慰安旅行費が福利厚生費となるための3要件と注意点

 福利厚生の一環として、日頃の従業員の頑張りを労うために慰安旅行を実施することがあります。福利厚生の一環として実施する慰安旅行なので、会社が負担した旅行代は当然福利厚生費になるものと経営者(または経理担当者)は考えがちですが、必ずしもそうではありません。
 今回は、慰安旅行費が福利厚生費となるための要件と注意点について確認します。

1.福利厚生費となる要件

 会社行事として行われる慰安旅行に参加することによって従業員が経済的利益を受ければ、原則としてこの経済的利益も給与と同様に所得税の課税対象になります。
 ただし、税務上の取扱いとして、会社が負担した費用が参加した従業員の給与として課税されるかどうかは、その旅行の条件を総合的に勘案して判定することとなります。
 国税庁タックスアンサーによると、慰安旅行によって従業員に供与する経済的利益の額が少額の現物給与は強いて課税しないという少額不追及の趣旨を逸脱しないものであると認められ、かつ、その旅行が次の(1)と(2)のいずれの要件も満たすものであるときは、原則として、その旅行の費用を旅行に参加した人の給与としなくてもよいことになっています。

(1) その旅行に要する期間が4泊5日(海外旅行の場合は、外国での滞在日数が4泊5日)以内であること
(2) その旅行に参加する従業員等の数が全従業員等(工場、支店等で行う場合は、その工場、支店等の従業員等)の50%以上であること

 (1)について補足すると、海外旅行の場合は4泊5日に移動日数(機内泊や船内泊)は含めません。また、(2)について補足すると、アルバイトや契約社員の方は参加比率に含めません。
 いずれにしても、この(1)(2)の要件については形式的に判断できますので、迷うことはないと思います。

 問題は、「少額の現物給与は強いて課税しないという少額不追及の趣旨を逸脱しないものであると認められ」る少額の金額はいくらなのか?ということです。
 これについて明文規定はありませんが、国税庁タックスアンサーに参考になる記載があります。タックスアンサーには、次の3つの事例が掲載されています。

[事例1]
イ 旅行期間3泊4日
ロ 費用及び負担状況 旅行費用15万円(内使用者負担7万円
ハ 参加割合100%
・・・旅行期間・参加割合の要件及び少額不追及の趣旨のいずれも満たすと認められることから原則として課税しなくてもよい

[事例2]
イ 旅行期間4泊5日
ロ 費用及び負担状況 旅行費用25万円(内使用者負担10万円
ハ 参加割合100%
・・・旅行期間・参加割合の要件及び少額不追及の趣旨のいずれも満たすと認められることから原則として課税しなくてもよい

[事例3]
イ 旅行期間5泊6日
ロ 費用及び負担状況 旅行費用30万円(内使用者負担15万円
ハ 参加割合50%
・・・旅行期間が5泊6日以上のものについては、その旅行は、社会通念上一般に行われている旅行とは認められないことから課税

 事例1と2は給与課税しなくてもよい例であり、会社負担額の7万円(1泊あたり2.33万円)と10万円(1泊あたり2.5万円)は、いずれも少額不追及の趣旨を満たす「少額の金額」とされています。
 一方、事例3は給与課税になる例ですが、旅行期間が4泊5日を超えているためであり、会社負担額の15万円(1泊あたり3万円)が少額であるか否かについては定かではありません。
 これらの事例から、3泊4日であれば7万円、4泊5日であれば10万円までは福利厚生費として処理して差し支えないと思われます。

2.慰安旅行費の注意点

 次のような場合には、慰安旅行費の会社負担額は福利厚生費になりませんのでご注意ください。

(1) 自己都合による不参加者に対し、その旅行への参加に代えて金銭を支給する場合には、不参加者のみならず参加者に対しても、その不参加者に対して支給する金銭に相当する給与の支給があったものとして課税されます。
 なお、会社の業務上の都合(商品搬入のための休日出勤等)による不参加者に対して、その旅行への参加に代えて金銭を支給する場合は、その不参加者のみが給与課税されます。
(2) 役員だけで行う旅行は役員賞与とみなされ、損金不算入となります。また、役員個人に対して給与課税されます。
(3) 取引先に対する接待、供応、慰安等のための旅行は、交際費になります。交際費が損金算入限度額を超える場合は、その超過分は損金不算入となります。

不良債権の未収利息はいつまで計上しなければならないか?

 資金を融資した場合、その貸付金に係る利息のうち支払期日が到来していないものについては、時の経過に応じて収益として計上しなければなりません。
 元本と利息は支払期日ごとに返済を受けていくことになりますが、資金を融資した相手先の経営状態が悪化し、これらの返済が滞ることがあります。
 今後も返済が滞ることが予測される場合でも、未収利息の計上は継続しなければならないのでしょうか?
 この点について、税務上の取扱いを以下で確認します。

1.法人税基本通達2-1-25

 税務上は法人税基本通達2-1-25において、法人の有する貸付金又は当該貸付金に係る債務者について次のいずれかの事実が生じた場合には、当該貸付金から生ずる利子の額(実際に支払を受けた金額を除く)のうち当該事業年度に係るものは、当該事業年度の益金の額に算入しないことができるとされています。

(1) 債務者が債務超過に陥っていることその他相当の理由により、その支払を督促したにもかかわらず、当該貸付金から生ずる利子の額のうち当該事業年度終了の日以前6月(当該事業年度終了の日以前6月以内に支払期日がないものは1年以内にその支払期日が到来したものの全額が当該事業年度終了の時において未収となっており、かつ当該期間内にその支払期日が到来したもの以外の利子について支払を受けた金額が全くないか又は極めて少額であること
(2) 債務者につき更生手続が開始されたこと
(3) 債務者につき債務超過の状態が相当期間継続し、事業好転の見通しがないこと、当該債務者が天災事故経済事情の急変等により多大の損失を蒙ったことその他これらに類する事由が生じたため、当額貸付金の額の全部又は相当部分についてその回収が危ぶまれるに至ったこと
(4) 更生計画認可の決定債権者集会の協議決定等により当該貸付金の額の全部又は相当部分について相当期間(おおむね2年以上)棚上げされることとなったこと

 これらの事例にあたる場合は、決算処理で未収利息を計上しなくてもよいこととなっています。受け取っていない、また、受け取る見込みのない利息を収益に計上して課税されることのないように注意しなければなりません。

2.法人税基本通達2-1-25の趣旨

 法人税基本通達2-1-25に掲げる未収利息の収益計上を見合わせる場合の事情は、いずれも元本そのものが不良債権化したというものであって、さらに具体的事情によっては元本自体の貸倒処理又は貸倒引当金の設定も考慮しなければならないケースです。
 このような場合にも、原則どおり未収利息の計上を強制することは実態に合いませんので、同通達により未収利息の計上見合せの特例が設けられています。

事業者が経費支払時にポイントを使用した場合の経理処理

 VISAやJCBなどのクレジットカードで買い物をすると、利用金額に応じてポイントが付与されます。このポイントは、次回以降の買い物の際に購入代金に充てることができます。
 今回は、事業者(法人、個人)が経費支払時にこのようなポイントを使用した場合の経理処理について確認します。
 なお、一般消費者である個人がポイントを使用したときの課税関係については、本ブログ記事「個人が商品購入時に取得又は使用したポイントは所得税の課税対象となるか?」をご覧ください。
 

1.事業者が法人の場合

 法人がポイントで経費を支払った場合の経理処理は、次のいずれかの方法によります(消費税の会計処理は税込方式とします)。

(1) 値引処理(ポイント使用後の支払金額を経費算入する処理)

〇月〇日 消耗品11,000円をクレジットカードで購入した。

借方 金額 貸方 金額
消耗品費 11,000 未払金 11,000

△月△日 〇月〇日の購入代金11,000円が決済され、110円分のポイントが付与された。

借方 金額 貸方 金額
未払金 11,000 現金預金 11,000

◇月◇日 消耗品5,500円をクレジットカードで購入し、△月△日に付与された110円分のポイントを使用した。

借方 金額 貸方 金額
消耗品費 5,390 未払金 5,390

※ ポイント使用後の金額(5,500-110=5,390)を経費算入します。

(2) 両建処理(ポイント使用前の支払金額を経費算入し、ポイント使用額を雑収入に計上する処理)

〇月〇日 消耗品11,000円をクレジットカードで購入した。

借方 金額 貸方 金額
消耗品費 11,000 未払金 11,000

△月△日 〇月〇日の購入代金11,000円が決済され、110円分のポイントが付与された。

借方 金額 貸方 金額
未払金 11,000 現金預金 11,000

◇月◇日 消耗品5,500円をクレジットカードで購入し、△月△日に付与された110円分のポイントを使用した。

借方 金額 貸方 金額
消耗品費 5,500 未払金 5,390
    雑収入 110

※ ポイント使用前の金額(5,500)を経費算入し、ポイント使用額(110)を雑収入に計上します。雑収入の消費税課税区分は不課税です。

2.事業者が個人(個人事業主)の場合

 個人事業主がポイントで経費を支払った場合の経理処理は、法人より少し複雑です。
 個人事業主には一般消費者としての側面と事業者としての側面がありますが、クレジットカードの利用で貯まったポイントも、プライベートで貯まったものと事業で貯まったものがあります。
 事業で貯まったポイントを使用した場合の経理処理は、法人の場合と同様に値引処理と両建処理のいずれかの方法によります(両建処理における雑収入の所得区分は事業所得、消費税課税区分は不課税となります)。
 プライベートで貯まったポイントを事業で使用した場合の経理処理は、次のようになります。

〇月〇日 消耗品11,000円をクレジットカードで購入した。

借方 金額 貸方 金額
消耗品費 11,000 未払金 11,000

△月△日 〇月〇日の購入代金11,000円が決済され、110円分のポイントが付与された。

借方 金額 貸方 金額
未払金 11,000 現金預金 11,000

◇月◇日 消耗品5,500円をクレジットカードで購入し、△月△日に付与された110円分のポイントを使用した。

借方 金額 貸方 金額
消耗品費 5,500 未払金 5,390
    事業主借 110

プライベートで貯まったポイントを使用したときは、使用前の金額(5,500)を経費算入し、ポイント使用額を事業主借とします。ポイント使用額は一時所得の課税対象になることもありますので、雑収入ではなく事業主借で処理して事業所得の収入金額に算入しないようにします。

 プライベートで貯まったポイントを事業で使用した場合の経理処理は、上記のようになります。このような処理は、プライベート用と事業用のクレジットカードを分けるなどして、ポイントが区分できることが前提です。
 しかし、現実的にはプライベートで貯まったポイントなのか事業で貯まったポイントなのかを区分することは煩雑であり、ポイント使用額を雑収入とするのか事業主借とするのか判断しかねることもあります。また、雑収入とすべきものを事業主借とすると、税務調査の際にポイント使用額分の課税漏れを指摘される懸念もあります。
 このような場合は、簡易的な処理として、ポイント使用後の金額を経費に算入する次の処理でも問題ありません(値引処理と同じになります)。

借方 金額 貸方 金額
消耗品費 5,390 未払金 5,390

紹介料が交際費とならないための要件

 不動産業者や建設業者などが顧客や物件の紹介を受けたときに、紹介者(紹介をしてくれた人)に対して紹介料(情報提供料)を支払うことがあります。
 この場合、その紹介料は交際費に該当するケースもありますが、一定の要件を満たせば交際費にならないケースもあります。
 今回は、紹介料が交際費にならないための要件を確認します。

1.紹介者が情報提供を業とする場合

 情報提供を業とする者とは、例えば不動産仲介業のように仲介、代理、斡旋を行う業者(法人・個人)が考えられます。また、不動産売買を主たる業務とする事業者が、自身の販売網を活かして情報提供を行う場合も考えられます。
 これらの者に支払う紹介料については、紹介者が業務として紹介を行っていますので交際費とはならず、支払手数料等として全額が損金になります。
 交際費の問題が生じるのは、情報提供を業としない者へ紹介料を支払った場合です。

2.紹介者が情報提供を業としない場合

 情報提供を業としない者(法人・個人)に対して紹介料を支払った場合は、その紹介料は原則として交際費になります。
 現行制度では、資本金1億円以下の中小企業の場合、年間800万円までの交際費は損金算入されますが、800万円を超える部分は損金算入不可です。交際費とすべき紹介料を支払手数料として処理していた場合に、その紹介料が税務調査の際に交際費と認定されて、結果的に交際費が年間800万円を超えてしまうこともあります。
 しかし、次の要件をすべて満たす場合は、情報提供を業としない者に支払った紹介料は交際費に該当しないこととされています(租税特別措置法通達61の4(1)-8)。

(1) その金品の交付があらかじめ締結された契約に基づくものであること
(2) 提供を受ける役務の内容が当該契約において具体的に明らかにされており、かつ、これに基づいて実際に役務の提供を受けていること
(3) その交付した金品の価額がその提供を受けた役務の内容に照らし相当と認められること

 (1)の「あらかじめ締結された契約に基づくもの」という要件については、契約そのものは口頭でも成立しますが、税務調査の際に証拠を示すためにも、文書による契約が望ましいといえます。しかし、紹介者が情報提供を業とする者なら別ですが、そうでない者との間にあらかじめ文書による契約を交わすことは稀であると思われます。
 そこで、契約書でなくても、例えば、紹介料の支払基準を記載したポスターやチラシなどを、社内その他所要の場所に掲示する方法でも構いません。

 (2)の「役務の提供を受けていること」という要件については、何をもって役務の提供を受けたとするかを明らかにしておく必要があります。
 例えば、建設会社が紹介を受けた見込客と交渉した結果、他の建設会社の方が条件がよいとされ成約しなかった場合、役務の提供を受けたか否かが問題となります。役務の提供の程度がどうであるかは、契約の具体的内容がどのようになっているかに係る問題であると解されるため、成約したら支払うのか、確かな情報だけに支払うのか、いわゆるガセネタでも支払うのか等を明らかにしておく必要があります。

 (3)の「提供を受けた役務の内容に照らし相当と認められること」という要件については、(2)で明示された役務の提供の程度(成約したら支払う、確かな情報だけに支払う、ガセネタでも支払う等)を考慮して判断されます。
 しかし、紹介料には統一的な相場はなく、業種や規模、内容等によって異なりますので、同業他社の相場情報が参考になると思われます。
 注意しなければならないことは、同程度の役務の内容なのに紹介をしてくれた相手によって支払額が変わったりすると、単なる謝礼として交際費とみなされる可能性があるということです。税務調査で否認されないためにも、合理的な支払基準を作成する必要があります。

役員報酬の前払いは定期同額給与(経費)になりません

 前回、「役員報酬の前払いは短期前払費用(経費)になりません」という記事を書きました。この記事では、翌期の役員報酬を当期に前払いしても、当期の経費にならないことを確認しました。
 では、当期の役員報酬を当期に前払いした場合は、その役員報酬は当期の経費になるのでしょうか。今回は、この点について確認します。

1.設例

 以下の簡単な例を設けて話を進めます。

【設例】
(1) A社(3月決算法人)は○年5月25日に定時株主総会を開き、代表取締役甲の5月26日から翌年5月25日までの役員報酬を1,200万円(月額100万円)とすることを決議をした。なお、支給日は各月25日である。

(2) A社は、○年6月25日に6月分の役員報酬100万円と7月分以降の残り11回分1,100万円を甲に支給した。その際、A社は次のように会計処理をした。

借方 金額 貸方 金額
役員報酬 100万円 現金預金 1,200万円
前払金 1,100万円    

(3) A社は、〇年7月25日以降の各支給日に次のように会計処理をした。

借方 金額 貸方 金額
役員報酬 100万円 前払金 100万円

 

2.定期同額給与になるか?

 法人税法第34条第1項第1号(役員給与の損金不算入)において、定期同額給与は次のように定義されています。

法人税法第34条 (役員給与の損金不算入)
 内国法人がその役員に対して支給する給与・・・のうち次に掲げる給与のいずれにも該当しないものの額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
1 その支給時期が1月以下の一定の期間ごとである給与・・・で当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるものその他これに準ずるものとして政令で定める給与(次号において「定期同額給与」という。)

 また、法人税基本通達9-2-12において、定期同額給与は次のように定められています。

9-2-12 法第34条第1項第1号《定期同額給与》の「その支給時期が1月以下の一定の期間ごと」である給与とは、あらかじめ定められた支給基準(慣習によるものを含む。)に基づいて、毎日、毎週、毎月のように月以下の期間を単位として規則的に反復又は継続して支給されるものをいう・・・。

 上記設例において、A社は甲に対して、7月以降も各支給日に毎月100万円を支給していますので、定期同額給与とすることに問題がないように見えます。
 しかし、税務調査の際には、次の指摘がされる可能性があります。

3.役員に対する貸付金又は賞与

 税務署は、定期同額給与の判定において、上記のように役員報酬が前払いされている場合はその理由を問うこととしており、通常、当該役員に一時金が必要だったと判断されるようです。
 そのため、役員報酬を前払いした場合は、役員に対する貸付金又は賞与と認定される可能性があります。

役員報酬の前払いは短期前払費用(経費)になりません

 決算間近の節税対策として、翌1年分の家賃や保険料を前払いして当期の経費とすることがあります。しかし、使い方を間違えると、税務調査の際に否認されてしまいます。
 最近も顧問先様から、この短期前払費用の特例を使って役員報酬を前払いしたいとの相談がありました。直感的に無理だと思いましたが、根拠を示さなければなりません。調べてみると、裁決事例集に同じような事例が載っていました。
 今回は、役員報酬の前払いが短期前払費用に該当しない(当期の経費にならない)ことを確認します。

1.設例

 裁決事例集No.65-343頁を参考に、以下の簡単な例を設けて説明します。

【設例】
(1) A社(3月決算法人)は○年3月25日に臨時株主総会を開き、以下の決議をした。
① 代表取締役甲の3月26日から翌年3月25日までの役員報酬を1,200万円とすること
② 甲が、上記①の期間中に辞任するか解任された場合は、原則として、年俸額を⽇数按分すること

(2) A社は、○年3月25日に額面金額100万円の約束手形12枚を振り出して甲に支給した。なお、約束⼿形の決済期⽇は、4⽉25⽇以降の各⽉の25⽇である。

2.債務は確定しているか?

 法⼈税法第22条第3項第2号は、内国法⼈の各事業年度の所得の⾦額の計算上当該事業年度の損⾦の額に算⼊すべき⾦額として、当該事業年度の販売費、⼀般管理費その他の費⽤(以下「費⽤等」という。)の額を掲げるとともに、その費⽤等の範囲について、償却費以外の費⽤の場合には、当該事業年度終了の⽇までに債務の確定しているものとする旨を規定しています。

 また、法⼈税基本通達2-2-12《債務の確定の判定》は、上記の「当該事業年度終了の⽇までに債務の確定しているもの」とは、別に定めるものを除き、当該事業年度終了の⽇までに、以下の3要件すべてを満たすものとしています。
(1) 当該費⽤に係る債務が成⽴していること(以下「債務成⽴要件」という)
(2) 当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発⽣していること(以下「給付原因発⽣要件」という)
(3) その⾦額を合理的に算定することができるものであること(以下「合理的算定要件」という)

 上記1の設例において、A社は甲に対する債務が確定しているので、甲に対する役員報酬1,200万円を当期に損金算入できると主張しています。臨時株主総会の決議でA社は甲に役員報酬を支払う法的義務があり、実際に手形を振り出して支払っているからです。

 A社の主張に対し、審判所は、A社と甲の間にA社がいう法的な債務が成⽴し、役員報酬が具体的に⽀払われていることを認めながらも、法⼈税法上いずれの事業年度の損⾦の額に算⼊されるべきかを判断する(債務の確定の判定)に当たっては、事業年度終了の⽇までに確定債務3要件(債務成立要件、給付原因発生要件、合理的算定要件)すべてを充⾜しなければならないことを確認しました。
 そして、臨時株主総会の決議によって、辞任や退職等によって労務の提供等がされない場合には役員報酬の⽀払義務が⽣じないことと定められていることからしても、役員報酬は、役務の提供等を受けることを具体的な給付原因として⽀出されるものであるから、給付原因発⽣要件を充⾜しているとは認められないとしました。
 したがって、当期の損⾦の額に算⼊すべき債務が確定しているものとは認められないので、具体的に役務の提供等を受ける翌事業年度の損⾦の額に算⼊すべきであると結論付けました。

 以上をまとめると、役員報酬は役員が株主からの委任を受けて業務を執⾏したことの対価として⽀払われるものであり、その職務等を全うすることによって初めて、役員は役員報酬を法⼈に請求することができ、法⼈においては、その時に⽀払債務が確定することになります。
 そうすると、当事業年度終了の⽇までに甲は労務の提供等をしていないから、給付原因発⽣要件を満たしているとはいえず、A社の⽀払債務は確定していないということになります。

3.短期前払費用に該当するか?

 法⼈税基本通達2-2-14《短期の前払費⽤》は、その前段において、前払費⽤(⼀定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために⽀出した費⽤のうち、当該事業年度終了の時においてまだ提供を受けていないものをいう。以下同じ。)の額は、当該事業年度の損⾦の額に算⼊されないとの原則を定めるとともに、その後段において、前払費⽤の額でその⽀払った⽇から1年以内に提供を受ける役務に係るものを⽀払った場合において、その⽀払った額に相当する⾦額を継続してその⽀払った⽇の属する事業年度の損⾦の額に算⼊しているときは、これを認める旨の取扱い(以下「後段の取扱い」という。)を定めています。

 A社は、仮に債務が確定しておらず役員報酬が翌事業年度に対応する費⽤であるとしても、短期前払費用に該当するから、当期の損⾦の額に算⼊すべきであると主張しました。

 これに対し審判所は、前払費⽤は、企業会計上、⼀定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合において、いまだ提供されていない役務に対して⽀払われる対価で、時間の経過とともに次期以降の費⽤となるものであり、また、前払費⽤のうち、重要性の乏しいものについては、重要性の原則から、これを経過勘定項⽬として処理しないことができ、その代表的なものは、未経過保険料、未経過利息、前払賃借料等で、時の経過に応じて⾃動的、合理的に費⽤化されるものであると説明しました。

 そして、前払費⽤は、本来、その⽀出事業年度の損⾦に算⼊されないのが原則であるが、上記のような企業会計の趣旨から、法⼈税法第22条第4項に規定する⼀般に公正妥当と認められる会計処理の基準といえる重要性の原則(企業の会計処理の基準となる原則の1つで、重要性の乏しいものについては本来の厳密な会計処理によらないで他の簡便な⽅法によることを認める旨の原則をいうに沿う限りにおいて、後段の取扱いを例外として適⽤する旨を定めているとしました。
 また、後段の取扱いは、重要性の原則の範囲内においてその適⽤が認められるべきものであり、同原則の範囲内か否かの判断に当たっては、前払費⽤の⾦額だけではなく、当該法⼈の財務内容に占める割合や影響等も含めて総合的に考慮する必要があるとしました。

 そのうえで審判所は、役員報酬は企業の業務を執⾏したことに対する対価として支払われ企業が営利活動を⾏う上で必要なものであり、企業活動の根幹に係る⾏為に対する対価であることからすると、会計科⽬としての重要性を有するとし、また、⼈件費のうちに甲に対する役員報酬の⾦額が占める割合も、⾼率かつ可変的であり、⾦額的にみても重要性を有するとしました。

 そうすると、役員報酬は、時の経過に応じて⾃動的、合理的に費⽤化されるような重要性の乏しい費⽤とは本質的にその性質を異にするものであると認められることから、役員報酬に対して後段の取扱いを適⽤することはできないと結論付けました。

 以上をまとめると、短期前払費用は前払費⽤に係る費⽤収益対応の原則の例外であり、重要性の原則に基づく会計処理を税務においても認めたものであるといえます。
 甲に対する役員報酬は、課税所得の計算上重要性が乏しいとは言えませんので、短期前払費用の適⽤を受けることはできないということになります。

消費税の申告期限も延長できます(令和2年度税制改正)

 従来から、法人税には申請による確定申告書の提出期限の延長が認められており、2017年度(平成29年度)税制改正では延長可能月数の拡大も行われていましたが、消費税には提出期限の延長が認められていませんでした。

 そのため、消費税の申告後に、会社の決算承認手続きの過程で決算額の変動など法人税の申告調整が発生した場合、消費税の修正申告や更正の請求を行う事務負担が生じていました。

 このような状況から、法人税の申告期限を延長している企業から、消費税の申告期限についても延長を求める声が上がっていました。

 今回は、法人税の申告期限延長可能月数が拡大された2017年度(平成29年度)税制改正と、消費税の申告期限が延長された2020年度(令和2年度)税制改正の内容を確認します。

1.法人税の申告期限延長特例の拡大

 2017年度(平成29年度)税制改正で、企業と投資家の対話の充実を図り、上場企業等が株主総会の開催日を柔軟に設定できるようにするため、法人税の申告期限の延長可能月数が1か月から4か月に拡大されました。

(1) 会社法上の取扱い

 会社法上、法人は柔軟に株主総会の日の設定が可能とされています。例えば3月決算法人が、決算日から4か月後である7月末に株主総会を開催することが可能であり、8月以降に株主総会を開催することも可能とされています。

(2) 法人税法上の取扱い

① 原則

 内国法人は、原則として各事業年度終了の日の翌日から2か月以内に税務署長に対し、確定した決算に基づく申告書を提出しなければならないとされています。
 例えば3月決算法人の場合は、5月末までに申告書を提出しなければなりません。

② 特例(平成29年度税制改正)

 定款の定め又は特別な事情があることにより、その事業年度以降の各事業年度終了の日の翌日から2か月以内にその各事業年度の決算についての定時株主総会が招集されない常況にあると認められるときは、納税地の所轄税務署長は、その法人の申請に基づき、その事業年度以後の各事業年度の申告書の提出期限を1か月間延長をすることができます。
 例えば3月決算法人の場合は、5月末の提出期限を1か月延長して6月末とすることができます。

 ただし、次のイ又はロに掲げる場合に該当するときには、それぞれに掲げる期間を延長することができます。

イ.会計監査人を置き定款等の定めがある場合

 法人が、会計監査人を置いている場合で、かつ、定款、寄附行為、規則その他これらに準するもの(以下「定款等」といいます)の定めによりその事業年度以降の各事業年度終了の日の翌日から3か月以内にその各事業年度の決算についての定時株主総会が招集されない常況にあると認められるときには、確定申告書の提出期限をその定めの内容を勘案して4か月を超えない範囲内において税務署長が指定する月数の期間まで延長することができます。
 例えば3月決算法人の場合、5月末の提出期限を4か月延長して9月末とすることができます。

ロ.特別の事情がある場合

 特別の事情があることにより各事業年度終了の日の翌日から3か月以内にその各事業年度の決算についての定時株主総会が招集されない常況にあることその他やむを得ない事情があると認められるときには、税務署長が指定する月数の期間まで延長することができます。

(3) 適用時期

 上記(2)②の改正は、2017年(平成29年)4月1日以降の申請に係る法人税から適用されます。

 なお、これらの申請は、確定申告書等に係る事業年度終了の日までに、定款等の定め又は特別の事情の内容、指定を受けようとする月数等を記載した申請書(申告期限の延長の特例の申請書) をもって行います。

(4) 留意事項

 2017年度(平成29年度)税制改正では、法人税の申告期限は延長されましたが、法人税の納付期限は延長されていませんので、確定申告期限(事業年度終了の日の翌日から2か月以内)までに見込納付をする必要があります。
 また、法人税だけではなく、住民税及び事業税についても、申告期限の延長の特例の申請をする必要があるので、ご注意ください。

2.消費税の申告期限の特例の創設

 2017年度(平成29年度)税制改正では、法人税の申告期限は延長されましたが、消費税の申告期限は従来のままでした。
 そこで、法人税と消費税の申告期限が異なることによる事務負担を軽減するために、2020年度(令和2年度)税制改正で消費税の申告期限の特例が創設されました。

(1) 特例の内容(令和2年度税制改正)

 法人税の確定申告書の提出期限の延長の特例を受けている法人が、消費税の確定申告書の提出期限を延長する旨の届出書(消費税申告期限延長届出書)を提出した場合には、消費税の確定申告書の提出期限が1か月延長されます。

 届出の効力が生じるのは、提出した日の属する事業年度以後の各事業年度の末日の属する課税期間からです。

(2) 適用時期

 2021年(令和3年)3月31日以後に終了する事業年度の末日の属する課税期間から適用されます。
 例えば3月決算法人の場合、2020年(令和2年)4月1日~2021年(令和3年)3月31日の課税期間から適用されます。

(3) 留意事項

 法人税と同様に、確定申告書の提出期限が延長された期間の消費税の納付については利子税が発生するため、見込納付をする必要があります。
 また、消費税の課税期間を1か月ごと又は3か月ごとに短縮している場合、提出期限の延長が認められる課税期間は、事業年度の末日の属する課税期間のみとなります。

中間申告期限は督促状が届いてもコロナ延長可能

 先日、「新型コロナ対応で中間申告も期限延長できます(延滞税に注意!)」という記事を書きましたが、その際に疑問に思ったのが、税務署側では納税者が中間申告のコロナ延長申請をするまでその事実を知ることができないため、納税者に督促状が送られてくるのではないかということでした。

 この点について、国税庁では「中間申告書の提出期限の延長に関するお知らせ」の案内文を納税者に送付する措置をとっているようです。

 今回は、「中間申告書の提出期限の延長に関するお知らせ」の内容を確認します。

1.納税者の不安を払拭するため

 国税庁では、2020年(令和2年)5月現在ですでに中間申告期限が到来している納税者には、督促状の送付前に「中間申告書の提出期限の延長に関するお知らせ」の案内文を個別に送付するとともに、6月以降に中間申告期限が到来する納税者には案内文を中間申告書に同封することとしています。
 期限延長(個別延長)を予定していても、延長がなされるまで督促状が送付される場合があるためです。

 中間申告書の提出がなく、その提出期限に提出があったとみなされた後でも、新型コロナウイルスを理由とする提出期限の延長は可能とされています。

 しかし、この期限延長がなされるまでは督促状が発送される場合があることから、納税者が不安を抱くことが懸念されるため、今回の対応となったようです。

2.コロナ延長申請で督促状は効力を失う

 「お知らせ」では、中間申告書についてその提出期限までに提出がなかった場合には、その提出期限に提出があったものとみなされていますが、みなされた後であっても、提出期限の個別延長は可能であることを改めて周知しています。

 そして、中間申告書の提出ができることとなった時点で、中間申告書の提出の際に、その中間申告書の余白部分に「新型コロナウイルス感染症の影響による期限延長申請」である旨を記載して提出することを求めています。

 また、中間申告書を提出できない状態が確定申告書の提出期限まで続く場合には、中間申告書の提出は不要となることを周知しています。

 提出期限の延長申請を予定している場合であっても督促状が送付される場合がありますが、国税庁は上記と同様に、中間申告書の提出の際に、その中間申告書の余白部分に期限の延長申請である旨を記載して提出することにより、その提出日まで提出期限が延長され、その督促状は効力を失うと説明しています。

 さらに、延長申請をした後に督促状が届いた場合は、行き違いである旨を述べています。

申告期限延長の特例を受けている法人は個別延長への切替えで利子税が免除される!

1.1か月の延長特例では利子税が発生

 3月決算法人は通常5月末が申告納付期限となりますが、会計監査人の監査を受けなければならないこと等の理由により、各事業年度終了の日の翌日から2月以内にその各事業年度の決算についての定時株主総会が招集されない常況にあるため、申告書の提出期限を1月間(連結事業年度にあっては2月間)延長する特例を受けている法人もあります。

 このような特例を受けている法人(以下、「延長法人」といいます)の申告納付期限は、3月決算法人であれば6月末まで延長されますが、延長された申告書の提出期限までの期間の日数に応じて7.3%を乗じて計算した利子税の納付が必要とされています。
 納付期限までに見込額を納付している場合には、確定額との差額に利子税が生じます。

 延長法人が、例年通りのスケジュールで6月に定時株主総会を開催し、法人税の確定申告も6月末までに終える場合、つまり、これまでと同様に「1か月の延長特例」による申告・納付を行う場合は、コロナ禍とはいえ利子税が発生します。

2.個別延長への切替えで利子税が免除

 一方、新型コロナウイルス感染症の影響など、やむを得ない理由で期限内申告・納付が困難な場合に認められる「個別延長」による申告では、利子税が免除されることになっています。
 見込額を納付していても、申告時に個別延長の手続きを行うことで利子税は生じません。

 申告書の提出日が同じであっても、「1か月の延長特例」と「個別延長」では、申告期限の延長の根拠となる法律が異なるだけで、利子税の納付の有無に差異が生じます。

 しかし、今般の新型コロナウイルス感染症の影響下においては、「1か月の延長特例」の承認を受けている場合であっても、利子税が免除される「個別延長」に切り替えて申告することができます

 事業年度終了日の翌日から2か月を経過するまでの間に、災害その他やむを得ない理由が生じた場合は、「1か月の延長特例」の適用がないものとみなして「個別延長」を適用できるものとされています。
 そのため、本来は事業年度終了日までに必要な「延長特例の取りやめの届出書」の提出がなくても、「個別延長」による申告が可能となります。

 具体的な手続きは、申告書の右上の余白に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と記載して提出することで、利子税が免除される「個別延長」による申告として認められます。

新型コロナ対応で中間申告も期限延長できます(延滞税に注意!)

 新型コロナウイルス感染症の影響により、確定申告期限内に法人税や消費税等の申告・納付ができない場合は、「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」である旨を申告書の余白に付記して提出する個別延長が認められていますが、中間申告期限についても個別延長が認められています。

1.事後提出時に余白に記載で可

 法人税及び消費税の中間申告については、前期の確定した税額から中間申告に係る税額を計算する「通常の中間申告」と、これに代えて、中間期間を一つの事業年度(又は課税期間)とみなして確定申告と同様に法人税額(又は消費税額)を計算する「仮決算による中間申告」があります。

 例えば、新型コロナウイルス感染症の影響により、当期の業績が悪化しているような場合には、通常の中間申告に代えて、仮決算による中間申告を検討することも考えられます。
 その際に、外出自粛要請の影響など通常の業務体制が維持できないことにより、例えば、① 通常の中間申告に係る納付税額と、仮決算による中間申告に係る納付税額を比較・検討するための準備に時間を要する、② 仮決算による中間申告に係る申告書の作成に時間を要するなど、中間申告書を提出期限までに提出することが困難となる場合が考えられますが、このような場合にも、提出期限の延長(個別延長)が認められます。

 提出期限までに中間申告書を提出することが困難な場合には、中間申告書の提出 ができることとなった時点で、中間申告書の提出の際に、その中間申告書の余白部分に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」である旨を記載して提出すれば、事後的に提出期限の延長(個別延長)が認められます

2.納付を先にしないと延滞税がかかる

 確定申告の個別延長と同様に中間申告の個別延長の場合も、申告期限及び納付期限は原則として申告書の提出日となります
 この場合、申告と納付のタイミングがずれる、つまり、会計事務所の申告日が先で関与先様の納付日が後になると延滞税がかかるのかどうか気になりました。

 この点について税務署に問い合わせたところ、基本的には申告と納付は同じ日にしなければならないとのことでした。
 納付日が申告日より先になっても問題はありませんが、納付日が申告日より後になってしまうと、ずれた日数は延滞税の計算対象になるということでした。
 関与先様とよく打ち合わせをして、関与先様から納付の連絡を頂いたうえで、会計事務所は申告をした方がよさそうです。

3.中間申告書が提出不要となる場合

 中間申告書を提出することが困難な状態が確定申告書の提出期限まで続く場合には、その中間申告書の提出は不要となります。つまり、中間申告により納付する法人税及び消費税は生じないこととなります。

 この場合には、確定申告書を提出する際に、確定申告書の余白に、「中間申告書は新型コロナウイルス感染症の影響により提出できなかった」旨を記載して提出します
  なお、所轄税務署から送付される確定申告書に印字されている中間税額には、その生じないこととなる税額が含まれていますので、使用の際には、その生じないこととなる税額相当額を控除した金額に訂正します。

4.中間申告書のみなし提出について

 一方、上記のような事情がなく、中間申告書をその提出期限までに提出することが可能だったにもかかわらず、中間申告書の提出期限までにその提出がなかったときには、その提出期限において通常の中間申告に係る中間申告書の提出があったものとみなされます。
 この場合には、その提出期限において通常の中間申告に係る納付税額が確定します。