青色事業専従者給与を事業収入以外の資金で支払ったら否認されるのか?

 青色申告には様々な特典がありますが、その一つに青色事業専従者給与があります。

 個人事業者が生計を一にする親族に給与を支払っても必要経費にできませんが(所得税法第56条)、青色申告の承認を受けている個人事業者が青色事業専従者給与に関する届出書を税務署に提出している場合は、労務の対価として相当と認められる給与については必要経費にすることができます(所得税法第57条第1項)。

 税務調査の際には、青色事業専従者給与が労務の対価として相当か否かが争われるケースが多いと思われますが、税務署が「事業収入以外の資金(給与収入)から支払われていたこと」を否認理由の一つに挙げた裁決例があります。

 以下では、この税務署の否認理由について、国税不服審判所がどのように判断したのかを確認します。

1.必要経費算入の要件

 青色事業専従者給与については、所得税法第57条第1項に次のように規定されています(下線は筆者による)。

青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者と生計を一にする配偶者その他の親族(年齢15歳未満である者を除く。)で専らその居住者の営む前条に規定する事業に従事するもの(以下この条において「青色事業専従者」という。)が当該事業から次項の書類に記載されている方法に従いその記載されている金額の範囲内において給与の支払を受けた場合には、前条の規定にかかわらず、その給与の金額でその労務に従事した期間、労務の性質及びその提供の程度、その事業の種類及び規模、その事業と同種の事業でその規模が類似するものが支給する給与の状況その他の政令で定める状況に照らしその労務の対価として相当であると認められるものは、その居住者のその給与の支給に係る年分の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上必要経費に算入し、かつ、当該青色事業専従者の当該年分の給与所得に係る収入金額とする。

 青色事業専従者給与が必要経費に算入されるための要件について、所得税法第57条第1項は、前段で形式的要件(事業から支払われた給与であること)、後段で実質的要件(労務の対価として相当な金額であること)を挙げています。

 このうち、税務署が形式的要件を満たしていないことを否認理由の一つとして挙げたのが次の裁決例です。

2.平成27年4月13日裁決

(1) 事案の概要

 医師として複数の病院に勤務するとともに自ら診療所を営む納税者が妻に対して支払った青色事業専従者給与について、税務署は、次の理由から「当該事業から」給与の支払を受けた場合に該当しないため、事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないと主張しました。

① 事業収入より給与収入が約4倍多い
 青色事業専従者給与の原資は診療所の事業収入ではなく、勤務先病院からの給与収入である。

② 事業用口座から支払われていない
 事業用の預金口座ではなく、勤務先病院からの給与収入が振り込まれる口座から直接現金を引き出して支払っている。

 ①②の理由から、青色事業専従者給与は給与収入から支払われているため事業からの支払といえず、必要経費に算入できないとしました。

(2) 審判所の判断

 これに対し、審判所は次の理由から「青色事業専従者給与は事業から支払われた給与に該当する」として、税務署の主張を退けました。

① 青色事業専従者給与は勤務先病院の給与振込口座から現金出金されていたが、出金時または年末に「事業主借」勘定へ振替処理がされており、事業用とされた現金から支払われていた。

② 所得税法第57条は、事業収入以外から事業に流入した資金により青色事業専従者給与が支払われた場合に、当該支払を必要経費に算入することを認めない旨を規定したものではない。

 ①②の理由から、青色事業専従者給与は事業から支払われていたものと認められるため、税務署の主張には理由がないとしました。

 個人事業では、事業主の個人資金を事業に補填することは通常の処理であり、事業主借勘定に振り替えられ事業用とされた現金から支払われている以上、「事業から支払われた給与」に該当するということです。

 ただし、この裁決例では、所得税法第57条第1項後段の実質的要件(労働の対価として相当な金額であること)により、その青色事業専従者給与の大部分が否認されています。

固定資産税・不動産取得税の免税点の引き上げ(令和8年度税制改正)

 2026(令和8)年度税制改正で、固定資産税と不動産取得税の免税点が引き上げられています。
 以下では、改正前と改正後の免税点について確認します。

1.固定資産税の免税点

 固定資産税の免税点の見直しは、1991(平成3)年以来となります。

 固定資産税の課税対象(課税客体)は土地、家屋、償却資産ですが、今回の税制改正では、家屋に係る免税点が30万円(改正前は20万円)に、償却資産に係る免税点が180万円(改正前は150万円)に引き上げられています。

 土地に係る免税点については、1991(平成3)年よりも地価が下落していることから、従前の30万円で据え置きとなっています。

 改正前と改正後の固定資産税の免税点は、次のとおりです。改正後の免税点は、2027(令和9)年度以後の年度分の固定資産税について適用されます。

固定資産税の課税対象 改正前 改正後
土地 30万円 30万円
家屋 20万円 30万円
償却資産 150万円 180万円

※ 償却資産税に関連する参考記事は、次のとおりです。
・「償却資産税の申告対象となる資産とは?
・「償却資産の申告で迷いやすいケース
・「家屋と一体の建築設備は家屋と償却資産のどちらに該当するか?
・「事務所・店舗等を移転した場合の償却資産申告書の記載例
・「償却資産申告書の修正方法(修正申告)

2.不動産取得税の免税点

 不動産取得税の免税点の見直しは、1973(昭和48)年以来となります。

 不動産取得税の課税対象は土地と家屋です。不動産取得税は、土地や家屋の購入、贈与、家屋の建築などで不動産を取得(相続などの場合は除く)した際に、取得した人に対して課される税金です。

 今回の税制改正で、不動産取得税の免税点は、土地に係る免税点が16万円(改正前は10万円)に、家屋に係る免税点のうち建築に係るもの(建築分)は66万円(改正前は23万円)に、その他のもの(承継分:建築以外で取得)は34万円(改正前は12万円)に引き上げられています。

 改正前と改正後の不動産取得税の免税点は次のとおりです。改正後の免税点は、2026(令和8)年度以後の年度分の不動産取得税について適用されます。

不動産取得税の課税対象 改正前 改正後
土地 10万円 16万円
家屋(建築分) 23万円 66万円
家屋(承継分) 12万円 34万円

免税事業者からの仕入れに係る経過措置(8割控除の後は7割・5割・3割控除へ段階的に縮小)

 インボイス制度が始まって以降、中小企業・小規模事業者からは依然として「経理負担が重い」「消費税の負担が増えた」という声が多く聞かれます。
 こうした状況を踏まえ、2026(令和8)年度税制改正において仕入税額控除の経過措置が見直され、その適用期限が延長されました。
 今回は、免税事業者からの仕入に係る仕入税額控除の経過措置について、改正内容を確認します。

1.免税事業者からの仕入れに係る経過措置とは?

 インボイス制度の下では、インボイス(登録番号が記載された請求書等)が交付されない課税仕入れは、買い手側で仕入税額控除をすることができません。

 免税事業者はインボイスを発行することができませんので、免税事業者との取引の縮小や廃止を考える事業者が出てくる可能性があります。

 このような事態を避けるため、免税事業者からの仕入れであっても、一定期間は一定割合の控除を認める「経過措置」が設けられました。

 具体的には、インボイス制度が導入された2023(令和5)年10月1日から2026(令和8)年9月30日までの3年間は仕入税額の8割控除を認め、2026(令和8)年10月1日から2029(令和11)年9月30日までの3年間は5割控除を認めるというものでした。

期間 控除割合
2023(令和5)年10月1日~2026(令和8)年9月30日 8割
2026(令和8)年10月1日~2029(令和11)年9月30日 5割
2029(令和11)年10月1日~ 控除不可

2.改正後の控除割合の推移

 今回の税制改正により、控除割合の引下げペースが緩和され、次のように段階的に縮小されることとなりました。

期間 控除割合
2023(令和5)年10月1日~2026(令和8)年9月30日 8割
2026(令和8)年10月1日~2028(令和10)年9月30日 7割
2028(令和10)年10月1日~2030(令和12)年9月30日 5割
2030(令和12)年10月1日~2031(令和13)年9月30日 3割
2031(令和13)年10月1日~ 控除不可

 改正前は「8割→5割」という2段階の縮小が予定されていましたが、改正後は「8割→7割→5割→3割」という4段階の縮小になり、 買い手側の負担増のペースが緩和されました。

3.年間適用上限額の引下げ

 経過措置の濫用防止の観点から、経過措置の対象となる免税事業者ごとの課税仕入れの合計額に係る制限も改正されています。

 改正前は、一の免税事業者から行う経過措置の対象となる課税仕入れの額の合計額がその年又はその事業年度で税込み10億円を超える場合には、その超えた部分の課税仕入れについて経過措置は適用できませんでした。

 今回の改正で、税込み10億円という年間適用上限額が、税込み1億円に引き下げられました。

 この改正も、2026(令和8)年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます。

2割特例・3割特例を適用した課税期間の翌課税期間の簡易課税制度選択届出書はいつまでに提出すればいいか?(令和8年度税制改正)

 消費税の申告方法には、仕入控除税額について実額で計算する「本則課税」、業種ごとに決められたみなし仕入率を用いて仕入控除税額を計算する「簡易課税」、売上税額の2割を納税額として計算する「2割特例」、売上税額の3割を納税額として計算する「3割特例」があります。

 これらのうち、2割特例は2026(令和8)年9月30日の属する課税期間の末日を以って終了し、3割特例は個人事業者限定で2027(令和9)年分と2028(令和10)年分の消費税申告で適用することができます。

 2割特例と3割特例については事前の届出が不要で、適用を受ける旨を確定申告書に付記することで適用できますが、簡易課税は、原則として適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。

 しかし、2割特例や3割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間に簡易課税の適用を受ける場合は、「消費税簡易課税制度選択届出書の提出に係る特例」が設けられており、必ずしも適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに提出する必要はありません。

 2割特例・3割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間であれば、簡易課税制度選択届出書を事前(簡易課税の適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで)に提出していないときでも、簡易課税の適用を受けることができます。

 2割特例・3割特例の適用を受けたインボイス発行事業者が、その適用を受けた課税期間の翌課税期間に係る確定申告期限までに、その翌課税期間から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した簡易課税制度選択届出書を提出した場合には、その翌課税期間から簡易課税の適用を受けることができます(消費税簡易課税制度選択届出書の提出に係る特例)。

 例えば、、令和8年分まで2割特例で申告を行っていた個人事業者が、翌年分(令和9年分)は3割特例で申告しようとしていたところ、3割特例より簡易課税の方が有利であることが判明した場合は、令和9年分から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した簡易課税制度選択届出書を令和9年分の消費税確定申告期限(令和10年3月31日)までに提出すれば、令和9年分から簡易課税制度の適用を受けることができます。

 また、令和10年分まで3割特例で申告を行っていた個人事業者が、翌年分(令和11年分)の申告を簡易課税で行う場合は、令和11年分から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した簡易課税制度選択届出書を令和11年分の消費税確定申告期限(令和12年4月1日)までに提出すれば、令和11年分から簡易課税制度の適用を受けることができます。

赤文字部分が改正で変わった箇所です。改正前は、「その適用を受けた課税期間の翌課税期間の末日」とされていました(令和9年分の消費税申告を簡易課税で行う場合は、令和9年12月31日までに選択届出書を提出しないと、令和9年分の申告を簡易課税で行うことはできないとされていました)。

3割特例と簡易課税制度はどちらが有利か?

 2023(令和5)年10月1日に導入されたインボイス制度は、多くの事業者に影響を及ぼしています。
 特に、本来は免税事業者であるにもかかわらず、インボイス制度の導入を機にインボイス発行事業者の登録をして課税事業者となった事業者の負担は大きいといえます。

 このような事業者の税負担や事務負担を軽減するために、簡易課税制度と基本的には同じ計算構造である「2割特例」が設けられましたが、2026(令和8)年9月30日に期限を迎えます。

 そこで、引き続き小規模事業者の負担に配慮した「3割特例」が、2026(令和8)年度税制改正で設けられました。

 3割特例は個人事業者のみが適用可能(法人は適用不可)であり、かつ、2027(令和9)年分と2028(令和10)年分の消費税申告においてのみ適用可能となっています

 今回は、「3割特例」と簡易課税制度について、税負担と事務負担の両面から比較を行います。

※ 3割特例については、「2割特例が終われば個人事業者限定で3割特例あり(令和8年度税制改正)」をご参照ください。

1.納税額の計算上どちらが有利か?

 3割特例は売上税額の3割を納税額とするものですが、具体的には簡易課税制度と同様に以下のように計算します。

 消費税納税額=課税売上げに係る消費税額-課税売上げに係る消費税額×70%

 簡易課税制度におけるみなし仕入率は、事業区分に応じて下表のように定められていますが、3割特例は、簡易課税制度におけるみなし仕入率を事業区分にかかわらず一律に70%とすることと同義です。

 したがって、下表の第4種から第6種に該当する事業のうち1種類の事業のみを行う場合は、簡易課税制度よりも「3割特例」の方が納税額が少なくなり有利となります(第3種に該当する事業のみを行う場合は、簡易課税制度のみなし仕入率70%=3割特例の70%となり、両者の納税額は同額となります)。

事業区分 該当する事業 みなし仕入率
第1種事業 卸売業 90%
第2種事業 小売業、農林漁業(飲食料品の譲渡に係る事業) 80%
第3種事業 製造業、建築業、農林漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く)など 70%
第4種事業 第1・2・3・5・6種以外の事業(飲食店業など) 60%
第5種事業 運輸・通信業、金融・保険業、サービス業(飲食店業を除く) 50%
第6種事業 不動産業 40%

 第1種から第6種に該当する事業のうち2種類以上の事業を行う場合は、簡易課税制度のみなし仕入率と3割特例の70%を比較して、どちらか有利な方を適用します。

 例えば、第1種と第2種に該当する事業を行っている場合は、簡易課税制度のみなし仕入率は必ず80%以上となりますので、簡易課税制度の方が3割特例よりも納税額が少なく有利となります。

 一方、第5種と第6種に該当する事業を行っている場合は、簡易課税制度のみなし仕入率が50%を上回ることはありませんので、3割特例の方が簡易課税制度よりも納税額が少なく有利となります。

 つまり、みなし仕入率が70%を上回れば簡易課税制度が有利になり、下回れば3割特例が有利になります。

2.事務負担は3割特例が有利

 納税額の計算上、3割特例と簡易課税制度のどちらが有利になるかについては上記1のとおりですが、事務負担の軽減という点では、簡易課税制度よりも3割特例の方が有利になります。

 3割特例も簡易課税制度も納税額の計算にインボイスは必要ないという点では同じですが、3割特例は一律70%の仕入税額控除を行うため、簡易課税制度のようにどの事業に該当するかという事業区分の判定をする必要がありません。
 したがって、適用税率毎(軽減税率8%と標準税率10%)の売上税額を把握するだけで納税額の計算ができます。

 また、簡易課税制度の適用を受ける場合には、原則として事前に簡易課税制度選択届出書の提出が必要ですが、3割特例の場合は事前の届出は不要であり、申告書に設けられた記載欄に3割特例の適用を受ける旨を付記するだけです。

 さらに、3割特例には2年間の継続適用要件(いわゆる2年縛り)もありません。

 以上のことから、事務負担軽減という面では、3割特例の方が簡易課税制度よりも有利となります。

2割特例が終われば個人事業者限定で3割特例あり(令和8年度税制改正)

 インボイス制度の導入により、免税事業者から課税事業者へ移行した個人事業者の負担は大きく増えました。

 このような元・免税事業者(本来は免税事業者ですが取引先との関係などによりインボイス発行事業者の登録をして課税事業者になった人)の税負担や事務負担を軽減するために、インボイス制度導入と同時に「2割特例」が設けられましたが、2026(令和8)年9月30日で期限を迎えます。

 そこで、2割特例が終わった後の税負担・事務負担を軽減するために、2026(令和8)年度税制改正で「3割特例」が個人事業者限定で設けられました(法人は3割特例を適用できません)。

 今回は、新たに設けられた3割特例について確認します。

1.3割特例とは?

 3割特例とは、インボイス発行事業者の登録を受けたことにより免税事業者から課税事業者となった個人事業者が、令和9年分・令和10年分の消費税の確定申告において納付税額を売上税額の3割(仕入割合を7割とみなす)とすることができる特例です。

 例えば、売上に係る消費税額が100万円であれば、納付税額は100万円×30%=30万円となり、原則課税のような複雑な仕入税額控除の計算を行う必要はありません。

 また、仕入税額控除を行うにあたって、インボイスの保存が不要とされていることから、事務負担は大きく軽減されることになります

 一方、税負担については、軽減される場合もあればそうでない場合もあります(業種や設備投資の状況、仕入税額控除の方法(原則課税と簡易課税)により異なります)

※ 3割特例の事務負担と税負担については、「3割特例と簡易課税制度はどちらが有利か?」をご参照ください。

2.3割特例の適用要件

 3割特例を適用するための主な要件は次のとおりです。

(1) 個人事業者であること
(2) 基準期間の課税売上高が1,000万円以下であること
(3) 特定期間の課税売上高が1,000万円以下であること
(4) インボイス発行事業者の登録を受けていること など

※ 基準期間とは、適用を受ける年の2年前をいい、例えば令和9年分の申告においては令和7年、令和10年分の申告においては令和8年が基準期間となります。
 特定期間とは、適用を受ける年の前年1月~6月をいい、例えば令和9年分の申告においては令和8年1月~6月、令和10年分の申告においては令和9年1月~6月が特定期間となります。なお、特定期間の課税売上高に代えて、給与等支払額の合計額により判定することもできます。

 3割特例は、インボイス発行事業者への登録を機に免税事業者から課税事業者になった個人事業者に適用されます。
 そのため、次の場合は3割特例を適用できません(主なものを挙げます)。

(1) 法人
(2) インボイス発行事業者ではない課税事業者
(3) 基準期間の課税売上高が1,000万円を超える場合
(4) 調整対象固定資産や高額資産の取得により免税事業者とならない場合
(5) 課税期間の特例の届出により課税期間を短縮している場合 など

3.3割特例終了後

 3割特例は、インボイス制度によって新たに課税事業者となった個人事業者にとって、負担を大幅に軽減する強力な支援策です。
 特に、仕入税額控除の計算が煩雑な業種や、経理体制が十分でない小規模個人事業者にとっては、実務面でのメリットが大きい制度といえます。
 
 一方で、3割特例はあくまでも令和9年分・令和10年分に限定された時限措置です。
  その後の課税方式について、簡易課税を選択するか、原則課税に戻すかなど、事業の実態に応じた検討が必要です。 

 インボイス制度は、今後も段階的に見直しが続く可能性がありますので、最適な選択を行うためにも制度の変化を正しく理解することが重要です。

防衛特別所得税の創設と源泉徴収事務(令和8年度税制改正)

 2026(令和8)年度税制改正により、新たに「防衛特別所得税」が創設され、同時に、東日本大震災の復興財源として課されてきた復興特別所得税の税率が引き下げられ、期間が延長されました。

 これらの改正は、いずれも2027(令和9)年1月以後に支払われる報酬料金や給与等から適用されます。

 以下では、新設された防衛特別所得税と改正された復興特別所得税について確認します。

1.防衛特別所得税とは

 新設された防衛特別所得税は、所得税の源泉徴収義務者が所得税を徴収する際に、源泉徴収すべき所得税の額の1%を追加で徴収する仕組みで、その所得税の法定納期限までに、その所得税および復興特別所得税と併せて国に納付しなければならないものです。

 対象となるのは、給与・報酬・利子・配当など、通常の源泉徴収の対象となる所得です。

2.復興特別所得税の見直し

 復興特別所得税については、次の2点が変更されています。

  改正前 改正後
税率 2.1% 1.1%
課税期間 令和19年12月31日まで 令和29年12月31日まで

3.合計税率は2.1%で変わらない

 今回の改正のポイントは、 防衛特別所得税(1%)+復興特別所得税(1.1%)=合計2.1% となり、改正前と合計税率は同じという点です。

 そのため、源泉徴収税額の計算方法自体は、これまでと変わりません。

 ただし、復興特別所得税の課税期間が10年延長されましたので、長い目で見れば増税になります。

4.報酬料金の源泉徴収

 報酬料金から源泉徴収すべき所得税・防衛特別所得税・復興特別所得税の額は、次のとおりです。

源泉徴収税額※1=支払金額等×合計税率(%)※2

※1 算出した源泉徴収税額に1円未満の端数があるときは、その端数を切り捨てます。

※2 合計税率は、所得税率(%)×102.1%で算出します。所得税率に応じた合計税率は、具体的には次のようになります。

所得税率(%) 5 10 15 16 18 20
合計税率(所得税率(%)×102.1%) 5.105 10.21 15.315 16.336 18.378 20.42

 例えば、報酬料金として888,888円を支払った場合(所得税率を10%とします)の源泉徴収税額は、888,888円(支払金額)×10.21%(合計税率)=90,755.4648円(算出税額)→90,755円(1円未満切り捨て)となります。

5.給与等の源泉徴収と年末調整

 給与や賞与については、2027(令和9)年分の新しい源泉徴収税額表に基づき、所得税・防衛特別所得税・復興特別所得税の合計額を徴収します。

 年末調整も同様に、 年調所得税額 × 102.1% で計算した合計額で精算します。

※ 令和9年分の源泉徴収税額表は、令和8年8月末頃に国税庁ホームページに掲載される予定です。

令和8年度税制改正で年収の壁はこのように変わった!

 2026(令和8)年度税制改正による所得税の基礎控除や給与所得控除の引き上げに伴い、配偶者控除や扶養控除などの所得要件も見直されています※。

 以下では、令和8年度税制改正を踏まえて、令和8年分と令和9年分の給与・賞与について適用される年収の壁について確認します。

※ 令和8年度税制改正の内容については、「基礎控除・給与所得控除の引き上げと源泉徴収事務・年収の壁への影響(令和8年度税制改正)」、「扶養控除・配偶者(特別)控除・ひとり親控除・特定親族特別控除の所得要件の見直し(令和8年度税制改正)」をご参照ください。

1.106万円の壁(社会保険)

 令和8年度税制改正は、以下の社会保険制度上の年収の壁である106万円(105.6万円)の壁には影響ありません。

 下記①~⑤の条件を満たす場合は、パートやアルバイトで働く人は社会保険の扶養から外れ、自ら国民健康保険・国民年金の被保険者となり保険料を負担することになります(関連記事「従業員51人以上の会社で働くパート・アルバイトの社会保険加入義務(令和6年10月1日~)」)。

 ①従業員が51人以上の会社で働いている(2024(令和6)年10月以降)※1
 ②週の労働時間が20時間以上30時間未満である
 ③月収8.8万円以上(年収106万円以上)である※2
 ④2か月を超える雇用の見込がある
 ⑤学生でない(休学中・夜間学生は除く)

※1 2025(令和7)年6月13日に成立した年金制度改正法により、2027(令和9)年10月から、「企業規模要件」が段階的に撤廃されます。

※2 2025(令和7)年6月13日に成立した年金制度改正法により、法律の公布から3年以内に「賃金要件」は撤廃されます。2026(令和8)年10月に賃金要件は撤廃される予定ですので、「106万円の壁」はなくなる見込みです。

2.119万円の壁(住民税)

 令和8年度税制改正で給与所得控除の最低保障額が65万円から74万円に引き上げられたことにより、住民税が非課税となる年収が119万円に変わりました(令和9年度・10年度の住民税について適用)。

 住民税は、所得金額に応じて課税される「所得割と、定額で課税される「均等割」から成りますが、住んでいる地域や家族構成によって住民税が非課税となる所得金額は異なります。

 例えば、兵庫県宝塚市で均等割が非課税となる所得は、次の算式で算出します。

 35万円×(同一生計配偶者+扶養親族数+本人)+10万円+21万円(同一生計配偶者または扶養親族を有する場合のみ)

 単身の場合は、35万円×1+10万円=45万円が非課税となる所得であり、給与収入に置き換えると119万円(45万円+給与所得控除74万円)となります。

 したがって、年収が119万円を超えると住民税がかかります(自治体によって異なりますのでご注意ください)。

3.130万円の壁(社会保険)

 令和8年度税制改正は、上記1と同様に、社会保険制度上の年収の壁である130万円の壁には影響ありません。

 130万円の壁とは、本人の年収が130万円以上になると、パートやアルバイトで働く人が自ら国民健康保険・国民年金の被保険者となり、社会保険の扶養から外れる年収ラインのことをいいます。

 なお、年収130万円以上であるかどうかを判定する際の年収の取扱いが、2026(令和8)年4月1日から変わっています。詳細は、「令和8年4月1日から「130万円の壁」の年間収入は労働契約の内容で判定されます」をご参照ください。

4.136万円の壁(所得税:配偶者控除・扶養控除)

 令和8年度税制改正で基礎控除と給与所得控除の最低保障額が引き上げられたことにより、配偶者控除と扶養控除を適用できる年収の壁も136万円に変わっています。

 改正により、配偶者控除や扶養控除の対象となる合計所得金額が58万円以下から62万円以下に変わりましたので、配偶者や扶養親族の年収が136万円以下であれば、配偶者控除や扶養控除の対象となります(合計所得金額62万円+給与所得控除74万円=給与収入136万円)。

5.150万円の壁(社会保険)

 2025(令和7)年度税制改正によって、所得税における19歳以上23歳未満の扶養親族(以下「大学生年代」といいます)の特定扶養控除の要件の見直し等が行われたことを踏まえ、社会保険制度についても、扶養認定日が2025(令和7)年10月1日以降で、扶養認定を受ける人(被扶養者)が19歳以上23歳未満の場合(被保険者の配偶者を除く)における年収の壁が「年間収入150万円未満」に変わりました

 2026(令和8)年度税制改正が行われましたが、現時点でこの150万円の壁について変更はありません。

 上記3でみたように、年収が130万円以上になると社会保険の扶養から外れますが、大学生年代については、年収が130万円以上となっても150万円未満であれば社会保険の扶養に入ることができます。

 年収が150万円以上になると、大学生年代が自ら国民健康保険・国民年金の被保険者となり保険料を負担することになります。

 150万円の壁とは、社会保険の扶養に入れるかどうかの年収の分岐点のことをいいます。

※ 社会保険の150万円の壁については、「令和7年10月1日から19歳以上23歳未満の人の健康保険の被扶養者認定基準が年収150万円未満に変わります」をご参照ください。

6.159万円の壁(所得税:特定親族特別控除)

 上記4でみたように、扶養親族の年収が136万円を超えると扶養控除の対象から外れますので、年齢19歳以上23歳未満の扶養親族について、63万円の扶養控除を適用することができません。

 しかし、大学生年代については、年収が136万円を超えても特定親族特別控除を適用することができ、年収が159万円以下であれば、特定親族特別控除について満額の63万円を適用することができます。

 さらに、大学生年代の年収が159万円を超えても197万円以下であれば、納税者本人は段階的に逓減する特定親族特別控除を受けることができます。

7.163万円の壁(所得税:勤労学生控除)

 令和8年度税制改正で基礎控除と給与所得控除の最低保障額が引き上げられたことにより、勤労学生本人が受けられる勤労学生控除の合計所得金額の要件が、従前の85万円以下から89万円以下に変わりました。

 したがって、勤労学生本人の給与収入が163万円以下であれば、勤労学生控除27万円を受けることができます(89万円+給与所得控除74万円=給与収入163万円)。

8.169万円の壁(所得税:配偶者特別控除)

 上記4でみたように、配偶者の年収が136万円を超えると配偶者控除の対象から外れますが、配偶者特別控除を適用することができます。
 この配偶者特別控除について満額の38万円を適用できる年収の壁が、従前の160万円から169万円に変わりました。

 満額の38万円を適用できる合計所得金額の上限は従前どおりの95万円ですが、給与所得控除最低保障額が74万円に引き上げられたことにより、配偶者の年収が169万円以下であれば、納税者本人は配偶者特別控除38万円の適用を受けることができます(ただし、納税者の合計所得金額が900万円以下の場合です)。

 また、配偶者の年収が169万円を超えても207万円以下であれば、納税者本人は段階的に逓減する配偶者特別控除を受けることができます。

9.178万円の壁(所得税)

 税制改正で基礎控除と給与所得控除の最低保障額が引き上げられたことにより、所得税が非課税となる年収が178万円に変わりました。

 2025(令和7年)度税制改正で、所得税がかからない年収の壁として広く知られていた103万円の壁が160万円の壁に変わりましたが、さらに2026(令和8)年度税制改正により178万円の壁に変わりました。

 給与所得者の年収が178万円以下であれば、給与所得者本人に所得税はかかりません(給与所得控除74万円+基礎控除104万円=給与収入178万円)

10.197万円の壁(所得税:特定親族特別控除)

 大学生年代の年収が159万円を超えると段階的に特定親族特別控除が減っていき、年収197万円を超えると特定親族特別控除はゼロとなります(上記6)。

 197万円の壁とは、特定親族特別控除が適用されるか否かの年収の分岐点のことをいいます。

11.207万円の壁(所得税:配偶者特別控除)

 配偶者の年収が169万円を超えると段階的に配偶者特別控除が減っていき、年収207万円を超えると配偶者特別控除はゼロとなります(上記8)。

 207万円の壁とは、配偶者特別控除が適用されるか否かの年収の分岐点のことをいいます。

扶養控除・配偶者(特別)控除・ひとり親控除・特定親族特別控除の所得要件の見直し(令和8年度税制改正)

 2026(令和8)年度税制改正において、所得税の基礎控除や給与所得控除の引き上げが行われました
 これに伴い、扶養控除、配偶者控除、配偶者特別控除、ひとり親控除、特定親族特別控除の適用を受ける場合の所得要件も見直されています。
 以下では、令和8年分以後の所得税で適用される扶養控除等の所得要件について確認します。

※ 基礎控除・給与所得控除の引き上げについては、「基礎控除・給与所得控除の引き上げと源泉徴収事務・年収の壁への影響(令和8年度税制改正)」をご参照ください。
 なお、令和8年度税制改正により、いわゆる「年収の壁」も変わっています。年収の壁については、「令和8年度税制改正で年収の壁はこのように変わった!」をご参照ください。

1.扶養控除・配偶者控除・ひとり親控除の所得要件

 令和8年度税制改正で、扶養控除・配偶者控除・ひとり親控除の対象となる扶養親族等の所得要件(合計所得金額)が、改正前の58万円以下(給与収入だけの場合は年収123万円以下)から62万円以下(給与収入だけの場合は年収136万円以下)に変わりました。
 ただし、所得要件以外の要件(同一生計である、事業専従者ではないなど)は変わっていません

扶養親族等の区分 所得控除の種類 合計所得金額※1
扶養親族 扶養控除 62万円以下(136万円以下※2
同一生計配偶者 配偶者控除
ひとり親の生計を一にする子 ひとり親控除

※1 ひとり親の生計を一にする子の所得要件は、総所得金額等の合計額で判定します。総所得金額等については、「合計所得金額』『総所得金額』『総所得金額等』の違いとは?」をご参照ください。
※2 カッコ内の金額は、令和8・9年分の収入が給与だけの場合の収入金額です。

 上記の所得要件を満たす扶養親族、同一生計配偶者、ひとり親の生計を一にする子がいる場合は、納税者本人の所得控除額は次のようになります。

扶養親族等の区分 所得控除の種類 所得控除額
一般の扶養親族(16歳以上) 扶養控除 38万円
特定扶養親族(19歳以上23歳未満) 63万円
老人扶養親族(70歳以上の同居老親等) 58万円
老人扶養親族(70歳以上の同居老親等以外) 48万円
同一生計配偶者(70歳未満) 配偶者控除 38万円
同一生計配偶者(70歳以上) 48万円
ひとり親の生計を一にする子 ひとり親控除 35万円

※ 扶養親族(一般・特定・老人)は、本人と同一生計であることが必要です。同一生計については、「所得控除における『生計を一にする』の判定基準」をご参照ください。
※ 配偶者控除は、納税者本人の合計所得金額が900万円以下の場合の控除額です。

2.配偶者特別控除の所得要件

 配偶者の合計所得金額が62万円以下の場合は配偶者控除を適用できますが、62万円を超えた場合は配偶者特別控除を適用することができます。

 この配偶者特別控除の対象となる配偶者の所得要件が、改正前は58万円超133万円以下(給与収入だけの場合は年収123万円超201万5,999円以下)でしたが、改正後は62万円超133万円以下(給与収入だけの場合は年収123万円超207万円以下)に変わりました。

 この所得要件を満たす同一生計配偶者がいる場合は、納税者本人の配偶者特別控除額は次のようになります。

配偶者の合計所得金額 本人の合計所得金額
900万円以下 900万円超950万円以下 950万円超1,000万円以下
62万円超95万円以下(136万円超169万円以下) 38万円 26万円 13万円
95万円超100万円以下(169万円超 174万円以下) 36万円 24万円 12万円
100万円超105万円以下(174万円超179万円以下) 31万円 21万円 11万円
105万円超110万円以下(179万円超184万円以下) 26万円 18万円 9万円
110万円超115万円以下(184万円超189万円以下) 21万円 14万円 7万円
115万円超120万円以下(189万円超194万円以下) 16万円 11万円 6万円
120万円超125万円以下(194万円超199万円以下) 11万円 8万円 4万円
125万円超130万円以下(199万円超204万円以下) 6万円 4万円 2万円
130万円超133万円以下(204万円超207万円以下) 3万円 2万円 1万円
133万円超(207万円超) 0円 0円 0円

※カッコ内の金額は、令和8・9年分の収入が給与だけの場合の収入金額です。

3.特定親族特別控除の所得要件

 19歳以上23歳未満の扶養親族の合計所得金額が62万円以下の場合は扶養控除を適用できますが、62万円を超えた場合は特定親族特別控除を適用することができます。
 
 令和7年度税制改正で新設された特定親族特別控除についても、令和8年度税制改正で所得要件が見直されています。

 特定親族とは、本人と生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族(配偶者、青色事業専従者として給与の支払を受ける人及び白色事業専従者を除きます)で合計所得金額が62万円超(改正前は58万円超)123万円以下(給与収入だけの場合は年収136万円超197万円以下(改正前は123万円超188万円以下)の人をいいます。

 この特定親族がいる場合は、納税者本人の特定親族特別控除額は次のようになります。

特定親族の合計所得金額 特定親族特別控除額
62万円超 85万円以下 (136万円159万円以下) 63万円
85万円超 90万円以下(159万円超 164万円以下) 61万円
90万円超 95万円以下(164万円超 169万円以下) 51万円
95万円超 100万円以下(169万円超 174万円以下) 41万円
100万円超 105万円以下(174万円超 179万円以下) 31万円
105万円超 110万円以下(179万円超 184万円以下) 21万円
110万円超 115万円以下(184万円超 189万円以下) 11万円
115万円超 120万円以下(189万円超 194万円以下) 6万円
120万円超 123万円以下(194万円超 197万円以下) 3万円
123万円超(197万円超) 0円

※カッコ内の金額は、令和8・9年分の収入が給与だけの場合の収入金額です。

基礎控除・給与所得控除の引き上げと源泉徴収事務・年収の壁への影響(令和8年度税制改正)

 2025(令和7)年度税制改正において、所得税の基礎控除と給与所得控除の引き上げが行われましたが、2026(令和8)年度税制改正において、さらにその範囲が拡大されました。

 この改正は、原則として2026(令和8)年分以後の所得税から適用されます。

 以下では、基礎控除と給与所得控除の引き上げの内容と、これらの引き上げが2026(令和8)年の源泉徴収事務や、いわゆる年収の壁に与える影響について確認します

※ 年収の壁については、「令和8年度税制改正で年収の壁はこのように変わった!」をご参照ください。

1.基礎控除の引き上げ

 令和8年度税制改正により、合計所得金額が2,350万円以下である個人の基礎控除額が58万円から4万円引き上げられ、62万円となりました。

 さらに、令和8年分および令和9年分に限り、基礎控除の特例(時限措置)として、合計所得金額に応じて基礎控除額の上乗せが行われています。

 なお、基礎控除の改正は所得税のみの改正であり、住民税の基礎控除額は従前通りの43万円です。

 改正後の所得税の基礎控除額は、下表のとおりです。

合計所得金額
※カッコ内は令和8・9年分の収入が給与だけの場合の収入金額※2
基礎控除額
改正前 令和8・9年分 令和10年分以後
132万円以下
(206万円以下)
95万円 104万円※1 99万円※1
132万円超~336万円以下
(206万円超~475万1,999円以下)
88万円 62万円
336万円超~489万円以下
(475万1,999円超~665万5,556万円以下)
68万円
489万円超~655万円以下
(665万5,556円超~850万円以下)
63万円 67万円※1
655万円超~2,350万円以下
(850万円超~2,545万円以下)
58万円 62万円
2,350万円超~2,400万円以下
(2,545万円超~2,595万円以下)
48万円※3
2,400万円超~2,450万円以下
(2,595万円超~2,645万円以下)
32万円※3
2,450万円超~2,500万円以下
(2,645万円超~2,695万円以下)
16万円※3
2,500万円超
(2,695万円超)
0円※3

※1 基礎控除の特例として、62万円にそれぞれ42万円、5万円、37万円を加算した金額となります(この加算は居住者についてのみ適用があります)。
※2 特定支出控除や所得金額調整控除の適用がある場合は、表の金額とは異なります。
※3 合計所得金額2,350万円超の場合の基礎控除額に改正はありません(合計所得金額については、「『合計所得金額』『総所得金額』『総所得金額等』の違いとは?」をご参照ください)。

2.給与所得控除の引き上げ

 令和8年度税制改正により、給与所得控除額の最低保障額が65万円から69万円に引き上げられ、かつ、令和8年分および令和9年分に限り5万円が上乗せされます。

 給与所得控除の改正は、所得税だけではなく住民税にも適用されます(令和8年分以後の所得税及び令和9年度以後の住民税)。

 改正後の給与所得控除額は、下表のとおりです。

給与の収入金額(A) 改正前 令和8・9年分 令和10年分以後
190万円以下 65万円 74万円 A×30%+8万円(69万円未満となる場合は69万円)
190万円超~220万円以下 A×30%+8万円
220万円超~360万円以下 A×30%+8万円 同左 同左
360万円超~660万円以下 A×20%+44万円
660万円超~850万円以下 A×10%+110万円
850万円超 195万円(上限)

 令和8年分および令和9年分の給与等の収入金額が69万1,000円以上220万円未満である場合には、その給与等に係る給与所得の金額については、上表にかかわらず、次の金額とすることとされました。

給与等の収入金額 69万1,000円以上74万1,000円未満 74万1,000円以上219万1,000円未満 219万1,000円以上219万3,000円未満 219万3,000円以上219万6,000円未満 219万6,000円以上220万円未満
給与所得の金額 なし その収入金額-74万円 145万1,000円 145万3,000円 145万6,000円

 なお、令和8年度税制改正により、基礎控除額と給与所得控除額は、物価上昇に連動して2年ごとに見直されることが想定されています。

3.源泉徴収事務と年収の壁への影響

 上記1及び2の税制改正は、原則として、2026(令和8)年分以後の所得税及び2027(令和9)年度以後の住民税について適用されます。

 そのため、2026(令和8)年12月に行う年末調整など、2026(令和8)年12月以後の源泉徴収事務に変更が生じますが、11月までの給与の源泉徴収事務に変更は生じません。

 したがって、2026(令和8)年分の給与の源泉徴収事務においては、2026(令和8)年12月に行う年末調整の際に、改正後の基礎控除額と「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」に基づいて1年間の税額を計算し、改正前の「源泉徴収税額表」によって計算した源泉徴収税額との精算を行います。

 なお、基礎控除と給与所得控除の改正により、所得税が課税されない給与収入(いわゆる年収の壁)が、令和7年分の160万円(基礎控除95万円+給与所得控除65万円)から、令和8年分は178万円(基礎控除104万円+給与所得控除74万円)に変わります。

 また、給与所得控除の改正により、住民税が課税されない給与収入については、令和8年度の110万円(45万円+給与所得控除65万円)から、令和9年度は119万円(45万円+給与所得控除74万円)に変わります(各自治体によって異なります)。

 これらの年収の壁の詳細については、「令和8年度税制改正で年収の壁はこのように変わった!」をご参照ください。