インボイス制度導入で課税事業者の17%が免税事業者との取引を見直す意向

 2023(令和5)年10月1日にインボイス制度が導入されます。インボイス制度導入時に想定される免税事業者の取引への影響等について日本商工会議所が調査を行い、その結果を「中小企業における新型コロナウイルス感染拡大・消費税率引上げの影響調査結果」として2020(令和2)年10月9日に公表しています。
 今回は、その内容について見ていきます。

1.調査概要・回答企業の属性

 今回の調査の概要と回答企業の属性は次のとおりです。

出所:日本商工会議所『中小企業における新型コロナウイルス感染拡大・消費税率引上げの影響調査結果』

2.インボイス制度導入への準備状況

 導入までまだ時間があるためか(調査は2020(令和2)年6月29日~7月22日に実施)、全体の約66%の事業者がインボイス制度導入に向けて特に準備を行っていない状況です。
 特に「売上高1,000万円以下の事業者」については約77%で準備を行っておらず、小規模な事業者ほど準備が進んでいない傾向があります。

出所;日本商工会議所『中小企業における新型コロナウイルス感染拡大・消費税率引上げの影響調査結果』

3.インボイス制度導入後の免税事業者との取引

 インボイス制度導入後の対応予定(免税事業者との取引)については、課税事業者の約17%が「免税事業者との取引は(一切または一部)行わない」「経過措置の間は取引を行う」と回答し、免税事業者との取引を見直す意向を示しています(経過措置については、本ブログ記事「インボイス制度導入後の免税事業者からの仕入れに係る仕入税額控除の特例(経過措置)」をご参照ください)。
 課税事業者への転換については、免税事業者の約20%は「課税事業者になる予定(経過措置後を含む)」と回答し、前回調査結果(2019(令和1)年5月)の約10%より倍増しています。一方、約58%の事業者は「まだ分からない」と回答し、対応を決めかねている状態です。
 また、「要請があれば課税事業者になる予定」の免税事業者は約11%であるのに対し、課税事業者になるよう「要請を受けた」ことがあったり、課税事業者か「確認された」ことがある免税事業者は約7%となっています。

出所:日本商工会議所『中小企業における新型コロナウイルス感染拡大・消費税率引上げの影響調査結果』

4.免税事業者が課税転換する際の課題等

 インボイス制度導入を機に免税事業者が課税事業者に転換する際の課題については、「売上が確保できるか分からない」が約50%、次いで「制度が複雑で事務負担に対応できない」が約39%、「資金繰りが難しい」が約36%となっています。
 また、免税事業者の約42%は直近1年前の税引前利益が収支均衡以下となっており、さらに免税事業者の受注・販売先数は約37%が5社(者)未満であることから、取引先の減少は経営に与える影響が大きいと言えます。

出所;日本商工会議所『中小企業における新型コロナウイルス感染拡大・消費税率引上げの影響調査結果』

賃貸用マンションの修繕積立金は支払期日に必要経費算入可、意外な盲点は管理費の消費税の取扱い

 分譲マンションのオーナー(区分所有者)が、転勤等のため長期間自室を留守にする場合、賃貸に出して家賃収入を得ることがあります。
 賃貸に出した場合でも、修繕積立金と管理費をマンション管理組合に支払うのは、オーナーである区分所有者です(家賃に転嫁して賃借人の負担とするかどうかは別として)。
 今回は、修繕積立金を必要経費に算入する時期の確認と、意外な盲点である(間違った処理が多い)管理費の消費税の取扱いを確認します。

1.原則は修繕完了時に必要経費算入

 修繕積立金は、原則として、実際に修繕等が行われその修繕等が完了した日の属する年分の必要経費になります。
 修繕積立金は、マンションの共用部分について行う将来の大規模修繕等の費用の額に充てられるために長期間にわたって計画的に積み立てられるものであり、実際に修繕等が行われていない限りにおいては、具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していないことから、原則的には、管理組合への支払期日の属する年分の必要経費には算入されず(所得税基本通達37-2)、実際に修繕等が行われ、その費用の額に充てられた部分の金額について、その修繕等が完了した日の属する年分の必要経費に算入されることになります。

2.一定の場合は支払期日に必要経費算入可

 しかしながら、修繕積立金は区分所有者となった時点で、管理組合へ義務的に納付しなければならないものであるとともに、管理規約において、納入した修繕積立金は、管理組合が解散しない限り区分所有者へ返還しないこととしているのが一般的です(マンション標準管理規約(単棟型)(国土交通省)第60条第6項)。
 そこで、修繕積立金の支払がマンション標準管理規約に沿った適正な管理規約に従い、次の事実関係の下で行われている場合には、その修繕積立金について、その支払期日の属する年分の必要経費に算入しても差し支えないものとされています。

(1) 区分所有者となった者は、管理組合に対して修繕積立金の支払義務を負うことになること
(2) 管理組合は、支払を受けた修繕積立金について、区分所有者への返還義務を有しないこと
(3) 修繕積立金は、将来の修繕等のためにのみ使用され、他へ流用されるものでないこと
(4) 修繕積立金の額は、長期修繕計画に基づき各区分所有者の共有持分に応じて、合理的な方法により算出されていること

3.管理費の消費税課税区分は不課税!

 不動産所得の計算上、修繕積立金を必要経費に算入する時期については上記のとおりです。また、管理費については、支払期日に必要経費に算入することに関して疑義は生じません。
 しかし、マンション管理組合に支払う管理費の消費税課税区分には要注意です。支払った管理費の課税区分を「課税仕入」としているケースが多いのですが、これは間違いです。
 マンション管理組合は、その居住者である区分所有者を構成員とする組合であり、その組合員との間で行う取引は営業に該当しません。したがって、マンション管理組合に支払う管理費の消費税課税区分は「不課税(課税対象外)」となります。
 区分所有者が支払う管理費が、マンション管理組合を介して、マンションを管理する不動産業者に渡るとしても、現行の消費税法では不課税となります。

登記情報提供サービスの利用料に消費税は含まれる!

1.登記情報提供サービスとは?

 登記情報提供サービスは,登記所が保有する登記情報をインターネットを使用してパソコンの画面上で確認できる有料サービスです。
 ここで提供される登記情報には、①不動産登記情報(全部事項、所有者事項)、②地図情報、③図面情報、④商業・法人登記情報、⑤動産譲渡登記事項概要ファイル情報及び債権譲渡登記事項概要ファイル情報があり、利用者が請求した時点において登記所が保有する登記情報と同じ情報です。
 しかし,このサービスは「閲覧」と同等のサービスであり,登記事項証明書とは異なり,証明文や公印等は付加されません。したがって、ここで取得した登記情報には証明力がないため、金融機関や税務署に対して提出することはできません。
 とはいえ、信用調査やM&Aの財務デューデリジェンスの調査を行う場合や、不動産会社が物件調査を行う場合など、証明力はなくてもいいのですぐに情報が欲しい際にはよく利用されます。

2.利用料の一部に消費税が含まれる

 この登記情報提供サービスの利用料は、行政サービスに係る手数料として、消費税は非課税となります。
 ところが、厳密に区分すると、この利用料には民事法務協会の手数料(14円)が含まれており、この協会手数料は非課税ではなく課税取引となります(つまり、消費税が含まれています)。
 課税部分の金額が僅少なこともあり、また、課税部分と非課税部分に分ける煩雑さを考えると、全額を非課税として経理(勘定科目は「支払手数料」など)されていることが多いと思われます。
 ちなみに、2019(令和1)年10月1日以降の登記情報提供サービスの利用料金は、以下のようになっています。

提供される情報の名称 内容 利用料金※
不動産登記情報 全部事項 334円(333円)
所有者事項 144円(143円)
地図 364円(363円)
図面 364円(363円)
商業・法人登記情報 全部事項 334円(333円)
動産譲渡登記事項概要ファイル情報 現在事項・閉鎖事項 144円(143円)
債権譲渡登記事項概要ファイル情報 現在事項・閉鎖事項 144円(143円)

※ 利用料金は,国に納める登記手数料と協会手数料(14円)の合計額です。登記手数料は、登記手数料令第13条により定められた金額で消費税はかかりません。協会手数料は,消費税及び地方消費税込みです。
 (  )内の料金は,消費税不課税対象者(利用者の住所等が日本国外にある場合に,消費税法の課税対象外となり消費税が課されない方)の利用料金です。

控除対象外消費税額等の処理

1.控除対象外消費税額等とは

 法人又は個人事業者が、消費税等の経理方法として税抜経理方式を採用している場合、原則として納付すべき消費税額は、仮受消費税等から仮払消費税等を控除した金額となります(いわゆる消費税差額は、原則的には生じません)。
 しかし、その課税期間の課税売上高が5億円超又は課税売上割合が95%未満である場合には、仮払消費税等のうち控除対象とされない部分の消費税額(消費税差額)が発生します。これを控除対象外消費税額等といいます。
 控除対象外消費税額等が生じるのは、仕入控除税額が課税仕入れ等に係る消費税額の全額ではなく、課税売上割合に対応した部分に限られるからです。
 例えば、建物を5,500万円(うち消費税額等500万円)で取得し、その課税期間の課税売上割合が60%だとしたら、500万円×(1-60%)=200万円が控除対象外消費税額等になります。
 この控除対象外消費税額等については、以下に掲げる方法により処理します。なお、税込経理方式を採用している場合は、消費税等は資産の取得価額又は経費の額に含まれますので、控除対象外消費税額等の調整は必要ありません。

2.資産に係る控除対象外消費税額等

 資産に係る控除対象外消費税額等は、次のいずれかの方法により損金の額又は必要経費に算入します。

(1) 資産の取得価額に算入します。

(2) 次のいずれかに該当する場合は、法人については損金経理を要件としてその事業年度の損金の額に、個人事業者はその年分の必要経費に算入します。

① その事業年度又は年分の課税売上割合が80%以上であること
② 棚卸資産に係る控除対象外消費税額等であること
③ 一の資産に係る控除対象外消費税額等が20万円未満であること

(3) 上記に該当しない場合は「繰延消費税額等」として資産計上し、5年以上の期間で償却します。

① 繰延消費税額等が生じた事業年度
 損金算入限度額=繰延消費税額等×その事業年度の月数/60×1/2

②その後の事業年度
 損金算入限度額=繰延消費税額等×その事業年度の月数/60

 例えば、200万円の繰延消費税額等が生じた場合、その生じた事業年度の損金算入限度額は、200万円×12/60×1/2=20万円となります(資産を取得した事業年度は2分の1が損金となります)。
 この場合、会計上は消費税差額200万円を全額雑損失(又は租税公課)で処理することは可能ですが、法人税の計算においては別表十六(十)で損金算入限度額20万円を計算し、限度額20万円を超える額180万円については別表四で加算します。そして、次期以降5年間にわたり180万円を認容していく必要があります。

3.経費に係る控除対象外消費税額等

 経費に係る控除対象外消費税額等は、その全額をその事業年度の損金の額又はその年分の必要経費に算入します。
 ただし、法人税の計算において、交際費等に係る控除対象外消費税額等については、消費税の計算後、会計上は経費に係る分として雑損失(又は租税公課)で処理され損金経理されますが、科目は交際費とはならなくても支出した交際費等として把握し、交際費等の損金不算入の計算が必要になります。
 この場合、交際費等に係る控除対象外消費税額等の金額を、別表十五(交際費等の損金算入に関する明細書)の「支出交際費等の額の明細」欄に、交際費自体の額とは別に記載しなければなりません。
 また、課税資産を購入して寄附した場合の控除対象外消費税額等については、支出寄附金等の額として、寄附金等の損金不算入額を計算しなければなりません。
 なお、交際費等に係る控除対象外消費税額等は、以下のようになります。

(1) 個別対応方式で計算している場合

① 課税売上対応の交際費に係る税額については、控除対象外消費税額等は生じません。
② 非課税売上対応の交際費に係る税額については、その全額が控除対象外消費税額等になります。
③ 共通対応の交際費に係る税額については、交際費等のうち次の算式で計算した金額が控除対象外消費税額等になります。
 控除対象外消費税額等=共通対応の交際費に係る税額×(1-課税売上割合)

(2) 一括比例配分方式で計算している場合

 交際費等のうち、次の算式で計算した金額が控除対象外消費税額等になります。
 控除対象外消費税額等=交際費に係る税額×(1-課税売上割合)

事業者が経費支払時にポイントを使用した場合の経理処理

 VISAやJCBなどのクレジットカードで買い物をすると、利用金額に応じてポイントが付与されます。このポイントは、次回以降の買い物の際に購入代金に充てることができます。
 今回は、事業者(法人、個人)が経費支払時にこのようなポイントを使用した場合の経理処理について確認します。
 なお、一般消費者である個人がポイントを使用したときの課税関係については、本ブログ記事「個人が商品購入時に取得又は使用したポイントは所得税の課税対象となるか?」をご覧ください。
 

1.事業者が法人の場合

 法人がポイントで経費を支払った場合の経理処理は、次のいずれかの方法によります(消費税の会計処理は税込方式とします)。

(1) 値引処理(ポイント使用後の支払金額を経費算入する処理)

〇月〇日 消耗品11,000円をクレジットカードで購入した。

借方 金額 貸方 金額
消耗品費 11,000 未払金 11,000

△月△日 〇月〇日の購入代金11,000円が決済され、110円分のポイントが付与された。

借方 金額 貸方 金額
未払金 11,000 現金預金 11,000

◇月◇日 消耗品5,500円をクレジットカードで購入し、△月△日に付与された110円分のポイントを使用した。

借方 金額 貸方 金額
消耗品費 5,390 未払金 5,390

※ ポイント使用後の金額(5,500-110=5,390)を経費算入します。

(2) 両建処理(ポイント使用前の支払金額を経費算入し、ポイント使用額を雑収入に計上する処理)

〇月〇日 消耗品11,000円をクレジットカードで購入した。

借方 金額 貸方 金額
消耗品費 11,000 未払金 11,000

△月△日 〇月〇日の購入代金11,000円が決済され、110円分のポイントが付与された。

借方 金額 貸方 金額
未払金 11,000 現金預金 11,000

◇月◇日 消耗品5,500円をクレジットカードで購入し、△月△日に付与された110円分のポイントを使用した。

借方 金額 貸方 金額
消耗品費 5,500 未払金 5,390
    雑収入 110

※ ポイント使用前の金額(5,500)を経費算入し、ポイント使用額(110)を雑収入に計上します。雑収入の消費税課税区分は不課税です。

2.事業者が個人(個人事業主)の場合

 個人事業主がポイントで経費を支払った場合の経理処理は、法人より少し複雑です。
 個人事業主には一般消費者としての側面と事業者としての側面がありますが、クレジットカードの利用で貯まったポイントも、プライベートで貯まったものと事業で貯まったものがあります。
 事業で貯まったポイントを使用した場合の経理処理は、法人の場合と同様に値引処理と両建処理のいずれかの方法によります(両建処理における雑収入の所得区分は事業所得、消費税課税区分は不課税となります)。
 プライベートで貯まったポイントを事業で使用した場合の経理処理は、次のようになります。

〇月〇日 消耗品11,000円をクレジットカードで購入した。

借方 金額 貸方 金額
消耗品費 11,000 未払金 11,000

△月△日 〇月〇日の購入代金11,000円が決済され、110円分のポイントが付与された。

借方 金額 貸方 金額
未払金 11,000 現金預金 11,000

◇月◇日 消耗品5,500円をクレジットカードで購入し、△月△日に付与された110円分のポイントを使用した。

借方 金額 貸方 金額
消耗品費 5,500 未払金 5,390
    事業主借 110

プライベートで貯まったポイントを使用したときは、使用前の金額(5,500)を経費算入し、ポイント使用額を事業主借とします。ポイント使用額は一時所得の課税対象になることもありますので、雑収入ではなく事業主借で処理して事業所得の収入金額に算入しないようにします。

 プライベートで貯まったポイントを事業で使用した場合の経理処理は、上記のようになります。このような処理は、プライベート用と事業用のクレジットカードを分けるなどして、ポイントが区分できることが前提です。
 しかし、現実的にはプライベートで貯まったポイントなのか事業で貯まったポイントなのかを区分することは煩雑であり、ポイント使用額を雑収入とするのか事業主借とするのか判断しかねることもあります。また、雑収入とすべきものを事業主借とすると、税務調査の際にポイント使用額分の課税漏れを指摘される懸念もあります。
 このような場合は、簡易的な処理として、ポイント使用後の金額を経費に算入する次の処理でも問題ありません(値引処理と同じになります)。

借方 金額 貸方 金額
消耗品費 5,390 未払金 5,390

インボイス制度導入後の免税事業者からの仕入れに係る仕入税額控除の特例(経過措置)

 消費税のインボイス制度は、適格請求書等保存方式として、2023年(令和5年)10月1日から導入されます。
 インボイス制度の下では、適格請求書等の保存と帳簿の保存が仕入税額控除の要件とされているため、適格請求書発行事業者になることができない免税事業者が取引から排除される可能性があることが懸念されています。
 そこで、激変緩和の趣旨から、インボイス制度導入後6年間は、免税事業者からの仕入れであっても一定割合の仕入税額控除が認められる措置が講じられています。
 今回は、免税事業者からの仕入れに係る仕入税額控除の特例(経過措置)について確認します。

1.区分記載請求書等保存方式と適格請求書等保存方式の異同点

 次の表は、区分記載請求書等保存方式と適格請求書等保存方式の記載事項等の異同点を比較したものです。

  区分記載請求書等保存方式 適格請求書等保存方式
期間 令和元年10月1日~令和5年9月30日 令和5年10月1日以降
帳簿 ①課税仕入れの相手方の氏名又は名称
②取引年月日
③取引の内容(軽減対象資産の譲渡等である旨)
④対価の額
同左

請求書等 ①請求書発行者の氏名又は名称
②取引年月日
③取引の内容(軽減対象資産の譲渡等である旨)
④税率ごとに区分して合計した税込対価の額
⑤請求書受領者の氏名又は名称
①適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
②取引年月日
③取引の内容(軽減対象資産の譲渡等である旨)
④税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率
税率ごとに区分した消費税額等
⑥請求書受領者の氏名又は名称
税額控除 免税事業者からの仕入れも控除可 免税事業者からの仕入れは控除不可

2.免税事業者からの仕入れは控除不可

 現行の区分記載請求書等保存方式の下では事業者登録制度がないため、取引相手が課税事業者であるか免税事業者であるかを知ることはできません。そのため、免税事業者や消費者からの仕入れであっても、その取引が課税仕入れに該当するのであれば仕入税額控除が認められています。
 一方、適格請求書等保存方式は事業者登録制度を基礎としているため、適格請求書発行事業者になることができない免税事業者は、請求書等に登録番号を記載することができません。そのため、課税仕入れを行った事業者は、登録番号の記載のない請求書等を受け取ることによって、取引相手が免税事業者であることを知ります。
 適格請求書等が交付されない課税仕入れは、仕入税額控除の対象から除外しなければなりませんので、課税事業者は消費税の計算上不利となる免税事業者との取引を控える可能性があります。

3.免税事業者からの仕入れに係る仕入税額控除の特例(経過措置)

 上記のように、インボイス制度導入後は免税事業者が取引から排除される可能性がありますが、激変緩和の趣旨から、導入後6年間は適格請求書等保存方式において仕入税額控除が認められない課税仕入れであっても、区分記載請求書等保存方式において仕入税額控除の対象となるものについては、次の割合で仕入税額控除が認められます。

期間 割合
令和5年10月1日から令和8年9月30日までの3年間 仕入税額相当額の 80%
令和8年10月1日から令和11年9月30日までの3年間 仕入税額相当額の 50%

 この経過措置の適用を受けるためには、帳簿に経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨を記載しておかなければなりません。また、区分記載請求書等と同様の記載事項が記載された請求書等の保存が必要です。
 なお、この経過措置はあくまでも激変緩和措置であって、免税事業者が取引から排除される懸念は残ります。

簡易課税制度における不動産業の事業区分

 消費税の計算方法には、原則課税(一般課税、本則課税)と簡易課税があります。このうち、原則課税による計算は煩雑であり事務手数を要することから、基準期間における課税売上高が5,000万円以下の中小事業者には簡易課税が認められています。
 簡易課税は原則課税の簡便法として設けられていますが、事業区分の判定については判断に迷うことも多く、必ずしも「簡易」な方法であるとは言えません。とりわけ不動産業は、簡易課税制度においては第6種事業に区分されていますが、場合によっては他の事業に区分されることもあります。
 今回は、簡易課税制度における不動産業の事業区分について確認します。

1.簡易課税制度の事業区分とみなし仕入率

 原則課税では、消費税額は次のように計算します。

  消費税額=課税売上げに係る消費税額-課税仕入れ等に係る消費税額

 この算式のうち、「課税仕入れ等に係る消費税額」を算出するための手続きが煩雑で事務負担も大きいことから、簡便法として簡易課税が設けられています。

 簡易課税では、課税売上げに係る消費税額に、事業区分に応じた一定の「みなし仕入率」を掛けた金額を「課税仕入れ等に係る消費税額」とみなして、納付する消費税額を計算します。算式は次のとおりです。

  消費税額=課税売上げに係る消費税額-(課税売上げに係る消費税額×みなし仕入率)

 原則課税のように「課税仕入れ等に係る消費税額」を算出する必要がなく、課税売上げに係る消費税額のみから納付すべき消費税額が計算できるため、簡便法と位置付けられています。

 簡易課税におけるみなし仕入率は、事業区分に応じて次のように定められています。

事業区分 該当する事業 みなし仕入率
第1種事業 卸売業 90%
第2種事業 小売業、農林漁業(飲食料品の譲渡に係る事業) 80%
第3種事業 製造業、建築業、農林漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く)など 70%
第4種事業 第1・2・3・5・6種以外の事業(飲食店業など) 60%
第5種事業 運輸・通信業、金融・保険業、サービス業(飲食店業を除く) 50%
第6種事業 不動産業 40%

 この表からもわかるように、今回の論点である不動産業は第6種に区分されています。しかし、一口に不動産業と言っても、その形態は様々です。不動産に関する事業をすべて第6種としてしまうのは誤りです。

2.不動産業の事業区分とみなし仕入率

 ここでは、簡易課税制度における不動産業を、不動産売買業、不動産仲介業、不動産賃貸業、不動産管理業の4つに細分化します。そのうえで、それぞれ簡易課税制度のどの事業区分に該当するかを整理したものが下表です。

業態 内容 事業区分 みなし仕入率
不動産売買業 不動産を買い取り、そのままの状態で事業者に販売 第1種 90%
不動産を買い取り、そのままの状態で消費者に販売 第2種 80%
自己が建設した建売住宅を販売 第3種 70%
注文住宅を請け負って、下請けに建築させて販売 第3種 70%
中古住宅をリフォーム(塗装、修理等)して販売 第3種 70%
不動産仲介業 不動産の売買や賃貸を仲介 第6種 40%
不動産賃貸業 不動産の賃貸 第6種 40%
賃借人から原状回復費(内装工事などの建築リフォーム)を受け取った 第3種 70%
賃借人から原状回復費(室内クリーニングなど)を受け取った 第5種 50%
不動産管理業 他の者の不動産を管理 第6種 40%

 不動産業に簡易課税制度を適用する際は、その業態や内容に応じて該当する事業区分(みなし仕入率)が異なりますので注意が必要です。

損害賠償金に消費税が含まれる場合の仕入税額控除

 損害賠償金は、原則として消費税の課税対象にはなりません。例えば、交通事故を起こして相手の自動車が破損した場合に、損害賠償金(示談金)として修理費相当額10万円を支払っても、消費税の計算上は仕入税額控除の対象になりません。
 では、相手から交付された損害賠償金の請求書に、消費税10%を含む11万円が記載されていた場合は仕入税額控除の対象となるのでしょうか?
 今回は、このようなケースについて確認します。

1.損害賠償金と消費税の基本的関係

 消費税は、国内において事業者が行った資産の譲渡等を課税対象としています。資産の譲渡等とは、事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供をいうことから、次の4要件を満たすものが国内取引の課税の対象となります(消費税法第4条1項)。

(1) 国内取引であること
(2) 事業者が事業として行うものであること
(3) 対価を得て行われるものであること
(4) 資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供であること

 そして、心身又は資産につき加えられた損害の発生に伴って受ける損害賠償金は、資産の譲渡等の対価に該当しないものとして、原則として不課税とされています。ただし、次のような、その実質が資産の譲渡等の対価に該当すると認められるものは、その名目にかかわらず消費税の課税対象となります(消費税法基本通達5-2-5)。

(イ) 損害を受けた資産等が加害者等に引き渡される場合の損害賠償金で、そのまま又は軽微な修理を加えることにより使用できる場合
(ロ) 特許権や商標権などの無体財産権の侵害につき加害者から収受する損害賠償金
(ハ) 不動産等の明渡し遅滞により加害者から収受する損害賠償金

 今回採り上げるケースは、上記(イ)~(ハ)のいずれにも該当しません。

2.損害賠償金に消費税を含めることの可否

 では、今回の本題に入ります。今回採り上げるのは、次のようなケースです。

 交通事故の損害賠償金として、被害者から自動車の修理代として請求された金額に消費税が含まれていた。修理代は被害者が修理業者に直接支払っており、修理業者の請求書の宛先も被害者となっている。この場合、加害者側でその損害賠償金を仕入税額控除の対象としていいのかどうか?

 ここで疑問が生じるのは、損害賠償金に消費税を含めていいのかどうか、ということです。
 この点については、当事者である被害者と加害者の合意内容によるべきものと考えます。例えば、被害者が課税事業者であり、仕入税額控除ができることをもって消費税抜きの金額にすることも、当事者間の合意があれば可能です。損害額の計算は、当事者間において損害額の算定をどうするかという合意内容によります。
 したがって、損害賠償金に消費税を含めて加害者に請求することについては、合意があれば特に問題はないといえます

3.仕入税額控除できるか?

 損害賠償金を支払った加害者側で仕入税額控除ができるかどうかを考えるにあたって、損害賠償金に消費税が含まれているか否かということは関係ありません。
 今回のケースでは、修理代を被害者が修理業者に直接支払っており、修理業者の請求書の宛先も被害者となっています。この場合、加害者が被害者に支払う損害賠償金は、損害の発生を起因としてその損害額の補填をする性格のものですから、対価性が無いものとして不課税になります。したがって、損害賠償金に含まれる消費税についても、仕入税額控除の対象にはなりません

 もし、今回のケースで、修理代を加害者が修理業者に直接支払っていて、修理業者の請求書の宛先も加害者となっている場合は、損害賠償金に含まれる消費税を加害者側で仕入税額控除ができます。修理業者に対価の支払いをし、自動車の修理という役務の提供を受けているからです(上記1の冒頭で述べた課税対象となる4要件を満たすからです)。

消費税の申告期限も延長できます(令和2年度税制改正)

 従来から、法人税には申請による確定申告書の提出期限の延長が認められており、2017年度(平成29年度)税制改正では延長可能月数の拡大も行われていましたが、消費税には提出期限の延長が認められていませんでした。

 そのため、消費税の申告後に、会社の決算承認手続きの過程で決算額の変動など法人税の申告調整が発生した場合、消費税の修正申告や更正の請求を行う事務負担が生じていました。

 このような状況から、法人税の申告期限を延長している企業から、消費税の申告期限についても延長を求める声が上がっていました。

 今回は、法人税の申告期限延長可能月数が拡大された2017年度(平成29年度)税制改正と、消費税の申告期限が延長された2020年度(令和2年度)税制改正の内容を確認します。

1.法人税の申告期限延長特例の拡大

 2017年度(平成29年度)税制改正で、企業と投資家の対話の充実を図り、上場企業等が株主総会の開催日を柔軟に設定できるようにするため、法人税の申告期限の延長可能月数が1か月から4か月に拡大されました。

(1) 会社法上の取扱い

 会社法上、法人は柔軟に株主総会の日の設定が可能とされています。例えば3月決算法人が、決算日から4か月後である7月末に株主総会を開催することが可能であり、8月以降に株主総会を開催することも可能とされています。

(2) 法人税法上の取扱い

① 原則

 内国法人は、原則として各事業年度終了の日の翌日から2か月以内に税務署長に対し、確定した決算に基づく申告書を提出しなければならないとされています。
 例えば3月決算法人の場合は、5月末までに申告書を提出しなければなりません。

② 特例(平成29年度税制改正)

 定款の定め又は特別な事情があることにより、その事業年度以降の各事業年度終了の日の翌日から2か月以内にその各事業年度の決算についての定時株主総会が招集されない常況にあると認められるときは、納税地の所轄税務署長は、その法人の申請に基づき、その事業年度以後の各事業年度の申告書の提出期限を1か月間延長をすることができます。
 例えば3月決算法人の場合は、5月末の提出期限を1か月延長して6月末とすることができます。

 ただし、次のイ又はロに掲げる場合に該当するときには、それぞれに掲げる期間を延長することができます。

イ.会計監査人を置き定款等の定めがある場合

 法人が、会計監査人を置いている場合で、かつ、定款、寄附行為、規則その他これらに準するもの(以下「定款等」といいます)の定めによりその事業年度以降の各事業年度終了の日の翌日から3か月以内にその各事業年度の決算についての定時株主総会が招集されない常況にあると認められるときには、確定申告書の提出期限をその定めの内容を勘案して4か月を超えない範囲内において税務署長が指定する月数の期間まで延長することができます。
 例えば3月決算法人の場合、5月末の提出期限を4か月延長して9月末とすることができます。

ロ.特別の事情がある場合

 特別の事情があることにより各事業年度終了の日の翌日から3か月以内にその各事業年度の決算についての定時株主総会が招集されない常況にあることその他やむを得ない事情があると認められるときには、税務署長が指定する月数の期間まで延長することができます。

(3) 適用時期

 上記(2)②の改正は、2017年(平成29年)4月1日以降の申請に係る法人税から適用されます。

 なお、これらの申請は、確定申告書等に係る事業年度終了の日までに、定款等の定め又は特別の事情の内容、指定を受けようとする月数等を記載した申請書(申告期限の延長の特例の申請書) をもって行います。

(4) 留意事項

 2017年度(平成29年度)税制改正では、法人税の申告期限は延長されましたが、法人税の納付期限は延長されていませんので、確定申告期限(事業年度終了の日の翌日から2か月以内)までに見込納付をする必要があります。
 また、法人税だけではなく、住民税及び事業税についても、申告期限の延長の特例の申請をする必要があるので、ご注意ください。

2.消費税の申告期限の特例の創設

 2017年度(平成29年度)税制改正では、法人税の申告期限は延長されましたが、消費税の申告期限は従来のままでした。
 そこで、法人税と消費税の申告期限が異なることによる事務負担を軽減するために、2020年度(令和2年度)税制改正で消費税の申告期限の特例が創設されました。

(1) 特例の内容(令和2年度税制改正)

 法人税の確定申告書の提出期限の延長の特例を受けている法人が、消費税の確定申告書の提出期限を延長する旨の届出書(消費税申告期限延長届出書)を提出した場合には、消費税の確定申告書の提出期限が1か月延長されます。

 届出の効力が生じるのは、提出した日の属する事業年度以後の各事業年度の末日の属する課税期間からです。

(2) 適用時期

 2021年(令和3年)3月31日以後に終了する事業年度の末日の属する課税期間から適用されます。
 例えば3月決算法人の場合、2020年(令和2年)4月1日~2021年(令和3年)3月31日の課税期間から適用されます。

(3) 留意事項

 法人税と同様に、確定申告書の提出期限が延長された期間の消費税の納付については利子税が発生するため、見込納付をする必要があります。
 また、消費税の課税期間を1か月ごと又は3か月ごとに短縮している場合、提出期限の延長が認められる課税期間は、事業年度の末日の属する課税期間のみとなります。

中間申告期限は督促状が届いてもコロナ延長可能

 先日、「新型コロナ対応で中間申告も期限延長できます(延滞税に注意!)」という記事を書きましたが、その際に疑問に思ったのが、税務署側では納税者が中間申告のコロナ延長申請をするまでその事実を知ることができないため、納税者に督促状が送られてくるのではないかということでした。

 この点について、国税庁では「中間申告書の提出期限の延長に関するお知らせ」の案内文を納税者に送付する措置をとっているようです。

 今回は、「中間申告書の提出期限の延長に関するお知らせ」の内容を確認します。

1.納税者の不安を払拭するため

 国税庁では、2020年(令和2年)5月現在ですでに中間申告期限が到来している納税者には、督促状の送付前に「中間申告書の提出期限の延長に関するお知らせ」の案内文を個別に送付するとともに、6月以降に中間申告期限が到来する納税者には案内文を中間申告書に同封することとしています。
 期限延長(個別延長)を予定していても、延長がなされるまで督促状が送付される場合があるためです。

 中間申告書の提出がなく、その提出期限に提出があったとみなされた後でも、新型コロナウイルスを理由とする提出期限の延長は可能とされています。

 しかし、この期限延長がなされるまでは督促状が発送される場合があることから、納税者が不安を抱くことが懸念されるため、今回の対応となったようです。

2.コロナ延長申請で督促状は効力を失う

 「お知らせ」では、中間申告書についてその提出期限までに提出がなかった場合には、その提出期限に提出があったものとみなされていますが、みなされた後であっても、提出期限の個別延長は可能であることを改めて周知しています。

 そして、中間申告書の提出ができることとなった時点で、中間申告書の提出の際に、その中間申告書の余白部分に「新型コロナウイルス感染症の影響による期限延長申請」である旨を記載して提出することを求めています。

 また、中間申告書を提出できない状態が確定申告書の提出期限まで続く場合には、中間申告書の提出は不要となることを周知しています。

 提出期限の延長申請を予定している場合であっても督促状が送付される場合がありますが、国税庁は上記と同様に、中間申告書の提出の際に、その中間申告書の余白部分に期限の延長申請である旨を記載して提出することにより、その提出日まで提出期限が延長され、その督促状は効力を失うと説明しています。

 さらに、延長申請をした後に督促状が届いた場合は、行き違いである旨を述べています。