青色事業専従者給与を事業収入以外の資金で支払ったら否認されるのか?

 青色申告には様々な特典がありますが、その一つに青色事業専従者給与があります。

 個人事業者が生計を一にする親族に給与を支払っても必要経費にできませんが(所得税法第56条)、青色申告の承認を受けている個人事業者が青色事業専従者給与に関する届出書を税務署に提出している場合は、労務の対価として相当と認められる給与については必要経費にすることができます(所得税法第57条第1項)。

 税務調査の際には、青色事業専従者給与が労務の対価として相当か否かが争われるケースが多いと思われますが、税務署が「事業収入以外の資金(給与収入)から支払われていたこと」を否認理由の一つに挙げた裁決例があります。

 以下では、この税務署の否認理由について、国税不服審判所がどのように判断したのかを確認します。

1.必要経費算入の要件

 青色事業専従者給与については、所得税法第57条第1項に次のように規定されています(下線は筆者による)。

青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者と生計を一にする配偶者その他の親族(年齢15歳未満である者を除く。)で専らその居住者の営む前条に規定する事業に従事するもの(以下この条において「青色事業専従者」という。)が当該事業から次項の書類に記載されている方法に従いその記載されている金額の範囲内において給与の支払を受けた場合には、前条の規定にかかわらず、その給与の金額でその労務に従事した期間、労務の性質及びその提供の程度、その事業の種類及び規模、その事業と同種の事業でその規模が類似するものが支給する給与の状況その他の政令で定める状況に照らしその労務の対価として相当であると認められるものは、その居住者のその給与の支給に係る年分の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上必要経費に算入し、かつ、当該青色事業専従者の当該年分の給与所得に係る収入金額とする。

 青色事業専従者給与が必要経費に算入されるための要件について、所得税法第57条第1項は、前段で形式的要件(事業から支払われた給与であること)、後段で実質的要件(労務の対価として相当な金額であること)を挙げています。

 このうち、税務署が形式的要件を満たしていないことを否認理由の一つとして挙げたのが次の裁決例です。

2.平成27年4月13日裁決

(1) 事案の概要

 医師として複数の病院に勤務するとともに自ら診療所を営む納税者が妻に対して支払った青色事業専従者給与について、税務署は、次の理由から「当該事業から」給与の支払を受けた場合に該当しないため、事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないと主張しました。

① 事業収入より給与収入が約4倍多い
 青色事業専従者給与の原資は診療所の事業収入ではなく、勤務先病院からの給与収入である。

② 事業用口座から支払われていない
 事業用の預金口座ではなく、勤務先病院からの給与収入が振り込まれる口座から直接現金を引き出して支払っている。

 ①②の理由から、青色事業専従者給与は給与収入から支払われているため事業からの支払といえず、必要経費に算入できないとしました。

(2) 審判所の判断

 これに対し、審判所は次の理由から「青色事業専従者給与は事業から支払われた給与に該当する」として、税務署の主張を退けました。

① 青色事業専従者給与は勤務先病院の給与振込口座から現金出金されていたが、出金時または年末に「事業主借」勘定へ振替処理がされており、事業用とされた現金から支払われていた。

② 所得税法第57条は、事業収入以外から事業に流入した資金により青色事業専従者給与が支払われた場合に、当該支払を必要経費に算入することを認めない旨を規定したものではない。

 ①②の理由から、青色事業専従者給与は事業から支払われていたものと認められるため、税務署の主張には理由がないとしました。

 個人事業では、事業主の個人資金を事業に補填することは通常の処理であり、事業主借勘定に振り替えられ事業用とされた現金から支払われている以上、「事業から支払われた給与」に該当するということです。

 ただし、この裁決例では、所得税法第57条第1項後段の実質的要件(労働の対価として相当な金額であること)により、その青色事業専従者給与の大部分が否認されています。

自家用車を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却費の計算

 個人事業主として起業した際に、それまで自家用車(プライベート用)として使用していた車両を、業務用として使用することがあります。

 新車で購入した車両を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却費の計算には、2つのステップが必要です。次の設例により、計算方法を確認します。

【設例】
 2021(令和3)年6月10日に新車を購入し自家用車として使用していましたが、個人事業主として起業した際に、当該車両を2022(令和4)年4月1日から事業用の車両として使用することにしました。この場合の2022(令和4)年分の減価償却費の計算はどうなりますか。

 ・新車は2021(令和3)年6月10日に購入したものである。
 ・新車の取得価額:200万円
 ・新車の法定耐用年数:6年

 

1.業務用に転用した日における未償却残高

(1) 非業務用期間中の耐用年数と償却率
法定耐用年数の1.5倍に相当する年数※1及び償却率※2を求めます。
 6年×1.5=9年→0.111(9年の償却率)

※1 1年未満の端数があるときは切り捨てます。
※2 償却率は、旧定額法の償却率を適用します(非業務用資産の減価の額の計算 は、2007(平成19)年4月1日以後に取得した資産であっても、旧定額法により計算することとなります)

(2) 非業務用期間中の減価の額
非業務用期間における減価の額を旧定額法で計算します。
2021(令和3)年6月10日から2022(令和4)年3月31日まで→9か月と22日→1年
 2,000,000円×0.9×0.111×1年=199,800円

※ 非業務用期間に係る年数に1年未満の端数があるときは、6月以上の端数は1年とし、6月に満たない端数は切り捨てます。

(3) 業務用に転用した日における未償却残高
 2,000,000円-199,800円=1,800,200円

2.業務用に転用後の減価償却費の計算

(1) 2022(令和4)年分の減価償却費の計算
2,000,000円×0.167×9/12=250,500円

※ 車両の取得年月日が2007(平成19)年4月1日以後のため、定額法(償却率 0.167)で計算します。

(2) 2022(令和4)年12月31日の未償却残高
 1,800,200円-250,500円=1,549,700円

※ 中古取得資産のケースについては、本ブログ記事「中古建物を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却費の計算」をご参照ください。

中古建物を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却費の計算

 勤め先の転勤辞令により、それまで住んでいた自宅を賃貸に出すことがあります。この場合、賃貸人には不動産所得が生じることになりますが、不動産所得の計算上、賃貸している自宅の減価償却費は必要経費に算入することができます。
 今回は、自身の居住用(非業務用)から賃貸用(業務用)へ転用した場合の減価償却費の計算方法を確認しますが、その中でも複雑な計算を要する中古で取得した建物を非業務用から業務用に転用した場合を例に挙げます。

※ 新規取得資産のケースについては、本ブログ記事「自家用車を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却費の計算」をご参照ください。

1.中古取得資産を業務用に転用した場合の減価償却費の計算

 中古で取得した建物を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却費の計算には、2つのステップが必要です。次の設例により、計算方法を確認します。

【設例】
 2014(平成26)年1月10日に中古の建物(木造)を購入し居住の用に供していましたが、転勤のため、当該建物を2021(令和3)年4月1日から賃貸(住宅用)することにしました。この場合の2021(令和3)年分の減価償却費の計算はどうなりますか。

 ・中古の建物は、2007(平成19)年6月10日に新築されたものである。
 ・中古の建物の取得価額は2,000万円
 ・木造(住宅用)の法定耐用年数 22年

 

(1) 業務用に転用した日における未償却残高

① 非業務用期間中の耐用年数と償却率
法定耐用年数の1.5倍に相当する年数※1及び償却率※2を求めます。
 22年×1.5=33年→0.031
※1 1年未満の端数があるときは切り捨てます。
※2 償却率は、旧定額法の償却率を適用します(非業務用資産の減価の額の計算 は、2007(平成19)年4月1日以後に取得した資産であっても、旧定額法により計算することとなります)

② 非業務用期間中の減価の額
非業務用期間における減価の額を旧定額法で計算します。
2014(平成26)年1月10日から2021(令和3)年3月31日まで→7年2か月と22日→7年
 20,000,000円×0.9×0.031×7年=3,906,000円
※ 非業務用期間に係る年数に1年未満の端数があるときは、6月以上の端数は1年とし、6月に満たない端数は切り捨てます。

③ 業務用に転用した日における未償却残高
 20,000,000円-3,906,000円=16,094,000円

(2) 業務用に転用後の減価償却費の計算

① 業務用に転用後の耐用年数と償却率
業務用に転用後の耐用年数は、今後の使用可能期間の年数を合理的に見積もることができれば、その見積年数を耐用年数として計算しますが、今後の使用可能期間の年数を合理的に見積もることが困難な場合には、次のように簡便法により計算します。

イ.経過年数
2007(平成19)年6月10日から2014(平成26)年1月9日まで→6年7か月→79か月
※ 経過年数には、2014(平成26)年1月10日から2021(令和3)年3月31日までの期間(非業務用期間)は含めません。

ロ.転用後の耐用年数(簡便法による耐用年数)
(264か月(法定耐用年数22年)-79か月(経過年数))+79か月(経過年数)×0.2=200.8か月→16.7年→16年
※ 1年未満の端数の切捨ては、最後に行います。

ハ.転用後の償却率
16年→0.063
※ 2014(平成26)年1月10日取得のため定額法の償却率となります。

② 業務用に転用後の減価償却費
 20,000,000円×0.063×9/12=945,000円
なお、2021(令和3)年12月31日の未償却残高は次のとおりです。
 16,094,000円-945,000円=15,149,000円

2.中古取得資産を業務用に転用した場合の減価償却の注意点

(1) 中古住宅の築後経過年数を計算するときの「取得の日」は、売買契約の締結の日ではなく引渡しの日をいいます。

(2) すぐ貸せる状態の貸家について、未入居という理由で減価償却費を計上できないことはありません。貸家をいつでも入居できる状態に整備し、入居者募集の広告も出して入居者にいつでも引き渡せる状態であれば、その年中に結果として入居者がいなかったとしても、業務の用に供したとして減価償却費を計上することができます。

(3) 今回は中古で取得した住宅を例に減価償却費の計算方法を確認しましたが、例えば、自家用車(非業務用)を事業用(業務用)に転用した場合なども同様の計算となります。

日本フルハップの会費は法人と個人で経理処理が異なる!

1.法人と個人で異なる経理処理

 2018年分(平成30年分)の確定申告から新規に関与先となった個人事業主の方から、前年の確定申告書を見せていただきました。前年まではその方のお父さんが確定申告(事業所得)をされていたのですが、ご高齢のため会計事務所に依頼したとのことでした。

 確定申告書以外に出納帳等も見せていただいたのですが、ご自身が加入されている日本フルハップの会費の全額を必要経費に算入されていることに気づきました。
 法人の場合は、会費(加入者1名につき月額1,500円)の全額を損金算入することができるのですが、個人事業の場合は、加入者が誰であるかにより経理処理が異なります。

2.会費の経理処理

 日本フルハップの会費は指定の信用金庫の口座から自動振替されますが、その経理処理は以下のようになります。

(1) 法人事業所(振替口座は法人名義)の場合

 →全額損金に計上します(勘定科目は「諸会費」等)

(2) 個人事業所(振替口座は事業主名義)の場合

① 事業主及び事業主と生計を一にする配偶者その他の親族が加入者の場合
 →保険料相当部分(852円)は事業主個人の負担となり(勘定科目は「事業主貸」等)、保険料相当部分以外(648円)は必要経費に算入します(勘定科目は「諸会費」等)

② その他の加入者の場合
 →全額必要経費に算入します(勘定科目は「諸会費」等)

 なお、消費税については、法人・個人ともに同じ扱いになり、会費に消費税は含まれません(保険料相当部分は非課税、保険料相当部分以外は不課税)。

 2013年(平成25年)4月以降の会費から、上記のように変わっていますので、ご注意ください。