土地等の取得に要した借入金利子の計算方法と記載例

1.不動産所得に係る損益通算の特例

 不動産所得、事業所得、山林所得及び譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額は、一定の順序(第一次通算、第二次通算、第三次通算)で他の所得の金額から控除することができます。これを損益通算といいます。
 ところが、不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額がある場合に、その年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した金額のうちに、不動産所得を生ずべき業務の用に供する土地等(土地又は土地の上に存する権利をいいます)を取得するために要した借入金の利子の額があるときは、次の金額は生じなかったものとされて損益通算の対象にはなりません(事業税では通算できます)。

(1)「土地等の取得に要した借入金利子の額>不動産所得の損失の金額」の場合
 この場合、不動産所得の損失の金額は生じなかったものとされ、損益通算の対象にはなりません。
 例えば、総収入金額が100万円、必要経費が140万円(そのうち土地取得に要した借入金利子が60万円)だとすると、不動産所得の金額は100万円-140万円=△40万円(損失)になります。
 この場合(借入金利子60万円>損失40万円の場合)、不動産所得の損失40万円は生じなかったものとされ損益通算の対象にはなりません。 

(2)「土地等の取得に要した借入金利子の額≦不動産所得の損失の金額」の場合
 この場合、不動産所得の損失の金額のうち土地等の取得に要した借入金利子の額に相当する金額は生じなかったものとされ、損益通算の対象にはなりません。
 例えば、総収入金額が70万円、必要経費が140万円(そのうち土地取得に要した借入金利子が60万円)だとすると、不動産所得の金額は70万円-140万円=△70万円(損失)になります。
 この場合(借入金利子60万円≦損失70万円の場合)、不動産所得の損失70万円のうち土地取得に要した借入金利子に相当する部分の60万円の損失は生じなかったものとされ損益通算の対象にはなりません(損失のうち10万円だけが損益通算されます)。

 以上のように、不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額がある場合に、土地等の取得に要した借入金の利子の額があるときは、損益通算に注意しなければなりません。
 では、土地等の取得に要した借入金の利子の額は、どのように計算するのでしょうか?
 土地と建物を一括して購入した場合に、土地取得のための資金と建物取得のための資金を別々の金融機関から借り入れている場合は、計算上の問題は特にありません。
 しかし、土地取得のための資金と建物取得のための資金を同一の金融機関から借り入れている場合も多いものと思われます。このような場合には、土地等の取得に要した借入金の利子の額の計算は、次のようにします。

2.土地等の取得に要した借入金の利子の額の計算

 次の設例を用いて、土地等の取得に要した借入金の利子の額の計算方法を確認します。

設例
・土地の取得価額・・・4,000万円
・建物の取得価額・・・6,000万円
・自己資金・・・・・・2,000万円
・借入金・・・・・・・8,000万円
・令和4年分の借入金利子の額・・・160万円
・令和5年分の借入金利子の額・・・152万円
計算
①まず、借入金が建物の取得に優先的に充てられたものとして、土地の取得に要した借入金の額を求めます。

8,000万円(借入金総額)-6,000万円(建物の取得価額)=2,000万円(土地の取得に要した借入金)

②次に、土地の取得に要した借入金の利子の額を求めます。

令和4年分:160万円×2,000万円/8,000万円=40万円
令和5年分:152万円×2,000万円/8,000万円=38万円

※ 令和5年分以降も、当初の借入金の振分け割合(2,000万円/8,000万円)で計算します。

3.収支内訳書(不動産所得用)と確定申告書第一表の記載

 上記の設例において、令和4年分の不動産所得の損失の金額が100万円だとすると、収支内訳書(不動産所得用)と確定申告書第一表の記載は次のようになります。

繰延資産の任意償却はいつまで可能か?

 繰延資産の償却方法に任意償却という方法があります。法人でも個人でもこの任意償却により繰延資産を償却することができますが、すべての繰延資産に任意償却が適用できるわけではありません。
 また、任意償却による場合に何年以内に償却をしなければならないか、償却期間の途中で均等償却から任意償却に変更できるのか、ということも気になります。
 今回は、任意償却のこれらの点について確認します。

1.会計上の繰延資産と税法上の繰延資産

 繰延資産とは、支出した費用でその支出の効果が1年以上に及ぶものをいいます。
 繰延資産には、旧商法上の繰延資産(以下「会計上の繰延資産」といいます)と法人税法施行令14条6号資産(以下「税法上の繰延資産」といいます)があります。
 また、所得税法施行令7条にも会計上の繰延資産と税法上の繰延資産が例示されています。
 法人税と所得税で異なるのは、所得税における会計上の繰延資産には、法人に関するもの(創立費、株式交付費、社債等発行費)がない点です。

 法人税法における会計上の繰延資産と税法上の繰延資産の範囲は、以下のとおりです。

法人税法上の繰延資産 会計上の繰延資産 創立費、開業費、開発費、株式交付費、社債等発行費

税法上の繰延資産

(長期前払費用等)

施設の負担金 公共的施設(道路、堤防、護岸など)
共同的施設(会館、アーケードなど)
資産賃借のための権利金等 建物賃借のための権利金
電子計算機等の賃借に伴う費用
役務の提供を受けるための権利金等 ノウハウの頭金
広告宣伝用資産の贈与費用 看板、ネオン、どん帳など
その他 同業者団体の加入金など

 所得税法における会計上の繰延資産と税法上の繰延資産の範囲は、以下のとおりです。

所得税法上の繰延資産 会計上の繰延資産 開業費、開発費

税法上の繰延資産

(長期前払費用等)

施設の負担金 公共的施設(道路、堤防、護岸など)
共同的施設(会館、アーケードなど)
資産賃借のための権利金等 建物賃借のための権利金
電子計算機等の賃借に伴う費用
役務の提供を受けるための権利金等 ノウハウの頭金
広告宣伝用資産の贈与費用 看板、ネオン、どん帳など
その他 同業者団体の加入金など

2.会計上の繰延資産は任意償却が可能

 繰延資産は、収益との対応関係を考慮して、その支出した費用を原則として償却を通じてその効果の及ぶ期間ににわたって費用配分します。
 ただし、会計上の繰延資産については、均等償却だけではなく任意償却の方法によることもできます。
 任意償却とは、繰延資産の額の範囲内の金額を償却費として認めるもので、その下限が設けられていないことから、支出した年に全額償却してもよく、全く償却しなくてもよいという方法です。
 例えば、開業費(開業準備のために支出した広告宣伝費など)の償却期間は5年とされていますので、その支出した費用を原則として60か月で均等償却(月割償却)することになります。
 一方、任意償却の場合は、その支出した費用を支出した年に全額償却(一時償却)してもよく、全く償却しない(償却額0円)こともできます。
 利益が出ているのなら全額償却することも可能ですし、また、利益が出ていないのであれば、利益が出るまで償却しないことも可能です。

3.任意償却に償却期間の制限はあるか?

 ここで気になるのが、任意償却の場合、何年以内に償却をしなければならないかということです。
 例えば、開業費を均等償却する場合は、その償却期間は5年とされていますが、任意償却による場合も5年以内に償却しなければならないのでしょうか?
 結論を先に述べると、任意償却が可能な会計上の繰延資産の未償却残高は、いつでも償却費として損金算入または必要経費に算入することができます。
 繰延資産となる費用(例えば開業費)を支出した後5年を経過した場合に、償却費を損金算入または必要経費に算入できないとする特段の規定はないことから、繰延資産の未償却残高はいつでも償却費として損金算入または必要経費に算入することができます。
 つまり、何年以内に償却しなければならないというような償却期間の制限はなく、償却期間経過後であっても未償却残高がなくなるまで任意償却することができます。
 なお、会計上の繰延資産(例えば開業費)については、支出した年において5年間で均等償却する方法を選択した場合でも、2年目以降にその未償却残高を任意償却することができます。

「不動産の使用料等の支払調書」に定額の水道代・電気代は含まれるか?

1.支払調書の提出範囲

 「不動産の使用料等の支払調書」は、法人や不動産業者である個人(主として建物の賃貸借の代理や仲介を目的とする事業を営んでいる個人を除く)が、同一人に対して支払った家賃等でその年中の支払金額の合計が15万円を超えるものについては、税務署に提出しなければなりません。
 ただし、法人(人格のない社団等を含みます)に支払う不動産の使用料等については、賃借料を除く権利金、更新料等が対象となります。
 したがって、法人に対して家賃や賃借料のみを支払っている場合は、支払調書の提出は必要ありません。
 不動産の使用料等については下記2で述べますが、事務所や店舗等を賃借する場合に支払う家賃が一般的なケースだと思われます。
 この場合、例えば、法人が個人に対して毎月5万円の家賃を12か月支払った場合は、支払金額の合計が15万円を超えるので支払調書の提出が必要です。
 一方、法人が法人に対して毎月5万円の家賃を12か月支払って支払金額の合計が15万円を超えたとしても、支払調書の提出は必要ありません。

2.不動産の使用料等とは?

 不動産の使用料等とは、具体的には次のようなものをいいます。

(1) 土地、建物の賃借料
(2) 広告等のための塀や壁面等のように土地、建物の一部を使用する場合の賃借料
(3) 催物の会場を賃借する場合などの一時的な賃借料、陳列ケースの賃借料
(4) 地上権、地役権の設定あるいは不動産の賃借に伴って支払われるいわゆる権利金返還を要しないこととなる保証金、敷金等を含みます)、礼金
(5) 契約期間の満了に伴い、または借地の上にある建物の増改築に伴って支払われるいわゆる更新料、承諾料
(6) 借地権や借家権を譲り受けた場合に地主や家主に支払われるいわゆる名義書換料 

3.定額の水道代・電気代は含まれるか?

 不動産の使用料等は上記のようなものが該当しますが、賃貸借契約書で次のように定められている場合は、不動産の使用料をいくらと考えればいいでしょうか?

・賃料 月額50,000円 ・水道代 月額3,000円 ・電気代 月額5,000円

 この賃貸借契約書では、毎月の賃料(家賃)50,000円以外に、水道代と電気代も毎月3,000円と5,000円を支払うことになっています。つまり、実際の使用量にかかわらず、水道代と電気代は賃料と同様に毎月定額を支払うことになります。
 このような場合、支払調書における不動産の使用料の金額は、賃料50,000円だけでいいのか、賃料に水道代と電気代を含めた58,000円(50,000円+3,000円+5,000円=58,000円)とするのか迷います。
 結論は、毎月定額を支払う水道代・電気代も含めた58,000円を不動産の使用料の金額とします。
 名目は水道代・電気代となっていても、実際の使用量にかかわらず定額を支払うのであれば、実質的に賃料(家賃)といえるからです。

不動産等の譲受けの対価の支払調書の書き方-土地建物の内訳が不明の場合

 例えば、不動産売買業を営む法人が個人の顧客から土地付建物を購入した場合、その金額が100万円を超えるときは「不動産等の譲受けの対価の支払調書」(以下「支払調書」といいます)を税務署に提出しなければなりません。
 この支払調書の書き方は、「給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」に記載されています。しかし、土地のみを購入した場合の記載例はあるものの、土地付建物を購入した場合の記載例はありません。
 以下では、土地建物を一括購入した場合の支払調書の書き方を確認します。

1.支払調書の提出義務者

 支払調書を提出しなければならないのは、譲り受けた不動産、不動産の上に存する権利、総トン数20トン以上の船舶、航空機の対価の支払をする法人と不動産業者である個人です。
 ただし、不動産業者である個人のうち、主として建物の賃貸借の代理や仲介を目的とする事業を営んでいる方は、提出義務がありません。
 支払調書の提出範囲は、同一人に対するその年中の支払金額の合計が100万円を超えるものです。
 この100万円には、消費税および地方消費税の額を含めて判断しますが、消費税および地方消費税の額が明確に区分されている場合には、その額を含めないで判断しても差し支えありません。
 なお、不動産等の譲受けには、売買のほか、交換、競売、公売、収用、現物出資等による取得も含まれます。

2.支払調書の記載要領と記載例

 支払調書の各欄の書き方は、「給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」に次のように記載されています。

記載欄名 記載すべき事項
① 支払を受ける者  支払調書を作成する日の現況における不動産等の譲渡者の住所(居所)、本店又は主たる事務所の所在地、氏名(個人名)又は名称(法人名など)を契約書等で確認して記載してください。
 また、【個人番号又は法人番号】欄には、支払を受ける者のマイナンバー又は法人番号を記載してください(マイナンバーを記載する場合は、左端を空白にし、右詰で記載してください)。

(注)支払を受ける者等に支払調書の写しを交付する場合には、マイナンバーを記載して交付することはできませんので、ご注意ください。
② 物件の種類  その譲り受けた不動産等の種類に応じ、土地、借地権、建物、船舶、航空機のように記載してください。
③ 物件の所在地  その譲受けの対価の支払の基礎となった物件の所在地を記載してください。
 この場合、船舶又は航空機については、船籍又は航空機の登録をした機関の所在地を記載してください。
④ 細目  土地の地目(宅地、田畑、山林等)、建物の構造、用途等を記載してください。
⑤ 数量  土地の面積、建物の戸数、建物の延べ面積等を記載してください。
⑥ 取得年月日  不動産等の所有権、その他の財産権の移転のあった年月日を記載してください。
⑦ 支払金額  その年中に支払の確定した金額(未払の金額を含む)を記載してください。
 なお、不動産等の移転に伴い、各種の損失の補償金(次の⑧(摘要)の(4)参照)を支払った場合には、「物件の所在地」欄の最初の行に「支払総額」と記載した上、これらの損失の補償金を含めた支払総額を記載してください(記載例2 を参照)。
⑧(摘要) (1) 譲受けの態様(売買、競売、公売、交換、収用、現物出資等の別)を記載してください。
(2) 譲受けの態様が売買である場合には、その代金の支払年月日、支払年月日ごとの支払方法(現金、小切手、手形等の別)及び支払金額を記載してください。
(3) 譲受けの態様が交換である場合には、相手方に交付した資産の種類、所在地、数量等その資産の内容を記載してください。
(4) 不動産等の譲受けの対価のほかに支払われる補償金については、次の区分による補償金の種類と金額を記載してください。
・建物等移転費用補償金
・動産移転費用補償金
・立木移転費用補償金
・仮住居費用補償金
・土地建物等使用補償金
・収益補償金
・経費補償金
・残地等工事費補償金
・その他の補償金
(5) 不動産等の譲受けに当たってその年中にあっせん手数料を支払った方が、「不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書」の作成・提出を省略する場合には、「あっせんをした者」欄にあっせんをした方の住所(居所)、本店又は主たる事務所の所在地、氏名又は名称、マイナンバー又は法人番号、あっせん手数料の「支払確定年月日」、「支払金額」を記載してください(マイナンバーを記載する場合は、左端を空白にし、右詰で記載してください)。

(注)支払を受ける者等に支払調書の写しを交付する場合には、マイナンバーを記載して交付することはできませんので、ご注意ください。
⑨ 支払者  不動産等の譲受けの対価を支払った方の住所(居所)又は所在地、氏名又は名称、電話番号及びマイナンバー又は法人番号を記載してください(マイナンバーを記載する場合は、左端を空白にし、右詰で記載してください)。

(注)支払を受ける者等に支払調書の写しを交付する場合には、マイナンバーを記載して交付することはできませんので、ご注意ください。

 また、以下2つのケースについて、記載例が掲載されています。

出所:国税庁ホームページ

 記載例1と記載例2は、いずれも土地を購入した場合のものであって、土地付建物を購入した場合(土地と建物を一括購入した場合)の記載例は掲載されていません。
 しかし、不動産販売業を営む法人にとって、土地付建物を購入するケースは頻繁に起こります。
 以下において、土地付建物を購入した場合の支払調書の記載例を確認します。

3.土地付建物を購入した場合の支払調書の記載例

(1) 土地と建物の対価の内訳がわかる場合

 土地付建物を購入した場合の支払金額が、売買契約書で土地と建物に分かれている場合は、それぞれの金額を支払調書に記載します。
 また、土地と建物の金額の内訳は明示されていないものの、売買契約書に消費税額の記載がある場合は、その消費税額から建物の金額を逆算し、支払総額を土地と建物に分けることができます。
 例えば、土地付建物の支払金額が3,000万円で、そのうち消費税額が100万円と売買契約書に記載されている場合は、100万円÷10%×1.1=1,100万円が建物の支払金額になり、3,000万円-1,100万円=1,900万円が土地の支払金額になります。

(2) 土地と建物の対価の内訳が不明の場合

 土地付建物を購入した場合の支払金額が、売買契約書で土地と建物に分かれておらず、消費税額も記載されていない場合は、どのように支払調書に記入すればよいでしょうか?
 もし、支払金額を合理的に土地と建物に分けることができる場合は、その分けた金額を支払調書に記載します。
 しかし、支払金額を合理的に土地と建物に分けることができない、あるいはその作業が煩雑である場合は、上記2の記載例2に準じて、次のように記入しても差し支えありません。

返還されない敷金・保証金と「不動産の使用料等の支払調書」

1.返還されない敷金等は支払調書を提出

 法人が個人に支払った不動産の①地代、②家賃、③権利金、④礼金、⑤更新料は、同一人に対するその年中の支払金額の合計額が15万円を超えるものについては、不動産の使用料等の支払調書(以下「支払調書」といいます)を作成して税務署に提出しなければなりません。
 一方、法人が法人に支払った上記①~⑤のうち、15万円を超える③~⑤については支払調書を税務署に提出しなければなりませんが、①と②は提出不要です。

※ 提出範囲の金額基準の15万円は、原則として消費税および地方消費税の額を含めて判断しますが、消費税および地方消費税の額が明確に区分されている場合には、その額を含めないで判断しても差し支えありません。

 なお、上記の③権利金とは、地上権、地役権の設定あるいは不動産の賃借に伴って支払われる権利金をいい、敷金、保証金等の名目のものであっても返還を要しない部分の金額及び月又は年の経過により返還を要しないこととなる部分の金額を含みます。
 したがって、返還されない敷金・保証金については支払調書の提出が必要です。
 例えば、法人が個人に対して建物の賃借に伴い300万円の保証金を支払いましたが、その保証金の50%相当額については、賃貸借契約上、返還されないことが明らかだとします。この場合は、その保証金の50%相当額である150万円と、その年中に支払われる家賃の金額を支払調書の「支払金額」欄に記載して税務署に提出します。

2.返還されない敷金等に係る支払調書の提出時期

 また、返還されない敷金、保証金等については、返還されないことが確定した都度、その年分の支払調書を提出することになります。
 敷金や保証金として賃貸人に提供される金額は、本来は賃借人の債務を担保するものであり、それ自体は賃貸人の収入となるものではありませんが、敷金や保証金などの名目で授受されるものの中には、当初から、あるいは一定期間が経過すれば、その全部又は一部が賃貸人に帰属することが契約書上で取り決められているものもあります。
 このようなものは、その実質が権利金や更新料等と何ら変わらないものであり、不動産所得の収入金額となりますが、その収入金額の計上時期は、必ずしもその賃貸借契約の終了時ではなく、返還を要しないことが確定した都度、その確定した金額を収入金額として計上することになっています。
 したがって、支払調書についても返還されないことが確定した日の翌年の1月31日までに、その確定した金額を支払金額として記載して提出することになります。

インボイス制度に係る支援措置:R5年4月以降の申請可・少額取引のインボイス保存不要等

 2022(令和4)年12月23日に閣議決定された令和5年度税制改正大綱において、インボイス制度の円滑な実施に向けて、インボイス制度に係るいくつかの支援措置が講じられました。
 前回の記事では、その支援措置のうち売上税額の2割納税の特例について確認しましたが、今回は、2割納税の特例以外の主な措置について概観します。
 また、令和4年度第2次補正予算におけるインボイス制度への対応に係る支援策についても概観します。

1.令和5年4月以降も申請可能

 2023(令和5)年10月1日からインボイス制度が開始されますが、この制度開始時からインボイス発行事業者の登録を受けるためには、原則として2023(令和5)年3月31日までに申請書を提出する必要があり、2023(令和5)年4月1日以降に申請する場合は「困難な事情」があることを記載する必要がありました。
 しかし、令和5年度税制改正大綱においては、事業者の準備状況を考慮して、「困難な事情」の記載がなくても2023(令和5)年4月1日以降も申請できるように改められ、この場合でも制度開始時の登録が可能となりました。

2.少額取引はインボイスの保存不要

 基準期間の課税売上高が1億円以下の事業者等については、税込1万円未満の課税仕入れであれば、インボイスの保存がなくても帳簿の保存のみで仕入税額控除ができるようになりました。この措置は、2023(令和5)年10月1日から6年間実施されます。

※ 本特例の対象となる1万円未満かどうかの判定は、税込価額で行います。また、その金額の判定単位は、課税仕入に係る1商品ごとの金額ではなく、1回の取引の合計額が1万円未満であるかどうかにより判定します。

(1) 対象になる者
 基準期間(法人は2期前、個人は2年前)の課税売上高が1億円以下または特定期間(法人は前期の上半期、個人は前年の1月~6月))の課税売上高が5,000万円以下の者

※ 特定期間における5,000万円の判定に当たり、課税売上高に代えて給与支払額の合計額の判定によることはできません。

(2) 対象となる期間
 2023(令和5)年10月1日~2029(令和11)年9月30日

3.少額値引・返品は返還インボイスの交付不要

 すべての事業者は、税込1万円未満の値引きや返品等については、返還インボイスを交付する必要がなくなりました。振込手数料分を値引処理する場合も対象となります。
 また、この措置には適用期限はありません。

(1) 対象になる者
 すべての事業者

(2) 対象となる期間
 適用期限がない恒久的措置

4.インボイス制度対応に係る補助金支援

 インボイス制度への対応に係る支援策について、令和4年度第2次補正予算では、商工会・商工会議所及びよろず支援拠点等による講習会の開催や専門家派遣を含む事業者からの相談体制の強化に加え、IT導入補助金における補助下限の撤廃や、小規模事業者持続化補助金における補助上限の一律50万円上乗せ等が実施されます。

(1) IT導入補助金の下限撤廃

 IT導入補助金(デジタル化基盤導入類型)について、安価な会計ソフトも対象となるように、補助下限額が撤廃されました。

① 対象になる者
 中小企業・小規模事業者等

② 補助額(下限額を撤廃)
 ・ITツール:~50万円(補助率3/4以内)、50~350万円(補助率2/3以内)
 ・PC、タブレット等:~10万円(補助率1/2以内)
 ・レジ、券売機等:~20万円(補助率1/2以内)

③ 補助対象
 ソフトウェア購入費、クラウド利用費(最大2年分)、ハードウェア購入費等

(2) 小規模事業者持続化補助金の50万円上乗せ

 小規模事業者持続化補助金について、免税事業者がインボイス発行事業者に登録した場合、補助上限額が一律50万円加算 されます。

① 対象になる者
 小規模事業者

② 補助上限
 50~200万円(補助率2/3以内、一部の類型は3/4以内)が、100~250万円(インボイス発行事業者の登録で50万円プラス)

③ 補助対象
 税理士相談費用、機械装置導入、広報費、展示会出展費、開発費、委託費等
 

インボイス制度に係る支援措置:売上税額の2割納税

 2022(令和4)年12月23日に閣議決定された令和5年度税制改正大綱において、インボイス制度の円滑な実施に向けて、インボイス制度に係る支援措置がいくつか講じられました。
 以下では、その支援措置のうち、売上税額の2割納税の特例について概観します。

1.売上に係る消費税の2割の納税でよい

 消費税の納税額は、売上に係る消費税(売ったときに受け取った消費税)から仕入れに係る消費税(買ったときに支払った消費税)を差引いて計算します。
 例えば、税率が10%の場合、77,000円で仕入れた商品を110,000円で売ったとすると、納税額は10,000円(受け取った消費税)から7,000円(支払った消費税)を差引いた3,000円になります。この支払った消費税を差引くことを「仕入税額控除」といいます。
 今回の令和5年度税制改正大綱では、免税事業者がインボイス発行事業者になった場合の税負担と事務負担を軽減するために、仕入れに係る消費税(買ったときに支払った消費税)がいくらであろうと、売上に係る消費税(売ったときに受け取った消費税)の2割だけを納税すればよいという特例が設けられました。
 先の例でいうと、実際には仕入に係る消費税が7,000円だったとしても、売上に係る消費税10,000円の2割である2,000円を納税すればよいことになり、1,000円分の税負担が軽減されます。
 また、消費税の申告を行うためには、通常、経費等の集計やインボイスの保存などが必要となりますが、この特例を適用すれば、所得税・法人税の申告で必要となる売上高を税率毎(軽減税率8%と標準税率10%など)に把握するだけで、申告書の作成(納税額の計算)ができるようになります。
 さらに、事前の届出も不要ですので、申告時に適用するかどうかの選択が可能です。
 この特例をまとめると、次のようになります。

(1) 特例の対象となる者
 免税事業者からインボイス発行事業者になった者(基準期間の課税売上高が1,000万円以下等の要件を満たす者で、インボイス発行事業者の登録をしなければ課税事業者にならなかった者)が対象

(2) 特例の対象となる期間
 ・法人は、2023(令和5)年10月1日~2026(令和8)年9月30日を含む課税期間
 ・個人事業者は、2023(令和5)年10~12月の申告から2026(令和8)年分の申告まで

 なお、課税期間の特例の適用を受ける課税期間等については適用されません(2割納税の特例の適用期間については、本ブログ記事「『売上税額の2割納税の特例』の適用期間の留意点」をご参照ください)。

(3) 事前の届出
 この特例を適用するにあたって、事前の届出は不要(確定申告書に特例の適用を受ける旨を付記するだけ)

2.簡易課税制度との関係

 令和5年度税制改正大綱で設けられた上記の売上税額の2割納税の特例は、従来の簡易課税制度におけるみなし仕入率を、業種にかかわりなく一律に80%とすることと同義であるといえます。
 免税事業者がインボイス発行事業者になる場合に、仕入税額控除の方法を原則課税ではなく簡易課税にするという選択肢もありましたが、今回設けられた2割納税の特例との有利不利を考慮したうえで判断しなければなりません(2割納税の特例と簡易課税の有利不利については、本ブログ記事「売上税額の2割納税の特例と簡易課税制度はどちらが有利か?」をご参照ください)。

※ 免税事業者がインボイス発行事業者となる場合の簡易課税制度の選択については、本ブログ記事「免税事業者がインボイス発行事業者となる場合の事前準備」をご参照ください。

所得金額調整控除における「23歳未満の扶養親族」とは?

1.所得金額調整控除(子ども等)の適用対象者

 所得金額調整控除は2020年分(令和2年分)から適用されており、子ども・特別障害者等を有する者等の場合と給与所得と年金所得の双方を有する者の場合の2種類の控除があります。
 このうち、子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除は、年末調整において適用することができます。
 一方、給与所得と年金所得の双方を有する者の所得金額調整控除については年末調整では適用を受けることができませんので、適用を受けようとする場合は確定申告をする必要があります。

 子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除の適用を受けることができる人は、その年中の給与の収入金額が850万円を超える給与所得者で、次の(1)から(3)のいずれかに該当する人です。

(1) 本人が特別障害者に該当する人
(2) 年齢23歳未満の扶養親族を有する人
(3) 特別障害者である同一生計配偶者又は扶養親族を有する人

 この控除は扶養控除と異なり、同一生計内のいずれか一方のみの所得者に適用するという制限がありません。したがって、例えば夫婦ともに給与の収入金額が850万円を超えており、夫婦の間に1人の年齢23歳未満の扶養親族である子がいるような場合には、その夫婦双方がこの控除の適用を受けることができます。

2.生まれたての子も23歳未満の扶養親族に含まれる!

 この所得金額調整控除(子ども等)の適用を受けるにあたって、上記1の「年齢23歳未満の扶養親族」は、控除対象扶養親族である16歳以上を年齢の下限とするのか(つまり16歳以上23歳未満)、特定扶養親族である19歳以上を年齢の下限とするのか(つまり19歳以上23歳未満)、あるいは年齢23歳未満であれば年齢の下限はないのか(つまり0歳以上23歳未満)について疑問が生じます。

 結論を先に述べると、所得金額調整控除(子ども等)における「年齢23歳未満の扶養親族」に年齢の下限はありません。したがって、0歳以上23歳未満であれば「年齢23歳未満の扶養親族を有する人」に該当します。
 用語の定義を考えると、扶養親族とは「所得者と生計を一にする親族(配偶者、青色事業専従者として給与の支払を受ける人及び白色事業専従者を除きます)で、合計所得金額が48万円以下の人」をいいます。これに「年齢23歳未満」という要件が加わるだけですので、所得金額調整控除(子ども等)における「年齢23歳未満の扶養親族」に年齢の下限はないことになります。
 例えば、年末の12月31日に子が生まれた場合でも、年齢 23 歳未満の扶養親族を有するという要件を満たすことになりますので、所得金額調整控除(子ども等)の適用を受けることができます。

3.所得金額調整控除(子ども等)の再計算

 年末調整において所得金額調整控除(子ども等)の適用を受けようとする場合、年齢23歳未満の扶養親族を有するかどうかなどの判定は、所得金額調整控除申告書を提出する日の現況により判定することとなります。
 年末調整後、その年12月31日までの間に従業員等に子が生まれ、所得金額調整控除(子ども等)の適用要件を満たして年末調整による年税額が減少することとなる場合、その年分の源泉徴収票を給与等の支払者が作成するまでに、その異動があったことについて従業員等から申出があったときは、年末調整の再計算の方法でその減少することとなる税額を還付してもよいこととされています。
 なお、年末調整の再計算によらず、従業員等が確定申告をすることによって、その減少することとなる税額の還付を受けることもできます。

 また、例えば、20歳の子を23歳未満の扶養親族に該当するものとして所得金額調整控除(子ども等)の適用を受けていたところ、その子のアルバイト収入が当初の見積額よりも多くなり、結果的に合計所得金額が48万円を超えることとなったため年末調整による年税額が増加する場合にも、年末調整の再計算を行います。
 ただし、その従業員等が他の年齢23歳未満の扶養親族を有するなど所得金額調整控除(子ども等)の適用要件を満たしている場合には、所得金額調整控除申告書について、当初申告された子以外の要件に該当する者に訂正されるのであれば、所得金額調整控除(子ども等)については年末調整の再計算を行う必要はありません。

法人住民税の均等割における事務所、事業所、寮等とは?

1.法人住民税均等割の納税義務者

 法人に課される地方税の代表的なものに、都道府県税と市町村民税があります。また、都道府県民税と市町村民税は、法人税割と均等割に大別されます。
 法人税割は、国税である法人税額を基準にして課される税金ですので、基本的には利益が出ている法人が対象になります。
 一方、均等割は利益が出ていなくても課される税金で、地方団体(都道府県と市町村)が提供する行政サービスを享受していることに対する負担という意味合いが強いといえます。
 利益が出ていなくても課される均等割の納税義務者については、例えば兵庫県のホームページには、次の表が掲載されています。

出所:兵庫県ホームページ

 また、兵庫県神戸市のホームページには、次の表が掲載されています。

出所:神戸市ホームページ

 上記の表から、法人住民税の均等割の納税義務者は、兵庫県内や神戸市内に「事務所または事業所(本店・支店・工場など)」あるいは「寮・宿泊所・クラブ・保養所・集会所など」を設けている法人であることがわかります。
 しかし、ここで疑問が生じます。
 「事務所または事業所」(以下「事務所等」といいます)や「寮・宿泊所・クラブ・保養所・集会所など」(以下「寮等」といいます)は、ある程度の例示がされているとはいえ、具体的にはどのようなものを指すのでしょうか?
 例えば、倉庫や駐車場、社員寮などは事務所等または寮等に該当するのでしょうか?

2.事務所等とは?

 事務所等とは、事業の必要から設けられた人的および物的設備であって、そこで継続して事業が行われる場所です。
 つまり、事務所等の要件として、人的設備、物的設備、事業の継続性の三要件があり、三要件を備えている必要があるということです。

(1) 人的設備
① 人的設備とは事業活動に従事する自然人をいい、正規従業員だけでなく、法人の役員、清算法人における清算人、アルバイト、パートタイマーなども含みます。
② 人材派遣会社から派遣された者も、派遣先企業の指揮および監督に服する場合は人的設備となります。
③ 規約上,代表者または管理人の定めがあるものについては、特に事務員等がいなくても人的設備があるとみなします。

(2) 物的設備
① 物的設備とは、事業が行われるのに必要な土地、建物があり、その中に機械設備または事務設備など、事業を行うのに必要な設備を設けているものをいいます。
② 物的設備は、それが自己の所有であるか否かは問いません。
③ 規約上、特に定めがなく、代表者の自宅等を連絡所としているような場合でも、そこで継続して事業が行われていると認められるかぎり、物的設備として認められます。

(3) 事業の継続性
① 事務所等において行われる事業は、法人の本来の事業の取引に関するものであることを必要とせず、本来の事業に直接、間接に関連して行われる付随的事業であっても社会通念上そこで事業が行われていると考えられるものについては、事務所等とします。
② 事業の継続性には、事業年度の全期間にわたり連続して行われる場合のほか、定期的または不定期的に、相当日数、継続して行われる場合を含みます。
 また、そこで事業が行われた結果、収益ないし所得が発生することは必ずしも必要としません。例えば、単に商品の引渡しなどをする場合でも、相当の人的物的設備を備えていれば事務所等に該当します。
③ 原則として、2~3か月程度(建設工事現場の場合は6か月程度)の一時的な事業の用に供される現場事務所、仮小屋などは事務所等に該当しません。

 以上の三要件から、事務所等の範囲に含まれるか否かを判断するにあたって、注意を要する事例を以下に掲げます。

・材料置場、倉庫および車庫等など単に物的設備のみが独立して設けられたものは、事務所等に該当しません(人的設備のない無人倉庫や独立した車庫は、事務所等とはなりません)。
・モデルハウスは、商品見本としての性格が強いものは事務所等に該当しませんが、展示場として人的設備、物的設備のあるものは、事務所等に該当します。
・デパート内のテナントは、事務所等に該当します。
・法人の出張所を社員の自宅におき、他に事務所を備えず、かつ、社員自ら事務を処理しており、その社員以外に事務員がいない場合は、事務所等には該当しません(例えば、新聞社通信部、保険代理店など)。

3.寮等とは?

 寮等とは、寮、宿泊所、クラブ、保養所、集会所、休憩所その他これらに類するもので、法人等が従業員の宿泊、慰安、娯楽等の便宜を図るために常時設けられている施設をいいます。
 ここで疑問が生じるのは、独身寮や社員寮、社員住宅(社宅)は「寮」に含まれるのか否かということです。
 結論を先に述べると、独身寮、社員寮、社員住宅は寮には含まれません。
 独身寮、社員寮、社員住宅のように特定の従業員の居住のための施設は、この寮等には該当しませんので、均等割は課されません。

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「決算日直前に完成した保養所の均等割は支払う必要があるか?」
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法人成りにおける個人と法人の税務上の取扱い

 個人事業主が既存事業を法人化することを、法人成りといいます。法人成りの際には、個人事業主時代の棚卸資産や固定資産等を法人に引き継ぐことがあります。
 主な引き継ぎ方法には現物出資と売却がありますが、一般的には売却によることが多いと思われます。
 そこで、以下では、法人成りに際して個人から法人へ棚卸資産や固定資産を売却した場合の税務上の取扱いについて確認します。

1.個人から法人へ棚卸資産を売却した場合

 個人事業主が棚卸資産(商品や原材料など)を法人へ売却した場合は、所得税における所得区分は事業所得になります。したがって、個人の確定申告では、通常の売上に加えて法人成りの際の法人への売上も計上しなければなりません。
 また、棚卸資産が課税資産の場合は消費税における課税区分は課税売上に該当しますが、非課税資産(例えば、不動産販売業における土地など)の場合は非課税売上に該当します。
 一方、個人から棚卸資産を購入した法人は、その棚卸資産を仕入(商品)として計上します。

2.個人から法人へ減価償却資産を売却した場合

 個人事業主が減価償却資産(建物附属設備、車両運搬具、備品など)を法人へ売却した場合は、所得税法における所得区分は譲渡所得(総合課税)になります。
 また、課税資産の場合は消費税における課税区分は課税売上に該当しますが、非課税資産(例えば、介護タクシー事業における福祉車両など)の場合は非課税売上に該当します。
 一方、個人から減価償却資産を購入した法人は、その減価償却資産を有形固定資産として計上し、中古資産の取得として見積法又は簡便法による耐用年数で減価償却を行います(中古資産の耐用年数によらずに、法定耐用年数で減価償却することもできます)。
 ただし、取得価額が30万円未満の少額減価償却資産については、損金経理を要件として全額を損金算入することができます(青色申告を行う中小企業者)。

※ 車椅子のまま車に乗るタイプであれば消費税は非課税ですが、助手席や後部座席が回転・昇降するタイプは、消費税の課税対象となります。

3.個人から法人へ事業用建物・土地を売却した場合

 個人事業主が事業用の建物や土地を法人へ売却した場合は、所得税法における所得区分は譲渡所得(分離課税)になります。
 また、建物(課税資産)の場合は消費税における課税区分は課税売上に該当しますが、土地(非課税資産)の場合は非課税売上に該当します。
 一方、個人から建物や土地を購入した法人は、その建物や土地を有形固定資産として計上し、建物については中古資産の取得として見積法又は簡便法による耐用年数で減価償却を行います(中古資産の耐用年数によらずに、法定耐用年数で減価償却することもできます)。
 仮に、建物の取得価額が30万円未満だった場合は、損金経理を要件として全額を損金算入することができます(青色申告を行う中小企業者)。
 なお、土地は非減価償却資産であるため、減価償却は行いません。