不動産外交員の歩合給と「給与課税されない固定給」とは?

1.歩合給と固定給の税法上の取扱い

 不動産外交員の報酬は、販売実績に基づく歩合給(変動給)であることが一般的です。そのため、販売実績がよかった月は多額の報酬を得ることが可能ですが、仮に販売実績がなかった月は報酬も0になります。
 そこで、不動産外交員の生活保障のために、歩合給とは別に固定給を支給する場合があります。固定給は販売実績とはかかわりなく支給され、例えば販売実績がなくても支給されます。
 歩合給と固定給では税法上の取扱いが異なり、歩合給を支給した場合は消費税法上の課税取引となるので仕入税額控除ができますが、固定給を支給した場合は給与課税され仕入税額控除はできません。
 また、歩合給と固定給では、所得税の源泉徴収税額の計算方法も異なります。歩合給の場合は、外交員に支払う報酬の金額から12万円を控除した残額に10.21%(復興税を含む)を乗じて計算します(具体的な計算方法の詳細については、本ブログ記事「外交員報酬に係る源泉徴収税額の計算方法」をご参照ください)。
 一方、固定給の場合は、「給与所得の源泉徴収税額表」を使用して、給与に対する源泉徴収税額を求めます。
 このように、不動産外交員に支払う固定給は基本的には給与として課税されますが、所得税基本通達204-22には「給与課税されない固定給」が記載されています。

2.所得税基本通達204-22

 所得税基本通達204-22には、外交員又は集金人の業務に関する報酬又は料金について、次のように規定されています(下線は筆者による)。

 外交員又は集金人がその地位に基づいて保険会社等から支払を受ける報酬又は料金については、次に掲げる場合に応じ、それぞれ次による。

(1) その報酬又は料金がその職務を遂行するために必要な旅費とそれ以外の部分とに明らかに区分されている場合  法第9条第1項第4号《非課税所得》に掲げる金品に該当する部分は非課税とし、それ以外の部分は給与等とする。

(2) (1)以外の場合で、その報酬又は料金が、固定給(一定期間の募集成績等によって自動的にその額が定まるもの及び一定期間の募集成績等によって自動的に格付される資格に応じてその額が定めるものを除く。以下この項において同じ。)とそれ以外の部分とに明らかに区分されているとき  固定給(固定給を基準として支給される臨時の給与を含む。)は給与等とし、それ以外の部分は法第204条第1項第4号に掲げる報酬又は料金とする。

(3) (1)及び(2)以外の場合  その報酬又は料金の支払の基因となる役務を提供するために要する旅費等の費用の額の多寡その他の事情を総合勘案し、給与等と認められるものについてはその総額を給与等とし、その他のものについてはその総額を法第204条第1項第4号に掲げる報酬又は料金とする。

 上記通達のとおり、固定給は給与として取り扱われますが、(2)の下線部のものは給与課税される固定給から除くとされています(つまり、「給与課税されない固定給」です)。
 下線部の「一定期間の募集成績等によって自動的にその額が定まるもの及び一定期間の募集成績等によって自動的に格付される資格に応じてその額が定めるもの」とは、具体的には「前月の販売実績により、その一定割合の固定給(上限額あり)を当月に支払う場合」などが該当します。
 例えば、前月の販売実績が100万円の場合は、その一定割合(5%)の固定給5万円を当月に支給し、前月の販売実績が1,000万円の場合は、その一定割合(5%)の固定給20万円(上限額20万円)を当月に支給します。
 この支給方法によると、仮に当月の販売実績が0でも、前月の販売実績によっては当月に報酬が支給されます。当月の販売実績に基づいた報酬ではないため「固定給」という名称を用いていますが、当然その支給額は月によって増減しますので実質的には歩合給(変動給)であり、給与ではなく外交員報酬といえます。
 したがって、実質的には歩合給であることから、上記通達の(2)では、給与として取り扱われる固定給から除くものとされています。

3.給与課税されない固定給の源泉徴収税額の計算方法

 給与課税される固定給であれば、先に述べたように「給与所得の源泉徴収税額表」を使用して、給与に対する源泉徴収税額を求めます。
 所得税基本通達204-22における「給与課税されない固定給」は、実質的には歩合給(変動給)である外交員報酬ですので、その源泉徴収税額は、外交員報酬に係る源泉徴収税額の計算方法によって算出します。
 例えば、当月の販売実績に基づく歩合給が30万円、前月の販売実績に基づく固定給(給与課税されない固定給)が5万円だとしたら、当月の源泉徴収税額は次のようになります。

 源泉徴収税額={(30万円+5万円)-12万円}×10.21%=23,483円

事業復活支援金の申請期限・事前確認期限の延長と差額給付

1.申請ID発行期限・事前確認期限・申請期限

 中小企業庁は、2022(令和4)年5月31日(火)までにアカウント(申請ID)を発行した申請希望者に限り、事業復活支援金の申請期限を2022(令和4)年6月17日(金)まで延長することを発表しました(従来の申請期限は2022(令和4)年5月31日(火))。
 申請期限延長に伴って、登録確認機関による事前確認の実施期限も2022(令和4)年6月14日(火)まで延長されます(従来の実施期限は2022(令和4)年5月26日(木))。
 申請希望者は早めに申請IDを発行し、必要書類を準備して登録確認機関の事前確認を受けた上で、申請をしてください。

アカウント発行期限
2022(令和4)年5月31日(火)24:00
延長後の事前確認の実施期限
2022(令和4)年6月14日(火)24:00
延長後の申請期限
2022(令和4)年6月17日(金)24:00 

2.事業復活支援金の差額給付の申請

 2022(令和4)年6月1日(水)から事業復活支援金の差額給付※1の申請が開始されます。
 差額給付は、事業復活支援金を受給した方のうち特定の要件※2を満たす一部の方が申請可能です。対象となる可能性のある方は、マイページ上に差額給付の申請ボタンが表示されます。
 申請期間は、2022(令和4)年6月1日(水)~2022(令和4)年6月30日(木)です。ただし、6月1日以降に初回給付分を受給された方は、受給した日※3の翌日から30日間になります。
 なお、差額給付の申請でも、原則として事業復活支援金の申請IDをそのまま活用することができますので、改めての事前確認は不要です。
 事業形態・事業主体に変更があった場合は、改めてアカウントを発行する必要がありますが、その場合は事務局の設置する登録確認機関での事前確認が必要となりますのでご注意ください。

※1 差額給付とは、基準月の月間事業収入と比較して、対象月の月間事業収入の減少が30%以上50%未満の区分で事業復活支援金の給付(初回給付)を受けた申請者に対して、対象期間(2021年11月から2022年3月まで)のうち、「初回給付の対象月の翌月以降」かつ「初回給付の申請を行った日を含む月以降」のいずれかの月であって、初回給付の申請を行った時点で予見されていなかった新型コロナウイルス感染症影響を受けたことにより、自らの事業判断によらず、基準期間の同じ月と比較して、月間の事業収入等が50%以上減少した月が存在する場合に限り、その月を対象月とした支援金を給付するものです。
 事業復活支援金の差額給付の受給は、同一の申請者(同一の申請者が異なる屋号・雅号を用いて複数の事業を行っている場合を含む)につき、それぞれ一回限り申請することができます。

※2 以下の全ての要件を満たす場合、差額給付を申請することができます。
(1) 事業復活支援金の初回給付を受けたこと(ただし、初回給付に係る支援金を全額返還した者を除く)
(2) 初回給付において、対象月の月間事業収入が、基準月の月間事業収入と比較して30%以上50%未満の減少であったこと
(3) 差額給付において、対象月の月間事業収入が、基準月の月間事業収入と比較して50%以上減少していること
(4) 差額給付において、月間事業収入の減少が、初回給付の申請を行った時点で予見されなかった新型コロナウイルス感染症影響を受けたことにより、自らの事業判断によらないで生じたものであること
(5) 差額給付において、対象期間のうち、初回給付の対象月の翌月以降かつ初回給付の「申請日」を含む月以降のいずれかの月を対象月とすること

※3 マイページ上のステータスが振込完了となった日を指します。実際に口座に着金があってから振込完了のステータスになるまでに2日ほどかかる場合があります。また、申請期限はマイページ上に表示されます。

事前確定届出給与を支給しなかった場合のリスクを回避するための手続き

 従来は臨時的な役員賞与は損金算入が認められていませんでしたが、事前確定届出給与の制度を利用すれば、役員賞与であっても届出通りの支給をした場合は損金算入が可能です。
 届出通りの支給をしなかった場合、例えば届出書に記載した支給時期や支給額と異なる時期や金額の支給をした場合は、その役員賞与は損金不算入となります
 事前確定届出給与の届出はしたけれども実際には全く支給しなかった場合は、そもそも支給額が0円なので損金不算入額も0円となり、特段のリスクはないように見えます。
 しかし、事前確定届出給与の支給をしなかった場合のリスクはあります。
 今回は、事前確定届出給与の支給をしなかった場合のリスクと、そのリスクを回避するための手続きについて確認します。

※ 事前確定届出給与を届出通りに支給しなかった場合でも、損金算入できることがあります。詳細については、本ブログ記事「事前確定届出給与(複数回支給)を届出通りに支給しなかった場合」及び「事前確定届出給与(複数人支給)を特定の役員だけ届出通りに支給しなかった場合」をご参照ください。

1.事前確定届出給与の支給をしなかった場合のリスク

 事前確定届給与は法人の節税対策として用いられる側面がありますが、実際の利益が当初見込んでいた利益よりも少なくなる場合は、事前確定届出給与の支給をやめることがあります。
 例えば、事前確定届出給与100万円の支給時期が到来したけれどもその支給をしなかった場合は、そもそも支給額が0円なので損金不算入額も0円です。
 しかし、この場合は次のようなリスクがあることに留意しなければなりません。

借方 金額 貸方 金額
役員賞与 100万円 未払金 100万円
未払金 100万円 債務免除益 100万円

 届出額100万円と異なる金額を支給した場合は、その全額が損金不算入となりますが、支給額が0円なのでそもそも損金算入する金額がなく、損金不算入額も0円です。
 会社としては株主総会等で役員賞与を支給しないという意思決定をしたため、会計上は役員賞与や未払金を認識(上記1行目の仕訳)することはありません(上記1行目の仕訳をするのは、会社に役員賞与を支払う意思がある場合です)。
 しかし、支給日が到来した段階で役員に報酬請求権が発生するため、会社側には報酬を支給する債務(未払金)が発生します。つまり、税務上は上記1行目の仕訳のように考えます。
 そうすると、税務上は役員賞与100万円を認識することになるので、これに対する所得税の源泉徴収が必要になります
 また、株主総会等の決議の際に役員は辞退届を提出して報酬請求権を放棄したと考えられるため、会社側に生じた報酬を支給する債務(未払金)は消滅しますが、役員賞与の支給義務が免除されたことに対する収益(債務免除益)を会社側では認識することになります(上記2行目の仕訳)。

※ 根拠条文は、次の所得税法第183条第2項(源泉徴収義務)です。
2 法人の法人税法第二条第十五号(定義)に規定する役員に対する賞与については、支払の確定した日から一年を経過した日までにその支払がされない場合には、その一年を経過した日においてその支払があつたものとみなして、前項の規定を適用する。

2.リスクを回避するための手続き

 事前確定届出給与を支給しなかった場合のリスクは、会社側では役員賞与を支払っていないにもかかわらず、①役員賞与に対する所得税の源泉徴収義務が生じる、②債務免除益に対して課税される、役員側では役員賞与をもらっていないにもかかわらず、所得税が課税されることです。
 これらのリスクは、事前確定届出給与の支給日に役員の報酬請求権が発生することに端を発しています。
 つまり、これらのリスクがあるのは、事前確定届出給与の支給日が到来した後(すでに役員の報酬請求権が発生した後)に、役員からの辞退届を受領したり株主総会等で不支給の決議をした場合です。
 したがって、これらのリスクを回避するためには、事前確定届出給与の支給日が到来する前に、役員からの辞退届を受領して株主総会等で不支給の決議をすることが必要です。
 所得税基本通達28-10(給与等の受領を辞退した場合)には、次のように規定されています。

28-10 給与等の支払を受けるべき者がその給与等の全部又は一部の受領を辞退した場合には、その支給期の到来前に辞退の意思を明示して辞退したものに限り、課税しないものとする。

 なお、事前確定届出給与を支給しなかった場合に、支給しなかったことについて税務署へ届出(報告)する必要はありません。

個人事業主が所得税・社会保険の扶養に入るための判定基準は収入か所得か?

1.「103万円の壁」と「130万円の壁」

 扶養の範囲内で働きたいパートの方は、収入が一定額を超えないように労働調整をする場合があります。
 例えば、夫が配偶者控除38万円の適用を受けられるように、妻はパート先での収入を103万円以下に抑えようとします(いわゆる「103万円の壁」です)。
 また、夫の社会保険の扶養の範囲内で働きたい場合は、妻はパート先での収入を130万円未満に抑えようとします(いわゆる「130万円の壁」です)。
 この所得税における103万円の壁と社会保険(健康保険・厚生年金)における130万円の壁は、いずれも収入額が基準となっていますので、パートで働く給与所得者の場合はわかりやすいと言えます。
 一方、個人事業主として開業しても、事業が軌道に乗るまでは親や配偶者の扶養の範囲内で仕事をしたいという場合があります。
 ここで、個人事業主が扶養に入るための判定基準はどのように考えたらいいのか、という疑問が生じます。
 103万円の壁と130万円の壁について、個人事業主も給与所得者と同じように収入(年商)で判定するのでしょうか、それとも収入から経費を差し引いた所得で判定するのでしょうか?
 結論を先に述べると、個人事業主の103万円の壁と130万円の壁は、どちらも収入から経費を差し引いた「所得」で判定します。
 以下において、若干の注意点を踏まえながら確認します。

2.所得税の扶養の判定は確定申告書の合計所得金額を見る

 所得税における扶養の範囲(扶養親族)は、所得者と生計を一にする親族(配偶者、青色事業専従者として給与の支払を受ける人及び白色事業専従者を除きます)で合計所得金額が48万円以下の人をいいます。
 給与所得だけの場合は、給与の年間収入が103万円以下であれば、合計所得金額が48万円以下になります(給与収入103万円-給与所得控除額55万円=給与所得48万円)。
 個人事業主の場合は、先に述べたとおり収入から経費を差し引いた所得が48万円以下であれば、扶養に入ることができます。
 48万円以下であるかどうかを判定するにあたっては、次の点に注意が必要です。

(1) 事業所得の他に所得がある場合は、それらの合計額で48万円以下であるかどうかを判定します。
(2) 青色申告者の場合は、青色申告特別控除額を差し引いた後の所得で判定します。
(3) 社会保険料控除や基礎控除などの所得控除を差し引く前の金額で判定します。

 つまり、確定申告書第1表の合計所得金額(下図の黄色マーカーを付した⑫欄の数字)が48万円以下であるかどうかを判定します。

3.社会保険の扶養の判定(協会けんぽの場合)

 社会保険(健康保険・厚生年金)の被扶養者に該当する条件は、日本国内に住所(住民票)を有しており、被保険者(扶養する人)により主として生計を維持されていること、および「収入要件」と「同一世帯の条件」のいずれにも該当した場合です(同一世帯の条件の説明は省略します)。

【収入要件】
 年間収入130万円未満(60歳以上または障害者の場合は、年間収入180万円未満)かつ
 ・同居の場合は収入が被保険者(扶養する人)の収入の半分未満
 ・別居の場合は収入が被保険者(扶養する人)からの仕送り額未満

 上記の収入要件に関する注意点は、次のとおりです。

(1) 年間収入とは、過去の収入のことではなく、被扶養者に該当する時点および認定された日以降の年間の見込み収入額のことをいいます(給与所得等の収入がある場合は月額108,333円以下、雇用保険等の受給者の場合は日額3,611円以下であれば要件を満たします)。
 また、被扶養者の収入には、雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金も含まれます。

(2) 収入が被保険者(扶養する人)の収入の半分以上の場合であっても、被保険者(扶養する人)の年間収入を上回らないときで、日本年金機構がその世帯の生計の状況を総合的に勘案して、被保険者(扶養する人)がその世帯の生計維持の中心的役割を果たしていると認めるときは被扶養者となることがあります。

 このような収入要件がありますが、先に述べたように個人事業主の場合は、収入から経費を差し引いた所得が130万円未満(又は180万円未満)であれば、扶養に入ることができます。
 130万円未満であるかどうかを判定するにあたっては、次の点に注意が必要です。

(1) 事業所得の他に所得がある場合は、それらの合計額で130万円未満であるかどうかを判定します。
(2) 青色申告者の場合は、青色申告特別控除額を差し引く前の所得で判定します。
(3) 社会保険料控除や基礎控除などの所得控除を差し引く前の金額で判定します。

 (2)の青色申告特別控除額は、あくまでも税制上の特典ですので、社会保険の扶養を判定する際の所得の算定上は控除できません。それ以外の青色申告決算書に記載した経費は差し引くことができます。

4.社会保険の扶養の判定(健康保険組合の場合)

 上記3で確認した内容は、政府が管掌する全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合です。
 被保険者(扶養する人)の勤め先が、大手企業やグループ企業で構成される健康保険組合に加入している場合は、健康保険組合ごとに収入要件の取扱いが異なります。
 例えば、A健康保険組合の場合は、収入(売上)から差し引ける経費は売上原価のみであるのに対し、B健康保険組合の場合は、売上原価と人件費が差し引ける、などです。
 被保険者(扶養する人)の勤め先が加入しているのは協会けんぽなのか健康保険組合なのか、健康保険組合に加入している場合はどのような扶養条件があるのか、事前に確認しておくことが大事です。

簡易課税制度の届出等に関する災害特例

 災害の被災者には、消費税の届出等に関して、①やむを得ない事情がある場合の届出特例(宥恕規定)、②特定非常災害の特例、③簡易課税制度に係る災害特例、が措置されています。
 これらのうち、①と②は、課税事業者選択(又は選択不適用)と簡易課税制度選択(又は選択不適用)の両方について適用がありますが、③は簡易課税制度だけに適用されます。
 今回は、簡易課税制度だけに認められる③の「簡易課税制度に係る災害特例」について確認し、①の「やむを得ない事情がある場合の届出特例(宥恕規定)」にも言及します。。

※ 特定非常災害の特例については、本ブログ記事「特定非常災害に係る消費税の届出等に関する特例」をご参照ください。

1.簡易課税制度に係る災害特例

(1) 制度趣旨

 簡易課税制度については、災害その他のやむを得ない理由があるときは、特定非常災害の指定を受けない場合であっても、所轄税務署長の承認により、その選択を変更することができる特例が設けられています。
 例えば、災害その他やむを得ない理由により、著しく事務処理能力が低下したために原則課税から簡易課税に変更したり、臨時多額の設備投資が必要になったために簡易課税から原則課税に変更するなど、その課税期間開始前に想定されていなかった事実が生じた場合に、その必要に応じて簡易課税制度の適用の変更を認めようとするものです。

(2) やむを得ない理由とは?

 やむを得ない理由とは、おおむね以下ののような災害の発生等をいいます(消基通13-1-7)。
 これは、災害等があった場合に申告、納付、届出等の期限の延長を認める国税通則法11条に規定する災害その他の事実と同様です。

① 地震、暴風、豪雨、豪雪、津波、落雷、地すべりその他の自然現象の異変による災害
② 火災、火薬類の爆発、ガス爆発、その他の人為による異常な災害
③ ①又は②に掲げる災害に準ずる自己の責めに帰さないやむを得ない事実

(3) 承認申請の期限

 この特例は、被災した事業者が所轄税務署長に対してこの特例の承認を受ける旨の申請書を提出し、その承認を受けた場合に適用があります。
 申請書の提出期限は、原則として災害等のやんだ日から2月以内です。ただし、災害等のやんだ日が、災害等の生じた課税期間の末日の翌日以後に到来する場合は、災害等の生じた課税期間に係る申告書の提出期限(国税通則法11条の規定により申告書の提出期限が延長された場合はその延長された申告書の提出期限)となります。

(4) 承認又は却下の処分とみなし承認

 申請の承認又は却下の処分は書面により通知するものとされていますが、災害等の生じた課税期間の確定申告期限までに承認又は却下の処分がなかったときは、その日においてその承認があったものとみなされます。
 ただし、災害その他やむを得ない理由のやんだ日がその課税期間の末日の翌日以後に到来する場合は、この限りではありません。

(5) 継続適用の解除

 この特例により簡易課税制度選択届出書を提出する場合は、次の取扱いは適用されません。

① 課税事業者を選択した事業者が、調整対象固定資産の仕入れ等をして一般課税により申告した場合に、3年間継続して課税事業者となり一般課税による申告が義務付けられる取扱い
② 新設法人又は特定新規設立法人が、調整対象固定資産の仕入れ等をして一般課税により申告した場合に、3年間継続して課税事業者となり一般課税による申告が義務付けられる取扱い
③ 高額特定資産の仕入れ等をして一般課税により申告した事業者が、3年間継続して課税事業者となり一般課税による申告が義務付けられる取扱い

 また、この特例により簡易課税制度選択不適用届出書を提出する場合は、簡易課税制度の2年間の継続適用の取扱いは適用されません。

(6) 不適用の特例申請ができる場合

 この特例は、一つの災害等につき一度だけ適用することとされています。
 また、災害等があった課税期間の翌課税期間以後に災害等がやんだ場合は、2年間の継続適用の規定により簡易課税制度選択不適用届出書を提出することができない課税期間においてはこの特例を適用し、その後の課税期間においては次の「やむを得ない事情がある場合の届出特例(宥恕規定)」によるものとされています。
 したがって、災害その他やむを得ない理由が生じた日の属する課税期間の翌課税期間以後の課税期間のうち、この特例により不適用の特例申請ができる課税期間は次の課税期間です。

 次に掲げる要件のすべてに該当する課税期間のうちいずれか一の課税期間
① 災害等の生じた日から災害等のやんだ日までの間に開始した課税期間であること
② 不適用の承認を受けた災害等の生じた日の属する課税期間の翌課税期間以後の課税期間でないこと
③ 簡易課税制度の適用を開始した課税期間の初日から2年を経過する日までの間に開始した課税期間であること

2.やむを得ない事情がある場合の届出特例(宥恕規定)

 簡易課税制度を選択しよう(又はやめよう)とする事業者が、やむを得ない事情により、簡易課税制度選択届出書(又は簡易課税制度選択不適用届出書)を期限までに提出できなかった場合には、そのやむを得ない事情がやんだ日から2か月以内に、簡易課税制度選択届出書(又は簡易課税制度選択不適用届出書)と特例承認申請書を所轄税務署長に提出し、その承認を受けたとき(みなし承認はありません)は、承認を受けた課税期間から簡易課税制度を適用する(又はやめる)ことができます。
 やむを得ない事情とは、以下に掲げるように災害の発生等をいい、制度の不知や提出失念等は「やむを得ない事情」に該当しません。

(1) 震災、風水害、雪害、凍害、落雷、雪崩、がけ崩れ、地滑り、火山の噴火等の天災または火災その他人的災害で自己の責任によらないものに基因する災害が発生したことにより、届出書の提出ができない状態になったと認められる場合

(2) (1)の災害に準ずるような状況または、その事業者の責めに帰することができない状態にあることにより、届出書の提出ができない状態になったと認められる場合

(3) その課税期間の末日前おおむね1か月以内に相続があったことにより、その相続に係る相続人が新たに課税事業者選択届出書などを提出できる個人事業者となった場合

(4) (1)から(3)までに準ずる事情がある場合で、税務署長がやむを得ないと認めた場合

特定非常災害に係る消費税の届出等に関する特例

 災害の被災者には、災害減免法、国税通則法において、税の軽減免除や申告期限の延長が措置されています。
 消費税ではこれらに加えて、①やむを得ない事情がある場合の届出特例(宥恕規定)、②特定非常災害の届出特例、③簡易課税制度に係る災害特例が設けられています。
 今回は、このうちの②特定非常災害の届出特例について確認します。

※ ①やむを得ない事情がある場合の届出特例(宥恕規定)については、本ブログ記事「消費税課税事業者選択届出書の提出を失念した場合の対応方法」をご参照ください。

1.特定非常災害の指定を受けた場合の特例

 特定非常災害※1の被災事業者※2が、その被害を受けたことによって、被災日※3を含む課税期間以後の課税期間について、指定日※4までに所轄税務署長に「消費税課税事業者選択届出書(又は選択不適用届出書)」「消費税簡易課税制度選択届出書(又は選択不適用届出書)」を提出すれば、その適用を受けよう(又はやめよう)とする課税期間の初日の前日に提出があったものとみなし、適用を受ける(又はやめる)ことができます。

※1 「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律」2条1項の規定により、特定非常災害として指定された非常災害。
※2 特定非常災害により申告期限等が延長される(国税通則法11条)こととなる地域に納税地を有する事業者、又はその他の地域に納税地を有する事業者のうち特定非常災害により被災した事業者。
※3 事業者が特定非常災害により被災事業者となった日。
※4 特定非常災害の状況及び特定非常災害により申告に関する期限の延長の状況を勘案して国税庁長官が定める日。

 この特例により、例えば、次のようなことが可能になります。

(1) 免税事業者が、被害を受けた設備を買い換えるため、課税事業者を選択して原則課税により申告を行い還付を受けた後、課税事業者の選択をやめて免税事業者になることができます。

(2) 簡易課税を選択している事業者が、特定非常災害により相当な損失を受け、緊急な設備投資等を行う場合には、簡易課税制度の適用をやめて原則課税により申告を行うことができます。

 なお、この特例措置の規定に基づく届出書には、その特例の適用を受け、又はやめようとする開始課税期間を明記するとともに、この特例による届出であることを明らかにするため、届出書の参考事項欄等に特定非常災害の被災事業者である旨を記載します(消基通19-1-5)。
 また、被災事業者となった新設法人又は特定新規設立法人が国税通則法11条の規定の適用を受けたものでない場合には、この特例の適用を受けようとする旨等を記載した届出書を、設立当初の基準期間がない事業年度のうち最後の事業年度終了の日と指定日とのいずれか遅い日までに所轄税務署長に提出する必要があります(措法86の5④、措規37の3の2①)。

2.継続適用等の解除

(1) 課税事業者選択、簡易課税制度選択

 被災事業者が指定日までに提出する課税事業者選択届出書、課税事業者選択不適用届出書、簡易課税制度選択届出書又は簡易課税制度選択不適用届出書については、次の取扱いは適用されません。

① 課税事業者を選択した場合の2年間の継続適用の取扱い
② 簡易課税制度を選択した場合の2年間の継続適用の取扱い
③ 課税事業者を選択した事業者が、調整対象固定資産の仕入れ等をして一般課税により申告した場合に、3年間継続して課税事業者となり一般課税による申告が義務付けられる取扱い

 したがって、被災事業者は、2年間継続適用の要件及び3年間継続適用の要件という制限に関係なく、課税事業者選択不適用届出書を提出することができます。
 また、簡易課税制度選択届出書及び簡易課税制度選択不適用届出書の提出についても、提出の制限はありません。

(2) 新設法人、特定新規設立法人

 新設法人又は特定新規設立法人(いずれも基準期間のない法人)が被災事業者となった場合には、次の取扱いは適用されません。

① 新設法人が調整対象固定資産の仕入れ等をして一般課税により申告した場合に、3年間継続して課税事業者となり一般課税による申告が義務付けられる取扱い
② 特定新規設立法人が調整対象固定資産の仕入れ等をして一般課税により申告した場合に、3年間継続して課税事業者となり一般課税による申告が義務付けられる取扱い

 したがって、基準期間ができて以後の事業年度については、3年間の制限に関係なく事業者免税点制度の適用が可能となり、免税事業者となるかどうかは、原則通り、基準期間における課税売上高、特定期間における課税売上高、課税事業者選択届出書の提出の有無等によって判定することとなります(消基通19-1-4)。
 また、簡易課税制度選択届出書の提出についても、制限はありません。
 なお、被災事業者となった新設法人又は特定新規設立法人が国税通則法11条の規定の適用を受けたものでない場合には、この特例の適用を受けようとする旨等を記載した届出書を、設立当初の基準期間がない事業年度のうち最後の事業年度終了の日と指定日とのいずれか遅い日までに所轄税務署長に提出する必要があります(措法86の5④、措規37の3の2①、消基通19-1-3)。

(3) 高額特定資産を取得した場合

 被災事業者が、「被災日前に高額特定資産の仕入れ等を行った場合」又は「被災日から指定日以後2年を経過する日の属する課税期間の末日までの間に高額特定資産の仕入れ等を行った場合」に該当するときは、被災日の属する課税期間以後の課税期間については、次の取扱いは適用されません。

高額特定資産の仕入れ等をした場合に3年間継続して課税事業者となり一般課税による申告が義務付けられる取扱い

 したがって、被災日の属する課税期間以後の課税期間については、3年間の制限に関係なく事業者免税点制度の適用が可能となり、免税事業者となるかどうかは、原則通り、基準期間における課税売上高、特定期間における課税売上高、課税事業者選択届出書の提出の有無等によって判定することとなります。
 また、簡易課税制度選択届出書の提出についても、制限はありません。
 なお、この特例を適用する被災事業者が国税通則法11条の規定の適用を受けたものでない場合には、この特例の適用を受けようとする旨等を記載した届出書を、高額特定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の末日と指定日とのいずれか遅い日までに所轄税務署長に提出する必要があります(措法86の5⑤、措規37の3の2②、消基通19-1-3)。

3.仮決算による中間申告書の取扱い

 被災事業者が、この特例の適用を受けて「簡易課税制度選択届出書」又は「簡易課税制度選択不適用届出書」を提出した場合において、その提出前にその課税期間に係る仮決算による中間申告書を提出しているときは、仕入控除税額は一般課税と簡易課税で異なることとなりますが、すでに提出された中間申告書については、その仕入控除税額を修正する必要はありません。

中間申告義務がない場合の「任意の中間申告制度」の留意点

1.中間申告不要の場合

 消費税の課税事業者は、中間申告が不要の場合を除き、中間申告書を提出してその申告書に記載された税額を申告期限までに納付しなければなりません。
 中間申告書の提出義務は、直前の課税期間の確定消費税額(年税額)に応じて、次のように規定されています。

直前課税期間の確定消費税額(国税) 中間申告 申告期限 納付税額
4,800万円超 1月ごと年11回 一月中間申告対象期間の末日の翌日から2か月以内(最初の1か月は3か月以内) 直前課税期間の確定消費税額×1/12
400万円超4,800万円以下 3月ごと年3回 三月中間申告対象期間の末日の翌日から2か月以内 直前課税期間の確定消費税額×3/12
48万円超400万円以下 6月ごと年1回 六月中間申告対象期間の末日の翌日から2か月以内 直前課税期間の確定消費税額×6/12
48万円以下 中間申告不要

 中間申告が不要の場合は、次のとおりです。

(1) 設立1期目の法人(合併によるものを除く)
(2) その年に新規開業した個人事業者(相続による事業承継を含む)
(3) 事業年度が3か月以下の法人
(4) 課税期間の短縮の特例を受けている事業者
(5) 直前課税期間の確定消費税額(年税額・国税のみ)が48万円以下の事業者

 今回は、中間申告が不要である上記(5)の事業者が、中間申告書を提出する場合の任意の中間申告制度についてみていきます。

2.任意の中間申告制度

 直前課税期間の確定消費税額(年税額・国税のみ)が48万円以下であることにより中間申告書を提出する義務がない事業者は、「任意の中間申告書を提出する旨の届出書」を提出することにより、その届出書の提出をした日以後にその末日が到来する六月中間申告対象期間から、自主的に六月中間申告書及び納付をすることができます。
 例えば、2022(令和4)年から適用を受けようとする個人事業者は、2022(令和4)年6月30日までに届出書を納税地の所轄税務署長に提出すれば、同年8月31日を期限として自主的に六月中間申告書及び納付をすることができます。
 また、2022(令和4)年4月1日に事業年度が開始する法人は、2022(令和4)年9月30日までに届出書を納税地の所轄税務署長に提出すれば、同年11月30日を期限として自主的に六月中間申告書及び納付をすることができます。
 任意の中間申告制度を選択した事業者が、その適用を受けることをやめようとするときは、「任意の中間申告書を提出することの取りやめ届出書」を納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。

3.任意の中間申告書を提出しなかった場合

 任意の中間申告制度を選択した事業者が、六月中間申告書をその提出期限までに提出しなかった場合には、「任意の中間申告書を提出することの取りやめ届出書」を提出したものとみなされます。
 したがって、任意の中間申告制度には、提出期限までに中間申告書の提出があったものとみなされる「みなし申告」の取扱いはなく、任意の中間申告をしたい場合には必ず申告書の提出が必要です。
 一方、任意の中間申告制度では、提出期限までに申告書の提出がない限り、未納となって延滞税が課されることはありません。

4.翌期以降の任意の中間申告制度の選択の効力

 上記3で述べたように、任意の中間申告制度を選択した事業者が、六月中間申告書をその提出期限までに提出しなかった場合には、「任意の中間申告書を提出することの取りやめ届出書」を提出したものとみなされます。
 では、当期に任意の中間申告制度を選択して任意の中間申告書を提出した事業者が、来期は基準期間(前期)における課税売上高が1,000万円以下となるため免税事業者となる場合はどうでしょうか?
 このように免税事業者となった場合については、中間申告書や確定申告書を提出する義務がないことから、任意の中間申告制度を選択していたとしても中間申告書を提出する必要はありません。
 したがって、中間申告書を提出しなかったとしても「任意の中間申告書を提出することの取りやめ届出書」を提出したものとはみなされず、引き続き任意の中間申告制度の選択の効力は存続します。
 一方、課税事業者については、直前の課税期間が免税事業者であったため確定申告書を提出する義務がなかったことや、直前の課税期間に還付申告書を提出していたため、直前の課税期間の確定消費税額の金額がない場合であっても、任意の中間申告制度の選択の効力を存続させるためには、自主的に中間申告書(消費税額を「0円」とする中間申告書又は仮決算による中間申告書)を提出する必要があります。

消費税課税事業者選択届出書の提出を失念した場合の対応方法

 例えば、高額な設備投資をした場合には、その課税期間の課税仕入高が課税売上高を上回ることがあり、課税事業者であれば申告することによって消費税の還付を受けることができますが、免税事業者は申告書を提出することができませんので、消費税の還付を受けることができません。
 このような場合には、基準期間における課税売上高及び特定期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、免税事業者は課税事業者になることを選択することにより、消費税の還付を受けることができます。
 免税事業者が課税事業者になるためには、「消費税課税事業者選択届出書」を所轄税務署長に提出しなければなりませんが、この提出をしていなかった場合は、消費税の還付を受けるためにどのように対応すればいいでしょうか?

1.やむを得ない事情があるときの救済措置(宥恕規定)

 課税事業者を選択しようとする事業者が、やむを得ない事情により、消費税課税事業者選択届出書を期限までに提出できなかった場合には、そのやむを得ない事情がやんだ日から2か月以内に、課税事業者選択届出書と特例承認申請書(「消費税課税事業者選択(不適用)届出に係る特例承認申請書」)を所轄税務署長に提出し、その承認を受けたとき(みなし承認はありません)は、承認を受けた課税期間から課税事業者になることができます。
 では、「やむを得ない事情」とは、どのような事情のことをいうのでしょうか?
 やむを得ない事情とは、以下に掲げるように災害の発生等をいい、制度の不知や提出失念等は「やむを得ない事情」に該当しません。

(1) 震災、風水害、雪害、凍害、落雷、雪崩、がけ崩れ、地滑り、火山の噴火等の天災または火災その他人的災害で自己の責任によらないものに基因する災害が発生したことにより、届出書の提出ができない状態になったと認められる場合

(2) (1)の災害に準ずるような状況または、その事業者の責めに帰することができない状態にあることにより、届出書の提出ができない状態になったと認められる場合

(3) その課税期間の末日前おおむね1か月以内に相続があったことにより、その相続に係る相続人が新たに課税事業者選択届出書などを提出できる個人事業者となった場合

(4) (1)から(3)までに準ずる事情がある場合で、税務署長がやむを得ないと認めた場合

2.制度の不知や届出書の提出を忘れていた場合

 やむを得ない事情がなく、単に課税事業者選択届出書の提出を忘れていた場合等には、上記1の宥恕規定は適用されません。
 このような場合には、消費税の還付を受けるために、課税期間の短縮特例の選択決算期の変更によって対応することが考えられます。
 課税事業者選択届出書の提出を忘れていた場合、課税期間が開始してすぐに1か月短縮特例の届出書と課税事業者選択届出書を提出すれば、課税期間を短縮しない場合に比べて11か月早く課税事業者となることができます。
 ただし、その後2年間(又は3年間)は1か月ごとに申告しなければなりませんので、煩雑さが伴います。
 また、決算期を変更して、変更後の事業年度が開始する前に課税事業者選択届出書を提出する方法もあります。
 しかし、この方法によると①法人税の申告時期も変更になる、②会社の事業計画の期間に影響がある、③1年でない事業年度が生じるため法人税の欠損金の繰越期間に影響がある、などの点に注意する必要があります。

※ 特定非常災害の指定を受けた場合の届出特例については、本ブログ記事「特定非常災害に係る消費税の届出等に関する特例」をご参照ください。

令和4年度雇用保険料率が段階的に改定されます

1.改定内容

 2022(令和4)年3月30日に「雇用保険法等の一部を改正する法律案」が国会で成立しました。
 これにより、2022(令和4)年度の雇用保険料率が、2022(令和4)年4月と10月に段階的に改定されます。改定内容は次のとおりです。

(1) 2022(令和4)年4月1日から、事業主負担の保険料率が変更になります(0.5/1000引き上げ)。
(2) 2022(令和4)年10月1日から、労働者(被保険者)負担・事業主負担の保険料率が変更になります(4.0/1000引き上げ)。

 なお、2022(令和4)年度の労災保険料率は、2022(令和3)年度の料率から改定はありません。

2.令和4年度の雇用保険料率

 改定前(2022(令和4)年3月まで)と改定後(2022(令和4)年4月~9月及び2022(令和4)年10月以降)の雇用保険料率は、以下のとおりです。

改定前(2022(令和4)年3月まで)

事業の種類 一般事業 農林水産業・清酒製造業 建設業
被保険者負担率 3.0/1000 4.0/1000 4.0/1000
事業主負担率 6.0/1000 7.0/1000 8.0/1000
合計負担率 9.0/1000 11.0/1000 12.0/1000

改定後(2022(令和4)年4月~9月)
※ 被保険者負担率は据え置き、事業主負担率のみ「0.5/1000」引き上げられます。

事業の種類 一般事業 農林水産業・清酒製造業 建設業
被保険者負担率 3.0/1000 4.0/1000 4.0/1000
事業主負担率 6.5/1000 7.5/1000 8.5/1000
合計負担率 9.5/1000 11.5/1000 12.5/1000

改定後(2022(令和4)年10月以降)
被保険者負担率・事業主負担率ともに「2.0/1000」引き上げられます。

事業の種類 一般事業 農林水産業・清酒製造業 建設業
被保険者負担率 5.0/1000 6.0/1000 6.0/1000
事業主負担率 8.5/1000 9.5/1000 10.5/1000
合計負担率 13.5/1000 15.5/1000 16.5/1000



会社が役員から建物を借りる場合の税務上の注意点

 同族会社と役員の間で建物や土地の貸借を行う場合は、契約条件や賃料(家賃)等に恣意性が介入する余地があるため、第三者間の貸借にはない税務上の制約があります。
 今回は、同族会社が役員から事業用の建物を借りる場合の税務上の注意点について確認します。

1.実際の家賃が標準の家賃より低い場合

 会社が役員から建物を借りる場合の家賃については、第三者に貸す際の標準の家賃を基準としますが、会社と役員の間で決めた実際の家賃が標準の家賃より低い場合があります。
 この場合、会社側では実際の家賃と標準の家賃との差額が役員からの受贈益(益金)となりますが、同額の支払家賃(損金)が発生しますので、法人税の課税上問題となるケースはほとんどありません。
 
(税務上の仕訳)支払家賃×××/受贈益×××

 また、個人の所得税の課税上も認定課税の規定はないため、特段の問題は生じません。
 ただし、会社が役員所有の建物を役員から一括借上げし、その建物を第三者に転貸するような場合(いわゆるサブリース)は、会社が役員に支払う家賃の設定には注意しなければなりません。

2.実際の家賃が標準の家賃より高い場合

 実際の家賃が標準の家賃よりも高い場合については、その高い部分の金額が役員給与と認定される可能性があります。この場合、役員給与とみなされた部分の金額について源泉徴収が必要になります。
 また、役員給与とみなされた部分の金額が、株主総会等で決議された役員給与の金額の限度額の範囲内であれば、定期同額給与として損金算入できます。
 しかし、役員給与とみなされた部分の金額が、株主総会等で決議された役員給与の金額の限度額を超える場合は、その超える部分の金額が損金不算入とされ、法人税の課税上問題が生じます。
 例えば、次のような場合を想定してみます。

・会社が役員に支払う実際の家賃:月額50万円
・第三者に貸す場合の標準の家賃:月額20万円
・株主総会で決議された役員給与の限度額:月額60万円

(1) 役員給与が月額25万円のとき
 実際の家賃50万円と標準の家賃20万円との差額30万円が役員給与とみなされますので、役員給与は25万円+30万円=55万円となります。
 これは株主総会で決議された役員給与の限度額60万円の範囲内ですので、定期同額給与に該当し、55万円全額が損金算入されます。

(2) 役員給与が月額60万円のとき
 実際の家賃50万円と標準の家賃20万円との差額30万円が役員給与とみなされますので、役員給与は60万円+30万円=90万円となります。
 これは株主総会で決議された役員給与の限度額60万円を超えていますので、その超える部分の金額30万円(90万円-60万円)が損金不算入とされます。