令和8年4月1日よりマイカー通勤手当の非課税限度額が引き上げられました

 電車やバスなどの交通機関を利用している役員や従業員に対して支給する通勤手当は、月額15万円以下であれば所得税および復興特別所得税(以下「所得税等」といいます)が非課税となっています

 一方、電車やバスなどの交通機関を利用せずに、マイカー等の交通用具で通勤する場合の通勤手当にも、所得税等の非課税限度額が設けられています。

 このマイカー等で通勤する場合の非課税限度額について、2026(令和8)年度税制改正により、次の改正が行われました。

・通勤距離が片道65キロメートル以上について新たな距離区分が設けられ、非課税限度額が引き上げられました。
・一定の要件を満たす駐車場等を利用し、その料金を負担することを常例とする場合の1か月当たりの非課税限度額については、その通勤距離の区分に応じた非課税限度額に1か月当たりのその駐車場等の料金相当額(上限5,000円)を加算した金額とすることとされました。

 この改正は、2026(令和8)年4月1日以後に支払われるべき通勤手当(同日前に支払われるべき通勤手当の差額として追加支給するものを除きます)について適用されます。

 以下では、改正後の非課税限度額について確認します。

通勤手当を区分せず給与に含めて支給する場合については、「交通費込み給与の交通費部分は確定申告でも非課税にできない」をご参照ください。

1.マイカーや自転車などで通勤している場合

 マイカーや自転車などの交通用具を使用して通勤している場合の1か月当たりの非課税限度額は、片道の通勤距離(通勤経路に沿った長さ)に応じて定められています。
 改正後の1か月当たりの非課税限度額は、次のとおりです。

片道の通勤距離 1か月当たりの非課税限度額
改正後 改正前
2キロメートル未満 全額課税 同左
2キロメートル以上10キロメートル未満 4,200円 同左
10キロメートル以上15キロメートル未満 7,300円 同左
15キロメートル以上25キロメートル未満 13,500円 同左
25キロメートル以上35キロメートル未満 19,700円 同左
35キロメートル以上45キロメートル未満 25,900円 同左
45キロメートル以上55キロメートル未満 32,300円 同左
55キロメートル以上65キロメートル未満 38,700円 38,700円
65キロメートル以上75キロメートル未満 45,700円
75キロメートル以上85キロメートル未満 52,700円
85キロメートル以上95キロメートル未満 59,600円
95キロメートル以上 66,400円

 上表の1か月当たりの非課税限度額を超えて通勤手当を支給する場合は、超える部分の金額が給与として課税されます。

 改正後の非課税限度額は、2026(令和8)年4月1日以後に支払われるべき通勤手当について適用されますが、次に掲げる通勤手当については、改正後の非課税限度額は適用されません。

(1) 令和8年3月31日以前に支払われた通勤手当
(2) 令和8年3月31日以前に支払われるべき通勤手当で同年4月1日以後に支払われるもの
(3) (1)又は(2)の通勤手当の差額として追加支給されるもの

2.電車やバスなどの交通機関で通勤している場合

 電車やバスなどの交通機関を利用して通勤している場合の非課税限度額は、月額15万円以下とされています。
 これは、通勤のための運賃・時間・距離等の事情に照らして、最も経済的かつ合理的な経路および方法で通勤した場合の通勤定期券などの金額です。

 新幹線や特急列車を利用した場合の運賃等の額も、その通勤方法や経路が「最も経済的かつ合理的な経路および方法」に該当する場合は非課税の通勤手当に含まれますが、グリーン料金は最も経済的かつ合理的な通勤経路および方法のための料金とは認められないため、非課税の通勤手当に含まれません。

 したがって、通勤手当が月額15万円以下だったとしても、そこにグリーン料金が含まれている場合は、グリーン料金部分については給与として課税されます。

3.交通機関とマイカー等を併用して通勤している場合

 電車やバスなどの交通機関とマイカーや自転車などの交通用具を併用して通勤している場合は、両者の合計額が月額15万円までなら所得税等が非課税となります(交通用具を使用する通勤距離が片道2キロメートル未満である場合を除きます)。

 具体的には、次の(1)と(2)を合計した金額が月額15万円以内であれば、非課税の通勤手当となります。

(1) 電車やバスなどの交通機関を利用する場合の1か月間の通勤定期券などの金額(上記2参照)
(2) マイカーや自転車などの交通用具を使用して通勤する片道の距離で定められている1か月当たりの非課税限度額(上記1参照)

 例えば、自宅から自宅の最寄駅まではマイカーを使用し(片道距離12キロメートル)、自宅の最寄駅から勤務先の最寄駅までは電車を利用する(1か月定期券15,000円)場合は、7,300円+15,000円=22,300円が非課税の通勤手当となります。

4.マイカーや自転車などで通勤して駐車場も利用する場合

 マイカーや自転車などの交通用具を使用して通勤し、一定の要件を満たす駐車場等を利用している場合は、次の(1)と(2)を合計した金額が非課税限度額となります(通勤距離が片道2キロメートル未満である場合を除きます)。

(1) マイカーや自転車などの交通用具を使用して通勤する片道の距離で定められている1か月当たりの非課税限度額(上記1参照)
(2) 1か月当たりの駐車場等の料金相当額(上限5,000円

「一定の要件を満たす駐車場等」とは、通勤のために使用する交通用具の駐車のための駐車場等のうち、その通勤手当の支払を受ける人の勤務する場所の周辺にあるものをいいます。

5.交通機関とマイカー等を併用して通勤して駐車場も利用する場合

 電車やバスなどの交通機関とマイカーや自転車などの交通用具を併用して通勤し、一定の要件を満たす駐車場等も利用している場合は、次の(1)~(3)の合計額が月額15万円までなら所得税等が非課税となります(交通用具を使用する通勤距離が片道2キロメートル未満である場合を除きます)。

(1) 電車やバスなどの交通機関を利用する場合の1か月間の通勤定期券などの金額(上記2参照)
(2) マイカーや自転車などの交通用具を使用して通勤する片道の距離で定められている1か月当たりの非課税限度額(上記1参照)
(3) 1か月当たりの駐車場等の料金相当額(上限5,000円

「一定の要件を満たす駐車場等」とは、通勤のために使用する交通用具の駐車のための駐車場等のうち、その通勤手当の支払を受ける人の勤務する場所の周辺又はその人が通勤のために利用する交通機関の駅若しくは停留所その他の施設の周辺にあるものをいいます。

上場株式等に係る譲渡損失の「損益通算」と「繰越控除」の注意点

 上場株式等を、金融商品取引業者(証券会社や投資信託委託会社など)を通じて譲渡したことにより生じた譲渡損失の金額は、確定申告をすることによって、その年分の上場株式等の配当所得等の金額と損益通算することができます。

 また、損益通算してもなお控除しきれない譲渡損失の金額については、翌年以後3年間にわたり、確定申告をすることによって、上場株式等の譲渡所得等の金額および上場株式等の配当所得等の金額から繰越控除することができます。

 今回は、上場株式等に係る譲渡損失の損益通算と繰越控除について、適用を受ける際の注意点と手続きを確認します。

1.損益通算の注意点

 上場株式等に係る譲渡損失の金額は損益通算の対象となりますが、以下の点に注意しなければなりません。

(1) 上場株式等の譲渡損失(赤字)の金額は他の上場株式等に係る譲渡益(黒字)の金額から控除できますが、その控除をしてもなお控除しきれない譲渡損失の金額は、下記(3)の場合を除き、他の所得(不動産所得、事業所得、給与所得など)の金額から控除することはできません。

(2) 上場株式等の譲渡損失(赤字)の金額は、一般株式等に係る譲渡益(黒字)の金額から控除することはできません※1

※1 一般株式等に係る譲渡損失(赤字)の金額は、「特定中小会社の発行株式に係る譲渡損失の損益通算および繰越控除」の場合を除き、上場株式等に係る譲渡益(黒字)の金額から控除することはできません。

(3) 上場株式等を、金融商品取引業者等を通じて譲渡※2したことにより生じた譲渡損失(赤字)の金額は、確定申告をすることによって、その年分の上場株式等の配当等に係る利子所得および配当所得の金額(以下「上場株式等の配当所得等の金額」といいます)から控除することができます※3

※2 上場株式等の譲渡であっても、いわゆる相対取引などにより生じた譲渡損失については、損益通算できません。

※3 上場株式等の配当等に係る配当所得については、申告分離課税を選択したものに限ります。
 なお、上場株式等の配当等に係る利子所得については、総合課税を選択することができず、申告分離課税のみとなります。詳細については、「配当所得に係る総合課税・申告分離課税・申告不要制度の選択上の注意点」をご参照ください。

(4) 非課税口座(NISA)および未成年者口座(ジュニアNISA)内で生じた上場株式等に係る譲渡損失(赤字)の金額については、他の上場株式等の譲渡益(黒字)の金額および上場株式等の配当所得等の金額と損益通算できません※4

※4 NISA口座およびジュニアNISA口座では、配当金や譲渡益等は非課税となる一方で、これらの譲渡損失はないものとされます。

(5) 損益通算の適用を受けるためには、次の手続きが必要となります。

① 損益通算の規定の適用を受けようとする年分の確定申告書に、この規定の適用を受けようとする旨を記載すること

②「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」および「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」を提出すること

2.繰越控除の注意点

 上場株式等に係る譲渡損失の金額について、損益通算してもなお控除しきれない場合は、翌年以後3年間にわたり、確定申告をすることによって、上場株式等の譲渡所得等の金額および上場株式等の配当所得等の金額から繰越控除することができます。

 ただし、以下の点に注意する必要があります。

(1) 繰り越された上場株式等に係る譲渡損失の金額は、一般株式等に係る譲渡所得等の金額から控除することはできません。

(2) 上場株式等の譲渡であっても、いわゆる相対取引などにより生じた譲渡損失については、繰越控除できません。

(3) 非課税口座(NISA)及び未成年者口座(ジュニアNISA)内で生じた上場株式等に係る譲渡損失については、繰越控除できません。

(4) 繰越控除の適用を受けるためには、次の手続きが必要となります。

① 上場株式等に係る譲渡損失の金額が生じた年分の確定申告において、「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」および「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」を提出すること

その後の年において連続して※5「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」を提出すること

※5 上場株式等の譲渡がなかった年も、譲渡損失を翌年へ繰り越すための申告が必要です。

③ この繰越控除を受けようとする年分の確定申告において、「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」および一般株式等に係る譲渡所得等の金額または上場株式等に係る譲渡所得等の金額がある場合には「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」を提出すること

令和8年度の雇用保険料率が改定されます(労災保険料率・子ども子育て拠出金率は据え置き)

 2026(令和8)年4月から厚生労働省関係の制度変更が実施されますので、給与計算ソフトを使用している場合等はその設定を見直す必要があります。
 以下では、2026(令和8)年度の雇用保険料率、労災保険料率、子ども・子育て拠出金率について確認します。

1.令和8年度の雇用保険料率

 厚生労働省告示に伴い、2026(令和8)年度の雇用保険料率が改定されます(適用開始:2026(令和8)年4月1日)。
 改定前(2026(令和8)年3月まで)と改定後(2026(令和8)年4月~2027(令和9)年3月)の雇用保険料率は、以下のとおりです。

(1) 改定前

事業の種類 一般事業 農林水産業・清酒製造業 建設業
被保険者負担率 5.5/1000 6.5/1000 6.5/1000
事業主負担率 9.0/1000 10.0/1000 11.0/1000
合計負担率 14.5/1000 16.5/1000 17.5/1000

(2) 改定後

事業の種類 一般事業 農林水産業・清酒製造業 建設業
被保険者負担率 5.0/1000 6.0/1000 6.0/1000
事業主負担率 8.5/1000 9.5/1000 10.5/1000
合計負担率 13.5/1000 15.5/1000 16.5/1000


 園芸サービス、牛馬の育成、酪農、養鶏、養豚、内水面養殖及び特定の船員を雇用する事業については、一般事業の率が適用されます。

2.令和8年度の労災保険料率

 労働保険は労災保険(労働者災害補償保険)と雇用保険に分かれますが、改定されるのは雇用保険料率であり、労災保険料率は前年度(2025(令和7)年度)の料率から改定されていません。
 2026(令和8)年度の業種ごとの労災保険料率は、次のとおりです(単位:1/1,000)。

事業の種類の分類 番号 事業の種類 令和7年度料率
林業 02・03 林業 52
漁業 11 海面漁業 18
12 定置網漁業又は海面魚類養殖業 37
鉱業 21 金属鉱業、非金属鉱業又は石炭鉱業 88
23 石灰石鉱業又はドロマイト鉱業 13
24 原油又は天然ガス鉱業 2.5
25 採石業 37
26 その他の鉱業 26
建設事業 31 水力発電施設、ずい道等新設事業 34
32 道路新設事業 11
33 舗装工事業 9
34 鉄道又は軌道新設事業 9
35 建築事業 9.5
38 既設建築物設備工事業 12
36 機械装置の組立て又は据付けの事業 6
37 その他の建設事業 15
製造業 41 食料品製造業 5.5
42 繊維工業又は繊維製品製造業 4
44 木材又は木製品製造業 13
45 パルプ又は紙製造業 7
46 印刷又は製本業 3.5
47 化学工業 4.5
48 ガラス又はセメント製造業 6
66 コンクリート製造業 13
62 陶磁器製品製造業 17
49 その他の窯業又は土石製品製造業 23
50 金属精錬業 6.5
51 非鉄金属精錬業 7
52 金属材料品製造業 5
53 鋳物業 16
54 金属製品製造業又は金属加工業 9
63 洋食器、刃物、手工具又は一般金属製造業 6.5
55 めつき業 6.5
56 機械器具製造業 5
57 電気機械器具製造業 3
58 輸送用機械器具製造業 4
59 船舶製造又は修理業 23
60 計量器、光学機械、時計等製造業 2.5
64 貴金属製品、装身具、皮革製品等製造業 3.5
61 その他の製造業 6
運輸業 71 交通運輸事業 4
72 貨物取扱事業 8.5
73 港湾貨物取扱事業 9
74 港湾荷役業 12
電気、ガス、水道又は熱供給の事業 81 電気、ガス、水道又は熱供給の事業 3
その他の事業 95 農業又は海面漁業以外の漁業 13
91 清掃、火葬又はと畜の事業 13
93 ビルメンテナンス業 6
96 倉庫業、警備業、消毒又は害虫駆除の事業又はゴルフ場の事業 6.5
97 通信業、放送業、新聞業又は出版業 2.5
98 卸売業・小売業、飲食店又は宿泊業 3
99 金融業、保険業又は不動産業 2.5
94 その他の各種事業 3
船舶所有者の事業 90 船舶所有者の事業 42

3.令和8年度の子ども・子育て拠出金率

 2026(令和8)年度の子ども・子育て拠出金率は据え置きとなり、2025(令和7)年度の拠出金率(3.600/1000)から改定はありません。

 なお、子ども・子育て拠出金は事業主のみが負担し、従業員(被保険者)の負担はありません。
 2026(令和8)年4月分(5月納付分)から始まる「子ども・子育て支援金制度」とは異なる制度です。

※ 子ども・子育て支援金制度については、「令和8年4月分(5月納付分)から『子ども・子育て支援金制度』が始まります」をご参照ください。

令和8年4月1日から「130万円の壁」の年間収入は労働契約の内容で判定されます

 社会保険の扶養に入るためには年間収入が130万円未満でなければなりませんが、この130万円未満であるかどうかを判定する際の年間収入の取扱いが、2026(令和8)年4月1日から変わります。

 これまでは、社会保険の扶養に入る人(以下「被扶養者」といいます)の年間収入については、被扶養者の過去の収入、現時点の収入、将来の収入の見込み(残業手当などの所定外賃金の見込みを含みます)などから、今後1年間の収入見込みを基に判定をしていました。

 しかし、2026(令和8)年4月1日からは、労働条件通知書などで定められた賃金から見込まれる年間収入が、130万円未満であるかどうかを判定することになります。
 つまり、労働契約段階で見込まれる収入を用いて、被扶養者の判定が行われることになります。

 したがって、労働契約に明確な規定がなく、労働契約段階では見込み難い時間外労働に対する賃金等は、被扶養者の判定における年間収入には含まれないこととなります。

1.改正の概要

 被扶養者の判定における年間収入について、2026(令和8)年4月1日以降は、「労働条件通知書」や「雇用契約書」などの労働契約内容が分かる書類に記載のある賃金から見込まれる年間収入※1が130万円未満※2であり、かつ、他の収入が見込まれず下記(1)または(2)を満たす場合には、原則として、被扶養者に該当するものとして取り扱われます。

(1) 被扶養者が被保険者(扶養する人)と同一世帯に属している場合には、被保険者の年間収入の2分の1未満であると認められる場合※3

(2) 被扶養者が被保険者と同一世帯に属していない場合には、被保険者からの援助に依る収入額より少ない場合

※1 労働条件通知書等の労働契約の内容が確認できる書類において規定される時給・労働時間・日数等を用いて算出した年間収入の見込額をいい、諸手当や賞与も含まれますが、当該書類上に明確な規定がなく予め金額を見込み難い時間外労働に対する賃金等は年間収入の見込額に含みません。

※2 被扶養者が60歳以上の者である場合または概ね厚生年金保険法による障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害者である場合にあっては、180万円未満(ただし、障害年金などの給与以外の収入があると、この方法は使えません)、被扶養者(被保険者の配偶者を除きます)が19歳以上23歳未満である場合にあっては150万円未満となります(150万円未満については、「令和7年10月1日から19歳以上23歳未満の人の健康保険の被扶養者認定基準が年収150万円未満に変わります」をご参照ください)。

※3 収入が被保険者の収入の2分の1以上の場合であっても、被保険者の年間収入を上回らないときで、日本年金機構がその世帯の生計の状況を総合的に勘案して、被保険者がその世帯の生計維持の中心的役割を果たしていると認めるときは、被扶養者となることがあります。

2.運用上の注意点

 2026(令和8)年4月1日以降の被扶養者の判定にあたって、注意しなければならない点を以下に挙げます。

(1) 協会けんぽ・健康保険組合・日本年金機構(以下「保険者」といいます)において労働契約内容が確認できる書類がない場合は、従来どおり、勤務先が発行した収入証明書や課税(非課税)証明書等により、年間収入が判定されます。

(2) 労働契約に明確な規定がなく、労働契約段階では時間外労働の見込みがなかったが、被扶養者を判定する時点では経常的に時間外労働が発生している場合も想定されます。

 このような場合は、労働契約に明確な規定がなく労働契約段階では時間外労働の見込みがなかったのであれば、被扶養者の判定時点で時間外労働が発生していたとしても、当年度においては一時的な収入変動とみなし、今回の取扱いにより年間収入が判定されます。

(3) 被扶養者として判定されて扶養に入った後、保険者が行う被扶養者の判定の適否に係る確認において、勤務先が発行した収入証明書や課税(非課税)証明書等により、臨時収入によって結果的に年間収入が130万円以上となっていることが判明する場合も想定されます。
 このような場合でも、当該臨時収入が社会通念上妥当である範囲に留まる場合には、これを理由として、被扶養者の判定が直ちに取り消されることはありません。

 ただし、当該臨時収入により実際の年間収入が社会通念上妥当である範囲を超えて 130 万円を大きく上回っており、労働契約内容の賃金を不当に低く記載していたことが判明した場合には、被扶養者に該当しないものとして取り扱われます。

 なお、当該臨時収入が一時的な収入変動であることを証明するために、「年収の壁・支援強化パッケージ」における事業主証明を保険者に提出することができます。

(4) 給与収入以外に他の収入(年金収入や事業収入等)がある場合は、従来どおり勤務先が発行した収入証明書や課税(非課税)証明書等により年間収入が判定されます。

令和8年4月分(5月納付分)から「子ども・子育て支援金制度」が始まります

 2026(令和8)年4月分(5月納付分)から「子ども・子育て支援金制度」が始まります。
 今回は、協会けんぽの加入者を中心に、子ども・子育て支援金制度の内容について確認します。

※ 「子ども・子育て拠出金」とは異なる制度です。子ども・子育て拠出金は、児童手当の支給に要する費用等の一部として、事業主が負担するものであり、被保険者の負担はありません。

1.制度の概要

 子ども・子育て支援金制度は、高齢者を含む全世代(子育て世帯自身も含みます)や企業が、子どもや子育て世帯を支える新たな連帯の仕組みです。 
 既に始まっている以下のような子ども・子育て支援の拡充に、子ども・子育て支援金が充てられます。

(1) 児童手当の拡充(令和6年10月から支給開始)
 所得制限撤廃、高校生まで延長、第3子以降3万円

(2) 妊婦のための支援給付(令和7年4月から支給開始)
 妊娠・出産時に合計10万円給付

(3) 出生後休業支援給付(令和7年4月から支給開始)
 両親が育休取得した場合に手取り10割相当支給

(4) 育児時短就業給付(令和7年4月から支給開始)
 育児中に時短勤務をする場合に時短勤務時の賃金の10%を支給

(5) こども誰でも通園制度(令和8年4月から給付化)
 0歳6か月~2歳の保育所等に通っていないこどもの保護者が月10時間利用可能

(6) 育児期間中の国民年金保険料免除(令和8年10月から制度開始)
 フリーランスの方の育児期間中の国民年金保険料免除

2.医療保険者ごとの制度内容

 子ども・子育て支援金は、全世帯・企業が拠出します。支援金額や保険料率などは医療保険者(協会けんぽ・健康保険組合等、国民健康保険、後期高齢者医療制度)によって異なり、具体的には次のとおりです。

(1) 被用者保険(協会けんぽ・健康保険組合・共済組合)の加入者の場合

① 徴収開始時期
 2026(令和8)年4月分(5月納付分)より開始されます。

② 徴収方法
 健康保険料と合わせて徴収されます。

③ 保険料率と負担割合
 国が一律の支援金率(保険料率)を示すこととしており、令和8年度の支援金率は2.3/1000(0.23%)です。
 負担割合は、従業員1.150/1000,事業主1.150/1000です(基本的に支援金額の半分は事業主(企業)が負担します)。

 ただし、健康保険組合・共済組合については、規約により支援金率や負担割合が異なる場合がありますので、詳細は加入している健康保険組合等からの案内をご確認ください。

④ 支援金額の計算方法
 支援金額(月額)は、標準報酬月額(標準賞与額)×支援金率で計算します。

(2) 国民健康保険の加入者の場合

① 徴収開始時期
 2026(令和8)年4月分から開始されますが、具体的な徴収開始時期は市町村によって異なります。

② 保険料率
 市町村ごとに支援金に係る保険料率は異なります。

③ 支援金額
 支援金額(月額)は、市町村が定める条例に基づき、世帯や個人の所得等に応じて決定されます。

(3) 後期高齢者医療制度の加入者の場合

① 徴収開始時期
 2026(令和8)年4月分から開始されますが、具体的な徴収開始時期は都道府県後期高齢者医療広域連合によって異なります。

② 保険料率
 後期高齢者医療広域連合ごとに支援金に係る保険料率は異なります。

③ 支援金額
 支援金額は、後期高齢者医療広域連合が定める条例に基づき、個人の所得等に応じて決定されます。

令和8年3月分(4月納付分)から健康保険料率と介護保険料率が改定されます(協会けんぽ)

 2026(令和8)年度の全国健康保険協会(協会けんぽ)の健康保険料率および介護保険料率が3月分(4月納付分)から改定されますので、以下で確認します

※ 組合管掌健康保険については、健康保険組合ごとに改定時期・保険料率が決定されていますので、詳細は加入している健康保険組合にご確認ください。

1.健康保険料率

 全国健康保険協会(協会けんぽ)の健康保険料率は、都道府県ごとに異なります。

 令和8年度と前年度(令和7年度)の各都道府県の保険料率は下表のようになっており、3月分(4月納付分)から適用されます。

  令和7年度 令和8年度
北海道 10.31% 10.28%
青森県 9.85% 9.85%
岩手県 9.62% 9.51%
宮城県 10.11% 10.10%
秋田県 10.01% 10.01%
山形県 9.75% 9.75%
福島県 9.62% 9.50%
茨城県 9.67% 9.52%
栃木県 9.82% 9.82%
群馬県 9.77% 9.68%
埼玉県 9.76% 9.67%
千葉県 9.79% 9.73%
東京都 9.91% 9.85%
神奈川県 9.92% 9.92%
新潟県 9.55% 9.21%
富山県 9.65% 9.59%
石川県 9.88% 9.70%
福井県 9.94% 9.71%
山梨県 9.89% 9.55%
長野県 9.69% 9.63%
岐阜県 9.93% 9.80%
静岡県 9.80% 9.61%
愛知県 10.03% 9.93%
三重県 9.99% 9.77%
滋賀県 9.97% 9.88%
京都府 10.03% 9.89%
大阪府 10.24% 10.13%
兵庫県 10.16% 10.12%
奈良県 10.02% 9.91%
和歌山県 10.19% 10.06%
鳥取県 9.93% 9.86%
島根県 9.94% 9.94%
岡山県 10.17% 10.05%
広島県 9.97% 9.78%
山口県 10.36% 10.15%
徳島県 10.47% 10.24%
香川県 10.21% 10.02%
愛媛県 10.18% 9.98%
高知県 10.13% 10.05%
福岡県 10.31% 10.11%
佐賀県 10.78% 10.55%
長崎県 10.41% 10.06%
熊本県 10.12% 10.08%
大分県 10.25% 10.08%
宮崎県 10.09% 9.77%
鹿児島県 10.31% 10.13%
沖縄県 9.44% 9.44%

 40歳から64歳までの方(介護保険第2号被保険者)は、これに全国一律の介護保険料率(1.62%)が加わります(下記2参照)。

 また、2026(令和8)年4月分(5月納付分)から「子ども・子育て支援金制度」が始まり、子ども・子育て支援金(0.23%)が健康保険料と合わせて徴収されます(子ども・子育て支援金制度については、「令和8年4月分(5月納付分)から『子ども・子育て支援金制度』が始まります」をご参照ください)。
 
 これらの料率改定を反映した令和8年度の各都道府県ごとの「保険料額表」については、全国健康保険協会ホームページをご参照ください。

2.介護保険料率

 介護保険料率は、15.9/1000(1.59%)から16.2/1000(1.62%)に改定されます。

  令和7年度 令和8年度
介護保険料率 15.9/1000(1.59%)
従業員:7.950/1000
事業主:7.950/1000
16.2/1000(1.62%)
従業員:8.100/1000
事業主:8.100/1000

3.給与計算ソフトの保険料率改定時期

 給与計算ソフトの健康保険料と介護保険料の料率を改定(変更)するタイミングは、事業所によって異なります。

 その事業所が新しい保険料率で徴収する給与の支給月に、保険料率の変更を行います。具体的には次のとおりです。

(1) 当月徴収の場合
 3月分保険料を「3月支給給与」で徴収する「当月徴収」の場合は、3月に支給する給与から保険料率を変更します。

(2) 翌月徴収の場合
 3月分保険料を「4月支給給与」で徴収する「翌月徴収」の場合は、4月に支給する給与から保険料率を変更します。

(3) 翌々月徴収の場合
 3月分保険料を「5月支給給与」で徴収する「翌々月徴収」の場合は、5月に支給する給与から保険料率を変更します。

上場株式等の譲渡所得や配当所得における「源泉徴収ありの特定口座」のメリットと留意点

 上場株式等を、金融商品取引業者(証券会社や投資信託委託会社など)を通じて譲渡したことにより生じた譲渡損失の金額は、確定申告をすることによって、その年分の上場株式等の配当所得等の金額と損益通算することができます。

 また、損益通算してもなお控除しきれない譲渡損失の金額については、翌年以後3年間にわたり、確定申告をすることによって、上場株式等の譲渡所得等の金額および上場株式等の配当所得等の金額から繰越控除することができます。

 今回は、上場株式等の譲渡所得や配当所得において、多くの方が利用していると思われる「源泉徴収ありの特定口座」(以下「源泉徴収口座」といいます)について確認します。

※ 関連記事:「配当所得に係る総合課税・申告分離課税・申告不要制度の選択上の注意点

1.簡易申告口座と源泉徴収口座

 金融商品取引業者を通じて行う上場株式等の売買については特定口座制度があり、特定口座には、「簡易申告口座」と「源泉徴収口座」の2種類があります。

 簡易申告口座では、金融商品取引業者が、特定口座内で生じた年間の譲渡損益を計算し、その内容を記載した特定口座年間取引報告書を交付します。
 
 源泉徴収口座では、金融商品取引業者が、特定口座内で生じた年間の譲渡損益、利子所得・配当所得( 譲渡損失と通算) を計算し、その内容を記載した特定口座年間取引報告書を交付します。

 簡易申告口座とは異なり、源泉徴収口座では特定口座内で生じた所得に対して源泉徴収(所得税15.315%、住民税5%)が行われますので、その特定口座内の上場株式等の譲渡による所得を申告不要とすることができます。

特定口座の種類 源泉徴収 申告方法
簡易申告口座 なし 申告分離課税
源泉徴収口座 あり
(国税15.315%、地方税5%)
申告分離課税または申告不要

2.源泉徴収口座のメリットと留意点

 源泉徴収口座には、申告不要を選択することができるなど、以下のようなメリットがあります。

(1) 証券会社などの金融商品取引業者が、源泉徴収口座内の上場株式等の譲渡所得や配当所得の年間の損益を計算して「特定口座年間取引報告書」を作成してくれます。

(2) 証券会社などの金融商品取引業者が、源泉徴収口座内の上場株式等の譲渡所得や配当所得の税金の計算をして源泉徴収(納付)してくれますので、確定申告を不要とすることができます。

(3) 申告不要を選択した場合、その源泉徴収口座内で生じた上場株式等の譲渡所得や配当所得の金額については、合計所得金額に算入されません。
 したがって、所得控除の適用要件や国民健康保険の保険料、医療費の窓口負担割合などに影響しません(関連記事:「後期高齢者の医療費の自己負担割合(1割・2割・3割)の判定基準となる所得額はいくら?」)。

 一方、源泉徴収口座には、以下のような留意点もあります。

(1) 源泉徴収口座以外の口座や他の証券会社等の損益と損益通算するには、確定申告をする必要があります。

(2) 源泉徴収口座の譲渡損失を繰越控除するためには、確定申告をする必要があります。この場合、その源泉徴収口座内の株式等の配当金をすべて申告(申告分離課税)しなければなりません。

(3) 上場株式の配当金の受取方法を「株式数比例配分方式」に設定していないと、特定口座内で上場株式等の配当金を受け取ることができません(公募株式投資信託の分配金などは、株式数比例配分方式」以外の方法でも特定口座で受け取ることができます)。

(4) 上場株式等の配当等については、1回に支払を受けるべき額ごとに申告する・しない(申告不要)の選択をすることができますが、源泉徴収口座内の上場株式等の配当等については、口座ごとにその選択をする必要があります(譲渡損失を申告する場合はすべて申告(上記(2)参照))。

(5) 特定口座の「源泉徴収あり・なし」の変更は、毎年最初に上場株式等の譲渡をするときまでにできますが、前年に「源泉徴収あり」を選択していた場合で、本年最初に上場株式等の譲渡をするときより前にその特定口座に上場株式等の配当等を受け入れていたときは、変更することができません。

医師の指示に基づいて購入した治療目的のサプリメントは医療費控除の対象となるか?

 医療費控除の対象となる医療費には、医師または歯科医師による診療または治療の対価がありますが、治療または療養に必要な医薬品の購入の対価も医療費控除の対象となります。

 医薬品の購入費用については、治療または療養に必要なものであれば医療費控除の対象となります。
 例えば、風邪をひいた場合の風邪薬などの購入費用は、風邪の治療に必要ですので医療費控除の対象となります。
 一方、ビタミン剤などの病気の予防や健康増進のために用いられる医薬品の購入費用は、治療が目的ではないため医療費控除の対象となりません。

 ビタミン剤などと同様に、病気の予防や健康増進のために用いられるものにサプリメントがありますが、このようなサプリメントも治療が目的ではないため医療費控除の対象となりません。

 では、治療や療養のためにサプリメントを購入した場合、その購入費用は医療費控除の対象となるのでしょうか?
 さらに、そのサプリメントは購入前に診療(カウンセリング)が必要な医療機関専用のもので、自分の判断ではなく医師の指示に基づいて購入したものだったとしたらどうでしょうか?

 今回は、この点について確認します。

1.漢方薬やビタミン剤の購入費用

 医師の指示に基づくサプリメントの購入費用が医療費控除の対象となるか否かについて考えるとき、次の国税庁ホームページ・質疑応答事例が参考になります(下線は筆者による)。

【照会要旨】
 漢方薬やビタミン剤の購入費用は、医療費控除の対象になりますか。

【回答要旨】
 治療又は療養に必要な場合には、医療費控除の対象となります。

 医薬品の購入費用で医療費控除の対象となるものは、治療又は療養に必要なものであることが必要です(所得税法施行令第207条)。
 漢方薬やビタミン剤は、治療又は療養のために効能があるほか、疾病の予防や健康の増進にも効能があり、これらの購入費用について医療費控除を受けるためには、その漢方薬やビタミン剤が医薬品であることに加え、その費用が治療又は療養に必要なものであることが必要となります。

注)医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第1項《医薬品の定義》に規定する医薬品に該当しない漢方薬等の購入費用は、医療費控除の対象とはなりません(所得税基本通達73-5)。

 上記質疑応答事例にあるように、漢方薬やビタミン剤は治療や療養だけでなく、病気の予防や健康増進にも効能があります。
 これらが医療費控除の対象となるためには、次の要件をどちらも満たす必要があります。

(1) 医薬品であること
(2) 治療または療養に必要なもの

 サプリメントも、治療や療養だけでなく、病気予防や健康増進にも効能があります。
 このようなサプリメントが医療費控除の対象となるかどうかについては、実は上記の2要件を満たすかどうかというシンプルな判断基準があることがわかります。

※ 「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下「医薬品に関する法律」といいます)第2条第1項《医薬品の定義》に規定する医薬品に該当する必要があります(「薬事法」が2014(平成26)年に改正されて現在の名称に変更されました)。

2.医師の指示に基づくサプリメントの購入

 では、医師の指示に基づく治療目的のサプリメントは医療費控除の対象となるのでしょうか?

 ここでは、以下の説例をもとに考えてみます。

【設例】
・患者は、医師の指示により、医師の指定したサプリメントを治療のために購入した。
・このサプリメントは医療機関専用のもので、購入前に診療(カウンセリング)を受けることが必須条件となっている。

 「医師の指示」、「医師の指定した」、「治療のため」、「医療機関専用」、「購入前に診療を受ける」など、医療費控除を連想させるいろんな修飾語がついていますが、惑わされてはいけません。

 これらの修飾語の中で、医療費控除の対象を考える上で重要なのは「治療のため」だけです。

 そして、もう一つ重要なのは、そのサプリメントが「医薬品であるかどうか」です。

 上記設例において、そのサプリメントが医薬品に関する法律上の医薬品であれば、2要件を満たしますので医療費控除の対象となります。
 そのサプリメントが医薬品に関する法律上の医薬品に該当せず、「食品」に分類されるものであれば、医療費控除の対象となりません。

 また、サプリメントが医薬品に関する法律上の医薬品であっても、病気の予防や健康増進のために購入したのであれば、医療費控除の対象となりません。
 
 サプリメントが医療費控除の対象となるか否かについて迷ったときは、2要件(「治療」のための「医薬品」)を満たすかどうかで判断することになります。

※ 関連記事:「迷いやすい医療費控除の例」、「マスク、PCR検査、オンライン診療は医療費控除の対象になるか?」、「文書料は医療費控除の対象となるか?」、「医療費のお知らせ(医療費通知)で医療費控除を受ける際の注意点





損失申告をした翌年の確定申告書の記載例(繰越損失を全額控除した場合)

 青色申告を行う個人事業者は、事業で赤字が出た場合は、その赤字を他の所得と損益通算(控除)することができ、損益通算しても控除しきれない赤字が残るときは翌年に繰り越すことができます。

 この控除しきれない赤字(損失)を繰り越すために行う確定申告のことを損失申告といいます

 以下では、損失申告をした翌年に、繰越損失を全額控除した場合の確定申告書の記載例を確認します。

※ 損失申告については、「損失申告と確定申告書第四表の記載例」をご参照ください。

1.前年の確定申告書第四表

 前年の途中に事業を開業して、会社員時代の給与所得850,000円と開業後の事業所得の赤字が1,000,000円あるケースを想定します。

 この場合、前年において給与所得850,000円と事業所得の赤字1,000,000円を損益通算しても、控除しきれない赤字が150,000円残ります。

 この赤字を翌年に繰り越すために、確定申告書第一表・第二表と一緒に、次の第四表(一)と(二)を税務署に提出します。

2.損失申告の翌年の確定申告書第一表

 今年は開業2年目で、事業所得は4,000,000円の黒字となったケースを想定します(青色申告特別控除650,000円控除後)。

 この場合、前年から繰り越されてきた赤字(損失)が150,000円ありますので、確定申告書第一表の記載は次のようになります。

 事業所得以外に所得がない場合は、通常であれば、上図の「合計⑫」欄の金額は事業所得と同額の4,000,000円になります。

 しかし、前年から繰り越されてきた赤字(損失)が150,000円ありますので、「合計⑫」欄の金額は4,000,000円-150,000円=3,850,000円となります。

 ここで、若干の疑問が生じます。今年の確定申告において、前年に損失申告をしたときと同じように確定申告書第四表の記載はしなくてもいいのでしょうか?

 答えは、「第四表は不要」です。

 上図の「合計⑫」欄には、前年から繰り越されてきた赤字(損失)を今年の事業所得から控除した結果の3,850,000円が記載されています。

 つまり、繰越損失を控除してもなお所得が残りますので、今年は損失申告ではないということです。したがって、第四表は不要です。

 しかし、今年の確定申告で第四表を提出しないということは、前年の繰越損失の金額を第三者はどうやって確認するのか疑問が生じるかもしれません。

 この場合、第一表の「その他」の「本年分で差し引く繰越損失額62」欄に控除した繰越損失額を記載しますので、ここで確認することができます。

 なお、前年の繰越損失額が全額控除できずに一部が残る場合は、第四表が必要となります。

仕入税額控除の時期の原則と特例(前払金・未払金、短期前払費用、建設仮勘定)

 消費税の仕入税額控除は、原則として課税仕入れを行った日の属する課税期間において行います。
 課税仕入れを行った日とは、資産の引渡しを受けた日またはサービスの提供を受けた日をいいます。
 
 今回は、仕入税額控除を行う時期の原則と特例について、前払金・未払金、短期前払費用、建設仮勘定を例に確認します。

1.前払金と未払金の仕入税額控除

 消費税の仕入税額控除の時期は、所得税や法人税の場合と同じように、原則として資産の引渡しを受けた日やサービスの提供を受けた日の属する課税期間とされています。

 したがって、例えば、工事代金や機械の購入代金について前払金を支払っていたとしても、その前払金の支払の時期に関係なく、実際に資産の引渡しを受けた日の属する課税期間が仕入税額控除の時期となります。

 同じように、工事代金や機械の購入代金について未払金があるときも、その代金の決済の時期に関係なく、実際に資産の引渡しを受けた日の属する課税期間が仕入税額控除の時期になります。

2.短期前払費用の仕入税額控除

 前払費用とは、一定の契約に基づき継続的にサービスの提供を受けるために支出した課税仕入れに係る支払対価のうち、当該課税期間の末日においていまだ提供を受けていないサービスに対応するものをいいます。
 
 この前払費用についても、原則として実際にサービスの提供を受けた日の属する課税期間が仕入税額控除の時期となります。
 例えば、当期の決算日に1年分の事務所家賃を前払いしたとしても、実際にサービスの提供を受けるのは翌期になりますので、仕入税額控除の時期は翌期になります。

 ところが、前払費用のうち、所得税または法人税の取扱いによりその支出した年度において必要経費の額または損金の額に算入している短期前払費用については、特例としてその支出した日の属する課税期間が仕入税額控除の時期になります(消費税法基本通達11-3-8)。

※ 短期前払費用については、「短期前払費用の損金算入の注意点」をご参照ください。

3.建設仮勘定の仕入税額控除

 建設工事の場合は、通常、工事の発注から完成引渡しまでの期間が長期にわたり、一事業年度を超えることがあります。
 そのため、一般的には、工事代金の前払金や経費(設計料、資材購入費等)の額を一旦建設仮勘定として経理し、目的物の全部が引き渡されたときに、固定資産などに振り替える処理を行います。

 消費税法においては、建設仮勘定に計上されている金額であっても、原則として物の引渡しやサービスの提供があった日の属する課税期間において仕入税額控除を行うことになります。
 したがって、設計料に係るサービスの提供や資材の購入等については、原則として設計業務というサービスの提供が完了した日実際に資材の引渡しを受けた日の属する課税期間において仕入税額控除を行います。

 ただし、建設仮勘定として計上されている金額について、その都度課税仕入れとして仕入税額控除をしないで、工事の目的物のすべての引渡しを受けた日の属する課税期間において仕入税額控除を行う処理も特例として認められます(消費税法基本通達11-3-6)。

【原則処理】
(1) 設計料550万円支払時(当期)

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
建設仮勘定
(課税仕入10%)
5,500,000 現金預金 5,500,000

(2) 着手金1,100万円支払時(当期)

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
建設仮勘定
(不課税)
11,000,000 現金預金 11,000,000

(3) 中間金1,100万円支払時(当期)

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
建設仮勘定
(不課税)
11,000,000 現金預金 11,000,000

(4) 完成引渡し・残金1,100万円支払時(翌期)

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
建物
(不課税)
5,500,000 建設仮勘定
(不課税)
27,500,000
建物
(課税仕入10%)
33,000,000 現金預金 11,000,000

【特例処理】
(1) 設計料550万円支払時(当期)

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
建設仮勘定
(不課税)
5,500,000 現金預金 5,500,000

(2) 着手金1,100万円支払時(当期)

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
建設仮勘定
(不課税)
11,000,000 現金預金 11,000,000

(3) 中間金1,100万円支払時(当期)

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
建設仮勘定
(不課税)
11,000,000 現金預金 11,000,000

(4) 完成引渡し・残金1,100万円支払時(翌期)

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
建物
(課税仕入10%)
38,500,000 建設仮勘定
(不課税)
27,500,000
    現金預金 11,000,000

 建物の建設中に支払った着手金、中間金は前払金であり資産の引渡しを受けていないため、仕入税額控除をすることはできません。
 建物の引渡しを受けた時期に、仕入税額控除を行います。

 一方、設計料については、原則として設計業務というサービスの提供が完了した時期に仕入税額控除を行います(【原則処理】の(1))。
 ただし、建物の引渡しを受けた時点でまとめて仕入税額控除することも可能です(【特例処理】の(4))。