防衛特別所得税の創設と源泉徴収事務(令和8年度税制改正)

 2026(令和8)年度税制改正により、新たに「防衛特別所得税」が創設され、同時に、東日本大震災の復興財源として課されてきた復興特別所得税の税率が引き下げられ、期間が延長されました。

 これらの改正は、いずれも2027(令和9)年1月以後に支払われる報酬料金や給与等から適用されます。

 以下では、新設された防衛特別所得税と改正された復興特別所得税について確認します。

1.防衛特別所得税とは

 新設された防衛特別所得税は、所得税の源泉徴収義務者が所得税を徴収する際に、源泉徴収すべき所得税の額の1%を追加で徴収する仕組みで、その所得税の法定納期限までに、その所得税および復興特別所得税と併せて国に納付しなければならないものです。

 対象となるのは、給与・報酬・利子・配当など、通常の源泉徴収の対象となる所得です。

2.復興特別所得税の見直し

 復興特別所得税については、次の2点が変更されています。

  改正前 改正後
税率 2.1% 1.1%
課税期間 令和19年12月31日まで 令和29年12月31日まで

3.合計税率は2.1%で変わらない

 今回の改正のポイントは、 防衛特別所得税(1%)+復興特別所得税(1.1%)=合計2.1% となり、改正前と合計税率は同じという点です。

 そのため、源泉徴収税額の計算方法自体は、これまでと変わりません。

4.報酬料金の源泉徴収

 報酬料金から源泉徴収すべき所得税・防衛特別所得税・復興特別所得税の額は、次のとおりです。

源泉徴収税額※1=支払金額等×合計税率(%)※2

※1 算出した源泉徴収税額に1円未満の端数があるときは、その端数を切り捨てます。

※2 合計税率は、所得税率(%)×102.1%で算出します。所得税率に応じた合計税率は、具体的には次のようになります。

所得税率(%) 5 10 15 16 18 20
合計税率(所得税率(%)×102.1%) 5.105 10.21 15.315 16.336 18.378 20.42

 例えば、報酬料金として888,888円を支払った場合(所得税率を10%とします)の源泉徴収税額は、888,888円(支払金額)×10.21%(合計税率)=90,755.4648円(算出税額)→90,755円(1円未満切り捨て)となります。

5.給与等の源泉徴収と年末調整

 給与や賞与については、2027(令和9)年分の新しい源泉徴収税額表に基づき、所得税・防衛特別所得税・復興特別所得税の合計額を徴収します。

 年末調整も同様に、 年調所得税額 × 102.1% で計算した合計額で精算します。

※ 令和9年分の源泉徴収税額表は、令和8年8月末頃に国税庁ホームページに掲載される予定です。

令和8年度税制改正で年収の壁はこのように変わった!

 2026(令和8)年度税制改正による所得税の基礎控除や給与所得控除の引き上げに伴い、配偶者控除や扶養控除などの所得要件も見直されています※。

 以下では、令和8年度税制改正を踏まえて、令和8年分と令和9年分の給与・賞与について適用される年収の壁について確認します。

※ 令和8年度税制改正の内容については、「基礎控除・給与所得控除の引き上げと源泉徴収事務・年収の壁への影響(令和8年度税制改正)」、「扶養控除・配偶者(特別)控除・ひとり親控除・特定親族特別控除の所得要件の見直し(令和8年度税制改正)」をご参照ください。

1.106万円の壁(社会保険)

 令和8年度税制改正は、以下の社会保険制度上の年収の壁である106万円(105.6万円)の壁には影響ありません。

 下記①~⑤の条件を満たす場合は、パートやアルバイトで働く人は社会保険の扶養から外れ、自ら国民健康保険・国民年金の被保険者となり保険料を負担することになります(関連記事「従業員51人以上の会社で働くパート・アルバイトの社会保険加入義務(令和6年10月1日~)」)。

 ①従業員が51人以上の会社で働いている(2024(令和6)年10月以降)※1
 ②週の労働時間が20時間以上30時間未満である
 ③月収8.8万円以上(年収106万円以上)である※2
 ④2か月を超える雇用の見込がある
 ⑤学生でない(休学中・夜間学生は除く)

※1 2025(令和7)年6月13日に成立した年金制度改正法により、2027(令和9)年10月から、「企業規模要件」が段階的に撤廃されます。

※2 2025(令和7)年6月13日に成立した年金制度改正法により、法律の公布から3年以内に「賃金要件」は撤廃されます。2026(令和8)年10月に賃金要件は撤廃される予定ですので、「106万円の壁」はなくなる見込みです。

2.119万円の壁(住民税)

 令和8年度税制改正で給与所得控除の最低保障額が65万円から74万円に引き上げられたことにより、住民税が非課税となる年収が119万円に変わりました(令和9年度・10年度の住民税について適用)。

 住民税は、所得金額に応じて課税される「所得割と、定額で課税される「均等割」から成りますが、住んでいる地域や家族構成によって住民税が非課税となる所得金額は異なります。

 例えば、兵庫県宝塚市で均等割が非課税となる所得は、次の算式で算出します。

 35万円×(同一生計配偶者+扶養親族数+本人)+10万円+21万円(同一生計配偶者または扶養親族を有する場合のみ)

 単身の場合は、35万円×1+10万円=45万円が非課税となる所得であり、給与収入に置き換えると119万円(45万円+給与所得控除74万円)となります。

 したがって、年収が119万円を超えると住民税がかかります(自治体によって異なりますのでご注意ください)。

3.130万円の壁(社会保険)

 令和8年度税制改正は、上記1と同様に、社会保険制度上の年収の壁である130万円の壁には影響ありません。

 130万円の壁とは、本人の年収が130万円以上になると、パートやアルバイトで働く人が自ら国民健康保険・国民年金の被保険者となり、社会保険の扶養から外れる年収ラインのことをいいます。

 なお、年収130万円以上であるかどうかを判定する際の年収の取扱いが、2026(令和8)年4月1日から変わっています。詳細は、「令和8年4月1日から「130万円の壁」の年間収入は労働契約の内容で判定されます」をご参照ください。

4.136万円の壁(所得税:配偶者控除・扶養控除)

 令和8年度税制改正で基礎控除と給与所得控除の最低保障額が引き上げられたことにより、配偶者控除と扶養控除を適用できる年収の壁も136万円に変わっています。

 改正により、配偶者控除や扶養控除の対象となる合計所得金額が58万円以下から62万円以下に変わりましたので、配偶者や扶養親族の年収が136万円以下であれば、配偶者控除や扶養控除の対象となります(合計所得金額62万円+給与所得控除74万円=給与収入136万円)。

5.150万円の壁(社会保険)

 2025(令和7)年度税制改正によって、所得税における19歳以上23歳未満の扶養親族(以下「大学生年代」といいます)の特定扶養控除の要件の見直し等が行われたことを踏まえ、社会保険制度についても、扶養認定日が2025(令和7)年10月1日以降で、扶養認定を受ける人(被扶養者)が19歳以上23歳未満の場合(被保険者の配偶者を除く)における年収の壁が「年間収入150万円未満」に変わりました

 2026(令和8)年度税制改正が行われましたが、現時点でこの150万円の壁について変更はありません。

 上記3でみたように、年収が130万円以上になると社会保険の扶養から外れますが、大学生年代については、年収が130万円以上となっても150万円未満であれば社会保険の扶養に入ることができます。

 年収が150万円以上になると、大学生年代が自ら国民健康保険・国民年金の被保険者となり保険料を負担することになります。

 150万円の壁とは、社会保険の扶養に入れるかどうかの年収の分岐点のことをいいます。

※ 社会保険の150万円の壁については、「令和7年10月1日から19歳以上23歳未満の人の健康保険の被扶養者認定基準が年収150万円未満に変わります」をご参照ください。

6.159万円の壁(所得税:特定親族特別控除)

 上記4でみたように、扶養親族の年収が136万円を超えると扶養控除の対象から外れますので、年齢19歳以上23歳未満の扶養親族について、63万円の扶養控除を適用することができません。

 しかし、大学生年代については、年収が136万円を超えても特定親族特別控除を適用することができ、年収が159万円以下であれば、特定親族特別控除について満額の63万円を適用することができます。

 さらに、大学生年代の年収が159万円を超えても197万円以下であれば、納税者本人は段階的に逓減する特定親族特別控除を受けることができます。

7.163万円の壁(所得税:勤労学生控除)

 令和8年度税制改正で基礎控除と給与所得控除の最低保障額が引き上げられたことにより、勤労学生本人が受けられる勤労学生控除の合計所得金額の要件が、従前の85万円以下から89万円以下に変わりました。

 したがって、勤労学生本人の給与収入が163万円以下であれば、勤労学生控除27万円を受けることができます(89万円+給与所得控除74万円=給与収入163万円)。

8.169万円の壁(所得税:配偶者特別控除)

 上記4でみたように、配偶者の年収が136万円を超えると配偶者控除の対象から外れますが、配偶者特別控除を適用することができます。
 この配偶者特別控除について満額の38万円を適用できる年収の壁が、従前の160万円から169万円に変わりました。

 満額の38万円を適用できる合計所得金額の上限は従前どおりの95万円ですが、給与所得控除最低保障額が74万円に引き上げられたことにより、配偶者の年収が169万円以下であれば、納税者本人は配偶者特別控除38万円の適用を受けることができます(ただし、納税者の合計所得金額が900万円以下の場合です)。

 また、配偶者の年収が169万円を超えても207万円以下であれば、納税者本人は段階的に逓減する配偶者特別控除を受けることができます。

9.178万円の壁(所得税)

 税制改正で基礎控除と給与所得控除の最低保障額が引き上げられたことにより、所得税が非課税となる年収が178万円に変わりました。

 2025(令和7年)度税制改正で、所得税がかからない年収の壁として広く知られていた103万円の壁が160万円の壁に変わりましたが、さらに2026(令和8)年度税制改正により178万円の壁に変わりました。

 給与所得者の年収が178万円以下であれば、給与所得者本人に所得税はかかりません(給与所得控除74万円+基礎控除104万円=給与収入178万円)

10.197万円の壁(所得税:特定親族特別控除)

 大学生年代の年収が159万円を超えると段階的に特定親族特別控除が減っていき、年収197万円を超えると特定親族特別控除はゼロとなります(上記6)。

 197万円の壁とは、特定親族特別控除が適用されるか否かの年収の分岐点のことをいいます。

11.207万円の壁(所得税:配偶者特別控除)

 配偶者の年収が169万円を超えると段階的に配偶者特別控除が減っていき、年収207万円を超えると配偶者特別控除はゼロとなります(上記8)。

 207万円の壁とは、配偶者特別控除が適用されるか否かの年収の分岐点のことをいいます。

扶養控除・配偶者(特別)控除・ひとり親控除・特定親族特別控除の所得要件の見直し(令和8年度税制改正)

 2026(令和8)年度税制改正において、所得税の基礎控除や給与所得控除の引き上げが行われました
 これに伴い、扶養控除、配偶者控除、配偶者特別控除、ひとり親控除、特定親族特別控除の適用を受ける場合の所得要件も見直されています。
 以下では、令和8年分以後の所得税で適用される扶養控除等の所得要件について確認します。

※ 基礎控除・給与所得控除の引き上げについては、「基礎控除・給与所得控除の引き上げと源泉徴収事務・年収の壁への影響(令和8年度税制改正)」をご参照ください。
 なお、令和8年度税制改正により、いわゆる「年収の壁」も変わっています。年収の壁については、「令和8年度税制改正で年収の壁はこのように変わった!」をご参照ください。

1.扶養控除・配偶者控除・ひとり親控除の所得要件

 令和8年度税制改正で、扶養控除・配偶者控除・ひとり親控除の対象となる扶養親族等の所得要件(合計所得金額)が、改正前の58万円以下(給与収入だけの場合は年収123万円以下)から62万円以下(給与収入だけの場合は年収136万円以下)に変わりました。
 ただし、所得要件以外の要件(同一生計である、事業専従者ではないなど)は変わっていません

扶養親族等の区分 所得控除の種類 合計所得金額※1
扶養親族 扶養控除 62万円以下(136万円以下※2
同一生計配偶者 配偶者控除
ひとり親の生計を一にする子 ひとり親控除

※1 ひとり親の生計を一にする子の所得要件は、総所得金額等の合計額で判定します。総所得金額等については、「合計所得金額』『総所得金額』『総所得金額等』の違いとは?」をご参照ください。
※2 カッコ内の金額は、令和8・9年分の収入が給与だけの場合の収入金額です。

 上記の所得要件を満たす扶養親族、同一生計配偶者、ひとり親の生計を一にする子がいる場合は、納税者本人の所得控除額は次のようになります。

扶養親族等の区分 所得控除の種類 所得控除額
一般の扶養親族(16歳以上) 扶養控除 38万円
特定扶養親族(19歳以上23歳未満) 63万円
老人扶養親族(70歳以上の同居老親等) 58万円
老人扶養親族(70歳以上の同居老親等以外) 48万円
同一生計配偶者(70歳未満) 配偶者控除 38万円
同一生計配偶者(70歳以上) 48万円
ひとり親の生計を一にする子 ひとり親控除 35万円

※ 扶養親族(一般・特定・老人)は、本人と同一生計であることが必要です。同一生計については、「所得控除における『生計を一にする』の判定基準」をご参照ください。
※ 配偶者控除は、納税者本人の合計所得金額が900万円以下の場合の控除額です。

2.配偶者特別控除の所得要件

 配偶者の合計所得金額が62万円以下の場合は配偶者控除を適用できますが、62万円を超えた場合は配偶者特別控除を適用することができます。

 この配偶者特別控除の対象となる配偶者の所得要件が、改正前は58万円超133万円以下(給与収入だけの場合は年収123万円超201万5,999円以下)でしたが、改正後は62万円超133万円以下(給与収入だけの場合は年収123万円超207万円以下)に変わりました。

 この所得要件を満たす同一生計配偶者がいる場合は、納税者本人の配偶者特別控除額は次のようになります。

配偶者の合計所得金額 本人の合計所得金額
900万円以下 900万円超950万円以下 950万円超1,000万円以下
62万円超95万円以下(136万円超169万円以下) 38万円 26万円 13万円
95万円超100万円以下(169万円超 174万円以下) 36万円 24万円 12万円
100万円超105万円以下(174万円超179万円以下) 31万円 21万円 11万円
105万円超110万円以下(179万円超184万円以下) 26万円 18万円 9万円
110万円超115万円以下(184万円超189万円以下) 21万円 14万円 7万円
115万円超120万円以下(189万円超194万円以下) 16万円 11万円 6万円
120万円超125万円以下(194万円超199万円以下) 11万円 8万円 4万円
125万円超130万円以下(199万円超204万円以下) 6万円 4万円 2万円
130万円超133万円以下(204万円超207万円以下) 3万円 2万円 1万円
133万円超(207万円超) 0円 0円 0円

※カッコ内の金額は、令和8・9年分の収入が給与だけの場合の収入金額です。

3.特定親族特別控除の所得要件

 19歳以上23歳未満の扶養親族の合計所得金額が62万円以下の場合は扶養控除を適用できますが、62万円を超えた場合は特定親族特別控除を適用することができます。
 
 令和7年度税制改正で新設された特定親族特別控除についても、令和8年度税制改正で所得要件が見直されています。

 特定親族とは、本人と生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族(配偶者、青色事業専従者として給与の支払を受ける人及び白色事業専従者を除きます)で合計所得金額が62万円超(改正前は58万円超)123万円以下(給与収入だけの場合は年収136万円超197万円以下(改正前は123万円超188万円以下)の人をいいます。

 この特定親族がいる場合は、納税者本人の特定親族特別控除額は次のようになります。

特定親族の合計所得金額 特定親族特別控除額
62万円超 85万円以下 (136万円159万円以下) 63万円
85万円超 90万円以下(159万円超 164万円以下) 61万円
90万円超 95万円以下(164万円超 169万円以下) 51万円
95万円超 100万円以下(169万円超 174万円以下) 41万円
100万円超 105万円以下(174万円超 179万円以下) 31万円
105万円超 110万円以下(179万円超 184万円以下) 21万円
110万円超 115万円以下(184万円超 189万円以下) 11万円
115万円超 120万円以下(189万円超 194万円以下) 6万円
120万円超 123万円以下(194万円超 197万円以下) 3万円
123万円超(197万円超) 0円

※カッコ内の金額は、令和8・9年分の収入が給与だけの場合の収入金額です。

基礎控除・給与所得控除の引き上げと源泉徴収事務・年収の壁への影響(令和8年度税制改正)

 2025(令和7)年度税制改正において、所得税の基礎控除と給与所得控除の引き上げが行われましたが、2026(令和8)年度税制改正において、さらにその範囲が拡大されました。

 この改正は、原則として2026(令和8)年分以後の所得税から適用されます。

 以下では、基礎控除と給与所得控除の引き上げの内容と、これらの引き上げが2026(令和8)年の源泉徴収事務や、いわゆる年収の壁に与える影響について確認します

※ 年収の壁については、「令和8年度税制改正で年収の壁はこのように変わった!」をご参照ください。

1.基礎控除の引き上げ

 令和8年度税制改正により、合計所得金額が2,350万円以下である個人の基礎控除額が58万円から4万円引き上げられ、62万円となりました。

 さらに、令和8年分および令和9年分に限り、基礎控除の特例(時限措置)として、合計所得金額に応じて基礎控除額の上乗せが行われています。

 なお、基礎控除の改正は所得税のみの改正であり、住民税の基礎控除額は従前通りの43万円です。

 改正後の所得税の基礎控除額は、下表のとおりです。

合計所得金額
※カッコ内は令和8・9年分の収入が給与だけの場合の収入金額※2
基礎控除額
改正前 令和8・9年分 令和10年分以後
132万円以下
(206万円以下)
95万円 104万円※1 99万円※1
132万円超~336万円以下
(206万円超~475万1,999円以下)
88万円 62万円
336万円超~489万円以下
(475万1,999円超~665万5,556万円以下)
68万円
489万円超~655万円以下
(665万5,556円超~850万円以下)
63万円 67万円※1
655万円超~2,350万円以下
(850万円超~2,545万円以下)
58万円 62万円
2,350万円超~2,400万円以下
(2,545万円超~2,595万円以下)
48万円※3
2,400万円超~2,450万円以下
(2,595万円超~2,645万円以下)
32万円※3
2,450万円超~2,500万円以下
(2,645万円超~2,695万円以下)
16万円※3
2,500万円超
(2,695万円超)
0円※3

※1 基礎控除の特例として、62万円にそれぞれ42万円、5万円、37万円を加算した金額となります(この加算は居住者についてのみ適用があります)。
※2 特定支出控除や所得金額調整控除の適用がある場合は、表の金額とは異なります。
※3 合計所得金額2,350万円超の場合の基礎控除額に改正はありません(合計所得金額については、「『合計所得金額』『総所得金額』『総所得金額等』の違いとは?」をご参照ください)。

2.給与所得控除の引き上げ

 令和8年度税制改正により、給与所得控除額の最低保障額が65万円から69万円に引き上げられ、かつ、令和8年分および令和9年分に限り5万円が上乗せされます。

 給与所得控除の改正は、所得税だけではなく住民税にも適用されます(令和8年分以後の所得税及び令和9年度以後の住民税)。

 改正後の給与所得控除額は、下表のとおりです。

給与の収入金額(A) 改正前 令和8・9年分 令和10年分以後
190万円以下 65万円 74万円 A×30%+8万円(69万円未満となる場合は69万円)
190万円超~220万円以下 A×30%+8万円
220万円超~360万円以下 A×30%+8万円 同左 同左
360万円超~660万円以下 A×20%+44万円
660万円超~850万円以下 A×10%+110万円
850万円超 195万円(上限)

 令和8年分および令和9年分の給与等の収入金額が69万1,000円以上220万円未満である場合には、その給与等に係る給与所得の金額については、上表にかかわらず、次の金額とすることとされました。

給与等の収入金額 69万1,000円以上74万1,000円未満 74万1,000円以上219万1,000円未満 219万1,000円以上219万3,000円未満 219万3,000円以上219万6,000円未満 219万6,000円以上220万円未満
給与所得の金額 なし その収入金額-74万円 145万1,000円 145万3,000円 145万6,000円

 なお、令和8年度税制改正により、基礎控除額と給与所得控除額は、物価上昇に連動して2年ごとに見直されることが想定されています。

3.源泉徴収事務と年収の壁への影響

 上記1及び2の税制改正は、原則として、2026(令和8)年分以後の所得税及び2027(令和9)年度以後の住民税について適用されます。

 そのため、2026(令和8)年12月に行う年末調整など、2026(令和8)年12月以後の源泉徴収事務に変更が生じますが、11月までの給与の源泉徴収事務に変更は生じません。

 したがって、2026(令和8)年分の給与の源泉徴収事務においては、2026(令和8)年12月に行う年末調整の際に、改正後の基礎控除額と「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」に基づいて1年間の税額を計算し、改正前の「源泉徴収税額表」によって計算した源泉徴収税額との精算を行います。

 なお、基礎控除と給与所得控除の改正により、所得税が課税されない給与収入(いわゆる年収の壁)が、令和7年分の160万円(基礎控除95万円+給与所得控除65万円)から、令和8年分は178万円(基礎控除104万円+給与所得控除74万円)に変わります。

 また、給与所得控除の改正により、住民税が課税されない給与収入については、令和8年度の110万円(45万円+給与所得控除65万円)から、令和9年度は119万円(45万円+給与所得控除74万円)に変わります(各自治体によって異なります)。

 これらの年収の壁の詳細については、「令和8年度税制改正で年収の壁はこのように変わった!」をご参照ください。

令和8年4月から適用される税制・社会保険制度の主な改正のまとめ

 2026(令和8)年4月より、税制および社会保険制度において複数の重要な改正が実施されています。
 これらの改正は、日常の経理・労務実務に直接影響する内容を含んでいますので、以下において主なポイントを整理します。

1.税制改正

(1) 防衛特別法人税の新設

 2025(令和7)年度税制改正により、防衛力強化の財源確保を目的とした防衛特別法人税が新設されました。

 この防衛特別法人税は、2026(令和8)年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。
 各事業年度の所得に対する法人税を課される法人が納税義務者となり、防衛特別法人税確定申告書の提出が必要です(防衛特別法人税額が0であっても申告は必要となります)。

 詳細については、「全法人が対象の『防衛特別法人税』の概要と実務に及ぼす影響(令和8年4月1日以後開始事業年度)」をご参照ください。

(2) 賃上げ促進税制の見直し

 2026(令和8)年度税制改正で、以下のように賃上げ促進税制の見直しが行われています。

(1) 大企業向けは、2026(令和8)年3月31日までに開始する各事業年度について適用され、その後廃止されます。
(2) 中堅企業向けは、2026(令和8)年4月1日から2027(令和9)年3月31日までの間に開始する各事業年度について適用され、その後廃止されます。
(3) 中小企業向けは、2026(令和8)年4月1日から2027(令和9)年3月31日までの間に開始する各事業年度について適用されますが、教育訓練費に係る上乗せ措置が廃止され、最大控除率が45%から35%に低下します。

 詳細については、「中小企業者等の賃上げ促進税制《令和6年4月1日~令和9年3月31日開始事業年度》」をご参照ください。

(3) 少額減価償却資産の特例の拡充

 2026(令和8)年度税制改正によって、中小企業向けの少額減価償却資産の特例が拡充され、適用対象となる減価償却資産の取得価額が40万円未満(改正前:30万円未満)へ引き上げられ、かつ、適用対象となる事業者(法人と個人事業主)の常時使用する従業員の数が400人以下(改正前:500人以下)に引き下げられたうえで、その適用期限が3年延長されました。

 この改正は、2026(令和8)年4月1日以後に取得する減価償却資産から適用されます。

 詳細については、「40万円未満の少額減価償却資産に係る損金算入の特例(令和8年度税制改正)」をご参照ください。

(4) 現物支給の食事の非課税限度額の引き上げ

 2026(令和8)年度税制改正により、会社が役員や従業員へ現物支給する食事に関する所得税の非課税限度額が「月額7,500円」(改正前:3,500円)に引き上げられました。

 この改正は、2026(令和8)年4月1日以後に支給する食事から適用されます。

 詳細については、「現物支給の食事に係る所得税の非課税限度額が7,500円に(令和8年度税制改正)」をご参照ください。

(5) マイカー通勤手当の非課税限度額の引き上げ

 2026(令和8)年度税制改正により、マイカー等で通勤する場合の非課税限度額について、通勤距離が片道65キロメートル以上について新たな距離区分が設けられ、また、通勤距離の区分に応じた非課税限度額に1か月当たりの駐車場等の料金(上限5,000円)が加算されることになりました。

 この改正は、2026(令和8)年4月1日以後に支払われるべき通勤手当について適用されます。

 詳細については、「令和8年4月1日よりマイカー通勤手当の非課税限度額が引き上げられました」をご参照ください。

2.社会保険制度の改正

(1) 健康保険料率・介護保険料率の改定

 2026(令和8)年度の全国健康保険協会(協会けんぽ)の健康保険料率および介護保険料率が3月分(4月納付分)から改定されました。

 全国健康保険協会(協会けんぽ)の健康保険料率は都道府県ごとに異なり、例えば令和8年度の大阪府の料率は10.13%(令和7年度は10.24%)となっています。
 この料率に、40歳から64歳までの方(介護保険第2号被保険者)は、全国一律の介護保険料率1.62%(令和7年度は1.59%)が加わります。

 詳細については。「令和8年3月分(4月納付分)から健康保険料率と介護保険料率が改定されます(協会けんぽ)」をご参照ください。

(2) 雇用保険料率の改定(労災保険料率・子ども子育て拠出金率は据え置き)

 厚生労働省告示に伴い、2026(令和8)年度の雇用保険料率が改定されました。
 例えば、令和8年度の一般事業の雇用保険料率については、被保険者負担率5.0/1000、事業主負担率8.5/1000となっています。

 一方、労災保険料率と子ども・子育て拠出金率は据え置きとなり、令和7年度の料率から改定されていません。

 詳細については、「令和8年度の雇用保険料率が改定されます(労災保険料率・子ども子育て拠出金率は据え置き)」をご参照ください。

(3) 子ども・子育て支援金制度の新設

 2026(令和8)年4月分(5月納付分)から「子ども・子育て支援金制度」が始まりました。

 子ども・子育て支援金は全世帯・企業が拠出し、支援金額や保険料率などは医療保険者(協会けんぽ・健康保険組合等、国民健康保険、後期高齢者医療制度)によって異なります。

 なお、「子ども・子育て支援金制度」は上記2.(2)の「子ども・子育て拠出金」とは異なる制度です。
 子ども・子育て支援金は事業主と従業員(被保険者)の両者が負担するのに対し、子ども・子育て拠出金は事業主のみが負担し従業員の負担はありません。

 詳細については、「令和8年4月分(5月納付分)から『子ども・子育て支援金制度』が始まります」をご参照ください。

(4) 被扶養者認定基準の変更

 2026(令和8)年4月1日から、社会保険の扶養に入る人(被扶養者)の被扶養者認定基準が、労働条件通知書などで定められた賃金から見込まれる年間収入が130万円未満であるかどうかを判定する方式に変更されました。

 つまり、労働契約段階で見込まれる収入を用いて、被扶養者の判定が行われることになります。
 したがって、労働契約に明確な規定がなく、労働契約段階では見込み難い時間外労働に対する賃金等は、被扶養者の判定における年間収入には含まれないこととなります。
 
 これにより、一時的な残業や繁忙期の収入増で扶養から外れるケースが減少し、従業員の働き方の柔軟性が高まることが期待されます。

 詳細については、「令和8年4月1日から『130万円の壁』の年間収入は労働契約の内容で判定されます」をご参照ください。

(5) 在職老齢年金の支給停止額の引き上げ

 在職老齢年金制度が、2025(令和7)年6月13日に成立した年金制度改正法で見直され、2026(令和8)年4月から、年金が減額になる基準額(賃金と老齢厚生年金の合計)が月51万円から65万円に引き上げられました。

 平均寿命・健康寿命が延びる中で、働き続けることを希望する高齢者の活躍を後押しし、より働きやすい仕組みとすることが今回の改正の趣旨です。

 詳細については、「在職老齢年金制度における年金カットの計算方法(基準額が令和8年4月から62万円に引き上げられます)」をご参照ください。

40万円未満の少額減価償却資産に係る損金算入の特例(令和8年度税制改正)

 2026(令和8)年度税制改正によって、即時償却が可能な少額減価償却資産の損金算入制度について一部改正がありました。

1.改正内容

 少額減価償却資産に係る損金算入の特例が2026(令和8)年3月31日に期限切れになることから、2026(令和8)年度税制改正において以下の項目について改正が行われました。

項目 改正前 改正後
取得価額 30万円未満 40万円未満
常時使用する従業員の数 500人以下 400人以下
適用期限 令和8年3月31日 令和11年3月31日

 適用対象となる減価償却資産の取得価額が40万円未満(改正前:30万円未満)に引き上げられ、かつ、適用対象となる事業者(法人と個人事業主)の常時使用する従業員の数が400人以下(改正前:500人以下)に引き下げられたうえで、その適用期限が3年延長されました。

 上記改正内容は、2026(令和8)年4月1日以後に取得する減価償却資産から適用されます。

 なお、即時償却が可能な少額減価償却資産の年間合計金額の上限に変更はなく、300万円のままです。

 この制度自体は時限措置ではありますが、制度が創設された2006(平成18)年から現在に至るまで、一部内容の見直しを行いながら引き続き設けられています。
 次の2において、改正内容を踏まえた制度の概要を確認します。

2.改正を踏まえた制度の概要

 青色申告書を提出する中小企業者等※1が、2026(令和8)年4月1日から2029(令和11)年3月31日※2までの間に取得等した減価償却資産で、その取得価額が40万円未満であるもの※3については、その事業の用に供した日の属する事業年度において、全額損金算入することができます。

 ただし、適用を受ける事業年度における少額減価償却資産の取得価額の合計額が300万円(事業年度が1年に満たない場合には300万円を12で除し、これにその事業年度の月数を掛けた金額。月数は暦に従って計算し、1か月に満たない端数を生じたときは1か月とします)を超えるときは、その取得価額の合計額のうち300万円に達するまでの少額減価償却資産の取得価額の合計額が限度となります。

※1 資本金1億円以下で大規模法人の子会社等でない法人が適用対象です。なお、常時使用する従業員(パート、アルバイトを含む)の数については、2026(令和8)年度改正で400人(改正前:500人)以下に引き下げられました(措令39の28①)。
 したがって、常時使用する従業員の数が400人を超える事業者は、適用対象から除外されます。
 なお、中小企業者の定義については、本ブログ記事「租税特別措置法上の『中小企業者』の定義とその判定時期」をご参照ください。

※2 2026(令和8)年度改正で適用期限が3年間延長され、2029(令和11)年3月31日までの間に取得等した減価償却資産について適用されることとなりました。
 なお、2026(令和8)年3月31日までに取得した資産は改正前の旧基準が適用され、2026(令和8)年4月1日以後に取得した資産は改正後の新基準が適用されますので、同一事業年度内で新旧基準が混在する場合はご注意ください。 

※3 取得価額が40万円未満である減価償却資産について適用がありますので、資産の種類に制限はなく、有形減価償却資産だけではなくソフトウェアや商標権などの無形減価償却資産も対象となり、また、中古資産も対象となります。
 ただし、租税特別措置法上の特別償却、税額控除、圧縮記帳との重複適用はできず、また、取得価額が10万円未満の場合や取得価額が10万円以上20万円未満のものについて一括償却資産の損金算入制度の適用を受ける場合も、この特例の適用はありません。
 

現物支給の食事に係る所得税の非課税限度額が7,500円に(令和8年度税制改正)

 2026(令和8)年度税制改正により、会社が役員や従業員へ現物支給する食事に関する所得税の非課税限度額が引き上げられました。
 これは、昨今の物価上昇や会社の福利厚生ニーズを踏まえ、従業員の負担軽減と会社の食事補助制度の運用を後押しする目的で行われたものです。

 今回の改正により、食事の現物支給に係る所得税の非課税限度額が「月額7,500円」(改正前:3,500円)へ引き上げられました(金額はいずれも消費税を除いた税抜金額です)。
 この新しい非課税限度額は、2026(令和8)年4月1日以後に支給する食事から適用されます。

 非課税扱いとなるためには、従来と同様に次の2つの要件を満たす必要があります。

(1) 役員や従業員が食事の価額の半分以上を負担していること
(2) 会社の負担額(食事の価額-役員や従業員が負担している金額)が1ヶ月当たり7,500円(税抜き)以下であること

 例えば、1食あたりの価額が600円で、そのうち従業員が300円を負担している場合、会社負担は300円となり、月25食で7,500円となります。
 この範囲内であれば、食事の支給による経済的利益が従業員等に生じていないものとされ、所得税は非課税となります。

 なお、上記(1)(2)の要件における食事の価額とは、次の金額をいいます。

① 仕出し弁当などを取り寄せて支給する場合は、業者に支払う金額
② 社員食堂などで会社が作った食事を支給する場合は、食事の材料費や調味料等に要した、いわゆる直接費の額

 また、深夜勤務者に対する夜食の現物支給に代えて、金銭を支給する場合の非課税限度額についても、「1食650円(改正前:300円)へ引き上げられています(金額はいずれも消費税を除いた税抜金額です)。
 深夜帯の勤務負担に配慮した制度であり、こちらも2026(令和8)年4月以降の支給分から適用されます。

 なお、通常の勤務時間外に残業又は宿日直をした人に支給する食事は、無料で支給しても所得税は非課税となります。
 しかし、深夜勤務を本来の職務とする人がその勤務に伴い食事の支給を受ける場合には、その支給額に所得税が課税されます

※ 関連記事:「自己負担半額以上・会社負担7,500円以下でも食事補助が給与課税される場合

令和8年4月1日よりマイカー通勤手当の非課税限度額が引き上げられました

 電車やバスなどの交通機関を利用している役員や従業員に対して支給する通勤手当は、月額15万円以下であれば所得税および復興特別所得税(以下「所得税等」といいます)が非課税となっています

 一方、電車やバスなどの交通機関を利用せずに、マイカー等の交通用具で通勤する場合の通勤手当にも、所得税等の非課税限度額が設けられています。

 このマイカー等で通勤する場合の非課税限度額について、2026(令和8)年度税制改正により、次の改正が行われました。

・通勤距離が片道65キロメートル以上について新たな距離区分が設けられ、非課税限度額が引き上げられました。
・一定の要件を満たす駐車場等を利用し、その料金を負担することを常例とする場合の1か月当たりの非課税限度額については、その通勤距離の区分に応じた非課税限度額に1か月当たりのその駐車場等の料金相当額(上限5,000円)を加算した金額とすることとされました。

 この改正は、2026(令和8)年4月1日以後に支払われるべき通勤手当(同日前に支払われるべき通勤手当の差額として追加支給するものを除きます)について適用されます。

 以下では、改正後の非課税限度額について確認します。

通勤手当を区分せず給与に含めて支給する場合については、「交通費込み給与の交通費部分は確定申告でも非課税にできない」をご参照ください。

1.マイカーや自転車などで通勤している場合

 マイカーや自転車などの交通用具を使用して通勤している場合の1か月当たりの非課税限度額は、片道の通勤距離(通勤経路に沿った長さ)に応じて定められています。
 改正後の1か月当たりの非課税限度額は、次のとおりです。

片道の通勤距離 1か月当たりの非課税限度額
改正後 改正前
2キロメートル未満 全額課税 同左
2キロメートル以上10キロメートル未満 4,200円 同左
10キロメートル以上15キロメートル未満 7,300円 同左
15キロメートル以上25キロメートル未満 13,500円 同左
25キロメートル以上35キロメートル未満 19,700円 同左
35キロメートル以上45キロメートル未満 25,900円 同左
45キロメートル以上55キロメートル未満 32,300円 同左
55キロメートル以上65キロメートル未満 38,700円 38,700円
65キロメートル以上75キロメートル未満 45,700円
75キロメートル以上85キロメートル未満 52,700円
85キロメートル以上95キロメートル未満 59,600円
95キロメートル以上 66,400円

 上表の1か月当たりの非課税限度額を超えて通勤手当を支給する場合は、超える部分の金額が給与として課税されます。

 改正後の非課税限度額は、2026(令和8)年4月1日以後に支払われるべき通勤手当について適用されますが、次に掲げる通勤手当については、改正後の非課税限度額は適用されません。

(1) 令和8年3月31日以前に支払われた通勤手当
(2) 令和8年3月31日以前に支払われるべき通勤手当で同年4月1日以後に支払われるもの
(3) (1)又は(2)の通勤手当の差額として追加支給されるもの

2.電車やバスなどの交通機関で通勤している場合

 電車やバスなどの交通機関を利用して通勤している場合の非課税限度額は、月額15万円以下とされています。
 これは、通勤のための運賃・時間・距離等の事情に照らして、最も経済的かつ合理的な経路および方法で通勤した場合の通勤定期券などの金額です。

 新幹線や特急列車を利用した場合の運賃等の額も、その通勤方法や経路が「最も経済的かつ合理的な経路および方法」に該当する場合は非課税の通勤手当に含まれますが、グリーン料金は最も経済的かつ合理的な通勤経路および方法のための料金とは認められないため、非課税の通勤手当に含まれません。

 したがって、通勤手当が月額15万円以下だったとしても、そこにグリーン料金が含まれている場合は、グリーン料金部分については給与として課税されます。

3.交通機関とマイカー等を併用して通勤している場合

 電車やバスなどの交通機関とマイカーや自転車などの交通用具を併用して通勤している場合は、両者の合計額が月額15万円までなら所得税等が非課税となります(交通用具を使用する通勤距離が片道2キロメートル未満である場合を除きます)。

 具体的には、次の(1)と(2)を合計した金額が月額15万円以内であれば、非課税の通勤手当となります。

(1) 電車やバスなどの交通機関を利用する場合の1か月間の通勤定期券などの金額(上記2参照)
(2) マイカーや自転車などの交通用具を使用して通勤する片道の距離で定められている1か月当たりの非課税限度額(上記1参照)

 例えば、自宅から自宅の最寄駅まではマイカーを使用し(片道距離12キロメートル)、自宅の最寄駅から勤務先の最寄駅までは電車を利用する(1か月定期券15,000円)場合は、7,300円+15,000円=22,300円が非課税の通勤手当となります。

4.マイカーや自転車などで通勤して駐車場も利用する場合

 マイカーや自転車などの交通用具を使用して通勤し、一定の要件を満たす駐車場等を利用している場合は、次の(1)と(2)を合計した金額が非課税限度額となります(通勤距離が片道2キロメートル未満である場合を除きます)。

(1) マイカーや自転車などの交通用具を使用して通勤する片道の距離で定められている1か月当たりの非課税限度額(上記1参照)
(2) 1か月当たりの駐車場等の料金相当額(上限5,000円

「一定の要件を満たす駐車場等」とは、通勤のために使用する交通用具の駐車のための駐車場等のうち、その通勤手当の支払を受ける人の勤務する場所の周辺にあるものをいいます。

5.交通機関とマイカー等を併用して通勤して駐車場も利用する場合

 電車やバスなどの交通機関とマイカーや自転車などの交通用具を併用して通勤し、一定の要件を満たす駐車場等も利用している場合は、次の(1)~(3)の合計額が月額15万円までなら所得税等が非課税となります(交通用具を使用する通勤距離が片道2キロメートル未満である場合を除きます)。

(1) 電車やバスなどの交通機関を利用する場合の1か月間の通勤定期券などの金額(上記2参照)
(2) マイカーや自転車などの交通用具を使用して通勤する片道の距離で定められている1か月当たりの非課税限度額(上記1参照)
(3) 1か月当たりの駐車場等の料金相当額(上限5,000円

「一定の要件を満たす駐車場等」とは、通勤のために使用する交通用具の駐車のための駐車場等のうち、その通勤手当の支払を受ける人の勤務する場所の周辺又はその人が通勤のために利用する交通機関の駅若しくは停留所その他の施設の周辺にあるものをいいます。

上場株式等に係る譲渡損失の「損益通算」と「繰越控除」の注意点

 上場株式等を、金融商品取引業者(証券会社や投資信託委託会社など)を通じて譲渡したことにより生じた譲渡損失の金額は、確定申告をすることによって、その年分の上場株式等の配当所得等の金額と損益通算することができます。

 また、損益通算してもなお控除しきれない譲渡損失の金額については、翌年以後3年間にわたり、確定申告をすることによって、上場株式等の譲渡所得等の金額および上場株式等の配当所得等の金額から繰越控除することができます。

 今回は、上場株式等に係る譲渡損失の損益通算と繰越控除について、適用を受ける際の注意点と手続きを確認します。

1.損益通算の注意点

 上場株式等に係る譲渡損失の金額は損益通算の対象となりますが、以下の点に注意しなければなりません。

(1) 上場株式等の譲渡損失(赤字)の金額は他の上場株式等に係る譲渡益(黒字)の金額から控除できますが、その控除をしてもなお控除しきれない譲渡損失の金額は、下記(3)の場合を除き、他の所得(不動産所得、事業所得、給与所得など)の金額から控除することはできません。

(2) 上場株式等の譲渡損失(赤字)の金額は、一般株式等に係る譲渡益(黒字)の金額から控除することはできません※1

※1 一般株式等に係る譲渡損失(赤字)の金額は、「特定中小会社の発行株式に係る譲渡損失の損益通算および繰越控除」の場合を除き、上場株式等に係る譲渡益(黒字)の金額から控除することはできません。

(3) 上場株式等を、金融商品取引業者等を通じて譲渡※2したことにより生じた譲渡損失(赤字)の金額は、確定申告をすることによって、その年分の上場株式等の配当等に係る利子所得および配当所得の金額(以下「上場株式等の配当所得等の金額」といいます)から控除することができます※3

※2 上場株式等の譲渡であっても、いわゆる相対取引などにより生じた譲渡損失については、損益通算できません。

※3 上場株式等の配当等に係る配当所得については、申告分離課税を選択したものに限ります。
 なお、上場株式等の配当等に係る利子所得については、総合課税を選択することができず、申告分離課税のみとなります。詳細については、「配当所得に係る総合課税・申告分離課税・申告不要制度の選択上の注意点」をご参照ください。

(4) 非課税口座(NISA)および未成年者口座(ジュニアNISA)内で生じた上場株式等に係る譲渡損失(赤字)の金額については、他の上場株式等の譲渡益(黒字)の金額および上場株式等の配当所得等の金額と損益通算できません※4

※4 NISA口座およびジュニアNISA口座では、配当金や譲渡益等は非課税となる一方で、これらの譲渡損失はないものとされます。

(5) 損益通算の適用を受けるためには、次の手続きが必要となります。

① 損益通算の規定の適用を受けようとする年分の確定申告書に、この規定の適用を受けようとする旨を記載すること

②「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」および「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」を提出すること

2.繰越控除の注意点

 上場株式等に係る譲渡損失の金額について、損益通算してもなお控除しきれない場合は、翌年以後3年間にわたり、確定申告をすることによって、上場株式等の譲渡所得等の金額および上場株式等の配当所得等の金額から繰越控除することができます。

 ただし、以下の点に注意する必要があります。

(1) 繰り越された上場株式等に係る譲渡損失の金額は、一般株式等に係る譲渡所得等の金額から控除することはできません。

(2) 上場株式等の譲渡であっても、いわゆる相対取引などにより生じた譲渡損失については、繰越控除できません。

(3) 非課税口座(NISA)及び未成年者口座(ジュニアNISA)内で生じた上場株式等に係る譲渡損失については、繰越控除できません。

(4) 繰越控除の適用を受けるためには、次の手続きが必要となります。

① 上場株式等に係る譲渡損失の金額が生じた年分の確定申告において、「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」および「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」を提出すること

その後の年において連続して※5「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」を提出すること

※5 上場株式等の譲渡がなかった年も、譲渡損失を翌年へ繰り越すための申告が必要です。

③ この繰越控除を受けようとする年分の確定申告において、「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」および一般株式等に係る譲渡所得等の金額または上場株式等に係る譲渡所得等の金額がある場合には「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」を提出すること

上場株式等の譲渡所得や配当所得における「源泉徴収ありの特定口座」のメリットと留意点

 上場株式等を、金融商品取引業者(証券会社や投資信託委託会社など)を通じて譲渡したことにより生じた譲渡損失の金額は、確定申告をすることによって、その年分の上場株式等の配当所得等の金額と損益通算することができます。

 また、損益通算してもなお控除しきれない譲渡損失の金額については、翌年以後3年間にわたり、確定申告をすることによって、上場株式等の譲渡所得等の金額および上場株式等の配当所得等の金額から繰越控除することができます。

 今回は、上場株式等の譲渡所得や配当所得において、多くの方が利用していると思われる「源泉徴収ありの特定口座」(以下「源泉徴収口座」といいます)について確認します。

※ 関連記事:「配当所得に係る総合課税・申告分離課税・申告不要制度の選択上の注意点

1.簡易申告口座と源泉徴収口座

 金融商品取引業者を通じて行う上場株式等の売買については特定口座制度があり、特定口座には、「簡易申告口座」と「源泉徴収口座」の2種類があります。

 簡易申告口座では、金融商品取引業者が、特定口座内で生じた年間の譲渡損益を計算し、その内容を記載した特定口座年間取引報告書を交付します。
 
 源泉徴収口座では、金融商品取引業者が、特定口座内で生じた年間の譲渡損益、利子所得・配当所得( 譲渡損失と通算) を計算し、その内容を記載した特定口座年間取引報告書を交付します。

 簡易申告口座とは異なり、源泉徴収口座では特定口座内で生じた所得に対して源泉徴収(所得税15.315%、住民税5%)が行われますので、その特定口座内の上場株式等の譲渡による所得を申告不要とすることができます。

特定口座の種類 源泉徴収 申告方法
簡易申告口座 なし 申告分離課税
源泉徴収口座 あり
(国税15.315%、地方税5%)
申告分離課税または申告不要

2.源泉徴収口座のメリットと留意点

 源泉徴収口座には、申告不要を選択することができるなど、以下のようなメリットがあります。

(1) 証券会社などの金融商品取引業者が、源泉徴収口座内の上場株式等の譲渡所得や配当所得の年間の損益を計算して「特定口座年間取引報告書」を作成してくれます。

(2) 証券会社などの金融商品取引業者が、源泉徴収口座内の上場株式等の譲渡所得や配当所得の税金の計算をして源泉徴収(納付)してくれますので、確定申告を不要とすることができます。

(3) 申告不要を選択した場合、その源泉徴収口座内で生じた上場株式等の譲渡所得や配当所得の金額については、合計所得金額に算入されません。
 したがって、所得控除の適用要件や国民健康保険の保険料、医療費の窓口負担割合などに影響しません(関連記事:「後期高齢者の医療費の自己負担割合(1割・2割・3割)の判定基準となる所得額はいくら?」)。

 一方、源泉徴収口座には、以下のような留意点もあります。

(1) 源泉徴収口座以外の口座や他の証券会社等の損益と損益通算するには、確定申告をする必要があります。

(2) 源泉徴収口座の譲渡損失を繰越控除するためには、確定申告をする必要があります。この場合、その源泉徴収口座内の株式等の配当金をすべて申告(申告分離課税)しなければなりません。

(3) 上場株式の配当金の受取方法を「株式数比例配分方式」に設定していないと、特定口座内で上場株式等の配当金を受け取ることができません(公募株式投資信託の分配金などは、株式数比例配分方式」以外の方法でも特定口座で受け取ることができます)。

(4) 上場株式等の配当等については、1回に支払を受けるべき額ごとに申告する・しない(申告不要)の選択をすることができますが、源泉徴収口座内の上場株式等の配当等については、口座ごとにその選択をする必要があります(譲渡損失を申告する場合はすべて申告(上記(2)参照))。

(5) 特定口座の「源泉徴収あり・なし」の変更は、毎年最初に上場株式等の譲渡をするときまでにできますが、前年に「源泉徴収あり」を選択していた場合で、本年最初に上場株式等の譲渡をするときより前にその特定口座に上場株式等の配当等を受け入れていたときは、変更することができません。