定額減税の実施前に給与支払者が最低限知っておきたいこと

 2024(令和6)年6月1日以後最初に支払う給与等から所得税の定額減税(月次減税)が開始されます。この定額減税を実施する前に給与支払者が最低限知っておきたい(知っておくべき)ことについて、以下で確認します。

※ 例えば、給与計算の締め日が月末(5月31日)で支給日が翌月10日(6月10日)の給与を社内で「5月分給与」と呼んでいる場合は、その「5月分給与」から定額減税を行います。

1.定額減税の対象者

 定額減税の対象となるのは、令和6年分所得税の納税者である居住者※1で、令和6年分の所得税に係る合計所得金額※2が1,805万円以下である人です。

 給与所得者に対する定額減税は、給与支払者が令和6年6月以後の各月に支給する給与等から控除する「月次減税」と、年末調整の際に年調所得税額から控除する「年調減税」によって行われます。

 月次減税の対象者は、令和6年6月1日現在、給与支払者に扶養控除等申告書※3を提出している人(源泉徴収税額表の甲欄適用者)です。
 したがって、扶養控除等申告書を提出していない人(源泉徴収税額表の乙欄または丙欄適用者)は、定額減税の対象となりません。
 令和6年6月2日以後に雇用した人については、年調減税を行います。

 年調減税の対象者は、令和6年分の年末調整時に給与支払者に扶養控除等申告書を提出している人です。
 令和6年6月1日以後に、年の中途で退職した人(死亡退職、12月中に支給期の到来する給与の支払を受けた後に退職した人など)や海外の支店へ転勤したことなどの理由により非居住者となった人も年調減税の対象となります。
 一方、令和6年中の給与収入が2,000万円を超える人や合計所得金額が1,805万円を超える人などは、年調減税の対象となりません。

 上述したとおり、定額減税は合計所得金額が1,805万円以下の人が対象ですが、給与収入が2,000万円を超える人など、合計所得金額が1,805万円を超えることが見込まれる人であっても、月次減税の対象(甲欄適用者)となる場合は月次減税を行う必要があります(給与所得者が定額減税を受けるか受けないかを自分で選択することはできません)。

 この場合、合計所得金額が 1,805 万円を超える人については年調減税を受けることができませんので、給与収入が2,000万円以下のときは年末調整の際にそれまで月次減税で控除した定額減税額の精算を行うことになります。
 例えば、給与収入1,900万円(給与所得1,705万円)で不動産所得が200万円ある人のように、給与収入は2,000万円を超えないが他の所得があるために合計所得金額が1,805万円を超える人が該当します。

 給与収入が2,000万円を超える人は年末調整の対象となりませんので、その人は確定申告で最終的な年間の所得税額と月次減税で控除した定額減税額との精算を行うことになります。

 なお、令和6年分の年末調整や確定申告をしても控除しきれない所得税の定額減税額がある場合は、個人住民税を課税する市区町村から2025(令和7)年に1万円単位で給付されるようです。
 例えば、令和6年分の確定した所得税額が132,730円で定額減税額が150,000円の場合は控除しきれない定額減税額が17,270円ありますが、市区町村から給付される額は20,000円(1万円未満切り上げ)となります。

※1 居住者とは、国内に住所を有する個人または現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいいます。居住者以外の個人である非居住者は、定額減税の対象となりません。
※2 合計所得金額については、本ブログ記事「『合計所得金額』『総所得金額』『総所得金額等』の違いとは?」をご参照ください。
※3 令和6年分の扶養控除等申告書の書き方については、本ブログ記事「令和6年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の書き方と記載例」をご参照ください。

2.所得税の定額減税額

 所得税の定額減税額は、次の金額の合計額です。

(1) 本人(居住者に限ります)・・・3万円
(2) 同一生計配偶者及び扶養親族(居住者に限ります)・・・1人につき3万円

 例えば、「同一生計配偶者:有、扶養親族:3人」の場合は、3万円(本人分)+3万円×4人(同一生計配偶者と扶養親族の分)=15万円が定額減税額(月次減税額)となります。

 月次減税額の計算対象となる同一生計配偶者とは、その年の12月31日の現況で、上記1の定額減税対象者と生計を一にする配偶者で、年間の合計所得金額が48万円以下(給与所得だけの場合は給与等の収入金額が103万円以下)の人をいいます
 扶養控除等申告書に記載された「源泉控除対象配偶者」のうち、合計所得金額の見積額が48万円以下、かつ、居住者である人が該当します。

 定額減税対象者の令和6年中の所得金額の見積額が900万円超の場合、その同一生計配偶者は令和6年中の所得金額の見積額が48万円以下であっても「源泉控除対象配偶者」に該当しないため扶養控除等申告書に記載されていません。したがって、月次減税額の計算に含めません。
 ただし、定額減税対象者から同一生計配偶者についての記載がある「源泉徴収に係る申告書」の提出があり、その配偶者の合計所得金額の見積額が48万円以下で居住者であることを確認できた場合には、月次減税額の計算のための人数に含めます。

 月次減税額の計算対象となる扶養親族とは、所得税法上の控除対象扶養親族だけでなく16歳未満の扶養親族も含まれます。
 扶養控除等申告書(住民税に関する事項)に記載されている「16歳未満の扶養親族」のうち、居住者である人は月次減税額の計算に含めることとされています。

 なお、令和6年6月1日現在の扶養控除等申告書の記載内容に異動があった場合でも、定額減税額の再計算は行わず、年末調整や確定申告で調整することとなっています。

 ※ 青色申告者の事業専従者としてその年に給与の支払を受けている人または白色申告者の事業専従者を除きます。

「合計所得金額」「総所得金額」「総所得金額等」の違いとは?

 年末調整や確定申告において所得控除を適用する場合に、適用可能かどうかを判定するための基準として所得金額が設けられています。

 例えば、配偶者控除の適用要件は配偶者の所得金額が48万円以下とされていますが、ここでいう所得は「合計所得金額」です。
 一方、寄附金控除額は寄附した金額と所得金額の40%のいずれか少ない金額から2,000円を控除した額とされていますが、ここでいう所得は「総所得金額等」です。

 また、個人住民税においては、均等割の非課税限度額は「合計所得金額」で判定するのに対して、所得割の非課税限度額は「総所得金額等」で判定します。

 このように「合計所得金額」や「総所得金額等」(さらに「総所得金額」もあります)は、所得税や個人住民税の計算に用いられています。
 どれも所得の合計を表すよく似た用語ですが、税法上少しずつ違いがありますので、それらが用いられる場面によって使い分けが必要です。

 以下では、「合計所得金額」、「総所得金額」、「総所得金額等」という3つの用語について確認します。

1.課税所得金額の計算過程のどの金額か?

 国税庁のホームページや書籍等では、「合計所得金額」、「総所得金額」、「総所得金額等」について詳細な説明がされています。
 例えば、国税庁ホームページでは、「合計所得金額」について以下のように説明されています。

次の①と②の合計額に、退職所得金額、山林所得金額を加算した金額です。

※ 申告分離課税の所得がある場合には、それらの所得金額(長(短)期譲渡所得については特別控除前の金額)の合計額を加算した金額です。

① 事業所得、不動産所得、給与所得、総合課税の利子所得・配当所得・短期譲渡所得及び雑所得の合計額(損益通算後の金額)
② 総合課税の長期譲渡所得と一時所得の合計額(損益通算後の金額)の2分の1の金額


ただし、「◆総所得金額等」で掲げた繰越控除を受けている場合は、その適用前の金額をいいます。

 確かにこの説明を読みくだいていけば「合計所得金額」がどういうものであるかがわかります。
 また、「総所得金額」と「総所得金額等」についても説明を読み解けば個々の理解はできます。
 しかし、3者の違いまでわかろうとすると、説明文を読むだけでは困難だと思われますので、ここでは図を用いて理解の一助とします。

 「合計所得金額」、「総所得金額」、「総所得金額等」は、課税所得金額の計算過程で出てくる用語ですので、これらの違いを理解するには、課税所得金額の計算構造を示した下図が参考になると思われます。

 課税所得金額は、各種所得の金額を一定の順序に従い損益通算し、純損失、雑損失等の繰越控除をして課税標準を求め、その課税標準から所得控除額を差し引いて計算します。
 詳細な説明は省きますが、「合計所得金額」、「総所得金額」、「総所得金額等」の違いを理解するにあたっては、これらが課税所得金額の計算過程のどの時点で出てくるかに注目することがポイントです。
 つまり、損益通算の前なのか後なのか、繰越控除の前なのか後なのか、分離課税の譲渡所得の特別控除の前なのか後なのか、所得控除の前なのか後なのか、ということです。

2.合計所得金額で判定するもの

 合計所得金額を用いて判定するものには、以下のものがあります。

・配偶者控除(本人の所得1,000万円以下、配偶者の所得48万円以下等)、配偶者特別控除
・扶養控除(扶養親族の所得48万円以下等)
・寡婦、ひとり親控除(500万円以下)
・基礎控除(2,500万円以下)
・住宅借入金特別控除(2,000万円以下)
・均等割の非課税限度額
・障がい者、未成年者、寡婦、ひとり親の非課税限度額 等

3.総所得金額で判定するもの

 総所得金額には分離所得が含まれていないので、判定基準として使用されることはあまりありません。

4.総所得金額等で判定するもの

 総所得金額等を用いて判定するものには、以下のものがあります。

・雑損控除
・医療費控除
・寄附金控除
・所得割の非課税限度額 等

令和6年度国民年金保険料と免除制度・納付猶予制度

 年金制度は、すべての国民に共通の基礎年金を支給する制度と基礎年金にさらに年金を上乗せする制度とがあり、全体として「2階建て」の年金制度となっています。
 「2階建て」年金制度の1階部分(基礎年金を支給する制度)を担うのが国民年金で、2階部分(基礎年金にさらに年金を上乗せする制度)を担うのが厚生年金などです。

 国民年金の保険料は定額で、第1号被保険者(20歳以上60歳未満の自営業者、農業者、学生、無職の方など)は自分で負担します。
 第2号被保険者(70歳未満の会社員や公務員など厚生年金の加入者)は、加入する制度からまとめて国民年金に拠出金が支払われますので、厚生年金の保険料以外に保険料を負担する必要はありません。
 第3号被保険者(厚生年金に加入している第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者)は、配偶者が加入する制度から拠出されるため、本人は国民年金の保険料を負担する必要はありません。
 
 以下では、第1号被保険者の国民年金保険料と免除制度等の概要について確認します。

1.令和6年度国民年金保険料

 2024(令和6)年4月から2025(令和7)年3月までの国民年金第1号被保険者の保険料は次のとおりです。

納付方法 1ヵ月分 6ヵ月分 1年分 2年分
毎月納付 16,980円 101,880円 203,760円 413,880円
現金・クレジット(カッコ内は割引額) 1ヵ月前納はありません 101,050円(830円) 200,140円(3,620円) 398,590円(15,290円)
口座振替(カッコ内は割引額) 16,920円(60円) 100,720円(1,160円) 199,490円(4,270円) 397,290円(16,590円)

2.保険料の免除制度・納付猶予制度

 第1号被保険者の方で所得が少ない場合や失業等により国民年金保険料の納付が困難なときは、本人の申請によって保険料の納付が免除・猶予される制度があります。
 ただし、学生の方は下記(1)(2)の申請ができず、国民年金に任意加入している方は(1)(2)(3)の申請ができません。

(1) 免除(全額免除・一部免除)制度
 本人、配偶者、世帯主それぞれの前年所得(1月から6月までに申請する場合は前々年所得)が一定額以下の場合や、失業等の事由がある場合に、保険料が全額免除または一部免除(4分の3、半額、4分の1)となります。
 免除申請は、一定の将来期間の他、過去2年(申請月の2年1ヵ月前の月分)までさかのぼってすることができます(すでに国民年金の保険料が納付済の月は対象外です)。
 なお、一部免除については、減額された保険料を納めないと未納期間となりますのでご注意ください。

※ 保険料免除の所得基準(年額)は次のとおりです(前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であることが必要です)。

免除割合 計算式
全額免除 (扶養親族等の数+1)×35万円+32万円
4分の3免除 88万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
半額免除 128万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
4分の1免除 168万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

(2) 納付猶予制度
 20歳以上50歳未満の方で、本人、配偶者それぞれの前年所得(1月から6月までに申請する場合は前々年所得)が一定額以下の場合や、失業等の事由がある場合に、保険料の納付が猶予されます。

※ 納付猶予の所得基準(年額)は次のとおりです(前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であることが必要です)。

制度 計算式
納付猶予制度 (扶養親族等の数+1)×35万円+32万円

(3) 学生納付特例制度
 日本国内に住むすべての方は20歳になった時から国民年金の被保険者となり保険料の納付が義務づけられていますが、学生の方には、申請により在学中の保険料の納付が猶予される「学生納付特例制度」が設けられています。
 学生納付特例を受けようとする年度の前年の所得が一定以下の学生の方が対象です。なお、家族の方の所得の多寡は問いません。

※ 学生納付特例の所得基準(年額)は次のとおりです(前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であることが必要です)。

制度 計算式
学生納付特例制度 128万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等

誤ったインボイスを受け取ったときの3つの対応方法

 インボイス制度の下では、買い手が仕入税額控除を行うためにはインボイスの保存が必要です。
 もし、受け取ったインボイスに誤りがあった場合は、そのインボイスを保存したとしても仕入税額控除を行うことはできません。
 以下では、誤ったインボイスを受け取ったときに、買い手が仕入税額控除を行うための3つの対応方法について確認します。

1.売り手に修正インボイスの交付を求める

 売り手であるインボイス発行事業者は、交付したインボイス(適格請求書)、簡易インボイス(適格簡易請求書)又は返還インボイス(適格返還請求書)の記載事項に誤りがあったときは、買い手である課税事業者に対して、修正したインボイス、簡易インボイス又は返還インボイスを交付しなければならないこととされています。

 したがって、記載事項に誤りがあるインボイスを受け取った課税事業者は、仕入税額控除を行うために、売り手であるインボイス発行事業者に対して修正したインボイスの交付を求め、その修正したインボイスを保存する必要があります。
 なお、買い手が自ら追記や修正を行うことは認められていません。

2.買い手が仕入明細書等を作成する

 一方、買い手である課税事業者が作成した一定事項の記載のある仕入明細書等の書類で、売り手であるインボイス発行事業者の確認を受けたものについても、仕入税額控除を行うために保存が必要な請求書等に該当します。

 したがって、仕入税額控除を行うためにインボイスの記載事項の誤りを修正した仕入明細書等を買い手において作成し、売り手であるインボイス発行事業者の確認を受けた上で、その仕入明細書等を保存することもできます。
 この場合、売り手であるインボイス発行事業者は、改めて修正したインボイスを交付しなくても差し支えありません。

 なお、仕入明細書の記載事項は次のとおりです。

(1) 仕入明細書の作成者の氏名又は名称
(2) 課税仕入れの相手方の氏名又は名称及び登録番号
(3) 課税仕入れを行った年月日
(4) 課税仕入れに係る資産又は役務の内容(課税仕入れが他の者から受けた軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである旨)
(5) 税率ごとに合計した課税仕入れに係る支払対価の額及び適用税率
(6) 税率ごとに区分した消費税額等

3.買い手がインボイスを自ら修正する

 上記2の対応方法の場合は、例えば、相互に関連する複数の書類により仕入明細書等を作成することも可能であることから、受け取ったインボイスと関連性を明確にした別の書類として修正した事項を明示したものを作成し、当該修正事項について売り手の確認を受けたものを保存することも認められます。

 したがって、受け取ったインボイスに買い手が自ら修正を加えたものであったとしても、その修正した事項について売り手に確認を受けることで、その書類はインボイスであるのと同時に修正した事項を明示した仕入明細書等にも該当することから、当該書類を保存することで仕入税額控除の適用を受けることとしても差し支えないとされています。

 上記1にあるように、誤ったインボイスを受け取っても買い手が自ら追記や修正を行うことは認められていません。
 にもかかわらず、誤ったインボイスの修正を買い手に認めるのは、売り手の確認を受けることによって買い手が修正したインボイスが「インボイス」であるのと同時に上記2で認められる「仕入明細書」にも該当するからです。

 これにより、誤ったインボイスを受け取ったときに、例えば、売り手に電話等で修正事項を伝え、売り手が保存しているインボイスの写しに同様の修正を行ってもらえば、自ら修正を行ったインボイスの保存で仕入税額控除を行うことができます。

出所:国税庁ホームページ

 国税庁は、「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A(令和5年10月改訂)」の公表後、納税者が直面する実務上の問題について追加問や既存問の改訂等として「多く寄せられるご質問」に整理・集約しています。
 上記3の取扱いは、「多く寄せられるご質問『問⑥買手による適格請求書の修正』」で述べられています。

令和6年度雇用保険料率・労災保険料率・子ども子育て拠出金率について

 2024(令和6)年4月から厚生労働省関係の制度変更が実施されますので、給与計算ソフトを使用している場合等はその設定を見直す必要があります。
 以下では、2024(令和6)年度の雇用保険料率、労災保険料率、子ども・子育て拠出金率について確認します。

1.令和6年度の雇用保険料率

 2024(令和6)年度の雇用保険料率は据え置きとなり、2023(令和5)年度の料率から改定はありません。
 2024(令和6)年4月1日~2025(令和7)年3月31日の雇用保険料率は、次のとおりです。

事業の種類 一般事業 農林水産業・清酒製造業 建設業
被保険者負担率 6.0/1000 7.0/1000 7.0/1000
事業主負担率 9.5/1000 10.5/1000 11.5/1000
合計負担率 15.5/1000 17.5/1000 18.5/1000

 園芸サービス、牛馬の育成、酪農、養鶏、養豚、内水面養殖及び特定の船員を雇用する事業については、一般事業の率が適用されます。

2.令和6年度の労災保険料率

 「労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則の一部を改正する省令」が施行されたことに伴い、2024(令和6)年4月1日から労災保険料率が改定されます。
 したがって、2024(令和6)年度の労災保険の概算保険料は新しい料率で、2023(令和5)年度の改定保険料はこれまでの料率で申告しなければなりません(関連記事:「7月10日期限の労働保険・社会保険・納期特例の給与集計は発生ベース?支払ベース?」)。
 なお、改定後の保険料率は業種によって異なり、前年度と変わっていない業種もあります。
 2024(令和6)年度と2023(令和5)年度の労災保険料率は、次のとおりです(単位:1/1,000)。

事業の種類の分類 番号 事業の種類 令和6年度料率 令和5年度料率
林業 02・03 林業 52 60
漁業 11 海面漁業 18 18
12 定置網漁業又は海面魚類養殖業 37 38
鉱業 21 金属鉱業、非金属鉱業又は石炭鉱業 88 88
23 石灰石鉱業又はドロマイト鉱業 13 16
24 原油又は天然ガス鉱業 2.5 2.5
25 採石業 37 49
26 その他の鉱業 26 26
建設事業 31 水力発電施設、ずい道等新設事業 34 62
32 道路新設事業 11 11
33 舗装工事業 9 9
34 鉄道又は軌道新設事業 9 9
35 建築事業 9.5 9.5
38 既設建築物設備工事業 12 12
36 機械装置の組立て又は据付けの事業 6 6.5
37 その他の建設事業 15 15
製造業 41 食料品製造業 5.5 6
42 繊維工業又は繊維製品製造業 4 4
44 木材又は木製品製造業 13 14
45 パルプ又は紙製造業 7 6.5
46 印刷又は製本業 3.5 3.5
47 化学工業 4.5 4.5
48 ガラス又はセメント製造業 6 6
66 コンクリート製造業 13 13
62 陶磁器製品製造業 17 18
49 その他の窯業又は土石製品製造業 23 26
50 金属精錬業 6.5 6.5
51 非鉄金属精錬業 7 7
52 金属材料品製造業 5 5.5
53 鋳物業 16 16
54 金属製品製造業又は金属加工業 9 10
63 洋食器、刃物、手工具又は一般金属製造業 6.5 6.5
55 めつき業 6.5 7
56 機械器具製造業 5 5
57 電気機械器具製造業 3 2.5
58 輸送用機械器具製造業 4 4
59 船舶製造又は修理業 23 23
60 計量器、光学機械、時計等製造業 2.5 2.5
64 貴金属製品、装身具、皮革製品等製造業 3.5 3.5
61 その他の製造業 6 6.5
運輸業 71 交通運輸事業 4 4
72 貨物取扱事業 8.5 9
73 港湾貨物取扱事業 9 9
74 港湾荷役業 12 13
電気、ガス、水道又は熱供給の事業 81 電気、ガス、水道又は熱供給の事業 3 3
その他の事業 95 農業又は海面漁業以外の漁業 13 13
91 清掃、火葬又はと畜の事業 13 13
93 ビルメンテナンス業 6 5.5
96 倉庫業、警備業、消毒又は害虫駆除の事業又はゴルフ場の事業 6.5 6.5
97 通信業、放送業、新聞業又は出版業 2.5 2.5
98 卸売業・小売業、飲食店又は宿泊業 3 3
99 金融業、保険業又は不動産業 2.5 2.5
94 その他の各種事業 3 3
船舶所有者の事業 90 船舶所有者の事業 42 47

3.令和6年度の子ども・子育て拠出金率

 2024(令和6)年度の子ども・子育て拠出金率は据え置きとなり、2023(令和5)年度の拠出金率(3.600/1000)から改定はありません。

翌期の中間法人税等還付金の会計処理と別表四・五(一)・五(二)の記載例

 前期の決算で、法人税・住民税・事業税(以下「法人税等」といいます)の年税額が中間納付税額より少なくなった場合は、その差額が当期に還付されます
 以下では、前期の中間納付税額が当期に還付されたときの会計処理と、それに伴う別表四・別表五(一)・別表五(二)の記載例を確認します。

※ 中間納付税額が還付される場合の前期の会計処理とそれに伴う税務処理(別表調整)については、今回の記事の前編である「中間法人税等還付金の会計処理と別表四・五(一)・五(二)の記載例」をご参照ください。

1.中間納付税額が還付されたときの会計処理

 前期の決算で、中間(予定)納付した法人税等の税額が還付される場合の会計処理は何通りかありますが、会計処理方法によって別表調整はすべて変わってきます。
 以下では、前期決算において中間納付税額還付金を仮払金(具体的な勘定科目は「未収入金」)として資産計上していたことを前提とします。

【設例】

(1) 当期に還付された前期の中間納付税額(未収入金)
① 法人税・・・・・707,400円
② 地方法人税・・・72,900円
③ 事業税・・・・・285,700円
④ 法人県民税・・・7,000円
⑤ 法人市民税・・・42,400円
※ ①~⑤の合計・・1,115,400円(他に前期の受取利息の源泉徴収税額2,783円が還付されています)

(2) 当期の年度決算に基づく年税額(法人税、住民税及び事業税)
① 法人税・・・・・0円
② 地方法人税・・・0円
③ 事業税・・・・・0円
④ 法人県民税・・・22,000円
⑤ 法人市民税・・・50,000円
⑥ 受取利息の源泉徴収税額(所得税及び復興特別所得税)・・・2,575円
※ ①~⑥の合計・・74,575円

(3) 確定納付税額(未払法人税等)
① 法人県民税・・・22,000円
② 法人市民税・・・50,000円
※ ①~②の合計・・72,000円

(1) 前期の中間納付税額と受取利息の源泉徴収税額が当期に還付されたときの会計処理

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
普通預金 1,115,400 未収入金 1,115,400
普通預金 2,783 雑収入 2,783

(2) 当期の年度決算時の会計処理

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
法人税、住民税及び事業税 74,575 仮払法人税等 2,575
    未払法人税等 72,000

(参考)受取利息の源泉徴収税額(所得税及び復興特別所得税)2,575円の仕訳

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
普通預金 14,239 受取利息 16,814
仮払法人税等 2,575    

※ 所得税及び復興特別所得税の税率:15.315%

2.別表四、五(一)、五(二)の記載例

 上記1の設例における会計処理をした場合の別表四、五(一)、五(二)の記載例は、次のとおりです。

 前期に未収計上していた中間納付税額が当期に還付されたときの当期の別表調整のポイントは次のとおりです。

(1) 別表五(二)において、法人税及び地方法人税2番と住民税(道府県民税7番、市町村民税12番)については「期首現在未納税額」①欄の金額(前期の未収還付税額と未払法人税等)を「充当金取崩しによる納付」③欄へ記入します。
 また、事業税17番については「当期発生税額」②欄と「充当金取崩しによる納付」③欄に前期の未収還付税額を記入します。

(2) 別表五(一)において、未収還付法人税等22番、未収還付道府県民税23番、未収還付市民税24番については「期首現在利益積立金額」①欄の金額を「当期の増減」欄の「減②」に記入します。
 納税充当金26番についても「期首現在利益積立金額」①欄の金額を「当期の増減」欄の「減②」に記入します。

(3) 別表五(二)において、「納税充当金の計算」欄の32番の空欄に「還付法人税等」と記入し、事業税以外の未収還付税額(別表五(一)の22,23,24番の合計金額)を記入します。
 一方、同欄の仮払税金消却39番には、事業税も含めた未収還付税額(別表五(一)の△を取った3番の金額)を記入します。
 また、別表五(一)において、仮払税金3番について「期首現在利益積立金額」①欄の金額を「当期の増減」欄の「減②」に△を付したまま記入します。
 なお、別表四において、未収還付税額を10番の空欄に「仮払税金取崩し」として記入して加算し、同額を18番で減算することもありますが、課税所得の計算には影響がありませんので、強いて記入しなくても差し支えありません。

(4) 別表五(二)において、「納税充当金の計算」欄の損金経理をした納税充当金31番に当期の損益計算書の「法人税、住民税及び事業税」の金額を記入すると、期末納税充当金41番の金額は貸借対照表の「未払法人税等」の金額と一致します。
 また、別表五(二)の損金経理をした納税充当金31番の金額を、別表四の損金経理をした納税充当金4番①②に記入します。

(5) 別表四の13番①②の金額283,125円は、前期に未収計上した事業税△285,700円と当期の受取利息の源泉徴収税額2,575円の合計額です。
 なお、当期に還付された前期の受取利息の源泉徴収税額2,783円を、19番①③に記入するのを忘れないようにしてください。

3.還付加算金があるとき

 法人税等の還付と一緒に、還付加算金を受け取ることがあります。還付加算金はもともと益金に算入されるもので、会計上収益として計上されていれば別表四でも別表五でも調整の必要はありません。

申告漏れ所得金額が高額な上位10業種

1.政治家の申告漏れ

 2023(令和5)年分の確定申告を巡っては、自民党派閥の政治資金規正法違反事件(いわゆる裏金問題)に端を発して、SNS上では確定申告ボイコットや納税拒否などの呼びかけが拡散されていました。

 キックバックされた資金(裏金)のうち、それが政治資金として使用された場合は非課税になり、政治活動以外に使用した場合や未使用の場合は議員個人の雑所得として課税されるというのが国税庁の見解です。

 だとすると、自民党のアンケートに対してキックバックされた資金を使用していないと回答した議員は確定申告をして納税をしなければなりませんが、今のところそのような動きにはなっていないようです。

 全国商工団体連合会の試算によると、自民党のアンケートで政治資金収支報告書への不記載が判明した議員85人に対する追徴税額(本税や重加算税など)は、約1億3,500万円に上るということです。

2.一般納税者の申告漏れ

 一般の納税者の申告漏れ所得等については、各事務年度における「所得税及び消費税調査等の状況」を国税庁が報道発表資料として毎年11月に公開しています。

 この「所得税及び消費税調査等の状況」の中で「参考計表」として「事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種」が挙げられています。
 
 2022(令和4)年事務年度(令和4年7月~令和5年6月)から2018(平成30)年事務年度(平成30年7月~令和1年6月)までの直近5事務年度における上位10業種は、以下のとおりです。

順位 R4 R3 R2 R1 H30
1 経営コンサルタント 経営コンサルタント プログラマー 風俗業 風俗業
2 くず金卸売業 システムエンジニア 畜産農業(肉用牛) 経営コンサルタント キャバクラ
3 ブリーダー ブリーダー 内科医 キャバクラ 経営コンサルタント
4 焼肉 商工業デザイナー キャバクラ 太陽光発電 システムエンジニア
5 タイル工事 不動産代理仲介 太陽光発電 システムエンジニア 特定貨物自動車運送
6 冷暖房設備工事 外構工事 建築士 土木工事 不動産代理仲介
7 鉄骨、鉄筋工事 型枠工事 経営コンサルタント ダンプ運送 貨物軽車両運送
8 太陽光発電 機械部品受託加工 小売業・犬 タイル工事 ダンプ運送
9 バー 一般貨物自動車運送 不動産代理仲介 冷暖房設備工事 畜産農業(肉用牛)
10 電気通信工事 司法書士、行政書士 商工業デザイナー 清掃業 機械部品受託加工

※ 上記調査事績は、特別調査及び一般調査に基づく実施結果です。

(参考)
 実地調査(特別調査・一般調査)とは、高額・悪質な不正計算が見込まれる事案を対象に深度ある調査を行うもので、特に、特別調査は、多額な脱漏が見込まれる個人を対象に、相当の日数(1件当たり10日以上を目安)を確保して実施しているものです。

 実地調査(着眼調査)とは、資料情報や申告内容の分析の結果、申告漏れ等が見込まれる個人を対象に実地に臨場して短期間で行う調査です。

 簡易な接触とは、原則、納税者宅等に臨場することなく、文書、電話による連絡又は来署依頼による面接を行い、申告内容を是正するものです。

還付申告でも青色控除55万円・65万円の適用を受けるなら期限内申告が必要!

 2023(令和5)年分の所得税の確定申告期間は、2024(令和6)年2月16日から同年3月15日までとなっています。
 基本的にはこの期間内に確定申告をする必要がありますが、還付申告の場合は確定申告期間に関わりなく、その年の翌年1月1日から5年間は還付申告書を提出することができます。
 2023(令和5)年分であれば、2024(令和6)年1月1日から2028(令和10)年12月31日までの間に申告書を提出すれば還付を受けることができます(還付申告書の提出期限については、本ブログ記事「所得税還付申告書を提出できる期間とその最終日とは?」をご参照ください)。
 しかし、還付申告であっても、青色申告者が青色申告特別控除(55万円・65万円)の適用を受ける場合は期限内申告が必要です。
 この点について、以下で確認します。

1.還付申告とは?

 確定申告書を提出する義務のない人でも、給与等から源泉徴収された所得税額や予定納税をした所得税額が年間の所得金額について計算した所得税額よりも多いときは、確定申告をすることによって、納め過ぎの所得税の還付を受けることができます。この申告を還付申告といいます。
 例えば給与所得者であれば、次のような場合には、原則として還付申告をすることができます。

(1) 年の途中で退職し、年末調整を受けずに源泉徴収税額が納め過ぎとなっているとき
(2) 一定の要件のマイホームの取得などをして、住宅ローンがあるとき
(3) マイホームに特定の改修工事をしたとき
(4) 認定住宅等の新築等をした場合(認定住宅等新築等特別税額控除)
(5) 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき
(6) 特定支出控除の適用を受けるとき
(7) 多額の医療費を支出したとき
(8) 特定の寄附をしたとき
(9) 上場株式等に係る譲渡損失の金額を申告分離課税を選択した上場株式等に係る配当所得等の金額から控除したとき

 先に述べたように、還付申告の場合は確定申告期間とは関係なく、その年の翌年1月1日から5年間は還付申告書を提出することができます。
 ただし、青色申告特別控除(55万円・65万円)の適用を受けようとする場合は、還付申告であっても法定申告期限(原則として翌年3月15日)までに提出する必要があります。

2.なぜ期限内申告が必要なのか?

 なぜ、青色申告特別控除55万円や65万円の適用を受ける場合は、期限内申告が必要なのでしょうか?
 
 青色申告者は、下記の要件を満たす場合に最高65万円の青色申告特別控除の適用を受けることができます(55万円控除の場合は(1)~(5)、65万円控除の場合は(1)~(6)の要件を満たす必要があります)。

(1) 現金主義を選択していないこと
(2) 事業的規模の不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営む者であること
(3) 正規の簿記の原則に従い取引を記録していること
(4) 貸借対照表、損益計算書を確定申告書に添付すること
(5) 期限内に申告書を提出すること
(6) 次のいずれかに該当すること
① その年分の事業に係る仕訳帳および総勘定元帳について電子帳簿保存を行っていること
② その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表および損益計算書等の提出を、e-Tax(国税電子申告・納税システム)を使用して行うこと

 55万円控除でも65万円控除でも青色申告特別控除の適用を受けるためには、上記要件(5)にあるように期限内に申告書を提出することが要件となっています。
 このように法定申告期限までに確定申告書を提出することがその適用要件となっている特例を適用する場合には、還付申告であっても法定申告期限までに提出する必要があります。

 青色申告者が法定申告期限までに確定申告書を提出しなかった場合は、青色申告特別控除額は10万円となります。
 その報酬・料金から所得税が源泉徴収される事業を営んでいる事業者(例えば、原稿、写真、作曲、講演、翻訳、通訳、弁護士、司法書士、税理士、社会保険労務士など)は、55万円控除又は65万円控除を受けた場合は還付申告であっても、10万円控除の場合では還付額が減るか還付申告ではなくなる可能性があります。

 「還付申告だから申告期限を過ぎても大丈夫」ということにはならないケースもありますので、注意しなければなりません。

同一生計親族からの住宅取得でも住宅ローン控除を受けられる?

1.親族間の取引には制限がかかる

 住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、住宅ローン等を利用して住宅を新築、取得、増改築等をした場合に、住宅ローン等の年末残高の一定額を所得税等から控除できるという制度です。
 住宅ローン控除は新築住宅から中古住宅、増改築まで幅広く適用がありますが、その適用を受けるためには、それぞれに定められた一定の要件を満たしている必要があります。
 例えば、新築住宅や中古住宅を取得した場合の主な要件は次のとおりです(認定住宅等については、認定長期優良住宅や低炭素建築物などの区分に応じて要件が異なりますので、ここでは共通の要件を挙げます)。

(1) 住宅の新築等の日から6か月以内に居住の用に供していること

(2) この控除を受ける年分の12月31日まで引き続き居住の用に供していること

(3) 次に該当すること※1
① 住宅の床面積が50平方メートル以上であり、かつ、床面積の2分の1以上を専ら自己の居住の用に供していること
② この控除を受ける年分の合計所得金額が2,000万円以下であること

※1 特例居住用家屋または特例認定住宅等の場合は次に該当すること
① 住宅の床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満であり、かつ、床面積の2分の1以上を専ら自己の居住の用に供していること
② この控除を受ける年分の合計所得金額が1,000万円以下であること

(4) 10年以上にわたり分割して返済する方法になっている新築等のための一定の借入金または債務(住宅とともに取得するその住宅の敷地の用に供される土地等の取得のための借入金等を含む)があること※2

※2 一定の借入金または債務とは、銀行等の金融機関、独立行政法人住宅金融支援機構、勤務先などからの借入金や独立行政法人都市再生機構、地方住宅供給公社、建設業者などに対する債務をいいます。
 ただし、勤務先からの借入金の場合で無利子または0.2パーセント未満の利率による借入金や、親族や知人からの借入金は住宅ローン控除の対象にはなりません。

(5) 2以上の住宅を所有している場合には、主として居住の用に供すると認められる住宅であること

(6) 居住年およびその前2年の計3年間に、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円控除の特例など譲渡所得の課税の特例(全5項目)の適用を受けていないこと

(7) 居住年の翌年以後3年以内に居住した住宅(住宅の敷地を含む)以外の一定の資産を譲渡し、当該譲渡について上記(6)の譲渡所得の課税の特例を受けていないこと

(8) 住宅の取得(その敷地の用に供する土地等の取得を含む)は、その取得時および取得後も引き続き生計を一にする親族や特別な関係のある者からの取得でないこと

(9) 贈与による住宅の取得でないこと

 上記要件(1)~(9)のうち、(4)や(8)のように親族との取引には、住宅ローン控除の適用を受けるにあたって制限がかかります。
 つまり、住宅を取得するための借入金が親族から借りたものであったり、住宅の取得が取得時・取得後を通じて引き続き生計を一にする親族からの取得であった場合は、住宅ローン控除を受けることができません。

2.取得後生計を別にすれば適用可能

 生計を一にする親族からの住宅取得については住宅ローン控除の適用を受けることができないと考えがちですが、上記1.(8)の要件をよく見ると、そうでないことがわかります。
 上記1.(8)は、「住宅の取得がその取得時および取得後も引き続き生計を一にする親族からの取得でないこと」が適用要件であることを示しています。
 ということは、生計を一にする親族から住宅を取得した場合であっても、取得後生計を別にしていれば、他の要件を満たす限り住宅ローン控除の適用を受けることができるということです。

3.離婚に伴う財産分与の場合も適用可能

 離婚に伴う財産分与により取得した住宅については、贈与により取得したものではなく、既に生計を一にする親族等からの既存住宅の取得にも該当しないことから、その他の要件を満たしていれば住宅ローン控除を受けることができます。
 なお、財産分与により取得した住宅がすでに住宅ローン控除の適用を受けている共有家屋の持ち分である場合には、当初から保有していた共有部分と追加取得した共有部分(既存住宅の取得となります)のいずれについても住宅ローン控除を受けることができます。

文書料は医療費控除の対象となるか?

1.医療費控除とは

 自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合、その年中に支払った医療費の金額から保険金等により補填される金額を控除した金額が年間10万円(総所得金額等が200万円未満の場合は、その金額の5%)を超える場合は、その超える部分の金額を所得金額から控除できます(最高200万円まで)。これを医療費控除といいます。

 病院で支払った医療費がすべて医療費控除の対象となるわけではなく、例えばインフルエンザの予防接種や健康診断の費用などは医療費控除の対象にはなりません。
 医療費控除を受けるときは、その医療費が控除の対象になるかどうかに気をつけなければなりませんが、一般的には控除の対象とならないと思われているものでも内容によっては控除の対象となるものもあります。
 以下では、医療費の領収書に記載されている「文書料」の医療費控除について確認します。

※ 総所得金額等については、本ブログ記事「『合計所得金額』『総所得金額』『総所得金額等』の違いとは?」をご参照ください。

2.医師による診断書料

 病院の領収書には様々な様式のものがありますが、その領収書をよく見ると、「文書料」という項目が記載されているものがあります。
 この「文書料」とは、病気やケガなどで入院したり手術をした場合などに保険会社に保険金を請求するため、あるいは会社や役所などへ提出するために、医師に執筆してもらう証明書の作成費用をいい、一般的には「診断書」と呼ばれるものです。
 領収書によっては、「文書料」とは別に、この診断書作成費用を「診断書料」という項目で表示しているものもありますが、「文書料」という項目でまとめて表示しているケースが多いと思われます。

 一般的に文書料は医療費控除の対象にならないと認識されていますが、この「診断書料(診断書作成に係る文書料)」は医療費控除の対象にはなりません。

 医療費控除の対象となる医療費は、医師による診療や治療の対価のうち通常必要であると認められるものとされています。
 そうすると、診断書作成に係る文書料は医師が診療又は治療した内容を記載した文書の発行手数料であり、その発行された診断書は生命保険会社へ給付金を請求する場合等の提出書類として使用されることから、医師等の診療又は治療の対価に該当せず医療費控除の対象にはなりません。

3.医師による紹介状

 一方、領収書の「文書料」の項目で表示されるもののうち、いわゆる「紹介状(診療情報提供に係る文書料)」は医療費控除の対象となります。

 例えば、ケガをした際に当初診療を受けたA市民病院の医師からそれまでの診療状況を記した紹介状の交付を受け、紹介先のB整形外科医院にその紹介状を渡して引き続き治療を受ける場合があります。

 このような場合の「紹介状」は、A市民病院の医師がその診療に基づきB整形外科医院での診療の必要性を認めて交付したものであり、この紹介状の作成費用はB整形外科医院による診療を受けるために直接必要な費用であり通常必要なものと考えられることから、医療費控除の対象となります。