交通費込み給与の交通費部分は確定申告でも非課税にできない

1.交通費込み給与の交通費は所得税の課税対象

 給与所得者にとって、月15万円までの交通費(通勤手当)には所得税がかからないということは、当たり前のように思われています。しかし、交通費込みで給与の支給を受けている場合は、交通費部分を非課税とすることはできません。

 所得税法第9条(非課税所得)には、「給与所得を有する者で通勤するものがその通勤に必要な交通機関の利用又は交通用具の使用のために支出する費用に充てるものとして通常の給与に加算して受ける通勤手当(これに類するものを含む。)のうち、一般の通勤者につき通常必要であると認められる部分として政令で定めるもの 」と規定されています。

 ここで注目すべき点は、通常の給与に「加算して」支給される交通費が非課税になるということです。
 したがって、交通費込みで給与の支給を受けている場合には、交通費を含めた全額が給与として所得税の課税対象になります。

2.確定申告で交通費部分を非課税とできるか?

 では、確定申告を行って、交通費込みで支給された給与から、交通費部分を抜き出して非課税とすることはできるのでしょうか?

 これについては、2008年(平成20年)の国税不服審判所の裁決(裁決事例集No.75)で、「通常の給与に加算して通勤手当等が支給されていない場合には、たとえ通勤者が通常の給与のうちから通勤費相当額を負担したとしても、(中略)、当該通勤費相当額を、非課税所得として給与等の収入金額から除外することはできない」とされています。

建物・土地の貸付けの事業的規模の判定と65万円控除

1.事業的規模か業務的規模か

(1) 形式基準(5棟10室)による判定

 不動産所得を生ずべき建物や土地の貸付けが「事業的規模」か「事業的規模に至らない(業務的規模)」かにより、事業専従者給与や青色申告特別控除等の取扱いが異なります。
 事業的規模の判定は、社会通念上事業と称する程度の規模で建物や土地の貸付けを行っているかどうかにより判断することとされていますが、次に該当する場合は、特に反証がない限り、事業として行われていると判断します(形式基準)。

① 建物の場合

イ.貸間、アパート(棟割長屋を含みます)については、独立した室数がおおむね10室以上であること

ロ.独立家屋(①は除きます)の貸付けについては、おおむね5棟以上であること

② 土地の場合

 土地、駐車場の契約件数が、おおむね50件以上であること(1室の貸付けに相当する土地の契約件数を、おおむね5件として判定します)

 例えば、貸室数が7室と貸地の契約件数が20件の場合は、建物と土地を別個に判定するのではなく、貸室7室+(貸地20件÷5件=4室)=11室として事業的規模と判定します。

(2) 実質基準による判定は難しい

 なお、実質基準として、賃貸料の収入の状況、貸付資産の管理の状況等からみて、上記の形式基準(いわゆる5棟10室基準)に準ずる事情があると認められる(賃貸収入が比較的多額、かつ、不動産管理の事務量を相当要する)場合は、原則として事業的規模と判定されます。
 しかし、実質基準での判定は、事業所得の性質として掲げられる営利性・有償性、反復・継続性、自己の危険と計算における事業遂行性、精神的・肉体的労力の程度、人的・物的設備の有無などを総合的に判断することになり、非常に難しいといえます。

※ 実質基準により事業的規模と判定された事例については、本ブログ記事「5棟10室未満でも不動産貸付が事業的規模とされた事例」をご参照ください。

2.業務的規模の不動産所得でも65万円控除できる?!

 上記のように、一般的には不動産所得の規模は形式基準によって判定します。その結果、事業的規模に至らない業務的規模と判定された不動産所得は、最高10万円の青色申告特別控除しか受けることができません(措法25の2①)。 

 しかし、業務的規模の不動産所得でも65万円の青色申告特別控除を受けられる場合があります。

 以前の記事で紹介したように、65万円の青色申告特別控除の要件に、「事業的規模の不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営む者であること」という項目があります(65万円の青色申告特別控除の要件については、本ブログ記事「青色申告特別控除と青色申告承認申請書の提出期限の注意点」を参照)。
 これは、不動産所得が事業的規模でない場合であっても、65万円控除の要件を具備する事業所得がある場合には、65万円の青色申告特別控除を適用することができることを意味します(措法25の2③)
 したがって、例えば事業所得が赤字で、不動産所得が事業として行われていない場合でも、不動産所得から65万円の特別控除ができます。

セルフメディケーション税制における「一定の取組」の留意点

1.「一定の取組」の具体例

 2017年(平成29年)1月1日よりセルフメディケーション税制が施行され、従来の医療費控除との選択適用ができるようになりました。
 この税制を利用するためには、次の要件を満たす必要があります。

(1) 所得税及び住民税の課税対象者であること
(2) 年間でスイッチOTC医薬品を1万2千円超購入していること(同一生計者の購入額を合算可能)
(3) 確定申告を行う者が健康の保持増進及び疾病の予防への一定の取組を行っていること

 上記要件のうち(3)の「一定の取組」とは、具体的には以下のものが該当します。

① 保険者(健康保険組合、市区町村国保等)が実施する健康診査
 保険事業や健康増進事業として行われる人間ドック、各種健(検)診等
② 市区町村が健康増進事業として行う健康診査
 生活保護受給者等を対象とする健康診査
③ 予防接種
 高齢者の肺炎球菌感染症及びインフルエンザの予防接種並びに任意のインフルエンザの予防接種
④ 勤務先で実施する定期健康診断
 事業主検診
⑤ 特定健康診査、特定保健指導
 いわゆるメタボ検診
⑥ 市町村が健康増進事業として実施するがん検診
 市町村が健康増進事業として行う乳がん、子宮がん検診など

2.「一定の取組」の留意点

 これらの取組を行う上での留意点は次のとおりです。

(1) 申告者が任意(全額自己負担)で受けた健康診査等は「一定の取組」には含まれません。例えば、申告者が任意で受診した人間ドック(全額自己負担)は「一定の取組」には含まれません。
 なお、任意で受けたインフルエンザの予防接種は「一定の取組」に含まれます。
(2) 上記のすべての取組を行う必要はなく、いずれか1つを行えば問題ありません。
(3) 世帯全員が取組を行う必要はなく、申告者のみが取組を行えば問題ありません。

旅行業者の売上は契約内容によっては純額で計上できる!

1.総額主義と純額主義

 企業会計原則では、「費用及び収益は、総額によって記載することを原則とし、費用の項目と収益の項目とを直接に相殺することによってその全部又は一部を損益計算書から除去してはならない。」とされています。これを総額主義といいます。
 例えば、1,000万円で仕入れた商品を1,200万円で売った場合は、損益計算書の表示は次のようになります。

 売 上 高  1,200万円
 仕 入 高  1,000万円
 売上総利益   200万円

 これに対して、費用の項目と収益の項目を相殺する純額主義による損益計算書の表示は次のようになります。

 売 上 高   200万円
 仕 入 高    0万円
 売上総利益   200万円

2.法人税と消費税への影響

 総額主義が原則とされていますので、会計処理も売上と仕入を両立する総額による処理(以下、本記事では総額主義による会計処理を「総額処理」といい、純額主義による会計処理を「純額処理」といいます)を行い、税務署等には総額主義による決算書を提出します。
 しかし、総額処理でも純額処理でも利益は200万円になりますので、法人税等の計算には影響がないといえます。
 
 一方、消費税の計算には大きな影響があります。
 総額処理によると売上が1,000万円を超えていますので、2年後は消費税の課税事業者と判定されるのに対し、純額処理では売上が1,000万円以下ですので、2年後は免税事業者と判定されます。
 もちろん、消費税では総額処理により課税事業者・免税事業者の判定を行います。

 ところが、旅行業者については、契約の内容によっては純額処理により売上を計上することができます。

3.企画旅行と手配旅行

 旅行業者が取り扱う旅行契約は、「企画旅行」と「手配旅行」に大別されます。
企画旅行は、さらに「募集型」と「受注型」に分かれます。
 「募集型企画旅行」は、旅行業者があらかじめ目的地・日程等の旅行内容や旅行代金を定めた旅行計画を作成し、パンフレット・広告などにより参加者を募集してその旅行を実施するものです。パッケージツアーまたはパック旅行といわれるものがこれにあたります。
 「受注型企画旅行」は、旅行業者が旅行者の依頼により目的地・日程等の旅行内容や旅行代金を定めた旅行計画を作成し、その旅行を実施するものです。学校の修学旅行や企業の慰安旅行などがこれにあたります。
 「手配旅行」は、旅行者のため又は運送機関や宿泊施設等のために、サービスの提供について代理して契約を締結、媒介、取次ぎをすることをいいます。JR券、航空券、宿泊券等の予約・手配がこれにあたります。

4.企画旅行は総額処理、手配旅行は純額処理

 売上の計上方法は、企画旅行は総額処理、手配旅行は純額処理になります。

(1) 企画旅行の場合・・・総額処理

 例えば、当社が企画・主催したパック旅行54,000円を旅行者に販売し、新幹線のチケット代32,400円とホテルの宿泊代10,800円(それぞれ実費)をJRとホテルに支払ったときの会計処理は、次のようになります。

 (現金預金)54,000(旅行売上)54,000
 (旅行仕入)43,200(現金預金)43,200

 企画旅行の場合は、新幹線のチケット代とホテルの宿泊代などの実費43,200円を課税仕入、パック旅行代金54,000円を課税売上として認識します。

(2) 手配旅行の場合・・・純額処理

 例えば、旅行者のために新幹線のチケット代32,400円とホテルの宿泊代10,800円(それぞれ実費)を手配し、これに手数料10,800円を上乗せして54,000円で旅行者に販売したときの会計処理は、次のようになります。

 ① 旅行者に販売時
 (現金預金)54,000(旅行売上)10,800
            (預 り 金)43,200
 ② 業者に支払時
 (預 り 金)43,200(現金預金)43,200

 手配旅行の場合は、新幹線のチケット代とホテルの宿泊代などの実費43,200円は、預り金などの通過勘定で処理し、実費に上乗せした手数料10,800円を課税売上(役務の提供の対価)として認識します。

(3) 企画旅行の例外的処理・・・純額処理

 他社が主催するパック旅行を仕入れて販売する場合や、実質が手配旅行契約と認められるもの(手配の集合体方式)については、上記(2)「手配旅行」の場合と同じ純額処理になります。

個人経営の飲食業・理美容業等は社会保険加入を強制されない

 会計事務所に寄せられる相談は税金のことだけではありません。先日も飲食業を営む個人事業主さんから、社会保険に関する次のような質問を受けました。
 「従業員を10人に増やしたいが、社会保険に加入しなければならないか?」 

1.個人事業は5人以上の雇用で強制加入

 法人の場合、たとえ1人でも従業員を雇ったときは、社会保険(健康保険・厚生年金)に加入しなければなりません。
 個人事業の場合は、5人以上の従業員を雇ったときは社会保険の加入が強制されます。
 では、10人の従業員を雇用する個人経営の飲食店に社会保険の加入義務はあるのでしょうか?

2.「法定16業種」以外は任意加入

 答えは「否」です。
 5人以上の従業員を雇用する個人事業主でも、「法定16業種」に該当しない農業、漁業、一部のサービス業(旅館、飲食、理美容業、弁護士事務所、税理士事務所など)を営む者は、社会保険への加入が任意とされています。
 したがって、個人経営の飲食店は、5人以上の従業員を雇っても社会保険の加入を強制されることはありません。

※ 被用者保険(健康保険「協会けんぽ」・厚生年金)の適用を拡大する一環として、これまで被用者保険の適用業種でなかった税理士をはじめ、公認会計士、弁護士、司法書士など10の士業についても、常時5人以上の従業員を使用している個人事務所を強制適用業種に加えることとした「年金制度機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が2020(令和2)年の通常国会で成立し、公布されました(2022(令和4)年10月1日から施行)。改正内容については、本ブログ記事「5人以上の従業員を雇用している士業の個人事務所は令和4年10月から社会保険の加入が必要です」をご参照ください。

3.「法定16業種」とは?

 法定16業種とは、製造業・土木建築業・鉱業・電気ガス事業・運送業・貨物積みおろし業・清掃業・物品販売業・金融保険業・保管賃貸業・媒介周旋業・集金案内広告業・教育研究調査業・医療業・通信報道業・社会福祉事業及び更生保護事業をいいます。

外国人・年金受給者を雇用した場合や試用期間中の社会保険の取扱い

1.健康保険・厚生年金保険の加入要件

 健康保険・厚生年金保険は正社員だけではなく、法人の代表者や役員も被保険者になります。
 また、パートやアルバイトの方でも、1週間の所定労働時間及び1ヶ月の所定労働日数が、同じ事業所で同様の業務に従事している正社員の4分の3以上である場合は、被保険者になります。
 さらに、正社員の4分の3未満であっても、次の5要件をすべて満たす方は被保険者になります。

(1) 週の所定労働時間が20時間以上
(2) 勤務期間が1年以上見込まれること
(3) 月額賃金が8.8万円以上
(4) 学生以外
(5) 従業員501人以上の企業に勤務していること

※ (2)の要件は、2022(令和4)年10月以降は「1年以上」が「2か月を超える」見込みであることに変わります。
 また、(5)の要件は、2022(令和4)年10月以降は「501人以上」が「101人以上」に、2024(令和6)年10月以降は「51人以上」に変わります。
 
 では、次のような場合の被保険者はどのようになるのでしょうか?

2.外国人を雇用した場合

 上記1の加入要件を満たす方は、国籍を問わず被保険者になります。

3.年金受給者を雇用した場合

 70歳未満で老齢厚生年金(特別支給を含む)を受給している人を雇用した場合でも、上記1の加入要件を満たす方は被保険者になります。

4.試用期間中の場合

 法律上の雇用契約や本人の同意にかかわりなく、上記1の加入要件を満たす方は、試用期間中であっても被保険者になります。

マンション管理組合に支払う修繕積立金の必要経費算入

1.原則は修繕実施時に必要経費算入

 分譲マンションのオーナー(区分所有者)が、転勤等のため長期間自室を留守にする場合、賃貸に出して家賃収入を得ることがあります。
 賃貸に出した場合でも、修繕積立金をマンション管理組合に支払うのは、オーナーである区分所有者です(家賃に転嫁して賃借人の負担とするかどうかは別として)。
 この修繕積立金は、原則的には繰延資産や前払金等で処理し、実際に修繕を実施したときに必要経費とします。 

2.一定の場合には支払債務確定時に必要経費算入が可能

 しかし、次のような場合には、マンション管理組合への支払債務が確定した年分の必要経費として差し支えないとされています。

(1) 適正な管理規約に定められた方法で管理組合の運営が行われている。
(2) 管理組合は、修繕積立金について、区分所有者への返還義務を有さない。
(3) 区分所有者は、管理組合に対し、修繕積立金の支払義務がある。
(4) 修繕積立金は将来の修繕のためにのみ使用されるもので、他に流用されるものではない。
(5) 修繕積立金の額は、長期修繕計画に基づき各区分所有者の共有持分に応じて、合理的な方法により算出されている。

契約書・領収書の記載金額における消費税の特例

1.消費税の特例

 契約書や領収書は、その記載金額に応じて印紙税が課税されます。
 この記載金額は消費税及び地方消費税の額(以下「消費税額等」といいます)を含んだ金額とされますが、次の条件を満たせば、税抜金額を記載金額として印紙税額の判定を行うことができます(消費税の特例)。

(1) 第1号文書、第2号文書、第17号文書のいずれかであること
(2) 消費税額等が明確になっていること

 「消費税額等が明確になっていること」とは、具体的には次の①②のように記載している場合です。③は消費税額等が明確とはいえず、税込金額が記載金額となります。

① 請負金額1,080万円(うち消費税額等80万円)→記載金額は1,000万円
② 請負金額1,080万円(税抜価格1,000万円)→記載金額は1,000万円
③ 請負金額1,080万円(消費税額等8%を含む)→記載金額は1,080万円

 ①②は記載金額1,000万円の第2号文書となり、印紙税額は1万円となります。③は記載金額1,080万円の第2号文書となり、印紙税額は2万円となります。

2.消費税の特例は課税事業者が前提

 注意しなければならないのは、消費税の特例が適用されるのは、課税文書の作成者が消費税の課税事業者である場合に限られるということです。
 したがって、免税事業者が作成する領収書は、消費税額を明確にして金額を記載しても、税込金額が記載金額となります。
 また、消費税の課税事業者と免税事業者が共同で契約書を作成する場合、例えば、課税事業者であるA株式会社と免税事業者であるB商店との間において、A株式会社を請負人とする「工事請負契約書」を作成する場合は、消費税額等が課される課税資産の譲渡等を行う者は課税事業者であるA株式会社となり、消費税額等を明確にして金額を記載すれば、税抜金額が記載金額となります。

仮契約書と本契約書のどちらに印紙を貼る?

 会計事務所への問い合わせで意外に多いのが「印紙」に関する事項です。税理士試験に「印紙税」の科目は無いため、印紙税に関する知識は実務経験を積んで身に付けることになります。

1.仮契約書と本契約書の両方に印紙を貼る

 昨日、顧問先であるA社(建設業)から、「仮契約書と本契約書のどちらに収入印紙を貼ればいいか?」という質問を受けました。
 A社が建設工事の請負(契約金額を仮に3,000万円とします)をする際に、まず仮契約を結ぶことになったそうです。

 早速調べてみると、国税庁ホームページ・タックスアンサーに次の記載がありました。
 「印紙税は、文書を作成する都度課税される税金です。文書が作成されるかぎり、たとえ1個の取引について数通の契約書が作成される場合でも、また、予約契約や仮契約と本契約の2度にわたって契約書が作成される場合でも、それぞれの契約書に印紙税が課税されます。」

 したがって、今回のように同一の取引について2文書以上の契約書を作成する場合は、仮契約書と本契約書の両方に10,000円の印紙を貼ることになります。
(「不動産譲渡契約書」及び「建設工事請負契約書」について、2014年(平成26年)4月1日から2020年(平成32年)3月31日までに作成されるものについては、印紙税の軽減措置が適用されますので、契約金額が3,000万円の場合は10,000円の印紙税になります。)

2.仮契約書の契約金額を引用すると節税になる

 このことをA社にお伝えしようと思ったのですが、念のため、さらに調べてみました。
 すると、国税庁ホームページ・質疑応答事例に次の記載がありました。
 「本契約書を作成すれば、その本契約書も第2号文書として課税の対象になりますが、例えば、本契約書に『○年○月○日付の仮請負契約書の内容を本契約とする。』旨を記載して契約金額を記載しない場合には、引用している『○年○月○日付の仮請負契約書』は課税文書ですから、本契約書は記載金額のない第2号文書として取り扱われます。」

 つまり、本契約書に契約金額を記載せずに「仮契約書」の契約金額を引用した場合は、本契約書は記載金額のない第2号文書(請負に関する契約書)として取り扱われ、200円(本来は10,000円)の印紙を貼るだけですみます。

 以上のことをA社にお伝えしました。

賃貸用不動産取得に要した借入金利子の必要経費算入と損益通算

1.不動産取得に要した借入金利子は必要経費

 新たに不動産賃貸業を開始した場合に、賃貸用の不動産を取得するために要した借入金利子は、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することができます。
 ただし、使用開始前の期間に対応する借入金利子は、必要経費に算入するか、賃貸用不動産の取得原価に算入するかを選択できます。 

 また、土地と建物を一つの契約により同一の者から借入金で取得し、借入金の額を区分することが困難な場合は、借入金がまず建物取得に充てられたものとし、建物の取得価額を上回る部分を土地購入のための借入金とみなして計算することができます(租税特別措置法施行令26の6②)。

2.土地取得に係る借入金利子は損益通算の対象外

 損益通算とは、ある所得の赤字と別の所得の黒字を相殺して全体の所得を圧縮する制度で、これにより課税される所得税が少なくなります。
 不動産所得の金額の計算上赤字が生じた場合は損益通算できるのですが、その損失のうち、土地を取得するために要した借入金利子に相当する部分の金額は生じなかったものとされ、損益通算の対象とならないので注意が必要です(租税特別措置法施行令26の6①)。

 例えば、総収入金額が100万円、土地取得に係る借入金利子が60万円、その他の経費が80万円だとすると、不動産所得の金額は100万円-60万円-80万円=-40万円(損失)になります。
 この場合(借入金利子60万円>赤字40万円の場合)、土地取得に係る借入金利子に相当する部分の40万円の損失は生じなかったものとみなされ損益通算の対象外となります。 

 また、総収入金額が70万円、土地取得に係る借入金利子が60万円、その他の経費が80万円だとすると、不動産所得の金額は70万円―60万円―80万円=-70万円(損失)になります。
 この場合(借入金利子60万円≦赤字70万円の場合)、土地取得に係る借入金利子に相当する部分の60万円の赤字は生じなかったものとみなされ損益通算の対象外となります。

 つまり、借入金利子と赤字のうち、いずれか小さい方の金額が損益通算の対象外になります。

※ 土地取得に係る借入金利子の具体的な計算方法については、本ブログ記事「土地等の取得に要した借入金利子の計算方法と記載例」をご参照ください。