賃上げ促進税制の繰越税額控除制度の注意点

 中小企業向け賃上げ促進税制は、青色申告書を提出している中小企業者等が、前年度より 給与等の支給額を増加させた場合に、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です。

 賃上げ促進税制における税額控除額は、調整前法人税額の20%を限度とするとされていますので、中小企業者等が要件を満たす賃上げを実施しても、その実施した事業年度に控除しきれなかった金額(税額控除限度超過額)が生じることがあります。

 この税額控除限度超過額はその期で失効せず、その後5年間の繰越控除が認められています(2024(令和6)年度税制改正)。

 以下では、中小企業向け賃上げ促進税制の繰越税額控除制度を適用する際の注意点について確認します。

1.ゼロ申告でも賃上げ促進税制の別表を添付

 この繰越税額控除の適用を受けるためには、税額控除限度超過額が生じた事業年度以後の各事業年度の確定申告書に繰越税額控除限度超過額の明細書を添付し、繰越控除の適用を受ける事業年度の確定申告書に控除の対象となる繰越税額控除限度超過額と控除を受ける金額を記載するとともに、その金額の計算に関する明細書を添付する必要があります

 このように、その適用に当たっては、賃上げ促進税制の別表を作成・提出し続けることが要件となっています。

 繰越欠損金の発生事業年度や繰越欠損金がある事業年度であっても、賃上げ促進税制による税額控除限度超過額が発生した場合には、ゼロ申告でも賃上げ促進税制の別表を添付することになります。

 従来においても、ゼロ申告の事業年度でも、税務調査で納税額が出ることになる可能性がある場合に備えて、法人税申告書に賃上げ促進税制の別表を添付しておき、税額控除の適用の可能性を担保しておくべき、と言われていました。

 2024(令和6)年度税制改正で5年間の繰越控除が可能となりましたので、今後はこのようなリスク管理的な配慮ではなく、5年間の内に黒字を達成すれば税額控除の適用を受けられるようにしておく必要があります。

※ 賃上げ促進税制の別表の書き方については、「中小企業者等の賃上げ促進税制に係る別表六の書き方と記載例《令和6年4月1日~令和9年3月31日開始事業年度》」をご参照ください。

2.継続的な賃上げが不可欠

 ところで、賃上げ促進税制のほかにも各種の税額控除制度があります。例えば、中小企業者等が機械等を取得した場合の税額控除制度(中小企業投資促進税制)などです。

 中小企業投資促進税制では、翌期に法人税額があれば税額控除が可能です。

 しかし、賃上げ促進税制では、繰越税額控除を適用する各事業年度において、雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額より増加していなければ控除は認められない、という追加要件が課されている点には注意が必要です。

 税額控除の権利は保持できても、実際に税額控除をするには継続的な賃上げが不可欠だということです。

 また、賃上げ促進税制での税額控除額は、調整前法人税額の20%を限度とするとされています。
 複数の税額控除制度を適用する場合、調整前法人税額の20%という部分は、重複して適用を受けられます。

 ただし、20%の税額控除が幾つもあった場合、その合計額については、調整前法人税額の90%を限度とする制限規定があります。
 したがって、調整前法人税額の90%を超える部分の金額(調整前法人税額超過額)は、調整前法人税額から控除することができません。

 この調整前法人税額超過額は、各種の税額控除制度による控除可能期間が最も長いものから順次成ることとされています。
 つまり、調整前法人税額超過額は、まず残りの控除可能期間の長いものに配賦し、次に控除可能期間が同じものについては、法人の選択により配賦することとされています。

社用車は購入すべきかリースすべきか?

 社用車の調達に際しては、主に、①自社で購入して管理・運用する方法、②リース会社に毎月リース料を支払い運用するカーリースの方法、さらには③必要な時に必要な分だけ利用できる最近流行りのカーシェアを使うという方法があります。

 ③のカーシェアによる方法は、恒常的に利用が必要でなければ、税金・自動車保険料(任意保険)・車検(定期点検)費用・駐車場代など、維持にかかる経費削減に効果的ですが、今回は、恒常的に社用車が必要な会社にとって、①と②のどちらがより良い選択肢かについて、それぞれのメリット・デメリットを比較します。

1.購入のメリット・デメリット

(1) 購入のメリット

 購入する場合は、支払総額がリースよりも少なく済みます。
 また、自社で減価償却(定率法)を行いますので、購入初年度の節税効果が大きいことの期待もあります。
 売却や廃棄処分についても、自社で自由に設定できます。

(2) 購入のデメリット

 購入する場合は、購入時に車両代金や納車整備費用、各種税金等がかかりますので、一時的にまとまった資金調達が必要となります。
 また、毎年の自動車税や定期点検整備費用、車検時には車検代金や各種税金の支払いが発生します。
 税金や保険、車検や整備などの管理を自社でしなければならないため、これらの事務負担が発生します。

2.カーリースのメリット・デメリット

(1) カーリースのメリット

 カーリースとは、利用者が希望するクルマをリース会社が代行して購入し、一定の期間に渡って貸し出すサービスです。
 そのため、車の所有権はリース会社にありますが、月々定額のリース料に初期費用や税金などが含まれているため、リース開始時にまとまった資金を用意する必要がありません。
 また、契約期間中も車検や整備などの管理をリース会社が行うため、その業務負担を抑えることができます。

(2) カーリースのデメリット

 中途解約する場合は違約金を支払うことになりますので、車が不要になっても中途解約できない場合があります。
 また、リース会社が資金調達と事務管理をしますので、その分のコストがリース会社の儲けとしてリース料に上乗せされるため、支払総額が購入する場合よりも大きくなります。

3.自宅は購入か賃貸か?と同じテーマ

 購入とリースのメリット・デメリットは、それぞれ裏表の関係にあります。
 自社で資金を調達して税金メリットを取るのか、自社の事務管理を省いてその分の負担金を多く支払うのかなど、それぞれ自社の資金調達環境や社内管理体制などによって、どちらがより良い選択肢となるのかは変わってきます。
 個別環境によって変わってくるところは、「住宅は購入か賃貸か?」に似ている比較ともいえます。

令和8年4月から適用される税制・社会保険制度の主な改正のまとめ

 2026(令和8)年4月より、税制および社会保険制度において複数の重要な改正が実施されています。
 これらの改正は、日常の経理・労務実務に直接影響する内容を含んでいますので、以下において主なポイントを整理します。

1.税制改正

(1) 防衛特別法人税の新設

 2025(令和7)年度税制改正により、防衛力強化の財源確保を目的とした防衛特別法人税が新設されました。

 この防衛特別法人税は、2026(令和8)年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。
 各事業年度の所得に対する法人税を課される法人が納税義務者となり、防衛特別法人税確定申告書の提出が必要です(防衛特別法人税額が0であっても申告は必要となります)。

 詳細については、「全法人が対象の『防衛特別法人税』の概要と実務に及ぼす影響(令和8年4月1日以後開始事業年度)」をご参照ください。

(2) 賃上げ促進税制の見直し

 2026(令和8)年度税制改正で、以下のように賃上げ促進税制の見直しが行われています。

(1) 大企業向けは、2026(令和8)年3月31日までに開始する各事業年度について適用され、その後廃止されます。
(2) 中堅企業向けは、2026(令和8)年4月1日から2027(令和9)年3月31日までの間に開始する各事業年度について適用され、その後廃止されます。
(3) 中小企業向けは、2026(令和8)年4月1日から2027(令和9)年3月31日までの間に開始する各事業年度について適用されますが、教育訓練費に係る上乗せ措置が廃止され、最大控除率が45%から35%に低下します。

 詳細については、「中小企業者等の賃上げ促進税制《令和6年4月1日~令和9年3月31日開始事業年度》」をご参照ください。

(3) 少額減価償却資産の特例の拡充

 2026(令和8)年度税制改正によって、中小企業向けの少額減価償却資産の特例が拡充され、適用対象となる減価償却資産の取得価額が40万円未満(改正前:30万円未満)へ引き上げられ、かつ、適用対象となる事業者(法人と個人事業主)の常時使用する従業員の数が400人以下(改正前:500人以下)に引き下げられたうえで、その適用期限が3年延長されました。

 この改正は、2026(令和8)年4月1日以後に取得する減価償却資産から適用されます。

 詳細については、「40万円未満の少額減価償却資産に係る損金算入の特例(令和8年度税制改正)」をご参照ください。

(4) 現物支給の食事の非課税限度額の引き上げ

 2026(令和8)年度税制改正により、会社が役員や従業員へ現物支給する食事に関する所得税の非課税限度額が「月額7,500円」(改正前:3,500円)に引き上げられました。

 この改正は、2026(令和8)年4月1日以後に支給する食事から適用されます。

 詳細については、「現物支給の食事に係る所得税の非課税限度額が7,500円に(令和8年度税制改正)」をご参照ください。

(5) マイカー通勤手当の非課税限度額の引き上げ

 2026(令和8)年度税制改正により、マイカー等で通勤する場合の非課税限度額について、通勤距離が片道65キロメートル以上について新たな距離区分が設けられ、また、通勤距離の区分に応じた非課税限度額に1か月当たりの駐車場等の料金(上限5,000円)が加算されることになりました。

 この改正は、2026(令和8)年4月1日以後に支払われるべき通勤手当について適用されます。

 詳細については、「令和8年4月1日よりマイカー通勤手当の非課税限度額が引き上げられました」をご参照ください。

2.社会保険制度の改正

(1) 健康保険料率・介護保険料率の改定

 2026(令和8)年度の全国健康保険協会(協会けんぽ)の健康保険料率および介護保険料率が3月分(4月納付分)から改定されました。

 全国健康保険協会(協会けんぽ)の健康保険料率は都道府県ごとに異なり、例えば令和8年度の大阪府の料率は10.13%(令和7年度は10.24%)となっています。
 この料率に、40歳から64歳までの方(介護保険第2号被保険者)は、全国一律の介護保険料率1.62%(令和7年度は1.59%)が加わります。

 詳細については。「令和8年3月分(4月納付分)から健康保険料率と介護保険料率が改定されます(協会けんぽ)」をご参照ください。

(2) 雇用保険料率の改定(労災保険料率・子ども子育て拠出金率は据え置き)

 厚生労働省告示に伴い、2026(令和8)年度の雇用保険料率が改定されました。
 例えば、令和8年度の一般事業の雇用保険料率については、被保険者負担率5.0/1000、事業主負担率8.5/1000となっています。

 一方、労災保険料率と子ども・子育て拠出金率は据え置きとなり、令和7年度の料率から改定されていません。

 詳細については、「令和8年度の雇用保険料率が改定されます(労災保険料率・子ども子育て拠出金率は据え置き)」をご参照ください。

(3) 子ども・子育て支援金制度の新設

 2026(令和8)年4月分(5月納付分)から「子ども・子育て支援金制度」が始まりました。

 子ども・子育て支援金は全世帯・企業が拠出し、支援金額や保険料率などは医療保険者(協会けんぽ・健康保険組合等、国民健康保険、後期高齢者医療制度)によって異なります。

 なお、「子ども・子育て支援金制度」は上記2.(2)の「子ども・子育て拠出金」とは異なる制度です。
 子ども・子育て支援金は事業主と従業員(被保険者)の両者が負担するのに対し、子ども・子育て拠出金は事業主のみが負担し従業員の負担はありません。

 詳細については、「令和8年4月分(5月納付分)から『子ども・子育て支援金制度』が始まります」をご参照ください。

(4) 被扶養者認定基準の変更

 2026(令和8)年4月1日から、社会保険の扶養に入る人(被扶養者)の被扶養者認定基準が、労働条件通知書などで定められた賃金から見込まれる年間収入が130万円未満であるかどうかを判定する方式に変更されました。

 つまり、労働契約段階で見込まれる収入を用いて、被扶養者の判定が行われることになります。
 したがって、労働契約に明確な規定がなく、労働契約段階では見込み難い時間外労働に対する賃金等は、被扶養者の判定における年間収入には含まれないこととなります。
 
 これにより、一時的な残業や繁忙期の収入増で扶養から外れるケースが減少し、従業員の働き方の柔軟性が高まることが期待されます。

 詳細については、「令和8年4月1日から『130万円の壁』の年間収入は労働契約の内容で判定されます」をご参照ください。

(5) 在職老齢年金の支給停止額の引き上げ

 在職老齢年金制度が、2025(令和7)年6月13日に成立した年金制度改正法で見直され、2026(令和8)年4月から、年金が減額になる基準額(賃金と老齢厚生年金の合計)が月51万円から65万円に引き上げられました。

 平均寿命・健康寿命が延びる中で、働き続けることを希望する高齢者の活躍を後押しし、より働きやすい仕組みとすることが今回の改正の趣旨です。

 詳細については、「在職老齢年金制度における年金カットの計算方法(基準額が令和8年4月から62万円に引き上げられます)」をご参照ください。

40万円未満の少額減価償却資産に係る損金算入の特例(令和8年度税制改正)

 2026(令和8)年度税制改正によって、即時償却が可能な少額減価償却資産の損金算入制度について一部改正がありました。

1.改正内容

 少額減価償却資産に係る損金算入の特例が2026(令和8)年3月31日に期限切れになることから、2026(令和8)年度税制改正において以下の項目について改正が行われました。

項目 改正前 改正後
取得価額 30万円未満 40万円未満
常時使用する従業員の数 500人以下 400人以下
適用期限 令和8年3月31日 令和11年3月31日

 適用対象となる減価償却資産の取得価額が40万円未満(改正前:30万円未満)に引き上げられ、かつ、適用対象となる事業者(法人と個人事業主)の常時使用する従業員の数が400人以下(改正前:500人以下)に引き下げられたうえで、その適用期限が3年延長されました。

 上記改正内容は、2026(令和8)年4月1日以後に取得する減価償却資産から適用されます。

 なお、即時償却が可能な少額減価償却資産の年間合計金額の上限に変更はなく、300万円のままです。

 この制度自体は時限措置ではありますが、制度が創設された2006(平成18)年から現在に至るまで、一部内容の見直しを行いながら引き続き設けられています。
 次の2において、改正内容を踏まえた制度の概要を確認します。

2.改正を踏まえた制度の概要

 青色申告書を提出する中小企業者等※1が、2026(令和8)年4月1日から2029(令和11)年3月31日※2までの間に取得等した減価償却資産で、その取得価額が40万円未満であるもの※3については、その事業の用に供した日の属する事業年度において、全額損金算入することができます。

 ただし、適用を受ける事業年度における少額減価償却資産の取得価額の合計額が300万円(事業年度が1年に満たない場合には300万円を12で除し、これにその事業年度の月数を掛けた金額。月数は暦に従って計算し、1か月に満たない端数を生じたときは1か月とします)を超えるときは、その取得価額の合計額のうち300万円に達するまでの少額減価償却資産の取得価額の合計額が限度となります。

※1 資本金1億円以下で大規模法人の子会社等でない法人が適用対象です。なお、常時使用する従業員(パート、アルバイトを含む)の数については、2026(令和8)年度改正で400人(改正前:500人)以下に引き下げられました(措令39の28①)。
 したがって、常時使用する従業員の数が400人を超える事業者は、適用対象から除外されます。
 なお、中小企業者の定義については、本ブログ記事「租税特別措置法上の『中小企業者』の定義とその判定時期」をご参照ください。

※2 2026(令和8)年度改正で適用期限が3年間延長され、2029(令和11)年3月31日までの間に取得等した減価償却資産について適用されることとなりました。
 なお、2026(令和8)年3月31日までに取得した資産は改正前の旧基準が適用され、2026(令和8)年4月1日以後に取得した資産は改正後の新基準が適用されますので、同一事業年度内で新旧基準が混在する場合はご注意ください。 

※3 取得価額が40万円未満である減価償却資産について適用がありますので、資産の種類に制限はなく、有形減価償却資産だけではなくソフトウェアや商標権などの無形減価償却資産も対象となり、また、中古資産も対象となります。
 ただし、租税特別措置法上の特別償却、税額控除、圧縮記帳との重複適用はできず、また、取得価額が10万円未満の場合や取得価額が10万円以上20万円未満のものについて一括償却資産の損金算入制度の適用を受ける場合も、この特例の適用はありません。
 

現物支給の食事に係る所得税の非課税限度額が7,500円に(令和8年度税制改正)

 2026(令和8)年度税制改正により、会社が役員や従業員へ現物支給する食事に関する所得税の非課税限度額が引き上げられました。
 これは、昨今の物価上昇や会社の福利厚生ニーズを踏まえ、従業員の負担軽減と会社の食事補助制度の運用を後押しする目的で行われたものです。

 今回の改正により、食事の現物支給に係る所得税の非課税限度額が「月額7,500円」(改正前:3,500円)へ引き上げられました(金額はいずれも消費税を除いた税抜金額です)。
 この新しい非課税限度額は、2026(令和8)年4月1日以後に支給する食事から適用されます。

 非課税扱いとなるためには、従来と同様に次の2つの要件を満たす必要があります。

(1) 役員や従業員が食事の価額の半分以上を負担していること
(2) 会社の負担額(食事の価額-役員や従業員が負担している金額)が1ヶ月当たり7,500円(税抜き)以下であること

 例えば、1食あたりの価額が600円で、そのうち従業員が300円を負担している場合、会社負担は300円となり、月25食で7,500円となります。
 この範囲内であれば、食事の支給による経済的利益が従業員等に生じていないものとされ、所得税は非課税となります。

 なお、上記(1)(2)の要件における食事の価額とは、次の金額をいいます。

① 仕出し弁当などを取り寄せて支給する場合は、業者に支払う金額
② 社員食堂などで会社が作った食事を支給する場合は、食事の材料費や調味料等に要した、いわゆる直接費の額

 また、深夜勤務者に対する夜食の現物支給に代えて、金銭を支給する場合の非課税限度額についても、「1食650円(改正前:300円)へ引き上げられています(金額はいずれも消費税を除いた税抜金額です)。
 深夜帯の勤務負担に配慮した制度であり、こちらも2026(令和8)年4月以降の支給分から適用されます。

 なお、通常の勤務時間外に残業又は宿日直をした人に支給する食事は、無料で支給しても所得税は非課税となります。
 しかし、深夜勤務を本来の職務とする人がその勤務に伴い食事の支給を受ける場合には、その支給額に所得税が課税されます

※ 関連記事:「自己負担半額以上・会社負担7,500円以下でも食事補助が給与課税される場合

中小企業者等の賃上げ促進税制に係る別表六の書き方と記載例《令和6年4月1日~令和9年3月31日開始事業年度》

 中小企業向け賃上げ促進税制は、青色申告書を提出している中小企業者等が、前年度より給与等の支給額を増加させた場合に、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です

 以下では、中小企業者等が賃上げ促進税制の適用を受けるときに作成する別表6(24)、別表6(24)付表1、別表6(6)、別表6(6)付表の書き方と記載例を確認します。

※ 賃上げ促進税制の詳細については、「中小企業者等の賃上げ促進税制《令和6年4月1日~令和9年3月31日開始事業年度》」をご参照ください。

1.設例

 以下の説例を用いて、2024(令和6)年4月1日~2027(令和9)年3月31日開始事業年度における別表6の記載上のポイントと記載例を確認します。

【設例】
業種:自動車修理業(青色申告法人)
前期:2024(令和6)年2月1日~2025(令和7)年1月31日
前期の従業員給与支給額:12,880,000円(うち代表者の家族分960,000円)
当期:2025(令和7)年2月1日~2026(令和8)年1月31日
当期の従業員給与支給額:16,570,000円(うち代表者の家族分1,080,000円)
その他:(前期・当期ともに)教育訓練費なし、くるみん認定等なし、雇用安定助成金等なし、賃上げ促進税制以外の特別控除制度の適用なし

2.別表六(二十四)付表一の書き方と記載例

 まず、別表6(24)付表1から記載します。記載上のポイントは次のとおりです。

(1) 1欄(国内雇用者に対する給与等の支給額)には、当期(適用を受ける事業年度)の従業員給与支給額を記載します。
 当期の従業員給与支給額16,570,000円のうち、役員の特殊関係者である代表者の家族分1,080,000円を除いた15,490,000円を記載します。

(2) 助成金等は受給していませんので、2欄と3欄は記載不要です。その結果、4欄と5欄には、1欄と同額の15,490,000円を記載します。

(3) 7欄(国内雇用者に対する給与等の支給額)には、前期(適用を受ける事業年度の前事業年度)の従業員給与支給額を記載します。
 前期の従業員給与支給額12,880,000円のうち、役員の特殊関係者である代表者の家族分960,000円を除いた11,920,000円を記載します。

(4) 10欄には、分子に当期(適用年度)の月数、分母に前期(前事業年度)の月数を記載します。
 今回の設例では前期・当期ともに月数は12か月ありますので、分子・分母ともに12を記載します。その結果、11欄と12欄には11,920,000円×12/12=11,920,000円を記載します。

 もし、前期と当期で事業年度の月数が異なる場合は要注意です。例えば、前期が創業第1期で月数が11か月だった場合は、10欄の分母は11となります。その結果、11欄と12欄には11,920,000円×12/11=13,003,636円を記載します(前期と当期で事業年度の月数が異なる場合の調整計算の詳細については、「賃上げ促進税制における1月未満の端数の取扱い」をご参照ください)。

(5) 当期分の25欄(前期繰越額又は当期税額控除限度額)と26欄(当期控除可能額)は、別表6(24)で算出した34欄と37欄の金額を記載します(下記3(10)参照)。

3.別表六(二十四)の書き方と記載例

 次に別表6(24)を記載します。記載上のポイントは次のとおりです。

(1) 4欄(雇用者給与等支給額)には、別表6(24)付表1の4欄の金額を転記します。

(2) 5欄(比較雇用者給与等支給額)には、別表6(24)付表1の11欄の金額を転記します。

(3) 6欄(雇用者給与等支給増加額)には、4欄の15,490,000円から5欄の11,920,000円を引いた3,570,000円を記載します。

(4) 7欄(雇用者給与等支給増加割合)には、6欄の3,570,000円を5欄の11,920,000円で割った0.2994を記載します。

(5) 8欄・9欄・10欄についても、4欄・5欄・6欄と同様の手順で記載します。

(6) 20欄(控除対象雇用者給与等支給増加額)には、6欄と10欄のうち少ない金額を記載します。今回の説例では、22欄(差引控除対象雇用者給与等支給増加額)も20欄と同額を記載します。

(7) 31欄は、適用要件(税額控除率の上乗せ要件)に関する欄です。7欄(雇用者給与等支給増加割合)が0.2994≧2.5%となったことから、通常の税額控除率15%にさらに15%が上乗せされますので、31欄には0.15と記載します。

(8) 34欄(中小企業者等税額控除限度額)には、上記(7)の結果より税額控除率は30%になりますので、22欄の3,570,000円×30%=1,071,000円を記載します。

(9) 35欄(調整前法人税額)には、別表1の2欄の金額を転記します。

(10) 36欄(当期税額基準額)には、35欄の2,633,064円×20/100=526,612円を記載します。
 賃上げ促進税制による税額控除額は法人税額の20%が上限となりますので、その制限を受けるかどうかをここで計算します。

 今回の説例では、上記(8)の34欄で算出した1,071,000円が最大の税額控除額ですが、法人税額の20%である526,612円が上限となるため、37欄(当期税額控除可能額)には526,612円と記載します。

 34欄の1,071,000円を別表6(24)付表1の25欄に、37欄の526,612円を別表6(24)付表1の26欄にそれぞれ転記し、別表6(24)付表1の27欄(翌期繰越額)に1,071,000円-526,612円=544,388円を記載します。

4.別表六(六)の書き方と記載例

 次に、別表6(6)を記載します。記載上のポイントは次のとおりです。

(1) 1欄(当期税額控除可能額)には、7欄(当期税額控除可能額)の合計526,612円を記載します。

(2) 2欄(調整前法人税額)には、別表1の2欄の金額を転記します。

(3) 4欄(当期税額基準額)には、2欄の2,633,064円から3欄の0円を引いた金額に90/100を掛けて、(2,633,064円-0円)×90/100=2,369,757円と記載します。

 法人が税額控除の適用を受ける場合、税額控除額は調整前法人税額の90%が限度となりますので、その制限を受けるかどうかをここで計算します。

(4) 5欄(法人税額の特別控除額)には、1欄と4欄のうち少ない金額の526,612円を記載します。
 この526,612円を、別表1の3欄に転記します。

(5) 6欄(調整前法人税額超過額)には、今回の設例では0円(1欄526,612円-(5欄526,612円-3欄0円)=0円)と記載します。

5.別表六(六)付表の書き方と記載例

 今回の設例では、別表6(6)の6欄(調整前法人税額超過額)が0円になりましたので、別表6(6)付表2欄に記載する金額はありません。
 
 また、賃上げ促進税制における5年間の繰越税額控除制度(賃上げを実施した年度に控除しきれなかった金額について、翌年度以降に5年間の繰り越しが可能)は、2024(令和6)年4月1日から開始する事業年度に適用されます。

 したがって、今回の設例の会社が、前期(令和6年2月1日~令和7年1月31日)も賃上げ促進税制の適用を受けていて控除しきれない金額があったとしても、その金額を当期(令和7年2月1日~令和8年1月31日)に繰り越すことはできません。

 そのため、前期繰越分に係る当期税額控除可能額がないことから、今回の設例における別表6(6)付表の記載例は上図のようになります(記載する金額はありません)。

 なお、繰越税額控除制度については、「賃上げ促進税制の繰越税額控除制度の注意点」をご参照ください。

新リース会計基準の導入が中小企業に及ぼす会計上と税務上の影響(令和7年度税制改正)

 リース取引は、契約内容によって「ファイナンス・リース取引」と「オペレーティング・リース取引」に分けられ、さらに、ファイナンス・リース取引は、「所有権移転ファイナンス・リース取引」と「所有権移転外ファイナンス・リース取引」に分けられます。

 ファイナンス・リース取引とは、リース期間中に契約を解除できない(ノンキャンセラブル)、かつ、借り手がリース物件の経済的利益を享受しコストを負担する(フルペイアウト)リース取引をいいます。
 
 さらに、ファイナンス・リース取引は、リース期間終了後に資産の所有権が貸し手から借り手に移ると認められる所有権移転ファイナンス・リース取引と、リース期間が終了しても借り手に所有権が移らない所有権移転外ファイナンス・リース取引に分かれます。

 また、オペレーティング・リース取引とは、ファイナンス・リース取引以外のリース取引をいいます。

 これらのリース取引について、2024(令和6)年9月に企業会計基準委員会より新リース会計基準が公表され、2025(令和7)年度税制改正で新リース会計基準を踏まえた税務上の対応がなされています。

 以下では、借り手である中小企業の立場から、新リース会計基準の導入が及ぼす会計上と税務上の影響について確認します。

1.新基準によるオペレーティング・リース取引の会計上の取扱い

 2024(令和6)年9月に、企業会計基準委員会より新リース会計基準が公表されました。旧リース会計基準からの見直しの内容は次のとおりです。

(1) 借り手については、これまでのファイナンス・リース(売買取引に準じた会計処理)とオペレーティング・リース(賃貸借取引に準じた会計処理)との区分を廃止し、使用権資産とリース負債を計上する単一の会計モデルを採用することとされました。

(2) 貸し手については、引き続きファイナンス・リースとオペレーティング・リースを区分することとし、その区分に応じた処理を行うこととされました。
 なお、ファイナンス・リースの場合の会計処理のうち、リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法による会計処理は、収益認識会計基準において割賦基準が認められなくなったことを踏まえて、廃止することとされました。

(3) 新リース会計基準は、2027(令和9)年4月1日以後に開始する事業年度の期首から適用することとされていますが、2025(令和7)年4月1日以後に開始する事業年度の期首からの早期適用も認めることとされました。

出所:国税庁ホームページ

 新リース会計基準では、ファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引の区分は廃止され、原則として、すべてのリース取引はオンバランスでの会計処理に統一されます。
 オンバランスとは、貸借対照表に資産や負債を計上し、売買取引に準じた会計処理を行うことをいいます。

 したがって、これまで賃貸借取引に準じた会計処理(資産や負債を計上せずにリース料を費用計上する会計処理)が認められていたオペレーティング・リース取引についても、ファイナンス・リース取引と同様に売買取引に準じた会計処理となりますので、従来に比べてリース取引の会計処理が煩雑になる懸念があります。

2.オペレーティング・リース取引の税務上の取扱い

 新リース会計基準では、オペレーティング・リース取引について、会計上は売買取引に準じた会計処理を行うこととされましたが、法人税法上は従来と変わらず、賃貸借取引に準じた会計処理とされました(法人税法第53条が新設されました)。

出所:国税庁ホームページ

 したがって、オペレーティング・リース取引については、会計上は新リース会計基準に則った売買取引に準じた会計処理を行い、税務上は賃貸借取引に準じた会計処理を行うことになりますので、会計上と税務上で会計処理の乖離が生じ、申告調整が必要となります。 

 ところが、中小企業など、監査対象法人以外の法人については、新リース会計基準によらず、引き続き「中小企業の会計に関する指針」又は「中小企業の会計に関する基本要領」に則った会計処理も可能とされていますので、オペレーティング・リース取引について会計上も賃貸借取引に準じた会計処理を行った場合は、会計上と税務上で会計処理の乖離は生じず、申告調整も不要となります。

 また、旧リース会計基準においては、所有権移転ファイナンス・リース取引は売買取引に準じた会計処理を行いますが、所有権移転外ファイナンス・リース取引については、「借り手が中小企業」又は「リース期間が1年以内、又は、リース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下」の条件に該当する場合は、賃貸借取引に準じた会計処理が認められていました。

 新リース会計基準においても「短期リース(リース期間が12か月以内)」と「少額リース(重要性の乏しいリース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下のリースなど)については、オンバランス不要の賃貸借取引に準じた会計処理が認められていますので、多くの中小企業は簡便な賃貸借取引に準じた会計処理を行うものと思われます。

 そのため、今回の新リース会計基準の導入が借り手である中小企業に与える影響は、実質的には大きくないものと思われます。

税抜経理方式と税込経理方式を併用する場合の問題点とその調整のための会計処理

 消費税(地方消費税を含みます。以下同じ)の会計処理方法には税込経理方式と税抜経理方式があり、どちらの方式を選択してもよいことになっていますが※1、選択した方式は、その事業者が行うすべての取引に適用するのが原則です。

 ところが、税抜経理方式を選択適用している場合は、一定の条件の下で、税込経理方式を併用することができます※2

 しかし、税抜経理方式を選択適用する場合の税込経理方式の併用(以下「併用方式」といいます)には、問題点もあります。

 以下では、併用方式の問題点とそれを調整するための会計処理について確認します。

※1 免税事業者は、税込経理方式しか適用できません。

※2 税抜経理方式を選択適用している場合の税込経理方式の併用条件等については、「税抜経理方式の場合に棚卸資産を税込で計上するときの条件と損益に与える影響」をご参照ください。
 なお、税込経理方式を選択適用している場合は、すべての取引について税込経理方式しか適用できません。

1.併用方式の問題点

 事業者がすべての取引について税抜経理方式を選択適用した場合、消費税等が課される取引については税抜金額で計上し、課税売上げに対する消費税等の額は仮受消費税等とし、また、課税仕入れに対する消費税等の額は仮払消費税等とします。

 例えば、税込330万円の商品を仕入れて、その商品を税込550万円で売った場合の会計処理は次のようになります(税率10%)。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
仕入 300万円 現金預金 330万円
仮払消費税等 30万円    
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現金預金 550万円 売上 500万円
    仮受消費税等 50万円

 

 また、決算において、仮受消費税等の合計額から仮払消費税等の合計額を差し引いて(精算して)、納税額を未払計上します。上記以外の取引が無かったものとすると、決算仕訳は次のようになります。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
仮受消費税等 50万円 仮払消費税等 30万円
    未払消費税等 20万円

 一方、併用方式においては、売上などの収益に係る取引については必ず税抜経理をしなければなりませんが、次の各グループに関する取引のいずれかについては、グループごとに税込経理を適用することが認められています。

(1) 棚卸資産の取得
(2) 固定資産・繰延資産の取得
(3) 販売費・一般管理費など(以下「経費等」といいます)の支出

 この場合、仮受消費税等の合計額から仮払消費税等の合計額を差し引いた金額は、納税額または還付税額と一致しません。

 例えば、経費等の支出に係る取引について税込経理を適用した場合には、経費等に含まれる消費税等を仮払消費税等としないため、その課税期間の仮受消費税等の合計額から仮払消費税等の合計額を差し引いた金額と納付すべき税額または還付されるべき税額との間に差額が出ます。

 上記の例(税込330万円の商品を仕入れて、その商品を税込550万円で売った場合)を、併用方式(仕入を税込処理)で会計処理すると次のようになります。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
仕入 330万円 現金預金 330万円
仮払消費税等 0万円    
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現金預金 550万円 売上 500万円
    仮受消費税等 50万円
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
仮受消費税等 50万円 仮払消費税等 0万円
    未払消費税等 20万円

 上記の決算仕訳においては、仮受消費税等の合計額(50万円)から仮払消費税等の合計額(0円)を差し引いた金額(50万円)と未払消費税等(20万円)との間に差額(30万円)が出ており仕訳が成り立ちません。

 また、所得金額または損益の点から検討すると、この例では、税込経理した仕入に含まれる消費税の額(30万円)だけ経費等の額が多くなります。
 裏を返せば、すべての取引について税抜経理方式を適用した場合に比べて、一部を税込経理する併用方式を適用した場合は、利益が少なく算出されることになります(下図)。

税抜経理方式と併用方式は会計処理(記帳)の方法であって消費税の納税額の計算方法ではありませんので、どちらの方式を適用したとしても納税額(未払消費税等)は同じになります。

2.差額を益金または総収入金額に算入

 併用方式により生じた、仮受消費税等の合計額から仮払消費税等の合計額を差し引いた金額と納付すべき税額または還付されるべき税額との差額については、法人においては、その課税期間を含む事業年度の益金の額に算入し、個人事業者においては、その課税期間を含む年の総収入金額に算入します。

 上記1の例では、併用方式の決算仕訳は次のようになります。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
仮受消費税等 50万円 仮払消費税等 0万円
    未払消費税等 20万円
    雑収入 30万円

 その結果、すべての取引について税抜経理方式を適用した場合と併用方式を適用した場合の利益は同額となり、所得金額または損益の点からも、併用方式の問題点は解消されます(下図)。

税抜経理方式の場合に棚卸資産を税込で計上するときの条件と損益に与える影響

 消費税(地方消費税を含みます。以下同じ)の会計処理方法には税込経理方式と税抜経理方式があり、どちらの方式を選択してもよいことになっていますが※1、選択した方式は、その事業者が行うすべての取引に適用するのが原則です。

 棚卸資産を例に挙げると、税込経理方式を選択している場合は棚卸資産も税込金額で計上し、税抜経理方式を選択している場合は棚卸資産も税抜金額で計上します。

 ところが、税抜経理方式を選択適用している場合は、一定の条件の下で、棚卸資産を税込金額で計上することもできます※2

 以下では、棚卸資産を中心に、税抜経理方式を選択適用する場合の税込経理方式の併用条件と併用が損益に与える影響について確認します。

※1 免税事業者は、税込経理方式しか適用できません。

※2 税込経理方式を選択適用している場合に、棚卸資産を税抜金額で計上することはできません。

1.税抜経理方式と税込経理方式の併用条件

 税抜経理方式を選択適用する場合は、売上げなどの収益に係る取引については、必ず税抜経理をしなければなりません。

 一方、次の各グループに関する取引のいずれかについては、税抜経理方式を選択適用していても税込経理方式を適用することが認められています。

(1) 棚卸資産の取得
(2) 固定資産・繰延資産の取得
(3) 販売費・一般管理費など(以下「経費等」といいます)の支出

 ただし、以下の条件に留意する必要があります。

イ.売上などの収益に係る取引に加えて、上記(1)(2)(3)のうち、少なくとも1グループについては税抜経理をしなければなりません(例えば、(1)は税込み、(2)と(3)は税抜きなどは認められますが、(1)(2)(3)すべてを税込みとすることはできません)。

ロ.棚卸資産の取得に関する取引については、継続適用を条件として、固定資産・繰延資産の取得に関する取引と異なる経理方式を適用することができます。

ハ.税抜経理方式と税込経理方式を併用して適用する場合でも、個々の棚卸資産、固定資産、繰延資産、または個々の経費等について異なる経理方式を適用することはできません(例えば、棚卸資産のうち、ある棚卸資産は税抜きとし、そのほかの棚卸資産は税込みとする処理は認められません)。

 なお、上記(1)棚卸資産の取得について税込経理をする場合に、「棚卸資産の取得」という文言から、期末棚卸資産だけでなく、その仕入時(棚卸資産の取得時)も税込経理する必要があるのかというとそうではなく、仕入時は税抜金額で計上し、決算時は期末棚卸資産を税込金額で計上します。

 したがって、決算書の当期仕入高は税抜金額で、期末棚卸高は税込金額で表示されることになります。

2.併用方式が損益に与える影響

 税抜経理方式と税込経理方式は会計処理の方法であって消費税の納税額の計算方法ではありませんので、どちらの方式を選択適用したとしても納税額に差異はなく、算出される利益は原則として同じになります。

 しかし、税抜経理方式を選択適用している場合に棚卸資産を税込金額で計上するとき(以下「併用方式」といいます)は、税抜経理方式のみで会計処理する場合と比べて、利益は大きくなります。

 例えば、税込110万円分(税率10%)の期末在庫(期末棚卸資産)があったとすると、税抜経理方式のみで会計処理する場合の期末在庫が100万円であるのに対し、併用方式の場合の期末在庫は110万円となるので、消費税10万円分だけ期末在庫が大きくなり、その分売上原価が小さくなります。
 売上原価が10万円小さくなると、売上総利益が10万円大きく算出されることになります。
 その結果、課税される法人税(個人の場合は所得税)も多くなります。

 上図は、説明を簡略化するため、期首在庫(期首棚卸資産)を無いものとしていますが、税抜経理方式から税込経理方式に、税込経理方式から税抜経理方式に変更した場合でも、期首在庫の価額について、仕入時に計上した金額を修正する必要はありません。
 会計処理を変更した場合でも、前期の期末在庫の金額をそのまま当期の期首在庫の金額として引き継ぎます。

キャッシュレス納付の類型と手続きの概要

 国税庁では効率化とコスト抑制の観点から「納付書」の送付対象者を見直し、2024(令和6)年5月よりe-Taxで申告書を提出した法人などには納付書が送付されなくなりました。

 これまで通り納付書で税金の納付を行いたい場合は、税務署に送付依頼の電話をかければ納付書を入手することができますが、近年は納付書を使わない納付方法(以下「キャッシュレス納付」といいます)も多様化して選択肢が増えています。

 キャッシュレス納付は、納税者の事務手続きや現金処理業務の効率化(現金管理に伴うコスト削減)に資する面もありますので、今すぐではなくとも将来的に活用することも検討されてはいかがでしょうか。

 以下では、国税に関するキャッシュレス納付の類型と手続きについて概観します

地方税についても地方税統一QRコードにより多くの地方自治体でキャッシュレス納付ができるようになりましたが、自治体によっては対応していない場合や対応している税目等が異なりますので、納付先の自治体にご確認ください。

1.振替納税

 振替納税は、納税者名義の預貯金口座からの自動引落しにより国税を納付する方法です。古くからある制度ですので、納税者にとってはなじみ深いものだと思われます。

 振替納税を利用するにあたっては、事前(国税の納期限まで)に所轄税務署または希望する預貯金口座のある金融機関へ振替依頼書を書面またはe-Taxにより提出する必要があります。

 利用できる税目は、申告所得税及び復興特別所得税消費税及び地方消費税(個人事業者)であり、個人に限られます。

 利用にあたって、手数料はかかりません。

2.ダイレクト納付

 ダイレクト納付は、e-Taxにより申告書を提出した後、納税者名義の預貯金口座から即時または振替日を指定して口座引き落としにより納付する方法です。

 事前に振替を行う預貯金口座の届け出が必要で、届け出から利用開始までに約1か月程度かかります。

 2024(令和6)年4月からはe-Taxによる申告と同時に法定納期限当日に自動的に口座引き落としされる「自動ダイレクト」が機能として追加されました

 すべての税目で利用でき、利用にあたって手数料はかかりません。

法定納期限当日に手続きをした場合は、その翌取引日に自動引落しされます。この場合、法定納期限から引落しの日までの延滞税や加算税はかかりません。

3.インターネットバンキング納付

 インターネットバンキング納付は、e-Taxにより申告書を提出した際に受け取った納付情報を基に、金融機関のインターネットバンキングやATMを利用して納付をする方法です。

 事前に金融機関に対してインターネットバンキングの契約が必要ですが、ATMから納付する場合は不要です。

 上記2のダイレクト納付と異なり、振替日の指定はできず、即時の納付となります。

 すべての税目で利用でき、利用にあたって手数料はかかりません

インターネットバンキングやATMの利用手数料がかかる場合があります。

4.クレジットカード納付

 クレジットカード納付は、事前の手続きなしでパソコンやスマホから国税クレジットカードお支払いサイトを通じて税金を納付する方法です。

 納付情報を直接入力して納付する方法以外に、e-Taxにより申告書を提出した際に受け取った納付情報を基に納付することも可能です。

 クレジットカード納付はインターネット上のみの手続きであり、金融機関やコンビニ、税務署の窓口ではクレジットカード納付はできません。

 すべての税目で利用できますが、利用にあたっては納付税額に応じた決済手数料がかかります。

5.スマホアプリ納付

 スマホアプリ納付は、e-Taxにより申告書を提出した際に格納される受信通知(納付区分番号通知)からスマートフォン決済専用サイトへアクセスし、Pay払いで納付する方法です。

 利用可能なPay払いは、次の6つです(LINE Payの取扱いは2025(令和7)年4月14日で終了しました)

※ 2026(令和8)年1月4日より、利用可能なPay払いが変更になり、Amazon Payは利用できなくなりました。

出所:国税庁ホームページ

 アカウント残高を利用した支払方法のみ利用可能なため、事前に利用するPay払いへのアカウント登録と残高チャージが必要です。なお、納付しようとする金額が30万円以下の場合に利用可能です。

 すべての税目で利用でき、利用にあたって手数料はかかりません。

amazon payの場合はamazonギフトカードで残高チャージができるため、amazonギフトカードをクレジットカードで購入すれば、通常の買い物と同様にクレジットカードのポイントも貯まりますのでお得な方法です。
 amazon payによるスマホアプリ納付の詳細については、「Amazon Payでスマホアプリ納付をする方法(決済手数料0円)」をご参照ください。