役員報酬と1080万円の役員賞与の支給に変更した場合は、どれくらいの節約になるでしょうか?
 以下において、次の前提の下でシミュレーションをしてみます。

【前提】
・年齢50歳(配偶者あり)
・健康保険組合は協会けんぽ(兵庫)、一般の事業
・2021(令和3)年4月時点の税率、保険料に基づいて計算

 毎月100万円(年間1,200万円)の役員報酬を支給した場合の社会保険料(会社負担分+個人負担分)は、次のとおりです。

健康保険料 117,992円
厚生年金保険料 118,950円
子ども・子育て拠出金 2,340円
合計(月額) 239,282円
合計(年額) 2,871,384円

 毎月10万円の役員報酬と1,080万円の役員賞与を支給した場合の社会保険料(会社負担分+個人負担分)は、次のとおりです。

  役員報酬10万円 役員賞与1,080万円
健康保険料 11,799.2円 689,892円
厚生年金保険料 17,934円 274,500円
子ども・子育て拠出金 353円 5,400円
合計(月額) 30,086円 969,792円
合計(年額) 361,032円 969,792円

 以上の結果から、毎月100万円(年間1,200万円)の役員報酬の支給を、毎月10万円の役員報酬と1,080万円の役員賞与の支給に変更した場合は、2,871,384円-(361,032円+969,792円)=1,540,560円の社会保険料の節約(年額)になります。

2.税金を考慮しても有利?

 役員報酬月額を低く抑えて役員賞与を支給する方法は、上記のとおり社会保険料の節約になりますが、社会保険料が減るということは、会社の利益や個人の所得から控除できる額も減ることになりますので、その分の法人税等や所得税、住民税が増えることになります。
 社会保険料は、会社と個人が折半して負担しますので、1,540,560円を節約することにより、会社の利益と個人の所得がそれぞれ770,280円ずつ増えることになります。
 この増えた部分に対して税金がどれくらいかかるのかをシミュレーションすると、下表のようになります。税率は、法人税等31%、所得税33%、住民税10%としています。

法人税等 238,786円
所得税 254,192円
住民税 77,028円
合計 570,006円

 社会保険料を1,540,560円節約した結果、税金が570,006円増えますが、それでも1,540,560円-570,006円=970,554円だけ社会保険料の節約効果の方が大きいことがわかります。税金を考慮しても、この社会保険料節約スキームは有利であるといえます。

3.税務上のリスク

 この社会保険料節約スキームを実行するには、税務署に事前確定届出給与に関する届出をし、その届出通りの支給をしなければなりません。
 では、届出通りの支給をしている場合、役員賞与は損金の額に算入できるのでしょうか?
 法人が役員に対して支給する給与の額については、定期同額給与、事前確定届出給与及び業績連動給与に該当する場合は、原則として損金の額に算入されますので、事前確定届出給与の届出をし、そのとおりに給与と賞与を支給しているのであれば、その点では損金の額に算入することが認められます(法人税法34条1項2号)。
 一方、法人税法34条2項は、役員給与のうち不相当に高額な部分の金額は損金に算入しない旨を規定しています。
 ここで懸念されるのは、各月の役員報酬の支給額と役員賞与の支給額に大きな差があることから、不相当に高額であると認められる場合には、その部分の金額は損金の額に算入されないのではないか、ということです。
 先の例では、年間の給与総額が120万円で賞与の額が1,080万円、合計で1,200万円ですが、税法が定める不相当に高額な給与とは、各月の給与の支給額や個々の賞与の額で判定するのか、年間の支給総額で判定するのか、について疑問が生じます。
 この不相当に高額な部分の判定基準は、以下の実質基準と形式基準の2つが規定されており、これらの基準により算出される超過金額のうち、多い方の額を過大とすることとされています(法人税法施行令70条)。

(1) 法人が各事業年度においてその役員に支給した給与の額が、その役員の職務の内容、その法人の収益及びその使用人に対する給与の支給の状況その法人と同種の事業を営む法人で事業規模が類似するものの役員に対する給与の支給の状況等に照らし、その役員の職務に対する対価として相当であると認められる金額を超える場合におけるその超える部分の金額(実質基準)
(2) 定款の規定又は株主総会等の決議により役員に対する給与として支給することができる金銭の額の限度額若しくは算定方法等を定めている法人が、各事業年度においてその役員に対して支給した給与の額の合計額がその事業年度に係るその限度額及びその算定方法により算定された金額等を超えるにはその超える部分の金額(形式基準)

 税法の規定振りを見ると、「 各事業年度においてその役員に支給した給与の額 」又は「 各事業年度においてその役員に対して支給した給与の額の合計額 」とされており、各月の給与の支給額とも個々の賞与の額とも書かれていません。つまり、不相当に高額な部分の金額は、 各月の給与の支給額や個々の賞与の額で判定するのではなく、年間の支給総額で判定する ことになります。先の例では、報酬月額10万円や賞与1,080万円で判定するのではなく、支給総額の1,200万円で判定します。
 したがって、各月の役員報酬の支給額と役員賞与の支給額に大きな差があったとしても、事前確定届出給与の届出のとおりに支給されており、その支給した給与の合計額が不相当に高額であると認められない場合には、損金の額に算入されます
 結局のところ、この問題は、役員に支給した給与と賞与の総額が不相当に高額であるか否かという点に帰結します。

店舗の蛍光灯100本を単価1万円のLEDに取替えた場合の費用は修繕費?

1.修繕費か資本的支出か?

 LEDは消費電力が少ないので電気代の節約になり、また、寿命も長いので従来の蛍光灯よりも取替費用を抑えることができます。
 そのため、初期投資額はそれなりになるものの、長い目で見れば費用削減につながるため、店舗や事務所などで使用している蛍光灯を一斉に蛍光灯型LEDランプに取り替えるところも増えています。
 1本2本の交換なら、その購入費用を消耗品費などの勘定科目で費用処理することに躊躇することはないと思います。
 しかし、店舗や事務所のすべての蛍光灯を一斉にLEDに交換するとなると金額も高額になりますので、修繕費として費用処理できるのか、資本的支出として資産計上すべきなのかについて疑問が生じることもあると思います。
 そこで、次の設例をもとに、この点について考えます。

【取替の概要】
・店舗の蛍光灯100本すべてを、蛍光灯型LEDランプに取り替える。
 なお、この取替えに当たっては、建物の天井のピットに装着された照明設備(建物附 属設備)については、特に工事は行われない。
・蛍光灯型LEDランプの購入費用は、1本10,000円
・取付工事費は、1本1,000円
・取替えに係る費用総額は、1,100,000円

【取替メリット】
・消費電力が少ないので、電気代の削減になる
・寿命が長いので、費用が節約できる
・LEDランプの白色光は紫外線をほとんど含まないため、生鮮物や化学薬品に影響が小さく、また虫の飛来抑制にもなる
・安全で軽量である
・発熱が少ないため、空調に与える影響が少なく、エアコンなどに係る負担を軽減できる

2.部品の性能向上であって照明設備の価値向上ではない

 その支出が修繕費になるのか資本的支出になるのかについては、次のように規定されています。
 すなわち、法人がその有する固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち当該固定資産の通常の維持管理のため、又はき損した固定資産につきその原状を回復するために要したと認められる部分の金額は修繕費となります(法人税基本通達7-8-2)。
 一方、法人がその有する固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち、当該固定資産の価値を高め、又はその耐久性を増すこととなると認められる部分に対応する金額は資本的支出となります(法人税法施行令第132条、法人税基本通達7-8-1)。

 本設例において考慮すべき点は、蛍光灯を蛍光灯型LEDランプに取り替えることで、節電効果や使用可能期間などが向上している事実をもって、その有する固定資産の価値を高め、又はその耐久性を増しているとして資本的支出に該当するのかどうかということです。
 この点について、蛍光灯(又は蛍光灯型LEDランプ)は、照明設備(建物附属設備)がその効用を発揮するための一つの部品であり、かつ、その部品の性能が高まったことをもって、建物附属設備として価値等が高まったとまではいえないと考えられます。
 したがって、本設例の蛍光灯型LEDランプ への取替費用(総額1,100,000円)は、修繕費として処理することが相当です。

2以上の構造からなる建物の一部を区分所有した場合の耐用年数の判定

 2以上の構造からなる建物(35階建ての高層ビルのうち、1階から8階までが鉄骨鉄筋コンクリート造で、9階から35階までが金属造のもの)の1階から15階までをA法人が取得し、16階から35階までをB法人が取得することになりました。
 この場合、A法人が取得する部分の耐用年数は、次のうちどちらで判定するのでしょうか?

(1) 1階から8階までを鉄骨鉄筋コンクリート造で判定し、9階から15階までを金属造で判定する
(2) 1階から15階まですべて金属造で判定する

1.耐通1-2-1(建物の構造の判定)

 結論を先に述べると、正解は(2)になります。直感的には、(1)の方が合理的な判定方法のように見えますが、耐用年数の適用等に関する取扱通達1-2-1(建物の構造の判定)では、次のように規定されています。

1-2-1 建物を構造により区分する場合において、どの構造に属するかは、その主要柱、耐力壁又ははり等その建物の主要部分により判定する。

 本件建物のように8階までが鉄骨鉄筋コンクリート造、9階から35階までが金属造の高層ビルについては、金属造部分が大部分を占めることから、建物全体が金属造と認められます。 
 一般に超高層ビルのように下部の一部が鉄骨鉄筋コンクリート造、その他の部分が金属造であって、全体として金属造に該当すると認められる場合において、その一部の所有権を取得したときは、当該部分が鉄骨鉄筋コンクリート造部分であっても、耐用年数を適用する場合の構造の判定に当たっては、耐用年数の適用等に関する取扱通達1-2-2(2以上の構造からなる建物)の適用がある場合を除き、その建物全体の構造により判定することが相当と考えられます。
 したがって、本件建物については、 耐用年数の適用等に関する取扱通達1-2-2の適用はありませんので、金属造の建物としてその用途に応じて耐用年数を適用します。

2.耐通1-2-2(2以上の構造からなる建物)

 上記のとおり、耐用年数を適用する場合の構造の判定に当たっては、耐用年数の適用等に関する取扱通達1-2-2(2以上の構造からなる建物)の適用がある場合を除き、その建物全体の構造により判定することが相当と考えられますが、 耐用年数の適用等に関する取扱通達1-2-2の内容は、次のとおりです。

1-2-2 一の建物が別表第一の「建物」に掲げる2以上の構造により構成されている場合において、構造別に区分することができ、かつ、それぞれが社会通念上別の建物とみられるもの(例えば、鉄筋コンクリート造り3階建の建物の上に更に木造建物を建築して4階建としたようなもの)であるときは、その建物については、それぞれの構造の異なるごとに区分して、その構造について定められた耐用年数を適用する。