離婚により自宅を財産分与した場合にかかる税金は?

 夫婦が離婚したとき、相手方の請求に基づいて一方の人が相手方に財産を渡すことを財産分与といいます。
 この財産分与の対象財産として、自宅(土地や建物)を相手方に渡すケースも多いと思います。
 今回は、離婚により夫が妻に自宅を財産分与した場合の課税関係についてみていきます。

1.財産分与をした者(夫)

(1) 譲渡所得として課税される

 結論を先に述べると、財産分与が自宅(土地や建物)で行われたときは、分与した人(夫)に譲渡所得の課税が行われることになります。

 夫は自宅を妻に渡しても、妻から金銭を受け取ることはありません。しかし、自宅という財産の移転は、夫の財産分与の義務を消滅させるものであり、それ自体が一つの経済的利益の享受といえます。
 したがって、その財産分与の義務の消滅という経済的利益を対価とする資産の譲渡があったものとして、夫に譲渡所得の課税が行われることになります。

(2) 譲渡所得の収入金額は?

 この場合、分与した時の自宅(土地や建物)の時価が譲渡所得の収入金額となります。

 民法768条の財産分与の規定による財産の分与として資産の移転があった場合には、その分与をした者(夫)は、その分与をした時において、そのときの価額により資産を譲渡したことになります。
 したがって、自宅という譲渡所得の基因となる財産を分与した場合は、その分与時の時価で自宅の譲渡をしたものとして、譲渡所得の計算を行うことになります。

(3) 居住用財産の譲渡所得の特例(3,000万円控除と軽減税率)の適用はあるか?

 自宅を財産分与した場合でも、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除及び軽減税率の特例を、夫は受けることができます。

 3,000万円特別控除と軽減税率の特例は、配偶者等の親族及び居住用財産の譲渡者から受ける金銭その他の財産によって生計を維持している者(以下「特殊関係者」といいます)への譲渡については、適用を受けることができません。つまり、夫から妻への自宅の譲渡は、特例の適用対象外ということになります。
 しかし、財産分与による資産の譲渡は、離婚後における譲渡になるため、親族(配偶者)に対する譲渡には該当しないこととなり、居住用財産の特例の適用を受けることができます。
 また、離婚に伴う財産分与として受け取っている金銭等により生計を維持している者は特殊関係者に該当しないことになるので、離婚後に養育費等の名目で元妻に金銭等を支払っている場合でも、元妻へ財産分与した自宅については、居住用財産の特例の適用を受けることができます。

2.財産分与を受けた者(妻)

(1) 財産分与により取得した自宅の取得費

 分与を受けた人(妻)は、分与を受けた日にその時の時価で自宅(土地や建物)を取得したことになります。

 自宅を財産分与した者(夫)の当初の取得費を引き継がないので、元妻が分与を受けた自宅を譲渡する際は、取得費として分与時の時価を算定する必要があります。
 また、財産分与を受けた日を基に、長期譲渡になるか短期譲渡になるかを判定することになります。

(2) 贈与税はかからない?

 離婚により相手方(夫)から自宅をもらった場合、通常、妻に贈与税がかかることはありません。

 離婚による財産分与によって取得した財産については、財産分与請求権(民法768条)に基づく財産の取得ですので、贈与により取得した財産とはなりません。つまり、相手方から贈与を受けたものではなく、夫婦の財産関係の清算や離婚後の生活保障のための財産分与請求権に基づき給付を受けたものといえます。
 したがって、原則として、財産分与を受けた者に贈与税はかかりません。

 ただし、次のいずれかに当てはまる場合には贈与税がかかります。

① 分与された財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額やその他すべての事情を考慮してもなお多過ぎる場合
 この場合は、その多過ぎる部分に贈与税がかかることになります。
② 離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合
 この場合は、離婚によってもらった財産すべてに贈与税がかかります。

新型コロナウィルス感染症の影響による納税猶予制度の特例

 関与先様からの新型コロナウイルス感染症に関する税制上の措置についての問い合わせが増えています。中でも、本年(2020年)4月以降は、納税に関する質問が増えていますので、今回は、新たに設けられる納税猶予制度の特例について解説します。
 なお、本特例は、関係法案が国会で成立することが前提となります

※2020年(令和2年)4月30日に 「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律案」が成立・公布・施行されました。

1.納税猶予制度の特例の概要

 新型コロナウイルス感染症の影響で、2020年(令和2年)2月以降の任意の期間(1か月以上)において、事業等に係る収入が前年同期比おおむね20%以上減少し、かつ、一時の納税が困難と認められる場合には、申請することにより、無担保かつ延滞税なし1年間納税を猶予することができるようになります。

2.特例の対象者

 以下の2要件をいずれも満たす納税者(個人法人の別、規模は問わず)が対象となります。

(1) 新型コロナウイルスの影響により、2020年(令和2年)2月以降の任意の期間(1か月以上)において、事業等に係る収入※1が前年同期に比べて概ね20%以上減少していること※2
(2) 一時に納税を行うことが困難であること※3

※1 「事業等に係る収入」とは、法人の収入(売上高)のほか、個人の方の経常的な収入(事業の売上、給与収入、不動産賃料収入等)を指します。
 なお、個人の方の「一時所得」などについては、通常、新型コロナウイルスの影響により減少するものではないと考えられますので、「事業等に係る収入」には含まれません。

※2 前年の月別収入が不明の場合には、以下のような方法により収入減少割合を判断することもできます。
① 年間収入を按分した額(平均収入)と比較
② 事業開始後1年を経過していない場合は令和2年1月までの任意の期間と比較

※3 「一時に納税を行うことが困難」かどうかの判断については、少なくとも向こう半年間(現行は1か月)の事業資金を考慮に入れるなど、納税者の置かれた状況に配慮し適切に対応されるようです。

3.特例の対象となる国税

 2020年(令和2年)2月1日から2021年(令和3年)1月31日までに納期限が到来する所得税、法人税、消費税等ほぼすべての税目(印紙で納めるもの等を除く) が対象になります。
 これらのうち、既に納期限が過ぎている未納の国税(他の猶予を受けているものを含む)についても、遡ってこの特例を利用することができます※4

※4 「遡って特例を利用する」とは、例えば未納の国税について、延滞税がかかる他の猶予を受けている納税者は、特例に切り替えることにより、はじめから延滞税がないものとして猶予を受けることができるということです。
 この場合、既に延滞税を納付済みの納税者は、その還付を受けることができます。

4.特例の申請方法等

 関係法令の施行から2か月後、又は、納期限(申告納付期限が延長された場合 は延長後の期限)のいずれか遅い日までに申請が必要です。
 「納税の猶予申請書」のほか、収入や現預金の状況が分かる資料を提出することになりますが、これらの提出が難しい場合は、税務署職員が口頭により聴取することとなっています。
 なお、「納税の猶予申請書」の様式記載方法については、国税庁ホームページを参照してください。

5.特例の留意点

 納税猶予制度の特例の上記1~4以外の留意点は次のとおりです。

(1) 対象期間の損益が黒字の場合でも、収入減少などの2要件を満たせば特例を利用できます。

(2) フリーランスの方を含む事業所得者は、収入減少などの2要件を満たせば特例の対象になります。

(3) パートやアルバイトの方を含む給与所得者のうち、確定申告により納税をされる方は、収入減少などの2要件を満たせば特例の対象になります。

(4) 白色申告の場合も、収入減少などの2要件を満たせば特例の対象になります。

(5) 特例の2要件を満たさない場合でも、一般の猶予制度※5を利用できる場合があります(通常、 年1.6%の延滞税がかかります)。

(6) 猶予期間終了後は、一括して納付しなければならないということではありません。特例の適用期間が終了した後に、一般の猶予制度※5により分割納付をすることもできま す。

※5 一般の猶予制度(現行の猶予制度)については、本ブログ記事「国税の納税猶予制度」を参照してください。

国税の納税猶予制度

 関与先様からの新型コロナウイルス感染症に関する税制上の措置についての問い合わせが増えています。中でも、本年(2020年)4月以降は、納税に関する質問が増えていますので、今回は、従来からある現行の国税の納税猶予制度について解説します。
 新型コロナウイルス感染症の影響により、新たに設けられる納税猶予制度の特例については、次回解説します。

1.現行の納税猶予制度の概要

 新型コロナウイルス感染症の影響により、国税を一時に納付することができない場合には、所轄の税務署に申請して法令の要件を満たせば、原則として1年以内の期間に限り、換価の猶予(国税徴収法第151条の2)が認められます。
 また、新型コロナウイルス感染症にり患した場合等、個別の事情がある場合は、納税の猶予(国税通則法第46条)が認められる場合もあります。

2.現行の納税猶予制度の要件等

(1) 換価の猶予の要件(国税徴収法第151条の2)

 次の要件のすべてに該当する場合は、現行の納税猶予制度の適用を受けることができます。

① 国税を一時に納付することにより、事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがあると認められること

② 納税について誠実な意思を有すると認められること

③ 猶予を受けようとする国税以外の国税の滞納がないこと

④ 納付すべき国税の納期限から6か月以内に申請書が提出されていること

注1) 担保の提供が明らかに可能な場合を除いて、担保は不要となります。
注2)2019年分(令和元年分)の申告所得税、贈与税及び個人事業者の消費税の確定申告は、延長された期限(2020年(令和2年)4月 16 日)が納期限となります。
注3)既に滞納がある場合や滞納となってから6月を超える場合であっても、税務署長の職権による換価の猶予(国税徴収法第 151 条)が受けられる場合もあります。

(2) 換価の猶予の効果(国税徴収法第151条の2)

 申請が認められると、次のように猶予を受けることができます。

① 原則として1年間猶予が認められます(期間中、資力に応じて分割納付。 状況に応じて更に1年間猶予される場合があります)。

② 猶予期間中の延滞税が軽減されます(通常:8.9%/年→猶予期間中 1.6%/ 年)。

③ 財産の差押えや換価(売却)が猶予されます。

 更に個別の事情に該当する場合は、次の猶予制度(国税通則法第46条)を活用することもできます。

(3) 納税の猶予の要件(国税通則法第46条)

 新型コロナウイルス感染症に関連して以下のような個別の事情に該当する場合は、納税の猶予が認められることがあります。

① 災害により財産に相当な損失が生じた場合
 新型コロナウイルス感染症の患者が発生した施設で消毒作業が行われたことにより、備品や棚卸資産を廃棄した場合

② 本人又は家族が病気にかかった場合
 納税者本人又は生計を同じにする家族が病気にかかった場合、国税を一時に納付できない額のうち、医療費や治療等に付随する費用

③ 事業を廃止し、又は休止した場合
 納税者が営む事業について、やむを得ず休廃業をした場合、国税を一時に納付できない額のうち、休廃業に関して生じた損失や費用に相当する金額

④ 事業に著しい損失を受けた場合
 納税者が営む事業について、利益の減少等により著しい損失を受けた場合、国税 を一時に納付できない額のうち、受けた損失額に相当する金額

注)ケースにより申請に必要な書類等が異なりますので、税務署(徴収担当)に事前に相談してください。

(4) 納税の猶予の効果(国税通則法第46条)

 申請が認められると、次のように猶予を受けることができます。

① 原則として1年間猶予が認められます(状況に応じて更に1年間猶予される場合があります)。

② 猶予期間中の延滞税が軽減又は免除されます。

③ 財産の差押えや換価(売却)が猶予されます。

(5) 猶予申請書

 換価の猶予と納税の猶予に関する申請書様式及び記載要領等については、国税庁ホームページを参照してください。

4月17日(金)以降に個人の確定申告書を提出する際の個別延長の手続き

 新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、申告所得税及び復興特別所得税、贈与税及び個人事業者の消費税及び地方消費税の申告期限・納付期限が2020年(令和2年)4月16日(木)まで延長されましたが、昨今の感染拡大の状況から外出を控えるなど期限内に申告することが困難な方については、期限を区切らずに4月17日(金)以降であっても確定申告書を提出することができるようになりました。
 これに伴い、国税庁ホームページでは、以下の「申告所得税、贈与税及び個人事業者の消費税の申告・納付期限の個別指定による期限延長手続に関するFAQ」が公表されています。

1.どのような場合に個別延長が認められるか?

 申告・納付期限の個別指定による期限延長(個別延長)が認められるのは、新型コロナウイルス感染症の影響により、以下のように確定申告会場に行くことが困難な方や申告書を作成することが困難な方です。

(1) 新型コロナウイルス感染症に感染した方
(2) 体調不良により外出を控えている方
(3) 平日の在宅勤務を要請している自治体に住んでいる方
(4) 感染拡大により外出を控えている方

2.個別延長の場合の申告・納付期限はいつになるか?

 新型コロナウイルス感染症の影響により、期限内に申告することが困難な方は、4月16日(木)の申告期限にこだわらずに、税務署に行くことが可能になった時点又は申告書を作成することが可能となった時点で申告することができます。
 この場合、申告期限及び納付期限は原則として申告書の提出日となります。

※会計事務所としては、関与先に申告前に納付書をお渡しして、納付が完了してから申告をすることになります。

申告期限・納付期限

  従来 延長後 個別延長後
申告所得税 3月16日(月) 4月16日(木) 申告書の提出日
消費税 3月31日(火)
贈与税 3月16日(月)

 なお、振替納税の振替日については、所轄の税務署から個別に連絡されます。

振替納付日

  従来 延長後 個別延長後
申告所得税 4月21日(火) 5月15日(金) 個別に連絡
消費税 4月23日(木) 5月19日(火)

3.申請や届出など、申告以外の手続きも個別延長の対象となるか?

 申告所得税・贈与税・個人事業者の消費税に係る各種申請や届出など、申告以外の手続きについても、新型コロナウイルス感染症の影響により、届出が困難な場合は、個別に期限延長の取扱いが行われます

4.個別延長する場合には、どのような手続きが必要となるか?

 別途、申請書等を提出する必要はなく、申告書の余白に「新型コロナウイル スによる申告・納付期限延⻑申請」旨を付記することになります。
 具体的な記載方法は、国税庁ホームページ「申告所得税、贈与税及び個人事業者の消費税の申告・納付期限の個別指定による期限延長手続に関するFAQ」を参照してください。

新型コロナウイルス感染症緊急経済対策の概要

 2020年(令和2年)4月7日、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策における税制上の措置(案)」が閣議決定されました。
 本特例の実施については、関係法案が国会で成立すること等が前提となります。

※2020年(令和2年)4月30日に 「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律案」が成立・公布・施行されました。

1.新型コロナウイルス感染拡大に伴う納税猶予の特例

 新型コロナウイルスの感染拡大防止のための措置に起因して多くの事業者の収入が急減している現下の状況を踏まえて、無担保かつ延滞税なしで1年間、納税を猶予する特例が設けられます。
 この特例は、2020年(令和2年)2月1日から2021年(令和3年)1月31日までに納期限が到来する国税について適用されます。その際、施行日前に納期限が到来している国税についても遡及して適用することができるとされています。

2.欠損金の繰戻しによる還付の特例

 資本金1億円超10億円以下の法人も青色欠損金の繰戻し還付が受けられる特例が設けられます。
 2020年(令和2年)2月1日から2022年(令和4年)1月31日までの間に終了する各事業年度に生じた欠損金額について適用されます。ただし、大規模法人の100%子会社などは除かれます。

3.テレワーク等のための中小企業の設備投資税制

 中小企業経営強化税制の特定経営力向上設備等の対象に、テレワーク等のための設備投資に係る新たな類型としてデジタル化設備が追加されます。
 要件は遠隔操作、可視化、自動制御化のいずれかに該当する設備で、機械装置、工具、器具備品、建物附属設備、ソフトウエアが対象設備です。

4.中止等されたイベントに係る入場料等の払戻請求権を放棄した者への寄附金控除の適用

 政府の自粛要請を踏まえて文化芸術・スポーツに係る一定のイベント等を中止等した主催者に対し、観客等が入場料等の払戻請求権を放棄した場合には、当該放棄した金額(上限20万円)について、所得税における寄附金控除(所得控除又は税額控除)の対象とされます。

5.住宅ローン控除の適用要件の弾力化

 新型コロナウイルス感染症の影響による住宅建設の遅延等によって住宅への入居が遅れた場合でも、期限内に入居したのと同様の住宅ローン控除を受けることができるに適用要件が弾力化されます。

6.消費税の課税事業者選択届出書等の提出に係る特例

 新型コロナウイルス感染症の影響で2020年(令和2年)2月1日から2021年(令和3年)1月31日までの期間のうち、任意の期間(1か月以上)の収入が前年同期比おおむね50%以上減少した事業者が、申告期限までに申請書を提出し、税務署長の承認を受けた場合は、課税期間開始後でも消費税の課税事業者を選択又はやめることができる特例が設けられます。
 この特例で課税事業者を選択した課税期間の翌課税期間において、課税事業者の選択をやめることも可能です。

7.特別貸付けに係る消費貸借に関する契約書の印紙税の非課税

 公的貸付機関等又は銀行等の金融機関が、新型コロナウイルス感染症の発生により、その経営に影響を受けた事業者に対して行う金銭の特別貸付けに係る消費貸借に関する契約書のうち、2021年(令和3年)1月31日までに作成されるものについては、印紙税を課さないこととされます。
 ここでいう特別貸付けとは、当該機関が行う他の金銭の貸付けの条件に比し特別に有利な条件で行うものをいいます。
 また、施行日の前日までに作成されたものにつき印紙税が納付されている場合には、当該納付された印紙税については、過誤納金とみなして還付されます。

8.中小事業者等が所有する償却資産及び事業用家屋に係る固定資産税及び都市計画税の軽減措置

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のための措置に起因して、厳しい経営環境にある中小事業者等に対して、2021年度(令和3年度)課税の1年分に限り、償却資産及び事業用家屋に係る固定資産税及び都市計画税の負担が2分の1又はゼロとされます。
 原則として業種は限定されず、2021年(令和3年)1月31日までに認定経営革新等支援機関等の認定を受けて各市町村に申告した場合に適用されます。
 なお、この措置による固定資産税及び都市計画税の減収額については、全額国費で補填されます。

贈与税の課税方法「暦年課税」

 個人が法人から財産の贈与を受けた場合は、所得税の対象となります。一方、個人が個人から財産の贈与を受けたときは、贈与税の対象となります。
 贈与税の課税方法には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがありますが、今回は贈与税の基本的な制度である暦年課税について紹介します。

1.贈与とは

 贈与とは、自分の財産を無償で相手方に贈るという意思表示をし、相手方がこれを承認することによって成立する民法上の契約をいいます。
 つまり、贈与というのは「あげましょう」「もらいます」の2つの意思表示があってはじめて成立するものです。この2つの意思をはっきりとしておくために、贈与契約書を必ず作っておくことが重要です。

2.贈与税がかかるケース

 贈与税は、贈与者(贈与をした人)から受贈者(贈与を受けた人)へ財産が無償で移ったときに受贈者にかかります。財産が無償で移るケーズとして、次の4つがあります。

(1) 個人から個人へ
(2) 個人から法人へ
(3) 法人から個人へ
(4) 法人から法人へ

 上記のうち、贈与税がかかるケースは、原則として(1)の個人から個人へのケースだけです。他の3つのケースでは原則として贈与税はかかりませんが、下表のように法人税、所得税が受贈者に課されます。

          財産が無償で移った場合の課税関係

贈与者 受贈者 課税関係
個人 個人 贈与税
個人 法人 法人税
法人 個人 所得税
      法人       法人      法人税

3.贈与税がかかる財産

 贈与税は、原則として、個人から贈与によって取得した財産で、金銭で見積もることができる経済的価値のあるものすべてについて課税されます。例えば、土地、家屋、借地権、現預金、株式などがあります。これらの財産は、当然に贈与税がかかるものとして本来の贈与財産といいます。

 また、本来の贈与に基づかない場合であっても、例えば次のようなものは贈与があったものとみなして贈与税が課税されます。これを本来の贈与財産に対して、みなし贈与財産といいます。

(1) 親族から時価1,000万円の土地を300万円で買った場合

 低額譲受けとして、差額の700万円の贈与があったものとして課税されます。

(2) 親が建築資金を全額拠出した二世帯住宅の名義が親子共有となっている場合

 建築資金を拠出していない子の共有持分の贈与があったものとして課税されます。

(3) 親子間の金銭の貸し借りで返済期日や利息が決められていない場合

 実態が贈与であるものとして課税されます(真に金銭の貸借と認められるものは課税されません)。

(4) 債務免除を受けた場合

 債務免除額に対して課税されます。

(5) 保険料支払人が夫、被保険者が夫の満期保険金を妻が受け取った場合

 夫から妻への贈与として満期保険金に対して課税されます(死亡保険金の場合は相続税が課されます)。

 なお、扶養義務者相互間(親から子など)での通常必要と認められる生活費や教育費の贈与や、個人から受けた社会通念上相当と認められる香典、花輪代、年末年始の贈答、祝い物、見舞いなどの金品については、贈与税の非課税財産とされています。

4.贈与税の計算方法

 贈与税は、1月1日から12月31日までの1年間に個人から贈与を受けた財産で課税対象となるものの価額(評価額)の合計額を課税価格とし、その課税価格から基礎控除額110万円を差し引き、その残額に税率を乗じて税額を計算します。
 また、20歳以上の者が直系尊属(父母、祖父母など)から受ける贈与については、特例贈与として一般贈与(特例贈与以外の贈与)より税率が軽減されます。(参考:国税庁ホームページ

(1) 一般贈与又は特例贈与のいずれかのみにより財産を取得した場合

 本来の贈与財産+みなし贈与財産-非課税財産=課税価格

(課税価格-基礎控除額110万円)×税率-速算表の控除額=贈与税額

(2) 一般贈与と特例贈与により財産を取得した場合

 課税価格合計-基礎控除額110万円=基礎控除後の課税価格(A)

 ①((A)×一般贈与の税率-一般贈与の速算表の控除額)×一般贈与財産の課税価格÷課税価格合計
 ②((A)×特例贈与の税率-特例贈与の速算表の控除額)×特例贈与財産の課税価格÷課税価格合計
 ①+②=贈与税額

5.贈与税の申告

 贈与税申告書を提出しなければならない人は、納めなければならない贈与税額がある人です。贈与によって財産をもらっても、贈与税額がない人は申告する必要がありません。
 すなわち、課税価格が基礎控除額110万円以下であれば、申告する必要はありません(ただし、2,000万円の配偶者控除の特例住宅取得等資金贈与の非課税特例相続時精算課税制度の特例を受けるためには、贈与税額がゼロの場合でも申告書を提出しなければなりません)。

 贈与税申告書は、受贈者の住所地を所轄する税務署へ提出しなければなりません(贈与者の住所地を所轄する税務署ではありません)。
 また、提出期限は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間です。

贈与税の配偶者控除の適用要件

 婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産の贈与(名義変更)が行われた場合又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合は、その年分の贈与税の計算において、課税価格から基礎控除110万円の他に最高2,000万円を控除(配偶者控除)することができます。

1.配偶者控除の要件

 この配偶者控除の適用が受けられるのは、次の要件のいずれにも該当する場合に限られます。

(1) 贈与者の要件

 贈与者は、婚姻の届出をした日から贈与を受けた日までの期間が20年以上(1年未満の端数は切捨て)である受贈者の配偶者であること。

(2) 贈与財産の要件

 贈与により取得した財産は、国内にある居住用不動産又はその取得のための金銭であること。

※ 居住用不動産とは、専ら居住の用に供する土地若しくは土地の上に存する権利又は家屋で国内にあるものをいいます。
  また、店舗兼住宅などのように居住の用とそれ以外の用に供されている不動産である場合は、居住の用に供している部分のみについて配偶者控除が適用されます。

(3) 居住の要件

 受贈者自らが上記(2)の居住用不動産に現在居住している又は贈与を受けた年の翌年3月15日(贈与税の申告期限)までに居住する見込みであり、かつ、今後も引き続きこの居住用不動産に居住する予定であること。

(4) 適用回数の要件

 過去に今回の贈与者からの贈与について、配偶者控除の適用を受けていないこと。

※ 配偶者控除は、同じ配偶者からの贈与については、一生に一度しか適用を受けることができません。

2.申告の手続き

 配偶者控除の特例は、贈与税の申告書等に、この特例の適用により控除を受ける金額(配偶者控除額)その他の必要事項を記載するとともに、下記の書類を添付することが必要です。贈与税額がゼロの場合でも、必ず申告しなければなりません。

(1) 財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍謄本又は抄本
(2) 財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍の附票の写し
(3) 居住用不動産の登記事項証明書
(4) その居住用不動産に住んだ日以後に作成された住民票の写し
 ※上記(2)の戸籍の附票の写しに記載されている住所が居住用不動産の所在場所である場合には、住民票の写しの添付は不要です。

3.相続開始前3年以内の贈与加算との関係

 相続又は遺贈により財産を取得した者について、被相続人から生前に贈与された財産のうち相続開始前3年以内に贈与された財産は、その者の相続税の課税価格に贈与を受けた財産の贈与の時の価額が加算されます。また、その加算された贈与財産の価額に対応する贈与税の額は、加算された者の相続税の計算上控除されます。
 ただし、贈与税の配偶者控除の適用を受けている(相続開始の前年以前に贈与があった場合)又は受けようとする(相続開始と同年に贈与があった場合)財産のうち、その配偶者控除額に相当する金額は、相続財産に加算する必要はありません。

住宅取得等資金贈与の非課税特例

1.概要

 2021(令和3)年12月31日までに、父母や祖父母などの直系尊属から、住宅の新築・取得又は増改築のための資金(以下、「住宅取得等資金」といいます)の贈与を受けて契約を締結した場合には、住宅取得等資金のうち、住宅用家屋の区分及び契約の締結時期、対価・費用に含まれる消費税率に応じて、それぞれ次に掲げる金額(以下、「非課税限度額」といいます)までについては贈与税が課税されません。

契約日 ①消費税率8%の場合又は個人間売買の場合 ②消費税率10%の場合
省エネ等住宅 左記以外 省エネ等住宅 左記以外
平成28年1月~平成31年3月 1,200万円 700万円
平成31年4月~令和2年3月 1,200万円 700万円 3,000万円 2,500万円
令和2年4月~令和3年3月 1,000万円 500万円 1,500万円 1,000万円
令和3年4月~令和3年12月 800万円 300万円 1,200万円 700万円

※上表の省エネ等住宅とは、断熱等性能等級4以上、一次エネルギー消費量等級4以上、高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上、耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上又は免震建築物のいずれかに該当する住宅用家屋をいいます。

 既に非課税制度の適用を受けた贈与税の非課税額がある場合には、その金額を控除した残額が非課税限度額となりますが、上表②欄の非課税限度額は、2019年(平成31年)3月31日以前の契約に基づき贈与税が非課税となった金額を控除する必要はありません。

 また、新たに追加工事の契約を締結した場合などは、最初の契約締結日で非課税限度額の判定をします。
 例えば、2019年(平成31年)3月31日以前に税率8%となる新築の契約を締結し、同年4月以後に税率10%となる追加工事の契約を締結したとしても、非課税限度額は最初の契約の締結日で判定するため、上表①の非課税限度額となります。

2.適用要件

 この住宅取得等資金贈与の非課税特例の適用を受けるための要件は、次のとおりです。

(1) 贈与者

贈与者は父母、祖父母などの直系尊属であること

(2) 受贈者

① 20歳以上(贈与年1月1日時点)の子、孫などの直系卑属であること
② 合計所得金額が2,000万円以下であること
③ 原則、贈与年の翌年3月15日までに新築・取得又は増改築をしたうえで居住していること(贈与年の翌年3月15日以後、遅滞なく居住することが確実であると見込まれる場合を含みます)

※ 新築の場合は、贈与年の翌年3月15日までに工事が棟上げの状態まで進んでいれば適用を受けることができます。また、建売住宅・分譲マンションの取得の場合は、同日までに引渡しを受けておく必要があります。

(3) 贈与財産

住宅の新築又は取得、増改築のための資金であること

※贈与資金により取得する住宅が、自己の配偶者、親族などの一定の特別の関係がある人から取得したものや、これらの人との請負契約等により新築等をしたものは除きます。また、住宅を複数所有する場合は、主として居住の用に供する一つの住宅に限ります。

(4) 住宅用家屋

①床面積が50㎡以上240㎡以下であること
②床面積の1/2以上が居住用であること
③中古住宅の場合は、一定の耐震基準を満たすものであること等
④増改築の場合は、工事費が100万円以上で費用の1/2以上が居住用にかかるものであること等

(5) 敷地

 住宅の新築に先行して取得する敷地(受贈者は新築住宅を所有又は共有すること)又は建売住宅・分譲マンション等の新築等と同時に取得する敷地であること

3.非課税特例のポイント

(1) 贈与者の相続財産への加算

 住宅取得等資金贈与の非課税特例の適用を受けた金額は、贈与者が死亡したときのその贈与者に係る相続税の計算において、相続税の課税価格に加算されません。

(2) 暦年課税等との併用可能

 この非課税特例は、暦年課税の基礎控除額(110万円)との併用適用が可能です。また、2021年(令和3年)12月31日までに、父母又は祖父母から住宅取得等資金の贈与を受けた場合には、贈与者が60歳未満であっても、相続時精算課税の適用を選択できます。

(3) 非課税特例の適用を受けるための手続

 非課税特例の適用を受けるためには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、非課税特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書に戸籍の謄本、登記事項証明書、新築や取得の契約書の写しなど一定の書類を添付して、納税地の所轄税務署に提出する必要があります。

(4) 住宅借入金等特別控除の適用を受ける場合

 所得税において住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)の適用を受ける場合は、住宅取得等資金贈与の非課税特例の適用を受けた金額を住宅の取得対価の額から控除しなければなりません。
 例えば、住宅の取得対価の額が3,000万円、住宅ローンが2,500万円、親から贈与された住宅取得等資金が700万円の場合、3,000万円から700万円を控除した2,300万円が住宅借入金等特別控除の計算の基礎となる住宅の取得対価の額となります。