給与課税される通勤手当・切手の購入・軽油引取税の消費税の取扱い

1.所得税において給与課税される通勤手当

 通勤に通常必要であると認められる通勤手当・定期券等は、給与を支払う事業者の課税仕入れになります。
 所得税法上、非課税となる通勤手当には月額15万円の上限が設けられていますが、消費税ではこの上限にかかわりなく、通勤に通常必要であるかどうかで判断します。
 したがって、所得税において給与課税される月額15万円を超える部分の通勤手当は、通勤に通常必要なものであれば、消費税の課税仕入になります。

2.切手の購入は実務では課税仕入

 日本郵便株式会社等から購入する切手・はがきの消費税の取扱いは、原則的には購入時非課税仕入・使用時課税仕入となります。
 しかし、自社で使用する切手・はがきについては、購入と使用が繰り返し行われることから、上記のような購入時と使用時の原則処理を厳格に行っても、事務処理が煩雑になるだけです。
 そこで、以下の要件を満たす場合には、購入時に課税仕入とすることが認められています。

(1) 自ら引換給付を受けること(自社で使用すること)
(2) 継続して購入の日の属する課税期間の課税仕入としていること(継続適用すること)

3.軽油引取税が明記されていない場合

 軽油を購入した場合、軽油本体は消費税の課税取引、軽油引取税は不課税取引として会計処理します。
 例えば、消費税率を8%とすると、1,130円(税込)の軽油を購入した場合、レシートには軽油本体750円、軽油引取税320円、消費税60円などと記載されています。
 これを税込方式で仕訳すると、次のようになります(控除対象仕入税額は60円)。

(燃 料 費)810 (現金預金)1,130
(租税公課)320

 ところが、軽油引取税の額が請求書・領収書等に明記されていない場合は、軽油引取税も含めて全額が課税取引になります(消費税基本通達10-1-11)。
 この場合の仕訳は、次のようになります(控除対象仕入税額は1,130×8/108≒83円)。

(燃 料 費)1,130 (現金預金)1,130

不動産の貸付けでも事業所得となる場合

 不動産所得とは、不動産、不動産の上に存する権利、船舶又は航空機の貸付けによる所得をいいます。
 不動産の貸付けによる所得は、事業として行われている場合でも事業所得とはならずに不動産所得となります。
  一方で不動産の貸付けによる所得は、人的役務の提供が主になるものや事業に付随して行われるものについては、事業所得や雑所得に区分されるものもあります。
 不動産の貸付けから生じる所得で、その所得区分を迷いやすい例を以下に挙げます。

1.不動産所得となるもの

(1) アパート、賃貸マンション、貸家、駐車場などの家賃収入
(2) 地上権、借地権などの貸付け、設定による収入(借地権等の設定のうち、一定金額以上の権利金を収入し た場合は、譲渡所得となります)
(3) 総トン数20トン以上の船舶の貸付収入
(4) 広告等のため、土地、家屋の屋上や側面などを使用させる場合の賃貸収入

2.事業所得又は雑所得となるもの

(1) ホテル、賄いつき下宿、時間貸し駐車場や自転車預り業の収入(事業又は雑)
(2) 従業員宿舎の収入(事業)
(3) 総トン数20トン未満の船舶の貸付収入(事業又は雑)
(4) 浴場業、飲食業における広告の掲示による収入(事業)

賃貸期間の経過に応じて返還しないこととなる敷金

1.不動産所得の収入計上時期

 不動産を賃貸したことにより収受する地代・家賃、共益費などは、契約や慣習などにより支払日が定められている場合はその定められた支払日、支払日が定められていない場合は実際に支払を受けた日(ただし、請求があったときに支払うべきものと定められているものは、その請求の日)に不動産所得の収入金額に算入します。
 また、不動産を賃貸することにより一時に受け取る権利金や礼金は、貸し付ける資産の引渡しを必要とするものは引渡しのあった日、引渡しを必要としないものについては、契約の効力発生の日に収入金額に算入します。

 一方、敷金や保証金は本来は預り金ですから、受け取っても収入にはなりませんが、返還を要しないものは、返還を要しないことが確定した日にその金額を収入金額に算入する必要があります。

2.賃貸期間の経過に応じて返還しないこととなる敷金

 不動産の賃貸の際に収受する敷金や保証金は、原則として退去時に借主に返還しますので、不動産所得の計算上その預かった年分の収入金額には算入しません。
 しかし、敷金・保証金について、賃貸期間の経過に応じて返還しない金額が増加する定めとなっている場合は、その増加する部分の金額をそれぞれの年分の収入金額に算入する必要があります。
 以下の具体例で、収入金額に算入する部分の金額を確認します。

(1) 賃貸借契約の内容

 2019年(平成31年)3月6日に収受した敷金が400,000円で、敷金の返還条件が次の場合。

①1年以内に解約したときは、敷金の10%を返還しない
②2年以内に解約したときは、敷金の15%を返還しない
③2年を超えて解約したときは、敷金の20%を返還しない

(2) 収入金額に算入する部分の金額

①の場合
400,000円×10%(居住期間にかかわりなく返還しない割合を乗じます)=40,000円を、2019年(平成31年分)の収入金額に算入します。

②の場合
400,000円×(15%-10%)=20,000円を、2020年(平成32年分)の収入金額に算入します。

③の場合
400,000円×(20%-10%-5%)=20,000円を、2021年(平成33年分)の収入金額に算入します。

 不動産所得の計算をするときは、敷金のすべてを預り金として処理する前に、敷金の返還条件を契約書で確認しておく必要があります。

日本フルハップの会費は法人と個人で経理処理が異なる!

1.法人と個人で異なる経理処理

 2018年分(平成30年分)の確定申告から新規に関与先となった個人事業主の方から、前年の確定申告書を見せていただきました。前年まではその方のお父さんが確定申告(事業所得)をされていたのですが、ご高齢のため会計事務所に依頼したとのことでした。

 確定申告書以外に出納帳等も見せていただいたのですが、ご自身が加入されている日本フルハップの会費の全額を必要経費に算入されていることに気づきました。
 法人の場合は、会費(加入者1名につき月額1,500円)の全額を損金算入することができるのですが、個人事業の場合は、加入者が誰であるかにより経理処理が異なります。

2.会費の経理処理

 日本フルハップの会費は指定の信用金庫の口座から自動振替されますが、その経理処理は以下のようになります。

(1) 法人事業所(振替口座は法人名義)の場合

 →全額損金に計上します(勘定科目は「諸会費」等)

(2) 個人事業所(振替口座は事業主名義)の場合

① 事業主及び事業主と生計を一にする配偶者その他の親族が加入者の場合
 →保険料相当部分(852円)は事業主個人の負担となり(勘定科目は「事業主貸」等)、保険料相当部分以外(648円)は必要経費に算入します(勘定科目は「諸会費」等)

② その他の加入者の場合
 →全額必要経費に算入します(勘定科目は「諸会費」等)

 なお、消費税については、法人・個人ともに同じ扱いになり、会費に消費税は含まれません(保険料相当部分は非課税、保険料相当部分以外は不課税)。

 2013年(平成25年)4月以降の会費から、上記のように変わっていますので、ご注意ください。

複数の課税文書に該当する場合の「所属の決定」

1.複数の課税文書に該当する場合

 契約書に貼る印紙の額は、印紙税額一覧表(課税物件表)を見ればわかります(参考:国税庁ホームページ「印紙税額一覧表」)。
 例えば、不動産売買契約書なら第1号文書、工事請負契約書なら第2号文書に該当しますので、これらの契約書に記載された金額によりそれぞれの印紙税額が決まります。

 しかし、実際の商取引の現場で作成される契約書には、複数の課税文書の要件に当てはまるケースも少なくありません。
 例えば、1年間の保守契約を締結する場合、保守作業を請け負うという契約は「請負に関する契約書」となり第2号文書に該当します。また、1年間継続して保守作業を行うという契約ですから「継続的取引の基本となる契約書」となり第7号文書にも該当します。 

 このように複数の課税文書に該当する場合は、最終的にどちらか一方の文書に該当することとされています(どちらの文書に該当するかの判定を「所属の決定」といいます)。
 所属の決定については、印紙税法別表第一課税物件表の適用に関する通則及び印紙税法基本通達に規定されています(参考:国税庁ホームページ「印紙税法別表第一課税物件表の適用に関する通則」、「印紙税法基本通達」)。 

2.所属の決定の具体例

 複数の課税文書の要件を満たす場合、最終的にどの課税文書に該当するかについての判定の仕方は、上記の印紙税法別表第一課税物件表の適用に関する通則及び印紙税法基本通達に規定されていますが、おおむね印紙税額が大きくなる方の文書に該当するように措置されているようです。

 以下に、実際の契約書でよくあるケースについて、所属の決定例を紹介します。

(1)第1号又は第2号文書と第3号から第17号までの文書に該当する場合(ただし、下記(2)又は(3)に該当する文書は除く)・・・第1号又は第2号文書

(例1)不動産及び売掛債権の譲渡契約書(第1号文書と第15号文書)→第1号文書
(例2)請負工事の内容とその代金の受領事実を記載した契約書(第2号文書と第17号文書)→第2号文書

(2)第1号又は第2号文書で契約金額の記載のないものと第7号文書に該当する場合・・・第7号文書

(例)継続する物品運送についての基本的な事項を定めた記載金額のない契約書(第1号文書と第7号文書)→第7号文書

(3)第1号文書と第2号文書に該当する場合(ただし、(4)に該当する文書は除く)・・・第1号文書

(例)機械製作及びその機械の運送契約書(第2号文書と第1号文書)→第1号文書

(4)第1号文書と第2号文書に該当する文書で、その文書にそれぞれの契約金額が区分記載されており、第2号文書についての契約金額が第1号文書についての契約金額を超えるもの・・・第2号文書

(例)機械製作費200万円及びその機械の運送料10万円とが区分記載されている請負及び運送契約書→第2号文書

住民税・事業税における青色申告特別控除の取扱い

1.住民税のみの申告でも青色申告特別控除を適用できるか?

 所得税の申告義務がない人も住民税の申告は必要です。
 給与所得者と公的年金等受給者の確定申告不要制度は、所得税(国税)における規定であり、住民税(地方税)にはこの規定はありません。そのため、所得税では申告不要とされた20万円以下の所得は、住民税では申告が必要です。
 
 では、所得税の確定申告書を提出していない人が住民税の申告をする場合、青色申告特別控除の適用はできるのでしょうか?

 青色申告特別控除については、所得税申告書の提出は要件となっていません。したがって、所得税の申告義務がない人が住民税の申告のみを行う場合、当該年分について青色申告の承認を受けていれば、住民税においても青色申告特別控除額(10万円)を控除できます(租税特別措置法25の2①、地方税法313条②)。

2.事業税における青色申告特別控除

 事業税では、青色申告特別控除の特例措置が講じられていないので、課税標準となる事業の所得は、青色申告特別控除額を控除しないで算定します。

上場株式等の配当の申告不要制度は損益通算時も適用可能

1.申告分離課税

 2009年(平成21年)1月1日以後に支払を受けるべき上場株式等の配当所得については、総合課税に代えて申告分離課税により確定申告をすることができます。
 申告分離課税を選択した場合の留意点は次の通りです。

(1) 総合課税を選択した場合は配当控除の適用がありますが、申告分離課税を選択した場合は配当控除を適用することができません。

(2) その年分に生じた上場株式等の譲渡損失の金額と損益通算ができます。
 例えば、その年分のA株式の配当100とB株式の譲渡損失90を損益通算して、配当所得を10とすることができます。

(3) 前年以前3年以内に生じた上場株式等の譲渡損失を繰越控除することができます。
 例えば、その年分の配当100と3年前に生じた譲渡損失90を損益通算して、その年分の配当所得を10とすることができます。

(4) 確定申告をする上場株式等の配当所得のすべてについて、総合課税と申告分離課税のいずれかを選択しなければなりません。
 例えば、A株式は総合課税、B株式は申告分離課税という選択はできず、A・B株式ともに総合課税又はA・B株式ともに申告分離課税という選択をしなければなりません。

2.申告不要制度

 上場株式等の配当については、確定申告をしないで20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)の税率による源泉徴収だけで課税関係を終了させることができます。
 申告不要制度を選択した場合の留意点は次の通りです。

(1) 上記1.(4)にある通り、上場株式等の配当所得のすべてについて総合課税と申告分離課税のいずれかを選択しなければなりませんが、1銘柄1回に支払われる配当等ごとに申告不要の特例を適用し、上場株式等の配当所得に算入せずに申告することは可能です。
 例えば、A・B株式ともに申告分離課税を選択している場合に、A株式の中間配当については申告分離課税で申告し、A株式の期末配当については申告不要とすることは可能です。
 なお、特定口座(源泉徴収選択口座)内配当等について申告不要の特例を適用する場合には、特定口座単位で行うことになります。

(2) 上記1.(2)(3)の損益通算の適用を受けるために確定申告書を提出する場合にも、申告不要の特例を適用することができます。
 例えば、A株式の配当60、B株式の配当40、C株式の譲渡損失90を損益通算して、60+40-90=10をその年分の配当所得とすることもできますし、B株式の配当40を申告しないで60-90=△30の譲渡損失を翌年に繰り越すこともできます(この場合、A株式の配当は0となり、その年分の配当所得は0となります)。

自動車売買における消費税の取扱いーリサイクル預託金と未経過自動車税

1.自動車リサイクル預託金の譲渡は5%を課税売上割合の分母へ

 2014年度(平成26年度)税制改正で課税売上割合の計算上、金銭債権の譲渡が行われた場合、有価証券の譲渡等があった場合と同様に譲渡対価の5%を分母に含めることとされました。
 この金銭債権には自動車リサイクル預託金(リサイクル料金から資金管理料金を除く部分)も対象となっています。

 自動車リサイクル預託金は、使用済自動車から発生する廃棄物の処理やリサイクルを行うための費用として車両の購入者が支払い、廃車まで資金管理法人(自動車リサイクル促進センター)により管理運用される仕組みです。 

 リサイクル預託金は、消費税の課税実務上は次のように処理されます。

 (1) 自動車の取得時・・・不課税
 (2) 中古車の譲渡時・・・非課税売上
 (3) 自動車の廃車時・・・課税仕入

 注意を要するのは(2)です。中古車を販売した場合のリサイクル預託金は非課税売上となりますが、課税売上割合の計算上は、譲渡対価全額ではなくその5%相当額のみを分母に含めることとなります。

2.中古車売買時の未経過自動車税等の消費税の処理

 顧問先の会計担当者の方から、年に数回、車両売買時の仕訳を聞かれることがあります。その際、注意しなければならないのは、自動車税等の消費税の取扱いです。
 自動車税は、その年4月1日(賦課期日)における自動車の所有者に対し、翌年3月31日までの1年分が課税されます。年の中途で中古車の売買をする場合は、売買時から年度末までの未経過期間分の自動車税を精算することが商慣行となっています。 

 自動車税の精算金は法律等で義務付けられたものではないので、売買する中古車の譲渡対価に含めることとされています(消費税基本通達10-1-6)。つまり、自動車税の精算金は租税ではなく、車両の譲渡対価の一部を構成するものとして取扱います。
 したがって、消費税については、譲渡者が受け取る精算金は課税売上げ、購入者が支払う精算金は課税仕入れとして処理することになります。

 また、自賠責保険料の未経過期間分について精算する場合も同様です。

固定資産税の前納報奨金と還付金の処理

1.固定資産税の前納報奨金の所得区分は?

 固定資産税は、通常年4回(原則として4月、7月、12月、2月ですが、市町村によって若干異なります)に分けて納付することになっていますが、第1回目の納期に全期分を前納した場合には、市税に未納がないことなどを条件に、年税額から前納報奨金を差し引いて納付することができます。
 この前納報奨金は所得になるのですが、その所得区分は、固定資産税の課税客体である固定資産の用途によって異なりますので、注意が必要です。
 事業用固定資産に係る固定資産税は必要経費となりますので、その前納報奨金は事業所得の収入金額になります。
 一方、業務用以外の固定資産に係る前納報奨金は、利息としての性格もなくその他の対価性もないため、一時所得となります。

2.過去の年分で必要経費に算入した固定資産税の還付を受けた場合

 土地・家屋(建物)の評価・課税誤りによって固定資産税を納め過ぎた場合に、その過徴収金が遡って還付される場合があります。
 固定資産税は不動産所得の計算上必要経費に算入されますが、過去の年分で必要経費に算入していた固定資産税が還付された場合は、貸付の規模によって処理が異なります。
 貸付の規模が業務的規模の場合には、過去において過大計上していた租税公課を減額する修正申告の手続きが必要となります。
 貸付の規模が事業的規模の場合には、その還付された年分の収入金額に算入します。

再居住した場合の住宅借入金等特別控除

1.再居住した場合の適用要件

 住宅借入金等特別控除の適用を受けていた方が、2003年(平成15年)4月1日以降に転任命令に伴う転居等により控除が受けられなくなった後、その家屋に再び居住した場合は、次の要件を満たすことにより再居住年以後の年について、住宅借入金等特別控除の適用を受けることができます。

(1) 転居の事由等

 勤務先からの転任の命令に伴う転居、その他これに準ずるやむを得ない事由により、その家屋を居住の用に供さなくなったこと

(2) 居住の用に供さなくなる日までに必要な手続

 「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」、未使用の「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」、「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」を所轄税務署に提出

(3) 再適用をする最初の年分の必要書類

 「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書(再び居住の用に供した方用」、「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」、「住民票の写し」

(4) 再適用の制限

 再び居住の用に供した日の属する年に、その家屋を賃貸の用に供していた場合には、翌年以後の年についてこの特例の再適用が可能

2.再居住した場合の留意点

 したがって、例えば転地療養のため、家族全員で一時実家に移り住んだ場合には、「再居住の場合の再適用の特例」は受けられません。
 転地療養は、勤務先からの転任命令のような外的要因ではなく個人的事情であるため、上記要件の「やむを得ない事由」に該当しないからです。

 また、転勤が解消し再居住した年に賃貸していた場合に、年末時点では居住しているとして控除を受けることはできません。控除は翌年からとなりますので、ご注意ください。