ミニマムタックスの対象が令和9年から拡大されます(令和8年度税制改正)

 ミニマムタックスは、2023(令和5)年度税制改正で創設され、2025(令和7)年分の所得から適用されています。
 
 2026(令和8)年度税制改正では、ミニマムタックスが早くも課税強化され、2027(令和9)年分の所得から適用されます。

 ミニマムタックスは超富裕層を対象とした新しいルールとして導入されましたので、これまでは自分には関係ないと思っていた人も多いかもしれません。

 しかし、2026(令和8)年度税制改正によりミニマムタックスの対象範囲が広がりましたので、これまで想定していなかった層にも影響が及ぶ可能性があります。

 以下では、ミニマムタックスについて確認します。

1.ミニマムタックスの概要

 ミニマムタックスは、極めて高額な所得を持つ個人、いわゆる超富裕層を対象とした所得税の追加課税措置です。

 正式名称は「特定の基準所得金額の課税の特例(極めて高い水準の所得に対する負担の適正化に係る措置)」といい、通常の所得税額よりも一定の税率で計算した金額が高い場合、その差額を追加で納付する仕組みになっています(租税特別措置法第41条の19)。

 端的に言えば、超高額の所得がある人に最低限の税負担を求める制度です。

2.導入の背景

 日本の所得税は累進課税制度を採用しており、給与所得や事業所得の最高税率は45%(住民税を合わせると55%)です。

 一方、株式の配当や譲渡益などの金融所得には、一律20.315%の税率が適用されます。

 このため、所得が増えるにつれて金融所得の割合が高まる富裕層ほど実効税率が下がる傾向がありました。

 財務省のデータでは、所得が1億円を超えたあたりから実効税率が低下し始めるため、いわゆる「1億円の壁」問題が生じていました。

 ミニマムタックスはこの不公平を是正する目的で導入されました 。

3.現行制度の計算方法

 現行制度では、年間の基準所得金額から3.3億円を控除した金額に22.5%の税率を掛けた金額が通常の所得税額を上回る場合、その差額を追加で納税します。
 計算式は以下の通りです。

(基準所得金額 − 3.3億円)× 22.5% − 通常の所得税額 = 追加納税額

 基準所得金額とは、申告不要制度を適用せずに計算した合計所得金額をいいます。

 一般に合計所得金額とは、給与所得・事業所得・不動産所得・譲渡所得などを合算した金額をいい、申告不要制度を適用した上場株式等の配当所得や譲渡所得は合計所得金額に含まれません。

 しかし、ミニマムタックスにおける基準所得金額には、申告不要制度を適用した上場株式等の配当所得や譲渡所得が含まれますので注意が必要です(NISA(少額投資非課税制度)やエンジェル税制(一定のスタートアップ再投資)による非課税所得は含まれません)。

4.令和9年分から適用となる改正

 2026(令和8)年度税制改正により、2027(令和9)年分の所得から適用される改正項目には以下の2つがあります。

(1) 特別控除額が3.3億円から1.65億円へ

 2027(令和9)年分の所得からは、特別控除額が3.3億円から1.65億円に引き下げられ、より低い所得水準からミニマムタックスの課税対象となります。

 特別控除額が従前の半分になりますので、会社株式売却や不動産売却で一時的に高額所得を得た人も対象となる可能性があります。

(2) 税率が22.5%から30%へ

 ミニマムタックスにおける税率が、従前の22.5%から30%に引き上げられます。

5.まとめ

 2027(令和9)年分の所得から、特別控除額の引き下げと税率の引き上げが同時に行われますので、超富裕層にとっては追加納税額の負担が重くなります。

 また、特別控除額が半分に引き下げられましたので、ミニマムタックスの対象がこれまでの超富裕層だけではなく、普通の富裕層や一時的に高額所得を得た一般の人にも広がる可能性があります。

個人の青色申告の承認が取り消される場合とは?

 個人の青色申告は、複式簿記による帳簿の作成や保存等を行う必要があるため、基本的に白色申告よりも事務負担が増えます。

 一方、事務負担が増加する見返りとして、青色申告には様々な特典が設けられています。
 例えば、青色申告特別控除、青色事業専従者給与、40万円未満の少額減価償却資産の特例、一括評価による貸倒引当金、純損失の繰越控除などです※。

 青色申告は、所得金額の計算などについて有利な取扱いが受けられるため、一定水準の記帳をし、その記帳に基づいて正しい申告をしなければなりませんが、税務調査等で青色申告の承認が取り消される場合があります。

 今回は、個人の青色申告の承認が取り消される場合について確認します。

※ 青色申告の特典については、「青色申告と白色申告の特典比較」をご参照ください。

1.青色申告承認の取消事由

 個人の青色申告の承認取り消しについては、所得税法第150条第1項(青色申告の承認の取消し)に規定されています。

 また、税務署の取扱基準を示した「事務運営指針」では、所得税法第 150条第1項各号に掲げる事実及びその程度、記帳状況、改善可能性等を総合勘案の上、真に青色申告書を提出するにふさわしくない場合について、承認取り消しを行うこととされています。

 以下において、所得税法と事務運営指針を基に、個人の青色申告承認の取消事由についてみていきます。

(1) 帳簿書類を税務調査で提示しない場合(所得税法第 150条第1項第1号)

 帳簿書類の備付け、記録又は保存とは、単に物理的に帳簿書類が存在することのみを意味するにとどまらず、これを税務職員に提示することを含みます。

 したがって、税務調査の際に帳簿書類の提示を再三にわたり求められたにもかかわらず、正当な理由なくその提示を拒否した場合には、青色申告の承認の取消事由に該当することとなり、その提示がされなかった年分のうち最も古い年分以後の年分について、その承認が取り消されます。

(2) 税務署長の指示に従わない場合(所得税法第 150条第1項第2号)

 帳簿書類の備付け、記録又は保存について、税務署長の指示に従わない場合は、青色申告の承認の取消事由に該当することとなり、当該指示に係る年分以後の年分について、その承認が取り消されます。

(3) 隠ぺい又は仮装を行った場合等(所得税法第 150条第1項第3号)

 次のいずれかに該当する場合には、その該当することとなった年分以後の年分について、その承認が取り消されます。

① 決定又は更正がされた場合において、当該決定又は更正後の所得金額のうち隠ぺい又は仮装の事実に基づく所得金額が、当該決定又は更正に係る所得金額の50%に相当する金額を超えるとき(当該隠ぺい又は仮装の事実に係る所得金額が 500万円に満たないときを除く)

② 純損失の金額を減額する更正(所得金額があることとなる更正を含む)がされた場合において、当該更正により減少した部分の純損失の金額(所得金額があることとなる更正の場合にあっては、当該所得金額を加算した金額)のうち隠ぺい又は仮装の事実に基づく金額が、当初の申告に係る純損失の金額(所得金額があることとなる更正の場合にあっては、当該所得金額を加算した金額の50%に相当する金額を超えるとき(当該隠ぺい又は仮装の事実に係る純損失の金額が 500万円に満たないときを除く)

③ 帳簿書類への記載等が不十分である等のため、所得税法第 156条の規定による推計によらなければ適正な所得金額の計算ができないと認められる状況にある場合

2.取り消しに関するよくある誤解(期限後申告の場合)

 個人の青色申告の承認が取り消されるのは上記1の事由に該当した場合ですが、よくある誤解が、「2事業年度連続で期限内(2月16日~3月15日)に申告しなかった場合は、青色申告の承認が取り消される」というものです。

 2事業年度連続で期限後申告をした場合に青色申告の承認が取り消されるのは法人だけであって、個人については2年連続で期限後申告となっても、そのことが原因で青色申告の承認が取り消されることはありません

※ 詳細については、「無申告でも所得税の青色申告は取り消されない」をご参照ください。

賃上げ促進税制の繰越税額控除制度の注意点

 中小企業向け賃上げ促進税制は、青色申告書を提出している中小企業者等が、前年度より 給与等の支給額を増加させた場合に、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です。

 賃上げ促進税制における税額控除額は、調整前法人税額の20%を限度とするとされていますので、中小企業者等が要件を満たす賃上げを実施しても、その実施した事業年度に控除しきれなかった金額(税額控除限度超過額)が生じることがあります。

 この税額控除限度超過額はその期で失効せず、その後5年間の繰越控除が認められています(2024(令和6)年度税制改正)。

 以下では、中小企業向け賃上げ促進税制の繰越税額控除制度を適用する際の注意点について確認します。

1.ゼロ申告でも賃上げ促進税制の別表を添付

 この繰越税額控除の適用を受けるためには、税額控除限度超過額が生じた事業年度以後の各事業年度の確定申告書に繰越税額控除限度超過額の明細書を添付し、繰越控除の適用を受ける事業年度の確定申告書に控除の対象となる繰越税額控除限度超過額と控除を受ける金額を記載するとともに、その金額の計算に関する明細書を添付する必要があります

 このように、その適用に当たっては、賃上げ促進税制の別表を作成・提出し続けることが要件となっています。

 繰越欠損金の発生事業年度や繰越欠損金がある事業年度であっても、賃上げ促進税制による税額控除限度超過額が発生した場合には、ゼロ申告でも賃上げ促進税制の別表を添付することになります。

 従来においても、ゼロ申告の事業年度でも、税務調査で納税額が出ることになる可能性がある場合に備えて、法人税申告書に賃上げ促進税制の別表を添付しておき、税額控除の適用の可能性を担保しておくべき、と言われていました。

 2024(令和6)年度税制改正で5年間の繰越控除が可能となりましたので、今後はこのようなリスク管理的な配慮ではなく、5年間の内に黒字を達成すれば税額控除の適用を受けられるようにしておく必要があります。

※ 賃上げ促進税制の別表の書き方については、「中小企業者等の賃上げ促進税制に係る別表六の書き方と記載例《令和6年4月1日~令和9年3月31日開始事業年度》」をご参照ください。

2.継続的な賃上げが不可欠

 ところで、賃上げ促進税制のほかにも各種の税額控除制度があります。例えば、中小企業者等が機械等を取得した場合の税額控除制度(中小企業投資促進税制)などです。

 中小企業投資促進税制では、翌期に法人税額があれば税額控除が可能です。

 しかし、賃上げ促進税制では、繰越税額控除を適用する各事業年度において、雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額より増加していなければ控除は認められない、という追加要件が課されている点には注意が必要です。

 税額控除の権利は保持できても、実際に税額控除をするには継続的な賃上げが不可欠だということです。

 また、賃上げ促進税制での税額控除額は、調整前法人税額の20%を限度とするとされています。
 複数の税額控除制度を適用する場合、調整前法人税額の20%という部分は、重複して適用を受けられます。

 ただし、20%の税額控除が幾つもあった場合、その合計額については、調整前法人税額の90%を限度とする制限規定があります。
 したがって、調整前法人税額の90%を超える部分の金額(調整前法人税額超過額)は、調整前法人税額から控除することができません。

 この調整前法人税額超過額は、各種の税額控除制度による控除可能期間が最も長いものから順次成ることとされています。
 つまり、調整前法人税額超過額は、まず残りの控除可能期間の長いものに配賦し、次に控除可能期間が同じものについては、法人の選択により配賦することとされています。

青色事業専従者給与を事業収入以外の資金で支払ったら否認されるのか?

 青色申告には様々な特典がありますが、その一つに青色事業専従者給与があります。

 個人事業者が生計を一にする親族に給与を支払っても必要経費にできませんが(所得税法第56条)、青色申告の承認を受けている個人事業者が青色事業専従者給与に関する届出書を税務署に提出している場合は、労務の対価として相当と認められる給与については必要経費にすることができます(所得税法第57条第1項)。

 税務調査の際には、青色事業専従者給与が労務の対価として相当か否かが争われるケースが多いと思われますが、税務署が「事業収入以外の資金(給与収入)から支払われていたこと」を否認理由の一つに挙げた裁決例があります。

 以下では、この税務署の否認理由について、国税不服審判所がどのように判断したのかを確認します。

1.必要経費算入の要件

 青色事業専従者給与については、所得税法第57条第1項に次のように規定されています(下線は筆者による)。

青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者と生計を一にする配偶者その他の親族(年齢15歳未満である者を除く。)で専らその居住者の営む前条に規定する事業に従事するもの(以下この条において「青色事業専従者」という。)が当該事業から次項の書類に記載されている方法に従いその記載されている金額の範囲内において給与の支払を受けた場合には、前条の規定にかかわらず、その給与の金額でその労務に従事した期間、労務の性質及びその提供の程度、その事業の種類及び規模、その事業と同種の事業でその規模が類似するものが支給する給与の状況その他の政令で定める状況に照らしその労務の対価として相当であると認められるものは、その居住者のその給与の支給に係る年分の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上必要経費に算入し、かつ、当該青色事業専従者の当該年分の給与所得に係る収入金額とする。

 青色事業専従者給与が必要経費に算入されるための要件について、所得税法第57条第1項は、前段で形式的要件(事業から支払われた給与であること)、後段で実質的要件(労務の対価として相当な金額であること)を挙げています。

 このうち、税務署が形式的要件を満たしていないことを否認理由の一つとして挙げたのが次の裁決例です。

2.平成27年4月13日裁決

(1) 事案の概要

 医師として複数の病院に勤務するとともに自ら診療所を営む納税者が妻に対して支払った青色事業専従者給与について、税務署は、次の理由から「当該事業から」給与の支払を受けた場合に該当しないため、事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないと主張しました。

① 事業収入より給与収入が約4倍多い
 青色事業専従者給与の原資は診療所の事業収入ではなく、勤務先病院からの給与収入である。

② 事業用口座から支払われていない
 事業用の預金口座ではなく、勤務先病院からの給与収入が振り込まれる口座から直接現金を引き出して支払っている。

 ①②の理由から、青色事業専従者給与は給与収入から支払われているため事業からの支払といえず、必要経費に算入できないとしました。

(2) 審判所の判断

 これに対し、審判所は次の理由から「青色事業専従者給与は事業から支払われた給与に該当する」として、税務署の主張を退けました。

① 青色事業専従者給与は勤務先病院の給与振込口座から現金出金されていたが、出金時または年末に「事業主借」勘定へ振替処理がされており、事業用とされた現金から支払われていた。

② 所得税法第57条は、事業収入以外から事業に流入した資金により青色事業専従者給与が支払われた場合に、当該支払を必要経費に算入することを認めない旨を規定したものではない。

 ①②の理由から、青色事業専従者給与は事業から支払われていたものと認められるため、税務署の主張には理由がないとしました。

 個人事業では、事業主の個人資金を事業に補填することは通常の処理であり、事業主借勘定に振り替えられ事業用とされた現金から支払われている以上、「事業から支払われた給与」に該当するということです。

 ただし、この裁決例では、所得税法第57条第1項後段の実質的要件(労働の対価として相当な金額であること)により、その青色事業専従者給与の大部分が否認されています。

防衛特別所得税の創設と源泉徴収事務(令和8年度税制改正)

 2026(令和8)年度税制改正により、新たに「防衛特別所得税」が創設され、同時に、東日本大震災の復興財源として課されてきた復興特別所得税の税率が引き下げられ、期間が延長されました。

 これらの改正は、いずれも2027(令和9)年1月以後に支払われる報酬料金や給与等から適用されます。

 以下では、新設された防衛特別所得税と改正された復興特別所得税について確認します。

1.防衛特別所得税とは

 新設された防衛特別所得税は、所得税の源泉徴収義務者が所得税を徴収する際に、源泉徴収すべき所得税の額の1%を追加で徴収する仕組みで、その所得税の法定納期限までに、その所得税および復興特別所得税と併せて国に納付しなければならないものです。

 対象となるのは、給与・報酬・利子・配当など、通常の源泉徴収の対象となる所得です。

2.復興特別所得税の見直し

 復興特別所得税については、次の2点が変更されています。

  改正前 改正後
税率 2.1% 1.1%
課税期間 令和19年12月31日まで 令和29年12月31日まで

3.合計税率は2.1%で変わらない

 今回の改正のポイントは、 防衛特別所得税(1%)+復興特別所得税(1.1%)=合計2.1% となり、改正前と合計税率は同じという点です。

 そのため、源泉徴収税額の計算方法自体は、これまでと変わりません。

 ただし、復興特別所得税の課税期間が10年延長されましたので、長い目で見れば増税になります。

4.報酬料金の源泉徴収

 報酬料金から源泉徴収すべき所得税・防衛特別所得税・復興特別所得税の額は、次のとおりです。

源泉徴収税額※1=支払金額等×合計税率(%)※2

※1 算出した源泉徴収税額に1円未満の端数があるときは、その端数を切り捨てます。

※2 合計税率は、所得税率(%)×102.1%で算出します。所得税率に応じた合計税率は、具体的には次のようになります。

所得税率(%) 5 10 15 16 18 20
合計税率(所得税率(%)×102.1%) 5.105 10.21 15.315 16.336 18.378 20.42

 例えば、報酬料金として888,888円を支払った場合(所得税率を10%とします)の源泉徴収税額は、888,888円(支払金額)×10.21%(合計税率)=90,755.4648円(算出税額)→90,755円(1円未満切り捨て)となります。

5.給与等の源泉徴収と年末調整

 給与や賞与については、2027(令和9)年分の新しい源泉徴収税額表に基づき、所得税・防衛特別所得税・復興特別所得税の合計額を徴収します。

 年末調整も同様に、 年調所得税額 × 102.1% で計算した合計額で精算します。

※ 令和9年分の源泉徴収税額表は、令和8年8月末頃に国税庁ホームページに掲載される予定です。

令和8年度税制改正で年収の壁はこのように変わった!

 2026(令和8)年度税制改正による所得税の基礎控除や給与所得控除の引き上げに伴い、配偶者控除や扶養控除などの所得要件も見直されています※。

 以下では、令和8年度税制改正を踏まえて、令和8年分と令和9年分の給与・賞与について適用される年収の壁について確認します。

※ 令和8年度税制改正の内容については、「基礎控除・給与所得控除の引き上げと源泉徴収事務・年収の壁への影響(令和8年度税制改正)」、「扶養控除・配偶者(特別)控除・ひとり親控除・特定親族特別控除の所得要件の見直し(令和8年度税制改正)」をご参照ください。

1.106万円の壁(社会保険)

 令和8年度税制改正は、以下の社会保険制度上の年収の壁である106万円(105.6万円)の壁には影響ありません。

 下記①~⑤の条件を満たす場合は、パートやアルバイトで働く人は社会保険の扶養から外れ、自ら国民健康保険・国民年金の被保険者となり保険料を負担することになります(関連記事「従業員51人以上の会社で働くパート・アルバイトの社会保険加入義務(令和6年10月1日~)」)。

 ①従業員が51人以上の会社で働いている(2024(令和6)年10月以降)※1
 ②週の労働時間が20時間以上30時間未満である
 ③月収8.8万円以上(年収106万円以上)である※2
 ④2か月を超える雇用の見込がある
 ⑤学生でない(休学中・夜間学生は除く)

※1 2025(令和7)年6月13日に成立した年金制度改正法により、2027(令和9)年10月から、「企業規模要件」が段階的に撤廃されます。

※2 2025(令和7)年6月13日に成立した年金制度改正法により、法律の公布から3年以内に「賃金要件」は撤廃されます。2026(令和8)年10月に賃金要件は撤廃される予定ですので、「106万円の壁」はなくなる見込みです。

2.119万円の壁(住民税)

 令和8年度税制改正で給与所得控除の最低保障額が65万円から74万円に引き上げられたことにより、住民税が非課税となる年収が119万円に変わりました(令和9年度・10年度の住民税について適用)。

 住民税は、所得金額に応じて課税される「所得割と、定額で課税される「均等割」から成りますが、住んでいる地域や家族構成によって住民税が非課税となる所得金額は異なります。

 例えば、兵庫県宝塚市で均等割が非課税となる所得は、次の算式で算出します。

 35万円×(同一生計配偶者+扶養親族数+本人)+10万円+21万円(同一生計配偶者または扶養親族を有する場合のみ)

 単身の場合は、35万円×1+10万円=45万円が非課税となる所得であり、給与収入に置き換えると119万円(45万円+給与所得控除74万円)となります。

 したがって、年収が119万円を超えると住民税がかかります(自治体によって異なりますのでご注意ください)。

3.130万円の壁(社会保険)

 令和8年度税制改正は、上記1と同様に、社会保険制度上の年収の壁である130万円の壁には影響ありません。

 130万円の壁とは、本人の年収が130万円以上になると、パートやアルバイトで働く人が自ら国民健康保険・国民年金の被保険者となり、社会保険の扶養から外れる年収ラインのことをいいます。

 なお、年収130万円以上であるかどうかを判定する際の年収の取扱いが、2026(令和8)年4月1日から変わっています。詳細は、「令和8年4月1日から「130万円の壁」の年間収入は労働契約の内容で判定されます」をご参照ください。

4.136万円の壁(所得税:配偶者控除・扶養控除)

 令和8年度税制改正で基礎控除と給与所得控除の最低保障額が引き上げられたことにより、配偶者控除と扶養控除を適用できる年収の壁も136万円に変わっています。

 改正により、配偶者控除や扶養控除の対象となる合計所得金額が58万円以下から62万円以下に変わりましたので、配偶者や扶養親族の年収が136万円以下であれば、配偶者控除や扶養控除の対象となります(合計所得金額62万円+給与所得控除74万円=給与収入136万円)。

5.150万円の壁(社会保険)

 2025(令和7)年度税制改正によって、所得税における19歳以上23歳未満の扶養親族(以下「大学生年代」といいます)の特定扶養控除の要件の見直し等が行われたことを踏まえ、社会保険制度についても、扶養認定日が2025(令和7)年10月1日以降で、扶養認定を受ける人(被扶養者)が19歳以上23歳未満の場合(被保険者の配偶者を除く)における年収の壁が「年間収入150万円未満」に変わりました

 2026(令和8)年度税制改正が行われましたが、現時点でこの150万円の壁について変更はありません。

 上記3でみたように、年収が130万円以上になると社会保険の扶養から外れますが、大学生年代については、年収が130万円以上となっても150万円未満であれば社会保険の扶養に入ることができます。

 年収が150万円以上になると、大学生年代が自ら国民健康保険・国民年金の被保険者となり保険料を負担することになります。

 150万円の壁とは、社会保険の扶養に入れるかどうかの年収の分岐点のことをいいます。

※ 社会保険の150万円の壁については、「令和7年10月1日から19歳以上23歳未満の人の健康保険の被扶養者認定基準が年収150万円未満に変わります」をご参照ください。

6.159万円の壁(所得税:特定親族特別控除)

 上記4でみたように、扶養親族の年収が136万円を超えると扶養控除の対象から外れますので、年齢19歳以上23歳未満の扶養親族について、63万円の扶養控除を適用することができません。

 しかし、大学生年代については、年収が136万円を超えても特定親族特別控除を適用することができ、年収が159万円以下であれば、特定親族特別控除について満額の63万円を適用することができます。

 さらに、大学生年代の年収が159万円を超えても197万円以下であれば、納税者本人は段階的に逓減する特定親族特別控除を受けることができます。

7.163万円の壁(所得税:勤労学生控除)

 令和8年度税制改正で基礎控除と給与所得控除の最低保障額が引き上げられたことにより、勤労学生本人が受けられる勤労学生控除の合計所得金額の要件が、従前の85万円以下から89万円以下に変わりました。

 したがって、勤労学生本人の給与収入が163万円以下であれば、勤労学生控除27万円を受けることができます(89万円+給与所得控除74万円=給与収入163万円)。

8.169万円の壁(所得税:配偶者特別控除)

 上記4でみたように、配偶者の年収が136万円を超えると配偶者控除の対象から外れますが、配偶者特別控除を適用することができます。
 この配偶者特別控除について満額の38万円を適用できる年収の壁が、従前の160万円から169万円に変わりました。

 満額の38万円を適用できる合計所得金額の上限は従前どおりの95万円ですが、給与所得控除最低保障額が74万円に引き上げられたことにより、配偶者の年収が169万円以下であれば、納税者本人は配偶者特別控除38万円の適用を受けることができます(ただし、納税者の合計所得金額が900万円以下の場合です)。

 また、配偶者の年収が169万円を超えても207万円以下であれば、納税者本人は段階的に逓減する配偶者特別控除を受けることができます。

9.178万円の壁(所得税)

 税制改正で基礎控除と給与所得控除の最低保障額が引き上げられたことにより、所得税が非課税となる年収が178万円に変わりました。

 2025(令和7年)度税制改正で、所得税がかからない年収の壁として広く知られていた103万円の壁が160万円の壁に変わりましたが、さらに2026(令和8)年度税制改正により178万円の壁に変わりました。

 給与所得者の年収が178万円以下であれば、給与所得者本人に所得税はかかりません(給与所得控除74万円+基礎控除104万円=給与収入178万円)

10.197万円の壁(所得税:特定親族特別控除)

 大学生年代の年収が159万円を超えると段階的に特定親族特別控除が減っていき、年収197万円を超えると特定親族特別控除はゼロとなります(上記6)。

 197万円の壁とは、特定親族特別控除が適用されるか否かの年収の分岐点のことをいいます。

11.207万円の壁(所得税:配偶者特別控除)

 配偶者の年収が169万円を超えると段階的に配偶者特別控除が減っていき、年収207万円を超えると配偶者特別控除はゼロとなります(上記8)。

 207万円の壁とは、配偶者特別控除が適用されるか否かの年収の分岐点のことをいいます。

扶養控除・配偶者(特別)控除・ひとり親控除・特定親族特別控除の所得要件の見直し(令和8年度税制改正)

 2026(令和8)年度税制改正において、所得税の基礎控除や給与所得控除の引き上げが行われました
 これに伴い、扶養控除、配偶者控除、配偶者特別控除、ひとり親控除、特定親族特別控除の適用を受ける場合の所得要件も見直されています。
 以下では、令和8年分以後の所得税で適用される扶養控除等の所得要件について確認します。

※ 基礎控除・給与所得控除の引き上げについては、「基礎控除・給与所得控除の引き上げと源泉徴収事務・年収の壁への影響(令和8年度税制改正)」をご参照ください。
 なお、令和8年度税制改正により、いわゆる「年収の壁」も変わっています。年収の壁については、「令和8年度税制改正で年収の壁はこのように変わった!」をご参照ください。

1.扶養控除・配偶者控除・ひとり親控除の所得要件

 令和8年度税制改正で、扶養控除・配偶者控除・ひとり親控除の対象となる扶養親族等の所得要件(合計所得金額)が、改正前の58万円以下(給与収入だけの場合は年収123万円以下)から62万円以下(給与収入だけの場合は年収136万円以下)に変わりました。
 ただし、所得要件以外の要件(同一生計である、事業専従者ではないなど)は変わっていません

扶養親族等の区分 所得控除の種類 合計所得金額※1
扶養親族 扶養控除 62万円以下(136万円以下※2
同一生計配偶者 配偶者控除
ひとり親の生計を一にする子 ひとり親控除

※1 ひとり親の生計を一にする子の所得要件は、総所得金額等の合計額で判定します。総所得金額等については、「合計所得金額』『総所得金額』『総所得金額等』の違いとは?」をご参照ください。
※2 カッコ内の金額は、令和8・9年分の収入が給与だけの場合の収入金額です。

 上記の所得要件を満たす扶養親族、同一生計配偶者、ひとり親の生計を一にする子がいる場合は、納税者本人の所得控除額は次のようになります。

扶養親族等の区分 所得控除の種類 所得控除額
一般の扶養親族(16歳以上) 扶養控除 38万円
特定扶養親族(19歳以上23歳未満) 63万円
老人扶養親族(70歳以上の同居老親等) 58万円
老人扶養親族(70歳以上の同居老親等以外) 48万円
同一生計配偶者(70歳未満) 配偶者控除 38万円
同一生計配偶者(70歳以上) 48万円
ひとり親の生計を一にする子 ひとり親控除 35万円

※ 扶養親族(一般・特定・老人)は、本人と同一生計であることが必要です。同一生計については、「所得控除における『生計を一にする』の判定基準」をご参照ください。
※ 配偶者控除は、納税者本人の合計所得金額が900万円以下の場合の控除額です。

2.配偶者特別控除の所得要件

 配偶者の合計所得金額が62万円以下の場合は配偶者控除を適用できますが、62万円を超えた場合は配偶者特別控除を適用することができます。

 この配偶者特別控除の対象となる配偶者の所得要件が、改正前は58万円超133万円以下(給与収入だけの場合は年収123万円超201万5,999円以下)でしたが、改正後は62万円超133万円以下(給与収入だけの場合は年収123万円超207万円以下)に変わりました。

 この所得要件を満たす同一生計配偶者がいる場合は、納税者本人の配偶者特別控除額は次のようになります。

配偶者の合計所得金額 本人の合計所得金額
900万円以下 900万円超950万円以下 950万円超1,000万円以下
62万円超95万円以下(136万円超169万円以下) 38万円 26万円 13万円
95万円超100万円以下(169万円超 174万円以下) 36万円 24万円 12万円
100万円超105万円以下(174万円超179万円以下) 31万円 21万円 11万円
105万円超110万円以下(179万円超184万円以下) 26万円 18万円 9万円
110万円超115万円以下(184万円超189万円以下) 21万円 14万円 7万円
115万円超120万円以下(189万円超194万円以下) 16万円 11万円 6万円
120万円超125万円以下(194万円超199万円以下) 11万円 8万円 4万円
125万円超130万円以下(199万円超204万円以下) 6万円 4万円 2万円
130万円超133万円以下(204万円超207万円以下) 3万円 2万円 1万円
133万円超(207万円超) 0円 0円 0円

※カッコ内の金額は、令和8・9年分の収入が給与だけの場合の収入金額です。

3.特定親族特別控除の所得要件

 19歳以上23歳未満の扶養親族の合計所得金額が62万円以下の場合は扶養控除を適用できますが、62万円を超えた場合は特定親族特別控除を適用することができます。
 
 令和7年度税制改正で新設された特定親族特別控除についても、令和8年度税制改正で所得要件が見直されています。

 特定親族とは、本人と生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族(配偶者、青色事業専従者として給与の支払を受ける人及び白色事業専従者を除きます)で合計所得金額が62万円超(改正前は58万円超)123万円以下(給与収入だけの場合は年収136万円超197万円以下(改正前は123万円超188万円以下)の人をいいます。

 この特定親族がいる場合は、納税者本人の特定親族特別控除額は次のようになります。

特定親族の合計所得金額 特定親族特別控除額
62万円超 85万円以下 (136万円159万円以下) 63万円
85万円超 90万円以下(159万円超 164万円以下) 61万円
90万円超 95万円以下(164万円超 169万円以下) 51万円
95万円超 100万円以下(169万円超 174万円以下) 41万円
100万円超 105万円以下(174万円超 179万円以下) 31万円
105万円超 110万円以下(179万円超 184万円以下) 21万円
110万円超 115万円以下(184万円超 189万円以下) 11万円
115万円超 120万円以下(189万円超 194万円以下) 6万円
120万円超 123万円以下(194万円超 197万円以下) 3万円
123万円超(197万円超) 0円

※カッコ内の金額は、令和8・9年分の収入が給与だけの場合の収入金額です。

基礎控除・給与所得控除の引き上げと源泉徴収事務・年収の壁への影響(令和8年度税制改正)

 2025(令和7)年度税制改正において、所得税の基礎控除と給与所得控除の引き上げが行われましたが、2026(令和8)年度税制改正において、さらにその範囲が拡大されました。

 この改正は、原則として2026(令和8)年分以後の所得税から適用されます。

 以下では、基礎控除と給与所得控除の引き上げの内容と、これらの引き上げが2026(令和8)年の源泉徴収事務や、いわゆる年収の壁に与える影響について確認します

※ 年収の壁については、「令和8年度税制改正で年収の壁はこのように変わった!」をご参照ください。

1.基礎控除の引き上げ

 令和8年度税制改正により、合計所得金額が2,350万円以下である個人の基礎控除額が58万円から4万円引き上げられ、62万円となりました。

 さらに、令和8年分および令和9年分に限り、基礎控除の特例(時限措置)として、合計所得金額に応じて基礎控除額の上乗せが行われています。

 なお、基礎控除の改正は所得税のみの改正であり、住民税の基礎控除額は従前通りの43万円です。

 改正後の所得税の基礎控除額は、下表のとおりです。

合計所得金額
※カッコ内は令和8・9年分の収入が給与だけの場合の収入金額※2
基礎控除額
改正前 令和8・9年分 令和10年分以後
132万円以下
(206万円以下)
95万円 104万円※1 99万円※1
132万円超~336万円以下
(206万円超~475万1,999円以下)
88万円 62万円
336万円超~489万円以下
(475万1,999円超~665万5,556万円以下)
68万円
489万円超~655万円以下
(665万5,556円超~850万円以下)
63万円 67万円※1
655万円超~2,350万円以下
(850万円超~2,545万円以下)
58万円 62万円
2,350万円超~2,400万円以下
(2,545万円超~2,595万円以下)
48万円※3
2,400万円超~2,450万円以下
(2,595万円超~2,645万円以下)
32万円※3
2,450万円超~2,500万円以下
(2,645万円超~2,695万円以下)
16万円※3
2,500万円超
(2,695万円超)
0円※3

※1 基礎控除の特例として、62万円にそれぞれ42万円、5万円、37万円を加算した金額となります(この加算は居住者についてのみ適用があります)。
※2 特定支出控除や所得金額調整控除の適用がある場合は、表の金額とは異なります。
※3 合計所得金額2,350万円超の場合の基礎控除額に改正はありません(合計所得金額については、「『合計所得金額』『総所得金額』『総所得金額等』の違いとは?」をご参照ください)。

2.給与所得控除の引き上げ

 令和8年度税制改正により、給与所得控除額の最低保障額が65万円から69万円に引き上げられ、かつ、令和8年分および令和9年分に限り5万円が上乗せされます。

 給与所得控除の改正は、所得税だけではなく住民税にも適用されます(令和8年分以後の所得税及び令和9年度以後の住民税)。

 改正後の給与所得控除額は、下表のとおりです。

給与の収入金額(A) 改正前 令和8・9年分 令和10年分以後
190万円以下 65万円 74万円 A×30%+8万円(69万円未満となる場合は69万円)
190万円超~220万円以下 A×30%+8万円
220万円超~360万円以下 A×30%+8万円 同左 同左
360万円超~660万円以下 A×20%+44万円
660万円超~850万円以下 A×10%+110万円
850万円超 195万円(上限)

 令和8年分および令和9年分の給与等の収入金額が69万1,000円以上220万円未満である場合には、その給与等に係る給与所得の金額については、上表にかかわらず、次の金額とすることとされました。

給与等の収入金額 69万1,000円以上74万1,000円未満 74万1,000円以上219万1,000円未満 219万1,000円以上219万3,000円未満 219万3,000円以上219万6,000円未満 219万6,000円以上220万円未満
給与所得の金額 なし その収入金額-74万円 145万1,000円 145万3,000円 145万6,000円

 なお、令和8年度税制改正により、基礎控除額と給与所得控除額は、物価上昇に連動して2年ごとに見直されることが想定されています。

3.源泉徴収事務と年収の壁への影響

 上記1及び2の税制改正は、原則として、2026(令和8)年分以後の所得税及び2027(令和9)年度以後の住民税について適用されます。

 そのため、2026(令和8)年12月に行う年末調整など、2026(令和8)年12月以後の源泉徴収事務に変更が生じますが、11月までの給与の源泉徴収事務に変更は生じません。

 したがって、2026(令和8)年分の給与の源泉徴収事務においては、2026(令和8)年12月に行う年末調整の際に、改正後の基礎控除額と「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」に基づいて1年間の税額を計算し、改正前の「源泉徴収税額表」によって計算した源泉徴収税額との精算を行います。

 なお、基礎控除と給与所得控除の改正により、所得税が課税されない給与収入(いわゆる年収の壁)が、令和7年分の160万円(基礎控除95万円+給与所得控除65万円)から、令和8年分は178万円(基礎控除104万円+給与所得控除74万円)に変わります。

 また、給与所得控除の改正により、住民税が課税されない給与収入については、令和8年度の110万円(45万円+給与所得控除65万円)から、令和9年度は119万円(45万円+給与所得控除74万円)に変わります(各自治体によって異なります)。

 これらの年収の壁の詳細については、「令和8年度税制改正で年収の壁はこのように変わった!」をご参照ください。

令和8年4月から適用される税制・社会保険制度の主な改正のまとめ

 2026(令和8)年4月より、税制および社会保険制度において複数の重要な改正が実施されています。
 これらの改正は、日常の経理・労務実務に直接影響する内容を含んでいますので、以下において主なポイントを整理します。

1.税制改正

(1) 防衛特別法人税の新設

 2025(令和7)年度税制改正により、防衛力強化の財源確保を目的とした防衛特別法人税が新設されました。

 この防衛特別法人税は、2026(令和8)年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。
 各事業年度の所得に対する法人税を課される法人が納税義務者となり、防衛特別法人税確定申告書の提出が必要です(防衛特別法人税額が0であっても申告は必要となります)。

 詳細については、「全法人が対象の『防衛特別法人税』の概要と実務に及ぼす影響(令和8年4月1日以後開始事業年度)」をご参照ください。

(2) 賃上げ促進税制の見直し

 2026(令和8)年度税制改正で、以下のように賃上げ促進税制の見直しが行われています。

(1) 大企業向けは、2026(令和8)年3月31日までに開始する各事業年度について適用され、その後廃止されます。
(2) 中堅企業向けは、2026(令和8)年4月1日から2027(令和9)年3月31日までの間に開始する各事業年度について適用され、その後廃止されます。
(3) 中小企業向けは、2026(令和8)年4月1日から2027(令和9)年3月31日までの間に開始する各事業年度について適用されますが、教育訓練費に係る上乗せ措置が廃止され、最大控除率が45%から35%に低下します。

 詳細については、「中小企業者等の賃上げ促進税制《令和6年4月1日~令和9年3月31日開始事業年度》」をご参照ください。

(3) 少額減価償却資産の特例の拡充

 2026(令和8)年度税制改正によって、中小企業向けの少額減価償却資産の特例が拡充され、適用対象となる減価償却資産の取得価額が40万円未満(改正前:30万円未満)へ引き上げられ、かつ、適用対象となる事業者(法人と個人事業主)の常時使用する従業員の数が400人以下(改正前:500人以下)に引き下げられたうえで、その適用期限が3年延長されました。

 この改正は、2026(令和8)年4月1日以後に取得する減価償却資産から適用されます。

 詳細については、「40万円未満の少額減価償却資産に係る損金算入の特例(令和8年度税制改正)」をご参照ください。

(4) 現物支給の食事の非課税限度額の引き上げ

 2026(令和8)年度税制改正により、会社が役員や従業員へ現物支給する食事に関する所得税の非課税限度額が「月額7,500円」(改正前:3,500円)に引き上げられました。

 この改正は、2026(令和8)年4月1日以後に支給する食事から適用されます。

 詳細については、「現物支給の食事に係る所得税の非課税限度額が7,500円に(令和8年度税制改正)」をご参照ください。

(5) マイカー通勤手当の非課税限度額の引き上げ

 2026(令和8)年度税制改正により、マイカー等で通勤する場合の非課税限度額について、通勤距離が片道65キロメートル以上について新たな距離区分が設けられ、また、通勤距離の区分に応じた非課税限度額に1か月当たりの駐車場等の料金(上限5,000円)が加算されることになりました。

 この改正は、2026(令和8)年4月1日以後に支払われるべき通勤手当について適用されます。

 詳細については、「令和8年4月1日よりマイカー通勤手当の非課税限度額が引き上げられました」をご参照ください。

2.社会保険制度の改正

(1) 健康保険料率・介護保険料率の改定

 2026(令和8)年度の全国健康保険協会(協会けんぽ)の健康保険料率および介護保険料率が3月分(4月納付分)から改定されました。

 全国健康保険協会(協会けんぽ)の健康保険料率は都道府県ごとに異なり、例えば令和8年度の大阪府の料率は10.13%(令和7年度は10.24%)となっています。
 この料率に、40歳から64歳までの方(介護保険第2号被保険者)は、全国一律の介護保険料率1.62%(令和7年度は1.59%)が加わります。

 詳細については。「令和8年3月分(4月納付分)から健康保険料率と介護保険料率が改定されます(協会けんぽ)」をご参照ください。

(2) 雇用保険料率の改定(労災保険料率・子ども子育て拠出金率は据え置き)

 厚生労働省告示に伴い、2026(令和8)年度の雇用保険料率が改定されました。
 例えば、令和8年度の一般事業の雇用保険料率については、被保険者負担率5.0/1000、事業主負担率8.5/1000となっています。

 一方、労災保険料率と子ども・子育て拠出金率は据え置きとなり、令和7年度の料率から改定されていません。

 詳細については、「令和8年度の雇用保険料率が改定されます(労災保険料率・子ども子育て拠出金率は据え置き)」をご参照ください。

(3) 子ども・子育て支援金制度の新設

 2026(令和8)年4月分(5月納付分)から「子ども・子育て支援金制度」が始まりました。

 子ども・子育て支援金は全世帯・企業が拠出し、支援金額や保険料率などは医療保険者(協会けんぽ・健康保険組合等、国民健康保険、後期高齢者医療制度)によって異なります。

 なお、「子ども・子育て支援金制度」は上記2.(2)の「子ども・子育て拠出金」とは異なる制度です。
 子ども・子育て支援金は事業主と従業員(被保険者)の両者が負担するのに対し、子ども・子育て拠出金は事業主のみが負担し従業員の負担はありません。

 詳細については、「令和8年4月分(5月納付分)から『子ども・子育て支援金制度』が始まります」をご参照ください。

(4) 被扶養者認定基準の変更

 2026(令和8)年4月1日から、社会保険の扶養に入る人(被扶養者)の被扶養者認定基準が、労働条件通知書などで定められた賃金から見込まれる年間収入が130万円未満であるかどうかを判定する方式に変更されました。

 つまり、労働契約段階で見込まれる収入を用いて、被扶養者の判定が行われることになります。
 したがって、労働契約に明確な規定がなく、労働契約段階では見込み難い時間外労働に対する賃金等は、被扶養者の判定における年間収入には含まれないこととなります。
 
 これにより、一時的な残業や繁忙期の収入増で扶養から外れるケースが減少し、従業員の働き方の柔軟性が高まることが期待されます。

 詳細については、「令和8年4月1日から『130万円の壁』の年間収入は労働契約の内容で判定されます」をご参照ください。

(5) 在職老齢年金の支給停止額の引き上げ

 在職老齢年金制度が、2025(令和7)年6月13日に成立した年金制度改正法で見直され、2026(令和8)年4月から、年金が減額になる基準額(賃金と老齢厚生年金の合計)が月51万円から65万円に引き上げられました。

 平均寿命・健康寿命が延びる中で、働き続けることを希望する高齢者の活躍を後押しし、より働きやすい仕組みとすることが今回の改正の趣旨です。

 詳細については、「在職老齢年金制度における年金カットの計算方法(基準額が令和8年4月から62万円に引き上げられます)」をご参照ください。

40万円未満の少額減価償却資産に係る損金算入の特例(令和8年度税制改正)

 2026(令和8)年度税制改正によって、即時償却が可能な少額減価償却資産の損金算入制度について一部改正がありました。

1.改正内容

 少額減価償却資産に係る損金算入の特例が2026(令和8)年3月31日に期限切れになることから、2026(令和8)年度税制改正において以下の項目について改正が行われました。

項目 改正前 改正後
取得価額 30万円未満 40万円未満
常時使用する従業員の数 500人以下 400人以下
適用期限 令和8年3月31日 令和11年3月31日

 適用対象となる減価償却資産の取得価額が40万円未満(改正前:30万円未満)に引き上げられ、かつ、適用対象となる事業者(法人と個人事業主)の常時使用する従業員の数が400人以下(改正前:500人以下)に引き下げられたうえで、その適用期限が3年延長されました。

 上記改正内容は、2026(令和8)年4月1日以後に取得する減価償却資産から適用されます。

 なお、即時償却が可能な少額減価償却資産の年間合計金額の上限に変更はなく、300万円のままです。

 この制度自体は時限措置ではありますが、制度が創設された2006(平成18)年から現在に至るまで、一部内容の見直しを行いながら引き続き設けられています。
 次の2において、改正内容を踏まえた制度の概要を確認します。

2.改正を踏まえた制度の概要

 青色申告書を提出する中小企業者等※1が、2026(令和8)年4月1日から2029(令和11)年3月31日※2までの間に取得等した減価償却資産で、その取得価額が40万円未満であるもの※3については、その事業の用に供した日の属する事業年度において、全額損金算入することができます。

 ただし、適用を受ける事業年度における少額減価償却資産の取得価額の合計額が300万円(事業年度が1年に満たない場合には300万円を12で除し、これにその事業年度の月数を掛けた金額。月数は暦に従って計算し、1か月に満たない端数を生じたときは1か月とします)を超えるときは、その取得価額の合計額のうち300万円に達するまでの少額減価償却資産の取得価額の合計額が限度となります。

※1 資本金1億円以下で大規模法人の子会社等でない法人が適用対象です。なお、常時使用する従業員(パート、アルバイトを含む)の数については、2026(令和8)年度改正で400人(改正前:500人)以下に引き下げられました(措令39の28①)。
 したがって、常時使用する従業員の数が400人を超える事業者は、適用対象から除外されます。
 なお、中小企業者の定義については、本ブログ記事「租税特別措置法上の『中小企業者』の定義とその判定時期」をご参照ください。

※2 2026(令和8)年度改正で適用期限が3年間延長され、2029(令和11)年3月31日までの間に取得等した減価償却資産について適用されることとなりました。
 なお、2026(令和8)年3月31日までに取得した資産は改正前の旧基準が適用され、2026(令和8)年4月1日以後に取得した資産は改正後の新基準が適用されますので、同一事業年度内で新旧基準が混在する場合はご注意ください。 

※3 取得価額が40万円未満である減価償却資産について適用がありますので、資産の種類に制限はなく、有形減価償却資産だけではなくソフトウェアや商標権などの無形減価償却資産も対象となり、また、中古資産も対象となります。
 ただし、租税特別措置法上の特別償却、税額控除、圧縮記帳との重複適用はできず、また、取得価額が10万円未満の場合や取得価額が10万円以上20万円未満のものについて一括償却資産の損金算入制度の適用を受ける場合も、この特例の適用はありません。