個人住民税を普通徴収することが認められる場合とは?

 個人の都道府県民税と市区町村民税をあわせて一般に「個人住民税」といい、事業主(給与支払者)には、従業員の個人住民税を特別徴収することが義務付けられています。

 個人住民税の特別徴収とは、事業主が給与を支払う際に、所得税と同様に毎月の給与から個人住民税を天引きし、従業員に代わって毎月納付する制度です。

 事業主には個人住民税の特別徴収義務がありますので、事業主や従業員の希望により普通徴収(従業員自らが納付書で年4回に分けて納付すること)を選択することはできません。

 しかし、一定の要件に該当する場合は、個人住民税を普通徴収することも認められています。
 今回は、個人住民税の特別徴収制度の仕組みと普通徴収の要件について確認します。

1.特別徴収制度の仕組み

 個人住民税の特別徴収の事務の流れは、次のとおりです。

出所:兵庫県ホームページ「パンフレット」

(1) 給与支払報告書の提出(図表①)

 事業主は、毎年1月31日までに従業員が1月1日現在に居住している市町村に給与支払報告書を提出します。

(2) 特別徴収税額決定通知書の送付(図表③④)

 個人住民税の徴収期間は、6月から翌年5月までの12か月間です。毎年5月31日までに、従業員が居住している市町村から事業主あてに「特別徴収税額決定通知書(特別徴収義務者用・納税義務者用)」が送付されます
 この通知書に年税額と月割額が記載されていますので、6月に支給する給与から特別徴収(給与から天引き)を開始します。

納税義務者用の通知書には、通知した税額の算出根拠となる所得金額や所得控除の適用状況等が記載されています。
 これらの個人情報を保護するため、個人情報保護シールを貼付した状態で送付されますので、シールを貼付した状態で従業員に渡し、必ず従業員本人がシールをはがして内容を確認するようにしてください。

(3) 納期と納付方法(図表⑤⑥)
 
 事業主は給与から天引きした個人住民税を、翌月の10日までに市町村から送付される納付書により納付します。

 なお、従業員が常時10名未満の事業主は、市町村への申請により年12回の納期を年2回(第1回:12月10日、第2回:6月10日)とする「納期の特例」の適用を受けることができます。

2.普通徴収の要件と手続き

 原則として従業員の個人住民税は特別徴収しなければなりませんが、下記の要件に該当する従業員については、給与支払報告書を提出する際に「普通徴収切替理由書兼仕切紙」を添付することで、該当者の個人住民税を普通徴収とすることができます。

a.退職者または給与支払報告書を提出した年の5月31日までの退職予定者
b.給与支払額が少なく、個人住民税を特別徴収しきれない人
c.給与の支払が不定期(毎月支給されていない)な人
d.他の事業者から支払われる給与から特別徴収されている人(乙欄適用者)


 普通徴収とするための具体的な手続きは、上記のa.~d.に該当する従業員がいる場合、給与支払報告書提出時に「普通徴収切替理由書兼仕切紙」を添付のうえ、給与支払報告書個人別明細書摘要欄に略号(a~d)を記載します

 上記のa.~d.に該当する旨を申し出ない場合は、普通徴収の要件に該当するかどうかを市町村で確認できないため、特別徴収となります。

エルタックス(eLTAX)で提出する場合も、「普通徴収」欄へのチェックに加え、摘要欄に略号(a~d)を記載する必要があります。

出所:兵庫県ホームページ

ホステス等に支払う報酬・料金の源泉徴収税額の計算方法

 ホステス等に報酬・料金を支払うときは、所得税および復興特別所得税(以下「所得税等」といいます)を源泉徴収しなければなりません。

 業務委託契約を締結したホステス等に支払う報酬・料金は原則として外注費に該当し、このようなホステス等の報酬に係る所得税等の源泉徴収税額の計算方法は、源泉徴収税額表を用いて計算する給与や賞与の場合と異なります。

 以下では、ホステス等に支払う報酬・料金の源泉徴収税額の計算方法を確認します。

ただし、その内容が給与や賞与に該当するものについては、外注費(事業所得や雑所得)ではなく給与所得として源泉徴収を行います。
 外注費と給与のどちらに該当するかについては、「外注費か給与か・・・国税庁の判断基準」をご参照ください。

1.ホステス等の報酬とは?

 ホステス等に支払う報酬・料金として、所得税等を源泉徴収しなければならないのは、次に該当する場合です。

(1) バーやキャバレーの経営者が、そこで働くホステスなどに報酬・料金を支払う場合

(2) いわゆるバンケットホステス・コンパニオン等を、ホテル、旅館その他飲食をする場所に派遣して接待等の役務の提供を行わせることを内容とする事業を営む者が、そのバンケットホステス・コンパニオン等に報酬・料金を支払う場合

バンケットホステス・コンパニオン等とは、ホテル、旅館、飲食店その他飲食をする場所で行われるパーティー等の飲食を伴う会合において、専ら客の接待等の役務の提供を行うことを業務とする人をいいます。

2.ホステス報酬の源泉徴収税額の計算方法

(1) 月払いの場合

 源泉徴収すべき所得税等の額は、報酬・料金の額から同一人に対し1回に支払われる金額について、5千円にその報酬・料金の「計算期間の日数」を乗じて計算した金額(同月中に給与等の支払がある場合には、その計算した金額からその計算期間の給与等の支給額を控除した金額)を差し引いた残額に10.21パーセントの税率を乗じて算出します。
(注)求めた税額に1円未満の端数があるときは、これを切り捨てます。

 なお、「計算期間の日数」とは、「営業日数」または「出勤日数」ではなく、ホステス報酬の支払金額の計算の基礎となった期間の初日から末日までの全日数です。

 源泉徴収税額={(ホステス報酬-5千円×計算期間の日数)-給与等の支給額}×10.21%

 具体的には、以下のように計算します。

〈計算例〉
・ホステス報酬の支払金額:30万円
・ホステス報酬の支払金額の計算の基礎期間:7月1日から7月31日(31日間)
・営業日数:25日間
・出勤日数:10日間
・7月中の給与支給額:なし

 源泉徴収税額=(30万円-5千円×31日)×10.21%=14,804円(1円未満切り捨て)

(2) 日払いの場合

 上記(1)の計算例は、ホステス報酬を月払い(月末締・翌月10日払い等)することを前提としていましたが、ホステス報酬をその日のうちに支払う日払いのケースもあります。

 この場合の源泉徴収税額は、どのように計算するのでしょうか?

 源泉徴収すべき所得税等の額は、報酬・料金の額から同一人に対し1回に支払われる金額について計算することとなっていますので、日払いの場合の「計算期間の日数」は1日となり、報酬を支給する毎に源泉徴収をしなければなりません。

 源泉徴収税額={(ホステス報酬-5千円)-給与等の支給額}×10.21%

 具体的には、以下のように計算します。

〈計算例〉
・ホステス報酬の支払金額:3万円
・ホステス報酬の支払金額の計算の基礎期間:7月1日から7月31日(31日間)
・営業日数:25日間
・出勤日数:1日(7月7日)
・7月7日の給与支給額:なし

 源泉徴収税額=(3万円-5千円)×10.21%=2,552円(1円未満切り捨て)

3.留意事項

 ホステス等に支払った報酬・料金から源泉徴収した所得税等は、支払った月の翌月10日までに納付しなければなりません。
 支払者が源泉所得税の納期の特例の適用を受けている場合であっても、ホステス等に支払う報酬・料金については、納期の特例の対象とはなりませんのでご注意ください。

 また、ホステス等の報酬・料金について、同一人に対するその年中の支払金額の合計額が50万円を超えるものについては、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を税務署に提出しなければなりません。

※ 関連記事:「外交員報酬に係る源泉徴収税額の計算方法」、「セミナー講師料を支払った場合の源泉徴収

事前確定届出給与を減額支給した場合に損金不算入となる理由(東京地裁令和6年2月21日判決・令和4年(行ウ)第566号)

 臨時的な役員賞与は損金算入が認められませんが、事前確定届出給与の制度を利用すれば、役員賞与であっても届け出たとおりの支給をすれば損金算入が可能です※1

 事前確定届出給与の制度を利用するには、一定の日までに納税地の所轄税務署長に対して、あらかじめ確定している支給時期、支給金額のほか必要事項を記載した届出をしなければなりません※2

 もし、所轄税務署長へ届け出た支給額と実際の支給額が異なる場合には、事前確定届出給与に該当しないこととなり、損金不算入となります。

 例えば、所轄税務署長に届け出た支給額よりも多く支給した場合には、超過部分だけではなく、届出支給額部分も含めた支給額全額が損金不算入となります。

  また、届け出た支給額よりも少なく支給した場合にも、当該支給額全額が損金不算入となります。

 少なく支給した場合は、届け出た支給額との間に未払部分が生じますが、たとえ、未払部分をその後一括して又は数回に分割して支給し、当該支給額との合計が届け出た支給額と一致したとしても、当該支給額全額が損金不算入となります。

 事前確定届出給与は、支給時期及び支給金額が事前に確定していることが要件となっているため、超過額や未払額が発生するということは事前に確定していなかったということであり、したがって事前確定届出給与には該当せず、損金不算入となります。

 これらのことを明確に示した裁判例が、以下の東京地裁令和6年2月21日判決(令和4年(行ウ)第566号)です。

 原告の定時株主総会において、代表取締役2名に対してそれぞれ2,800万円の賞与を支給することが決議され、その決議内容に関する届出を原告は税務署に対して行っていましたが、実際に支給されたのがそれぞれ2,500万円であったため、税務署は事前確定届出給与に該当しないとして損金算入を認めず、東京地裁も税務署と同様の判断を下しています。

 東京地裁はこの判決において、「事前に支給時期及び支給額が株主総会等において確定的に定められ、事前確定届出給与に関する届出がされたにもかかわらず、届けられた金額と異なる金額の役員賞与が支払われた場合に無制限に損金への算入を認めることとすれば、例えば、支給額を高額に定めて事前確定届出給与に関する届出を行うことによりあらかじめ枠取りをしておき、その後、上記のとおり届出をした金額より減額した額を支給するなどして損金の額をほしいままに操作し、法人税の課税を回避するなど、事前確定届出給与制度を設けた趣旨を没却し、課税の公平を害することになりかねない」として、支給額の合計額5,000万円を損金の額に算入することはできないと判示しています。

 また、原告は、実際の支給額と届け出た支給額との差額(各300万円)については、役員給与の一部が未払の状態にすぎないなどと主張しましたが、東京地裁は、「未払賞与」を計上していない原告の会計処理に照らしてもにわかに認め難く、仮に一部が未払の状態にすぎないとしても、法34条1項2号の要件を満たすとはいえないなどとして、原告の主張を斥けています。

※1 届け出たとおりの支給をしなかった場合については、「事前確定届出給与(複数回支給)を届出通りに支給しなかった場合」、「事前確定届出給与(複数人支給)を特定の役員だけ届出通りに支給しなかった場合」、「事前確定届出給与を支給しなかった場合のリスクを回避するための手続き」をご参照ください。

※2 届出書の具体的な書き方については、「『事前確定届出給与に関する届出書』等の書き方と記載例」をご参照ください。

中小企業者等の賃上げ促進税制《令和6年4月1日~令和9年3月31日開始事業年度》

 中小企業向け賃上げ促進税制は、青色申告書を提出している中小企業者等(下記2(3)参照)が、前年度より給与等の支給額を増加させた場合に、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です。

 以下では、賃上げ促進税制に関する2024(令和6)年度税制改正の概要と、改正後の中小企業向け賃上げ促進税制の内容について確認します。

1.令和6年度税制改正の概要

 2024(令和6)年税制改正では、賃上げ促進税制の強化がはかられ、これまでの大企業向けと中小企業向けの2制度から、新たに中堅企業向けの制度が新設され、3制度となりました。

 中小企業向けの措置については、5年間の繰越税額控除制度が新設され、教育訓練費の増加があった場合の税額控除率10%の上乗せ措置に対する要件なども見直されています。

 上乗せ措置については、プラチナくるみん認定を受けている場合などは、さらに税額控除率を5%上乗せできる要件が新設されています。

 改正後の中小企業向け賃上げ促進税制の適用要件と税額控除率は、下図のとおりです。

 必須要件については改正前と変更はありませんが、上乗せ要件①については「教育訓練費が5%以上増加していること」(改正前は10%以上)の他に、「教育訓練費が雇用者給与等支給額の0.05%以上であること」が必要となっています。

 また、上乗せ要件②が新設され、要件を満たせば税額控除率を5%上乗せできるようになったことから、税額控除率は最大で45%(30%+10%+5%)となっています。

出所:中小企業庁ホームページ

2.中小企業向け賃上げ促進税制の内容

 2024(令和6)年度税制改正による中小企業向け賃上げ促進税制の内容は、次のとおりです。

(1) 制度概要

 中小企業者等で青色申告書を提出するものが、国内雇用者※1に対して給与等※2を支給する場合において、一定の要件(必須要件)を満たす場合には、その雇用者給与等支給増加額の15%又は30%(上乗せ要件をすべて満たす場合は最大で45%)の税額控除を適用できます。

※1 国内雇用者とは、法人又は個人事業主の使用人のうちその法人又は個人事業主の国内に所在する事業所につき作成された賃金台帳に記載された者を指します。
 パート、アルバイト、日雇い労働者も含みますが、使用人兼務役員を含む役員及び役員の特殊関係者、個人事業主の特殊関係者は含まれません。
 なお、特殊関係者とは、法人の役員又は個人事業主の親族などを指します。親族の範囲は6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族までが該当します。
 また、当該役員又は個人事業主と婚姻関係と同様の事情にある者、当該役員又は個人事業主から生計の支援を受けている者等も特殊関係者に含まれます。

※2 給与等とは、俸給・給料・賃金・歳費及び賞与並びに、これらの性質を有する給与(所得税法第28条第1項に規定する給与等)をいいます。
 したがって、例えば、所得税法第9条(非課税所得)の規定により非課税とされる給与所得者に対する通勤手当等についても、原則的には本制度における「給与等」に含まれることになります。
 ただし、賃金台帳に記載された支給額のみを対象に、所得税法上課税されない通勤手当等の額を含めずに計算する等、合理的な方法により継続して国内雇用者に対する給与等の支給額の計算をすることも認められます。
 なお、退職金など、給与所得とならないものについては、原則として給与等に含まれません。

(2) 適用期間

 2024(令和6)年4月1日から2027(令和9)年3月31日までの間に開始する各事業年度(個人事業主は2025(令和7)年から2027(令和9)年の各年が対象)

(3) 適用対象者

 適用対象となる中小企業者等とは、青色申告書を提出する者のうち、以下の①~③に該当するものを指します。

① 以下のイ、ロのいずれかに該当する法人(ただし、前3事業年度の所得金額の平均額が15億円を超える法人は対象外)

イ.資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人
ただし、以下の法人は対象外
(イ) 同一の大規模法人※3から2分の1以上の出資を受ける法人
(ロ) 2以上の大規模法人※3から3分の2以上の出資を受ける法人

※3 大規模法人とは、資本金の額若しくは出資金の額が1億円超の法人、資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人超の法人又は大法人(資本金の額又は出資金の額が5億円以上である法人等)との間に当該大法人による完全支配関係がある法人等をいい、中小企業投資育成株式会社を除きます。

ロ.資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人以下の法人

② 常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主

③ 農業協同組合、農業協同組合連合会、中小企業等協同組合、出資組合である商工組合及び商工組合連合会、内航海運組合、内航海運組合連合会、出資組合である生活衛生同業組合、漁業協同組合、漁業協同組合連合会、水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会、森林組合並びに森林組合連合会

(4) 適用要件

 必須要件(税額控除率15%又は30%)と上乗せ要件(税額控除率10%)は、次のとおりです(上乗せ要件については、くるみん認定の取得は省略します)。

① 必須要件1(税額控除率15%)
 雇用者給与等支給額が前事業年度と比べて1.5%以上増加していること

雇用者給与等支給額(適用年度)- 比較雇用者給与等支給額(前事業年度)/比較雇用者給与等支給額(前事業年度) ≧1.5%

  雇用者給与等支給額※4及び比較雇用者給与等支給額※5に、給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額(雇用安定助成金額※6を除きます)がある場合には、当該金額を控除して要件の適用判定を行います。

※4 雇用者給与等支給額とは、適用年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される全ての国内雇用者に対する給与等の支給額をいいます。

※5 比較雇用者給与等支給額とは、前事業年度における雇用者給与等支給額をいいます。

※6 雇用安定助成金額(国又は地方公共団体から受ける雇用保険法第62条第1項第1号に掲げる事業として支給が行われる助成金その他これに類するものの額)には、以下のものが該当します。
a 雇用調整助成金、産業雇用安定助成金又は緊急雇用安定助成金の額
b aに上乗せして支給される助成金の額その他のaに準じて地方公共団体から支給される助成金の額

出所:中小企業庁ホームページ

② 必須要件2(必須要件1の税額控除率15%+15%=30%)
 雇用者給与等支給額が前事業年度と比べて2.5%以上増加していること

雇用者給与等支給額(適用年度)- 比較雇用者給与等支給額(前事業年度)/比較雇用者給与等支給額(前事業年度) ≧2.5%

 雇用者給与等支給額及び比較雇用者給与等支給額に、給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額(雇用安定助成金額を除きます)がある場合には、当該金額を控除して要件の適用判定を行います。

③ 上乗せ要件(税額控除率10%)
 教育訓練費の額が前事業年度と比べて5%以上増加し、かつ、適用事業年度の教育訓練費の額が適用事業年度の雇用者給与等支給額の0.05%以上であること

教育訓練費の額(適用年度)- 比較教育訓練費の額(前事業年度)/比較教育訓練費の額(前事業年度) ≧5%
かつ
教育訓練費の額(適用年度)/雇用者給与等支給額(適用年度)≧0.05%

 教育訓練費とは、所得の金額の計算上損金の額に算入される、国内雇用者の職務に必要な技術又は知識を習得させ、又は向上させるために支出する費用のうち一定のものをいいます。
 具体的には、法人が教育訓練等を自ら行う場合の費用(外部講師謝金等、外部施設使用料等)、他の者に委託して教育訓練等を行わせる場合の費用(研修委託費等)、他の者が行う教育訓練等に参加させる場合の費用(外部研修参加費等)などをいいます。

 なお、教育訓練の対象者は法人又は個人の国内雇用者です。したがって、以下の者は国内雇用者ではないため対象外となります。

イ.当該法人の役員又は個人事業主
ロ.使用人兼務役員
ハ.当該法人の役員又は個人事業主の特殊関係者((イ) 役員の親族、(ロ) 事実上婚姻関係と同様の事情にある者、(ハ)役員から生計の支援を受けている者、(ニ) (ロ)又は(ハ)と生計を一にする親族)
ニ.内定者等の入社予定者

(5) 税額控除額

① 必須要件1(税額控除率15%)を満たす場合
 控除対象雇用者給与等支給増加額の15%を法人税額又は所得税額から控除します。ただし、税額控除額は法人税額又は所得税額の20%が上限となります。

税額控除額 = 控除対象雇用者給与等支給増加額 ×15%

 控除対象雇用者給与等支給増加額とは、適用年度の雇用者給与等支給額から前事業年度の比較雇用者給与等支給額を控除した金額をいいます。ただし、調整雇用者給与等支給増加額を上限とします。
 調整雇用者給与等支給増加額とは、適用年度の雇用安定助成金額を控除した雇用者給与等支給額から、前事業年度の雇用安定助成金額を控除した比較雇用者給与等支給額を控除した金額をいいます。
 なお、雇用者給与等支給額及び比較雇用者給与等支給額に、給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額(雇用安定助成金額を除きます)がある場合には、当該金額を控除して計算を行います。

出所:中小企業庁ホームページ

② 必須要件2(税額控除率15%)を満たす場合
 上記(5)①の必須要件1の控除率15%に15%が上乗せされて、税額控除率は30%となります(必須要件1の15%+必須要件2の15%=30%)。
 下記③を併用する場合は、税額控除率は40%となります(必須要件1の15%+必須要件2の15%+上乗せ要件10%=40%)。
 ただし、税額控除額は法人税額又は所得税額の20%が上限となります。

③ 上乗せ要件(税額控除率10%)を満たす場合
 上記(5)①の必須要件1の控除率15%に10%が上乗せされて、税額控除率は25%となります(必須要件1の15%+上乗せ要件10%=25%)。
 上記②を併用する場合は、税額控除率は40%となります(必須要件1の15%+必須要件2の15%+上乗せ要件10%=40%)。
 ただし、税額控除額は法人税額又は所得税額の20%が上限となります。

(6) 繰越税額控除制度

 2024(令和6)年度税制改正で、中小企業者等が要件を満たす賃上げを実施した年度に控除しきれなかった金額について、翌年度以降に5年間の繰り越しが可能となりました。

出所:中小企業庁ホームページ

 
 繰越税額控除制度を適用する場合は、以下の①及び②の対応が必要です。

未控除額が発生した事業年度以後の各事業年度の確定申告書に繰越税額控除限度超過額の明細書を添付して提出

繰越税額控除制度の適用を受けようとする事業年度の確定申告書等に繰越控除を受ける金額を記載するとともに、繰越控除を受ける金額の計算に関する明細書を添付して提出

 繰越税額控除制度を適用する際の留意点は、次のとおりです。

イ.上記①の明細書が提出されていない場合、未控除額は繰り越されず、繰越税額控除制度を適用できません。
 未控除額を翌年度以降に繰り越す場合には、未控除が発生した事業年度以後の各事業年度の確定申告書に、繰越税額控除限度超過額の明細書の添付が必ず必要です。

ロ.繰越税額控除制度の適用を受けようとする事業年度において、雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額より増加している場合に限り、適用可能です。

ハ.繰越税額控除制度の適用を受けようとする事業年度においては、青色申告書を提出する必要がありますが、中小企業者等に該当しない場合でも適用可能です。
 なお、中小企業者等に該当するかどうかの判定は、適用を受ける事業年度終了の時の現況によるものとされています。

(関連記事)

※ 賃上げ促進税制における出向者の取扱いについては、「賃上げ促進税制における出向者の取扱い」をご参照ください。

※ 前事業年度と適用事業年度の月数が異なる場合の調整計算や月数に1月未満の端数が生じた場合については、「賃上げ促進税制における1月未満の端数の取扱い」をご参照ください。

扶養親族等の所得要件・住宅借入金等特別控除・生命保険料控除の見直し(令和7年度税制改正)

 2025(令和7)年度税制改正では、所得税の基礎控除や給与所得控除の引き上げ等が行われましたが、これに伴い、扶養控除等の対象となる扶養親族等の所得要件が見直されました。

 また、住宅借入金等特別控除や生命保険料控除についても見直しが行われていますので、以下ではこれらについて確認します。

※ 令和7年度税制改正の内容については、「基礎控除・給与所得控除の引き上げと源泉徴収事務・年収の壁への影響(令和7年度税制改正)」、「特定親族特別控除の創設と源泉徴収事務への影響(令和7年度税制改正)」、「令和7年度税制改正で年収の壁はこのように変わった!」をご参照ください。

1.扶養親族等の所得要件の改正

 基礎控除の改正に伴い、扶養控除、配偶者控除、ひとり親控除、障害者控除、寡婦控除、配偶者特別控除、勤労学生控除の対象となる扶養親族等の所得要件が、下表のように改正されました。

扶養親族等の区分 改正前の所得要件※1 改正後の所得要件※1
扶養親族
同一生計配偶者
ひとり親の生計を一にする子
48万円以下
(103万円以下)※2
58万円以下
(123万円以下)※2
配偶者特別控除の対象となる配偶者 48万円超133万円以下
(103万円超201万5,999円以下)※2
58万円超133万円以下
(123万円超201万5,999円以下)※2
勤労学生 75万円以下
(130万円以下)※2
85万円以下
(150万円以下)※2

※1 合計所得金額(ひとり親の生計を一にする子については総所得金額等の合計額)の要件をいいます。合計所得金額、総所得金額等については、「『合計所得金額』『総所得金額』『総所得金額等』の違いとは?」をご参照ください。
※2 表中のカッコ内の金額は、収入が給与だけの場合の収入金額です。特定支出控除の適用がある場合は、表の金額とは異なります。

2.住宅借入金等特別控除の改正

 子育て世帯・若い夫婦世帯※1が、①認定住宅等※2の新築、②認定住宅等で建築後使用されたことのないものの取得、③買取再販認定住宅等※3の取得をして、2025(令和7)年1月1日から同年12月31日までの間に居住の用に供した場合の住宅借入金等の借入限度額を次のとおりとして、所得税額の特別控除が適用できることとされました。

住宅の区分 改正前の借入限度額 改正後の借入限度額
認定住宅 4,500万円 5,000万円
ZEH水準省エネ住宅 3,500万円 4,500万円
省エネ基準適合住宅 3,000万円 4,000万円

※1 子育て世帯・若い夫婦世帯とは、年齢19歳未満の扶養親族のいる世帯又は夫婦のいずれかが年齢40歳未満の世帯をいいます。
※2 認定住宅等とは、認定住宅、ZEH水準省エネ住宅及び省エネ基準適合住宅をいいます。認定住宅とは、認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅をいいます。
※3 買取再販認定住宅等とは、認定住宅等である既存住宅のうち宅地建物取引業者により一定の増改築等が行われたものをいいます。

 また、①認定住宅等の新築、②認定住宅等で建築後使用されたことのないものの取得に係る床面積要件について、合計所得金額1,000万円以下の者に限り40㎡に緩和(原則50㎡)する措置が、2025(令和7)年12月31日以前(改正前は2024(令和6)年12月31日以前)に建築確認を受けた家屋について適用できることとされました。

 なお、これらの住宅借入金等特別控除に関する今回の改正は、2025(令和7)年限りの時限的措置となっています。

3.生命保険料控除の改正

 生命保険料控除について以下の見直しが行われたほか、所要の措置が講じられました。この改正は、2026(令和8)年分の所得税について適用されます(2026(令和8)年分のみの適用)。

(1) 新生命保険料に係る一般生命保険料控除について、23歳未満の扶養親族を有する場合の一般生命保険料控除の控除額は、次のとおり計算することとされました。

年間の新生命保険料 控除額
30,000円以下 新生命保険料の全額
30,000円超 60,000円以下 新生命保険料×1/2+15,000円
60,000円超 120,000円以下 新生命保険料×1/4+30,000円
120,000円超 一律60,000円

(2)  旧生命保険料及び上記(1)の適用がある新生命保険料を支払った場合の一般生命保険料控除の適用限度額が6万円(改正前は4万円)とされました。
 なお、一般生命保険料控除、介護医療保険料控除及び個人年金保険料控除の合計適用限度額は、現行と同様の12万円となります。

令和7年度税制改正で年収の壁はこのように変わった!

 2025(令和7)年度税制改正において、物価上昇局面における税負担の調整や就業調整対策の観点から、所得税の基礎控除や給与所得控除の引き上げ、特定親族特別控除の創設等が行われました※。

 以下では、これらの税制改正により、従前からあった給与所得者の年収の壁がどのように変わったのかについて確認します。

※ 令和7年度税制改正の内容については、「基礎控除・給与所得控除の引き上げと源泉徴収事務・年収の壁への影響(令和7年度税制改正)」、「特定親族特別控除の創設と源泉徴収事務への影響(令和7年度税制改正)」、「扶養親族等の所得要件・住宅借入金等特別控除・生命保険料控除の見直し(令和7年度税制改正)」をご参照ください。

1.110万円の壁(住民税)

 改正で給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられたことにより、住民税が非課税となる年収が、従前の100万円から110万円に変わりました。

 住民税は、所得金額に応じて課税される「所得割と、定額で課税される「均等割」から成りますが、住んでいる地域や家族構成によって住民税が非課税となる所得金額は異なります。

 例えば、兵庫県宝塚市で均等割が非課税となる所得は、次の算式で算出します。

 35万円×(同一生計配偶者+扶養親族数+本人)+10万円+21万円(同一生計配偶者または扶養親族を有する場合のみ)

 単身の場合は、35万円×1+10万円=45万円が非課税となる所得であり、給与収入に置き換えると110万円(45万円+給与所得控除65万円)となります。

2.123万円の壁(所得税)

 従前の103万円の壁は、年収の壁として広く一般に認識されていたものと思われます。

 改正で基礎控除と給与所得控除最低保障額がそれぞれ10万円ずつ引き上げられたことにより、この103万円の壁が123万円の壁に変わりました。

 また、改正により、配偶者控除や扶養控除の対象となる合計所得金額が48万円以下から58万円以下に変わりましたので、配偶者や扶養親族の年収が123万円以下であれば、配偶者控除や扶養控除の対象となります(給与収入123万円-給与所得控除65万円=58万円)。

 ただし、123万円の壁は配偶者控除や扶養控除の対象となる給与収入を意味するものであり、従前の103万円の壁が持っていた納税者本人に所得税がかからない給与収入という意味はありません。

 納税者本人に所得税がかからない年収の壁については、下記4をご参照ください。

3.150万円の壁(所得税):2つの意味

 従前からあった150万円の壁は、配偶者特別控除について満額の38万円を適用できる年収の壁でしたが、改正により、150万円の壁の意味は以下のように変わりました。

 扶養親族の年収が123万円を超えると扶養控除の対象から外れますので(上記2)、年齢19歳以上23歳未満の扶養親族(以下「大学生年代」といいます)についても、年収が123万円を超えると63万円の扶養控除を適用することができません。

 しかし、大学生年代については、年収が123万円を超えても、令和7年度税制改正で新設された特定親族特別控除を適用することができ、年収が150万円以下であれば、特定親族特別控除について満額の63万円を適用することができます。

 また、大学生年代の年収が150万円を超えても188万円以下であれば、納税者本人は段階的に逓減する特定親族特別控除を受けることができます。

 なお、勤労学生本人が受けられる勤労学生控除の合計所得金額の要件が、改正により従前の75万円以下から85万円以下に変わりましたので、勤労学生本人の給与収入が150万円以下であれば、勤労学生控除27万円を受けることができます(給与収入150万円-給与所得控除65万円=85万円)。

4.160万円の壁(所得税):2つの意味

 改正後の年収160万円の壁については、以下の二つの意味があります。

 第一に、納税者本人に所得税がかからない従前の103万円の壁が、160万円の壁に変わりました。

 改正により基礎控除の10万円の引き上げが行われましたが、さらに低~中所得者層の税負担への配慮から、特例として最大95万円の基礎控除が設けられました。

 したがって、給与所得控除最低保障額65万円と合わせて、年収160万円以下であれば、納税者本人に所得税はかかりません(給与収入160万円-給与所得控除65万円-基礎控除95万円=給与所得0円)。

 第二に、配偶者特別控除について満額の38万円を適用できる年収の壁が、従前の150万円から160万円に変わりました。

 満額の38万円を適用できる合計所得金額の上限は従前どおりの95万円ですが、給与所得控除最低保障額が10万円引き上げられたことにより、配偶者の年収が160万円以下であれば、納税者本人は配偶者特別控除38万円の適用を受けることができます(ただし、納税者の合計所得金額が900万円以下の場合です)。

 また、配偶者の年収が160万円を超えても201万円以下(正確には201万5,999円以下)であれば、納税者本人は段階的に逓減する配偶者特別控除を受けることができます。

5.188万円の壁(所得税)

 大学生年代の年収が150万円を超えると段階的に特定親族特別控除が減っていきますが、年収188万円を超えると特定親族特別控除はゼロとなります(上記3)。

 188万円の壁とは、特定親族特別控除が適用されるか否かの年収の分岐点のことをいい、改正後に新しくできた年収の壁です。

6.201万円の壁(所得税)

 配偶者の年収が160万円を超えると段階的に配偶者特別控除が減っていきますが、年収201万円(正確には201万5,999円)を超えると配偶者特別控除はゼロとなります(上記4)。

 201万円の壁とは、配偶者特別控除が適用されるか否かの年収の分岐点のことをいいますが、改正後もこの部分は変わっていません。

7.106万円の壁(社会保険)

 令和7年度税制改正は社会保険制度には影響がありませんので、社会保険制度上の年収の壁である106万円の壁は従前と変わっていません。

 ①従業員が51人以上(2024(令和6)年10月以降)、②週の労働時間が20時間以上、③月収8.8万円以上(年収106万円以上)、④2か月を超える雇用の見込、⑤学生でない、といった条件を満たす場合は、パートやアルバイトで働く人が自ら社会保険被保険者となり社会保険の扶養から外れます(関連記事「従業員51人以上の会社で働くパート・アルバイトの社会保険加入義務(令和6年10月1日~)」)。

8.130万円の壁(社会保険)

 令和7年度税制改正は社会保険制度には影響がありませんので、社会保険制度上の年収の壁である130万円の壁についても従前と変わっていません。

 130万円の壁とは、社会保険被保険者である給与所得者(例えば夫)が扶養する者(例えば妻)については、夫が負担する社会保険料のみで妻の健康保険料及び国民年金保険料まで賄われるという年収の分岐点のことをいいます。

 従業員が51人以上(2024(令和6)年10月以降)の企業では106万円、それより規模の小さい企業では130万円が年収の壁となっています。

特定親族特別控除の創設と源泉徴収事務への影響(令和7年度税制改正)

 2025(令和7)年度税制改正において、物価上昇局面における税負担の調整や就業調整対策の観点から、所得税の基礎控除や給与所得控除の引き上げ、、特定親族特別控除の創設等が行われました。

 これらの改正は、原則として2025(令和7)年12月1日に施行され、2025(令和7)年分以後の所得税から適用されます。

 前回は基礎控除と給与所得控除の引き上げについて確認しましたので、今回は新設された特定親族特別控除の内容と、この特定親族特別控除が2025(令和7)年の源泉徴収事務に与える影響について確認します。

※ 基礎控除と給与所得控除の引き上げについては、「基礎控除・給与所得控除の引き上げと源泉徴収事務・年収の壁への影響(令和7年度税制改正)」をご参照ください。

1.特定親族とは?

 2025(令和7)年度税制改正で、居住者が特定親族を有する場合には、その居住者の総所得金額等から、その特定親族1人につき、その特定親族の合計所得金額に応じて63万円~3万円を控除する特定親族特別控除が創設されました。

 特定親族とは、居住者と生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族(配偶者、青色事業専従者として給与の支払を受ける人及び白色事業専従者を除きます)で合計所得金額が58万円超123万円以下の人をいいます。

 収入が給与だけの場合には、その年中の収入金額が123万円超188万円以下であれば、合計所得金額が58万円超123万円以下となります(給与収入123万円-給与所得控除65万円=58万円、給与収入188万円-給与所得控除65万円=123万円)。

 なお、親族の合計所得金額が58万円以下の場合は、特定親族特別控除の対象とはなりませんが、扶養控除の対象となります。

 居住者と生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族(配偶者、青色事業専従者として給与の支払を受ける人及び白色事業専従者を除きます)で合計所得金額が58万円以下の人は特定扶養親族に該当しますので、これまで通り扶養控除額は63万円となります。

2.特定親族特別控除額

 所得税の特定親族特別控除額は、下表のとおりです。

特定親族の合計所得金額
※カッコ内は収入が給与だけの場合の収入金額
特定親族特別控除額
58万円超 85万円以下 (123万円超 150万円以下) 63万円
85万円超 90万円以下(150万円超 155万円以下) 61万円
90万円超 95万円以下(155万円超 160万円以下) 51万円
95万円超 100万円以下(160万円超 165万円以下) 41万円
100万円超 105万円以下(165万円超 170万円以下) 31万円
105万円超 110万円以下(170万円超 175万円以下) 21万円
110万円超 115万円以下(175万円超 180万円以下) 11万円
115万円超 120万円以下(180万円超 185万円以下) 6万円
120万円超 123万円以下(185万円超 188万円以下)  3万円

 上の表のとおり、生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族の収入が給与のみの場合は、年収150万円までは特定扶養控除と同額の63万円の控除が受けられ、年収150万円を超えても188万円までは、控除額が逓減する配偶者特別控除と同様の仕組みとなっています(いわゆる年収の壁については、「令和7年度税制改正で年収の壁はこのように変わった!」をご参照ください)。

3.源泉徴収事務への影響

 上記の税制改正は、原則として、2025(令和7)年12月1日に施行され、2025(令和7)年分以後の所得税及び2026(令和8)年度以後の住民税について適用されます。

 そのため、2025(令和7)年12月に行う年末調整など、2025(令和7)年12月以後の源泉徴収事務に変更が生じますが、11月までの給与の源泉徴収事務に変更は生じません

 したがって、2025(令和7)年分の給与の源泉徴収事務においては、2025(令和7)年12月に行う年末調整の際に、特定親族特別控除を適用します。

 なお、年末調整において特定親族特別控除の適用を受けようとする人は、給与の支払者に「給与所得者の特定親族特別控除申告書」を提出する必要があります。

4.住民税の特定親族特別控除(参考)

 個人住民税における特定親族特別控除額は、下表のとおりです。

特定親族の合計所得金額
※カッコ内は収入が給与だけの場合の収入金額
特定親族特別控除額
58万円超 95万円以下(123万円超 160万円以下) 45万円
95万円超 100万円以下(160万円超 165万円以下) 41万円
100万円超 105万円以下(165万円超 170万円以下) 31万円
105万円超 110万円以下(170万円超 175万円以下) 21万円
110万円超 115万円以下(175万円超 180万円以下) 11万円
115万円超 120万円以下(180万円超 185万円以下) 6万円
120万円超 123万円以下(185万円超 188万円以下)  3万円

 上の表のとおり、生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族の収入が給与のみの場合は、年収160万円までは特定扶養控除と同額の45万円の控除が受けられ、年収160万円を超えても188万円までは、控除額が逓減する配偶者特別控除と同様の仕組みとなっています。

基礎控除・給与所得控除の引き上げと源泉徴収事務・年収の壁への影響(令和7年度税制改正)

 2025(令和7)年度税制改正において、物価上昇局面における税負担の調整や就業調整対策の観点から、所得税の基礎控除や給与所得控除の引き上げ、、特定親族特別控除の創設等が行われました。

 これらの改正は、原則として2025(令和7)年12月1日に施行され、2025(令和7)年分以後の所得税から適用されます。

 以下では、基礎控除と給与所得控除の引き上げの内容と、これらの引き上げが2025(令和7)年の源泉徴収事務や、いわゆる年収の壁に与える影響について確認します。

※ 特定親族特別控除については、「特定親族特別控除の創設と源泉徴収事務への影響(令和7年度税制改正)」をご参照ください。

1.基礎控除の引き上げ

 令和7年度税制改正により、合計所得金額が2,350万円以下である個人の基礎控除額が48万円から10万円引き上げられ、58万円となりました。

 さらに、低~中所得者層の税負担への配慮から、基礎控除の特例として、所得額に応じて58万円に37万円~5万円の上乗せが行われています。

 なお、基礎控除の改正は所得税のみの改正であり、住民税の基礎控除額は従前通りの43万円です。

 改正後の所得税の基礎控除額は、下表のとおりです。

合計所得金額
※カッコ内は収入が給与だけの場合の収入金額※2
基礎控除額
改正前 令和7・8年分 令和9年分以後
132万円以下
(200万3,999円以下)
48万円 95万円※1 95万円※1
132万円超~336万円以下
(200万3,999円超~475万1,999円以下)
88万円※1 58万円
336万円超~489万円以下
(475万1,999円超~665万5,556万円以下)
68万円※1
489万円超~655万円以下
(665万5,556円超~850万円以下)
63万円※1
655万円超~2,350万円以下
(850万円超~2,545万円以下)
58万円
2,350万円超~2,400万円以下
(2,545万円超~2,595万円以下)
48万円※3
2,400万円超~2,450万円以下
(2,595万円超~2,645万円以下)
32万円※3
2,450万円超~2,500万円以下
(2,645万円超~2,695万円以下)
16万円※3
2,500万円超
(2,695万円超)
0円※3

※1 基礎控除の特例として、58万円にそれぞれ37万円、30万円、10万円、5万円を加算した金額となります(この加算は居住者についてのみ適用があります)。
 なお、合計所得金額132万円以下の低所得者層への特例は恒久的措置となりますが、132万円超~655万円以下の中所得者層への特例は令和7年分及び令和8年分の期間限定となります。
※2 特定支出控除や所得金額調整控除の適用がある場合は、表の金額とは異なります。
※3 合計所得金額2,350万円超の場合の基礎控除額に改正はありません(合計所得金額については、「『合計所得金額』『総所得金額』『総所得金額等』の違いとは?」をご参照ください)。

2.給与所得控除の引き上げ

 令和7年度税制改正により、給与の収入金額が190万円以下の個人について、給与所得控除額の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられました。

 給与所得控除の改正は、所得税だけではなく住民税にも適用されます(令和7年分以後の所得税及び令和8年度以後の住民税)。

 改正後の給与所得控除額は、下表のとおりです。

給与の収入金額(A) 改正前 令和7年分以後
162万5,000円以下 55万円 65万円
162万5,000円超~180万円以下 A×40%-10万円
180万円超~190万円以下 A×30%+8万円
190万円超~360万円以下 同左
360万円超~660万円以下 A×20%+44万円
660万円超~850万円以下 A×10%+110万円
850万円超 195万円(上限)

3.源泉徴収事務と年収の壁への影響

 上記1及び2の税制改正は、原則として、2025(令和7)年12月1日に施行され、2025(令和7)年分以後の所得税及び2026(令和8)年度以後の住民税について適用されます。

 そのため、2025(令和7)年12月に行う年末調整など、2025(令和7)年12月以後の源泉徴収事務に変更が生じますが、11月までの給与の源泉徴収事務に変更は生じません。

 したがって、2025(令和7)年分の給与の源泉徴収事務においては、2025(令和7)年12月に行う年末調整の際に、改正後の基礎控除額と「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」に基づいて1年間の税額を計算し、改正前の「源泉徴収税額表」によって計算した源泉徴収税額との精算を行います。

 なお、基礎控除と給与所得控除の改正により、所得税が課税されない給与収入(いわゆる年収の壁)が、これまでの103万円から令和7年分は160万円(基礎控除95万円+給与所得控除65万円)に変わります

 また、給与所得控除の改正により、住民税が課税されない給与収入については、これまでの概ね100万円から2026(令和8)年度は110万円(45万円+給与所得控除65万円)に変わります(各自治体によって異なります)

※ 年収の壁については、「令和7年度税制改正で年収の壁はこのように変わった!」をご参照ください。

財産債務調書の提出義務とペナルティ

 2022(令和4)年度税制改正で、2023(令和5)年分以後の財産債務調書の提出義務者や提出期限などについて見直しが行われました。

 財産債務調書とは、保有する財産の種類、数量及び価額並びに債務の金額その他必要な事項を記載した書類をいい、一定の条件に該当する人は、その年の翌年の6月30日までに、所得税の納税地等の所轄税務署長に提出しなければなりません。

 2024(令和6)年分の財産債務調書の提出期限は、2025(令和7)年6月30日(月)となっていますが、ゴールデンウィークの半ばに財産債務調書に関する国税庁からのお知らせがe-Taxメッセージボックスに格納されています。

 今回は、財産債務調書について、どのような人に提出義務があるのか、提出しなかった場合にペナルティはあるのか、などの制度の概要を確認します。

1.財産債務調書の提出義務者

 財産債務調書を提出しなければならない人は、以下の(1)又は(2)に該当する人です(令和4年度税制改正で(2)に該当する人が提出義務者として追加されました)。

(1) 次の①と②のどちらも満たす人

① 所得税の確定申告書を提出する必要がある人又は所得税の還付申告書※1を提出することができる人で、その年分の退職所得を除く各種所得金額の合計額※2が2千万円を超える場合

② その年の12月31日において、その価額の合計額が3億円以上の財産又はその価額の合計額が1億円以上の国外転出特例対象財産※3を有する場合

※1 その年分の所得税の額の合計額が配当控除の額及び年末調整で適用を受けた住宅借入金等特別控除額の合計額(令和6年分については所得税の定額減税額を含みます)を超える場合におけるその還付申告書に限ります。

※2 申告分離課税の所得がある場合には、それらの特別控除後の所得金額の合計額を加算した金額です。
 ただし、純損失や雑損失の繰越控除や上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除などを受けている場合は、その適用後の金額をいいます。

※3 国外転出特例対象財産とは、所得税法第60条の2第1項に規定する有価証券等並びに同条第2項に規定する未決済信用取引等及び同条第3項に規定する未決済デリバティブ取引に係る権利をいいます。

(2) その年の12月31日において、その価額の合計額が10億円以上の財産を有する居住者

2.財産債務調書の提出期限

 財産債務調書の提出期限は、税制改正前は所得税の確定申告期限と同様にその年の翌年の3月15日とされていましたが、令和4年度税制改正によりその年の翌年6月30日に後倒しされました。

3.財産債務調書の記載事項

 財産債務調書には、氏名、住所(又は居所等)及びマイナンバー(個人番号)のほか、財産の種類、数量、価額、所在並びに債務の金額等を記載することとされています。

 また、財産及び債務に係る事項については、種類別、用途別(一般用及び事業用の別)及び所在別に記載する必要があります。

 財産の価額は、その年の12月31日における時価※4又は時価に準ずるものとして見積価額※5によることとされています。

※4 時価とは、その年の12月31日における財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいいます。
 その価額は財産の種類に応じて異なりますが、例えば、動産及び不動産等については専門家による鑑定評価額、上場株式等(金融商品取引所に上場されている株式等のほか、登録銘柄等の公表相場があるものを含みます)については、金融商品取引所等の公表する同日の最終価格(その年の12月31日における最終価格がない場合には、同日前の最終価格のうち同日に最も近い日の価格)等となります。

※5 見積価額とは、その財産の種類等に応じて、次の方法で算定した価額をいいます。
① 事業所得の基因となる棚卸資産・・・その年の12月31日における「棚卸資産の評価額」
② 不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得に係る減価償却資産・・・その年の12月31日における「減価償却資産の償却後の価額」
③ 上記①及び②以外の財産・・・その年の12月31日における「財産の現況に応じ、その財産の取得価額や売買実例価額などを基に、合理的な方法により算定した価額」(合理的な方法により算定した価額とは、例えば、土地や建物の場合は、その年の12月31日が属する年中に課された固定資産税の計算の基となる固定資産税評価額や、その年の翌年1月1日から財産債務調書の提出期限までにその財産を譲渡した場合における譲渡価額、財産評価基本通達で定める方法により評価した価額などをいいます)

4.提出しなかった場合のペナルティ

 令和4年度税制改正により、財産債務調書の提出期限が改正前の3月15日から6月30日に後倒しされたため、従前よりは財産債務調書の提出に余裕が持てるようになりましたが、財産債務調書を提出しなかった場合、何かペナルティはあるのでしょうか?

 答えは「否」です。財産債務調書を提出しなかったとしても、そのこと自体にペナルティが科されるわけではありません。

 ただし、財産債務調書の適正な提出に向けたインセンティブとして、過少申告加算税等(過少申告加算税及び無申告加算税)の特例措置が設けられています。
 具体的には、次のような措置が講じられています。

(1) 財産債務調書を提出期限内に提出した場合に、財産債務調書に記載がある財産又は債務に関して所得税・相続税の申告漏れが生じたときは、その財産又は債務に係る過少申告加算税等が5%軽減されます。

(2) 財産債務調書の提出が提出期限内にない場合又は提出期限内に提出された財産債務
調書に記載すべき財産又は債務の記載がない場合(重要なものの記載が不十分と認められる場合を含みます)に、その財産又は債務に関して所得税の申告漏れ(死亡した方に係るものを除きます)が生じたときは、その財産又は債務に係る過少申告加算税等が5%加重されます(相続財産債務について、相続財産債務を有する方の責めに帰すべき事由がなく提出等がない場合には、加重の対象となりません)。


購入者が受けるキャッシュバックの消費税の取扱い(課税・不課税)

 事業者が物品を購入した後に、その購入先からキャッシュバックを受ける場合があります。

 また、物品をクレジットカードで購入した後、その代金決済高に応じてクレジットカード会社や金融機関からキャッシュバックを受ける場合もあります。

 キャッシュバックはキャンペーンの一環として行われることが多く、その目的は販売促進にあります(自社製品の購入や自社のクレジットカードの利用を促すなど)。

 一口にキャッシュバックと言ってもいろんなケースがありますが、以下では代表的な例について、キャッシュバックが消費税の課税取引になるのか、それとも不課税取引(課税対象外)となるのかについて、購入者の立場から確認します。

1.課税取引となるキャッシュバック

 課税取引となるキャッシュバックについて、国税庁ホームページの質疑応答事例(消費者に対するキャッシュバックサービスの課税関係)に以下の例が示されています(下線は筆者による)。

【照会要旨】
 ソフトウェアメーカーであるM社は、新製品キャンペーンの一環として、製品を購入した消費者に対して次のとおりキャッシュバックサービスを行うことにしました。

(1) 消費者は、小売店で製品のパッケージを購入します。

(2) 購入者は製品のパッケージに同梱されている「ユーザー登録はがき」と「キャッシュバックサービス申込書」をソフトウェアメーカーへ返送します。

(3) ソフトウェアメーカーは、「キャッシュバックサービス申込書」に記載されている消費者の預金口座にキャッシュバックサービス対象となる現金を振り込みます。
 なお、このキャッシュバックサービスは、「キャッシュバックサービス申込書」をソフトウェアメーカーへ返送した購入者全員に対して行われるもので、懸賞として行われるものではありません。
 このとき、ソフトウェアメーカーが購入者に対してキャッシュバックした金銭の消費税の課税関係はどうなるのでしょうか。

【回答要旨】
 ソフトウェアメーカーが製品の購入者に対してキャッシュバックする金銭は、売上げに係る対価の返還等に該当します。

(理由)
  消費税法基本通達14-1-2において「事業者が販売促進の目的で販売奨励金等の対象とされる課税資産の販売数量、販売高等に応じて取引先(課税資産の販売の直接の相手方としての卸売業者等のほか販売先である小売業者等の取引関係者を含む。)に対して金銭により支払う販売奨励金等は、売上げに係る対価の返還等に該当する。」旨規定されていますが、ソフトウェアメーカーの製品の購入者は、当該ソフトウェアメーカーの取引先に当然含まれるものです。
 したがって、照会のような方法で、ソフトウェアメーカーが当該製品の購入者に対し、もれなくキャッシュバックする金銭は、売上げに係る対価の返還等に該当することになります。

 上記の質疑応答事例では、売手側であるソフトウェアメーカーの立場から、このキャッシュバックが課税取引(売上げに係る対価の返還等)であることが示されています。

 この質疑応答事例の下線部から、購入者側の立場からも、次の消費税法基本通達12-1-2(事業者が収受する販売奨励金等)により、このキャッシュバックが課税取引(仕入れに係る対価の返還等)であることは明白です。

12-1-2 事業者が販売促進の目的で販売奨励金等の対象とされる課税資産の販売数量、販売高等に応じて取引先(課税仕入れの相手方のほか、その課税資産の製造者、卸売業者等の取引関係者を含む。)から金銭により支払を受ける販売奨励金等は、仕入れに係る対価の返還等に該当する。

 したがって、購入者側では製品購入時の課税仕入れの修正が必要となり、仕入れに係る消費税額からキャッシュバックの消費税額を控除する(控除対象仕入税額を減額する)ことになります。

2.不課税取引となるキャッシュバック

 クレジットカードの利用者が、支払高に応じてクレジットカード会社や金融機関から受けるキャッシュバックは、不課税取引(消費税の課税対象外)となります。

 例えば、クレジットカードの利用による支払高が50,000円だった場合、翌月にその1%である500円が口座に振り込まれる場合などです。

 このキャッシュバックが不課税である理由は、次の消費税法基本通達12-1-7(債務免除)にあります。

12-1-7 事業者が課税仕入れの相手方に対する買掛金その他の債務の全部又は一部について債務免除を受けた場合における当該債務免除は、仕入れに係る対価の返還等に該当しないことに留意する。

 クレジットカード会社等から受けるキャッシュバックはクレジットカード会社等から受ける債務免除になりますので、上記通達にあるとおり、仕入れに係る対価の返還等には該当しません。

 したがって、その債務が課税仕入れに係る債務であったとしても、購入者側では課税仕入れを修正する必要はありません。

3.なぜ課税と不課税に分かれるのか?

 上記1のケースも2のケースも、キャッシュバックとして金銭を受け取っている点は同じですが、なぜ課税と不課税に分かれるのでしょうか?

 消費税法では、消費税の課税対象となる取引は、次の4つの要件をすべて満たす取引とされています。

① 国内取引であること
② 事業者が事業として行うものであること
③ 対価を得て行われるものであること
④ 資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供であること

 上記1の購入者が、自身の事業のために製品を購入した場合は、この4要件を満たすので、購入者がソフトウェアメーカーから受けたキャッシュバックは課税取引となります。

 一方、上記2のクレジットカード会社等から購入者が受けたキャッシュバックは、この4要件を満たさないので、課税取引とはならずに不課税取引となります。

 両者で課税と不課税を分けるポイントとなったのは、4要件のうち③④(特に③の対価性)を満たすかどうかです(下図参照)。


 上図におけるソフトウェアメーカーは、小売店を通して製品を販売しており、購入者に製品を直接販売していませんが、上記1の質疑応答事例にあるとおり、製品の購入者はソフトウェアメーカーの取引先に含まれます。

 したがって、製品の購入とソフトウェアメーカーが行ったキャッシュバックとの間には対応関係(対価性)が認められ、購入者側では金銭による販売奨励金を受け取ったものとして、このキャッシュバックは課税取引(仕入れに係る対価の返還等)となります。

 これに対して、上図におけるクレジットカード会社は、製品の販売には関わっておらず、小売店から請求されて立替払いした製品代金を購入者から回収しているに過ぎません。

 したがって、製品の購入とクレジットカード会社が行ったキャッシュバックとの間には対応関係(対価性)が認められず、購入者側では債務免除を受けたものとして、このキャッシュバックは不課税取引となります。

 この場合、購入者と小売店との間で行われた製品売買は課税取引になりますが、購入者側では課税仕入れから生じた債務であっても課税仕入れの修正は行いません。

 なお、クレジットカード会社が、消費者(会員)から受け取るクレジットカードの年会費は、クレジットカード会社が消費者に提供する「クレジットカードの利用」という役務と明確な対応関係(対価性)が認められますので課税取引となります。

 この年会費についてクレジットカード会社がキャッシュバックを行った場合は、消費者側でもそのキャッシュバックは課税取引(仕入れに係る対価の返還等)となります。