免税事業者からの仕入れに係る経過措置(8割控除の後は7割・5割・3割控除へ段階的に縮小)

 インボイス制度が始まって以降、中小企業・小規模事業者からは依然として「経理負担が重い」「消費税の負担が増えた」という声が多く聞かれます。
 こうした状況を踏まえ、2026(令和8)年度税制改正において仕入税額控除の経過措置が見直され、その適用期限が延長されました。
 今回は、免税事業者からの仕入に係る仕入税額控除の経過措置について、改正内容を確認します。

1.免税事業者からの仕入れに係る経過措置とは?

 インボイス制度の下では、インボイス(登録番号が記載された請求書等)が交付されない課税仕入れは、買い手側で仕入税額控除をすることができません。

 免税事業者はインボイスを発行することができませんので、免税事業者との取引の縮小や廃止を考える事業者が出てくる可能性があります。

 このような事態を避けるため、免税事業者からの仕入れであっても、一定期間は一定割合の控除を認める「経過措置」が設けられました。

 具体的には、インボイス制度が導入された2023(令和5)年10月1日から2026(令和8)年9月30日までの3年間は仕入税額の8割控除を認め、2026(令和8)年10月1日から2029(令和11)年9月30日までの3年間は5割控除を認めるというものでした。

期間 控除割合
2023(令和5)年10月1日~2026(令和8)年9月30日 8割
2026(令和8)年10月1日~2029(令和11)年9月30日 5割
2029(令和11)年10月1日~ 控除不可

2.改正後の控除割合の推移

 今回の税制改正により、控除割合の引下げペースが緩和され、次のように段階的に縮小されることとなりました。

期間 控除割合
2023(令和5)年10月1日~2026(令和8)年9月30日 8割
2026(令和8)年10月1日~2028(令和10)年9月30日 7割
2028(令和10)年10月1日~2030(令和12)年9月30日 5割
2030(令和12)年10月1日~2031(令和13)年9月30日 3割
2031(令和13)年10月1日~ 控除不可

 改正前は「8割→5割」という2段階の縮小が予定されていましたが、改正後は「8割→7割→5割→3割」という4段階の縮小になり、 買い手側の負担増のペースが緩和されました。

3.年間適用上限額の引下げ

 経過措置の濫用防止の観点から、経過措置の対象となる免税事業者ごとの課税仕入れの合計額に係る制限も改正されています。

 改正前は、一の免税事業者から行う経過措置の対象となる課税仕入れの額の合計額がその年又はその事業年度で税込み10億円を超える場合には、その超えた部分の課税仕入れについて経過措置は適用できませんでした。

 今回の改正で、税込み10億円という年間適用上限額が、税込み1億円に引き下げられました。

 この改正も、2026(令和8)年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます。

2割特例・3割特例を適用した課税期間の翌課税期間の簡易課税制度選択届出書はいつまでに提出すればいいか?(令和8年度税制改正)

 消費税の申告方法には、仕入控除税額について実額で計算する「本則課税」、業種ごとに決められたみなし仕入率を用いて仕入控除税額を計算する「簡易課税」、売上税額の2割を納税額として計算する「2割特例」、売上税額の3割を納税額として計算する「3割特例」があります。

 これらのうち、2割特例は2026(令和8)年9月30日の属する課税期間の末日を以って終了し、3割特例は個人事業者限定で2027(令和9)年分と2028(令和10)年分の消費税申告で適用することができます。

 2割特例と3割特例については事前の届出が不要で、適用を受ける旨を確定申告書に付記することで適用できますが、簡易課税は、原則として適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。

 しかし、2割特例や3割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間に簡易課税の適用を受ける場合は、「消費税簡易課税制度選択届出書の提出に係る特例」が設けられており、必ずしも適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに提出する必要はありません。

 2割特例・3割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間であれば、簡易課税制度選択届出書を事前(簡易課税の適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで)に提出していないときでも、簡易課税の適用を受けることができます。

 2割特例・3割特例の適用を受けたインボイス発行事業者が、その適用を受けた課税期間の翌課税期間に係る確定申告期限までに、その翌課税期間から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した簡易課税制度選択届出書を提出した場合には、その翌課税期間から簡易課税の適用を受けることができます(消費税簡易課税制度選択届出書の提出に係る特例)。

 例えば、、令和8年分まで2割特例で申告を行っていた個人事業者が、翌年分(令和9年分)は3割特例で申告しようとしていたところ、3割特例より簡易課税の方が有利であることが判明した場合は、令和9年分から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した簡易課税制度選択届出書を令和9年分の消費税確定申告期限(令和10年3月31日)までに提出すれば、令和9年分から簡易課税制度の適用を受けることができます。

 また、令和10年分まで3割特例で申告を行っていた個人事業者が、翌年分(令和11年分)の申告を簡易課税で行う場合は、令和11年分から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した簡易課税制度選択届出書を令和11年分の消費税確定申告期限(令和12年4月1日)までに提出すれば、令和11年分から簡易課税制度の適用を受けることができます。

赤文字部分が改正で変わった箇所です。改正前は、「その適用を受けた課税期間の翌課税期間の末日」とされていました(令和9年分の消費税申告を簡易課税で行う場合は、令和9年12月31日までに選択届出書を提出しないと、令和9年分の申告を簡易課税で行うことはできないとされていました)。

3割特例と簡易課税制度はどちらが有利か?

 2023(令和5)年10月1日に導入されたインボイス制度は、多くの事業者に影響を及ぼしています。
 特に、本来は免税事業者であるにもかかわらず、インボイス制度の導入を機にインボイス発行事業者の登録をして課税事業者となった事業者の負担は大きいといえます。

 このような事業者の税負担や事務負担を軽減するために、簡易課税制度と基本的には同じ計算構造である「2割特例」が設けられましたが、2026(令和8)年9月30日に期限を迎えます。

 そこで、引き続き小規模事業者の負担に配慮した「3割特例」が、2026(令和8)年度税制改正で設けられました。

 3割特例は個人事業者のみが適用可能(法人は適用不可)であり、かつ、2027(令和9)年分と2028(令和10)年分の消費税申告においてのみ適用可能となっています

 今回は、「3割特例」と簡易課税制度について、税負担と事務負担の両面から比較を行います。

※ 3割特例については、「2割特例が終われば個人事業者限定で3割特例あり(令和8年度税制改正)」をご参照ください。

1.納税額の計算上どちらが有利か?

 3割特例は売上税額の3割を納税額とするものですが、具体的には簡易課税制度と同様に以下のように計算します。

 消費税納税額=課税売上げに係る消費税額-課税売上げに係る消費税額×70%

 簡易課税制度におけるみなし仕入率は、事業区分に応じて下表のように定められていますが、3割特例は、簡易課税制度におけるみなし仕入率を事業区分にかかわらず一律に70%とすることと同義です。

 したがって、下表の第4種から第6種に該当する事業のうち1種類の事業のみを行う場合は、簡易課税制度よりも「3割特例」の方が納税額が少なくなり有利となります(第3種に該当する事業のみを行う場合は、簡易課税制度のみなし仕入率70%=3割特例の70%となり、両者の納税額は同額となります)。

事業区分 該当する事業 みなし仕入率
第1種事業 卸売業 90%
第2種事業 小売業、農林漁業(飲食料品の譲渡に係る事業) 80%
第3種事業 製造業、建築業、農林漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く)など 70%
第4種事業 第1・2・3・5・6種以外の事業(飲食店業など) 60%
第5種事業 運輸・通信業、金融・保険業、サービス業(飲食店業を除く) 50%
第6種事業 不動産業 40%

 第1種から第6種に該当する事業のうち2種類以上の事業を行う場合は、簡易課税制度のみなし仕入率と3割特例の70%を比較して、どちらか有利な方を適用します。

 例えば、第1種と第2種に該当する事業を行っている場合は、簡易課税制度のみなし仕入率は必ず80%以上となりますので、簡易課税制度の方が3割特例よりも納税額が少なく有利となります。

 一方、第5種と第6種に該当する事業を行っている場合は、簡易課税制度のみなし仕入率が50%を上回ることはありませんので、3割特例の方が簡易課税制度よりも納税額が少なく有利となります。

 つまり、みなし仕入率が70%を上回れば簡易課税制度が有利になり、下回れば3割特例が有利になります。

2.事務負担は3割特例が有利

 納税額の計算上、3割特例と簡易課税制度のどちらが有利になるかについては上記1のとおりですが、事務負担の軽減という点では、簡易課税制度よりも3割特例の方が有利になります。

 3割特例も簡易課税制度も納税額の計算にインボイスは必要ないという点では同じですが、3割特例は一律70%の仕入税額控除を行うため、簡易課税制度のようにどの事業に該当するかという事業区分の判定をする必要がありません。
 したがって、適用税率毎(軽減税率8%と標準税率10%)の売上税額を把握するだけで納税額の計算ができます。

 また、簡易課税制度の適用を受ける場合には、原則として事前に簡易課税制度選択届出書の提出が必要ですが、3割特例の場合は事前の届出は不要であり、申告書に設けられた記載欄に3割特例の適用を受ける旨を付記するだけです。

 さらに、3割特例には2年間の継続適用要件(いわゆる2年縛り)もありません。

 以上のことから、事務負担軽減という面では、3割特例の方が簡易課税制度よりも有利となります。

2割特例が終われば個人事業者限定で3割特例あり(令和8年度税制改正)

 インボイス制度の導入により、免税事業者から課税事業者へ移行した個人事業者の負担は大きく増えました。

 このような元・免税事業者(本来は免税事業者ですが取引先との関係などによりインボイス発行事業者の登録をして課税事業者になった人)の税負担や事務負担を軽減するために、インボイス制度導入と同時に「2割特例」が設けられましたが、2026(令和8)年9月30日で期限を迎えます。

 そこで、2割特例が終わった後の税負担・事務負担を軽減するために、2026(令和8)年度税制改正で「3割特例」が個人事業者限定で設けられました(法人は3割特例を適用できません)。

 今回は、新たに設けられた3割特例について確認します。

1.3割特例とは?

 3割特例とは、インボイス発行事業者の登録を受けたことにより免税事業者から課税事業者となった個人事業者が、令和9年分・令和10年分の消費税の確定申告において納付税額を売上税額の3割(仕入割合を7割とみなす)とすることができる特例です。

 例えば、売上に係る消費税額が100万円であれば、納付税額は100万円×30%=30万円となり、原則課税のような複雑な仕入税額控除の計算を行う必要はありません。

 また、仕入税額控除を行うにあたって、インボイスの保存が不要とされていることから、事務負担は大きく軽減されることになります

 一方、税負担については、軽減される場合もあればそうでない場合もあります(業種や設備投資の状況、仕入税額控除の方法(原則課税と簡易課税)により異なります)

※ 3割特例の事務負担と税負担については、「3割特例と簡易課税制度はどちらが有利か?」をご参照ください。

2.3割特例の適用要件

 3割特例を適用するための主な要件は次のとおりです。

(1) 個人事業者であること
(2) 基準期間の課税売上高が1,000万円以下であること
(3) 特定期間の課税売上高が1,000万円以下であること
(4) インボイス発行事業者の登録を受けていること など

※ 基準期間とは、適用を受ける年の2年前をいい、例えば令和9年分の申告においては令和7年、令和10年分の申告においては令和8年が基準期間となります。
 特定期間とは、適用を受ける年の前年1月~6月をいい、例えば令和9年分の申告においては令和8年1月~6月、令和10年分の申告においては令和9年1月~6月が特定期間となります。なお、特定期間の課税売上高に代えて、給与等支払額の合計額により判定することもできます。

 3割特例は、インボイス発行事業者への登録を機に免税事業者から課税事業者になった個人事業者に適用されます。
 そのため、次の場合は3割特例を適用できません(主なものを挙げます)。

(1) 法人
(2) インボイス発行事業者ではない課税事業者
(3) 基準期間の課税売上高が1,000万円を超える場合
(4) 調整対象固定資産や高額資産の取得により免税事業者とならない場合
(5) 課税期間の特例の届出により課税期間を短縮している場合 など

3.3割特例終了後

 3割特例は、インボイス制度によって新たに課税事業者となった個人事業者にとって、負担を大幅に軽減する強力な支援策です。
 特に、仕入税額控除の計算が煩雑な業種や、経理体制が十分でない小規模個人事業者にとっては、実務面でのメリットが大きい制度といえます。
 
 一方で、3割特例はあくまでも令和9年分・令和10年分に限定された時限措置です。
  その後の課税方式について、簡易課税を選択するか、原則課税に戻すかなど、事業の実態に応じた検討が必要です。 

 インボイス制度は、今後も段階的に見直しが続く可能性がありますので、最適な選択を行うためにも制度の変化を正しく理解することが重要です。

仕入税額控除の時期の原則と特例(前払金・未払金、短期前払費用、建設仮勘定)

 消費税の仕入税額控除は、原則として課税仕入れを行った日の属する課税期間において行います。
 課税仕入れを行った日とは、資産の引渡しを受けた日またはサービスの提供を受けた日をいいます。
 
 今回は、仕入税額控除を行う時期の原則と特例について、前払金・未払金、短期前払費用、建設仮勘定を例に確認します。

1.前払金と未払金の仕入税額控除

 消費税の仕入税額控除の時期は、所得税や法人税の場合と同じように、原則として資産の引渡しを受けた日やサービスの提供を受けた日の属する課税期間とされています。

 したがって、例えば、工事代金や機械の購入代金について前払金を支払っていたとしても、その前払金の支払の時期に関係なく、実際に資産の引渡しを受けた日の属する課税期間が仕入税額控除の時期となります。

 同じように、工事代金や機械の購入代金について未払金があるときも、その代金の決済の時期に関係なく、実際に資産の引渡しを受けた日の属する課税期間が仕入税額控除の時期になります。

2.短期前払費用の仕入税額控除

 前払費用とは、一定の契約に基づき継続的にサービスの提供を受けるために支出した課税仕入れに係る支払対価のうち、当該課税期間の末日においていまだ提供を受けていないサービスに対応するものをいいます。
 
 この前払費用についても、原則として実際にサービスの提供を受けた日の属する課税期間が仕入税額控除の時期となります。
 例えば、当期の決算日に1年分の事務所家賃を前払いしたとしても、実際にサービスの提供を受けるのは翌期になりますので、仕入税額控除の時期は翌期になります。

 ところが、前払費用のうち、所得税または法人税の取扱いによりその支出した年度において必要経費の額または損金の額に算入している短期前払費用については、特例としてその支出した日の属する課税期間が仕入税額控除の時期になります(消費税法基本通達11-3-8)。

※ 短期前払費用については、「短期前払費用の損金算入の注意点」をご参照ください。

3.建設仮勘定の仕入税額控除

 建設工事の場合は、通常、工事の発注から完成引渡しまでの期間が長期にわたり、一事業年度を超えることがあります。
 そのため、一般的には、工事代金の前払金や経費(設計料、資材購入費等)の額を一旦建設仮勘定として経理し、目的物の全部が引き渡されたときに、固定資産などに振り替える処理を行います。

 消費税法においては、建設仮勘定に計上されている金額であっても、原則として物の引渡しやサービスの提供があった日の属する課税期間において仕入税額控除を行うことになります。
 したがって、設計料に係るサービスの提供や資材の購入等については、原則として設計業務というサービスの提供が完了した日実際に資材の引渡しを受けた日の属する課税期間において仕入税額控除を行います。

 ただし、建設仮勘定として計上されている金額について、その都度課税仕入れとして仕入税額控除をしないで、工事の目的物のすべての引渡しを受けた日の属する課税期間において仕入税額控除を行う処理も特例として認められます(消費税法基本通達11-3-6)。

【原則処理】
(1) 設計料550万円支払時(当期)

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
建設仮勘定
(課税仕入10%)
5,500,000 現金預金 5,500,000

(2) 着手金1,100万円支払時(当期)

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
建設仮勘定
(不課税)
11,000,000 現金預金 11,000,000

(3) 中間金1,100万円支払時(当期)

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
建設仮勘定
(不課税)
11,000,000 現金預金 11,000,000

(4) 完成引渡し・残金1,100万円支払時(翌期)

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
建物
(不課税)
5,500,000 建設仮勘定
(不課税)
27,500,000
建物
(課税仕入10%)
33,000,000 現金預金 11,000,000

【特例処理】
(1) 設計料550万円支払時(当期)

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
建設仮勘定
(不課税)
5,500,000 現金預金 5,500,000

(2) 着手金1,100万円支払時(当期)

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
建設仮勘定
(不課税)
11,000,000 現金預金 11,000,000

(3) 中間金1,100万円支払時(当期)

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
建設仮勘定
(不課税)
11,000,000 現金預金 11,000,000

(4) 完成引渡し・残金1,100万円支払時(翌期)

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
建物
(課税仕入10%)
38,500,000 建設仮勘定
(不課税)
27,500,000
    現金預金 11,000,000

 建物の建設中に支払った着手金、中間金は前払金であり資産の引渡しを受けていないため、仕入税額控除をすることはできません。
 建物の引渡しを受けた時期に、仕入税額控除を行います。

 一方、設計料については、原則として設計業務というサービスの提供が完了した時期に仕入税額控除を行います(【原則処理】の(1))。
 ただし、建物の引渡しを受けた時点でまとめて仕入税額控除することも可能です(【特例処理】の(4))。

マイカー、自転車、徒歩で通勤する者に支給する通勤手当は課税仕入れになるか?

 電車やバスなどの公共交通機関を利用して通勤する従業員には、給与以外に通勤手当が支給されていると思われます(定期券など現物による支給を含みます)。
 通勤手当のうち、通勤に通常必要であると認められる部分は、給与を支払う事業者の課税仕入れになります。

 一方、公共交通機関ではなく、マイカーや自転車、徒歩で通勤する従業員もいます。これらの者に支給する通勤手当は、消費税の課税仕入れに該当するのでしょうか?

 以下では、この点について確認します。

1.マイカー・自転車通勤者の通勤手当の非課税限度額(所得税)

 所得税では、公共交通機関で通勤する場合と、マイカーや自転車などで通勤する場合の、非課税となる通勤手当の限度額が決められています(所得税法施行令第20条の2)。

 電車やバスなどの公共交通機関を利用して通勤している場合の非課税限度額は、月額15万円とされています。

 また、マイカーや自転車などを使用して通勤している場合の1か月当たりの非課税限度額は、片道の通勤距離(通勤経路に沿った長さ)に応じて決められています(例えば、片道の距離が2キロメートル以上10キロメートル未満の場合は月額4,200円まで非課税など)。

 これらの非課税限度額は、通勤のための運賃・時間・距離等の事情に照らして、最も経済的かつ合理的な経路および方法で通勤した場合が前提となっています。

 なお、所得税法施行令第20条の2は、通勤のため交通機関を利用することを常例とする者と、自動車その他の交通用具を使用することを常例とする者についての定めであり、徒歩通勤者についての定めはありません。

※ 関連記事:「マイカー通勤手当の非課税限度額が引き上げられました」、「給与課税される通勤手当・切手の購入・軽油引取税の消費税の取扱い

2.通常必要であると認められる通勤手当は課税仕入れになる(消費税)

 消費税における通勤手当の取扱いについては、以下の消費税法基本通達11-6-5(通常必要であると認められる通勤手当)に規定されています(下線は筆者による)。

11-6-5 規則第15条の4第3号《請求書等の交付を受けることが困難な課税仕入れ》に規定する「通勤者につき通常必要であると認められる部分」とは、事業者が通勤者に支給する通勤手当が、当該通勤者がその通勤に必要な交通機関の利用又は交通用具の使用のために支出する費用に充てるものとした場合に、その通勤に通常必要であると認められるものをいう。
 したがって、所法令第20条の2各号《非課税とされる通勤手当》に定める金額を超えているかどうかにかかわらないことに留意する。(令5課消2-9により追加)


 上記基本通達のとおり、通勤に通常必要であると認められる通勤手当は、電車やバスなどの公共交通機関を利用する場合も、マイカーや自転車などの交通用具を使用する場合も、給与を支払う事業者の課税仕入れになります。

 通勤に通常必要であると認められる通勤手当は、事業者の業務上の必要に基づく支出の実費弁償であり、事業者が課税仕入れに該当する定期券等を購入して通勤者に交付するのと同じであることから、通勤手当の支給も課税仕入れに係る支払い対価に該当するものとして取り扱われています。

 なお、所得税法施行令第20条の2と同様に、消費税法基本通達11-6-5においても、徒歩通勤者に対する規定はありません。

 徒歩通勤者の場合は、マイカーや自転車などの「交通用具」を使用するための支出が無いため、事業者が通勤手当を支給したとしても、その事業者の業務上の必要に基づく支出の実費弁償としての性格がありません。

 したがって、徒歩通勤者に支給する通勤手当は課税仕入れに該当しません。給与として課税対象外(不課税)となります。

3.所得税の非課税限度額を超えても課税仕入れとなる

 ところで、消費税法基本通達11-6-5には、「したがって、所法令第20条の2各号《非課税とされる通勤手当》に定める金額を超えているかどうかにかかわらないことに留意する。」という重要な一文があります。

 これは、上記1でみたように、所得税では、公共交通機関を利用する場合は月額15万円、マイカーや自転車などを使用する場合は距離に応じて一定額の非課税限度額が定められていますが、消費税では、所得税の非課税限度額にかかわりなく、通勤に通常必要であるかどうかで課税仕入れの判断をすることを示しています。

 したがって、例えば、所得税において給与課税される月額15万円を超える部分の通勤手当は、通勤に通常必要なものであれば、消費税の課税仕入になります。

 非課税限度額を超えて給与課税される通勤手当は、給与なのだから不課税になるという誤解のないようにご注意ください。
 

リース資産について中小企業が賃貸借処理した場合の仕入税額控除(新リース会計基準)

 2024(令和6)年9月に企業会計基準委員会より新リース会計基準が公表され、これを受けて2025(令和7)年度税制改正で新リース会計基準を踏まえた税務上の対応がなされています。

 以下では、新リース会計基準の下で、所有権移転外ファイナンス・リース取引について中小企業が「賃貸借取引に準じた会計処理」(以下「賃貸借処理」といいます)をした場合の仕入税額控除について確認します。

1.新リース会計基準で賃貸借処理は認められるか?

 新リース会計基準では、借り手の会計処理について、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分が廃止され、すべてのリースについて使用権資産とリース負債を貸借対照表に計上する「売買取引に準じた会計処理」(以下「売買処理」といいます)に統一されました(短期リース・少額リースを除きます)。

 そのため、所有権移転外ファイナンス・リース取引やオペレーティング・リース取引については、新リース会計基準の下では賃貸借処理ではなく売買処理をすることになり、会計処理が煩雑になる懸念があります。

 しかし、この懸念に対して結論を述べると、上場企業や会社法上の大企業は新リース会計基準が強制適用されますが、未上場企業や中小企業は新リース会計基準が強制適用されず、従来通りの会計処理を継続することができます

 つまり、所有権移転外ファイナンス・リース取引やオペレーティング・リース取引について、新リース会計基準の下でも中小企業は賃貸借処理をすることが可能です。 

新リース会計基準については、「新リース会計基準の導入が中小企業に及ぼす会計上と税務上の影響(令和7年度税制改正)」をご参照ください。

2.賃貸借処理した場合の仕入税額控除の時期

 上記1のように、新リース会計基準の下でも、中小企業は売買処理によらずに賃貸借処理をすることができます。

 では、所有権移転外ファイナンス・リース取引(以下「移転外リース取引」といいます)について借り手が賃貸借処理をしている場合に、そのリース料を支払うべき日の属する課税期間において仕入税額控除(分割控除)することは認められるでしょうか?
 
 移転外リース取引は、リース資産の引渡し時にリース資産の売買があったものとして取り扱われるため、移転外リース取引について借り手が賃貸借処理をしている場合でも、原則として当該リース資産の引渡しを受けた日の属する課税期間において、そのリース資産の取得価格に係る消費税額を仕入税額控除(一括控除)することになります

 ただし、一括控除を原則としながらも、そのリース料を支払うべき日の属する課税期間に仕入税額控除(分割控除)することも認められます。

 なお、令和7年度税制改正により、リース譲渡に係る資産の譲渡等の時期の特例(延払基準)が廃止されましたが、貸し手における処理にかかわらず、借り手において会計上賃貸借処理が可能な場合には、引き続き分割控除することができます。

例えば、会計上賃貸借処理をしている借り手が一括控除する場合など、会計処理の方法と消費税額の計算が異なる場合、帳簿の摘要欄等にリース料総額を記載する方法や、会計上のリース資産の計上価額から消費税における課税仕入れに係る支払対価の額を算出するための資料を作成し、帳簿と合わせて保存する方法などにより、帳簿においてリース料総額(対価の額)を明らかにする必要があります。

3.賃貸借処理に基づいて分割控除している場合の留意点

 移転外リース取引に係るリース資産の仕入税額控除の時期については、そのリース資産の引渡しを受けた日の属する課税期間(リース期間の初年度)において一括控除することが原則であるため、賃貸借処理に基づいて分割控除している場合には、以下の点に留意する必要があります。

(1) 仕入税額控除の時期を変更することの可否

 例えば、賃貸借処理しているリース期間が3年の移転外リース取引(リース料総額660,000円)について、リース期間の初年度にその課税期間に支払うべきリース料(220,000円)について仕入税額控除を行い、2年目にその課税期間に支払うべきリース料と残額の合計額(440,000円)について仕入税額控除を行うといった処理は認められません。

(2) 簡易課税から原則課税に移行した場合等の取扱い

 次に掲げるような場合のリース期間の2年目以降の課税期間については、その課税期間に支払うべきリース料について仕入税額控除することができます。

① リース期間の初年度において簡易課税制度を適用し、リース期間の2年目以降は原則課税に移行した場合

② リース期間の初年度において免税事業者であった者が、リース期間の2年目以降は課税事業者となった場合

税抜経理方式と税込経理方式を併用する場合の問題点とその調整のための会計処理

 消費税(地方消費税を含みます。以下同じ)の会計処理方法には税込経理方式と税抜経理方式があり、どちらの方式を選択してもよいことになっていますが※1、選択した方式は、その事業者が行うすべての取引に適用するのが原則です。

 ところが、税抜経理方式を選択適用している場合は、一定の条件の下で、税込経理方式を併用することができます※2

 しかし、税抜経理方式を選択適用する場合の税込経理方式の併用(以下「併用方式」といいます)には、問題点もあります。

 以下では、併用方式の問題点とそれを調整するための会計処理について確認します。

※1 免税事業者は、税込経理方式しか適用できません。

※2 税抜経理方式を選択適用している場合の税込経理方式の併用条件等については、「税抜経理方式の場合に棚卸資産を税込で計上するときの条件と損益に与える影響」をご参照ください。
 なお、税込経理方式を選択適用している場合は、すべての取引について税込経理方式しか適用できません。

1.併用方式の問題点

 事業者がすべての取引について税抜経理方式を選択適用した場合、消費税等が課される取引については税抜金額で計上し、課税売上げに対する消費税等の額は仮受消費税等とし、また、課税仕入れに対する消費税等の額は仮払消費税等とします。

 例えば、税込330万円の商品を仕入れて、その商品を税込550万円で売った場合の会計処理は次のようになります(税率10%)。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
仕入 300万円 現金預金 330万円
仮払消費税等 30万円    
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現金預金 550万円 売上 500万円
    仮受消費税等 50万円

 

 また、決算において、仮受消費税等の合計額から仮払消費税等の合計額を差し引いて(精算して)、納税額を未払計上します。上記以外の取引が無かったものとすると、決算仕訳は次のようになります。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
仮受消費税等 50万円 仮払消費税等 30万円
    未払消費税等 20万円

 一方、併用方式においては、売上などの収益に係る取引については必ず税抜経理をしなければなりませんが、次の各グループに関する取引のいずれかについては、グループごとに税込経理を適用することが認められています。

(1) 棚卸資産の取得
(2) 固定資産・繰延資産の取得
(3) 販売費・一般管理費など(以下「経費等」といいます)の支出

 この場合、仮受消費税等の合計額から仮払消費税等の合計額を差し引いた金額は、納税額または還付税額と一致しません。

 例えば、経費等の支出に係る取引について税込経理を適用した場合には、経費等に含まれる消費税等を仮払消費税等としないため、その課税期間の仮受消費税等の合計額から仮払消費税等の合計額を差し引いた金額と納付すべき税額または還付されるべき税額との間に差額が出ます。

 上記の例(税込330万円の商品を仕入れて、その商品を税込550万円で売った場合)を、併用方式(仕入を税込処理)で会計処理すると次のようになります。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
仕入 330万円 現金預金 330万円
仮払消費税等 0万円    
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現金預金 550万円 売上 500万円
    仮受消費税等 50万円
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
仮受消費税等 50万円 仮払消費税等 0万円
    未払消費税等 20万円

 上記の決算仕訳においては、仮受消費税等の合計額(50万円)から仮払消費税等の合計額(0円)を差し引いた金額(50万円)と未払消費税等(20万円)との間に差額(30万円)が出ており仕訳が成り立ちません。

 また、所得金額または損益の点から検討すると、この例では、税込経理した仕入に含まれる消費税の額(30万円)だけ経費等の額が多くなります。
 裏を返せば、すべての取引について税抜経理方式を適用した場合に比べて、一部を税込経理する併用方式を適用した場合は、利益が少なく算出されることになります(下図)。

税抜経理方式と併用方式は会計処理(記帳)の方法であって消費税の納税額の計算方法ではありませんので、どちらの方式を適用したとしても納税額(未払消費税等)は同じになります。

2.差額を益金または総収入金額に算入

 併用方式により生じた、仮受消費税等の合計額から仮払消費税等の合計額を差し引いた金額と納付すべき税額または還付されるべき税額との差額については、法人においては、その課税期間を含む事業年度の益金の額に算入し、個人事業者においては、その課税期間を含む年の総収入金額に算入します。

 上記1の例では、併用方式の決算仕訳は次のようになります。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
仮受消費税等 50万円 仮払消費税等 0万円
    未払消費税等 20万円
    雑収入 30万円

 その結果、すべての取引について税抜経理方式を適用した場合と併用方式を適用した場合の利益は同額となり、所得金額または損益の点からも、併用方式の問題点は解消されます(下図)。

税抜経理方式の場合に棚卸資産を税込で計上するときの条件と損益に与える影響

 消費税(地方消費税を含みます。以下同じ)の会計処理方法には税込経理方式と税抜経理方式があり、どちらの方式を選択してもよいことになっていますが※1、選択した方式は、その事業者が行うすべての取引に適用するのが原則です。

 棚卸資産を例に挙げると、税込経理方式を選択している場合は棚卸資産も税込金額で計上し、税抜経理方式を選択している場合は棚卸資産も税抜金額で計上します。

 ところが、税抜経理方式を選択適用している場合は、一定の条件の下で、棚卸資産を税込金額で計上することもできます※2

 以下では、棚卸資産を中心に、税抜経理方式を選択適用する場合の税込経理方式の併用条件と併用が損益に与える影響について確認します。

※1 免税事業者は、税込経理方式しか適用できません。

※2 税込経理方式を選択適用している場合に、棚卸資産を税抜金額で計上することはできません。

1.税抜経理方式と税込経理方式の併用条件

 税抜経理方式を選択適用する場合は、売上げなどの収益に係る取引については、必ず税抜経理をしなければなりません。

 一方、次の各グループに関する取引のいずれかについては、税抜経理方式を選択適用していても税込経理方式を適用することが認められています。

(1) 棚卸資産の取得
(2) 固定資産・繰延資産の取得
(3) 販売費・一般管理費など(以下「経費等」といいます)の支出

 ただし、以下の条件に留意する必要があります。

イ.売上などの収益に係る取引に加えて、上記(1)(2)(3)のうち、少なくとも1グループについては税抜経理をしなければなりません(例えば、(1)は税込み、(2)と(3)は税抜きなどは認められますが、(1)(2)(3)すべてを税込みとすることはできません)。

ロ.棚卸資産の取得に関する取引については、継続適用を条件として、固定資産・繰延資産の取得に関する取引と異なる経理方式を適用することができます。

ハ.税抜経理方式と税込経理方式を併用して適用する場合でも、個々の棚卸資産、固定資産、繰延資産、または個々の経費等について異なる経理方式を適用することはできません(例えば、棚卸資産のうち、ある棚卸資産は税抜きとし、そのほかの棚卸資産は税込みとする処理は認められません)。

 なお、上記(1)棚卸資産の取得について税込経理をする場合に、「棚卸資産の取得」という文言から、期末棚卸資産だけでなく、その仕入時(棚卸資産の取得時)も税込経理する必要があるのかというとそうではなく、仕入時は税抜金額で計上し、決算時は期末棚卸資産を税込金額で計上します。

 したがって、決算書の当期仕入高は税抜金額で、期末棚卸高は税込金額で表示されることになります。

2.併用方式が損益に与える影響

 税抜経理方式と税込経理方式は会計処理の方法であって消費税の納税額の計算方法ではありませんので、どちらの方式を選択適用したとしても納税額に差異はなく、算出される利益は原則として同じになります。

 しかし、税抜経理方式を選択適用している場合に棚卸資産を税込金額で計上するとき(以下「併用方式」といいます)は、税抜経理方式のみで会計処理する場合と比べて、利益は大きくなります。

 例えば、税込110万円分(税率10%)の期末在庫(期末棚卸資産)があったとすると、税抜経理方式のみで会計処理する場合の期末在庫が100万円であるのに対し、併用方式の場合の期末在庫は110万円となるので、消費税10万円分だけ期末在庫が大きくなり、その分売上原価が小さくなります。
 売上原価が10万円小さくなると、売上総利益が10万円大きく算出されることになります。
 その結果、課税される法人税(個人の場合は所得税)も多くなります。

 上図は、説明を簡略化するため、期首在庫(期首棚卸資産)を無いものとしていますが、税抜経理方式から税込経理方式に、税込経理方式から税抜経理方式に変更した場合でも、期首在庫の価額について、仕入時に計上した金額を修正する必要はありません。
 会計処理を変更した場合でも、前期の期末在庫の金額をそのまま当期の期首在庫の金額として引き継ぎます。

2割特例が適用できなくなる翌課税期間の簡易課税制度選択届出書はいつまでに提出すればいいか?

 消費税の申告方法には、仕入控除税額について実額で計算する「本則課税」、業種ごとに決められたみなし仕入率を用いて仕入控除税額を計算する「簡易課税」、売上税額の2割を納税額として計算する「2割特例」による方法があります。

 このうち2割特例は、インボイス制度導入の際の経過措置により免税事業者からインボイス発行事業者となった事業者が対象となっています。

 2割特例については、事前の届出が不要で、適用を受ける旨を確定申告書に付記することで適用できますが、簡易課税は、原則として、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。

 しかし、経過措置により免税事業者から課税事業者になった事業者には、「消費税簡易課税制度選択届出書の提出に係る特例」が設けられており、必ずしも適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに提出する必要はありません。

 以下では、経過措置により免税事業者から課税事業者になった2つのケースについて、簡易課税制度選択届出書をいつまでに提出すればいいかを確認します。

 免税事業者が、2023(令和5)年10月1日から2029(令和11)年9月30日までの日の属する課税期間中にインボイス発行事業者の登録を受けることとなった場合には、登録日から課税事業者となる経過措置が設けられています。

1.インボイス登録日の属する課税期間の簡易課税

 経過措置により免税事業者から課税事業者になった事業者が、インボイス登録日の属する課税期間について、簡易課税制度選択届出書を事前(インボイス登録日の属する課税期間の初日の前日まで)に提出していない状況において、2割特例より簡易課税の方が有利であることが判明した場合は、2割特例(又は本則課税)を適用するしかないのでしょうか?

 答えは「否」です。

 経過措置の適用を受ける事業者が、インボイス登録日の属する課税期間中に、その課税期間から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した簡易課税制度選択届出書を提出した場合には、その課税期間の初日の前日に簡易課税制度選択届出書を提出したものとみなされます(消費税簡易課税制度選択届出書の提出に係る特例)。

 例えば、免税事業者である個人事業者が令和7年9月1日からインボイス登録を受けた場合で、令和7年分の申告において簡易課税制度の適用を受けたいときは、令和7年分から適用を受ける旨を記載した簡易課税制度選択届出書を課税期間の末日(令和7年12月31日)までに提出すれば、令和7年分は簡易課税制度の適用を受けることができます。

参考記事:「売上税額の2割納税の特例と簡易課税制度はどちらが有利か?

2.2割特例を適用した課税期間後の簡易課税

 2割特例の適用を受けていた事業者が、翌課税期間から2割特例が適用できなくなる場合に、簡易課税制度選択届出書を事前(翌課税期間の初日の前日まで)に提出していなければ、翌課税期間は本則課税しか適用できないのでしょうか?

 答えは「否」です。

 2割特例の適用を受けた事業者が、その適用を受けた課税期間の翌課税期間中に、その課税期間から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した簡易課税制度選択届出書を提出した場合には、その課税期間の初日の前日に簡易課税制度選択届出書を提出したものとみなされます(消費税簡易課税制度選択届出書の提出に係る特例)

 例えば、、令和8年分まで2割特例により申告を行った個人事業者が、翌年分(令和9年分)から簡易課税制度の適用を受けようとする場合には、令和9年分から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した簡易課税制度選択届出書を課税期間の末日(令和9年12月31日)までに提出すれば、令和9年分から簡易課税制度の適用を受けることができます。

2026(令和8)年度税制改正で、下線部の提出期限が「その適用を受けた課税期間の翌課税期間に係る確定申告期限までに変わりました。

 例えば、令和8年分まで2割特例により申告を行った個人事業者が、翌年分(令和9年分)から簡易課税制度の適用を受けようとする場合には、令和9年分から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した簡易課税制度選択届出書を、令和9年分の消費税確定申告期限(令和10年3月31日)までに提出すれば、令和9年分から簡易課税制度の適用を受けることができます。

 詳細については、「
2割特例・3割特例を適用した課税期間の翌課税期間の簡易課税制度選択届出書はいつまでに提出すればいいか?(令和8年度税制改正)」をご参照ください。

3.課税期間の末日に関する注意点

 上記1と2のケースともに、簡易課税制度の適用を受けたい課税期間の末日までに簡易課税制度選択届出書を提出すれば、簡易課税制度を適用することができます。

 ただし、課税期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律に規定する休日その他一般の休日、土曜日又は12月29日、同月30日若しくは同月31日であったとしても、提出期限はこれらの日の翌日とはなりませんのでご注意ください。