免税事業者からの仕入れに係る経過措置(8割控除の後は7割・5割・3割控除へ段階的に縮小)

 インボイス制度が始まって以降、中小企業・小規模事業者からは依然として「経理負担が重い」「消費税の負担が増えた」という声が多く聞かれます。
 こうした状況を踏まえ、2026(令和8)年度税制改正において仕入税額控除の経過措置が見直され、その適用期限が延長されました。
 今回は、免税事業者からの仕入に係る仕入税額控除の経過措置について、改正内容を確認します。

1.免税事業者からの仕入れに係る経過措置とは?

 インボイス制度の下では、インボイス(登録番号が記載された請求書等)が交付されない課税仕入れは、買い手側で仕入税額控除をすることができません。

 免税事業者はインボイスを発行することができませんので、免税事業者との取引の縮小や廃止を考える事業者が出てくる可能性があります。

 このような事態を避けるため、免税事業者からの仕入れであっても、一定期間は一定割合の控除を認める「経過措置」が設けられました。

 具体的には、インボイス制度が導入された2023(令和5)年10月1日から2026(令和8)年9月30日までの3年間は仕入税額の8割控除を認め、2026(令和8)年10月1日から2029(令和11)年9月30日までの3年間は5割控除を認めるというものでした。

期間 控除割合
2023(令和5)年10月1日~2026(令和8)年9月30日 8割
2026(令和8)年10月1日~2029(令和11)年9月30日 5割
2029(令和11)年10月1日~ 控除不可

2.改正後の控除割合の推移

 今回の税制改正により、控除割合の引下げペースが緩和され、次のように段階的に縮小されることとなりました。

期間 控除割合
2023(令和5)年10月1日~2026(令和8)年9月30日 8割
2026(令和8)年10月1日~2028(令和10)年9月30日 7割
2028(令和10)年10月1日~2030(令和12)年9月30日 5割
2030(令和12)年10月1日~2031(令和13)年9月30日 3割
2031(令和13)年10月1日~ 控除不可

 改正前は「8割→5割」という2段階の縮小が予定されていましたが、改正後は「8割→7割→5割→3割」という4段階の縮小になり、 買い手側の負担増のペースが緩和されました。

3.年間適用上限額の引下げ

 経過措置の濫用防止の観点から、経過措置の対象となる免税事業者ごとの課税仕入れの合計額に係る制限も改正されています。

 改正前は、一の免税事業者から行う経過措置の対象となる課税仕入れの額の合計額がその年又はその事業年度で税込み10億円を超える場合には、その超えた部分の課税仕入れについて経過措置は適用できませんでした。

 今回の改正で、税込み10億円という年間適用上限額が、税込み1億円に引き下げられました。

 この改正も、2026(令和8)年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます。

2割特例・3割特例を適用した課税期間の翌課税期間の簡易課税制度選択届出書はいつまでに提出すればいいか?(令和8年度税制改正)

 消費税の申告方法には、仕入控除税額について実額で計算する「本則課税」、業種ごとに決められたみなし仕入率を用いて仕入控除税額を計算する「簡易課税」、売上税額の2割を納税額として計算する「2割特例」、売上税額の3割を納税額として計算する「3割特例」があります。

 これらのうち、2割特例は2026(令和8)年9月30日の属する課税期間の末日を以って終了し、3割特例は個人事業者限定で2027(令和9)年分と2028(令和10)年分の消費税申告で適用することができます。

 2割特例と3割特例については事前の届出が不要で、適用を受ける旨を確定申告書に付記することで適用できますが、簡易課税は、原則として適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。

 しかし、2割特例や3割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間に簡易課税の適用を受ける場合は、「消費税簡易課税制度選択届出書の提出に係る特例」が設けられており、必ずしも適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに提出する必要はありません。

 2割特例・3割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間であれば、簡易課税制度選択届出書を事前(簡易課税の適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで)に提出していないときでも、簡易課税の適用を受けることができます。

 2割特例・3割特例の適用を受けたインボイス発行事業者が、その適用を受けた課税期間の翌課税期間に係る確定申告期限までに、その翌課税期間から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した簡易課税制度選択届出書を提出した場合には、その翌課税期間から簡易課税の適用を受けることができます(消費税簡易課税制度選択届出書の提出に係る特例)。

 例えば、、令和8年分まで2割特例で申告を行っていた個人事業者が、翌年分(令和9年分)は3割特例で申告しようとしていたところ、3割特例より簡易課税の方が有利であることが判明した場合は、令和9年分から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した簡易課税制度選択届出書を令和9年分の消費税確定申告期限(令和10年3月31日)までに提出すれば、令和9年分から簡易課税制度の適用を受けることができます。

 また、令和10年分まで3割特例で申告を行っていた個人事業者が、翌年分(令和11年分)の申告を簡易課税で行う場合は、令和11年分から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した簡易課税制度選択届出書を令和11年分の消費税確定申告期限(令和12年4月1日)までに提出すれば、令和11年分から簡易課税制度の適用を受けることができます。

赤文字部分が改正で変わった箇所です。改正前は、「その適用を受けた課税期間の翌課税期間の末日」とされていました(令和9年分の消費税申告を簡易課税で行う場合は、令和9年12月31日までに選択届出書を提出しないと、令和9年分の申告を簡易課税で行うことはできないとされていました)。

3割特例と簡易課税制度はどちらが有利か?

 2023(令和5)年10月1日に導入されたインボイス制度は、多くの事業者に影響を及ぼしています。
 特に、本来は免税事業者であるにもかかわらず、インボイス制度の導入を機にインボイス発行事業者の登録をして課税事業者となった事業者の負担は大きいといえます。

 このような事業者の税負担や事務負担を軽減するために、簡易課税制度と基本的には同じ計算構造である「2割特例」が設けられましたが、2026(令和8)年9月30日に期限を迎えます。

 そこで、引き続き小規模事業者の負担に配慮した「3割特例」が、2026(令和8)年度税制改正で設けられました。

 3割特例は個人事業者のみが適用可能(法人は適用不可)であり、かつ、2027(令和9)年分と2028(令和10)年分の消費税申告においてのみ適用可能となっています

 今回は、「3割特例」と簡易課税制度について、税負担と事務負担の両面から比較を行います。

※ 3割特例については、「2割特例が終われば個人事業者限定で3割特例あり(令和8年度税制改正)」をご参照ください。

1.納税額の計算上どちらが有利か?

 3割特例は売上税額の3割を納税額とするものですが、具体的には簡易課税制度と同様に以下のように計算します。

 消費税納税額=課税売上げに係る消費税額-課税売上げに係る消費税額×70%

 簡易課税制度におけるみなし仕入率は、事業区分に応じて下表のように定められていますが、3割特例は、簡易課税制度におけるみなし仕入率を事業区分にかかわらず一律に70%とすることと同義です。

 したがって、下表の第4種から第6種に該当する事業のうち1種類の事業のみを行う場合は、簡易課税制度よりも「3割特例」の方が納税額が少なくなり有利となります(第3種に該当する事業のみを行う場合は、簡易課税制度のみなし仕入率70%=3割特例の70%となり、両者の納税額は同額となります)。

事業区分 該当する事業 みなし仕入率
第1種事業 卸売業 90%
第2種事業 小売業、農林漁業(飲食料品の譲渡に係る事業) 80%
第3種事業 製造業、建築業、農林漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く)など 70%
第4種事業 第1・2・3・5・6種以外の事業(飲食店業など) 60%
第5種事業 運輸・通信業、金融・保険業、サービス業(飲食店業を除く) 50%
第6種事業 不動産業 40%

 第1種から第6種に該当する事業のうち2種類以上の事業を行う場合は、簡易課税制度のみなし仕入率と3割特例の70%を比較して、どちらか有利な方を適用します。

 例えば、第1種と第2種に該当する事業を行っている場合は、簡易課税制度のみなし仕入率は必ず80%以上となりますので、簡易課税制度の方が3割特例よりも納税額が少なく有利となります。

 一方、第5種と第6種に該当する事業を行っている場合は、簡易課税制度のみなし仕入率が50%を上回ることはありませんので、3割特例の方が簡易課税制度よりも納税額が少なく有利となります。

 つまり、みなし仕入率が70%を上回れば簡易課税制度が有利になり、下回れば3割特例が有利になります。

2.事務負担は3割特例が有利

 納税額の計算上、3割特例と簡易課税制度のどちらが有利になるかについては上記1のとおりですが、事務負担の軽減という点では、簡易課税制度よりも3割特例の方が有利になります。

 3割特例も簡易課税制度も納税額の計算にインボイスは必要ないという点では同じですが、3割特例は一律70%の仕入税額控除を行うため、簡易課税制度のようにどの事業に該当するかという事業区分の判定をする必要がありません。
 したがって、適用税率毎(軽減税率8%と標準税率10%)の売上税額を把握するだけで納税額の計算ができます。

 また、簡易課税制度の適用を受ける場合には、原則として事前に簡易課税制度選択届出書の提出が必要ですが、3割特例の場合は事前の届出は不要であり、申告書に設けられた記載欄に3割特例の適用を受ける旨を付記するだけです。

 さらに、3割特例には2年間の継続適用要件(いわゆる2年縛り)もありません。

 以上のことから、事務負担軽減という面では、3割特例の方が簡易課税制度よりも有利となります。

2割特例が終われば個人事業者限定で3割特例あり(令和8年度税制改正)

 インボイス制度の導入により、免税事業者から課税事業者へ移行した個人事業者の負担は大きく増えました。

 このような元・免税事業者(本来は免税事業者ですが取引先との関係などによりインボイス発行事業者の登録をして課税事業者になった人)の税負担や事務負担を軽減するために、インボイス制度導入と同時に「2割特例」が設けられましたが、2026(令和8)年9月30日で期限を迎えます。

 そこで、2割特例が終わった後の税負担・事務負担を軽減するために、2026(令和8)年度税制改正で「3割特例」が個人事業者限定で設けられました(法人は3割特例を適用できません)。

 今回は、新たに設けられた3割特例について確認します。

1.3割特例とは?

 3割特例とは、インボイス発行事業者の登録を受けたことにより免税事業者から課税事業者となった個人事業者が、令和9年分・令和10年分の消費税の確定申告において納付税額を売上税額の3割(仕入割合を7割とみなす)とすることができる特例です。

 例えば、売上に係る消費税額が100万円であれば、納付税額は100万円×30%=30万円となり、原則課税のような複雑な仕入税額控除の計算を行う必要はありません。

 また、仕入税額控除を行うにあたって、インボイスの保存が不要とされていることから、事務負担は大きく軽減されることになります

 一方、税負担については、軽減される場合もあればそうでない場合もあります(業種や設備投資の状況、仕入税額控除の方法(原則課税と簡易課税)により異なります)

※ 3割特例の事務負担と税負担については、「3割特例と簡易課税制度はどちらが有利か?」をご参照ください。

2.3割特例の適用要件

 3割特例を適用するための主な要件は次のとおりです。

(1) 個人事業者であること
(2) 基準期間の課税売上高が1,000万円以下であること
(3) 特定期間の課税売上高が1,000万円以下であること
(4) インボイス発行事業者の登録を受けていること など

※ 基準期間とは、適用を受ける年の2年前をいい、例えば令和9年分の申告においては令和7年、令和10年分の申告においては令和8年が基準期間となります。
 特定期間とは、適用を受ける年の前年1月~6月をいい、例えば令和9年分の申告においては令和8年1月~6月、令和10年分の申告においては令和9年1月~6月が特定期間となります。なお、特定期間の課税売上高に代えて、給与等支払額の合計額により判定することもできます。

 3割特例は、インボイス発行事業者への登録を機に免税事業者から課税事業者になった個人事業者に適用されます。
 そのため、次の場合は3割特例を適用できません(主なものを挙げます)。

(1) 法人
(2) インボイス発行事業者ではない課税事業者
(3) 基準期間の課税売上高が1,000万円を超える場合
(4) 調整対象固定資産や高額資産の取得により免税事業者とならない場合
(5) 課税期間の特例の届出により課税期間を短縮している場合 など

3.3割特例終了後

 3割特例は、インボイス制度によって新たに課税事業者となった個人事業者にとって、負担を大幅に軽減する強力な支援策です。
 特に、仕入税額控除の計算が煩雑な業種や、経理体制が十分でない小規模個人事業者にとっては、実務面でのメリットが大きい制度といえます。
 
 一方で、3割特例はあくまでも令和9年分・令和10年分に限定された時限措置です。
  その後の課税方式について、簡易課税を選択するか、原則課税に戻すかなど、事業の実態に応じた検討が必要です。 

 インボイス制度は、今後も段階的に見直しが続く可能性がありますので、最適な選択を行うためにも制度の変化を正しく理解することが重要です。

2割特例が適用できなくなる翌課税期間の簡易課税制度選択届出書はいつまでに提出すればいいか?

 消費税の申告方法には、仕入控除税額について実額で計算する「本則課税」、業種ごとに決められたみなし仕入率を用いて仕入控除税額を計算する「簡易課税」、売上税額の2割を納税額として計算する「2割特例」による方法があります。

 このうち2割特例は、インボイス制度導入の際の経過措置により免税事業者からインボイス発行事業者となった事業者が対象となっています。

 2割特例については、事前の届出が不要で、適用を受ける旨を確定申告書に付記することで適用できますが、簡易課税は、原則として、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。

 しかし、経過措置により免税事業者から課税事業者になった事業者には、「消費税簡易課税制度選択届出書の提出に係る特例」が設けられており、必ずしも適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに提出する必要はありません。

 以下では、経過措置により免税事業者から課税事業者になった2つのケースについて、簡易課税制度選択届出書をいつまでに提出すればいいかを確認します。

 免税事業者が、2023(令和5)年10月1日から2029(令和11)年9月30日までの日の属する課税期間中にインボイス発行事業者の登録を受けることとなった場合には、登録日から課税事業者となる経過措置が設けられています。

1.インボイス登録日の属する課税期間の簡易課税

 経過措置により免税事業者から課税事業者になった事業者が、インボイス登録日の属する課税期間について、簡易課税制度選択届出書を事前(インボイス登録日の属する課税期間の初日の前日まで)に提出していない状況において、2割特例より簡易課税の方が有利であることが判明した場合は、2割特例(又は本則課税)を適用するしかないのでしょうか?

 答えは「否」です。

 経過措置の適用を受ける事業者が、インボイス登録日の属する課税期間中に、その課税期間から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した簡易課税制度選択届出書を提出した場合には、その課税期間の初日の前日に簡易課税制度選択届出書を提出したものとみなされます(消費税簡易課税制度選択届出書の提出に係る特例)。

 例えば、免税事業者である個人事業者が令和7年9月1日からインボイス登録を受けた場合で、令和7年分の申告において簡易課税制度の適用を受けたいときは、令和7年分から適用を受ける旨を記載した簡易課税制度選択届出書を課税期間の末日(令和7年12月31日)までに提出すれば、令和7年分は簡易課税制度の適用を受けることができます。

参考記事:「売上税額の2割納税の特例と簡易課税制度はどちらが有利か?

2.2割特例を適用した課税期間後の簡易課税

 2割特例の適用を受けていた事業者が、翌課税期間から2割特例が適用できなくなる場合に、簡易課税制度選択届出書を事前(翌課税期間の初日の前日まで)に提出していなければ、翌課税期間は本則課税しか適用できないのでしょうか?

 答えは「否」です。

 2割特例の適用を受けた事業者が、その適用を受けた課税期間の翌課税期間中に、その課税期間から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した簡易課税制度選択届出書を提出した場合には、その課税期間の初日の前日に簡易課税制度選択届出書を提出したものとみなされます(消費税簡易課税制度選択届出書の提出に係る特例)

 例えば、、令和8年分まで2割特例により申告を行った個人事業者が、翌年分(令和9年分)から簡易課税制度の適用を受けようとする場合には、令和9年分から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した簡易課税制度選択届出書を課税期間の末日(令和9年12月31日)までに提出すれば、令和9年分から簡易課税制度の適用を受けることができます。

2026(令和8)年度税制改正で、下線部の提出期限が「その適用を受けた課税期間の翌課税期間に係る確定申告期限までに変わりました。

 例えば、令和8年分まで2割特例により申告を行った個人事業者が、翌年分(令和9年分)から簡易課税制度の適用を受けようとする場合には、令和9年分から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した簡易課税制度選択届出書を、令和9年分の消費税確定申告期限(令和10年3月31日)までに提出すれば、令和9年分から簡易課税制度の適用を受けることができます。

 詳細については、「
2割特例・3割特例を適用した課税期間の翌課税期間の簡易課税制度選択届出書はいつまでに提出すればいいか?(令和8年度税制改正)」をご参照ください。

3.課税期間の末日に関する注意点

 上記1と2のケースともに、簡易課税制度の適用を受けたい課税期間の末日までに簡易課税制度選択届出書を提出すれば、簡易課税制度を適用することができます。

 ただし、課税期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律に規定する休日その他一般の休日、土曜日又は12月29日、同月30日若しくは同月31日であったとしても、提出期限はこれらの日の翌日とはなりませんのでご注意ください。

インボイス発行事業者の登録後に課税事業者届出書の提出は必要か?

 基準期間における課税売上高が1,000万円を超えたことにより消費税の課税事業者となる事業者は、「消費税課税事業者届出書」(以下「課税事業者届出書」といいます)を提出することとされています。

 課税事業者届出書の提出先は「納税地を所轄する税務署長」、提出時期は「事由が生じた場合、速やかに」とされています。

 例えば、免税事業者のX年における課税売上高が1,000万円を超えると、(X+2)年からその免税事業者は課税事業者になりますので、X年の課税売上高が確定した後、速やかに課税事業者届出書を提出します。

 このように課税事業者届出書は、免税事業者が課税事業者になることを税務署に届け出る手続きです。

 ところで、事業者の中には、課税売上高が1,000万円以下で本来は免税事業者であっても、取引先等との関係でインボイス発行事業者として登録し、消費税の課税事業者となった者もいます。

 では、このようなインボイス発行事業者の基準期間における課税売上高が1,000万円を超えることとなった場合、課税事業者届出書の提出は必要でしょうか?

 答えは「不要」です。 

 インボイス発行事業者は、基準期間における課税売上高が1,000万円を超えるか否かにかかわらず課税事業者となることから、「消費税課税事業者選択届出書」を提出した事業者と同様にインボイス発行事業者の登録を受けている課税期間(登録日の属する課税期間の翌課税期間以後の課税期間に限ります)については、課税事業者届出書を提出しなくても差し支えないこととされています。 

 つまり、インボイス発行事業者は既に課税事業者ですので、登録後も引き続いて課税事業者である限り、基準期間における課税売上高が1,000万円を超えることとなっても、そのことを税務署に届け出る必要はないということです。

「消費税課税事業者選択届出書」を提出している事業者においても、当該届出書を提出した日の属する課税期間の翌課税期間以後の課税期間については、その基準期間における課税売上高が1,000万円を超えるかどうかにかかわらず課税事業者となることから、課税事業者届出書は提出しなくても差し支えないこととされています(消費税法基本通達17-1-1)。

令和6年10月1日から変わる税金・社会保険その他の主な制度

 2024(令和6)年10月1日から、税金や社会保険などにおいて制度変更が行われるものがあります。
 それらの中には、会社の経営や従業員の働き方などに影響を及ぼすものもありますので、どのような制度変更があるのかを確認しておくことは有意義であると思われます。
 以下では、令和6年10月1日から変更される主な制度について確認します。

1.中小企業倒産防止共済掛金の損金算入制限

 中小企業倒産防止共済制度(経営セーフティ共済)は、取引先事業者が倒産した際に無担保・無保証人で掛金の最大10倍(上限額8,000万円)の金額を借りることができ、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度です。

 取引先の突然の倒産などの「もしも」のときに備えるというのが本来の目的ですが、掛金全額(1年間で最大240万円)を損金または必要経費に算入できることから、節税対策としても活用されています。

 一方、掛金の積立額は上限800万円とされており、上限に達した後は任意のタイミングで解約して解約手当金を受け取ることになりますが、この解約手当金は収益(益金または収入金額)となります。

 黒字のタイミングで解約すれば解約手当金がすべて課税対象となってしまい、せっかくの損金算入が単なる課税の繰り延べになってしまいますので、節税効果を活かすためには解約するタイミングは重要です。

 一般的には、赤字のタイミングで解約したり、役員退職金や大規模修繕などの大型の経費を計上するタイミングで解約して、解約手当金と相殺する方法があります。

 さらに、解約した後にすぐに再加入して、掛金(前納すれば最大240万円)と解約手当金を相殺するという方法が用いられることがありましたが、この部分が中小企業庁に不適切であると指摘され、見直しが行われました。

 その結果、2024(令和6)年10月1日以後に解約した中小企業倒産防止共済については、解約の日から2年を経過する日までの間に支出する掛金は損金算入することができないとされました。
 これにより、解約後すぐに再加入して節税するというスキームが封じられることになります。

 もし、再加入による掛金の損金算入を検討している場合は、令和6年9月30日までに現契約を一度解約した上で再加入する必要があります。

※ 損金算入制限については、「中小企業倒産防止共済の再加入後の損金算入制限に注意」をご参照下さい。

2.免税事業者等からの仕入れに係る経過措置の適用の制限

 インボイス制度の下では、免税事業者等(消費者、免税事業者又は登録を受けていない課税事業者)からの課税仕入れについては、仕入税額控除のために保存が必要なインボイスの交付を受けることができないことから、仕入税額控除を行うことができません。

 ただし、インボイス制度開始から一定期間(6年間)は、免税事業者等からの課税仕入れであっても、仕入税額相当額の一定割合(80%・50%)を仕入税額とみなして控除できる経過措置が設けられています。

期間 割合
令和5年10月1日から令和8年9月30日まで 仕入税額相当額の80%
令和8年10月1日から令和11年9月30日まで 仕入税額相当額の50%

 上記経過措置が2024(令和6)年度税制改正により見直しが行われ、一の免税事業者等から行う当該経過措置の対象となる課税仕入れの額の合計額がその年又はその事業年度で税込み10億円を超える場合には、その超えた部分の課税仕入れについて、本経過措置は適用できないこととされました。
 この改正は、2024(令和6)年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます。

※ 経過措置については、「インボイス制度導入後の免税事業者からの仕入れに係る仕入税額控除の特例(経過措置)」をご参照下さい。

3.パート・アルバイトの社会保険加入義務の拡大

 パートやアルバイトで働く方の社会保険(健康保険及び厚生年金保険)加入義務の判定基準が、2024(令和6)年10月1日から変わります。

 パートやアルバイトで働く短時間労働者の方でも、一定の要件を満たす場合は社会保険に加入しなければなりません。
 一定の要件とは次の4要件をいい、これらの要件をすべて満たす場合は社会保険の加入義務が生じます。

(1) 週の所定労働時間が20時間以上であること
(2) 所定内賃金が月額8.8万円以上であること
(3) 2か月を超える雇用の見込みがあること
(4) 学生でないこと

 現在、厚生年金保険の被保険者数が101人以上の企業等で働く上記4要件を満たす短時間労働者は、社会保険の加入対象となっています。
 この短時間労働者の加入要件がさらに拡大され、令和6年10月1日から厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業等で働く短時間労働者の社会保険加入が義務化されます。

 今回の加入要件の拡大に伴い、該当するパート・アルバイトの方やその家族の生活、働き方の選択などに大きな影響を及ぼす可能性がありますので、事前に制度変更の周知を図る必要があります。

※ 加入要件の詳細については、「従業員51人以上の会社で働くパート・アルバイトの社会保険加入義務(令和6年10月1日~)」をご参照ください。

4.代表取締役等住所非表示措置

 現行の会社法においては、株式会社の代表取締役など会社の代表者は氏名と住所を登記する必要があり、登記後はその氏名と住所が登記簿上で公開されます。

 この登記簿上の代表者の住所について、2024(令和6)年10月1日から登記申請時に代表者の住所を非公開にすることができるという制度(代表取締役等住所非表示措置)が始まります。

 この措置により、登記事項証明書等で公開が必要だった代表者の氏名と住所のうち、住所を非公開にすることができるようになります。
 ただし、非公開にできるのは住所の一部であり、最小行政区画までは公開されます。つまり、市区町村(東京都においては特別区、指定都市においては区)までは公開されます。

 なお、代表取締役等住所非表示措置が講じられた場合には、登記事項証明書等によって会社代表者の住所を証明することができないこととなるため、金融機関から融資を受けるに当たって不都合が生じたり、不動産取引等に当たって必要な書類(会社の印鑑証明書等)が増えたりするなど、一定の支障が生じることが想定されます。

 そのため、代表取締役等住所非表示措置の申出をする前に、このような影響があり得ることについて、慎重かつ十分な検討が必要です。

※ 制度の詳細については、「令和6年10月1日から登記申請時に社長の住所を非公開にできます」をご参照ください。

5.給与所得者の保険料控除申告書

 2024(令和6)年10月1日以後に提出する「給与所得者の保険料控除申告書」について、以下の「申告者との続柄」の記載を要しないこととされました。

(1) 社会保険料について、社会保険料のうちに自己と生計を一にする配偶者その他の親族が負担すべきものがある場合におけるこれらの者の申告者との続柄
(2) 新生命保険料及び旧生命保険料について、保険金、年金、共済金、確定給付企業年金、退職年金又は退職一時金の受取人の申告者との続柄
(3) 介護医療保険料について、保険金、年金又は共済金の受取人の申告者との続柄
(4) 新個人年金保険料及び旧個人年金保険料について、年金の受取人の申告者との続柄

6.地域別最低賃金の引き上げ

 最低賃金は、パート、アルバイト、正社員、臨時、嘱託など雇用形態や呼称の如何を問わず、すべての労働者に適用されます。

 近年は最低賃金引き上げの流れが続いており、2024(令和6)年度の全国加重平均は時給1,055円と過去最高となっており、引き上げ幅51円も過去最高となっています。
 令和6年度の地域別最低賃金を見ると、最高額は東京都の1,163円、最低額は秋田県の951円となっています。

 令和6年度地域別最低賃金は、令和6年10月1日から同年11月1日にかけて順次引き上げられる予定です。

※ 詳細については、「令和6年度地域別最低賃金が10月1日から順次引き上げられます」をご参照ください。

7.郵便料金の値上げ

 2024(令和6)年10月1日から郵便料金が値上げされます。主な郵便料金の変更内容は次のとおりです。

出所:日本郵便ホームページ

ETC利用時のインボイス保存方法の緩和の変遷

 高速道路を利用する際にETCシステムにより料金を支払い、後日、クレジットカードによりその料金を精算している場合、クレジットカード会社が発行するクレジットカード利用明細書を保存するだけでは消費税の仕入税額控除を行うことはできないとされていました。

 しかし、電子帳簿保存法のルール変更に伴い、一定の要件を満たす場合にはクレジットカード利用明細書を保存するだけで消費税の仕入税額控除を行うことができるようになりました。

 以下では、ETC利用時のインボイスの保存方法について、ETC利用証明書の取扱いを中心に確認します。

1.すべてのETC利用証明書の保存が必要(原則)

 クレジットカード会社がそのカードの利用者に発行する「クレジットカード利用明細書」は、そのカード利用者に対して課税売上を行った売り手(高速道路会社)が作成・交付する書類ではなく、当該売り手(高速道路会社)の登録番号や適用税率なども記載されていないため、インボイスには該当しません。

 したがって、ETCクレジットカード※1を使用した高速道路料金について仕入税額控除の適用を受けるためには、原則としてすべての取引について高速道路会社が運営するホームページ(ETC利用照会サービス)からダウンロードした「利用証明書※2」(簡易インボイス)を保存しなければなりません。

※1 ETCクレジットカードとはクレジットカード会社がETCシステムの利用のために交付するカードをいい、高速道路会社が発行するETCコーポレートカード及びETCパーソナルカードを除きます。
 ETCコーポレートカード及びETCパーソナルカードを利用した場合は、月に一回発行される請求書がインボイスに対応した形式となります。

※2 利用料金が確定前の状態でETC利用照会サービスから発行される利用証明書は、インボイス対象外となりますのでご注意ください。

2.任意の一取引のETC利用証明書の保存で可(緩和その1)

 しかし、ETCクレジットカードを使用して高速道路を利用する度に、すべての利用証明書をダウンロードして保存することは事務的な煩雑さを伴い、実務的には困難であると思われます。

 そこで、高速道路の利用が多頻度にわたるなどの事情によりすべての利用証明書の保存が困難なときは、クレジットカード会社が発行するクレジットカード利用明細書※3と、高速道路会社及び地方道路公社など(以下「高速道路会社等」といいます)の任意の一取引※4に係る利用証明書をダウンロードして併せて保存することで、仕入税額控除の適用を受けることができるようになりました。

 すべての利用証明書ではなく、任意の一取引に係る利用証明書をダウンロード・保存することでよくなりましたので、事務的な負担は大幅に緩和されました。

※3 個々の高速道路の利用に係る内容が判明するものに限ります。また、取引年月日や取引の内容、課税資産の譲渡等に係る対価の額が分かる利用明細データ等を含みます。

※4 複数の高速道路会社等の利用がある場合は、高速道路会社等ごとに任意の一取引の利用証明書を保存します。

3.ETC利用証明書の保存は不要(緩和その2)

 上記2により、ETC利用時のインボイスの保存方法は大幅に緩和されたといえますが、電子帳簿保存法のルール変更に伴い、さらに保存方法が緩和されました。

 2024(令和6)年4月に国税庁ホームページ「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」の問103(高速道路利用料金に係る適格簡易請求書の保存方法)が改訂され、以下の注意書きが追記されました(下線は筆者による)。

 適格請求書等につき、電磁的記録による提供を受けた場合、仕入税額控除の適用を受けるためには、電帳法に準じた方法により保存する必要があります(消令 50①、消規15の5)。この点、電帳法においては、当該適格請求書等の電磁的記録をダウンロードすることができる場合に、当該適格請求書等に係る電磁的記録の確認が随時可能な状態である場合には、必ずしも当該電磁的記録をダウンロードせずとも、その保存があるものとして、仕入税額控除の適用を受けることとして差し支えありません。
 そのため、ETC利用照会サービスにおいてダウンロードできる期間(15か月間)に、繰り返し、同じ高速道路会社等の道路を利用しているような場合は、いつでも利用証明書をダウンロードできる状態にあるため、結果として、利用証明書のダウンロードは不要となり、クレジットカード利用明細書の保存のみで仕入税額控除の適用を受けることが可能です。なお、ダウンロードできる期間を超えて利用間隔に開きがある高速道路会社等の道路については、利用証明書のダウンロードが必要になりますのでご注意ください。


 電子帳簿保存法では、WEB上で領収書等の確認が随時可能な状態である場合は、ダウンロード・保存は不要というルールに変更されました。

 このルール変更に伴い、繰り返し(15か月に1回以上)ETCを利用している場合は、いつでも利用証明書をダウンロードできる状態にあるため利用証明書のダウンロードは不要となり、クレジットカード利用明細書の保存のみで仕入税額控除ができるようになりました。

 ETC利用時のインボイスの保存方法について、ETC利用証明書の取扱いを中心にみると、「すべてのダウンロード・保存が必要」→「任意の一取引についてダウンロード・保存が必要」→「ダウンロード・保存は不要」というように緩和されています。

インボイス制度導入後の経過措置期間中の簡易課税制度における税抜経理方式による会計処理

 2023(令和5)年10月1日からインボイス制度(適格請求書等保存方式)が開始されました。
 インボイス制度導入後は、インボイス発行事業者以外からの仕入れは原則として仕入税額控除ができませんが、インボイスの保存がなくても帳簿のみの保存で仕入税額控除ができる場合もあり、例えば、経過措置や簡易課税制度などが該当します
 
 今回は、インボイス発行事業者以外の者からの課税仕入れについて、簡易課税制度を選択し、かつ、税抜経理方式を採用している場合の会計処理について確認します。

※ 詳細については、本ブログ記事「インボイスの保存がなくても仕入税額控除できる15のケース」をご参照ください。

1.経過措置期間における本来の会計処理

 免税事業者などのインボイス発行事業者以外の者からの課税仕入れについては、2023(令和5)年10月1日から2026(令和8)年9月30日までの3年間は仕入税額相当額の80%、2026(令和8)年10月1日から2029(令和11)年9月30日までの3年間は仕入税額相当額の 50%を仕入税額控除できる経過措置が設けられています。

 この経過措置期間の最初の3年間に、課税事業者(簡易課税制度及び税抜経理方式を適用)が免税事業者から1,100円(税率10%)の課税仕入れを行ったときの会計処理は、原則として次のようになります。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
仕入 1,020 現金預金 1,100
仮払消費税等 80    

 上記の会計処理は、本則課税(原則課税)を適用している課税事業者と同じになります。
 このような会計処理をするためには、交付された請求書等がインボイスの要件を満たしているかどうか、換言すれば、取引相手がインボイス発行事業者であるかどうかを確認しなければなりません。
 そのうえで(インボイスではないことを確認したうえで)、仕入税額相当額100円(1,100円×100/110)の80%である80円を仮払消費税等として計上します。

2.経過措置期間における簡便な会計処理

 しかし、簡易課税制度を適用している事業者は、インボイスの有無にかかわらず、課税売上げに係る税額にみなし仕入率を乗じて計算した金額の仕入税額控除が認められており、仕入税額控除をするに当たってインボイスの有無は要件とされていません。

 こうしたことを踏まえ、2023(令和5)年12月の消費税経理通達の改正において、税抜経理方式を適用している簡易課税制度適用事業者が課税仕入れを行った場合に、その取引相手がインボイス発行事業者かインボイス発行事業者以外の者かを厳密に区分する事務負担を軽減する観点から、簡便な会計処理が認められることとなりました。

 つまり、簡易課税制度を適用している課税期間を含む事業年度における継続適用を条件として、インボイスの有無にかかわらず全ての課税仕入れについて、課税仕入れに係る支払対価の額に110分の10(軽減税率の対象となるものは108分の8)を乗じて算出した金額を仮払消費税等の額とすることも認められました。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
仕入 1,000 現金預金 1,100
仮払消費税等 100    

3.事務負担軽減のために税込経理方式も

 上記2のとおり、2023(令和5)年12月の消費税経理通達の改正では、税抜経理方式を適用している場合の日々の記帳における事務負担軽減措置が講じられましたが、税抜経理方式を適用している以上は、一定の事務負担(法人税法上の税務調整等)が発生することは避けられないものと考えられます。

 こうしたことから、簡易課税制度適用事業者や計算構造が簡易課税制度と同じである2割特例適用事業者は、税込経理方式を採用することにより事務負担の軽減を図ることも考えられます。

 この点について、事業者が採用する会計処理は原則として継続適用が求められますが、インボイス制度導入を契機としてその会計処理を税込経理方式に変更する場合は特に問題とはなりません。

免税事業者がインボイス登録した場合の「基準期間の課税売上高」の計算方法

 2023(令和5)年10月1日から消費税のインボイス制度がスタートしました。このインボイス制度の導入によって、本来は免税事業者であるにもかかわらず、インボイス発行事業者として登録して課税事業者となった方も多いと思われます。

 今回は、免税事業者である個人事業者がインボイス発行事業者になった場合の基準期間の課税売上高の計算方法について確認します。

1.基準期間における課税売上高とは?

 消費税の納税義務があるかどうかを判定するための基準の一つとして「基準期間における課税売上高」があり、消費税申告書に参考事項として記載することになっています。

 基準期間とは、法人の場合は「その事業年度の前々事業年度」をいいます。前々事業年度が1年未満の場合は、1年分へ換算します
 例えば、前々事業年度(3か月)が免税事業者の場合でその間の課税売上高が330万円(税率は10%とします)のときは、基準期間における課税売上高は330万円×12か月/3か月=1,320万円となります(税抜処理をしません)。
 前々事業年度が課税事業者の場合は、330万円×100/110×12か月/3か月=1,200万円となります(税抜処理をします)。

 個人事業者の基準期間は、「その年の前々年」をいいます。前々年が1年未満の場合でも1年分への換算はしません
 例えば、前々年(3か月)が免税事業者の場合でその間の課税売上高が330万円のときは、基準期間における課税売上高は330万円となります(年換算も税抜処理もしません)。
 前々年が課税事業者の場合は、330万円×100/110=300万円となります(年換算はせず税抜処理をします)。

 このように、基準期間における課税売上高の計算方法は、法人と個人や免税事業者と課税事業者で異なりますが、以下では、免税事業者である個人事業者を前提として、基準期間における課税売上高の計算方法を確認します。

※ 他に「特定期間における課税売上高」がありますが、ここでの説明は省略します。

2.課税期間の中途からインボイス発行事業者となった場合

 本来は免税事業者であるにもかかわらず、インボイス制度がスタートした2023(令和5)年10月1日から課税事業者になった個人事業者は、令和5年10月1日から同年12月31日までの3か月間を消費税の集計期間として令和5年分の消費税申告を行いました。

 この個人事業者が2025(令和7)年分の消費税申告を行うにあたって、その基準期間は前々年である2023(令和5)年となります。
 では、その基準期間における課税売上高はどのように計算するのでしょうか?

 課税事業者となった令和5年10月から12月までの課税売上高を計算すればいいのでしょうか?
 それとも免税事業者であった令和5年1月から9月までの課税売上高も含めて計算するのでしょうか?

 結論は、免税事業者であった令和5年1月から9月までの課税売上高と、課税事業者となった令和5年10月から12月までの課税売上高との合計額を基準期間における課税売上高とします。
 また、免税事業者であった令和5年1月から9月までの課税売上高については、税抜処理を行わないことにも留意する必要があります。

 次の簡単な計算例で確認します(税率は10%とします)。

・令和5年1月~9月の課税売上高・・・550万円
・令和5年10月~12月の課税売上高・・・330万円

 令和7年分申告における「基準期間における課税売上高」は、次のように計算します。
 550万円(税抜処理しない)+330万円×100/110(税抜処理する)=850万円

 なお、上記計算例では、基準期間における課税売上高が850万円(1,000万円以下)となりましたので、この個人事業者は令和7年分の申告において2割特例を適用することができます。

※ 2割特例については、本ブログ記事「『売上税額の2割納税の特例』の適用期間の留意点」、「売上税額の2割納税の特例と簡易課税制度はどちらが有利か?」等をご参照ください。