個人が商品購入時に取得又は使用したポイントは所得税の課税対象となるか?

 個人がドラッグストアやスーパーなどで買い物をしたときに、商品購入額に応じてその店で使えるポイントが付与されることがあります。
 また、楽天カードなどのクレジットカードで買い物をしたときには、楽天市場や楽天トラベルなどで使えるポイントが付与されます。
 気になるのは、これらのポイントを取得又は使用したときに、確定申告をする必要があるか否かということです。
 今回は、企業が個人に付与するこれらのポイントの課税関係について確認します。なお、ここでいう個人とは、個人事業主ではない一般の消費者のことをいいます。また、個人事業主には一般消費者としての側面と事業者としての側面がありますが、今回話題にするのは、あくまでも一般消費者としての側面を持つ個人です。

※ 個人事業主がポイントを使用して経費を支払った場合の経理処理については、本ブログ記事「事業者が経費支払時にポイントを使用した場合の経理処理」をご覧ください。

1.代金決済に応じて付与されるポイントの場合

 これらのポイントの課税関係のうち、決済代金に応じて付与されるポイントについて国税庁ホームページ・タックスアンサーでは、「原則として、確定申告をする必要はありません。」としています。
 その理由については、次の2点が示されています。

(1) 商品購入に対する通常の商取引における値引きを受けたことによる経済的利益については、原則として課税対象となる経済的利益には該当しないものとして取り扱っていること
(2) 一般的に企業が発行するポイントのうち決済代金に応じて付与されるポイントについては、そのポイントを使用した消費者にとっては通常の商取引における値引きと同様の行為が行われたものと考えられるので、こうしたポイントの取得又は使用については、課税対象となる経済的利益には該当しないものとして取り扱うこととしていること

 つまり、決済代金に応じて付与されるポイントについては、所得税の課税対象ではないしたがって、確定申告の必要はないということです。そういう意味でタックスアンサーでは「原則として、確定申告をする必要はありません。」という文言を使っています。
 しかし、「原則として、確定申告をする必要はありません。」ということは、例外的に確定申告が必要となるケースもある言い換えれば、所得税の課税対象となるケースもあるということです。これについては、下記3で述べます。

2.臨時・偶発的に取得したポイントの場合

 一方、タックスアンサーでは「ポイント付与の抽選キャンペーンに当選するなどして臨時・偶発的に取得したポイントについては、通常の商取引における値引きと同様の行為が行われたものとは考えられませんので、そのポイントを使用した場合には、その使用したポイント相当額を使用した日の属する年分の一時所得の金額の計算上、総収入金額に算入します。」としています。
 つまり、臨時・偶発的に取得したポイントについては、所得税の課税対象になるということです。

 ただし、確定申告が必要かどうかは、使用したポイント相当額によります。一時所得として課税される金額は、次のように計算します。

 {総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(最大50万円)}×1/2

 収入を得るため(ポイントの付与を受けるため)に支出した金額(いわゆる経費)は通常0と考えられますので、総収入金額(ポイント使用額)が50万円以下で他に一時所得に該当するものがなければ、確定申告は不要です。

 また、給与所得者については給与所得及び退職所得以外の所得金額の合計額が20万円以下の場合に、公的年金等受給者については公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下の場合に、それぞれ確定申告は不要とされています。
 したがって、給与所得者と公的年金等受給者については、ポイント使用額が90万円以下で他に一時所得に該当するものがなければ、確定申告は不要です。
(注)医療費控除を受けるため等の還付申告を行う場合等は、確定申告をする必要があります。詳しくは本ブログ記事「給与所得者と公的年金等受給者の確定申告不要制度の注意点」をご参照ください。

3.所得控除の対象となる支出にポイントを使用した場合

 決済代金に応じて付与されるポイントの使用に関する課税関係は上記1のとおりですが、ポイントを使用して医薬品購入の決済代金の値引きを受けた場合のように、所得控除の対象となる支出にポイントを使用したことが明らかな場合には、次のいずれかの方法により、所得金額及び所得控除額を計算することとされています。

(1) ポイント使用後の支払金額を基に所得控除額を計算する方法
(2) ポイント使用前の支払金額を基に所得控除額を計算するとともに、ポイント使用相当額を一時所得の総収入金額として算入する方法

 (1)の方法では、例えば2,000円の医薬品の購入時に500円分のポイントを使用して1,500円を支払った場合、医療費控除額を1,500円として計算します。
 (2)の方法では、2,000円を医療費控除額として計算し、500円を一時所得の総収入金額に算入します。

 この2つの方法のうち、(2)についてはポイント使用相当額が所得税の課税対象になります。
 ただし、ポイント使用額について確定申告が必要か否かについては、上記2で述べたとおりです。

4.ポイントを使用して株式等を購入した場合

 最近では、買い物で貯まったポイントを使用して株式等に投資が行えるサービスもあります。例えば、Tポイントや楽天ポイント、Pontaポイント、dポイント、LINEポイントなどを使って株式等を購入することができます。
 国税庁ホームページ・タックスアンサーでは、これらについても次のように記載しています。

 「証券会社等においてポイントを使用して株式等を購入した場合、一般的には、その株式等の取得価額(取得費等)はポイント使用前の支払金額(ポイント使用相当額を含めた支払金額)を基に計算するとともに、ポイント使用相当額は一時所得の総収入金額に算入します。」

 つまり、ポイントを使用して株式等を購入した場合は、上記3.(2)の方法と同様に、ポイント使用額が所得税の課税対象になります。
 ただし、ポイント使用額について確定申告が必要か否かについては、上記2で述べたとおりです。