外交員報酬に係る源泉徴収税額の計算方法

 不動産業を営むA社の社長から、不動産外交員に支払う報酬の源泉徴収税額の計算方法を教えてほしいとのご依頼がありました。社長ご自身も、A社を設立する前は不動産外交員として報酬を受け取っていましたので、報酬から所得税と復興特別所得税を源泉徴収しなければならないことはご存じでしたが、その計算方法はご存じないようでした。
 今回は、外交員報酬に係る源泉徴収税額の具体的な計算方法について確認します。

1.外交員報酬とは?

 不動産や保険の外交員が、その地位に基づいて支払を受ける外交員報酬は、源泉徴収の対象とされます(所得税法第204条第1項第4号)。
 ここでいう外交員報酬に該当するかどうかについては、その支払を受ける者が、支払をする販売会社との間に会社法上の代理商契約に準ずる委任契約関係、すなわち媒介代理の契約関係にあるか否かにより決まります。このような契約関係があれば、外交員報酬として源泉徴収の対象となりますが、このような継続的な契約関係がなく、単に斡旋をするにすぎないときは外交員報酬とならず、源泉徴収の対象にもなりません。

※ 国税不服審判所の裁決(平11.3.11裁決、裁決事例集No.57 206頁)では、「所得税法第204条第1項第4号に規定する外交員とは、事業主の委託を受け、継続的に事業主の商品等の購入の勧誘を行い、購入者と事業主との間の売買契約の締結を媒介する役務を自己の計算において事業主に提供し、その報酬が商品等の販売高に応じて定められている者」と解されています。

 なお、外交員報酬に該当するかどうかについては、本ブログ記事「外注費か給与か・・・国税庁の判断基準」をご参照ください。

2.外交員報酬と給与等

 外交員が支払を受ける報酬については、それぞれ次のように取り扱われます(所得税法基本通達204-22)。

(1) その報酬の額がその職務を遂行するために必要な旅費とそれ以外の部分とに明らかに区分されている場合
 旅費部分は非課税とし、それ以外の部分は給与等とします。

(2) 旅費とそれ以外の部分とに明らかにされていないで、その報酬が固定給とそれ以外の部分に区分されているとき
 固定給は給与等とし、それ以外の部分は外交員報酬とします。

(3) (1)及び(2)以外の場合
 その必要な旅費等の費用の多寡その他の事情を総合勘案し、給与等と認められるものはその総額を給与等とし、その他のものについてはその総額を外交員報酬とします。

 外交員が支払を受ける報酬が、給与等又は退職手当等に該当するものについては、それぞれ給与所得又は退職所得として源泉徴収を行います。
 外交員が支払を受ける報酬が、外交員報酬に該当するものについては、次のように源泉徴収を行います。

3.外交員報酬の源泉徴収税額の計算方法

 源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額は、外交員報酬の額から1か月当たり12万円(同月中に給与等を支給する場合には、12万円からその月中に支払われる給与等の額を控除した残額)を差し引いた残額に10.21%の税率を乗じて算出します。
(注)求めた税額に1円未満の端数があるときは、これを切り捨てます。

 源泉徴収税額={外交員報酬-(12万円-給与等)}×10.21%

 具体的には、以下のように計算します。

〈計算例1〉外交員報酬を20万円支払う場合
 (20万円-12万円)×10.21%=8,168円

〈計算例2〉外交員報酬20万円と給与5万円を支払う場合
 {20万円-(12万円-5万円)}×10.21%=13,273円

〈計算例3〉外交員報酬20万円と給与15万円を支払う場合
 {20万円-(12万円-12万円)}×10.21%=20,420円
(注)給与の額15万円が控除額12万円を超えるため、控除額の残額は0円となります。

4.留意事項

 外交員報酬の額の中に消費税及び地方消費税の額(以下「消費税等の額」といいます)が含まれている場合は、原則として、消費税等の額を含めた金額が源泉徴収の対象となります。ただし、請求書等において、外交員報酬の額と消費税等の額が明確に区分されている場合には、その外交員報酬の額のみを源泉徴収の対象とする金額として差し支えありません。 

 また、外交員報酬から源泉徴収した所得税及び復興特別所得税は、支払った月の翌月の10日までに納めなければなりません。
 支払者が源泉所得税の納期の特例の適用を受けている場合であっても、外交員報酬については、納期の特例の対象とはなりませんのでご注意ください。

白色申告者の事業専従者控除の留意点

 青色申告者である個人事業主が、その事業に従事する奥さんに給与を支払った場合、一定の要件の下にその給与を必要経費にできることはよく知られています。一方、白色申告者である個人事業主が、その事業に従事する奥さんに給与を支払っても、その給与は原則として必要経費になりません。
 しかし、白色申告者であっても、奥さんに支払った給与を必要経費にできる「事業専従者控除の特例」があります。
 今回は、この事業専従者控除について確認します。

1.事業専従者控除の要件

 白色申告者が事業専従者控除の適用を受けるためには、次の(1)と(2)の要件を満たす必要があります。

(1) 白色申告者の営む事業に事業専従者がいること
 事業専従者とは、次の要件の全てに該当する者をいいます。
① 白色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること
② その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること
③ その年を通じて6月を超える期間、その白色申告者の営む事業に専ら従事していること

(2) 確定申告書にこの控除を受ける旨やその金額など必要な事項を記載すること
 具体的には、確定申告書第二表の「事業専従者に関する事項欄」に記載します。

2.事業専従者控除額の計算方法

 事業専従者控除額は、次の(1)又は(2)の金額のどちらか低い金額です。

(1) 事業専従者が事業主の配偶者であれば86万円、配偶者でなければ専従者一人につき50万円
(2) この控除をする前の事業所得等の金額を専従者の数に1を足した数で割った金額(事業所得等÷(専従者の数+1))

 具体的には、以下のように計算します。

〈計算例1〉
事業所得150万円(収入600万円-経費450万円)、専従者1人(配偶者)の場合
(1)より、専従者が配偶者なので86万円
(2)より、150万円÷(1+1)=75万円
 したがって、この場合の専従者控除額は、86万円>75万円より75万円となります。

〈計算例2〉
事業所得200万円(収入800万円-経費600万円)、専従者1人(配偶者)の場合
(1)より、専従者が配偶者なので86万円
(2)より、200万円÷(1+1)=100万円
 したがって、この場合の専従者控除額は、100万円>86万円より86万円となります。

3.事業専従者控除の留意点

 事業専従者控除の留意点は、次のとおりです。

(1) 白色申告の事業専従者控除については、事前に税務署に届出をする必要はありません。
(2) 事業専従者控除の対象者は、配偶者控除や扶養控除の対象にはなれません。
(3) 事業専従者控除額は、その専従者(配偶者、親族)の給与所得に係る収入金額とみなされます。例えば、専従者が白色申告者の事業に従事する一方、空いた時間を利用して他でアルバイトをした場合には、事業専従者控除額とアルバイトで得た給与を合計した金額が、その専従者の年間給与収入となりますので注意が必要です。

個人が受け取る新型コロナ関連助成金等の課税・非課税の例示

 新型コロナウイルス感染症の影響により、国や地方公共団体から個人に対して助成金や給付金等が支給されています。今回は、こうした助成金等が所得税の課税対象となるかどうかについて確認します(参考;国税庁ホームページFAQ)。

1.新型コロナ関連助成金等の課税関係

 新型コロナウイルス感染症の影響に関連して、国等から支給される主な助成金等の課税関係は次のとおりです。

(1) 非課税とされるもの

① 支給の根拠となる法律が非課税の根拠となるもの

イ.新型コロナウイルス感染症対応休業支援金(雇用保険臨時特例法7条)
ロ.新型コロナウイルス感染症対応休業給付金(雇用保険臨時特例法7条)

② 新型コロナ税特法が非課税の根拠となるもの

イ.特別定額給付金 (新型コロナ税特法4条1号)
ロ.子育て世帯への臨時特別給付金 (新型コロナ税特法4条2号)

③ 所得税法が非課税の根拠となるもの

【学資として支給される金品(所得税法9条1項15号)】
イ.学生支援緊急給付金

【心身又は資産に加えられた損害について支給を受ける相当の見舞金(所得税法9条1項17号)】
イ.低所得のひとり親世帯への臨時特別給付金
ロ.新型コロナウイルス感染症対応従事者への慰労金
ハ.新型コロナウイルス感染症に感染したことによる見舞金
ニ.企業主導型ベビーシッター利用者支援事業の特例措置における割引券
ホ.東京都のベビーシッター利用支援事業における助成

※緊急事態宣言中にも事業継続が求められる感染リスクが高い事業に勤務しなければならない心身の負担が相当高い従業員に対する事業主からの見舞金。慶弔規定で定められており、社会通念上相当であるものに限る。感染リスクの大小にかかわらず支給されるものや、感染リスクが同じであるにもかかわらず、特定の者のみにだけ支給されるものは給与所得として課税される。

(2) 課税されるもの

① 事業所得等に区分されるもの

イ.持続化給付金(事業所得者向け)
ロ.小規模事業者持続化補助金(コロナ特別対応型〉
ハ.家賃支援給付金
ニ.農林漁業者への経営継続補助金
ホ.文化芸術・スポーツ活動の継続支援
ヘ.東京都の感染拡大防止協力金などの自治体独自の給付金
ト.雇用調整助成金
チ.小学校休業等対応助成金
リ.小学校休業等対応支援金

② 一時所得に区分されるもの

イ.持続化給付金(給与所得者向け)
ロ.しながわ活力応援給付金などの自治体独自の給付金

※東京都品川区は、外出自粛要請等に伴う区民の負担を軽減し、区全体の活力を取り戻すための取組として、2020年(令和2年)4月27日時点で品川区に住民登録のある区民に「しながわ活力応援給付金」を1人当たり3万円を給付。中学生以下の児童には2万円を加算して5万円を給付。4月28日以降に出生した子どもにも1人につき5万円を給付。

③ 雑所得に区分されるもの

イ.持続化給付金(雑所得者向け)

2.新型コロナに関連しない助成金等の課税関係

 新型コロナウイルス感染症の影響とは関係なく、国等から支給される主な助成金等の課税関係は次のとおりです。

(1) 非課税とされるもの

① 支給の根拠となる法律が非課税の根拠となるもの

イ.雇用保険の失業等給付(雇用保険法12条)
ロ.生活保護の保護金品(生活保護法57条)
ハ.児童(扶養)手当(児童手当法16条、児童扶養手当法25条)
ニ.被災者生活再建支援金(被災者生活再建支援法21条)

② 租税特別措置法が非課税の根拠となるもの

イ.簡素な給付措置(臨時福祉給付金)(措置法41条の81項1号)
ロ.子育て世帯臨時特例給付金(措置法41条の81項2号)
ハ.年金生活者等支援臨時福祉給付金(措置法41条の81項3号)

③ 所得税法が非課税の根拠となるもの

イ.学資として支給される金品(所得税法9条1項15号)
ロ.東京都認証保育所の保育料助成金(所得税法9条1項15号)
ハ.休業補償(所得税法9条1項17号)

※労働基準法76条により、労働者が業務上の負傷等により休業した場合に支給。

(2) 課税されるもの

① 事業所得等に区分されるもの

イ.肉用牛肥育経営安定特別対策事業による補てん金
ロ.小規模事業者持続化補助金(一般型)

② 一時所得に区分されるもの

イ.すまい給付金
ロ.地域振興券
ハ.通学先から支給される目的を特定していない支援金

③ 雑所得に区分されるもの

イ.企業主導型ベビーシッター利用者支援事業における割引券(通常時のもの)
ロ.東京都のベビーシッター利用支援事業における助成(通常時のもの)

④ 給与所得に区分されるもの

イ.慶弔規定によらない危険手当などの手当
ロ.休業手当
ハ.緊急事態宣言解除後相当期間経過後に支給が決定される事業主からの見舞金

※労働基準法26条により、使用者の責に帰すべき事由により休業した場合に支給。

テレワークで支出した費用は特定支出控除の対象となるか?

 新型コロナウイルス感染症の影響により、時間や場所を固定しない柔軟な働き方であるテレワーク(在宅勤務)が社会全体で急速に普及・定着しつつあります。
 そこで気になるのが、テレワークを取り入れる企業のサラリーマン(給与所得者)がテレワークのために支出した費用は、特定支出控除の対象になるかどうか、ということです。
 今回は、コロナ禍における特定支出控除について確認します。

1.特定支出控除の概要

 特定支出控除とは、給与所得者が次のような支出(以下「特定支出」といいます)をした場合、その年の特定支出の合計額が給与所得控除額の2分の1を超える場合、その超える部分について、確定申告により給与所得の金額の計算上控除することができる制度です。

項目 内容
通勤費 一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出
職務上の旅費 勤務する場所を離れて職務を遂行するために直接必要な旅費
転居費 転任に伴う転居のために通常必要であると認められる支出のうち一定のもの
研修費 職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出
資格取得費 職務に直接必要な資格を取得するための支出
帰宅旅費 単身赴任等で場合で、勤務地と自宅の間の旅行のために通常必要な支出のうち一定のもの
勤務必要経費 職務に関連する書籍・定期刊行物等の図書費、制服・事務服等の衣類及び職務上関係ある者に対する接待・供応・贈答等のための支出

2.特定支出控除の対象となるか?

 テレワーク(在宅勤務)を命じられたことに伴い、職務の遂行に直接必要なものとして次の費用を支出した場合、特定支出控除の対象となる勤務必要経費に該当するでしょうか?

(1) 机・椅子・パソコン等の備品購入のための費用
(2) 文房具等の消耗品の購入のための費用
(3) 電気代等の水道光熱費やインターネット回線使用のための費用
(4) インターネット上に掲載されている有料記事購入のための費用

 結論を先に述べると、上記のうち(4)のみが勤務必要経費に該当し、特定支出控除の対象になります。

 勤務必要経費は、①職務に関連する図書(書籍、新聞・雑誌その他の定期刊行物、不特定多数の者に販売することを目的として発行される図書)、②勤務場所において着用することが必要とされる衣服を購入するための支出、③給与等の支払者の得意先や仕入先などの職務上関係のある者に対する接待等のための支出のうち、その支出がその人の職務の遂行に直接必要なものとして給与等の支払者により証明されたものとされています。
 上記(1)~(4)の各費用のうち「(4) インターネット上に掲載されている有料記事」については、一般的に不特定多数の者に販売することを目的として発行されるものですので、勤務必要経費(図書費)に該当します。
 しかし、その他の費用は、上記①~③の勤務必要経費のいずれの支出にも該当しませんので、特定支出とはなりません。

離婚により自宅を財産分与した場合にかかる税金は?

 夫婦が離婚したとき、相手方の請求に基づいて一方の人が相手方に財産を渡すことを財産分与といいます。
 この財産分与の対象財産として、自宅(土地や建物)を相手方に渡すケースも多いと思います。
 今回は、離婚により夫が妻に自宅を財産分与した場合の課税関係についてみていきます。

1.財産分与をした者(夫)

(1) 譲渡所得として課税される

 結論を先に述べると、財産分与が自宅(土地や建物)で行われたときは、分与した人(夫)に譲渡所得の課税が行われることになります。

 夫は自宅を妻に渡しても、妻から金銭を受け取ることはありません。しかし、自宅という財産の移転は、夫の財産分与の義務を消滅させるものであり、それ自体が一つの経済的利益の享受といえます。
 したがって、その財産分与の義務の消滅という経済的利益を対価とする資産の譲渡があったものとして、夫に譲渡所得の課税が行われることになります。

(2) 譲渡所得の収入金額は?

 この場合、分与した時の自宅(土地や建物)の時価が譲渡所得の収入金額となります。

 民法768条の財産分与の規定による財産の分与として資産の移転があった場合には、その分与をした者(夫)は、その分与をした時において、そのときの価額により資産を譲渡したことになります。
 したがって、自宅という譲渡所得の基因となる財産を分与した場合は、その分与時の時価で自宅の譲渡をしたものとして、譲渡所得の計算を行うことになります。

(3) 居住用財産の譲渡所得の特例(3,000万円控除と軽減税率)の適用はあるか?

 自宅を財産分与した場合でも、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除及び軽減税率の特例を、夫は受けることができます。

 3,000万円特別控除と軽減税率の特例は、配偶者等の親族及び居住用財産の譲渡者から受ける金銭その他の財産によって生計を維持している者(以下「特殊関係者」といいます)への譲渡については、適用を受けることができません。つまり、夫から妻への自宅の譲渡は、特例の適用対象外ということになります。
 しかし、財産分与による資産の譲渡は、離婚後における譲渡になるため、親族(配偶者)に対する譲渡には該当しないこととなり、居住用財産の特例の適用を受けることができます。
 また、離婚に伴う財産分与として受け取っている金銭等により生計を維持している者は特殊関係者に該当しないことになるので、離婚後に養育費等の名目で元妻に金銭等を支払っている場合でも、元妻へ財産分与した自宅については、居住用財産の特例の適用を受けることができます。

2.財産分与を受けた者(妻)

(1) 財産分与により取得した自宅の取得費

 分与を受けた人(妻)は、分与を受けた日にその時の時価で自宅(土地や建物)を取得したことになります。

 自宅を財産分与した者(夫)の当初の取得費を引き継がないので、元妻が分与を受けた自宅を譲渡する際は、取得費として分与時の時価を算定する必要があります。
 また、財産分与を受けた日を基に、長期譲渡になるか短期譲渡になるかを判定することになります。

(2) 贈与税はかからない?

 離婚により相手方(夫)から自宅をもらった場合、通常、妻に贈与税がかかることはありません。

 離婚による財産分与によって取得した財産については、財産分与請求権(民法768条)に基づく財産の取得ですので、贈与により取得した財産とはなりません。つまり、相手方から贈与を受けたものではなく、夫婦の財産関係の清算や離婚後の生活保障のための財産分与請求権に基づき給付を受けたものといえます。
 したがって、原則として、財産分与を受けた者に贈与税はかかりません。

 ただし、次のいずれかに当てはまる場合には贈与税がかかります。

① 分与された財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額やその他すべての事情を考慮してもなお多過ぎる場合
 この場合は、その多過ぎる部分に贈与税がかかることになります。
② 離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合
 この場合は、離婚によってもらった財産すべてに贈与税がかかります。

低未利用土地等を譲渡した場合の100万円特別控除の創設

 空き地などの低未利用土地等が売却されずにそのまま放置され、都市が虫食い状にスポンジ化して問題となっています。
 そこで、2020年度(令和2年度)税制改正において、空き地の売却を促して有効活用を図るための特例措置が創設されました。
 保有期間が5年を超えていて売却額が500万円以下の土地を、市区町村長の確認を取得して親族や特別関係者以外へ譲渡した場合に、土地の売却益から最大100万円を控除するというものです。
 今回は、低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除制度について確認します。

1.適用対象となる譲渡の要件

(1) 要件

 特例措置の適用対象となる譲渡は、以下の要件に該当する譲渡とされています。

① 譲渡した者が個人であること
② 都市計画区域内にある低未利用土地又はその上に存する権利で、市区町村長の確認がされたもの
③ 譲渡の年の1月1日において所有期間が5年を超えるものの譲渡であること
④ 譲渡者の配偶者等、当該譲渡者と特別の関係がある者への譲渡でないこと
⑤ 低未利用土地等及び当該低未利用土地等とともにした当該低未利用土地等の上にある資産の譲渡の対価の額の合計が500万円を超えないこと
⑥ 一筆であった土地からその年の前年又は前々年に分筆された土地又は当該土地の上に存する権利の譲渡を当該前年又は前々年中にした場合において本特例措置の適用を受けていないこと

(2) 低未利用土地とは?

 上記(1)要件②における低未利用土地とは、都市計画法第4条第2項に規定する都市計画区域内にある土地基本法第13条第4項に規定する低未利用土地(居住の用、業務の用その他の用途に供されておらず、又はその利用の程度がその周辺の地域における同一の用途若しくはこれに類する用途に供されている土地の利用の程度に比し著しく劣っていると認められる土地)をいいます。

 具体的には、空き地(一定の設備投資を行わずに利用がされている土地を含みます)及び空き家・空き店舗等の存する土地をいいます。
 ただし、コインパーキングについては、一定の設備投資を行い、業務の用に供しているものであっても、譲渡後に建物等を建ててより高度な利用をする意向が確認された場合は、従前の土地の利用の程度がその周辺の地域における同一の用途又はこれに類する用途に供されている土地の利用の程度に比し著しく劣っており、低未利用土地に該当すると考えて差し支えないとされています。

(3) 市区町村長の確認とは?

 上記(1)要件②における市区町村長の確認は、以下のいずれも満たす必要があります。

① 当該土地が低未利用土地であること
② 買主が利用意向を有すること
③ 譲渡の年1月1日において所有期間が5年を超えること

 上記①~③の確認のために、市区町村長に提出する書類は次のとおりです。

  提出書類
①の確認 イ.別記様式①-1
ロ.売買契約書の写し
ハ.以下のいずれかの書類
 (イ) 所在市区町村等が運営する空き地・空き家バンクへの登録が確
認できる書類
 (ロ) 宅地建物取引業者が、現況更地・空き家・空き店舗である旨を表
示した広告
 (ハ) 電気、水道又はガスの使用中止日が確認できる書類
 (ニ) その他要件を満たすことを容易に認めることができる書類
②の確認 別記様式②-1(宅地建物取引業者の仲介により譲渡した場合)
別記様式②-2(宅地建物取引業者を介さず相対取引にて譲渡した場合)

※ 別記様式②-1 及び②-2 を提出できない場合に限り、別記様式③(宅地建物取引業者が譲渡後の利用について確認した場合)によっても確認可能とする。
③の確認 土地等に係る登記事項証明書

(4) 特別の関係がある者とは?

 上記(1)要件④における特別の関係がある者とは、次に掲げる者をいいます。

① 当該個人の配偶者及び直系血族
② 当該個人の親族(①を除く)で当該個人と生計を一にしているもの
③ 当該個人と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者及びその者の親族でその者と生計を一にしているもの
④ ①~③に掲げる者及び当該個人の使用人以外の者で当該個人から受ける金銭その他の財産によって生計を維持しているもの及びその者の親族でその者と生計を一にしているもの
⑤ 当該個人、当該個人の①及び②に掲げる親族、当該個人の使用人若しくはその使用人の親族でその使用人と生計を一にしているもの又は当該個人に係る③④に掲げる者を判定の基礎となる所得税法第2条第1項第8号の2に規定する株主等とした場合に法人税法施行令第4条第2項に規定する特殊の関係その他これに準ずる関係のあることとなる会社その他の法人

(5) 500万円を超えないとは?

 上記(1)要件⑤における譲渡対価500万円には、当該土地と当該土地を敷地とする建物等だけではなく、それらの固定資産税精算金も含みます。

(6) 分割譲渡等への適用制限

 上記(1)要件⑥は、分割譲渡等への適用を制限するために設けられています。なお、要件⑥を満たすことについて、市区町村長は 別記様式①-1 (低未利用土地等確認書)に記載することとされています。

2.適用対象期間

 本特例措置は、2020年(令和2年)7月1日から2022年(令和4年)12月31日までの間に上記1(1)の要件を満たした譲渡をした場合に適用を受けることができます。

持続化給付金の支給対象拡大と税理士の確認

1.税理士の役割が重要

 新型コロナウイルス感染症拡大により、特に大きな影響を受ける中小法人・個人事業者に対して、 事業の継続を下支えし再起の糧とするために、事業全般に広く使える 持続化給付金が支給されています。

 しかし、フリーランスを含む個人事業者については、 前年に事業所得として確定申告している者に対象が限られており、給与所得や雑所得として申告していた者は対象から外されていたため、批判の声がありました。

 そこで、経済産業省は2020年(令和2年)6月26日に、以下の事業者を新たに対象とすることを発表し、同月29日から申請の受付を開始しています(申請期間は2021年(令和3年)1月15日までです)。

(1) 主たる収入を 雑所得・給与所得 で確定申告した個人事業者
(2) 2020年(令和2年)1月~3月の間に創業した事業者

 (1)については、2019年分(令和元年分)の確定申告義務がない者など一部の場合は、税理士の確認を受けた申立書の提出が必要となっており、(2)についても、創業月から対象月までの事業収入を証明する書類について、税理士による確認が必要となっています。

 以下では、新たに対象とされた上記(1)及び(2)について、要件と必要書類等の確認をします。

2. 主たる収入を 雑所得・給与所得 で確定申告した個人事業者

(1) 要件

 以下の要件を満たす事業者が対象となります。

① 雇用契約によらない業務委託契約等に基づく収入であって、 雑所得・給与所得として計上されるもの(以下「業務委託契約等収入」といいます)を主たる収入として得ており、 今後も事業継続する意思がある(※ 確定申告で事業収入としていた事業者は現行制度で申請できます )
② 今年(令和2年)の対象月※1の収入が昨年(令和元年)の月平均収入と比べて50%以上減少している
③ 2019年(令和元年)以前から、被雇用者※2又は被扶養者ではない

※1 対象月は、2020年(令和2年)1月から申請を行う日の属する月の前月までの間で、2019年(令和元年)の月平均の業務委託契約等収入と比較して、業務委託契約等収入が50%以上減少した月のうち、ひと月を申請者が任意に選択できます。
 また、対象月の収入については、新型コロナウイルス感染症対策として地方公共団体から休業要請に伴い支給される協力金などの現金給付を除いて算定することができます。

※2 会社等に雇用されている方(サラリーマンの方、パート・アルバイ ト・派遣・日雇い労働等の方を含む。)をいいます。ただし、 2019年(令和元年)中に独立・開業した場合は対象になり得ます。

(2) 必要書類

 申請時には、以下の書類を提出します。

① 前年分(令和元年分)の確定申告書
② 今年(令和2年)の対象月の収入が分かる書類(売上台帳等)
③ ①の収入が、業務委託契約等の事業活動からであることを示す書類(下記イ~ハの中からいずれか2つを提出し、ロの源泉徴収票の場合はイとの組合せが必須です)
 イ.業務委託等の契約書の写し又は契約があったことを示す申立書※3
 ロ.支払者が発行した支払調書又は源泉徴収票
 ハ.支払があったことを示す通帳の写し
④ 国民健康保険証の写し
⑤ 振込先口座通帳の写し、本人確認書類の写し

※3 業務委託等の契約書がない場合は、契約があったことを示す申立書を契約先に書いてもらう必要があります。

3.2020年1月~3月の間に創業した事業者 (法人の場合)

(1) 要件

 以下の要件を満たす事業者が対象となります。

① 2020年(令和2年)4月1日時点において、次のいずれかを満たす法人であること。 ただし、組合若しくはその連合会又は一般社団法人については、その直接 又は間接の構成員たる事業者の3分の2以上が個人又は次のいずれかを 満たす法人であること。
イ.資本金の額又は出資の総額※1が10億円未満であること。
ロ.資本金の額又は出資の総額が定められていない場合は、常時 使用する従業員※2の数が2,000人以下であること。

② 2020年(令和2年)1月から3月の間に事業により事業収入(売上)を得ており、今後も 事業を継続する意思があること※3

③ 2020年(令和2年)4月以降、新型コロナウイルス感染症拡大の影響等により、2020年の法人を設立した日の属する月から3月の月平均の事業収入に比べて事業収入が50%以上減少した月(以下「2020新規創業対象月」という。)が存在すること※4

※1 「基本金」を有する法人については「基本金の額」と、一般財団法人については「当該法人に拠出されている財産の額」と読み替えます。

※2 「常時使用する従業員」とは、労働基準法第20条の規定に基づく「予め解雇の予告を必要とする者」を指します(パート、アルバイト、派遣社員、契約社員、非正規社員及び出向者については、当該条文をもとに個別に判断します。会社役員及び個人事業主は予め解雇の予告を必要とする者に該当しないため、「常時使用する従業員」には該当しません。) 。

※3 事業収入は、確定申告書(法人税法第二条第一項三十一号に規定する確定申告書を指す。以下同じ。)別表一における「売上金額」欄に記載されるものと同様の考え方によるものとします。

※4 「2020新規創業対象月」は、2020年(令和2年)4月から申請する月の前月までの間で、 前年同月比で事業収入が50%以上減少した月のうち、ひと月を任意で選択できます。
 「2020新規創業対象月」の事業収入については、新型コロナウイルス感染症対策として地方公共団体から休業要請に伴い支給される協力金などの現金給付を除いて算定することができます。
 また、2019年(令和元年)1月から12月の間に法人を設立した者であって、当該期間に事業による事業収入を得ておらず、2020年(令和2年)1月から3月の間に事業により事業収入を得ている場合は、2020年1月から3月の月平均の事業収入に比べて事業収入が50%以上減少した月(対象月)が存在する必要があります。

(2) 必要書類

 申請時には、以下の書類を提出します。

① 持続化給付金に係る収入等申立書(中小法人等向け)※5
② 通帳の写し
③ 履歴事項全部証明書(設立日が2020年1月1日から3月31日のものに限る)

※5 申立書は、2020年(令和2年)1月から対象月までの事業収入( 確定申告書別表一における「売上金額」欄に記載されるものと同様の考え方によるもの)を記載し、税理士による署名又は記名押印が必要です。
 また、持続化給付金に係る収入等申立書において2020新規創業対象月の月間事業収入が記載されるため、2020新規創業対象月の売上台帳は不要です。

4.2020年1月~3月の間に創業した事業者 (個人事業者の場合)

(1) 要件

 以下の要件を満たす事業者が対象となります。

① 2020年(令和2年)1月から3月の間に事業により事業収入(売上)を得ており、今後も 事業を継続する意思があること※1

② 2020年4月以降、新型コロナウイルス感染症拡大の影響等により、2020年の開業月から3月までの月平均の事業収入に比べて事業収入が50%以上減少した月(以下「2020新規開業対象月」という。)が存在すること※2

※1 事業収入は、証拠書類として提出する確定申告書(所得税法第二条第一項三十七号に規定する確定申告書を指す。以下同じ。)第一表における「収入金額等」の事業欄に記載される額と同様の算定方法によるものとします。

※2 「2020新規開業対象月」は、2020年4月から申請を行う日の属する月の前月の間で、ひと月を申請者が任意に選択できます。
 「2020新規開業対象月」の事業収入については、新型コロナウイルス感染症対策として地方公共団体から休業要請に伴い支給される協力金等の現金給付を除いて算出することができます。
 また、2019年(令和元年)1月から12月の間に開業した者であって、当該期間に事業による事業収入を 得ておらず、2020年1月から3月の間に事業により事業収入を得ている場合は、 2020年1月から3月の月平均の事業収入に比べて事業収入が50%以上減少した月(対象月)が存在する必要があります。

(2) 必要書類

 申請時には、以下の書類を提出します。

① 持続化給付金に係る収入等申立書(個人事業者等向け)※3
② 通帳の写し
③ 本人確認書類
④ 個人事業の開業・廃業等届出書※4
  ※開業日が2020年1月1日から3月31日まで
  ※提出日が2020年5月1日以前
  ※税務署受付印が押印されていること

 又は、事業開始等申告書※4
  ※事業開始日が2020年1月1日から3月31日まで
  ※提出日が2020年5月1日以前
  ※受付印等が押印されていること

※3 持続化給付金に係る収入等申立書(個人事業者等向け)において対象月の月間事業収入が記載 されるため、2020新規開業対象月の売上台帳は不要です。

※4 ④については、代替書類(開業日、所在地、代表者、業種、書類提出日の記載がある書類 )も認められています。

令和2年分から適用される基礎控除の改正と所得金額調整控除の新設

 2020年分(令和2年分)から適用される2018年度(平成30年度)改正事項には、給与所得控除・公的年金等控除・基礎控除の見直しと、所得金額調整控除の新設等があります。

 これらのうち、給与所得控除と公的年金等控除については前回確認しましたので、今回は基礎控除の改正と新たに設けられた所得金額調整控除について確認します。

1.基礎控除の改正

 給与所得控除額及び公的年金等控除額を一律10万円引き下げる一方、その分を基礎控除に振り替える形で、基礎控除額が一律10万円引き上げられて48万円(改正前は38万円)とされました。
 ただし、合計所得金額が2,400万円を超える個人についてはその合計所得金額に応じて基礎控除額を逓減し、合計所得金額が2,500万円を超える個人については基礎控除の適用はできないこととされました。

 この改正により、2020年分(令和2年分)以後の基礎控除額は、個人の所得金額に応じて下表のとおりとなります。

合計所得金額 基礎控除額
2,400万円以下 48万円
2,400万円超2,450万円以下 32万円
2,450万円超2,500万円以下 16万円
2,500万円超 0円(適用なし)

 なお、個人の所得金額が給与所得だけの場合は、給与等の収入金額が2,595万円のときに合計所得金額が2,400万円、給与等の収入金額が2,695万円のときに合計所得金額が2,500万円になります。
 したがって、給与等の収入金額が2,595万円を超え2,695万円以下の場合は基礎控除額は32万円又は16万円になり、2,695万円を超える場合には基礎控除の適用を受けることはできません。

 また、年末調整はその年中の給与等の収入金額が2,000万円以下の居住者について行われます。
 したがって、合計所得金額が2,400万円(収入金額2,595万円)を超えることはありませんので、給与所得以外の所得を有しない年末調整の対象者の基礎控除額はすべて48万円となります。

2.所得金額調整控除の新設

 給与所得控除の改正により、850万円を超える給与等の収入金額のある居住者については、給与所得控除額が一律10万円引き下げられたことに加え、その上限額が195万円とされたことにより、その居住者が特別障害者である場合や年齢23歳未満の扶養親族を有する場合等については負担が増加することが見込まれます。

 そのため、これらの者の経済的負担に配慮して一定額を給与所得の金額から控除する以下のような調整措置が設けられました。

(1) 対象者

 給与等の収入金額が850万円を超える居住者で次に掲げる者が対象です。

① その居住者本人が特別障害者に該当する者
② 年齢23歳未満の扶養親族を有する者
③ 特別障害者である同一生計配偶者又は扶養親族を有する者

(2) 控除額

 上記(1)に該当する居住者の総所得金額を計算する場合、給与等の収入金額(その金額が1,000万円を超える場合には1,000万円)から850万円を控除した金額の10%相当額を、給与所得の金額から控除します。
 つまり、給与所得の金額から最高15万円が控除されることになり、給与所得控除額の上限額の引き下げ25万円のうち一律引き下げの10万円を除く15万円に相当します。
 その結果、所得金額調整控除の適用がある場合の総所得金額は、給与所得の金額から所得金額調整控除を控除した残額により計算することになります。

(3) 計算例

 例えば、22歳の扶養親族を有する給与所得者の給与等の収入金額が900万円の場合、給与所得控除額は上限の195万円となり、給与所得控除後の給与等の金額は705万円(900万円-195万円)です。
 一方、所得金額調整控除額は、50万円(900万円-850万円)の10%の5万円となります。これを705万円から控除した700万円が給与所得金額になります。

(4) 留意点

 所得税法の扶養控除は、2以上の居住者の扶養親族に該当する者がある場合には、その者はこれらの居住者のうちいずれか一の居住者の扶養親族にのみ該当するものとみなすこととされています。
 しかし、所得金額調整控除にはそのようなみなし規定はありません。したがって、夫婦のそれぞれがその年の給与等の収入金額が850万円を超える居住者に該当し、その夫婦に23歳未満の扶養親族に該当する子がいるような場合は、その夫婦それぞれが所得金額調整控除の適用を受けることができます。

令和2年分から適用される給与所得控除と公的年金等控除の改正

 2018年度(平成30年度)改正で、給与所得控除や公的年金等控除を一律10万円引き下げる一方、その分を基礎控除に振り替える形で基礎控除が一律10万円引き上げられました。

 このような改正が行われた背景には、「特定の働き方等による収入にのみ適用される給与所得控除や公的年金等控除といった『所得計算上の控除』から、どのような働き方等による所得にでも適用される基礎控除等の『人的控除』に、負担調整のウェイトをシフトさせていくことが適当である」(平成29年11月・税制調査会中間報告)という考え方があります。つまり、多様な働き方を後押しするものといえます。

 今回は、2020年分(令和2年分)から適用される給与所得控除と公的年金等控除について確認をします。なお、2020年分(令和2年分)から適用される他の改正項目のうち、主なものは下表のとおりです。

配偶者控除・扶養控除 配偶者・扶養親族の合計所得金額基準38万円以下を48万円以下にする。
配偶者特別控除 配偶者の合計所得金額基準85万円以下を95万円以下にする。
青色申告特別控除 控除額を65万円から55万円にする。
※電子申告等の要件を満たす場合、控除額を65万円(基礎控除との控除合計額113万円)とする特例あり。
家内労働者等の事業所得の所得計算の特例 必要経費とする額を65万円から55万円とする。

1.給与所得控除の改正

 2020年分(令和2年分)から適用される給与所得控除の改正は次のとおりです。

(1) 給与所得控除額の一律10万円の引き下げ
(2) 給与所得控除額の上限額が適用される給与等の収入金額の850万円(改正前は1,000万円)への引き下げ、及びその上限額の195万円(改正前は220万円)への引き下げ
(3) 上記(1)及び(2)の見直しに伴い、給与所得の源泉徴収税額表の月額表と日額表、賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表及び年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表(別表2~5)の改正

 上記(1)及び(2)の改正により、改正後の給与所得控除額は下表のとおりとなります。

給与等の収入金額 改正後 改正前
162.5万円以下 55万円 65万円
162.5万円等180万円以下 収入金額×40%-10万円 収入金額×40%
180万円超360万円以下 収入金額×30%+8万円 収入金額×30%+18万円
360万円超660万円以下 収入金額×20%+44万円 収入金額×20%+54万円
660万円超850万円以下 収入金額×10%+110万円 収入金額×10%+120万円
850万円超1,000万円以下 195万円
1,000万円超 220万円

(留意点)
① 2020年(令和2年)以後、給与等の収入金額が1,195万円を超える給与所得者は、配偶者控除及び配偶者特別控除のいずれも適用が受けられません。
② 給与等の収入金額が660万円未満の場合の給与所得の金額は、給与等の収入金額から上表の算式により計算した給与所得控除額を控除した残額によらず、所得税法別表第5の「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」により、その給与等の収入金額に応じて掲げられている給与所得控除後の給与等の金額により求めた金額となります。

2.公的年金等控除の改正

 2020年分(令和2年分)から適用される公的年金等控除の改正は次のとおりです。

(1) 公的年金等控除額の一律10万円の引き下げ
(2) 公的年金等の収入金額が1,000万円を超える場合の控除額について、195万5,000円の上限を設ける
(3) 公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が1,000万円を超え2,000万円以下である場合の控除額が上記(1)及び(2)の見直し後の控除額から一律10万円引き下げ、公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額2,000万円を超える場合の控除額が上記(1)及び(2)の見直し後の控除額から一律20万円引き下げ

未婚のひとり親控除の新設と寡婦(夫)控除の改正

 2020年度(令和2年度)税制改正で、未婚のひとり親に対する税制上の措置及び寡婦(夫)控除の見直しが行われました。今回は、これらの改正等について整理します。

1.改正の概要

 改正の主な内容は、婚姻歴や性別にかかわらず、生計を一とする子(総所得金額が48万円以下)を有する単身者については、同一のひとり親控除(控除額35万円)が適用されることとなりました。

 それ以外の寡婦は、引き続き寡婦控除として控除額27万円を適用し、子以外の扶養親族を持つ寡婦も、男性の寡夫と同じように所得制限(合計所得金額が500万円以下)が設けられました。

 また、ひとり親控除、寡婦控除のいずれについても、住民票の続柄に「夫(未届)」「妻(未届)」の記載がある者、いわゆる事実婚は対象外となりました。

2.用語の意義(ひとり親、寡婦)

 改正後のひとり親と寡婦は、次のような者をいいます(改正後、寡夫控除はなくなります)。

(1) ひとり親
 ひとり親とは、現に婚姻をしていない者又は配偶者の生死の明らかでない一定の者のうち、①同一生計の子(総所得金額48万円以下)があり、かつ、②本人の合計所得金額が500万円以下で、かつ、③事実婚なしの3要件を満たす者をいいます。

(2) 寡婦
 寡婦とは、夫と離婚した後婚姻をしていない者のうち、①本人の合計所得金額が500万円以下で、かつ、②事実婚なしの2要件を満たす者をいいます。
 また、夫と死別した後婚姻をしていない者又は夫の生死の明らかでない一定の者のうち、①本人の合計所得金額が500万円以下で、かつ、②事実婚なしの2要件を満たす者をいいます。

3.改正前後の所得控除額

 改正前後の所得控除額は次のようになります。

(1) 本人が女性の場合(改正前)

配偶関係 死別 死別 離別 離別
本人所得 ~500万 500万~ ~500万 500万~
扶養親族 35万 27万 35万 27万
子以外 27万 27万 27万 27万
  27万

 

(2)本人が女性の場合(改正後)

配偶関係 死別 死別 離別 離別 未婚のひとり親
本人所得 ~500万 500万~ ~500万 500万~ ~500万
扶養親族 35万 35万 35万
子以外 27万 27万
  27万

※黄色部分がひとり親控除

(3) 本人が男性の場合(改正前)

配偶関係 死別 死別 離別 離別
本人所得 ~500万 500万~ ~500万 500万~
扶養親族 27万 27万
子以外
 

 

(4) 本人が男性の場合(改正後)

配偶関係 死別 死別 離別 離別 未婚のひとり親
本人所得 ~500万 500万~ ~500万 500万~ ~500万
扶養親族 35万 35万 35万
子以外
 

※黄色部分がひとり親控除

4.適用開始日

 これらの改正は、2020年(令和2年)分以後の所得税について適用されます。具体的には、2020年(令和2年)分以後の年末調整(令和2年分の年末調整については同年中に支払うべき給与等でその最後に支払をする日が同年4月1日以後であるものに限ります※1)及び確定申告※2において適用されます。
 また、月々の源泉徴収においては、2021年(令和3年)1月1日以後に支払うべき給与等及び公的年金等について適用されます。
 そのため、2020年(令和2年)分の源泉徴収事務においては、月々の給与等及び公的年金等に対する源泉徴収では改正前の控除が適用され、年末調整では改正後の控除が適用されることとなります。

※1 死亡退職等により、2020年(令和2年)中に支払うべき給与等でその最後に支払をする日が同年4月1日前であるものに係る年末調整については、改正前の控除が適用されます。

※2 公的年金等の受給者や※1のように改正前の控除が適用される年末調整の対象者
が、2020年(令和2年)分の所得計算において改正後の控除の適用を受けるためには、確定申告をする必要があります。