海外企業との契約書に印紙を貼る?貼らない?

 日本の印紙税法が適用されるのは、日本国内に限られます。では、海外企業との取引において交わす契約書に印紙を貼る必要はあるのでしょうか?
 今回は、海外企業との契約書に印紙を貼るのか否かについて確認します。

1.作成された場所は国内か海外か?

 例えば、日本の企業が日本国内にある不動産の売買契約を海外企業と交わす場合を考えてみます。
 まず、日本の企業が日本国内で売買契約書を2通作成し、日本側の代表者の署名押印をしたものを2通とも海外企業に郵送します。海外企業は現地でこれに署名し、そのうち1通を日本の企業に返送します。
 この場合、返送されてきた契約書に印紙を貼る必要はありません。なぜなら、契約書が作成された場所が国外だからです。

 繰り返しになりますが、日本の印紙税法が適用されるのは、日本国内に限られます。したがって、課税文書の作成が国外で行われる場合には、たとえその文書に基づく権利の行使(=不動産の売買)が国内で行われるとしても、また、その文書の保存が国内で行われるとしても、印紙税は課税されません。
 つまり、契約書のように双方が署名押印する方式で作成する文書は、いつ、どこで作成されたものであるかを判断すれば、課税となるかどうかが決まることになります。

2.いつ作成されたのか?

 上述したように、印紙を貼るか貼らないかは、いつ、どこで作成されたものであるかが判断基準になります。作成場所が海外であることはわかりましたが、今回のケースにおいては、どの段階で契約書が作成されたといえるのでしょうか(いつ、作成されたといえるでしょうか)?

 印紙税法の課税文書の作成とは、単なる課税文書の調製行為をいうのではなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これをその文書の目的に従って行使することをいいます。
 そのため、契約書のように当事者の意思の合致を証明する目的で作成する課税文書は、その意思の合致を証明する時になります。
 今回の売買契約書は、双方が署名押印する方式の文書ですから、日本の企業が契約書を作成してこれに署名押印した段階では、まだ契約当事者の意思の合致を証明する文書になりません。
 もう一方の契約当事者である海外企業が署名する時が課税文書の作成された時であり、その作成場所は海外ですから、この契約書には日本の印紙税法は適用されないことになります。
 つまり、日本の企業も海外企業も契約書に印紙を貼る必要はありません。

 また、返送されてきた契約書は、日本の企業で保存されることになりますから、いつ、どこで作成されたものであるかを明らかにしておかなければなりません。後日、印紙税が納付されていない契約書とみなされ、税務調査などでトラブルが発生することも予想されるからです。
 したがって、契約書上に作成場所を記載するとか、契約書上作成場所が記載されていなければ、別途その事実を付記しておく等の措置が必要になります。

 ちなみに、文書の作成方法が逆の場合、つまり、海外企業が海外で売買契約書を2通作成し、海外企業の署名をした上で2通とも日本の企業に送付し、これに日本の企業が日本で署名押印して1通を海外企業に返送する場合には、日本の企業が保存するものだけではなく、海外企業に返送する契約書にも印紙を貼る必要があります。

外交員報酬に係る源泉徴収税額の計算方法

 不動産業を営むA社の社長から、不動産外交員に支払う報酬の源泉徴収税額の計算方法を教えてほしいとのご依頼がありました。
 社長ご自身も、A社を設立する前は不動産外交員として報酬を受け取っていましたので、報酬から所得税と復興特別所得税を源泉徴収しなければならないことはご存じでしたが、その計算方法はご存じないようでした。
 今回は、外交員報酬に係る源泉徴収税額の具体的な計算方法について確認します。

1.外交員報酬とは?

 不動産や保険の外交員が、その地位に基づいて支払を受ける外交員報酬は、源泉徴収の対象とされます(所得税法第204条第1項第4号)。

 ここでいう外交員報酬に該当するかどうかについては、その支払を受ける者が、支払をする販売会社との間に会社法上の代理商契約に準ずる委任契約関係、すなわち媒介代理の契約関係にあるか否かにより決まります
 このような契約関係があれば、外交員報酬として源泉徴収の対象となりますが、このような継続的な契約関係がなく、単に斡旋をするにすぎないときは外交員報酬となりません。

※ 国税不服審判所の裁決(平11.3.11裁決、裁決事例集No.57 206頁)では、「所得税法第204条第1項第4号に規定する外交員とは、事業主の委託を受け、継続的に事業主の商品等の購入の勧誘を行い、購入者と事業主との間の売買契約の締結を媒介する役務を自己の計算において事業主に提供し、その報酬が商品等の販売高に応じて定められている者」と解されています。

 なお、外交員報酬に該当するかどうかについては、本ブログ記事「外注費か給与か・・・国税庁の判断基準」をご参照ください。

2.外交員報酬と給与等

 外交員が支払を受ける報酬については、それぞれ次のように取り扱われます(所得税法基本通達204-22)。

(1) その報酬の額がその職務を遂行するために必要な旅費とそれ以外の部分とに明らかに区分されている場合
 旅費部分は非課税とし、それ以外の部分は給与等とします。

(2) 旅費とそれ以外の部分とに明らかにされていないで、その報酬が固定給とそれ以外の部分に区分されているとき
 固定給は給与等とし、それ以外の部分(変動給)は外交員報酬とします。

(3) (1)及び(2)以外の場合
 その必要な旅費等の費用の多寡その他の事情を総合勘案し、給与等と認められるものはその総額を給与等とし、その他のものについてはその総額を外交員報酬とします。

 外交員が支払を受ける報酬が、給与等又は退職手当等に該当するものについては、それぞれ給与所得又は退職所得として源泉徴収を行います。
 外交員が支払を受ける報酬が、外交員報酬に該当するものについては、次のように源泉徴収を行います。

3.外交員報酬の源泉徴収税額の計算方法

 源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額は、外交員報酬の額から1か月当たり12万円(同月中に給与等を支給する場合には、12万円からその月中に支払われる給与等の額を控除した残額)を差し引いた残額に10.21%の税率を乗じて算出します。
(注)求めた税額に1円未満の端数があるときは、これを切り捨てます。

 源泉徴収税額={外交員報酬-(12万円-給与等)}×10.21%

 具体的には、以下のように計算します。

〈計算例1〉外交員報酬(変動給)を20万円支払う場合
 (20万円-12万円)×10.21%=8,168円

〈計算例2〉外交員報酬(変動給)20万円と給与(固定給)5万円を支払う場合
 {20万円-(12万円-5万円)}×10.21%=13,273円

〈計算例3〉外交員報酬(変動給)20万円と給与(固定給)15万円を支払う場合
 {20万円-(12万円-12万円)}×10.21%=20,420円
(注)給与の額15万円が控除額12万円を超えるため、控除額の残額は0円となります。

4.留意事項

 外交員報酬の額の中に消費税及び地方消費税の額(以下「消費税等の額」といいます)が含まれている場合は、原則として、消費税等の額を含めた金額が源泉徴収の対象となります。
 ただし、請求書等において、外交員報酬の額と消費税等の額が明確に区分されている場合には、その外交員報酬の額のみを源泉徴収の対象とする金額として差し支えありません。 

 また、外交員報酬から源泉徴収した所得税及び復興特別所得税は、支払った月の翌月の10日までに納めなければなりません。
 支払者が源泉所得税の納期の特例の適用を受けている場合であっても、外交員報酬については、納期の特例の対象とはなりませんのでご注意ください。

※ 関連記事:「ホステス等に支払う報酬・料金の源泉徴収税額の計算方法」、「セミナー講師料を支払った場合の源泉徴収

白色申告者の事業専従者控除の留意点

 青色申告者である個人事業主が、その事業に従事する奥さんに給与を支払った場合、一定の要件の下にその給与を必要経費にできることはよく知られています。一方、白色申告者である個人事業主が、その事業に従事する奥さんに給与を支払っても、その給与は原則として必要経費になりません。
 しかし、白色申告者であっても、奥さんに支払った給与の額に関係なく、一定金額での控除が認められる「事業専従者控除の特例」があります。
 今回は、この事業専従者控除について確認します。

1.事業専従者控除の要件

 白色申告者が事業専従者控除の適用を受けるためには、次の(1)と(2)の要件を満たす必要があります。

(1) 白色申告者の営む事業に事業専従者がいること
 事業専従者とは、次の要件の全てに該当する者をいいます。
① 白色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること
② その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること
③ その年を通じて6月を超える期間、その白色申告者の営む事業に専ら従事していること

(2) 確定申告書にこの控除を受ける旨やその金額など必要な事項を記載すること
 具体的には、確定申告書第二表の「事業専従者に関する事項欄」に記載します。

2.事業専従者控除額の計算方法

 事業専従者控除額は、次の(1)又は(2)の金額のどちらか低い金額です。

(1) 事業専従者が事業主の配偶者であれば86万円、配偶者でなければ専従者一人につき50万円
(2) この控除をする前の事業所得等の金額を専従者の数に1を足した数で割った金額(事業所得等÷(専従者の数+1))

 具体的には、以下のように計算します。

〈計算例1〉
事業所得150万円(収入600万円-経費450万円)、専従者1人(配偶者)の場合
(1)より、専従者が配偶者なので86万円
(2)より、150万円÷(1+1)=75万円
 したがって、この場合の専従者控除額は、86万円>75万円より75万円となります。

〈計算例2〉
事業所得200万円(収入800万円-経費600万円)、専従者1人(配偶者)の場合
(1)より、専従者が配偶者なので86万円
(2)より、200万円÷(1+1)=100万円
 したがって、この場合の専従者控除額は、100万円>86万円より86万円となります。

3.事業専従者控除の留意点

 事業専従者控除の留意点は、次のとおりです。

(1) 白色申告の事業専従者控除については、事前に税務署に届出をする必要はありません。
(2) 事業専従者控除の対象者は、配偶者控除や扶養控除の対象にはなれません。
(3) 事業専従者控除額は、その専従者(配偶者、親族)の給与所得に係る収入金額とみなされます。例えば、専従者が白色申告者の事業に従事する一方、空いた時間を利用して他でアルバイトをした場合には、事業専従者控除額とアルバイトで得た給与を合計した金額が、その専従者の年間給与収入となりますので注意が必要です。

印紙を貼り間違えたときは返金してもらいましょう

1.還付の対象となるもの

 本来の印紙税額を超えて多めに収入印紙を貼ってしまったときや、印紙を貼る必要のない文書に誤って収入印紙を貼ってしまったときなどは、印紙税の還付を受けることができます。
 具体的には、以下のようなケースが還付の対象になります。

(1) 請負契約書や領収書などの印紙税の課税文書に貼り付けた収入印紙が過大となっているもの
(2) 委任契約書などの印紙税の課税文書に該当しない文書を、印紙税の課税文書と誤認して収入印紙を貼り付けてしまったもの
(3) 印紙税の課税文書の用紙に収入印紙を貼り付けたものの、使用する見込みのなくなったもの

 なお、収入印紙は、印紙税の納付のみでなく、登録免許税やパスポート引換えの際の手数料又は訴訟費用の納付等多くの用途に用いられます。このうち、印紙税法第14条の規定により還付の対象になるのは、印紙を納付する目的で、印紙税の納付の必要がない文書に誤って印紙を貼り付けたり、課税文書に所定の金額を超える印紙を貼り付けたりした場合等です。
 したがって、印紙により納付することになっている登録免許税や訴訟費用等を納付するための文書に印紙を貼り付けたものは、たとえ誤って貼り付けたものであっても印紙の納付が目的ではないため、印紙税の還付を受けることができません。

2.還付を受ける方法

 印紙税法による還付を受けるためには、税務署に用意されている「印紙税過誤納確認申請書」に必要事項を記入のうえ、納税地の税務署長に提出します。この場合の納税地は、文書の種類や記載内容などによってそれぞれ異なる場合がありますので、ご注意ください(印紙税過誤納[確認申請・充当請求]手続については、国税庁ホームページを参照)。
 なお、還付の申請に当たっては、印紙税が過誤納となっている文書と印鑑、法人の場合は代表者印が必要となります。
 還付される税金は、銀行口座振込あるいは郵便局を通じての送金となるため、還付金を受け取るまでに若干の日数がかかります。
 また、過誤納した印紙税の還付を請求できるのは、その請求をすることができる日(文書を作成した日)から5年以内です。5年を経過すると、印紙税を含めた国税に係る過誤納金を国に請求できる権利は消滅します。

3.印紙税の納税地

 印紙税の納税地は、印紙を購入した場所ではありません。基本的には、課税文書にその作成場所が記載されている場合は、その作成場所が納税地になります(印紙税法第6条第4号)。
 しかし、契約書に「○○県○○市○○区○-○-○にて作成」というように、その作成場所を明確に記載することはあまりないと思われます。
 作成場所が明らかでない場合は、次のようにして納税地を決定します。

(1) 課税文書の作成者が1人の場合(単独作成)

 受取書等のように、課税文書の作成者が1人の場合で、その作成者の事業に係る事務所、事業所、その他これらに準ずるものの所在地が記載されている場合には、その所在地が納税地になります。
 また、事業に係る事務所等が記載されていない場合には、受取書等の作成時における作成者の住所(住所がない場合には居所)が納税地になります。

(2) 2人以上が共同で課税文書を作成した場合(共同作成)

 例えば、不動産売買契約書のように、売主と買主が共同で課税文書を作成した場合には、それぞれの作成者が課税文書を所持している場所が納税地となります。
 また、課税文書の作成者以外の者が課税文書を所持している場合は、その文書に最初に記載されている作成者の所在地又は住所地が納税地となります。

個人が受け取る新型コロナ関連助成金等の課税・非課税の例示

 新型コロナウイルス感染症の影響により、国や地方公共団体から個人に対して助成金や給付金等が支給されています。今回は、こうした助成金等が所得税の課税対象となるかどうかについて確認します(参考;国税庁ホームページFAQ)。

1.新型コロナ関連助成金等の課税関係

 新型コロナウイルス感染症の影響に関連して、国等から支給される主な助成金等の課税関係は次のとおりです。

(1) 非課税とされるもの

① 支給の根拠となる法律が非課税の根拠となるもの

イ.新型コロナウイルス感染症対応休業支援金(雇用保険臨時特例法7条)
ロ.新型コロナウイルス感染症対応休業給付金(雇用保険臨時特例法7条)

② 新型コロナ税特法が非課税の根拠となるもの

イ.特別定額給付金 (新型コロナ税特法4条1号)
ロ.子育て世帯への臨時特別給付金 (新型コロナ税特法4条2号)

③ 所得税法が非課税の根拠となるもの

【学資として支給される金品(所得税法9条1項15号)】
イ.学生支援緊急給付金

【心身又は資産に加えられた損害について支給を受ける相当の見舞金(所得税法9条1項17号)】
イ.低所得のひとり親世帯への臨時特別給付金
ロ.新型コロナウイルス感染症対応従事者への慰労金
ハ.新型コロナウイルス感染症に感染したことによる見舞金
ニ.企業主導型ベビーシッター利用者支援事業の特例措置における割引券
ホ.東京都のベビーシッター利用支援事業における助成

※緊急事態宣言中にも事業継続が求められる感染リスクが高い事業に勤務しなければならない心身の負担が相当高い従業員に対する事業主からの見舞金。慶弔規定で定められており、社会通念上相当であるものに限る。感染リスクの大小にかかわらず支給されるものや、感染リスクが同じであるにもかかわらず、特定の者のみにだけ支給されるものは給与所得として課税される。

(2) 課税されるもの

① 事業所得等に区分されるもの

イ.持続化給付金(事業所得者向け)
ロ.小規模事業者持続化補助金(コロナ特別対応型〉
ハ.家賃支援給付金
ニ.農林漁業者への経営継続補助金
ホ.文化芸術・スポーツ活動の継続支援
ヘ.東京都の感染拡大防止協力金などの自治体独自の給付金
ト.雇用調整助成金
チ.小学校休業等対応助成金
リ.小学校休業等対応支援金

② 一時所得に区分されるもの

イ.持続化給付金(給与所得者向け)
ロ.しながわ活力応援給付金などの自治体独自の給付金

※東京都品川区は、外出自粛要請等に伴う区民の負担を軽減し、区全体の活力を取り戻すための取組として、2020年(令和2年)4月27日時点で品川区に住民登録のある区民に「しながわ活力応援給付金」を1人当たり3万円を給付。中学生以下の児童には2万円を加算して5万円を給付。4月28日以降に出生した子どもにも1人につき5万円を給付。

③ 雑所得に区分されるもの

イ.持続化給付金(雑所得者向け)

2.新型コロナに関連しない助成金等の課税関係

 新型コロナウイルス感染症の影響とは関係なく、国等から支給される主な助成金等の課税関係は次のとおりです。

(1) 非課税とされるもの

① 支給の根拠となる法律が非課税の根拠となるもの

イ.雇用保険の失業等給付(雇用保険法12条)
ロ.生活保護の保護金品(生活保護法57条)
ハ.児童(扶養)手当(児童手当法16条、児童扶養手当法25条)
ニ.被災者生活再建支援金(被災者生活再建支援法21条)

② 租税特別措置法が非課税の根拠となるもの

イ.簡素な給付措置(臨時福祉給付金)(措置法41条の81項1号)
ロ.子育て世帯臨時特例給付金(措置法41条の81項2号)
ハ.年金生活者等支援臨時福祉給付金(措置法41条の81項3号)

③ 所得税法が非課税の根拠となるもの

イ.学資として支給される金品(所得税法9条1項15号)
ロ.東京都認証保育所の保育料助成金(所得税法9条1項15号)
ハ.休業補償(所得税法9条1項17号)

※労働基準法76条により、労働者が業務上の負傷等により休業した場合に支給。

(2) 課税されるもの

① 事業所得等に区分されるもの

イ.肉用牛肥育経営安定特別対策事業による補てん金
ロ.小規模事業者持続化補助金(一般型)

② 一時所得に区分されるもの

イ.すまい給付金
ロ.地域振興券
ハ.通学先から支給される目的を特定していない支援金

③ 雑所得に区分されるもの

イ.企業主導型ベビーシッター利用者支援事業における割引券(通常時のもの)
ロ.東京都のベビーシッター利用支援事業における助成(通常時のもの)

④ 給与所得に区分されるもの

イ.慶弔規定によらない危険手当などの手当
ロ.休業手当
ハ.緊急事態宣言解除後相当期間経過後に支給が決定される事業主からの見舞金

※労働基準法26条により、使用者の責に帰すべき事由により休業した場合に支給。

テレワークで支出した費用は特定支出控除の対象となるか?

 新型コロナウイルス感染症の影響により、時間や場所を固定しない柔軟な働き方であるテレワーク(在宅勤務)が社会全体で急速に普及・定着しつつあります。
 そこで気になるのが、テレワークを取り入れる企業のサラリーマン(給与所得者)がテレワークのために支出した費用は、特定支出控除の対象になるかどうか、ということです。
 今回は、コロナ禍における特定支出控除について確認します。

1.特定支出控除の概要

 特定支出控除とは、給与所得者が次のような支出(以下「特定支出」といいます)をした場合、その年の特定支出の合計額が給与所得控除額の2分の1を超える場合、その超える部分について、確定申告により給与所得の金額の計算上控除することができる制度です。

項目 内容
通勤費 一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出
職務上の旅費 勤務する場所を離れて職務を遂行するために直接必要な旅費
転居費 転任に伴う転居のために通常必要であると認められる支出のうち一定のもの
研修費 職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出
資格取得費 職務に直接必要な資格を取得するための支出
帰宅旅費 単身赴任等で場合で、勤務地と自宅の間の旅行のために通常必要な支出のうち一定のもの
勤務必要経費 職務に関連する書籍・定期刊行物等の図書費、制服・事務服等の衣類及び職務上関係ある者に対する接待・供応・贈答等のための支出

2.特定支出控除の対象となるか?

 テレワーク(在宅勤務)を命じられたことに伴い、職務の遂行に直接必要なものとして次の費用を支出した場合、特定支出控除の対象となる勤務必要経費に該当するでしょうか?

(1) 机・椅子・パソコン等の備品購入のための費用
(2) 文房具等の消耗品の購入のための費用
(3) 電気代等の水道光熱費やインターネット回線使用のための費用
(4) インターネット上に掲載されている有料記事購入のための費用

 結論を先に述べると、上記のうち(4)のみが勤務必要経費に該当し、特定支出控除の対象になります。

 勤務必要経費は、①職務に関連する図書(書籍、新聞・雑誌その他の定期刊行物、不特定多数の者に販売することを目的として発行される図書)、②勤務場所において着用することが必要とされる衣服を購入するための支出、③給与等の支払者の得意先や仕入先などの職務上関係のある者に対する接待等のための支出のうち、その支出がその人の職務の遂行に直接必要なものとして給与等の支払者により証明されたものとされています。
 上記(1)~(4)の各費用のうち「(4) インターネット上に掲載されている有料記事」については、一般的に不特定多数の者に販売することを目的として発行されるものですので、勤務必要経費(図書費)に該当します。
 しかし、その他の費用は、上記①~③の勤務必要経費のいずれの支出にも該当しませんので、特定支出とはなりません。

損害賠償金に消費税が含まれる場合の仕入税額控除

 損害賠償金は、原則として消費税の課税対象にはなりません。例えば、交通事故を起こして相手の自動車が破損した場合に、損害賠償金(示談金)として修理費相当額10万円を支払っても、消費税の計算上は仕入税額控除の対象になりません。
 では、相手から交付された損害賠償金の請求書に、消費税10%を含む11万円が記載されていた場合は仕入税額控除の対象となるのでしょうか?
 今回は、このようなケースについて確認します。

1.損害賠償金と消費税の基本的関係

 消費税は、国内において事業者が行った資産の譲渡等を課税対象としています。資産の譲渡等とは、事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供をいうことから、次の4要件を満たすものが国内取引の課税の対象となります(消費税法第4条1項)。

(1) 国内取引であること
(2) 事業者が事業として行うものであること
(3) 対価を得て行われるものであること
(4) 資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供であること

 そして、心身又は資産につき加えられた損害の発生に伴って受ける損害賠償金は、資産の譲渡等の対価に該当しないものとして、原則として不課税とされています。ただし、次のような、その実質が資産の譲渡等の対価に該当すると認められるものは、その名目にかかわらず消費税の課税対象となります(消費税法基本通達5-2-5)。

(イ) 損害を受けた資産等が加害者等に引き渡される場合の損害賠償金で、そのまま又は軽微な修理を加えることにより使用できる場合
(ロ) 特許権や商標権などの無体財産権の侵害につき加害者から収受する損害賠償金
(ハ) 不動産等の明渡し遅滞により加害者から収受する損害賠償金

 今回採り上げるケースは、上記(イ)~(ハ)のいずれにも該当しません。

2.損害賠償金に消費税を含めることの可否

 では、今回の本題に入ります。今回採り上げるのは、次のようなケースです。

 交通事故の損害賠償金として、被害者から自動車の修理代として請求された金額に消費税が含まれていた。修理代は被害者が修理業者に直接支払っており、修理業者の請求書の宛先も被害者となっている。この場合、加害者側でその損害賠償金を仕入税額控除の対象としていいのかどうか?

 ここで疑問が生じるのは、損害賠償金に消費税を含めていいのかどうか、ということです。
 この点については、当事者である被害者と加害者の合意内容によるべきものと考えます。例えば、被害者が課税事業者であり、仕入税額控除ができることをもって消費税抜きの金額にすることも、当事者間の合意があれば可能です。損害額の計算は、当事者間において損害額の算定をどうするかという合意内容によります。
 したがって、損害賠償金に消費税を含めて加害者に請求することについては、合意があれば特に問題はないといえます

3.仕入税額控除できるか?

 損害賠償金を支払った加害者側で仕入税額控除ができるかどうかを考えるにあたって、損害賠償金に消費税が含まれているか否かということは関係ありません。
 今回のケースでは、修理代を被害者が修理業者に直接支払っており、修理業者の請求書の宛先も被害者となっています。この場合、加害者が被害者に支払う損害賠償金は、損害の発生を起因としてその損害額の補填をする性格のものですから、対価性が無いものとして不課税になります。したがって、損害賠償金に含まれる消費税についても、仕入税額控除の対象にはなりません

 もし、今回のケースで、修理代を加害者が修理業者に直接支払っていて、修理業者の請求書の宛先も加害者となっている場合は、損害賠償金に含まれる消費税を加害者側で仕入税額控除ができます。修理業者に対価の支払いをし、自動車の修理という役務の提供を受けているからです(上記1の冒頭で述べた課税対象となる4要件を満たすからです)。

印紙の消印方法~意外に知らないことが多い!?

 顧問先様からの質問は多岐にわたります。会計のこと、税務のこと、経営のこと、融資のこと・・・。すぐに答えられるものもあれば、少し時間を頂いて調べてから答えるものもあります。
 先日も「契約書に貼った印紙の消印は、契約書に押した判子と同じものでしなければならないか?」というご質問を受けました。印紙の消印方法・・・?これまであまり考えたことがなく、なんとなく契約書に押印したものと同じ判子で消印していましたが、改めて問われると、本当にそれでいいのか疑問が生じました。
 そこで、調べてみると、国税庁ホームページ(質疑応答事例)に詳細な記載がありました。今回は、その内容を一問一答形式で紹介します。

1.消印する人は文書の作成者に限られるか?

 答えは「否」です。印紙税法施⾏令第5条では、印紙を消す⽅法は、⽂書の作成者⼜は代理⼈、使⽤⼈その他の従業者の印章⼜は署名によることになっています。
 したがって、消印する⼈は⽂書の作成者に限られておらず、作成者、代理⼈、使⽤⼈、従業者でもよいことになっています。

2.契約者が数⼈いる場合には、その全員で消印をしなければいけないか?

 答えは「否」です。消印は印紙の再使⽤を防⽌することを⽬的とするという趣旨のものですから、複数の⼈が共同して作成した⽂書に貼り付けた印紙は、その作成者のうち誰か1⼈の者が消せばよいことになっています。
 例えば、甲と⼄とが共同して作成した契約書については、甲と⼄の双⽅が消印しても甲と⼄のどちらか1⼈が消印しても差し⽀えありません(印紙税法基本通達第64条)。

3.契約書などに押した印で消印しなければならないか?

 答えは「否」です。上記1で見たように、印紙税法施⾏令第5条では、印紙を消す⽅法は、⽂書の作成者⼜は代理⼈、使⽤⼈その他の従業者の印章⼜は署名によることになっています。
 したがって、⽂書の消印は、その⽂書に押した印だけではなく、署名によることもできます。

4.斜線を引いて消印してもいいか?

 答えは「否」です。署名は⾃筆によるのですが、その表⽰は⽒名を表すものでも通称、商号のようなものでも構いません
 しかし、単に「印」と表⽰したり斜線を引いたりしてもそれは印章や署名には当たりませんから、消印したことにはなりません

5.ゴム印でも消印はできるか?

 答えは「正」です。消印は印紙の再使⽤を防⽌するためのものですから、それに使⽤する印章は通常印判といわれているもののほか、⽒名、名称などを表⽰した⽇付印、役職名、名称などを表⽰したゴム印のようなものでも差し⽀えありません(印紙税法基本通達第65条)。

6.鉛筆で消印してもいいか?

 答えは「否」です。印紙税の課税対象となる⽂書に印紙を貼り付けた場合には、その⽂書と印紙の彩紋とにかけて判明に印紙を消さなければならないことになっています(印紙税法第8条第2項)。⼀⾒して誰が消印したかが明らかとなる程度に印章を押し⼜
は署名することが必要であり、かつ、通常の⽅法では消印を取り去ることができないことが必要です。
 したがって、鉛筆で署名したもののように簡単に消し去ることができるものは、消印をしたことにはなりません

 これまでなんとなく消印していましたが、調べてみると、知らないことも多かったです。

9月分(10月納付分)から厚生年金保険の標準報酬月額の等級区分が改定されます

 2020年(令和2年)9月分(10月納付分)から、厚生年金保険の算定の基礎となる標準報酬月額の上限に、第32等級(標準報酬月額:650,000円)が追加されます。これに伴い、厚生年金保険の等級は現行の全31等級から全32等級となります。
 なお、健康保険の等級区分の改定はありません。

1.改定前の等級区分

 改定前の厚生年金保険の標準報酬月額の等級区分は、下表のとおりです。

等級 標準報酬月額 報酬月額
29 560,000 545,000 以上 575,000 未満
30 590,000 575,000 以上 605,000 未満
31 620,000 605,000 以上  

2.改定後の等級区分

 改定後の厚生年金保険の標準報酬月額の等級区分は、下表のとおりです。

等級 標準報酬月額 報酬月額
29 560,000 545,000 以上 575,000 未満
30 590,000 575,000 以上 605,000 未満
31 620,000 605,000 以上 635,000 未満
32 650,000 635,000 以上  

3.影響を受ける従業員

 厚生年金保険の第31等級に該当していた従業員のうち、報酬月額が635,000円以上の従業員は、2020年(令和2年)9月から第32等級に改定されます。保険料も9月分(10月納付分)から変更になります。
 原則として、給与からの控除は翌月から反映されます。したがって、9月分保険料は10月分給与から控除されます。
 しかし、給与からの控除を当月から反映させている会社もあります。この場合、9月分保険料は9月分給与から控除されます。
 いずれの場合も、給与から控除した9月分保険料は10月末に納付します(2020年(令和2年)9月分保険料は11月2日(月)に納付)。
 給与計算担当者はご注意ください。

役員報酬の前払いは定期同額給与(経費)になりません

 前回、「役員報酬の前払いは短期前払費用(経費)になりません」という記事を書きました。この記事では、翌期の役員報酬を当期に前払いしても、当期の経費にならないことを確認しました。
 では、当期の役員報酬を当期に前払いした場合は、その役員報酬は当期の経費になるのでしょうか。今回は、この点について確認します。

1.設例

 以下の簡単な例を設けて話を進めます。

【設例】
(1) A社(3月決算法人)は○年5月25日に定時株主総会を開き、代表取締役甲の5月26日から翌年5月25日までの役員報酬を1,200万円(月額100万円)とすることを決議をした。なお、支給日は各月25日である。

(2) A社は、○年6月25日に6月分の役員報酬100万円と7月分以降の残り11回分1,100万円を甲に支給した。その際、A社は次のように会計処理をした。

借方 金額 貸方 金額
役員報酬 100万円 現金預金 1,200万円
前払金 1,100万円    

(3) A社は、〇年7月25日以降の各支給日に次のように会計処理をした。

借方 金額 貸方 金額
役員報酬 100万円 前払金 100万円

 

2.定期同額給与になるか?

 法人税法第34条第1項第1号(役員給与の損金不算入)において、定期同額給与は次のように定義されています。

法人税法第34条 (役員給与の損金不算入)
 内国法人がその役員に対して支給する給与・・・のうち次に掲げる給与のいずれにも該当しないものの額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
1 その支給時期が1月以下の一定の期間ごとである給与・・・で当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるものその他これに準ずるものとして政令で定める給与(次号において「定期同額給与」という。)

 また、法人税基本通達9-2-12において、定期同額給与は次のように定められています。

9-2-12 法第34条第1項第1号《定期同額給与》の「その支給時期が1月以下の一定の期間ごと」である給与とは、あらかじめ定められた支給基準(慣習によるものを含む。)に基づいて、毎日、毎週、毎月のように月以下の期間を単位として規則的に反復又は継続して支給されるものをいう・・・。

 上記設例において、A社は甲に対して、7月以降も各支給日に毎月100万円を前払金から役員報酬へ振替えていますので、定期同額給与とすることに問題がないように見えます。
 しかし、税務調査の際には、次の指摘がされる可能性があります。

3.役員に対する貸付金又は賞与

 税務署は、定期同額給与の判定において、上記のように役員報酬が前払いされている場合はその理由を問うこととしており、通常、当該役員に一時金が必要だったと判断されるようです。
 そのため、役員報酬を前払いした場合は、役員に対する貸付金又は賞与と認定される可能性があります。