18歳への成年年齢の引下げに伴う税制上の措置

 明治時代から約140年間、日本での成年年齢は20歳と民法で定められていました。この民法が改正され、2022(令和4)年4月1日から、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。
 この成年年齢の引下げにより、18歳になれば、これまでは親の同意が必要だった携帯電話を契約する、一人暮らしの部屋を借りる、クレジットカードをつくる、高額な商品を購入したときにローンを組むなどといった行為が、親の同意なしに自分一人でできるようになります。
 また、18歳になれば、10年有効のパスポートを取得できるほか、公認会計士や司法書士、行政書士などの資格を取得したりすることもできるようになります。
 一方、成年年齢が18歳になっても、飲酒や喫煙、競馬などの公営競技に関する年齢制限は、これまでと変わらず20歳とされています。
 成年年齢の引下げは様々なところに影響がありますが、以下では成年年齢の引下げに伴う税制上の措置について確認します。

1.相続税の未成年者控除

 未成年者控除は、相続で財産を引き継ぐ相続人が未成年の場合、相続税の額から一定の金額を差し引くことができる制度です。
 これまでは未成年者の相続人が満20歳になるまでの年数1年につき10万円が控除されましたが、2022(令和4)年4月1日からは満18歳になるまでの年数に変わります。
 例えば、相続のときの年齢が12歳6ヶ月とすると、未成年者控除として控除できる金額は、10万円×(18歳-12歳)=60万円となり、満20歳で計算するよりも20万円少なくなります。
 2022(令和4)年4月1日以後に相続により取得する財産に係る相続税から適用されます。
 なお、未成年者控除の適用があるのは法定相続人だけですので、相続人ではない孫が遺言によって財産を引き継いでも、未成年者控除は適用できません。

※ 1年未満の端数があるときは切捨てますので、12歳として計算します。

2.相続時精算課税制度

 相続時精算課税制度は、贈与税と相続税を一体化して遺産相続時に税額を精算する制度です。
 従来の制度は、60歳以上の父母や祖父母から、20歳以上の子や孫が財産の贈与を受けたときに、累計2,500万円までは贈与税が非課税になるというものでした。
 今回の成年年齢の引下げにより、相続時精算課税制度の適用を受けることができるのが18歳以上の子や孫となり、従来の20歳と比べると2年早くこの制度の活用を検討することができるようになりました。
 2022(令和4)年4月1日以後に贈与により取得する財産に係る贈与税から適用されます。

※ その年(贈与があった年)の1月1日における年齢です。

3.直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率の特例

 従来の制度は、20歳以上の子や孫が、父母や祖父母などの直系尊属から受ける贈与については特例贈与として、一般贈与(特例贈与以外の贈与)より低い税率(特例税率)が適用されるというものでした。
 今回の成年年齢の引下げにより、特例贈与を受けた子や孫が18歳以上であれば、特例税率が適用されることとなります。
 2022(令和4)年4月1日以後に贈与により取得する財産に係る贈与税から適用されます。

※ その年(贈与があった年)の1月1日における年齢です。

4.住宅取得等資金の贈与税非課税の特例

 今回の成年年齢の引下げにより、父母や祖父母などの直系尊属から、住宅用の家屋の新築、取得、増改築等をするための資金を、18歳以上(従来は20歳以上)の子や孫が贈与された場合、一定の要件を満たすときは一定の金額まで贈与税が非課税とされます。
 2022(令和4)年4月1日以後に贈与により取得する財産に係る贈与税から適用されます。

※ その年(贈与があった年)の1月1日における年齢です。

親から土地と借入金の贈与を受けた場合の贈与税等の課税関係

 先日、次のような質問を受けました。

 「兄弟2人(兄をA、弟をBとします)で親から土地の贈与を受けることを考えているが、親がその土地を取得したときの借入金が残っており、その借入金をAが全額負担した場合でも、Aに贈与税がかかるのか?」

 これは、借入金付きで土地の贈与を受ける「負担付贈与」といわれるものです。この質問に答えるために、次の数値例を設定します(Aが借入金の債務者となることにつき、銀行の承諾を得ているものとします)。

・土地の相続税評価額・・・4,000万円
・土地の時価・・・5,000万円
・借入金残高・・・2,500万円

1.借入金を全額負担しても贈与税はかかるか?

 例えば、贈与を受ける土地の割合がA:B=3:2だとしたら、借入金を全額負担したとしてもAには贈与税がかかります。
 本来、贈与税を計算するときの評価は相続税評価額によりますが、不動産の負担付贈与の場合は、時価で評価をします。
 一方、負担付贈与の場合は、贈与財産の価額から負担額を差し引いた価額が贈与税の課税対象になります。
 したがって、Aの贈与税の計算をするときの課税対象は、5,000万円×3/5-2,500万円=500万円となり、この500万円から基礎控除110万円を引いた390万円に対して贈与税がかかります。

 また、贈与を受ける土地の割合がA:B=1:1だとしたら、借入金を全額負担したAには贈与税はかかりません。
 この場合のAの贈与税の課税対象は、5,000万円×1/2-2,500万円=0円となるからです。

2.贈与した親に所得税・住民税がかかる可能性がある

 通常の贈与であれば無償で資産を譲渡するので、贈与者である親が課税されることはありません。
 しかし、今回のような借入金付きで土地の贈与をする負担付贈与の場合は、親の借入金(債務)が消滅し、親は債務の消滅という経済的利益を得ることになるのでみなし譲渡課税の対象になります(所得税法第59条)。
 つまり、2,500万円の借入金が消滅するということは、土地を2,500円で売却したのと同じとみなされ、親には所得税・住民税がかかる可能性があります。
 例えば、土地の取得価額が2,000万円だったとしたら、2,500万円-2,000万円=500万円の譲渡益となり、所得税・住民税がかかります(各種特例は考慮していません)。
 一方、土地の取得価額が3,000万円だったとしたら、2,500万円-3,000万円=△500万円の譲渡損となり、所得税・住民税はかかりません。

 

適格請求書発行事業者の登録申請書の書き方と記載例(R3.10.1~R5.9.30提出分)

1.概要

 2023(令和5)年10月1日より適格請求書等保存方式(インボイス制度)が開始されます。
 適格請求書とは、売手が買手に対し正確な適用税率や消費税額等を伝えるための手段であり、登録番号の他一定の事項が記載された請求書や納品書、領収書等をいいます。
 この適格請求書を発行できるのは適格請求書発行事業者に限られており、適格請求書の保存と帳簿の保存が仕入税額控除の要件とされています。
 以下において、国内事業者(個人事業者かつ免税事業者)が適格請求書発行事業者の登録を受けようとする場合に税務署長に提出する「適格請求書発行事業者の登録申請書」の書き方について確認します。
 なお、2023(令和5)年10月1日から適格請求書発行事業者の登録を受けるためには、原則として2023(令和5)年3月31日までに申請書を提出する必要があります

※ 2022(令和4)年12月23日に閣議決定された令和5年度税制改正大綱において、2023(令和5)年4月以降の申請でも制度開始時に登録が可能となりました。インボイス制度に関する令和5年度税制改正大綱については、本ブログ記事「インボイス制度に係る支援措置:R5年4月以降の申請可・少額取引のインボイス保存不要等」、「インボイス制度に係る支援措置:売上税額の2割納税」をご参照ください。

2.具体的な記載方法

(1) 「申請者」欄

 「氏名又は名称」欄には、屋号は記載せずに氏名(姓と名の間は1文字空けます)のみを記載します。
 屋号の公表を希望する場合は、別途「適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出書」の提出が必要です。
 「代表者氏名」欄と「法人番号」欄は、個人事業者の場合は記載不要です。

(2) 「事業者区分」欄

 「事業者区分」欄は、この申請書を提出する時点において課税税事業者である場合は課税事業者に、免税事業者である場合は免税事業者に✓を付けます。
 免税事業者に✓を付ける場合は、次葉「免税事業者の確認」欄の記載が必要です。

(3) 「困難な事情」欄

 「困難な事情」欄は、2023(令和5)年10月1日から登録を受けようとする事業者が、2023(令和5)年3月31日(特定期間における課税売上高又は給与等支払額が1,000万円を超えたことにより納税義務が免除されないこととなる場合は2023(令和5)年6月30日)までにこの申請書を提出できなかったことにつき困難な事情がある場合は、その困難な事情を記載します
 例えば、「令和5年8月1日開業」などと記載します。なお、困難の度合いは問われません。

※ 2022(令和4)年12月23日に閣議決定された令和5年度税制改正大綱において、事業者の準備状況を考慮して、「困難な事情」の記載がなくても2023(令和5)年4月以降の申請ができるようになりました(詳細については、本ブログ記事「登録制度の見直しと手続きの柔軟化:インボイス制度負担軽減措置」をご参照ください)。

(4) 「免税事業者の確認」欄

 「免税事業者の確認」欄は、初葉の「事業者区分」欄で免税事業者に✓を付けた場合に記載します。
 2023(令和5)年10月1日から適格請求書発行事業者の登録を受ける場合は、上のチェックボックスに✓を付けます(下のチェックボックスに✓を付けた場合を除きます)。
 例えば、申請書提出時点(令和4年5月31日)において免税事業者であり、令和5年分(令和5年1月1日~令和5年12月31日)も免税事業者ですが、この申請書を提出して令和5年10月1日から適格請求書発行事業者の登録を受ける場合が該当します。
 上のチェックボックスに✓を付けた場合は、「個人番号」欄や「事業内容等」欄も記載します(個人番号を必ず記載し、本人確認書類の写しを添付します)。
 この新様式では「登録希望日」欄が新設されましたが、これは棚卸資産の調整措置の適用を考慮して設けられました。令和5年10月1日に登録を受けることを希望する場合は、記載不要です。令和5年10月2日以後に登録を受けることを希望する場合は、その日付を記載してください(令和5年10月2日から令和6年3月31日までの日に限ります)。
 なお、登録希望日を記載できるのは、登録希望日の属する課税期間の基準期間が終了し、登録希望日において免税事業者である事業者に限ります。例えば、個人事業者又は12月決算の法人が、令和6年1月1日を登録希望日として記載するには、令和4年が終了し、令和4年の課税売上高が1,000万円以下である場合となります。

 下のチェックボックスは、消費税課税事業者届出書又は消費税課税事業者選択届出書を提出している場合で、課税期間の初日から適格請求書発行事業者の登録を受ける場合に✓を付けます。
 例えば、申請書提出時点(令和4年5月31日)では免税事業者ですが、令和3年分(令和3年1月1日~令和3年12月31日)の課税売上高が1,000万円を超えたことにより令和5年分(令和5年1月1日~令和5年12月31日)は課税事業者となる場合(課税事業者届出書を提出しています)が該当します。
 この場合、右側にある「課税期間の初日」欄には、令和5年1月1日と令和5年10月1日のどちらを記載しても構いません。どちらを記載しても、登録年月日は令和5年10月1日となります。

(5) 「登録要件の確認」欄

 「登録要件の確認」欄は、すべての事業者が記載する必要があります。
 「課税事業者です。」欄は、申請書提出時点(令和4年5月31日)において免税事業者であっても、令和5年10月1日から適格請求書発行事業者の登録を受ける場合に「はい」に✓を付けます。
 「納税管理人を定める必要のない事業者です。」欄は、定める必要がない場合に「はい」に✓を付けます
 「消費税法に違反して罰金以上の刑に処せられたことはありません。」欄は、処せられたことがない場合に「はい」に✓を付けます(加算税や延滞税は罰金ではありません)。

※ 2022(令和4)年10月11日午前8時30分以降は、e-Taxにおける旧様式(令和4年度税制改正反映前の登録申請書)による提出はできなくなります。

令和4年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の書き方と記載例

 年末調整では、勤務先に各種申告書(扶養控除等申告書、基礎控除・配偶者控除等・所得金額調整控除申告書、保険料控除申告書、住宅借入金等特別控除申告書)を提出することで、いろいろな控除を受けることができます。
 これらの申告書のうち、今回は2022(令和4)年分扶養控除等申告書の書き方を確認します。扶養控除等申告書には2023(令和5)年分もありますが、令和4年分は今年(令和4年)の年末調整の計算に使用するため、令和5年分は来年(令和5年)1月から支払う給与の計算に使用するため、勤務先に提出します。
 令和4年分扶養控除等申告書は、昨年(令和3年)の年末調整時に提出済み、途中入社の方は入社時に提出済みだと思われますが、今年(令和4年)の年末調整で修正事項(結婚や出産により扶養者が増えた等)の有無を確認するため、勤務先より配布されます。
 以下で、令和4年分扶養控除等申告書の書き方について確認します。

※ 令和4年分基礎控除・配偶者控除等・所得金額調整控除申告書については、本ブログ記事「令和4年分基礎控除・配偶者控除等・所得金額調整控除申告書の書き方と記載例」を、令和4年分保険料控除申告書については「令和4年分給与所得者の保険料控除申告書の書き方と記載例」を、年末調整で勤務先に提出する書類については「年末調整に必要な書類(各種申告書と証明書等)」をご参照ください。

1.氏名、住所などの記入

(1) 所轄税務署長等
 給与の支払者(勤務先)の所在地等の所轄税務署長とあなた(給与所得者)の住所地等の市区町村長を記載します。

(2) 給与の支払者の法人(個人)番号
 この申告書を受理した給与の支払者が、給与の支払者の個人番号又は法人番号を付記します。給与の支払者が法人の場合は、給与の支払者の法人番号をあらかじめ記載(印字)して、給与所得者に配付しても差し支えありません。

(3) あなたの個人番号
 あなたの個人番号を記載する必要がありますが、一定の要件の下、個人番号の記載を要しない場合がありますので、給与の支払者に確認してください。
※本ブログ記事「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」のマイナンバー記載を省略する方法」をご参照ください。

(4) あなたの住所又は居所
 令和4年分は、令和4年12月31日時点の住所を記載します(給与の支払者の指示に従ってください)。令和5年分は、令和5年1月1日時点の住所を記載します。

(5) 配偶者の有無
 ここでいう配偶者とは、一定の要件を満たす必要のある源泉控除対象配偶者のことではありません。単に配偶者がいれば「有」に○、いなければ「無」に○を付けます。

(6) 従たる給与についての扶養控除等申告書の提出
 2か所以上から給与の支払を受けている人が、他の給与の支払者に「従たる給与についての扶養控除等申告書」を提出している場合に◯を付けます。

2.源泉控除対象配偶者、控除対象扶養親族の記入

(1) 源泉控除対象配偶者
 配偶者が「源泉控除対象配偶者」となるには、以下の要件を満たす必要があります。
① あなたの所得金額が900万円以下である(給与収入のみならば年収1,095万円以下)
② 配偶者の所得金額が95万円以下である(給与収入のみならば年収150万円以下)
③ あなたと生計を一にする配偶者である
※「生計を一にする」については、本ブログ記事「所得控除における『生計を一にする』の判定基準」をご参照ください。
④ 青色事業専従者として給与の支払を受ける人及び白色事業専従者のいずれにも該当しない
 上記4要件を満たす場合は、配偶者の情報を記入します。なお、年末調整において配偶者(特別)控除の適用を受けるには、この欄の記載の有無に関わらず「給与所得者の配偶者控除等申告書」の提出が必要です。

(2) 控除対象扶養親族
 親族が「控除対象扶養親族」となるには、以下の要件を満たす必要があります(①~③は扶養親族の要件)。
① 親族の所得金額が48万円以下である(給与収入のみならば年収103万円以下)
② あなたと生計を一にする親族である
③ 配偶者、青色事業専従者として給与の支払を受ける人及び白色事業専従者のいずれにも該当しない
④ 年齢16歳以上である(平成19年1月1日以前生)
 上記4要件を満たす場合は、親族の情報を記入します。なお、児童福祉法の規定により養育を委託されたいわゆる里子や老人福祉法の規定により養護を委託されたいわゆる養護老人で、あなたと生計を一にし、令和4年中の合計所得金額の見積額が48万円以下の人も扶養親族に含まれます。

(3) 個人番号
 源泉控除対象配偶者及び控除対象扶養親族の個人番号を記載する必要がありますが、一定の要件の下、個人番号の記載を要しない場合がありますので、給与の支払者に確認してください(上記1.(3)参照)。

(4) 老人扶養親族
 控除対象扶養親族が年齢70歳以上(昭和28年1月1日以前生)の場合には、次のとおりいずれかに✓を付けます。
① その人があなた又はあなたの配偶者の直系尊属で、あなた又はあなたの配偶者のいずれかと同居を常況としている人であるとき→「同居老親等」に✓を付けます。
② その人が①以外の人であるとき →「その他」に✓を付けます。

(5) 特定扶養親族
 控除対象扶養親族が年齢19歳以上23歳未満(平成12年1月2日~平成16年1月1日生)の場合に、✓を付けます。

(6) 非居住者である親族
 源泉控除対象配偶者又は控除対象扶養親族が非居住者である場合に○を付けます。この場合、親族関係書類の添付等が必要です。
※「非居住者」とは、国内に住所を有せず、かつ、現在まで引き続いて1年以上国内に居所を有しない個人をいいます。

3.障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生の記入

(1) 同一生計配偶者
 同一生計配偶者が一般の障害者、特別障害者又は同居特別障害者に該当する場合には、該当する欄に✓を付けます。
※「同一生計配偶者」とは、あなたと生計を一にする配偶者(青色事業専従者として給与の支払を受ける人及び白色事業専従者を除きます)で、令和4年中の合計所得金額の見積額が48万円以下の人をいいます。

(2) 扶養親族
 扶養親族が一般の障害者、特別障害者又は同居特別障害者に該当する場合には、該当する欄に✓を付けます。
 なお、障害者控除の対象となる扶養親族は、控除対象扶養親族とは異なり、年齢16歳未満(平成19年1月2日以後生)の扶養親族も対象となります。

(3) 寡婦、ひとり親、勤労学生
 あなたが寡婦、ひとり親、勤労学生に該当する場合に✓を付けます
 寡婦は、ひとり親に該当しない女性で、以下のいずれかに当てはまる人です。
① 所得金額が500万円以下で、夫と離婚した後に婚姻をしておらず、扶養親族がいる
② 所得金額が500万円以下で、夫と死別した後婚姻をしていない、もしくは夫の生死が明らかでない
 ひとり親は、現在婚姻していない人、もしくは配偶者の生死が明らかでない一定の人のうち、以下のすべてに当てはまる人です。
① 所得金額が500万円以下である(給与収入のみならば、年収6,777,778円以下)
② 生計を一にする子がいる
③ 事実上の婚姻関係にある人がいない
※寡婦、ひとり親については、本ブログ記事「ひとり親控除の新設と寡婦(夫)控除の改正」をご参照ください。
 勤労学生は、以下のすべてに当てはまる人です。
① あなたが学生である(小学校、中学校、高等学校、高等専門学校、大学の学生、国や地方公共団体、学校法人などが設立した専修学校、各種学校、または職業訓練学校のうち一定の要件を満たす学校の学生)
② アルバイトなどの勤労による所得金額が75万円以下である(収入が1つの勤務先からのアルバイト代(給与収入)のみならば、年収130万円以下)

(4) 障害者又は勤労学生の内容
 左記の障害者又は勤労学生に該当する(人がいる)場合、その該当する事実やその人の氏名を記載します。
(例)障害者の場合・・・障害の状態又は交付を受けている手帳などの種類と交付年月日、障害の程度(等級)などの障害者に該当する事実を記載します。
(注)寡婦、ひとり親に該当する方について、死別、離婚、生死不明の別、生計を一にする子の氏名及びその子の所得の見積額など、寡婦又はひとり親に該当する事実の記載は必要ありません。

4.他の所得者が控除を受ける扶養親族等の記入

 他の所得者が控除を受ける扶養親族等の欄については、共働きなどで子供を扶養親族としなかった方が子供の氏名等を記入する欄ですが、空欄でも構いません。記入しなかったとしても「控除額が減り、損をする」というわけではありません。

5.住民税に関する事項の記入

(1) 16歳未満の扶養親族
 年齢16歳未満(平成19年1月2日以後生)の扶養親族について記載します。16歳未満の扶養親族は「扶養控除」の対象外ですが、住民税の計算で利用するためあわせて記載します。

(2) 控除対象外国外扶養親族
 国内に住所を有しない扶養親族に該当する場合に○を付けます。

不動産外交員の歩合給と「給与課税されない固定給」とは?

1.歩合給と固定給の税法上の取扱い

 不動産外交員の報酬は、販売実績に基づく歩合給(変動給)であることが一般的です。そのため、販売実績がよかった月は多額の報酬を得ることが可能ですが、仮に販売実績がなかった月は報酬も0になります。
 そこで、不動産外交員の生活保障のために、歩合給とは別に固定給を支給する場合があります。固定給は販売実績とはかかわりなく支給され、例えば販売実績がなくても支給されます。
 歩合給と固定給では税法上の取扱いが異なり、歩合給を支給した場合は消費税法上の課税取引となるので仕入税額控除ができますが、固定給を支給した場合は給与課税され仕入税額控除はできません。
 また、歩合給と固定給では、所得税の源泉徴収税額の計算方法も異なります。歩合給の場合は、外交員に支払う報酬の金額から12万円を控除した残額に10.21%(復興税を含む)を乗じて計算します(具体的な計算方法の詳細については、本ブログ記事「外交員報酬に係る源泉徴収税額の計算方法」をご参照ください)。
 一方、固定給の場合は、「給与所得の源泉徴収税額表」を使用して、給与に対する源泉徴収税額を求めます。
 このように、不動産外交員に支払う固定給は基本的には給与として課税されますが、所得税基本通達204-22には「給与課税されない固定給」が記載されています。

2.所得税基本通達204-22

 所得税基本通達204-22には、外交員又は集金人の業務に関する報酬又は料金について、次のように規定されています(下線は筆者による)。

 外交員又は集金人がその地位に基づいて保険会社等から支払を受ける報酬又は料金については、次に掲げる場合に応じ、それぞれ次による。

(1) その報酬又は料金がその職務を遂行するために必要な旅費とそれ以外の部分とに明らかに区分されている場合  法第9条第1項第4号《非課税所得》に掲げる金品に該当する部分は非課税とし、それ以外の部分は給与等とする。

(2) (1)以外の場合で、その報酬又は料金が、固定給(一定期間の募集成績等によって自動的にその額が定まるもの及び一定期間の募集成績等によって自動的に格付される資格に応じてその額が定めるものを除く。以下この項において同じ。)とそれ以外の部分とに明らかに区分されているとき  固定給(固定給を基準として支給される臨時の給与を含む。)は給与等とし、それ以外の部分は法第204条第1項第4号に掲げる報酬又は料金とする。

(3) (1)及び(2)以外の場合  その報酬又は料金の支払の基因となる役務を提供するために要する旅費等の費用の額の多寡その他の事情を総合勘案し、給与等と認められるものについてはその総額を給与等とし、その他のものについてはその総額を法第204条第1項第4号に掲げる報酬又は料金とする。

 上記通達のとおり、固定給は給与として取り扱われますが、(2)の下線部のものは給与課税される固定給から除くとされています(つまり、「給与課税されない固定給」です)。
 下線部の「一定期間の募集成績等によって自動的にその額が定まるもの及び一定期間の募集成績等によって自動的に格付される資格に応じてその額が定めるもの」とは、具体的には「前月の販売実績により、その一定割合の固定給(上限額あり)を当月に支払う場合」などが該当します。
 例えば、前月の販売実績が100万円の場合は、その一定割合(5%)の固定給5万円を当月に支給し、前月の販売実績が1,000万円の場合は、その一定割合(5%)の固定給20万円(上限額20万円とします)を当月に支給します。
 この支給方法によると、仮に当月の販売実績が0でも、前月の販売実績によっては当月に報酬が支給されます。当月の販売実績に基づいた報酬ではないため「固定給」という名称を用いていますが、当然その支給額は月によって増減しますので実質的には歩合給(変動給)であり、給与ではなく外交員報酬といえます。
 したがって、実質的には歩合給であることから、上記通達の(2)では、給与として取り扱われる固定給から除くものとされています。

3.給与課税されない固定給の源泉徴収税額の計算方法

 給与課税される固定給であれば、先に述べたように「給与所得の源泉徴収税額表」を使用して、給与に対する源泉徴収税額を求めます。
 所得税基本通達204-22における「給与課税されない固定給」は、実質的には歩合給(変動給)である外交員報酬ですので、その源泉徴収税額は、外交員報酬に係る源泉徴収税額の計算方法によって算出します。
 例えば、当月の販売実績に基づく歩合給が30万円、前月の販売実績に基づく固定給(給与課税されない固定給)が5万円だとしたら、当月の源泉徴収税額は次のようになります。

 源泉徴収税額={(30万円+5万円)-12万円}×10.21%=23,483円

事業復活支援金の申請期限・事前確認期限の延長と差額給付

1.申請ID発行期限・事前確認期限・申請期限

 中小企業庁は、2022(令和4)年5月31日(火)までにアカウント(申請ID)を発行した申請希望者に限り、事業復活支援金の申請期限を2022(令和4)年6月17日(金)まで延長することを発表しました(従来の申請期限は2022(令和4)年5月31日(火))。
 申請期限延長に伴って、登録確認機関による事前確認の実施期限も2022(令和4)年6月14日(火)まで延長されます(従来の実施期限は2022(令和4)年5月26日(木))。
 申請希望者は早めに申請IDを発行し、必要書類を準備して登録確認機関の事前確認を受けた上で、申請をしてください。

アカウント発行期限
2022(令和4)年5月31日(火)24:00
延長後の事前確認の実施期限
2022(令和4)年6月14日(火)24:00
延長後の申請期限
2022(令和4)年6月17日(金)24:00 

2.事業復活支援金の差額給付の申請

 2022(令和4)年6月1日(水)から事業復活支援金の差額給付※1の申請が開始されます。
 差額給付は、事業復活支援金を受給した方のうち特定の要件※2を満たす一部の方が申請可能です。対象となる可能性のある方は、マイページ上に差額給付の申請ボタンが表示されます。
 申請期間は、2022(令和4)年6月1日(水)~2022(令和4)年6月30日(木)です。ただし、6月1日以降に初回給付分を受給された方は、受給した日※3の翌日から30日間になります。
 なお、差額給付の申請でも、原則として事業復活支援金の申請IDをそのまま活用することができますので、改めての事前確認は不要です。
 事業形態・事業主体に変更があった場合は、改めてアカウントを発行する必要がありますが、その場合は事務局の設置する登録確認機関での事前確認が必要となりますのでご注意ください。

※1 差額給付とは、基準月の月間事業収入と比較して、対象月の月間事業収入の減少が30%以上50%未満の区分で事業復活支援金の給付(初回給付)を受けた申請者に対して、対象期間(2021年11月から2022年3月まで)のうち、「初回給付の対象月の翌月以降」かつ「初回給付の申請を行った日を含む月以降」のいずれかの月であって、初回給付の申請を行った時点で予見されていなかった新型コロナウイルス感染症影響を受けたことにより、自らの事業判断によらず、基準期間の同じ月と比較して、月間の事業収入等が50%以上減少した月が存在する場合に限り、その月を対象月とした支援金を給付するものです。
 事業復活支援金の差額給付の受給は、同一の申請者(同一の申請者が異なる屋号・雅号を用いて複数の事業を行っている場合を含む)につき、それぞれ一回限り申請することができます。

※2 以下の全ての要件を満たす場合、差額給付を申請することができます。
(1) 事業復活支援金の初回給付を受けたこと(ただし、初回給付に係る支援金を全額返還した者を除く)
(2) 初回給付において、対象月の月間事業収入が、基準月の月間事業収入と比較して30%以上50%未満の減少であったこと
(3) 差額給付において、対象月の月間事業収入が、基準月の月間事業収入と比較して50%以上減少していること
(4) 差額給付において、月間事業収入の減少が、初回給付の申請を行った時点で予見されなかった新型コロナウイルス感染症影響を受けたことにより、自らの事業判断によらないで生じたものであること
(5) 差額給付において、対象期間のうち、初回給付の対象月の翌月以降かつ初回給付の「申請日」を含む月以降のいずれかの月を対象月とすること

※3 マイページ上のステータスが振込完了となった日を指します。実際に口座に着金があってから振込完了のステータスになるまでに2日ほどかかる場合があります。また、申請期限はマイページ上に表示されます。

事前確定届出給与を支給しなかった場合のリスクを回避するための手続き

 従来は臨時的な役員賞与は損金算入が認められていませんでしたが、事前確定届出給与の制度を利用すれば、役員賞与であっても届出通りの支給をした場合は損金算入が可能です(届出書等の書き方については、本ブログ記事「『事前確定届出給与に関する届出書』等の書き方と記載例」をご参照ください)。

 届出通りの支給をしなかった場合、例えば届出書に記載した支給時期や支給額と異なる時期や金額の支給をした場合は、その役員賞与は損金不算入となります

 事前確定届出給与の届出はしたけれども実際には全く支給しなかった場合は、そもそも支給額が0円なので損金不算入額も0円となり、特段のリスクはないように見えます。
 しかし、事前確定届出給与の支給をしなかった場合のリスクはあります。
 今回は、事前確定届出給与の支給をしなかった場合のリスクと、そのリスクを回避するための手続きについて確認します。

※ 事前確定届出給与を届出通りに支給しなかった場合でも、損金算入できることがあります。詳細については、本ブログ記事「事前確定届出給与(複数回支給)を届出通りに支給しなかった場合」及び「事前確定届出給与(複数人支給)を特定の役員だけ届出通りに支給しなかった場合」をご参照ください。

1.事前確定届出給与の支給をしなかった場合のリスク

 事前確定届給与は法人の節税対策として用いられる側面がありますが、実際の利益が当初見込んでいた利益よりも少なくなる場合は、事前確定届出給与の支給をやめることがあります。

 例えば、事前確定届出給与100万円の支給時期が到来したけれどもその支給をしなかった場合は、そもそも支給額が0円なので損金不算入額も0円です。
 しかし、この場合は次のようなリスクがあることに留意しなければなりません。

借方 金額 貸方 金額
役員賞与 100万円 未払金 100万円
未払金 100万円 債務免除益 100万円

 届出額100万円と異なる金額を支給した場合は、その全額が損金不算入となりますが、支給額が0円なのでそもそも損金算入する金額がなく、損金不算入額も0円です。
 会社としては株主総会等で役員賞与を支給しないという意思決定をしたため、会計上は役員賞与や未払金を認識(上記1行目の仕訳)することはありません(上記1行目の仕訳をするのは、会社に役員賞与を支払う意思がある場合です)。

 しかし、支給日が到来した段階で役員に報酬請求権が発生するため、会社側には報酬を支給する債務(未払金)が発生します。つまり、税務上は上記1行目の仕訳のように考えます。
 そうすると、税務上は役員賞与100万円を認識することになるので、これに対する所得税の源泉徴収が必要になります
 また、株主総会等の決議の際に役員は辞退届を提出して報酬請求権を放棄したと考えられるため、会社側に生じた報酬を支給する債務(未払金)は消滅しますが、役員賞与の支給義務が免除されたことに対する収益(債務免除益)を会社側では認識することになります(上記2行目の仕訳)。

※ 根拠条文は、次の所得税法第183条第2項(源泉徴収義務)です。
2 法人の法人税法第二条第十五号(定義)に規定する役員に対する賞与については、支払の確定した日から一年を経過した日までにその支払がされない場合には、その一年を経過した日においてその支払があつたものとみなして、前項の規定を適用する。

2.リスクを回避するための手続き

 事前確定届出給与を支給しなかった場合のリスクは、会社側では役員賞与を支払っていないにもかかわらず、①役員賞与に対する所得税の源泉徴収義務が生じる、②債務免除益に対して課税される、役員側では役員賞与をもらっていないにもかかわらず、所得税が課税されることです。

 これらのリスクは、事前確定届出給与の支給日に役員の報酬請求権が発生することに端を発しています。
 つまり、これらのリスクがあるのは、事前確定届出給与の支給日が到来した後(すでに役員の報酬請求権が発生した後)に、役員からの辞退届を受領したり株主総会等で不支給の決議をした場合です。

 したがって、これらのリスクを回避するためには、事前確定届出給与の支給日が到来する前に、役員からの辞退届を受領して株主総会等で不支給の決議をすることが必要です。
 所得税基本通達28-10(給与等の受領を辞退した場合)には、次のように規定されています。

28-10 給与等の支払を受けるべき者がその給与等の全部又は一部の受領を辞退した場合には、その支給期の到来前に辞退の意思を明示して辞退したものに限り、課税しないものとする。

 なお、事前確定届出給与を支給しなかった場合に、支給しなかったことについて税務署へ届出(報告)する必要はありません。

個人事業主が所得税・社会保険の扶養に入るための要件

1.「103万円の壁」と「130万円の壁」

 扶養の範囲内で働きたいパートの方は、収入が一定額を超えないように労働調整をする場合があります。
 例えば、夫が配偶者控除38万円の適用を受けられるように、妻はパート先での収入を103万円以下に抑えようとします(いわゆる「103万円の壁」です)。
 また、夫の社会保険の扶養の範囲内で働きたい場合は、妻はパート先での収入を130万円未満に抑えようとします(いわゆる「130万円の壁」です)。
 この所得税における103万円の壁と社会保険(健康保険・厚生年金)における130万円の壁は、いずれも収入額が基準となっていますので、パートで働く給与所得者の場合はわかりやすいと言えます。
 一方、個人事業主として開業しても、事業が軌道に乗るまでは親や配偶者の扶養の範囲内で仕事をしたいという場合があります。
 ここで、個人事業主が扶養に入るための判定基準はどのように考えたらいいのか、という疑問が生じます。
 103万円の壁と130万円の壁について、個人事業主も給与所得者と同じように収入(年商)で判定するのでしょうか、それとも収入から経費を差し引いた所得で判定するのでしょうか?
 結論を先に述べると、個人事業主の103万円の壁と130万円の壁は、どちらも収入から経費を差し引いた「所得」で判定します。
 以下において、若干の注意点を踏まえながら確認します。

2.所得税の扶養の判定は確定申告書の合計所得金額を見る

 所得税における扶養の範囲(扶養親族)は、所得者と生計を一にする親族(配偶者、青色事業専従者として給与の支払を受ける人及び白色事業専従者を除きます)で合計所得金額が48万円以下の人をいいます。
 給与所得だけの場合は、給与の年間収入が103万円以下であれば、合計所得金額が48万円以下になります(給与収入103万円-給与所得控除額55万円=給与所得48万円)。
 個人事業主の場合は、先に述べたとおり収入から経費を差し引いた所得が48万円以下であれば、扶養に入ることができます。
 48万円以下であるかどうかを判定するにあたっては、次の点に注意が必要です。

(1) 事業所得の他に所得がある場合は、それらの合計額で48万円以下であるかどうかを判定します。
(2) 青色申告者の場合は、青色申告特別控除額を差し引いた後の所得で判定します。
(3) 社会保険料控除や基礎控除などの所得控除を差し引く前の金額で判定します。

 つまり、確定申告書第1表の合計所得金額(下図の黄色マーカーを付した⑫欄の数字)が48万円以下であるかどうかを判定します。

※ 合計所得金額については、本ブログ記事「『合計所得金額』『総所得金額』『総所得金額等』の違いとは?」をご参照ください。

3.社会保険の扶養の判定(協会けんぽの場合)

 社会保険(健康保険・厚生年金)の被扶養者に該当する条件は、日本国内に住所(住民票)を有しており、被保険者(扶養する人)により主として生計を維持されていること、および「収入要件」と「同一世帯の条件」のいずれにも該当した場合です(同一世帯の条件の説明は省略します)。

【収入要件】
 年間収入130万円未満(60歳以上または障害者の場合は、年間収入180万円未満)かつ
 ・同居の場合は収入が被保険者(扶養する人)の収入の半分未満
 ・別居の場合は収入が被保険者(扶養する人)からの仕送り額未満

 上記の収入要件に関する注意点は、次のとおりです。

(1) 年間収入とは、過去の収入のことではなく、被扶養者に該当する時点および認定された日以降の年間の見込み収入額のことをいいます(給与所得等の収入がある場合は月額108,333円以下、雇用保険等の受給者の場合は日額3,611円以下であれば要件を満たします)。
 また、被扶養者の収入には、雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金も含まれます。

(2) 収入が被保険者(扶養する人)の収入の半分以上の場合であっても、被保険者(扶養する人)の年間収入を上回らないときで、日本年金機構がその世帯の生計の状況を総合的に勘案して、被保険者(扶養する人)がその世帯の生計維持の中心的役割を果たしていると認めるときは被扶養者となることがあります。

 このような収入要件がありますが、先に述べたように個人事業主の場合は、収入から経費を差し引いた所得が130万円未満(又は180万円未満)であれば、扶養に入ることができます。
 130万円未満であるかどうかを判定するにあたっては、次の点に注意が必要です。

(1) 事業所得の他に所得がある場合は、それらの合計額で130万円未満であるかどうかを判定します。
(2) 青色申告者の場合は、青色申告特別控除額を差し引く前の所得で判定します。
(3) 社会保険料控除や基礎控除などの所得控除を差し引く前の金額で判定します。

 (2)の青色申告特別控除額は、あくまでも税制上の特典ですので、社会保険の扶養を判定する際の所得の算定上は控除できません。それ以外の青色申告決算書に記載した経費は差し引くことができます。

4.社会保険の扶養の判定(健康保険組合の場合)

 上記3で確認した内容は、政府が管掌する全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合です。
 被保険者(扶養する人)の勤め先が、大手企業やグループ企業で構成される健康保険組合に加入している場合は、健康保険組合ごとに収入要件の取扱いが異なります。
 例えば、A健康保険組合の場合は、収入(売上)から差し引ける経費は売上原価のみであるのに対し、B健康保険組合の場合は、売上原価と人件費が差し引ける、などです。
 被保険者(扶養する人)の勤め先が加入しているのは協会けんぽなのか健康保険組合なのか、健康保険組合に加入している場合はどのような扶養条件があるのか、事前に確認しておくことが大事です。

簡易課税制度の届出等に関する災害特例

 災害の被災者には、消費税の届出等に関して、①やむを得ない事情がある場合の届出特例(宥恕規定)、②特定非常災害の特例、③簡易課税制度に係る災害特例、が措置されています。
 これらのうち、①と②は、課税事業者選択(又は選択不適用)と簡易課税制度選択(又は選択不適用)の両方について適用がありますが、③は簡易課税制度だけに適用されます。
 今回は、簡易課税制度だけに認められる③の「簡易課税制度に係る災害特例」について確認し、①の「やむを得ない事情がある場合の届出特例(宥恕規定)」にも言及します。。

※ 特定非常災害の特例については、本ブログ記事「特定非常災害に係る消費税の届出等に関する特例」をご参照ください。

1.簡易課税制度に係る災害特例

(1) 制度趣旨

 簡易課税制度については、災害その他のやむを得ない理由があるときは、特定非常災害の指定を受けない場合であっても、所轄税務署長の承認により、その選択を変更することができる特例が設けられています。
 例えば、災害その他やむを得ない理由により、著しく事務処理能力が低下したために原則課税から簡易課税に変更したり、臨時多額の設備投資が必要になったために簡易課税から原則課税に変更するなど、その課税期間開始前に想定されていなかった事実が生じた場合に、その必要に応じて簡易課税制度の適用の変更を認めようとするものです。

(2) やむを得ない理由とは?

 やむを得ない理由とは、おおむね以下ののような災害の発生等をいいます(消基通13-1-7)。
 これは、災害等があった場合に申告、納付、届出等の期限の延長を認める国税通則法11条に規定する災害その他の事実と同様です。

① 地震、暴風、豪雨、豪雪、津波、落雷、地すべりその他の自然現象の異変による災害
② 火災、火薬類の爆発、ガス爆発、その他の人為による異常な災害
③ ①又は②に掲げる災害に準ずる自己の責めに帰さないやむを得ない事実

(3) 承認申請の期限

 この特例は、被災した事業者が所轄税務署長に対してこの特例の承認を受ける旨の申請書を提出し、その承認を受けた場合に適用があります。
 申請書の提出期限は、原則として災害等のやんだ日から2月以内です。ただし、災害等のやんだ日が、災害等の生じた課税期間の末日の翌日以後に到来する場合は、災害等の生じた課税期間に係る申告書の提出期限(国税通則法11条の規定により申告書の提出期限が延長された場合はその延長された申告書の提出期限)となります。

(4) 承認又は却下の処分とみなし承認

 申請の承認又は却下の処分は書面により通知するものとされていますが、災害等の生じた課税期間の確定申告期限までに承認又は却下の処分がなかったときは、その日においてその承認があったものとみなされます。
 ただし、災害その他やむを得ない理由のやんだ日がその課税期間の末日の翌日以後に到来する場合は、この限りではありません。

(5) 継続適用の解除

 この特例により簡易課税制度選択届出書を提出する場合は、次の取扱いは適用されません。

① 課税事業者を選択した事業者が、調整対象固定資産の仕入れ等をして一般課税により申告した場合に、3年間継続して課税事業者となり一般課税による申告が義務付けられる取扱い
② 新設法人又は特定新規設立法人が、調整対象固定資産の仕入れ等をして一般課税により申告した場合に、3年間継続して課税事業者となり一般課税による申告が義務付けられる取扱い
③ 高額特定資産の仕入れ等をして一般課税により申告した事業者が、3年間継続して課税事業者となり一般課税による申告が義務付けられる取扱い

 また、この特例により簡易課税制度選択不適用届出書を提出する場合は、簡易課税制度の2年間の継続適用の取扱いは適用されません。

(6) 不適用の特例申請ができる場合

 この特例は、一つの災害等につき一度だけ適用することとされています。
 また、災害等があった課税期間の翌課税期間以後に災害等がやんだ場合は、2年間の継続適用の規定により簡易課税制度選択不適用届出書を提出することができない課税期間においてはこの特例を適用し、その後の課税期間においては次の「やむを得ない事情がある場合の届出特例(宥恕規定)」によるものとされています。
 したがって、災害その他やむを得ない理由が生じた日の属する課税期間の翌課税期間以後の課税期間のうち、この特例により不適用の特例申請ができる課税期間は次の課税期間です。

 次に掲げる要件のすべてに該当する課税期間のうちいずれか一の課税期間
① 災害等の生じた日から災害等のやんだ日までの間に開始した課税期間であること
② 不適用の承認を受けた災害等の生じた日の属する課税期間の翌課税期間以後の課税期間でないこと
③ 簡易課税制度の適用を開始した課税期間の初日から2年を経過する日までの間に開始した課税期間であること

2.やむを得ない事情がある場合の届出特例(宥恕規定)

 簡易課税制度を選択しよう(又はやめよう)とする事業者が、やむを得ない事情により、簡易課税制度選択届出書(又は簡易課税制度選択不適用届出書)を期限までに提出できなかった場合には、そのやむを得ない事情がやんだ日から2か月以内に、簡易課税制度選択届出書(又は簡易課税制度選択不適用届出書)と特例承認申請書を所轄税務署長に提出し、その承認を受けたとき(みなし承認はありません)は、承認を受けた課税期間から簡易課税制度を適用する(又はやめる)ことができます。
 やむを得ない事情とは、以下に掲げるように災害の発生等をいい、制度の不知や提出失念等は「やむを得ない事情」に該当しません。

(1) 震災、風水害、雪害、凍害、落雷、雪崩、がけ崩れ、地滑り、火山の噴火等の天災または火災その他人的災害で自己の責任によらないものに基因する災害が発生したことにより、届出書の提出ができない状態になったと認められる場合

(2) (1)の災害に準ずるような状況または、その事業者の責めに帰することができない状態にあることにより、届出書の提出ができない状態になったと認められる場合

(3) その課税期間の末日前おおむね1か月以内に相続があったことにより、その相続に係る相続人が新たに課税事業者選択届出書などを提出できる個人事業者となった場合

(4) (1)から(3)までに準ずる事情がある場合で、税務署長がやむを得ないと認めた場合

特定非常災害に係る消費税の届出等に関する特例

 災害の被災者には、災害減免法、国税通則法において、税の軽減免除や申告期限の延長が措置されています。
 消費税ではこれらに加えて、①やむを得ない事情がある場合の届出特例(宥恕規定)、②特定非常災害の届出特例、③簡易課税制度に係る災害特例が設けられています。
 今回は、このうちの②特定非常災害の届出特例について確認します。

※ ①やむを得ない事情がある場合の届出特例(宥恕規定)については、本ブログ記事「消費税課税事業者選択届出書の提出を失念した場合の対応方法」をご参照ください。

1.特定非常災害の指定を受けた場合の特例

 特定非常災害※1の被災事業者※2が、その被害を受けたことによって、被災日※3を含む課税期間以後の課税期間について、指定日※4までに所轄税務署長に「消費税課税事業者選択届出書(又は選択不適用届出書)」「消費税簡易課税制度選択届出書(又は選択不適用届出書)」を提出すれば、その適用を受けよう(又はやめよう)とする課税期間の初日の前日に提出があったものとみなし、適用を受ける(又はやめる)ことができます。

※1 「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律」2条1項の規定により、特定非常災害として指定された非常災害。
※2 特定非常災害により申告期限等が延長される(国税通則法11条)こととなる地域に納税地を有する事業者、又はその他の地域に納税地を有する事業者のうち特定非常災害により被災した事業者。
※3 事業者が特定非常災害により被災事業者となった日。
※4 特定非常災害の状況及び特定非常災害により申告に関する期限の延長の状況を勘案して国税庁長官が定める日。

 この特例により、例えば、次のようなことが可能になります。

(1) 免税事業者が、被害を受けた設備を買い換えるため、課税事業者を選択して原則課税により申告を行い還付を受けた後、課税事業者の選択をやめて免税事業者になることができます。

(2) 簡易課税を選択している事業者が、特定非常災害により相当な損失を受け、緊急な設備投資等を行う場合には、簡易課税制度の適用をやめて原則課税により申告を行うことができます。

 なお、この特例措置の規定に基づく届出書には、その特例の適用を受け、又はやめようとする開始課税期間を明記するとともに、この特例による届出であることを明らかにするため、届出書の参考事項欄等に特定非常災害の被災事業者である旨を記載します(消基通19-1-5)。
 また、被災事業者となった新設法人又は特定新規設立法人が国税通則法11条の規定の適用を受けたものでない場合には、この特例の適用を受けようとする旨等を記載した届出書を、設立当初の基準期間がない事業年度のうち最後の事業年度終了の日と指定日とのいずれか遅い日までに所轄税務署長に提出する必要があります(措法86の5④、措規37の3の2①)。

2.継続適用等の解除

(1) 課税事業者選択、簡易課税制度選択

 被災事業者が指定日までに提出する課税事業者選択届出書、課税事業者選択不適用届出書、簡易課税制度選択届出書又は簡易課税制度選択不適用届出書については、次の取扱いは適用されません。

① 課税事業者を選択した場合の2年間の継続適用の取扱い
② 簡易課税制度を選択した場合の2年間の継続適用の取扱い
③ 課税事業者を選択した事業者が、調整対象固定資産の仕入れ等をして一般課税により申告した場合に、3年間継続して課税事業者となり一般課税による申告が義務付けられる取扱い

 したがって、被災事業者は、2年間継続適用の要件及び3年間継続適用の要件という制限に関係なく、課税事業者選択不適用届出書を提出することができます。
 また、簡易課税制度選択届出書及び簡易課税制度選択不適用届出書の提出についても、提出の制限はありません。

(2) 新設法人、特定新規設立法人

 新設法人又は特定新規設立法人(いずれも基準期間のない法人)が被災事業者となった場合には、次の取扱いは適用されません。

① 新設法人が調整対象固定資産の仕入れ等をして一般課税により申告した場合に、3年間継続して課税事業者となり一般課税による申告が義務付けられる取扱い
② 特定新規設立法人が調整対象固定資産の仕入れ等をして一般課税により申告した場合に、3年間継続して課税事業者となり一般課税による申告が義務付けられる取扱い

 したがって、基準期間ができて以後の事業年度については、3年間の制限に関係なく事業者免税点制度の適用が可能となり、免税事業者となるかどうかは、原則通り、基準期間における課税売上高、特定期間における課税売上高、課税事業者選択届出書の提出の有無等によって判定することとなります(消基通19-1-4)。
 また、簡易課税制度選択届出書の提出についても、制限はありません。
 なお、被災事業者となった新設法人又は特定新規設立法人が国税通則法11条の規定の適用を受けたものでない場合には、この特例の適用を受けようとする旨等を記載した届出書を、設立当初の基準期間がない事業年度のうち最後の事業年度終了の日と指定日とのいずれか遅い日までに所轄税務署長に提出する必要があります(措法86の5④、措規37の3の2①、消基通19-1-3)。

(3) 高額特定資産を取得した場合

 被災事業者が、「被災日前に高額特定資産の仕入れ等を行った場合」又は「被災日から指定日以後2年を経過する日の属する課税期間の末日までの間に高額特定資産の仕入れ等を行った場合」に該当するときは、被災日の属する課税期間以後の課税期間については、次の取扱いは適用されません。

高額特定資産の仕入れ等をした場合に3年間継続して課税事業者となり一般課税による申告が義務付けられる取扱い

 したがって、被災日の属する課税期間以後の課税期間については、3年間の制限に関係なく事業者免税点制度の適用が可能となり、免税事業者となるかどうかは、原則通り、基準期間における課税売上高、特定期間における課税売上高、課税事業者選択届出書の提出の有無等によって判定することとなります。
 また、簡易課税制度選択届出書の提出についても、制限はありません。
 なお、この特例を適用する被災事業者が国税通則法11条の規定の適用を受けたものでない場合には、この特例の適用を受けようとする旨等を記載した届出書を、高額特定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の末日と指定日とのいずれか遅い日までに所轄税務署長に提出する必要があります(措法86の5⑤、措規37の3の2②、消基通19-1-3)。

3.仮決算による中間申告書の取扱い

 被災事業者が、この特例の適用を受けて「簡易課税制度選択届出書」又は「簡易課税制度選択不適用届出書」を提出した場合において、その提出前にその課税期間に係る仮決算による中間申告書を提出しているときは、仕入控除税額は一般課税と簡易課税で異なることとなりますが、すでに提出された中間申告書については、その仕入控除税額を修正する必要はありません。