賃貸用マンションの修繕積立金は支払期日に必要経費算入可、意外な盲点は管理費の消費税の取扱い

 分譲マンションのオーナー(区分所有者)が、転勤等のため長期間自室を留守にする場合、賃貸に出して家賃収入を得ることがあります。
 賃貸に出した場合でも、修繕積立金と管理費をマンション管理組合に支払うのは、オーナーである区分所有者です(家賃に転嫁して賃借人の負担とするかどうかは別として)。
 今回は、修繕積立金を必要経費に算入する時期の確認と、意外な盲点である(間違った処理が多い)管理費の消費税の取扱いを確認します。

1.原則は修繕完了時に必要経費算入

 修繕積立金は、原則として、実際に修繕等が行われその修繕等が完了した日の属する年分の必要経費になります。
 修繕積立金は、マンションの共用部分について行う将来の大規模修繕等の費用の額に充てられるために長期間にわたって計画的に積み立てられるものであり、実際に修繕等が行われていない限りにおいては、具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していないことから、原則的には、管理組合への支払期日の属する年分の必要経費には算入されず(所得税基本通達37-2)、実際に修繕等が行われ、その費用の額に充てられた部分の金額について、その修繕等が完了した日の属する年分の必要経費に算入されることになります。

2.一定の場合は支払期日に必要経費算入可

 しかしながら、修繕積立金は区分所有者となった時点で、管理組合へ義務的に納付しなければならないものであるとともに、管理規約において、納入した修繕積立金は、管理組合が解散しない限り区分所有者へ返還しないこととしているのが一般的です(マンション標準管理規約(単棟型)(国土交通省)第60条第6項)。
 そこで、修繕積立金の支払がマンション標準管理規約に沿った適正な管理規約に従い、次の事実関係の下で行われている場合には、その修繕積立金について、その支払期日の属する年分の必要経費に算入しても差し支えないものとされています。

(1) 区分所有者となった者は、管理組合に対して修繕積立金の支払義務を負うことになること
(2) 管理組合は、支払を受けた修繕積立金について、区分所有者への返還義務を有しないこと
(3) 修繕積立金は、将来の修繕等のためにのみ使用され、他へ流用されるものでないこと
(4) 修繕積立金の額は、長期修繕計画に基づき各区分所有者の共有持分に応じて、合理的な方法により算出されていること

3.管理費の消費税課税区分は不課税!

 不動産所得の計算上、修繕積立金を必要経費に算入する時期については上記のとおりです。また、管理費については、支払期日に必要経費に算入することに関して疑義は生じません。
 しかし、マンション管理組合に支払う管理費の消費税課税区分には要注意です。支払った管理費の課税区分を「課税仕入」としているケースが多いのですが、これは間違いです。
 マンション管理組合は、その居住者である区分所有者を構成員とする組合であり、その組合員との間で行う取引は営業に該当しません。したがって、マンション管理組合に支払う管理費の消費税課税区分は「不課税(課税対象外)」となります。
 区分所有者が支払う管理費が、マンション管理組合を介して、マンションを管理する不動産業者に渡るとしても、現行の消費税法では不課税となります。

個人が受け取る和解金等の課税関係

 交通事故の被害者と加害者との間、あるいは従業員とその勤務先である会社との間などで紛争が生じた場合、裁判上又は裁判外の和解により、和解金、解決金、示談金、損害賠償金、慰謝料等(以下「和解金等」といいます)が支払われることがあります。
 和解金等という言葉のイメージから、これらを受け取った個人には所得税が課されないものと考えがちですが、税務調査では実態に沿った課税がされます。
 個人が和解金等を受け取った場合は、まず非課税となるのか課税されるのかを判断し、次に、課税される場合は所得区分を判断することになります。

1.和解金等が非課税となる場合

 所得税法では、損害賠償金やこれに類するもので、心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に起因して受け取るものその他政令で定めるものは非課税とされています。
 政令においては、次の(1)~(3)のうち、損害を受けた者の各種所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補填したものを除いた額は非課税とされています。

(1) 心身に加えられた損害につき支払いを受ける損害賠償金(その損害に起因する給与又は収益の補償を含む)
(2) 不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害につき支払いを受ける損害賠償金(事業所得の収入金額とされるものを除く)
(3) 心身又は資産に加えられた損害につき支払いを受ける相当の見舞金(事業所得その他役務の対価たる性質を有するものを除く)

 和解金等が非課税となるのか課税されるのかを判断するにあたっては、その和解契約書(和解調書)に記載されている文言にかかわらず、実体上の事実に基づいて判断しなければなりません。
 例えば、当事者間において和解契約上は損失を補填するための損害賠償金として金銭を支払うという契約がなされていたとしても、金銭の取得者に客観的な損害が生じていると認められない場合は、その金銭の取得は非課税となりません。損害賠償金が非課税とされるのは、損害賠償金が心身の癒し又は資産に受けた損害を補填するものであって、取得者に利益をもたらすものではないからです。
 したがって、和解の前提となる和解契約書だけではなく、客観的な事実やその支払いがなされるに至った経緯、客観的な損害等が生じているか否か等を総合的に勘案する必要があります。
 課税庁サイドにおいても、和解契約書だけではなく、その過程である訴状の内容、答弁書の内容、準備書面の内容などの裁判資料を基に、和解金等の発生源泉に沿った事実認定を行い、実態に沿った課税がなされます。

2.和解金等が課税される場合

 和解金等が課税される場合は、所得区分についても判断しなければなりません。
 例えば、労使間に不当解雇の問題で紛争があり、これを和解によって解決し和解金等を支払う場合は、その和解金等の算出根拠等が所得区分の判断の指針となります。和解金等の算出根拠が、未払い賃金や未払い残業代であれば給与所得になり、解雇予告手当であれば退職所得になります。また、セクハラ等による精神的苦痛に対する慰謝料であれば、非課税となります。
 しかし、実務上は和解金等の算定根拠が明確でなく、和解契約書の内容もあいまいな表現が使われているケースが多いといえます。
 そのため、和解金等が営利を目的とした継続行為から生じたものではなく、労務その他役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しない一種の紛争解決金であると考えれば一時所得となりますが、その和解金等について何らかの対価性があり、他の所得に分類できないと考えれば雑所得となります。
 参考までに、隣接地のマンション建設工事に伴い収受した補償料名義の金員は一時所得に当たるとした以下の裁決事例を挙げておきます(昭和58年4月22日裁決、裁決事例集 No.26 – 51頁)。

 請求人の所有に係る本件土地は、都市計画法の規定による近隣商業地域内にあり建築基準法等の規定による中高層建築物の高さについての制限も受けていないことから、本件建物の建築により具体的な土地の利用価値が低下したとする因果関係の存在は、明確でなく、仮に若干の土地の利用価値の低下があったとしても社会通念上、この程度のものは受忍すべき範囲内であると考えられ、また、建築業者と請求人との間に当該金員の授受の合意が行われるに際して日照阻害に基因する具体的な損害の予測やその額の見積りを行っていない事実から、隣接地のマンション建築工事に伴い授受した補償料の金員は本件建物の建設に反対を受けた建築業者が請求人の同意を受けるために支払った一種の紛争解決金とみるのが相当であり所得税法第34条に規定する一時所得に該当する。

相続財産を売却した場合の取得費加算の特例

 相続開始後3年10か月以内に相続財産を譲渡(売却)した場合は、相続税額の一部を取得費に加算することにより、譲渡所得に係る所得税額を軽減することができます。
 今回は、この取得費加算の特例の内容と計算例を確認します。

1.取得費加算の特例

(1) 特例の概要

 相続又は遺贈により取得した土地、建物、株式などの財産を、相続開始の日の翌日から相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡した場合は、実際の取得費又は概算取得費に一定の相続税額を加算して、譲渡所得に係る所得税額額を軽減することができます。

譲渡所得の計算式
譲渡所得=収入金額-〔(取得費+加算する相続税額)+譲渡費用〕-特別控除額

(2) 取得費に加算する相続税額

 取得費に加算する相続税額は、次の計算式で計算した金額となります。ただし、その金額がこの特例を適用しないで計算した譲渡益(土地、建物、株式などを売った金額から取得費、譲渡費用を差し引いて計算します。)の金額を超える場合は、その譲渡益相当額が取得費に加算する相続税額となります。
 なお、譲渡した財産ごとに計算します。

取得費に加算する相続税額の計算式
取得費に加算する相続税額=その者の相続税額×その者の譲渡資産の相続税の課税価格/その者の債務控除前の相続税の課税価格

(3) 特例を受けるための要件

 この特例を受けるためには、次の要件を満たす必要があります。

① 相続や遺贈により財産を取得した者であること
② その財産を取得した人に相続税が課税されていること
③ その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること

(4) 特例を受けるための手続き

 この特例を受けるためには、確定申告をすることが必要です。
 確定申告書には、①相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書、②譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書【土地・建物用】)や株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書などの添付が必要です。

(5) 留意点

 この特例を受けるにあたって、留意しなければならない点は次のとおりです。

① この特例は譲渡所得のみに適用がある特例ですので、株式等の譲渡による事業所得及び雑所得については、適用できません。
② この特例と空き家の譲渡所得の特例とは、選択適用となります。なお、空き家の譲渡所得の特例については、本ブログ記事「空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例」をご参照ください。

2.計算例

 相続により令和元年10月に取得した土地のうち、その2分の1を令和3年4月に譲渡した場合の譲渡所得の金額と所得税額は以下のようになります(下表を前提とします)。

取得した相続財産の課税価格 1億円
上記のうち土地の相続税課税価格 8,000万円
譲渡した土地の相続税課税価格 4,000万円
土地の譲渡価額 5,000万円
取得費 不明
仲介手数料 50万円
譲渡した者の納付すべき相続税額 1,000万円

取得費に加算する相続税額は、1,000万円×4,000万円/1億円=400万円になります。
譲渡所得の金額は、5,000万円-(5,000万円×5%+400万円+50万円)=4,300万円になります。
所得税額は、4,300万円×20.315%=873万5,450円になります。
なお、取得費加算の特例の適用がない場合の所得税額は、954万8,050円です。

個人年金保険の一時金は一時所得以外に雑所得でも申告可能

 個人年金保険は、毎年「年金」として受け取る人が多いと思われますが、将来の年金を「一時金」として一括受給することもできます。
 年金と一時金、どちらで受け取った方が良いのかについては、たびたび議論されるところではありますが、今回はその議論はさておき、一時金として一括受給した場合の所得区分について述べていきます。

1.所得税基本通達35-3

 一般的には、個人年金保険を「年金」として受給した場合の所得区分は雑所得、「一時金」として一括受給した場合の所得区分は一時所得と考えられています。
 ところが、所得税基本通達35-3(年金に代えて支払われる一時金)では、次のように規定されています。

35-3 令第183条第1項、令第184条第1項、令第185条又は令第186条の規定の対象となる年金の受給資格者に対し当該年金に代えて支払われる一時金のうち、当該年金の受給開始日以前に支払われるものは一時所得の収入金額とし、同日後に支払われるものは雑所得の収入金額とする。ただし、同日後に支払われる一時金であっても、将来の年金給付の総額に代えて支払われるものは、一時所得の収入金額として差し支えない。

 つまり、①受給開始日以前に支払われる一時金(解約返戻金等)は一時所得、②同日に支払われる一時金は雑所得、③同日に支払われる一時金のうち、将来の年金給付の総額に代えて支払われる一時金一時所得として差し支えない、とされています。
 ①の受給開始日以前に支払われる一時金とは解約返戻金等であり、これは一時所得になります。今回問題としているのは、②③の受給開始日後に支払われる一時金です。
 そうすると、上記通達の「差し支えない」という文言から、受給開始日後に支払われる一時金は雑所得が原則であり、一時所得とするのは例外のようにも読み取れます。
 この点について、以下で確認します。

2.有期年金の場合は雑所得又は一時所得

 個人年金保険は、有期年金と終身年金に大別されます。
 有期年金とは、年金の支払期間(保証期間)終了後に受給資格者が生存していても、年金は支払われないものをいいます。例えば、10年有期年金であれば、支払開始から10年間だけ年金が支払われ、その後は受給資格者が生存していても、年金は支払われないことになります。
 一方、終身年金は、終身にわたって年金が支払われるもの、つまり、受給資格者が生存している限り年金が支払われるものをいいます。

 ここで少し整理すると、受給開始日後に支払われる一時金のうち、今回問題としているのは有期年金です。
 有期年金は、年金の保証期間終了をもって年金の支払がストップする仕組みですので、有期年金の一時金は、所得税基本通達35-3でいう「将来の年金給付の総額に代えて支払われるもの」に該当し、「一時所得の収入金額として差し支えない」ことになります。
 すなわち、同通達における一時金の所得区分は雑所得を原則とし、将来の年金給付の総額に代えて支払われる一時金については、一時所得とすることもできるということです。
 個人年金保険の一時金は、税務メリットのあるケースが多いと考えられる一時所得で申告するのが一般的だと思われますが、「一時金=一時所得」と定型的に考えるのではなく、雑所得とした場合の税務メリット(例えば、他の雑所得の損失との内部通算が認められる等)も考慮した方がいいかもしれません。
 ただし、次の保証期間付終身年金の一時金については、一時所得とすることはできず雑所得になります。

3.保証期間付終身年金の場合は雑所得

 保証期間付終身年金は、受給資格者が保証期間終了後も生存していれば、引き続き年金が支払われるというものです。
 保証期間に係る一時金を受給しても、その後生存していれば再び年金を受給できる仕組みですので、保証期間付終身年金の一時金は、一時所得となる「将来の年金給付の総額に代えて支払われる一時金」に該当しないとされています(国税庁・質疑応答事例参照)。
 したがって、保証期間付終身年金の一時金の所得区分は雑所得になります。

生命保険金を受け取ったときの税金

 生命保険金を受け取った場合、その保険金が死亡に基づくものか、満期によるものか、また、保険料の負担者は誰なのかなどによって課税関係が異なります。
 今回は、生命保険金を受け取ったときの課税関係について整理します。

1.死亡保険金を受け取ったとき

 例えば、「契約者:夫、被保険者:夫、受取人:妻」の生命保険契約の保険料を、夫が支払っていたとします。
 このような状況で夫が亡くなった場合は、妻は保険会社から死亡保険金を受け取ります。このとき、妻が受け取った死亡保険金は相続税の課税対象(みなし相続財産)となります。
 また、「契約者:夫、被保険者:夫、受取人:妻」の生命保険契約の保険料を、妻が支払っていたとします。
 このような状況で夫が亡くなった場合も、妻は保険会社から死亡保険金を受け取るのですが、さきほどの例とは異なり、妻が受け取る死亡保険金はみなし相続財産にはなりません。
 妻が自分で保険料を支払って、自分で保険金をもらったわけですから、一時所得として所得税の課税対象になります。
 さらに一例を挙げると、「契約者:夫、被保険者:夫、受取人:妻」の生命保険契約の保険料を、子が支払っていたとします。
 この場合も、妻が受け取る死亡保険金はみなし相続財産にはなりません。子が保険料を支払っていたからこそ、妻は保険金を受け取っているのですから、この場合は子から妻への贈与となり、贈与税の課税対象(みなし贈与財産)となります。
 死亡保険金に限らず、生命保険金を受け取った場合の課税関係において重要なことは、誰が保険料を支払っていたか(誰が保険料の負担者なのか)ということです。
 保険契約者が保険料負担者であることが一般的ですが、必ずしもそうではないケースもありますので、注意しなければなりません。
 下表は、被保険者が死亡した場合の課税関係の例を示したものです。

  負担者 被保険者 受取人 課税関係
死亡保険金 妻に相続税:保険金-(500万円×法定相続人)
妻の一時所得※:(保険金-支払保険料-50万円)×1/2
妻に贈与税:保険金-110万円
夫の一時所得※:(保険金-支払保険料-50万円)×1/2
子に贈与税:保険金-110万円

※ 一定の一時払養老保険等の差益は、源泉徴収だけで納税が完了する源泉分離課税となります。また、年金方式で保険金を受け取った場合は、その年ごとの雑所得として所得税及び復興特別所得税がかかります。

2.満期保険金・解約返戻金を受け取ったとき

 上記1は死亡保険金を受け取ったときの課税関係でしたが、満期保険金や解約返戻金を受け取ったときの課税関係はどうなるでしょうか。
 例えば、「契約者:夫、被保険者:夫、受取人:妻」の生命保険契約の保険料を、夫が支払っていたとします。
 このような状況で保険契約が満期を迎えた場合は、妻は保険会社から満期保険金を受け取ります。満期保険金は、夫がまだ亡くなっていませんので、みなし相続財産にはなりません。この満期保険金は、夫が保険料を支払っていたからこそ、保険会社から妻に支払われるものです。したがって、夫から妻への贈与となり、贈与税の課税対象(みなし贈与財産)となります。
 また、「契約者:夫、被保険者:夫、受取人:妻」の生命保険契約の保険料を、妻が支払っていたとします。
 このような状況で、保険契約が満期を迎えた場合に妻が受け取る満期保険金は、みなし贈与財産にはなりません。
 妻が自分で保険料を支払って、自分で保険金をもらったわけですから、一時所得として所得税の課税対象になります。
 満期保険金や解約返戻金を受け取ったときの課税関係についても、誰が保険料を支払っていたか(誰が保険料負担者なのか)ということが重要です。
 下表は、満期保険金や解約返戻金を受け取った場合の課税関係の例を示したものです。

  負担者 被保険者 受取人 課税関係
満期保険金解約返戻金 妻に贈与税:保険金-110万円
妻の一時所得※:(保険金-支払保険料-50万円)×1/2
妻に贈与税:保険金-110万円
夫の一時所得※:(保険金-支払保険料-50万円)×1/2
子に贈与税:保険金-110万円

※ 一定の一時払養老保険等の差益は、源泉徴収だけで納税が完了する源泉分離課税となります。また、年金方式で保険金を受け取った場合は、その年ごとの雑所得として所得税及び復興特別所得税がかかります。

控除対象外消費税額等の処理

1.控除対象外消費税額等とは

 法人又は個人事業者が、消費税等の経理方法として税抜経理方式を採用している場合、原則として納付すべき消費税額は、仮受消費税等から仮払消費税等を控除した金額となります(いわゆる消費税差額は、原則的には生じません)。
 しかし、その課税期間の課税売上高が5億円超又は課税売上割合が95%未満である場合には、仮払消費税等のうち控除対象とされない部分の消費税額(消費税差額)が発生します。これを控除対象外消費税額等といいます。
 控除対象外消費税額等が生じるのは、仕入控除税額が課税仕入れ等に係る消費税額の全額ではなく、課税売上割合に対応した部分に限られるからです。
 例えば、建物を5,500万円(うち消費税額等500万円)で取得し、その課税期間の課税売上割合が60%だとしたら、500万円×(1-60%)=200万円が控除対象外消費税額等になります。
 この控除対象外消費税額等については、以下に掲げる方法により処理します。なお、税込経理方式を採用している場合は、消費税等は資産の取得価額又は経費の額に含まれますので、控除対象外消費税額等の調整は必要ありません。

2.資産に係る控除対象外消費税額等

 資産に係る控除対象外消費税額等は、次のいずれかの方法により損金の額又は必要経費に算入します。

(1) 資産の取得価額に算入します。

(2) 次のいずれかに該当する場合は、法人については損金経理を要件としてその事業年度の損金の額に、個人事業者はその年分の必要経費に算入します。

① その事業年度又は年分の課税売上割合が80%以上であること
② 棚卸資産に係る控除対象外消費税額等であること
③ 一の資産に係る控除対象外消費税額等が20万円未満であること

(3) 上記に該当しない場合は「繰延消費税額等」として資産計上し、5年以上の期間で償却します。

① 繰延消費税額等が生じた事業年度
 損金算入限度額=繰延消費税額等×その事業年度の月数/60×1/2

②その後の事業年度
 損金算入限度額=繰延消費税額等×その事業年度の月数/60

 例えば、200万円の繰延消費税額等が生じた場合、その生じた事業年度の損金算入限度額は、200万円×12/60×1/2=20万円となります(資産を取得した事業年度は2分の1が損金となります)。
 この場合、会計上は消費税差額200万円を全額雑損失(又は租税公課)で処理することは可能ですが、法人税の計算においては別表十六(十)で損金算入限度額20万円を計算し、限度額20万円を超える額180万円については別表四で加算します。そして、次期以降5年間にわたり180万円を認容していく必要があります。

3.経費に係る控除対象外消費税額等

 経費に係る控除対象外消費税額等は、その全額をその事業年度の損金の額又はその年分の必要経費に算入します。
 ただし、法人税の計算において、交際費等に係る控除対象外消費税額等については、消費税の計算後、会計上は経費に係る分として雑損失(又は租税公課)で処理され損金経理されますが、科目は交際費とはならなくても支出した交際費等として把握し、交際費等の損金不算入の計算が必要になります。
 この場合、交際費等に係る控除対象外消費税額等の金額を、別表十五(交際費等の損金算入に関する明細書)の「支出交際費等の額の明細」欄に、交際費自体の額とは別に記載しなければなりません。
 また、課税資産を購入して寄附した場合の控除対象外消費税額等については、支出寄附金等の額として、寄附金等の損金不算入額を計算しなければなりません。
 なお、交際費等に係る控除対象外消費税額等は、以下のようになります。

(1) 個別対応方式で計算している場合

① 課税売上対応の交際費に係る税額については、控除対象外消費税額等は生じません。
② 非課税売上対応の交際費に係る税額については、その全額が控除対象外消費税額等になります。
③ 共通対応の交際費に係る税額については、交際費等のうち次の算式で計算した金額が控除対象外消費税額等になります。
 控除対象外消費税額等=共通対応の交際費に係る税額×(1-課税売上割合)

(2) 一括比例配分方式で計算している場合

 交際費等のうち、次の算式で計算した金額が控除対象外消費税額等になります。
 控除対象外消費税額等=交際費に係る税額×(1-課税売上割合)

副業の給与所得が会社にバレない方法とは?

 かつては副業を禁止する会社が多かったのですが、最近は副業を容認(あるいは推奨)する会社が増えてきています。公務員でも、届出さえしておけば副業が許される自治体もあるようです。
 今は世の中が副業に対して寛容になったとはいえ、一方で副業を禁止する会社もあり、また、副業が解禁されている会社に勤めていても、副業していることを会社に知られたくない場合もあるかと思います。
 今回は、副業が会社にバレない一般的な方法と、副業の「給与所得」が会社にバレないイレギュラーな方法について述べます。

1.副業がバレない一般的な方法

 会社員が会社勤めの傍ら行う副業には、様々なものがあります。例えば、アフィリエイト、FX取引、仮想通貨取引、原稿執筆、講演、UBER EATS ドライバーなどがあります。これらの活動によって得た所得は、雑所得に区分されます。
 また、自分が所有するマンションの一室を賃貸して家賃収入を得ることもありますが、これは不動産所得に区分されます。
 さらに、副業ではありませんが、例えば自分の居住する住宅を売って売却代金を受け取ると、これは譲渡所得になります。
 これらの活動によって得た所得は、基本的には確定申告をする必要があります。その結果、これらの所得は本業の給与所得と合算されて住民税が課税され、会社で給与から天引き(特別徴収)されますので、会社の経理担当者に給与以外に所得があると気づかれる可能性があります。
 このような副業が会社にバレないようにするために、一般的によく行われるのは次の方法です。

 所得税の確定申告書第二表には、「住民税・事業税に関する事項」欄に住民税の徴収方法を選択する箇所があります(上図参照)。この箇所の「自分で納付」に〇をつけて申告すると、副業による所得に関する住民税の通知・納付書が自宅に届きますので、その分を自分で納付すれば、副業を会社に知られずに済みます(自分で納付する方法のことを「普通徴収」といいます)。

 なお、会社員の副業による雑所得等が20万円以下の場合は、確定申告をしなくてもよいことになっています(詳しくは、本ブログ記事「給与所得者と公的年金等受給者の確定申告不要制度の注意点」をご参照ください)。

2.副業が給与所得の場合はどうする?

 一般的には上記1の方法により副業を会社に知られないようにするのですが、副業で得た収入が給与所得に該当する場合はどうでしょうか?
 例えば、コンビニ、スーパー、レストラン、居酒屋、塾、専門学校などでアルバイトをしている場合、これらで得た収入は給与所得になります。副業が給与所得の場合、上記1の方法は使えません。
 上記1の図をよく見ると、「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」となっているのがわかります。
 つまり、給与所得以外の所得(雑所得や不動産所得など)については、確定申告書第二表で住民税の徴収方法を選択できるのですが、給与所得の場合は住民税の徴収方法は選択できず、原則として特別徴収になります。
 また、本業と副業の2か所から給与所得を得ていますので、たとえ副業の給与所得が20万円以下だったとしても、確定申告不要制度は使えません。
 そうすると、副業で得た所得を確定申告して、さらに住民税を特別徴収されると、会社に副業がバレる可能性があります。
 このような場合は、どうすることもできないのでしょうか?

 残された唯一の方法は、自分が住んでいる市区町村に住民税の普通徴収の申し出をすることです。
 本来は2か所からの給与所得は合算され、その合計に対して住民税が課税され、一律特別徴収されますので、副業分の住民税だけを普通徴収にするというのはイレギュラーな手続きになります。
 しかし、副業を会社に知られたくない旨を伝えると、この普通徴収の申し出に対応してくれる市区町村もあります。
 イレギュラーな手続きになりますので、原則として納税者本人が市区町村の窓口で手続きをする必要があります(同居家族であれば委任状がなくても手続きできる場合があります)。申し出といっても何か特別な様式があるわけではなく、2か所分の源泉徴収票と印鑑を持参して、本業は特別徴収、副業は普通徴収を希望することを担当者に相談するだけです。相談できる期限は所得税の確定申告期限と同じであり、所得税の確定申告が済んでいなくても相談できます。
 市区町村によって対応は異なると思いますが、一度相談してみる価値はあります。

青色申告と白色申告の特典比較

1.白色申告は現金主義で記帳できるという誤解

 青色申告と白色申告には、それぞれ適用できる特典がありますが、両者を混同して適用を誤ってはいけません。
 例えば、「青色申告の記帳は発生主義によらないといけないが、白色申告の場合は現金主義で記帳することができる」という認識があるとすれば、これは誤解です。
 青色申告も白色申告も、原則として発生主義による記帳を行わなければなりません。現金主義による記帳は、一定の要件を満たす青色申告者のみに認められた特典であり、白色申告者に現金主義の適用はありません。
 また、白色申告者が取得価額30万円未満の少額減価償却資産を必要経費に算入することはできません。これも青色申告者のみに認められた特典です。
 このような適用誤りを防止するために、青色申告と白色申告について、それぞれに認められている特典の比較を行います。

2.主な特典の比較

 青色申告と白色申告の特典は、次のとおりです。

特典 青色申告 白色申告
青色申告特別控除 最高65万円又は10万円を不動産所得、事業所得、山林所得から順次控除できる 適用なし
青色事業専従者給与
事業専従者控除
事業的規模の所得において、労務の対価として相当と認められる金額の範囲内で支払われた給与は、全額必要経費に算入できる 事業的規模の所得において、専従者1人あたり最高50万円(配偶者は86万円)を必要経費に算入できる
現金主義 前々年の不動産所得及び事業所得の合計額が300万円以下の場合は、現金主義による所得計算ができる 適用なし
少額減価償却資産の特例 取得価額が30万円未満の少額減価償却資産は、業務の用に供した年に、全額必要経費に算入できる(年間300万円が限度) 適用なし
貸倒引当金 事業的規模の所得において、個別評価、一括評価(事業所得に限る)による貸倒引当金の計上ができる 事業的規模の所得において、個別評価のみ認められる
低価法 棚卸資産は低価法により評価できる 適用なし
純損失の繰越控除 損失額のうち、同一年中の所得と通算しても控除しきれない金額は、翌年以降3年間にわたり控除できる 変動所得又は被災事業用資産の損失に限り繰越控除できる
純損失の繰戻し還付 前年分の所得に対する税金から還付を受けられる 適用なし

慰安旅行費が福利厚生費となるための3要件と注意点

 福利厚生の一環として、日頃の従業員の頑張りを労うために慰安旅行を実施することがあります。福利厚生の一環として実施する慰安旅行なので、会社が負担した旅行代は当然福利厚生費になるものと経営者(または経理担当者)は考えがちですが、必ずしもそうではありません。
 今回は、慰安旅行費が福利厚生費となるための要件と注意点について確認します。

1.福利厚生費となる要件

 会社行事として行われる慰安旅行に参加することによって従業員が経済的利益を受ければ、原則としてこの経済的利益も給与と同様に所得税の課税対象になります。
 ただし、税務上の取扱いとして、会社が負担した費用が参加した従業員の給与として課税されるかどうかは、その旅行の条件を総合的に勘案して判定することとなります。
 国税庁タックスアンサーによると、慰安旅行によって従業員に供与する経済的利益の額が少額の現物給与は強いて課税しないという少額不追及の趣旨を逸脱しないものであると認められ、かつ、その旅行が次の(1)と(2)のいずれの要件も満たすものであるときは、原則として、その旅行の費用を旅行に参加した人の給与としなくてもよいことになっています。

(1) その旅行に要する期間が4泊5日(海外旅行の場合は、外国での滞在日数が4泊5日)以内であること
(2) その旅行に参加する従業員等の数が全従業員等(工場、支店等で行う場合は、その工場、支店等の従業員等)の50%以上であること

 (1)について補足すると、海外旅行の場合は4泊5日に移動日数(機内泊や船内泊)は含めません。また、(2)について補足すると、アルバイトや契約社員の方は参加比率に含めません。
 いずれにしても、この(1)(2)の要件については形式的に判断できますので、迷うことはないと思います。

 問題は、「少額の現物給与は強いて課税しないという少額不追及の趣旨を逸脱しないものであると認められ」る少額の金額はいくらなのか?ということです。
 これについて明文規定はありませんが、国税庁タックスアンサーに参考になる記載があります。タックスアンサーには、次の3つの事例が掲載されています。

[事例1]
イ 旅行期間3泊4日
ロ 費用及び負担状況 旅行費用15万円(内使用者負担7万円
ハ 参加割合100%
・・・旅行期間・参加割合の要件及び少額不追及の趣旨のいずれも満たすと認められることから原則として課税しなくてもよい

[事例2]
イ 旅行期間4泊5日
ロ 費用及び負担状況 旅行費用25万円(内使用者負担10万円
ハ 参加割合100%
・・・旅行期間・参加割合の要件及び少額不追及の趣旨のいずれも満たすと認められることから原則として課税しなくてもよい

[事例3]
イ 旅行期間5泊6日
ロ 費用及び負担状況 旅行費用30万円(内使用者負担15万円
ハ 参加割合50%
・・・旅行期間が5泊6日以上のものについては、その旅行は、社会通念上一般に行われている旅行とは認められないことから課税

 事例1と2は給与課税しなくてもよい例であり、会社負担額の7万円(1泊あたり2.33万円)と10万円(1泊あたり2.5万円)は、いずれも少額不追及の趣旨を満たす「少額の金額」とされています。
 一方、事例3は給与課税になる例ですが、旅行期間が4泊5日を超えているためであり、会社負担額の15万円(1泊あたり3万円)が少額であるか否かについては定かではありません。
 これらの事例から、3泊4日であれば7万円、4泊5日であれば10万円までは福利厚生費として処理して差し支えないと思われます。

2.慰安旅行費の注意点

 次のような場合には、慰安旅行費の会社負担額は福利厚生費になりませんのでご注意ください。

(1) 自己都合による不参加者に対し、その旅行への参加に代えて金銭を支給する場合には、不参加者のみならず参加者に対しても、その不参加者に対して支給する金銭に相当する給与の支給があったものとして課税されます。
 なお、会社の業務上の都合(商品搬入のための休日出勤等)による不参加者に対して、その旅行への参加に代えて金銭を支給する場合は、その不参加者のみが給与課税されます。
(2) 役員だけで行う旅行は役員賞与とみなされ、損金不算入となります。また、役員個人に対して給与課税されます。
(3) 取引先に対する接待、供応、慰安等のための旅行は、交際費になります。交際費が損金算入限度額を超える場合は、その超過分は損金不算入となります。

電子申告したのに青色申告特別控除額が55万円?

 2018年度(平成30年度)改正で、2020年(令和2年)分の所得税確定申告から、青色申告特別控除額が65万円から55万円に変わります。
 ただし、e-Taxによる申告(電子申告)又は電子帳簿保存を行うと、引き続き65万円控除を受けることができます。
 そこで、令和2年分は是非とも電子申告を行って65万円控除を受けたいところですが、電子申告の方法を誤ると55万円控除しか受けられない場合があります。
 今回は、この電子申告をはじめ、青色申告に関する間違いやすい事例を3点確認します。

1.電子申告と65万円控除

 令和2年分の確定申告において、青色申告者(電子帳簿保存法に係る承認は受けていません)が確定申告書を電子申告により期限内に提出し、青色申告決算書を別途書面(郵送)により提出しました。この場合、65万円控除を受けることができるでしょうか?

 答えは「否」です。
 青色申告特別控除額65万円を適用することができるのは、次のいずれかの要件を満たす場合です(措法25の2③④⑥)。

(1) 所定の期限内に電子帳簿保存法第4条第1項又は第5条第1項の承認申請書を提出し、その年中の事業に係る仕訳帳及び総勘定元帳について税務署長の承認を受けて、電磁的記録による備付け及び保存を行い、かつ、期限内に貸借対照表及び損益計算書等を添付した確定申告書を提出した場合
(2) 期限内に電子申告により確定申告書、貸借対照表及び損益計算書等を送信(提出)した場合

 (1)は電子帳簿の保存、(2)は電子申告に関する規定ですが、(2)の太字部分に注目すると、確定申告書だけではなく貸借対照表と損益計算書も電子申告しなければならないことがわかります。
 本事例の場合、青色申告決算書(貸借対照表及び損益計算書)は書面により提出していますので要件を満たさず、55万円控除しか受けることができません。意外と見落としやすいポイントかもしれませんので、注意が必要です。

2.貸倒引当金は青色申告者の特典?

 白色申告者が、貸倒引当金は青色申告者でなければ適用できないと判断しましたが、この判断は妥当でしょうか?

 答えは「否」です。
 貸倒引当金は青色申告の特典の一つですが、個別評価による貸倒引当金については、不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を営む者であれば、青色申告者でなくても適用を受けることができます(所法52①)。
 なお、一括評価による貸倒引当金については、事業所得を生ずべき事業を営む青色申告者のみが適用を受けることができます(所法52②)。

3.青色申告の純損失を翌年の白色申告で繰越控除できる?

 前年に青色申告者の純損失の金額が生じた場合で、翌年分が白色申告(給与所得のみ)の場合は、繰越控除ができるでしょうか?

 答えは「正」です。
 純損失の繰越控除の要件に、連続して確定申告書を提出していることとありますが、翌年以後については青色申告書の提出は要件ではないので、白色申告でも繰越控除ができます(所法70①④)。
 
 なお、白色申告者に純損失の金額が生じた場合、一切繰越控除が認められないということではありません。
 白色申告者であっても、純損失の金額のうち、変動所得の損失と被災事業用資産の損失については、その純損失の発生した年分の確定申告書を提出していれば、繰越控除ができます(所法70②)。
 さらに、当初申告要件及び期限内提出要件はないため、期限後申告又は更正の請求でも繰越損失を生じさせることができます(所法70④)。