2024(令和6)年度から改正される個人住民税

 2024(令和6)年度から適用される個人住民税に関連する改正項目について、以下で確認します。

1.上場株式等の配当所得等に係る課税方式の統一

 上場株式等に係る配当所得等及び譲渡所得等に係る所得の課税方式を、所得税と住民税で一致させることとなりました。
 これまでは、上場株式等の配当所得等・譲渡所得等については所得税と住民税で異なる課税方式を選択できましたが、2024(令和6)年度課税分からは所得税において選択した課税方式が個人住民税にも適用され、所得税と住民税で異なる課税方式を選択することができなくなりました
 この改正により、扶養控除や配偶者控除等の適用、非課税判定、国民健康保険税の保険料算定など、各種行政サービスに影響する場合がありますのでご注意下さい。

※ これに伴い、2023(令和5)年分所得税確定申告書(第二表)における「住民税・事業税に関する事項」の「住民税」のうち、「特定配当等・特定株式等譲渡所得の全部の申告不要」欄が削除されています。

2.国外居住親族に係る扶養控除等の見直し

 30歳以上70歳未満の国外居住親族(国内に住所がなく、かつ、1年以上国内に居住していない親族)は、「扶養控除等の適用」及び「非課税限度額を算定するための扶養親族」の対象外となります。
 ただし、以下のいずれかに該当する人は対象となります。

(1) 留学により国外居住者となった人
(2) 障碍者
(3) 扶養親族等を申告する納税義務者から、生活費又は教育費に充てるための支払いを、税額の計算対象となる年(2024(令和6)年度の個人住民税の場合は2023(令和5)年中)において38万円以上受けている人

 これらに該当する人に係る扶養控除等の適用を受けようとする場合には、年末調整や確定申告等の際に各種証明書類を添付する必要があります(関連記事:「令和6年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の書き方と記載例」)。

3.森林環境税(国税)の課税開始

 森林環境税は、温室効果ガス排出削減目標の達成や災害防止を図るため、森林の整備などに必要な地方財源を安定的に確保するための国税で、年額1,000円が個人の市・県民税の均等割と併せて課税されます。
 その税収は全額が森林環境贈与税として国から自治体へ譲与され、森林整備などに充てられます。
 一方、東日本大震災からの復興を図ることを目的とした均等割1,000円(市・県500円ずつ)の課税は、2023(令和5)年度で終了します。
 これにより、個人住民税均等割と森林環境税の合計額は従前の個人住民税均等割の額と同額となります(下表は兵庫県宝塚市の場合)。

税目 平成26~令和5年度 令和6年度~
森林環境税 1,000円
市民税均等割 3,500円 3,000円
県民税均等割 2,300円 1,800円
合計 5,800円 5,800円

インボイス不要の「自動販売機特例」「回収特例(3万円未満)」における帳簿の記載方法

1.自販機の住所を帳簿に記載する?

 以下の取引については、適格請求書(以下「インボイス」といいます)がなくても一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。

(1) インボイスの交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関による旅客の運送(公共交通機関特例)
(2) 簡易インボイスの記載事項(取引年月日を除きます)が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引(回収特例)
(3)  古物営業を営む者のインボイス発行事業者でない者からの古物の購入 
(4) 質屋を営む者のインボイス発行事業者でない者からの質物の取得
(5) 宅地建物取引業を営む者のインボイス発行事業者でない者からの建物の購入
(6) インボイス発行事業者でない者からの再生資源又は再生部品の購入
(7) インボイスの交付義務が免除される3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等(自動販売機特例)
(8) インボイスの交付義務が免除される郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストにより差し出されたものに限ります)
(9)  従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)

  これらの取引の帳簿記載に関しては、通常必要な記載事項に加えて次の事項の記載が必要です。

(a) 帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる上記(1)~(9)のいずれかの仕入れに該当する旨
 例えば、上記(1)に該当する場合は「3万円未満の鉄道料金」や「公共交通機関特例」など、上記(2)に該当する場合は「入場券等」や「回収特例」など、上記(7)に該当する場合は「自動販売機特例」などと記載します。

(b) 仕入れの相手方の住所又は所在地(一定の者を除きます) 
 例えば、上記(7)に該当する場合は「○○市 自販機」や「××銀行□□支店ATM」などと記載します(参考:国税庁ホームページ「適格請求書等保存方式に関するQ&A」問110)。

 ここで、上記(b)についての記載に関しては少なからず疑問が生じます。
 例えば、神戸市内の自販機で飲料を購入した場合に「神戸市 自販機」と記載することに意味があるのでしょうか?そう記載することで飲料を購入した自販機を特定できるのでしょうか?

 この点に関して、2023(令和5)年12月22日に「令和6年度税制改正の大綱」が閣議決定され、仕入税額控除に係る帳簿の記載事項の見直しについて、以下のとおり、その方針が示されました。

 一定の事項が記載された帳簿のみの保存により仕入税額控除が認められる自動販売機及び自動サービス機による課税仕入れ並びに使用の際に証票が回収される課税仕入れ(3万円未満のものに限る。)については、帳簿への住所等の記載を不要とする。
注)上記の改正の趣旨を踏まえ、令和5年10月1日以後に行われる上記の課税仕入れに係る帳簿への住所等の記載については、運用上、記載がなくとも改めて求めないものとする。

 この閣議決定に基づき、「自動販売機特例が適用される取引」や「回収特例が適用される取引(3万円未満の取引に限る)」における帳簿の記載事項については、「公共交通機関特例」などの取扱いと同様に「住所又は所在地」の記載を不要とする取扱いが整備されます(国税庁告示を改正予定)。
 なお、この整備前においても、運用上「住所又は所在地」の記載を求めないこととされています。

出所:国税庁ホームページ

2.自販機特例・回収特例(3万円未満)の帳簿への記載例

 令和6年度税制改正の大綱によって、インボイス制度が開始された令和5年10月1日以降に自販機特例や回収特例(3万円未満)が適用される取引については、帳簿に「住所又は所在地」を記載する必要がなくなりました。
 これらの取引については、具体的には次のように帳簿に記載します。

(1) 自販機特例
 例えば、会議の際に提供する飲み物として自動販売機で飲料(1本150円)を20本(3,000円)購入した場合、帳簿には次のように記載します。

出所:国税庁ホームページ

(2) 回収特例(3万円未満)
 例えば、従業員の福利厚生目的で〇〇施設の入場券(1枚2,000円)を4枚(8,000円)購入し使用した場合、帳簿には次のように記載します。

出所:国税庁ホームページ

 なお、自販機特例や回収特例(3万円未満)が適用される取引かどうかは、1回の取引の税込価額が3万円未満かどうかで判定します。
 また、帳簿に記載する「課税仕入れの相手方の氏名又は名称」及び「特例の対象となる旨」は、「自販機」との記載で差し支えありません。
 この記載方法に関する取扱いは、今回の見直し前後で変更はありません。

少額な返還インボイスの交付義務の免除

 2023(令和5)年10月1日からインボイス制度(適格請求書等保存方式)がスタートします。このインボイス制度は、免税事業者を中心に多くの事業者へ影響を及ぼすことから、その影響を緩和するために、2023(令和5)年度税制改正で以下の負担軽減措置(支援措置)が講じられました。

(1) 売上税額の2割を納税額とする「2割特例」
(2) 帳簿保存のみで仕入税額控除ができる「少額特例」
(3) 少額な返還インボイスの交付義務の免除
(4) 登録制度の見直しと手続きの柔軟化

 今回は、上記の負担軽減措置のうち、(3)の「少額な返還インボイスの交付義務の免除」の内容を確認します。

1.返還インボイスとは?

 インボイス制度がスタートすると、値引きや返品等があった場合に、インボイス発行事業者である売り手に返還インボイス(適格返還請求書)の交付義務が課せられます。
 返還インボイスの記載事項と記載例は次のとおりです。

① インボイス発行事業者のの氏名又は名称及び登録番号
② 値引・返品等を行う年月日及びその値引・返品等の基となった売上を行った年月日
③ 値引・返品等の基となる売上の内容
④ 値引・返品等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額
⑤ 値引・返品等の金額に係る消費税額等又は適用税率

出所:国税庁ホームページ

2.値引等が税込1万円未満であれば交付義務免除

 インボイス発行事業者である売り手が値引をしたり返品を受けたりする場合には、原則として上記1のような返還インボイスを発行する必要があります。

 しかし、売り手が負担する振込手数料(買い手からの売上代金の振込時に差し引かれる振込手数料)について売り手が値引として処理する場合に、振込手数料という少額な値引にまで返還インボイスの交付義務が課される点については、事務負担などの懸念が示されていました。

 そのため、2023(令和5)年度税制改正で返還インボイスの交付義務の見直しが行われ、値引や返品等の税込価額が1万円未満である場合は、返還インボイスの交付義務が免除されることとなりました。

出所:国税庁ホームページ

 この見直しにより、振込手数料は通常1万円未満と考えられるため、売り手負担の振込手数料に係る事務負担が解消されます。
 なお、この措置(少額な返還インボイスの交付義務の免除)は「2割特例」や「少額特例」と異なり、すべての事業者が対象(適用対象者に制限なし)であり、適用期限のない恒久的な措置となっています。

※ 「2割特例」については本ブログ記事「インボイス制度に係る支援措置:売上税額の2割納税」を、「少額特例」については「インボイスの保存がなくても仕入税額控除が認められる「少額特例」とは?」をご参照ください。

3.売り手負担の振込手数料を支払手数料で処理する場合

 上記のように、売り手負担の振込手数料を「売上値引(売上げに係る対価の返還等)」として処理する場合は、返還インボイスの交付義務は免除されます。

 では、売り手負担の振込手数料を「支払手数料(課税仕入)」として処理する場合も交付義務免除の対象となるのでしょうか?

 この場合は、値引(対価の返還等)ではなく支払手数料(課税仕入)として処理していますので、そもそも返還インボイスの交付は必要ありません。
 ただし、支払手数料として仕入税額控除を行うためには、金融機関や取引先等からの支払手数料に係るインボイスが必要ですが、振込手数料は通常1万円未満と考えられるため、「少額特例」の対象にはなります。

中小企業者等の賃上げ促進税制《令和4年4月1日~令和6年3月31日開始事業年度》

1.簡素化された所得拡大促進税制

 賃上げ促進税制は、青色申告書を提出している中小企業者等が、一定の要件を満たした上で前年度より給与等の支給額を増加させた場合、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です。
 賃上げ促進税制は、従来からあった所得拡大促進税制が2022(令和4)年度税制改正で呼称が改められたものです。基本的な内容は所得拡大促進税制を踏襲しつつも、適用要件などの見直しが行われ、制度自体はより簡素化されたものとなりました。
 2022(令和4)年度税制改正による主な変更点は、次のとおりです。

・上乗せ要件を簡素化&控除率引き上げ(控除率最大40%) 
・教育訓練費増加要件に係る明細書の「添付義務」を「保存義務」へ変更
経営力向上要件は廃止 
出所:中小企業庁ホームページ

 以下では、賃上げ促進税制の内容について確認します。

2.賃上げ促進税制の内容

 2022(令和4)年度税制改正による賃上げ促進税制の内容は、次のとおりです。

(1) 制度概要

 中小企業者等で青色申告書を提出するものが、国内雇用者※1に対して給与等※2を支給する場合において、一定の要件(通常要件)を満たす場合には、その雇用者給与等支給増加額の15%(上乗せ要件を満たす場合は最大40%)の税額控除を適用できます。

※1 国内雇用者とは、法人又は個人事業主の使用人のうちその法人又は個人事業主の国内に所在する事業所につき作成された賃金台帳に記載された者を指します。パート、アルバイト、日雇い労働者も含みますが、使用人兼務役員を含む役員及び役員の特殊関係者、個人事業主の特殊関係者は含まれません。
 なお、特殊関係者とは、法人の役員又は個人事業主の親族などを指します。親族の範囲は6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族までが該当します。また、当該役員又は個人事業主と婚姻関係と同様の事情にある者、当該役員又は個人事業主から生計の支援を受けている者等も特殊関係者に含まれます。

※2 給与等とは、俸給・給料・賃金・歳費及び賞与並びに、これらの性質を有する給与(所得税法第28条第1項に規定する給与等)をいいます。したがって、例えば、所得税法第9条(非課税所得)の規定により非課税とされる給与所得者に対する通勤手当等についても、原則的には本制度における「給与等」に含まれることになります。ただし、賃金台帳に記載された支給額のみを対象に、所得税法上課税されない通勤手当等の額を含めずに計算する等、合理的な方法により継続して国内雇用者に対する給与等の支給額の計算をすることも認められます。
 なお、退職金など、給与所得とならないものについては、原則として給与等に含まれません。

(2) 適用期間

 2022(令和4)年4月1日から2024(令和6)年3月31日までの間に開始する各事業年度(個人事業主は2023(令和5)年及び2024(令和6)年の各年が対象)

(3) 適用対象者

 適用対象となる中小企業者等とは、青色申告書を提出する者のうち、以下の①~③に該当するものを指します。

① 以下のイ、ロのいずれかに該当する法人(ただし、前3事業年度の所得金額の平均額が15億円を超える法人は対象外)

イ.資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人
ただし、以下の法人は対象外
(イ) 同一の大規模法人※3から2分の1以上の出資を受ける法人
(ロ) 2以上の大規模法人※3から3分の2以上の出資を受ける法人

※3 大規模法人とは、資本金の額若しくは出資金の額が1億円超の法人、資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人超の法人又は大法人(資本金の額又は出資金の額が5億円以上である法人等)との間に当該大法人による完全支配関係がある法人等をいい、中小企業投資育成株式会社を除きます。

ロ.資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人以下の法人

② 常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主

③ 農業協同組合、農業協同組合連合会、中小企業等協同組合、出資組合である商工組合及び商工組合連合会、内航海運組合、内航海運組合連合会、出資組合である生活衛生同業組合、漁業協同組合、漁業協同組合連合会、水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会、森林組合並びに森林組合連合会

(4) 適用要件

 通常要件(税額控除率15%)と上乗せ要件(税額控除率15%と10%)は、次のとおりです。

① 通常要件(税額控除率15%)
 雇用者給与等支給額が前事業年度と比べて1.5%以上増加していること

雇用者給与等支給額(適用年度)- 比較雇用者給与等支給額(前事業年度)/比較雇用者給与等支給額(前事業年度) ≧1.5%

  雇用者給与等支給額※4及び比較雇用者給与等支給額※5に、給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額(雇用安定助成金額※6を除きます)がある場合には、当該金額を控除して要件の適用判定を行います。

※4 雇用者給与等支給額とは、適用年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される全ての国内雇用者に対する給与等の支給額をいいます。

※5 比較雇用者給与等支給額とは、前事業年度における雇用者給与等支給額をいいます。

※6 雇用安定助成金額(国又は地方公共団体から受ける雇用保険法第62条第1項第1号に掲げる事業として支給が行われる助成金その他これに類するものの額)には、以下のものが該当します。
a 雇用調整助成金、産業雇用安定助成金又は緊急雇用安定助成金の額
b aに上乗せして支給される助成金の額その他のaに準じて地方公共団体から支給される助成金の額

出所:中小企業庁ホームページ

② 上乗せ要件(税額控除率15%)
 雇用者給与等支給額が前事業年度と比べて2.5%以上増加していること

雇用者給与等支給額(適用年度)- 比較雇用者給与等支給額(前事業年度)/比較雇用者給与等支給額(前事業年度) ≧2.5%

 雇用者給与等支給額及び比較雇用者給与等支給額に、給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額(雇用安定助成金額を除きます)がある場合には、当該金額を控除して要件の適用判定を行います。

③ 上乗せ要件(税額控除率10%)
 教育訓練費の額が前事業年度と比べて10%以上増加していること

教育訓練費の額(適用年度)- 比較教育訓練費の額(前事業年度)/比較教育訓練費の額(前事業年度) ≧10%

 教育訓練費とは、所得の金額の計算上損金の額に算入される、国内雇用者の職務に必要な技術又は知識を習得させ、又は向上させるために支出する費用のうち一定のものをいいます。
 具体的には、法人が教育訓練等を自ら行う場合の費用(外部講師謝金等、外部施設使用料等)、他の者に委託して教育訓練等を行わせる場合の費用(研修委託費等)、他の者が行う教育訓練等に参加させる場合の費用(外部研修参加費等)などをいいます。
 なお、教育訓練の対象者は法人又は個人の国内雇用者です。したがって、以下の者は国内雇用者ではないため対象外となります。

イ.当該法人の役員又は個人事業主
ロ.使用人兼務役員
ハ.当該法人の役員又は個人事業主の特殊関係者((イ) 役員の親族、(ロ) 事実上婚姻関係と同様の事情にある者、(ハ)役員から生計の支援を受けている者、(ニ) (ロ)又は(ハ)と生計を一にする親族)
ニ.内定者等の入社予定者

(5) 税額控除額

① 通常要件(税額控除率15%)を満たす場合
 控除対象雇用者給与等支給増加額の15%を法人税額又は所得税額から控除します。ただし、税額控除額は法人税額又は所得税額の20%が上限となります。

税額控除額 = 控除対象雇用者給与等支給増加額 ×15%

 控除対象雇用者給与等支給増加額とは、適用年度の雇用者給与等支給額から前事業年度の比較雇用者給与等支給額を控除した金額をいいます。ただし、調整雇用者給与等支給増加額を上限とします。
 調整雇用者給与等支給増加額とは、適用年度の雇用安定助成金額を控除した雇用者給与等支給額から、前事業年度の雇用安定助成金額を控除した比較雇用者給与等支給額を控除した金額をいいます。
 なお、雇用者給与等支給額及び比較雇用者給与等支給額に、給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額(雇用安定助成金額を除きます)がある場合には、当該金額を控除して計算を行います。

出所:中小企業庁ホームページ

② 上乗せ要件(税額控除率15%)を満たす場合
 上記(5)①の通常要件の控除率15%に15%が上乗せされて、税額控除率は30%となります(通常要件15%+上乗せ要件15%=30%)。
 下記③を併用する場合は、税額控除率は40%となります(通常要件15%+上乗せ要件15%+上乗せ要件10%=40%)。
 ただし、税額控除額は法人税額又は所得税額の20%が上限となります。

③ 上乗せ要件(税額控除率10%)を満たす場合
 上記(5)①の通常要件の控除率15%に10%が上乗せされて、税額控除率は25%となります(通常要件15%+上乗せ要件10%=25%)。
 上記②を併用する場合は、税額控除率は40%となります(通常要件15%+上乗せ要件15%+上乗せ要件10%=40%)。
 ただし、税額控除額は法人税額又は所得税額の20%が上限となります。

相続時精算課税制度に110万円の基礎控除が設けられた!

 2023(令和5)年度税制改正で、暦年課税と相続時精算課税の見直しが行われました。今回はそのうちの相続時精算課税の改正について確認します(暦年課税の改正については、本ブログ記事「生前贈与加算期間はいつから7年になる?」をご参照ください)。

1.相続時精算課税制度とは?

 相続時精算課税制度とは、原則として60歳以上の父母または祖父母など(贈与者)から18歳以上の子または孫など(受贈者)が受ける贈与について、2,500万円の特別控除を適用して贈与税を計算し、その後の贈与者の相続発生時に贈与税と相続税を精算するしくみです。適用対象となる贈与財産の種類、金額、贈与回数に制限はありません。
 受贈者は、贈与者である父母、祖父母ごとにこの制度を選択することができますが、この制度を選択する場合には、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日の間に一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出する必要があります。
 なお、この制度を選択すると、その選択に係る贈与者から贈与を受ける財産については、その選択をした年分以降すべてこの制度が適用され、暦年課税へ変更することはできません。
 また、この制度の贈与者である父母または祖父母などが亡くなった時の相続税の計算上、この制度を適用した贈与財産の価額(贈与時の時価)を相続財産の価額に加算して相続税額を計算します。
 具体的な贈与税および相続税の計算は、以下のとおりです。

(1) 贈与税の計算
 受贈者は、相続時精算課税制度を選択した年以後の各年において、この制度に係る贈与者ごとに次のように贈与税額を計算します。

(贈与財産の価額-特別控除2,500万円)×20%=贈与税額

 上記算式の特別控除2,500万円は、複数年の累積限度額です。前年以前において既にこの特別控除を適用している場合は、残額が限度額となります。

(2) 相続税の計算
 相続時精算課税に係る贈与者が亡くなった時に、それまでに贈与を受けた相続時精算課税の適用を受ける贈与財産の価額(贈与時の時価)と相続や遺贈により取得した財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納めた相続時精算課税に係る贈与税額を控除して算出します。

相続時精算課税選択後の贈与財産の価額+相続財産の価額=課税価格
課税価格を基に計算した相続税額-既に納めた相続時精算課税に係る贈与税額=納付すべき相続税額

 なお、相続税額から控除しきれない相続時精算課税に係る贈与税額は還付されます。

2.相続時精算課税制度の改正点

 現行の相続時精算課税制度の概要は上記1のとおりですが、2023(令和5)年度税制改正では注目すべき2点の改正が行われました。
 第一に、相続時精算課税にも年110万円の基礎控除が設けられたことです。
 110万円の基礎控除というと、相続時精算課税を選択すると利用できなかった暦年課税の基礎控除110万円が活用できるようになったと勘違いしそうですが、今回の改正で設けられた110万円の基礎控除はあくまでも相続時精算課税制度の中でのことです。相続時精算課税における控除枠が2,500万円と110万円の2つになったのであって、相続時精算課税を選択した後に暦年課税に戻れるということではありません。
 相続時精算課税に110万円の基礎控除が設けられたことにより、2024(令和6)年1月1日以降、相続時精算課税を選択した人への贈与は、年110万円までなら贈与税はかからず、申告も不要です。また、相続財産への加算も不要とされていますので、相続税もかかりません。
 現行の相続時精算課税では、特別控除2,500万円までは贈与税が発生しませんが、この特別控除枠を使い切った後に追加の贈与を受けた場合は、その額が10万円や20万円などの少額であっても申告が必要であり、かつ、相続財産への加算も必要でした。また、2,500万円までの特別控除枠を使い切った翌年に200万円の贈与を受けたとしても、課税対象額は90万円(200万円-110万円)となることから、今回の改正は利用者にとってメリットが大きいといえます。
 なお、改正後の相続時精算課税制度における贈与税の計算は、次のようになります。

{(贈与財産の価額-基礎控除110万円)-特別控除2,500万円}×20%=贈与税額

 注目すべき第二の改正は、相続時精算課税によって受贈した土地や建物が災害により一定以上の被害を受けた場合に、相続発生時にその課税価格を再計算することです。
 現行の相続時精算課税では、生前贈与を受けた財産は、その後に災害等により損失を受けたとしても贈与時点の価額(贈与時の時価)が相続財産に加算されますので、その問題点を改善したものといえます。

出所:財務省ホームページ

生前贈与加算期間はいつから7年になる?

 2023(令和5)年度税制改正で、暦年課税と相続時精算課税の見直しが行われました。今回はそのうちの暦年課税の改正について確認します(暦年課税の詳細については、本ブログ記事「贈与税の課税方法『暦年課税』」をご参照ください)。

1.暦年課税の改正点

 年間110万円以下の贈与であれば贈与税がかからない暦年課税において、贈与を受けた財産を相続の際に相続財産に加算する「持ち戻し」期間が、相続開始前3年から7年に延長されました。
 また、延長された4年の間に受けた贈与のうち総額100万円までは相続財産に加算しないこととされました。
 これらの改正は、2024(令和6)年1月1日以後に受けた贈与について適用されます。

出所:財務省ホームページ

2.令和13年1月1日以後の相続から加算期間が7年になる

 上記改正は2024(令和6)年1月1日以後に受けた贈与から適用されますが、いきなり加算期間が7年になるわけではありません。
 生前贈与の加算の対象となる相続開始前7年以内とは、相続開始日から遡って7年目の応当日から相続開始日までをいいます。
 例えば、X年5月10日に相続があった場合には、(X-7)年5月10日からX年5月10日までをいいます。
 したがって、2024(令和6)年5月10日が相続開始日の場合は、2017(平成29)年5月10日から2024(令和6)年5月10日までが相続開始前7年以内にあたりますが、2017(平成29)年5月10日から2021(令和3)年5月9日までの贈与は改正前の期間ですので、2021(令和3)年5月10日から2024(令和6)年5月10日までの3年間に受けた贈与が加算の対象となります。
 下表において、相続開始日を各年の5月10日とした場合の生前贈与の加算対象期間と加算期間を示します。

相続開始日 加算対象期間 加算期間
2024(令和6)年5月10日 2021(令和3)年5月10日~2024(令和6)年5月10日の贈与 3年間
2025(令和7)年5月10日 2022(令和4)年5月10日~2025(令和7)年5月10日の贈与 3年間
2026(令和8)年5月10日 2023(令和5)年5月10日~2026(令和8)年5月10日の贈与 3年間
2027(令和9)年5月10日 2024(令和6)年1月1日~2027(令和9)年5月10日の贈与 3年5か月10日
2028(令和10)年5月10日 2024(令和6)年1月1日~2028(令和10)年5月10日の贈与 4年5か月10日
2029(令和11)年5月10日 2024(令和6)年1月1日~2029(令和11)年5月10日の贈与 5年5か月10日
2030(令和12)年5月10日 2024(令和6)年1月1日~2030(令和12)年5月10日の贈与 6年5か月10日
2031(令和13)年5月10日 2024(令和6)年5月10日~2031(令和13)年5月10日の贈与 7年間

 年が進むにつれて加算期間が増えていき、2031(令和13)年1月1日以後の相続から加算期間が7年になります。

令和3年度改正後の中小企業経営強化税制

1.令和3年度改正の内容

出所:経済産業省「令和3年度(2021年度)経済産業関係 税制改正について」

 2021(令和3)年度税制改正で、中小企業経営強化税制(中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は特別税額控除制度)の見直しが行われ、従前の対象設備(A類型・B類型・C類型)に「経営資源集約化設備(D類型)」が追加された上で、その適用期限が2年間延長されました。
 中小企業経営強化税制の改正内容は、次のとおりです。

(1) 中小企業者等の範囲

 中小企業者の判定における大規模法人から一定の独立行政法人中小企業基盤整備機構を除外する特例が廃止されました。

(2) 特定経営力向上設備等の範囲

 特定経営力向上設備等の対象に、計画終了年度に修正ROA又は有形固定資産回転率が一定以上上昇する経営力向上計画を実施するために必要不可欠な設備が加えられました。

(3) 適用期間

 2021(令和3)年4月1日から2023(令和5)年3月31日までの間に取得等する特定経営力向上設備等について適用されます。

 これらの改正を踏まえて、改正後の制度の内容を以下にまとめます。

2.改正後の中小企業経営強化税制

 中小企業者等※1で青色申告書を提出するもののうち、中小企業等経営強化法の認定を受けた同法の中小企業者等に該当するもの※2が、2021(令和3)年4月1日から2023(令和5)年3月31日までの間に新品の特定経営力向上設備等※3の取得又は制作をして、その者の営む指定事業※4の用に供した場合には、即時償却又はその取得価額の7%(一定の中小企業者等※5の場合は10%)相当額の税額控除ができます。
 ただし、その事業年度の所得に対する法人税の額(個人事業主の場合は、所得税の額)の20%相当額を限度※6とし、限度を超える部分の金額については1年間の繰越しが認められています。
 なお、中小企業者等のうち特定中小企業者等※4以外の法人については、税額控除はできません。

※1 中小企業者等とは、青色申告書を提出する者のうち、以下のイ~ハに該当するものをいいます。
イ.中小企業者(中小企業者については、本ブログ記事「租税特別措置法上の『中小企業者』の定義とその判定時期」をご参照ください。ただし、本制度においては、中小企業者の判定における大規模法人から一定の独立行政法人中小企業基盤整備機構が除外する特例が廃止されています。)
ロ.常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主
ハ.農業協同組合、農業協同組合連合会、中小企業等協同組合、出資組合である商工組合及び商工組合連合会、商店街振興組合、内航海運組合、内航海運組合連合会、出資組合である生活衛生同業組合、漁業協同組合、漁業協同組合連合会、水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会、森林組合並びに森林組合連合会

※2 本税制の適用対象法人は、租税特別措置法に定める中小企業者、農業協同組合等又は商店街振興組合で、青色申告書を提出するものに該当することに加え、中小企業等経営強化法の中小企業者等にも該当して同法の認定を受けることが必要です。ただ、措置法の中小企業者及び商店街振興組合は基本的に経営強化法の中小企業者等にも該当しますが、措置法の農業協同組合等は経営強化法の中小企業者等に該当するものとしないものがありますので、それぞれの根拠法令の確認が必要です。

租税特別措置法の中小企業者等の範囲(青色申告書を提出するもの) 左のうち、中小企業等経営強化法の中小企業者等にも該当して同法の認定を受けることができる法人
中小企業者
農業協同組合等 △(組合ごとに要確認)
※ 農業協同組合は非該当
商店街振興組合

※3 特定経営力向上設備等とは、中小企業等経営強化法に規定する次の設備をいいます。
イ.生産性向上設備(A類型)
 下表の対象設備のうち、以下の2つの要件を満たすもの
(イ) 一定期間内に販売されたモデル(最新モデルである必要はありません)
(ロ) 経営力の向上に資するものの指標(生産効率、エネルギー効率、精度など)が旧モデルと比較して年平均1%以上向上している設備(ソフトウェアについては、情報収集機能及び分析・指示機能を有するもの)

設備の種類 用途又は細目 最低価額(1台1基又は一の取得価額) 販売開始時期
機械装置 全て 160万円以上 10年以内
工具 測定工具及び検査工具 30万円以上 5年以内
器具備品 全て 30万円以上 6年以内
建物附属設備 全て 60万円以上 14年以内
ソフトウェア 設備の稼働状況等に係る情
報収集機能及び分析・指示
機能を有するもの
70万円以上 5年以内

(注) 以下の㋑~㋥は、B類型、C類型についても同様です。
㋑ 機械装置のうち、発電の用に供する設備にあっては、主として電気の販売を行うために取得又は製作をするもの(経営力向上計画の実施時期のうちで発電した電気の販売を行う期間中の発電量のうち、販売を行うことが見込まれる電気の量が占める割合が2分の1を超える発電設備等。以下同じ)を除きます。
㋺ 器具備品のうち、医療機器にあっては、医療保健業を行う事業者が取得又は製作をするものを除きます。
㋩ 建物附属設備のうち、医療保健業を行う事業者が取得又は建設をするものを除くものとし、発電の用に供する設備にあっては主として電気の販売を行うために取得又は建設をするものを除きます。
㋥ ソフトウェアのうち、複写して販売するための原本、開発研究用のもの、サーバー用OSのうち一定のものなどは除きます(中小企業投資促進税制と同様)。

ロ.収益力強化設備(B類型)
 下表の対象設備のうち、年平均の投資利益率が5%以上となることが見込まれることにつき、経済産業大臣(経済産業局)の確認を受けた投資計画に記載された投資の目的を達成するために必要不可欠な設備

設備の種類 用途又は細目 最低価額(1台1基又は一の取得価額)
機械装置 全て 160万円以上
工具 全て 30万円以上
器具備品 全て 30万円以上
建物附属設備 全て 60万円以上
ソフトウェア 全て 70万円以上

ハ.デジタル化設備(C類型)
 下表の対象設備のうち、事業プロセスの①遠隔操作、②可視化、③自動制御化のいずれかを可能にする設備として、経済産業大臣(経済産業局)の確認を受けた投資計画に記載された投資の目的を達成するために必要不可欠な設備

設備の種類 用途又は細目 最低価額(1台1基又は一の取得価額)
機械装置 全て 160万円以上
工具 全て 30万円以上
器具備品 全て 30万円以上
建物附属設備 全て 60万円以上
ソフトウェア 全て 70万円以上

ニ.経営資源集約化設備(D類型)
 修正ROA又は有形固定資産回転率が一定以上上昇する設備

※4 指定事業とは、製造業、建設業、農業、林業、漁業、水産養殖業、鉱業、採石業、砂利採取業、卸売業、小売業、一般旅客自動車運送業、道路貨物運送業、倉庫業、港湾運送業、ガス業、料理店業その他の飲食店業(一定の類型を除き(注㋥参照)、料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブ、その他これらに類する事業を除きます。)、海洋運輸業及び沿海運輸業、内航船舶貸渡業、旅行業、こん包業、郵便業、損害保険代理
業、情報通信業、駐車場業、学術研究、専門・技術サービス業、不動産業、物品賃貸業、広告業、宿泊業、洗濯・理容・美容・浴場業、その他の生活関連サービス業、医療、福祉業、社会保険・社会福祉・介護事業、教育、学習支援業、映画業、協同組合(他に分類されないもの)、サービス業(他に分類されないもの)をいいます。

(注)㋑ 中小企業投資促進税制の対象事業に該当する全ての事業が、中小企業経営強化税制の指定事業となります。
㋺ 電気業、水道業、鉄道業、航空運輸業、銀行業、娯楽業(映画業を除く)等は対象になりません。
㋩ 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条第5項に規定する性風俗関連特殊営業に該当するものを除きます。
㋥ 風俗営業に該当するものは、①料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブその他これらに類する飲食店業で生活衛生同業組合の組合員が営むもの、②宿泊業のうち旅館業、ホテル業で風俗営業の許可を受けているもの、以外は指定事業から除かれます。

※5 一定の中小企業者等とは、中小企業者等のうち資本金の額若しくは出資金の額が3,000万円以下の法人、農業協同組合等又は商店街振興組合をいいます。

※6 税額控除額は、中小企業経営強化税制、中小企業投資促進税制の控除税額の合計で、その事業年度の法人税額又は所得税額の20%が上限となります。

令和3年度改正後の中小企業投資促進税制

1.商業・サービス業・農林水産業活性化税制の廃止

 2021(令和3)年度税制改正で、「商業・サービス業・農林水産業活性化税制(特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は特別税額控除制度)」が適用期限(2021(令和3)年3月31日)の到来をもって廃止されました。
 この商業・サービス業・農林水産業活性化税制の対象者(商店街振興組合)や対象事業(不動産業等)を「中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は特別税額控除制度)」に盛り込む形で制度が一本化され、中小企業投資促進税制の適用期限が2年間延長されました。
 中小企業投資促進税制の改正内容は、次のとおりです。

(1) 中小企業者等の範囲

 中小企業者等の範囲について、次の見直しが行われました。

① 本制度の対象となる中小企業者等に商店街振興組合が追加されました。
② 中小企業者の判定における大規模法人から一定の独立行政法人中小企業基盤整備機構を除外する特例が廃止されました。

(2) 指定事業の範囲

 対象となる指定事業に、次の事業が追加されました。

① 不動産業
② 物品賃貸業
③ 料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブその他これらに類する事業(生活衛生同業組合の組合員が行うものに限る)

(3) 特定機械装置等の範囲

 本制度の対象となる減価償却資産から、匿名組合契約その他これに類する一定の契約の目的である事業の用に供するものが除外されました。

(4) 適用期間

 2021(令和3)年4月1日から2023(令和5)年3月31日までの間に取得等する特定機械装置等について適用されます。

 これらの改正を踏まえて、改正後の制度の内容を以下にまとめます。

2.改正後の中小企業投資促進税制

出所:中小企業庁広報資料「概要」

 中小企業者等※1で青色申告書を提出するものが、2021(令和3)年4月1日から2023(令和5)年3月31日までの間に新品の特定機械装置等※2の取得又は制作をして、その者の営む指定事業※3の用に供した場合には、基準取得価額(特定機械装置等の取得価額として一定のもの)の30%相当額の特別償却又は7%相当額の税額控除ができます。
 ただし、その事業年度の所得に対する法人税の額(個人事業主の場合は、所得税の額)の20%相当額を限度※4とし、限度を超える部分の金額については1年間の繰越しが認められています。
 なお、中小企業者等のうち特定中小企業者等※5以外の法人については、税額控除はできません。

※1 中小企業者等とは、青色申告書を提出する者のうち、以下のイ~ハに該当するものをいいます。
イ.中小企業者(中小企業者については、本ブログ記事「租税特別措置法上の『中小企業者』の定義とその判定時期」をご参照ください。ただし、本制度においては、中小企業者の判定における大規模法人から一定の独立行政法人中小企業基盤整備機構が除外する特例が廃止されています。)
ロ.常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主
ハ.農業協同組合、農業協同組合連合会、中小企業等協同組合、出資組合である商工組合及び商工組合連合会、商店街振興組合、内航海運組合、内航海運組合連合会、出資組合である生活衛生同業組合、漁業協同組合、漁業協同組合連合会、水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会、森林組合並びに森林組合連合会

※2 特定機械装置等とは、次のイ~ホの減価償却資産をいいます。ただし、匿名組合契約その他これに類する一定の契約の目的である事業の用に供するものは除外されます
イ.機会及び装置で1台又は1基の取得価額が160万円以上のもの
ロ.製品の品質管理の向上等に資する測定工具及び検査工具で1台又は1基の取得価額が120万円以上のもの(その事業年度の取得価額の合計額が120万円以上のもの(1台又は1基の取得価額が30万円未満のものを除く)を含む)
ハ.一定のソフトウェアで一のソフトウェアの取得価額が70万円以上のもの(その事業年度の取得価額の合計額が70万円以上のもの(少額減価償却資産及び一括償却資産の適用を受けたものを除く)を含む)
ニ.車両重量が3.5トン以上の普通自動車で貨物の運送の用に供するもの
ホ.内航海運業の用に供される船舶

※3 指定事業とは、製造業、建設業、農業、林業、漁業、水産養殖業、鉱業、卸売業、道路貨物運送業、倉庫業、港湾運送業、ガス業、小売業、料理店業その他の飲食店業(料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブその他これらに類する事業については生活衛生同業組合の組合員が行うものに限る)、一般旅客自動車運送業、海洋運輸業及び沿海運輸業、内航船舶賃貸業、旅行業、こん包業、郵便業、通信業、損害保険代理業及びサービス業(映画業以外の娯楽業を除く)、不動産業物品賃貸業をいいます。

※4 税額控除額は、中小企業経営強化税制、中小企業投資促進税制の控除税額の合計で、その事業年度の法人税額又は所得税額の20%が上限となります。

※5 特定中小企業者等とは、中小企業者等のうち資本金の額若しくは出資金の額が3,000万円以下の法人又は農業協同組合等をいいます。

中小企業者等の所得拡大促進税制の令和3年度改正《令和3年4月1日以後開始事業年度》

 所得拡大促進税制は、青色申告書を提出している中小企業者等が、一定の要件を満たした上で前年度より給与等の支給額を増加させた場合、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です。
 この所得拡大促進税制について、2021(令和3)年度税制改正において、適用期間の2年間延長と適用要件の見直し(継続雇用要件の撤廃等)が行われました。
 今回は、現行制度の概要と改正内容について確認します。

※ 所得拡大促進税制については、2023(令和5)年3月31日の期限到来前に2022(令和4)年度改正が行われたため、2021(令和3)年4月1日から2022(令和4)年3月31日までの間に開始する事業年度(個人事業主の場合は2022(令和4)年)について適用されることとなりました。

1.現行制度の概要

 中小企業者等※1で青色申告書を提出するものが、2018(平成30)年4月1日から2021(令和3)年3月31日までの間に開始する各事業年度(個人事業主の場合は、2019(令和元)年から2021(令和3)年までの各年)において国内雇用者※2に対して給与等※3を支給する場合において、その事業年度においてその中小企業者等の継続雇用者給与等支給額※4から継続雇用者比較給与等支給額※5を控除した金額のその継続雇用者比較給与等支給額に対する割合が1.5%以上であるとき(その中小企業者等の雇用者給与等支給額※6が比較雇用者給与等支給額※7以下である場合を除く)は、雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額の15%※8(下記(1)(2)の要件を満たす場合は25%)相当額の特別税額控除ができることとされています。
 ただし、その事業年度の所得に対する法人税額(個人事業主の場合は、その年の事業所得の金額に係る所得税額)の20%相当額が限度となります。

(1) 継続雇用者給与等支給額から継続雇用者比較給与等支給額を控除した金額のその継続雇用者比較給与等支給額に対する割合が2.5%以上であること

(2) 次に掲げる要件のいずれかを満たすこと
① その事業年度の損金の額(個人事業主の場合は、その年分の必要経費)に算入される教育訓練費※9の額から中小企業比較教育訓練費※10の額を控除した金額のその中小企業比較教育訓練費に対する割合が10%以上であること
② その中小企業者等が、その事業年度終了の日(個人事業主の場合は、その年の12月31日)までに中小企業等経営強化法に規定する経営力向上計画の認定を受けたものであり、その経営力向上計画に記載された同法に規定する経営力向上が確実に行われたものとして一定の証明がされたこと

※1 中小企業者等とは、青色申告書を提出する者のうち、以下に該当するものをいいます。
イ.中小企業者(中小企業者については、本ブログ記事「租税特別措置法上の『中小企業者』の定義とその判定時期」をご参照ください)
ロ.常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主
ハ.農業協同組合、農業協同組合連合会、中小企業等協同組合、出資組合である商工組合及び商工組合連合会、内航海運組合、内航海運組合連合会、出資組合である生活衛生同業組合、漁業協同組合、漁業協同組合連合会、水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会、森林組合並びに森林組合連合会

※2 国内雇用者とは、法人又は個人事業主の使用人のうちその法人又は個人事業主の国内に所在する事業所につき作成された賃金台帳に記載された者を指します。パート、アルバイト、日雇い労働者も含みますが、使用人兼務役員を含む役員及び役員の特殊関係者、個人事業主と特殊の関係のある者は含まれません。
 なお、特殊関係者(特殊の関係のある者)とは、法人の役員又は個人事業主の親族を指します。親族の範囲は6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族までが該当します。また、当該役員又は個人事業主と婚姻関係と同様の事情にある者、当該役員又は個人事業主から生計の支援を受けている者等も特殊関係者に含まれます。

※3 給与等とは、俸給・給料・賃金・歳費及び賞与並びに、これらの性質を有する給与(所得税法第28条第1項に規定する給与所得)をいいます。退職金など、給与所得とならないものについては、原則として給与等に該当しません。
 なお、所得税法上課税されない通勤手当等の額については、給与所得となるので、給与等に含まれます。ただし、賃金台帳に記載された支給額のみを対象に、所得税法上課税されない通勤手当等の額を含めずに計算する等、合理的な方法により継続して国内雇用者に対する給与等の支給額の計算をすることも認められます。

※4 継続雇用者給与等支給額とは、継続雇用者(前年度の期首から適用年度の期末までの全ての月分の給与等の支給を受けた従業員のうち、一定の者)に支払った給与等の総額をいいます。

出所:経済産業省「中小企業向け所得拡大促進税制ご利用ガイドブック-平成30年4月1日以降開始の事業年度用-(個人事業主は令和元年分以降用)」

※5 継続雇用者比較給与等支給額とは、継続雇用者に対する前事業年度の給与等の金額として一定の金額をいいます。

※6 雇用者給与等支給額とは、適用年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額(その給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額がある場合には、その金額を控除した金額)をいいます。

※7 比較雇用者給与等支給額とは、前事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額をいいます。

※8 その事業年度において「地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の特別税額控除制度(雇用促進税制)」の適用を受ける場合には、その規定による控除を受ける金額の計算の基礎となった者に対する給与等の支給額として一定の方法により計算した金額を控除した残額となります。

※9 教育訓練費とは、所得の金額の計算上損金の額に算入される、国内雇用者の職務に必要な技術又は知識を習得させ、又は向上させるために支出する費用で一定のものをいいます。

※10 中小企業比較教育訓練費とは、中小企業者等の適用年度開始の日前1年以内に開始した各事業年度の損金の額に算入される教育訓練費の額(その各事業年度の月数とと適用年度の月数が異なる場合には、教育訓練費の額に適用年度の月数を乗じてこれを各事業年度の月数で除して計算した金額)の合計額をその1年以内に開始した各事業年度の数で除して計算した金額をいいます。

2.令和3年度改正の内容

 所得拡大促進税制について次の見直しが行われた上、その適用期限が2年延長され、2021(令和3)年4月1日から2023(令和5)年3月31日までの間に開始する各事業年度(個人事業主の場合は、2022(令和4)年から2023(令和5)年までの各年)について適用されます。

※ 所得拡大促進税制については、2023(令和5)年3月31日の期限到来前に2022(令和4)年度改正が行われたため、2021(令和3)年4月1日から2022(令和4)年3月31日までの間に開始する事業年度(個人事業主の場合は2022(令和4)年)について適用されることとなりました。

(1) 適用要件のうち、継続雇用者給与等支給額から継続雇用者比較給与等支給額を控除した金額の継続雇用者比較給与等支給額に対する割合が1.5%以上であることの要件が、雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額の比較雇用者給与等支給額に対する割合が1.5%以上であることの要件に見直されました。

(2) 特別税額控除率(原則:15%)が25%となる要件(上記1.(1)及び(2)の要件)のうち、継続雇用者給与等支給額から継続雇用者比較給与等支給額を控除した金額の継続雇用者比較給与等支給額に対する割合が2.5%以上であることの要件が、雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額の比較雇用者給与等支給額に対する割合が2.5%以上であることの要件に見直されました。

(3) 給与等の支給額から控除される給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額(上記1.※6参照)について、その範囲が明確化されるとともに、次の見直しが行われました。
① 上記(1)及び(2)の要件を判定する場合には、雇用安定助成金額を控除しないこととする
② 特別税額控除率(15%又は25%)を乗ずる基礎となる雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額は、雇用安定助成金額を控除して計算した金額を上限とする

※ 給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額には、以下のものが該当します。
イ.その補助金、助成金、給付金又は負担金その他これらに準ずるもの(以下「補助金等」といいます)の要綱、要領又は契約において、その補助金等の交付の趣旨又は目的がその交付を受ける法人の給与等の支給額に係る負担を軽減させることが明らかにされている場合のその補助金等の交付額

該当する補助金等の例
業務改善助成金

ロ.イ以外の補助金等の交付額で、資産の譲渡、資産の貸付け及び役務の提供に係る反対給付としての交付額に該当しないもののうち、その算定方法が給与等の支給実績又は支給単価(雇用契約において時間、日、月、年ごとにあらかじめ定められている給与等の支給額をいいます)を基礎として定められているもの

該当する補助金等の例

雇用調整助成金、緊急雇用安定助成金、産業雇用安定助成金、労働移動支援助成金(早期雇い入れコース)、キャリアアップ助成金(正社員化コース)、特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース)、特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)

ハ.イ及びロ以外の補助金等の交付額で、法人の使用人が他の法人に出向した場合において、その出向した使用人(以下「出向者」といいます)に対する給与を出向元法人(出向者を出向させている法人をいいます)が支給することとしているときに、出向元法人が出向先法人(出向元法人から出向者の出向を受けている法人をいいます)から支払を受けた出向先法人の負担すべき給与に相当する金額

 なお、出向先法人は、賃金台帳に出向者と給与負担金を記載することで、集計対象となる給与総額に含めることが可能となります。
(出向先法人の負担すべき給与に相当する金額については、本ブログ記事「出向先法人が支出する給与負担金の取扱い」をご参照ください)

住宅借入金等特別控除の適用要件等の見直し

 2021(令和3)年度税制改正で、住宅借入金等特別控除制度(いわゆる住宅ローン控除)の見直しが行われました。
 改正内容は、次のとおりです。

1.控除期間13年間の特例の延長

 住宅の取得等(新築、建売・中古取得又は増改築等)で特別特例取得に該当するものをした個人が、その特別特例取得をした家屋を2021(令和3)年1月1日から2022(令和4)年12月31日までの間にその者の居住の用に供した場合には、住宅借入金等を有する場合の所得税額の控除及び当該控除の控除期間の3年間延長(控除期間13年間)の特例を適用できることとされました。
 特別特例取得とは、その対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が10%である場合の住宅の取得等で、次に掲げる区分に応じてそれぞれ次に定める期間内にその契約が締結されているものをいいます。

(1) 居住用家屋の新築・・・2020(令和2)年10月1日から2021(令和3)年9月30日までの期間
(2) 居住用家屋で建築後使用されたことのないもの若しくは中古住宅の取得又はその者の居住の用に供する家屋の増改築等・・・2020(令和2)年12月1日から2021(令和3)年11月30日までの期間

新築 令和2年10月1日~令和3年9月30日の契約
建売、中古、増改築等 令和2年12月1日~令和3年11月30日の契約

2.床面積要件の下限の引き下げ(40㎡以上)

 上記1の住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の特例は、個人が取得等をした床面積が40㎡以上50㎡未満である住宅の用に供する家屋についても適用できることとされました。
 ただし、床面積が40㎡以上50㎡未満である住宅の用に供する家屋に係る上記1の住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の特例は、その者の13年間の控除期間のうち、その年分の所得税に係る合計所得金額が1,000万円以下である場合に限り適用されます。

 上記1及び2について、その他の要件等は、現行の住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除と同様です(参考:本ブログ記事「中古住宅を取得した場合の住宅借入金等特別控除の適用要件」)。

3.適用時期

 上記の改正は、住宅の取得等で特別特例取得に該当するものをした個人が、その特別特例取得をした家屋を2021(令和3)年1月1日から2022(令和4)年12月31日までの間にその者の居住の用に供した場合に適用されます。