FM宝塚でインボイス制度の解説をします

 2023(令和5)年10月1日から始まるインボイス制度について、FM宝塚で解説をさせていただくことになりました(提供:宝塚商工会議所)。

 インボイス制度が始まるとどうなるのか?
 免税事業者はインボイス発行事業者として登録した方がいいのか?
 登録するかどうかは何を基準に判断すればいいのか?
 課税事業者が免税事業者との取引を見直す際の注意点は?

などについて、パーソナリティーの芦田純子さんと一緒に解説をしていきます。

 自分は関係ないと思っていても、取引先などからインボイス対応について聞かれたときに、知識がなければ答えることができませんので、この放送を通してざっくりとインボイス制度の概要をつかんでいただければと思います。

 番組名は「インボイス制度ってな~に?」、初回放送は2022(令和4)年10月8日(土)8時15分~8時30分で、2022(令和4)年12月24日(土)までの全12回(再放送を含みます)の放送です。

放送スケジュール
2022/10/8(土) 8:15~8:30 ①本放送
2022/10/15(土) 8:15~8:30 ①再放送
2022/10/22(土) 8:15~8:30 ②本放送
2022/10/29(土) 8:15~8:30 ②再放送
2022/11/5(土) 8:15~8:30 ③本放送
2022/11/12(土) 8:15~8:30 ③再放送
2022/11/19(土) 8:15~8:30 ④本放送
2022/11/26(土) 8:15~8:30 ④再放送
2022/12/3(土) 8:15~8:30 ⑤本放送
2022/12/10(土) 8:15~8:30 ⑤再放送
2022/12/17(土) 8:15~8:30 ⑥本放送
2022/12/24(土) 8:15~8:30 ⑥再放送

適格請求書等の発行が免除される場合とは?

1.適格請求書等の交付義務と保存義務

 2023(令和5)年10月1日から「適格請求書等保存方式」(以下、「インボイス制度」といいます)が開始されます。
 インボイス制度の下では、適格請求書発行事業者は、取引の相手方(課税事業者に限ります)から求められたときは「適格請求書の交付義務が免除されるもの」に該当する場合を除き、適格請求書又は適格簡易請求書を交付し、その写しを保存しなければなりません。ただし、免税取引、非課税取引及び不課税取引のみを行った場合については、適格請求書等の交付義務はありません。
 では、「適格請求書の交付義務が免除されるもの」とは、どのような取引をいうのでしょうか?

2.適格請求書の交付義務が免除されるもの

 次の取引は、適格請求書発行事業者が行う事業の性質上、適格請求書を交付することが困難なため、適格請求書の交付義務が免除されます。したがって、適格請求書及び適格簡易請求書のいずれも交付する義務はありません。

(1) 3万円未満の公共交通機関(船舶、バス又は鉄道)による旅客の運送(公共交通機関特例)※①
(2) 出荷者等が卸売市場において行う生鮮食料品等の販売(出荷者から委託を受けた受託者が卸売の業務として行うものに限る)
(3) 生産者が農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等に委託して行う農林水産物の販売(無条件委託方式かつ共同計算方式により生産者を特定せずに行うものに限る)
(4) 3万円未満の自動販売機及び自動サービス機により行われる商品の販売等(自動販売機特例)※②
(5) 郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限る)

※① 3万円未満の公共交通機関による旅客の運送かどうかは、1回の取引の税込価額が3万円未満かどうかで判定します。したがって、1商品(切符1枚)ごとの金額や、月まとめ等の金額で判定することにはなりません。
 例えば、東京-新大阪間の新幹線の大人運賃が 13,200 円であり、4人分の運送役務の提供を行う場合には、4人分の 52,800 円で判定することとなります。

※② 自動販売機特例の対象となる自動販売機や自動サービス機とは、代金の受領と資産の譲渡等が自動で行われる機械装置であって、その機械装置のみで代金の受領と資産の譲渡等が完結するものをいいます。
 例えば、自動販売機による飲食料品の販売のほか、コインロッカーやコインランドリー等によるサービス、金融機関のATMによる手数料を対価とする入出金サービスや振込サービスのように機械装置のみにより代金の受領と資産の譲渡等が完結するものが該当することとなります。
 なお、小売店内に設置されたセルフレジを通じた販売のように機械装置により単に精算が行われているだけのもの、コインパーキングや自動券売機のように代金の受領と券類の発行はその機械装置で行われるものの資産の譲渡等は別途行われるようなもの及びネットバンキングのように機械装置で資産の譲渡等が行われないものは、自動販売機や自動サービス機による商品の販売等に含まれません。

適格請求書・適格簡易請求書の記載事項と記載例

 2023(令和5)年10月1日から適格請求書等保存方式(以下、「インボイス制度」といいます)がスタートします。
 インボイス制度の下では、適格請求書発行事業者は、取引の相手方(課税事業者に限ります)から求められたときは、適格請求書又は適格簡易請求書を交付し、その写しを保存しなければなりません(免税取引、非課税取引及び不課税取引のみを行った場合については、適格請求書等の交付義務はありません)
 以下では、適格請求書と適格簡易請求書の記載事項について確認します。

1.適格請求書

 適格請求書とは、次の事項が記載された書類(請求書、納品書、領収書、レシート等)をいいます。
 現行の区分記載請求書等保存方式(2019(令和1)年10月1日~2023(令和5)年9月30日)における請求書等の記載事項に加え、①、④及び⑤の下線部分が追加されます。

① 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
② 課税資産の譲渡等を行った年月日
③ 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等である旨)
課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率
税率ごとに区分した消費税額等(消費税額等とは、消費税額及び地方消費税額に相当する金額の合計額のことです)
⑥ 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

 例えば、飲食料品や日用雑貨の販売を行っている事業者が、現行の区分記載請求書等保存方式の下で発行している区分記載請求書の記載例は、次のようになります。

出所:国税庁ホームページ

 この事業者が適格請求書発行事業者となった場合に発行する適格請求書の記載例は、次のようになります。

出所:国税庁ホームページ

 区分記載請求書の記載事項と比較すると、①、④及び⑤の記載事項が追加されています。
 なお、適格請求書の様式は、法令等で定められていません。適格請求書として必要な事項が記載された書類であれば、請求書、納品書、領収書等その名称にかかわらず、適格請求書に該当します。

2.適格簡易請求書

 インボイス制度においては、適格請求書発行事業者が、小売業、飲食店業、写真業、旅行業、タクシー業又は駐車場業等のように不特定かつ多数の者を相手方として事業を行う場合には、適格請求書に代えて適格簡易請求書を交付することができます。
 適格簡易請求書の記載事項は、適格請求書の記載事項よりも簡易なものとされており、適格請求書の記載事項と比べると、「書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称」の記載が不要である点、「税率ごとに区分した消費税額等」又は「適用税率」のいずれか一方の記載で足りる点が異なります。
 なお、具体的な記載事項は、次のとおりです。

① 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
② 課税資産の譲渡等を行った年月日
③ 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲
渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等である旨)
④ 課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額
⑤ 税率ごとに区分した消費税額等又は適用税率

 例えば、小売業(スーパーマーケット)を営む事業者が、適格請求書発行事業者となった場合に発行する適格簡易請求書の記載例は、次のようになります(「適用税率のみを記載する場合」と「税率ごとに区分した消費税額等のみを記載する場合」の2例)。

出所:国税庁ホームページ

 なお、適格請求書及び適格簡易請求書の発行が免除されるケースについては、本ブログ記事「適格請求書等の発行が免除される場合とは?」をご参照ください。

インボイス登録すれば外税請求できると提案され・・・

 2023(令和5)年10月1日から適格請求書等保存方式(以下、「インボイス制度」といいます)がスタートします。最近は、このインボイス制度に関するご質問・ご相談を受けることが多くなっています。
 前回は、免税事業者である任意団体がインボイス対応を求められた例を挙げました(本ブログ記事「任意団体が主催する公募展の協賛金とインボイス対応」をご参照ください)。
 今回は、免税事業者である家電取付業者からのご相談を例に挙げます。

1.取引先からインボイス対応を打診された

 家電取付業者であるAさんは個人事業主で、現在は消費税の免税事業者です。Aさんのお仕事の流れは上図のようになっています。
 まず一般消費者Dが家電量販店Cでエアコン等の電気製品を購入し、その取り付けを家電量販店Cに依頼します。家電量販店Cは電気製品の取り付けを下請業者Bに依頼し、下請業者Bは契約のある家電取付業者のAさんに取り付けを委託します。取引先Bから委託を受けたAさんは、消費者D宅で電気製品の取り付けをし、その作業に係る報酬の請求書をBに発行すると、Bから報酬が支払われます。
 この度Aさんは、取引先Bからインボイス対応を打診されたのですが、その内容は「インボイス登録事業者になる場合は、現在の内税による請求を令和5年10月1日から外税による請求にしてもかまわない」というものでした。この打診に対してどう対応したらいいのか、Aさんからご相談がありました。

2.外税請求できるのならインボイス登録もあり

 現在の内税による請求が外税による請求に変わるとAさんにどのような影響があるかを考えてみます。
 例えばBに対して30万円の請求をする場合、現在の内税(30万円に消費税が含まれる)による請求をしたときのBからの領収書は次のようになっています。なお、下記領収書における「控除額」とは、Bが支給した部材代や機器使用料、振込手数料などですが、話を単純化するためにここでは0円としています。

支払金額 300,000円
請求額300,000円(内消費税27,272円)-控除額0円=支払金額300,000円

 Aさんがインボイス登録事業者になり、外税(30万円+消費税3万円)による請求をすると、Bからの領収書は次のようになります。

支払金額 330,000円
請求額330,000円(内消費税30,000円)-控除額0円=支払金額330,000円

 支払金額だけを見ると、当然のことながら、内税よりも外税による請求の方がAさんの受取金額は多くなります。しかし、インボイス登録事業者になるということは消費税の課税事業者になるということですので、Aさんには消費税の申告納税義務が生じます。この度のBからの打診に対しては、この消費税の申告納税も考慮して対応する必要があります。
 上記の例(外税請求)におけるAさんの納税額を試算してみます。この試算では、申告に不慣れなAさんは簡易課税を選択するものとし(Aさんが自分で申告をします)、事業区分は第5種とします。

①売上に係る消費税額 30,000円
②控除対象仕入税額(①×50%) 15,000円
③納税額(①-②) 15,000円

 試算の結果、Aさんの消費税納税額は15,000円となりました。この納税額も考慮したAさんの実質的な受取額(手取額)は330,000円-15,000円=315,000円となり、インボイス対応しない場合(免税事業者のまま内税請求する場合)の手取額300,000円よりも多くなります。
 したがって、Aさんはインボイス登録事業者になって外税請求をする方が有利になります。
 消費税の納税は、本体の30万円に加算された消費税3万円を全額納付するのではなく、仕入税額控除ができます(上記試算の②)。つまり、受け取った消費税のうち、いくらかは手元に残ることになります。これは、原則課税で消費税の納税額を計算しても同じ結果になります。

 仮に、Bが価格を据え置いたまま(現在の内税請求のまま)Aさんにインボイス登録を求めてきた場合、それに応じることはAさんにとって不利な選択になります。

①売上に係る消費税額 27,272円
②控除対象仕入税額(①×50%) 13,636円
③納税額(①-②) 13,636円

 Aさんの消費税納税額は、上記のとおり13,636円となります。この場合のAさんの実質的な受取額は300,000円-13,636円=286,364円となり、従来の手取額300,000円よりも少なくなります。
 多くの免税事業者は、価格を据え置かれたままインボイス登録事業者(課税事業者)になることを要請される可能性があり、その対応に苦慮しています。その点を踏まえると、この度のBの提案は検討するに値するものと言えます。

※ 免税事業者のインボイス登録については、本ブログ記事「適格請求書発行事業者の登録申請書の書き方と記載例(R3.10.1~R5.9.30提出分)」をご参照ください。



任意団体が主催する公募展の協賛金とインボイス対応

 2023(令和5)年10月1日から適格請求書等保存方式(以下、「インボイス制度」といいます)がスタートします。最近は、このインボイス制度に関するご質問を受けることが多くなっています。
 今回は、ある任意団体の方から受けたご相談を例として挙げます。

1.協賛者からインボイス対応を求められた

 この任意団体は、書道の芸術性を高め、書道文化の向上や普及を目的として設立されたものであり、会員の会費で運営されています。
 毎年秋に開催される公募展は、「書道芸術の相互錬磨や次世代の書道の担い手を発掘・育成する」という趣旨の下、幼年から小中学生を含む広く一般の方から書道作品の出品を募っており、協賛者からの協賛金で運営されています。
 協賛者(企業、団体及び個人)の名称や住所等は公募展のパンフレットに記載され、協賛金の額に応じて広告スペースが割り当てられています。
 先日、この公募展の協賛者(今年初めて協賛金に協力してくれた新規の協賛者)から、協賛金の領収書にインボイス対応ができるのかという問い合わせがあり、対応できない場合は来年の協賛金については出せないかもしれないということを示唆されました。
 そこで、そもそも任意団体としてインボイス対応ができるのか、また対応すべきなのかという今回のご相談になりました。
 なお、この任意団体の収入の柱は、会員からの会費、公募展の協賛金、会員の作品を展示販売する展覧会の収入(展覧会の収入の一部は被災地などへの義援金としています)、の3本であり、いずれも非収益事業として法人税の申告はしていません。
 また、これら3本のうち課税取引である展覧会の収入が1,000万円以下(3本合わせても1,000万円以下)であることから、消費税の申告もしていません。

2.インボイス登録事業者となれるのか?

 現行の消費税法(区分記載請求書等保存方式)では、協賛者側(課税事業者かつ原則課税)において、パンフレットに名称等が記載されることから「広告宣伝費(課税取引)」として仕入税額控除ができましたが、インボイス制度が導入されると仕入税額控除をするためには、任意団体が発行する領収書に登録番号や消費税率、消費税額が記載されていることが必要になるため、この度の問い合わせになったものと思われます。
 この問い合わせ(インボイス対応できるのか)については、結論を先に述べると、この任意団体には展覧会の収入という課税取引が既にあるため、インボイス登録事業者(課税事業者)になることは可能、ということになります。
 また、協賛金の趣旨については先に述べたとおり「書道芸術の相互錬磨や次世代の書道の担い手を発掘・育成する」というものですが、この趣旨に「広告宣伝の対価」という一面を加えることによって、協賛金が課税取引に該当することが明確になります。その上で、任意団体が発行する領収書に登録番号や消費税率、消費税額を記載しても差し支えありません。この点については、インボイス制度導入後は、任意団体側で課税売上、協賛者側で課税仕入と合わせておけば、特に問題はないと思われます。
 なお、広告スペースについてのルール(協賛金の額に応じて広告掲載枠が決まるなど)を整備しておかなければなりませんが、この点についてもこの任意団体は既に対応済みですので問題はありません(同じ広告掲載枠なのにA社は10万円の協賛金、B社は30万円の協賛金だとすると、差額の20万円はB社にとって寄附金になる可能性があります)。

3.インボイス登録事業者となることの税務上の影響

 では、この任意団体がインボイス登録事業者になった場合、税務上はどのような影響があるのでしょうか?
 協賛者側については、支払う協賛金について消費税の計算上これまで通り仕入税額控除が可能となります。
 任意団体側については、次の三つの影響があります。
 第一に、当然のことながら、消費税の申告納税義務が生じます。
 第二に、協賛金を「広告宣伝の対価」と位置付けるなら、法人税法上の収益事業となる可能性があり、その場合は消費税だけではなく法人税の申告納税義務も生じます。なお、収益事業となるか否かについては判断が難しく、税務署との協議が必要です。
 収益事業とならない場合は、法人税の申告納税義務はなく、消費税だけを申告納税すればよいことになります。
 第三に、消費税だけを申告納税する場合、協賛金だけではなく展覧会の収入も申告しなければなりません。
 展覧会の収入は法人税法上の非収益事業ですが、消費税法上の課税取引に該当します。法人税は収益事業だけが申告対象になりますが、消費税は非収益事業であっても課税取引に該当すれば申告対象になります。消費税は、収益事業部門及び非収益事業部門において行った課税資産の譲渡等について、合わせたところで申告をする必要があります。

4.任意団体が採りうる選択肢

 以上を勘案すると、この任意団体が採りうる選択肢は次のとおりです。

① 税金の申告納税義務は生じるが、協賛者の便宜(仕入税額控除)を図って、あえてインボイス登録事業者(課税事業者)になる。
② インボイス登録事業者にならずに、従来通りの領収書(登録番号、消費税率、消費税額の記載がないもの)を協賛者に発行する。なお、従来通りの領収書であっても、経過措置により、協賛者側では6年間は仕入税額控除(最初の3年間は80%、残りの3年間は50%)が可能です

 上記のうちどちらを選ぶかについての最終的な判断は任意団体に委ねますが、私見では、古くからのお付き合いのある協賛者は協賛金を広告宣伝の対価とは考えていないように思います。協賛者は協賛金の趣旨に賛同して協賛金を支払っているのであって、広告宣伝の対価として(つまり、仕入税額控除を期待して)支払っているのではないと思われます。
 協賛者には、協賛金本来の趣旨を説明し、インボイス登録事業者ではないことをお伝えし、任意団体本来のスタンスをご理解をいただく方が良いと思われます。
 この旨を相談者である任意団体に申し上げたところ、インボイス登録事業者にならないという②を選択されました。
 もっとも、ある程度は結論が出ていたようで、誰かに後押しをしてもらいたいために相談に来られたようでした。
 仮に、問い合わせのあった新規の協賛者からの協賛金がなくなるとしても、協賛金の趣旨に賛同してくれる人を、頑張って他で探すとのことでした。

※ 経過措置については、本ブログ記事「インボイス制度導入後の免税事業者からの仕入れに係る仕入税額控除の特例(経過措置)」をご参照ください。

適格請求書発行事業者の登録申請書の書き方と記載例(R3.10.1~R5.9.30提出分)

1.概要

 2023(令和5)年10月1日より適格請求書等保存方式(インボイス制度)が開始されます。
 適格請求書とは、売手が買手に対し正確な適用税率や消費税額等を伝えるための手段であり、登録番号の他一定の事項が記載された請求書や納品書、領収書等をいいます。
 この適格請求書を発行できるのは適格請求書発行事業者に限られており、適格請求書の保存と帳簿の保存が仕入税額控除の要件とされています。
 以下において、国内事業者(個人事業者かつ免税事業者)が適格請求書発行事業者の登録を受けようとする場合に税務署長に提出する「適格請求書発行事業者の登録申請書」の書き方について確認します。
 なお、2023(令和5)年10月1日から適格請求書発行事業者の登録を受けるためには、原則として2023(令和5)年3月31日までに申請書を提出する必要があります。

2.具体的な記載方法

(1) 「申請者」欄

 「氏名又は名称」欄には、屋号は記載せずに氏名(姓と名の間は1文字空けます)のみを記載します。
 屋号の公表を希望する場合は、別途「適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出書」の提出が必要です。
 「代表者氏名」欄と「法人番号」欄は、個人事業者の場合は記載不要です。

(2) 「事業者区分」欄

 「事業者区分」欄は、この申請書を提出する時点において課税税事業者である場合は課税事業者に、免税事業者である場合は免税事業者に✓を付けます。
 免税事業者に✓を付ける場合は、次葉「免税事業者の確認」欄の記載が必要です。

(3) 「困難な事情」欄

 「困難な事情」欄は、2023(令和5)年10月1日から登録を受けようとする事業者が、2023(令和5)年3月31日(特定期間における課税売上高又は給与等支払額が1,000万円を超えたことにより納税義務が免除されないこととなる場合は2023(令和5)年6月30日)までにこの申請書を提出できなかったことにつき困難な事情がある場合は、その困難な事情を記載します。
 例えば、「令和5年8月1日開業」などと記載します。なお、困難の度合いは問われません。

(4) 「免税事業者の確認」欄

 「免税事業者の確認」欄は、初葉の「事業者区分」欄で免税事業者に✓を付けた場合に記載します。
 2023(令和5)年10月1日から適格請求書発行事業者の登録を受ける場合は、上のチェックボックスに✓を付けます(下のチェックボックスに✓を付けた場合を除きます)。
 例えば、申請書提出時点(令和4年5月31日)において免税事業者であり、令和5年分(令和5年1月1日~令和5年12月31日)も免税事業者ですが、この申請書を提出して令和5年10月1日から適格請求書発行事業者の登録を受ける場合が該当します。
 上のチェックボックスに✓を付けた場合は、「個人番号」欄や「事業内容等」欄も記載します(個人番号を必ず記載し、本人確認書類の写しを添付します)。
 なお、新様式で「登録希望日」欄が新設されましたが、これは棚卸資産の調整措置の適用を考慮して設けられました。

 下のチェックボックスは、消費税課税事業者届出書又は消費税課税事業者選択届出書を提出している場合で、課税期間の初日から適格請求書発行事業者の登録を受ける場合に✓を付けます。
 例えば、申請書提出時点(令和4年5月31日)では免税事業者ですが、令和3年分(令和3年1月1日~令和3年12月31日)の課税売上高が1,000万円を超えたことにより令和5年分(令和5年1月1日~令和5年12月31日)は課税事業者となる場合(課税事業者届出書を提出しています)が該当します。
 この場合、右側にある「課税期間の初日」欄には、令和5年1月1日と令和5年10月1日のどちらを記載しても構いません。どちらを記載しても、登録年月日は令和5年10月1日となります。

(5) 「登録要件の確認」欄

 「登録要件の確認」欄は、すべての事業者が記載する必要があります。
 「課税事業者です。」欄は、申請書提出時点(令和4年5月31日)において免税事業者であっても、令和5年10月1日から適格請求書発行事業者の登録を受ける場合に「はい」に✓を付けます。
 「納税管理人を定める必要のない事業者です。」欄は、定める必要がない場合に「はい」に✓を付けます
 「消費税法に違反して罰金以上の刑に処せられたことはありません。」欄は、処せられたことがない場合に「はい」に✓を付けます(加算税や延滞税は罰金ではありません)。

※ 納税管理人を定める必要がない場合は、旧様式の登録申請書を使用することもできます。

簡易課税制度の届出等に関する災害特例

 災害の被災者には、消費税の届出等に関して、①やむを得ない事情がある場合の届出特例(宥恕規定)、②特定非常災害の特例、③簡易課税制度に係る災害特例、が措置されています。
 これらのうち、①と②は、課税事業者選択(又は選択不適用)と簡易課税制度選択(又は選択不適用)の両方について適用がありますが、③は簡易課税制度だけに適用されます。
 今回は、簡易課税制度だけに認められる③の「簡易課税制度に係る災害特例」について確認し、①の「やむを得ない事情がある場合の届出特例(宥恕規定)」にも言及します。。

※ 特定非常災害の特例については、本ブログ記事「特定非常災害に係る消費税の届出等に関する特例」をご参照ください。

1.簡易課税制度に係る災害特例

(1) 制度趣旨

 簡易課税制度については、災害その他のやむを得ない理由があるときは、特定非常災害の指定を受けない場合であっても、所轄税務署長の承認により、その選択を変更することができる特例が設けられています。
 例えば、災害その他やむを得ない理由により、著しく事務処理能力が低下したために原則課税から簡易課税に変更したり、臨時多額の設備投資が必要になったために簡易課税から原則課税に変更するなど、その課税期間開始前に想定されていなかった事実が生じた場合に、その必要に応じて簡易課税制度の適用の変更を認めようとするものです。

(2) やむを得ない理由とは?

 やむを得ない理由とは、おおむね以下ののような災害の発生等をいいます(消基通13-1-7)。
 これは、災害等があった場合に申告、納付、届出等の期限の延長を認める国税通則法11条に規定する災害その他の事実と同様です。

① 地震、暴風、豪雨、豪雪、津波、落雷、地すべりその他の自然現象の異変による災害
② 火災、火薬類の爆発、ガス爆発、その他の人為による異常な災害
③ ①又は②に掲げる災害に準ずる自己の責めに帰さないやむを得ない事実

(3) 承認申請の期限

 この特例は、被災した事業者が所轄税務署長に対してこの特例の承認を受ける旨の申請書を提出し、その承認を受けた場合に適用があります。
 申請書の提出期限は、原則として災害等のやんだ日から2月以内です。ただし、災害等のやんだ日が、災害等の生じた課税期間の末日の翌日以後に到来する場合は、災害等の生じた課税期間に係る申告書の提出期限(国税通則法11条の規定により申告書の提出期限が延長された場合はその延長された申告書の提出期限)となります。

(4) 承認又は却下の処分とみなし承認

 申請の承認又は却下の処分は書面により通知するものとされていますが、災害等の生じた課税期間の確定申告期限までに承認又は却下の処分がなかったときは、その日においてその承認があったものとみなされます。
 ただし、災害その他やむを得ない理由のやんだ日がその課税期間の末日の翌日以後に到来する場合は、この限りではありません。

(5) 継続適用の解除

 この特例により簡易課税制度選択届出書を提出する場合は、次の取扱いは適用されません。

① 課税事業者を選択した事業者が、調整対象固定資産の仕入れ等をして一般課税により申告した場合に、3年間継続して課税事業者となり一般課税による申告が義務付けられる取扱い
② 新設法人又は特定新規設立法人が、調整対象固定資産の仕入れ等をして一般課税により申告した場合に、3年間継続して課税事業者となり一般課税による申告が義務付けられる取扱い
③ 高額特定資産の仕入れ等をして一般課税により申告した事業者が、3年間継続して課税事業者となり一般課税による申告が義務付けられる取扱い

 また、この特例により簡易課税制度選択不適用届出書を提出する場合は、簡易課税制度の2年間の継続適用の取扱いは適用されません。

(6) 不適用の特例申請ができる場合

 この特例は、一つの災害等につき一度だけ適用することとされています。
 また、災害等があった課税期間の翌課税期間以後に災害等がやんだ場合は、2年間の継続適用の規定により簡易課税制度選択不適用届出書を提出することができない課税期間においてはこの特例を適用し、その後の課税期間においては次の「やむを得ない事情がある場合の届出特例(宥恕規定)」によるものとされています。
 したがって、災害その他やむを得ない理由が生じた日の属する課税期間の翌課税期間以後の課税期間のうち、この特例により不適用の特例申請ができる課税期間は次の課税期間です。

 次に掲げる要件のすべてに該当する課税期間のうちいずれか一の課税期間
① 災害等の生じた日から災害等のやんだ日までの間に開始した課税期間であること
② 不適用の承認を受けた災害等の生じた日の属する課税期間の翌課税期間以後の課税期間でないこと
③ 簡易課税制度の適用を開始した課税期間の初日から2年を経過する日までの間に開始した課税期間であること

2.やむを得ない事情がある場合の届出特例(宥恕規定)

 簡易課税制度を選択しよう(又はやめよう)とする事業者が、やむを得ない事情により、簡易課税制度選択届出書(又は簡易課税制度選択不適用届出書)を期限までに提出できなかった場合には、そのやむを得ない事情がやんだ日から2か月以内に、簡易課税制度選択届出書(又は簡易課税制度選択不適用届出書)と特例承認申請書を所轄税務署長に提出し、その承認を受けたとき(みなし承認はありません)は、承認を受けた課税期間から簡易課税制度を適用する(又はやめる)ことができます。
 やむを得ない事情とは、以下に掲げるように災害の発生等をいい、制度の不知や提出失念等は「やむを得ない事情」に該当しません。

(1) 震災、風水害、雪害、凍害、落雷、雪崩、がけ崩れ、地滑り、火山の噴火等の天災または火災その他人的災害で自己の責任によらないものに基因する災害が発生したことにより、届出書の提出ができない状態になったと認められる場合

(2) (1)の災害に準ずるような状況または、その事業者の責めに帰することができない状態にあることにより、届出書の提出ができない状態になったと認められる場合

(3) その課税期間の末日前おおむね1か月以内に相続があったことにより、その相続に係る相続人が新たに課税事業者選択届出書などを提出できる個人事業者となった場合

(4) (1)から(3)までに準ずる事情がある場合で、税務署長がやむを得ないと認めた場合

特定非常災害に係る消費税の届出等に関する特例

 災害の被災者には、災害減免法、国税通則法において、税の軽減免除や申告期限の延長が措置されています。
 消費税ではこれらに加えて、①やむを得ない事情がある場合の届出特例(宥恕規定)、②特定非常災害の届出特例、③簡易課税制度に係る災害特例が設けられています。
 今回は、このうちの②特定非常災害の届出特例について確認します。

※ ①やむを得ない事情がある場合の届出特例(宥恕規定)については、本ブログ記事「消費税課税事業者選択届出書の提出を失念した場合の対応方法」をご参照ください。

1.特定非常災害の指定を受けた場合の特例

 特定非常災害※1の被災事業者※2が、その被害を受けたことによって、被災日※3を含む課税期間以後の課税期間について、指定日※4までに所轄税務署長に「消費税課税事業者選択届出書(又は選択不適用届出書)」「消費税簡易課税制度選択届出書(又は選択不適用届出書)」を提出すれば、その適用を受けよう(又はやめよう)とする課税期間の初日の前日に提出があったものとみなし、適用を受ける(又はやめる)ことができます。

※1 「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律」2条1項の規定により、特定非常災害として指定された非常災害。
※2 特定非常災害により申告期限等が延長される(国税通則法11条)こととなる地域に納税地を有する事業者、又はその他の地域に納税地を有する事業者のうち特定非常災害により被災した事業者。
※3 事業者が特定非常災害により被災事業者となった日。
※4 特定非常災害の状況及び特定非常災害により申告に関する期限の延長の状況を勘案して国税庁長官が定める日。

 この特例により、例えば、次のようなことが可能になります。

(1) 免税事業者が、被害を受けた設備を買い換えるため、課税事業者を選択して原則課税により申告を行い還付を受けた後、課税事業者の選択をやめて免税事業者になることができます。

(2) 簡易課税を選択している事業者が、特定非常災害により相当な損失を受け、緊急な設備投資等を行う場合には、簡易課税制度の適用をやめて原則課税により申告を行うことができます。

 なお、この特例措置の規定に基づく届出書には、その特例の適用を受け、又はやめようとする開始課税期間を明記するとともに、この特例による届出であることを明らかにするため、届出書の参考事項欄等に特定非常災害の被災事業者である旨を記載します(消基通19-1-5)。
 また、被災事業者となった新設法人又は特定新規設立法人が国税通則法11条の規定の適用を受けたものでない場合には、この特例の適用を受けようとする旨等を記載した届出書を、設立当初の基準期間がない事業年度のうち最後の事業年度終了の日と指定日とのいずれか遅い日までに所轄税務署長に提出する必要があります(措法86の5④、措規37の3の2①)。

2.継続適用等の解除

(1) 課税事業者選択、簡易課税制度選択

 被災事業者が指定日までに提出する課税事業者選択届出書、課税事業者選択不適用届出書、簡易課税制度選択届出書又は簡易課税制度選択不適用届出書については、次の取扱いは適用されません。

① 課税事業者を選択した場合の2年間の継続適用の取扱い
② 簡易課税制度を選択した場合の2年間の継続適用の取扱い
③ 課税事業者を選択した事業者が、調整対象固定資産の仕入れ等をして一般課税により申告した場合に、3年間継続して課税事業者となり一般課税による申告が義務付けられる取扱い

 したがって、被災事業者は、2年間継続適用の要件及び3年間継続適用の要件という制限に関係なく、課税事業者選択不適用届出書を提出することができます。
 また、簡易課税制度選択届出書及び簡易課税制度選択不適用届出書の提出についても、提出の制限はありません。

(2) 新設法人、特定新規設立法人

 新設法人又は特定新規設立法人(いずれも基準期間のない法人)が被災事業者となった場合には、次の取扱いは適用されません。

① 新設法人が調整対象固定資産の仕入れ等をして一般課税により申告した場合に、3年間継続して課税事業者となり一般課税による申告が義務付けられる取扱い
② 特定新規設立法人が調整対象固定資産の仕入れ等をして一般課税により申告した場合に、3年間継続して課税事業者となり一般課税による申告が義務付けられる取扱い

 したがって、基準期間ができて以後の事業年度については、3年間の制限に関係なく事業者免税点制度の適用が可能となり、免税事業者となるかどうかは、原則通り、基準期間における課税売上高、特定期間における課税売上高、課税事業者選択届出書の提出の有無等によって判定することとなります(消基通19-1-4)。
 また、簡易課税制度選択届出書の提出についても、制限はありません。
 なお、被災事業者となった新設法人又は特定新規設立法人が国税通則法11条の規定の適用を受けたものでない場合には、この特例の適用を受けようとする旨等を記載した届出書を、設立当初の基準期間がない事業年度のうち最後の事業年度終了の日と指定日とのいずれか遅い日までに所轄税務署長に提出する必要があります(措法86の5④、措規37の3の2①、消基通19-1-3)。

(3) 高額特定資産を取得した場合

 被災事業者が、「被災日前に高額特定資産の仕入れ等を行った場合」又は「被災日から指定日以後2年を経過する日の属する課税期間の末日までの間に高額特定資産の仕入れ等を行った場合」に該当するときは、被災日の属する課税期間以後の課税期間については、次の取扱いは適用されません。

高額特定資産の仕入れ等をした場合に3年間継続して課税事業者となり一般課税による申告が義務付けられる取扱い

 したがって、被災日の属する課税期間以後の課税期間については、3年間の制限に関係なく事業者免税点制度の適用が可能となり、免税事業者となるかどうかは、原則通り、基準期間における課税売上高、特定期間における課税売上高、課税事業者選択届出書の提出の有無等によって判定することとなります。
 また、簡易課税制度選択届出書の提出についても、制限はありません。
 なお、この特例を適用する被災事業者が国税通則法11条の規定の適用を受けたものでない場合には、この特例の適用を受けようとする旨等を記載した届出書を、高額特定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の末日と指定日とのいずれか遅い日までに所轄税務署長に提出する必要があります(措法86の5⑤、措規37の3の2②、消基通19-1-3)。

3.仮決算による中間申告書の取扱い

 被災事業者が、この特例の適用を受けて「簡易課税制度選択届出書」又は「簡易課税制度選択不適用届出書」を提出した場合において、その提出前にその課税期間に係る仮決算による中間申告書を提出しているときは、仕入控除税額は一般課税と簡易課税で異なることとなりますが、すでに提出された中間申告書については、その仕入控除税額を修正する必要はありません。

中間申告義務がない場合の「任意の中間申告制度」の留意点

1.中間申告不要の場合

 消費税の課税事業者は、中間申告が不要の場合を除き、中間申告書を提出してその申告書に記載された税額を申告期限までに納付しなければなりません。
 中間申告書の提出義務は、直前の課税期間の確定消費税額(年税額)に応じて、次のように規定されています。

直前課税期間の確定消費税額(国税) 中間申告 申告期限 納付税額
4,800万円超 1月ごと年11回 一月中間申告対象期間の末日の翌日から2か月以内(最初の1か月は3か月以内) 直前課税期間の確定消費税額×1/12
400万円超4,800万円以下 3月ごと年3回 三月中間申告対象期間の末日の翌日から2か月以内 直前課税期間の確定消費税額×3/12
48万円超400万円以下 6月ごと年1回 六月中間申告対象期間の末日の翌日から2か月以内 直前課税期間の確定消費税額×6/12
48万円以下 中間申告不要

 中間申告が不要の場合は、次のとおりです。

(1) 設立1期目の法人(合併によるものを除く)
(2) その年に新規開業した個人事業者(相続による事業承継を含む)
(3) 事業年度が3か月以下の法人
(4) 課税期間の短縮の特例を受けている事業者
(5) 直前課税期間の確定消費税額(年税額・国税のみ)が48万円以下の事業者

 今回は、中間申告が不要である上記(5)の事業者が、中間申告書を提出する場合の任意の中間申告制度についてみていきます。

2.任意の中間申告制度

 直前課税期間の確定消費税額(年税額・国税のみ)が48万円以下であることにより中間申告書を提出する義務がない事業者は、「任意の中間申告書を提出する旨の届出書」を提出することにより、その届出書の提出をした日以後にその末日が到来する六月中間申告対象期間から、自主的に六月中間申告書及び納付をすることができます。
 例えば、2022(令和4)年から適用を受けようとする個人事業者は、2022(令和4)年6月30日までに届出書を納税地の所轄税務署長に提出すれば、同年8月31日を期限として自主的に六月中間申告書及び納付をすることができます。
 また、2022(令和4)年4月1日に事業年度が開始する法人は、2022(令和4)年9月30日までに届出書を納税地の所轄税務署長に提出すれば、同年11月30日を期限として自主的に六月中間申告書及び納付をすることができます。
 任意の中間申告制度を選択した事業者が、その適用を受けることをやめようとするときは、「任意の中間申告書を提出することの取りやめ届出書」を納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。

3.任意の中間申告書を提出しなかった場合

 任意の中間申告制度を選択した事業者が、六月中間申告書をその提出期限までに提出しなかった場合には、「任意の中間申告書を提出することの取りやめ届出書」を提出したものとみなされます。
 したがって、任意の中間申告制度には、提出期限までに中間申告書の提出があったものとみなされる「みなし申告」の取扱いはなく、任意の中間申告をしたい場合には必ず申告書の提出が必要です。
 一方、任意の中間申告制度では、提出期限までに申告書の提出がない限り、未納となって延滞税が課されることはありません。

4.翌期以降の任意の中間申告制度の選択の効力

 上記3で述べたように、任意の中間申告制度を選択した事業者が、六月中間申告書をその提出期限までに提出しなかった場合には、「任意の中間申告書を提出することの取りやめ届出書」を提出したものとみなされます。
 では、当期に任意の中間申告制度を選択して任意の中間申告書を提出した事業者が、来期は基準期間(前期)における課税売上高が1,000万円以下となるため免税事業者となる場合はどうでしょうか?
 このように免税事業者となった場合については、中間申告書や確定申告書を提出する義務がないことから、任意の中間申告制度を選択していたとしても中間申告書を提出する必要はありません。
 したがって、中間申告書を提出しなかったとしても「任意の中間申告書を提出することの取りやめ届出書」を提出したものとはみなされず、引き続き任意の中間申告制度の選択の効力は存続します。
 一方、課税事業者については、直前の課税期間が免税事業者であったため確定申告書を提出する義務がなかったことや、直前の課税期間に還付申告書を提出していたため、直前の課税期間の確定消費税額の金額がない場合であっても、任意の中間申告制度の選択の効力を存続させるためには、自主的に中間申告書(消費税額を「0円」とする中間申告書又は仮決算による中間申告書)を提出する必要があります。

消費税課税事業者選択届出書の提出を失念した場合の対応方法

 例えば、高額な設備投資をした場合には、その課税期間の課税仕入高が課税売上高を上回ることがあり、課税事業者であれば申告することによって消費税の還付を受けることができますが、免税事業者は申告書を提出することができませんので、消費税の還付を受けることができません。
 このような場合には、基準期間における課税売上高及び特定期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、免税事業者は課税事業者になることを選択することにより、消費税の還付を受けることができます。
 免税事業者が課税事業者になるためには、「消費税課税事業者選択届出書」を所轄税務署長に提出しなければなりませんが、この提出をしていなかった場合は、消費税の還付を受けるためにどのように対応すればいいでしょうか?

1.やむを得ない事情があるときの救済措置(宥恕規定)

 課税事業者を選択しようとする事業者が、やむを得ない事情により、消費税課税事業者選択届出書を期限までに提出できなかった場合には、そのやむを得ない事情がやんだ日から2か月以内に、課税事業者選択届出書と特例承認申請書(「消費税課税事業者選択(不適用)届出に係る特例承認申請書」)を所轄税務署長に提出し、その承認を受けたとき(みなし承認はありません)は、承認を受けた課税期間から課税事業者になることができます。
 では、「やむを得ない事情」とは、どのような事情のことをいうのでしょうか?
 やむを得ない事情とは、以下に掲げるように災害の発生等をいい、制度の不知や提出失念等は「やむを得ない事情」に該当しません。

(1) 震災、風水害、雪害、凍害、落雷、雪崩、がけ崩れ、地滑り、火山の噴火等の天災または火災その他人的災害で自己の責任によらないものに基因する災害が発生したことにより、届出書の提出ができない状態になったと認められる場合

(2) (1)の災害に準ずるような状況または、その事業者の責めに帰することができない状態にあることにより、届出書の提出ができない状態になったと認められる場合

(3) その課税期間の末日前おおむね1か月以内に相続があったことにより、その相続に係る相続人が新たに課税事業者選択届出書などを提出できる個人事業者となった場合

(4) (1)から(3)までに準ずる事情がある場合で、税務署長がやむを得ないと認めた場合

2.制度の不知や届出書の提出を忘れていた場合

 やむを得ない事情がなく、単に課税事業者選択届出書の提出を忘れていた場合等には、上記1の宥恕規定は適用されません。
 このような場合には、消費税の還付を受けるために、課税期間の短縮特例の選択決算期の変更によって対応することが考えられます。
 課税事業者選択届出書の提出を忘れていた場合、課税期間が開始してすぐに1か月短縮特例の届出書と課税事業者選択届出書を提出すれば、課税期間を短縮しない場合に比べて11か月早く課税事業者となることができます。
 ただし、その後2年間(又は3年間)は1か月ごとに申告しなければなりませんので、煩雑さが伴います。
 また、決算期を変更して、変更後の事業年度が開始する前に課税事業者選択届出書を提出する方法もあります。
 しかし、この方法によると①法人税の申告時期も変更になる、②会社の事業計画の期間に影響がある、③1年でない事業年度が生じるため法人税の欠損金の繰越期間に影響がある、などの点に注意する必要があります。

※ 特定非常災害の指定を受けた場合の届出特例については、本ブログ記事「特定非常災害に係る消費税の届出等に関する特例」をご参照ください。