再居住した場合の住宅借入金等特別控除

1.再居住した場合の適用要件

 住宅借入金等特別控除の適用を受けていた方が、2003年(平成15年)4月1日以降に転任命令に伴う転居等により控除が受けられなくなった後、その家屋に再び居住した場合は、次の要件を満たすことにより再居住年以後の年について、住宅借入金等特別控除の適用を受けることができます。

(1) 転居の事由等

 勤務先からの転任の命令に伴う転居、その他これに準ずるやむを得ない事由により、その家屋を居住の用に供さなくなったこと

(2) 居住の用に供さなくなる日までに必要な手続

 「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」、未使用の「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」、「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」を所轄税務署に提出

(3) 再適用をする最初の年分の必要書類

 「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書(再び居住の用に供した方用」、「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」、「住民票の写し」

(4) 再適用の制限

 再び居住の用に供した日の属する年に、その家屋を賃貸の用に供していた場合には、翌年以後の年についてこの特例の再適用が可能

2.再居住した場合の留意点

 したがって、例えば転地療養のため、家族全員で一時実家に移り住んだ場合には、「再居住の場合の再適用の特例」は受けられません。
 転地療養は、勤務先からの転任命令のような外的要因ではなく個人的事情であるため、上記要件の「やむを得ない事由」に該当しないからです。

 また、転勤が解消し再居住した年に賃貸していた場合に、年末時点では居住しているとして控除を受けることはできません。控除は翌年からとなりますので、ご注意ください。

住宅借入金等特別控除における連帯債務の注意点

 住宅借入金等特別控除を受けるためには、金融機関が発行した「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」が必要ですが、この残高証明書の摘要欄に連帯債務者が記載されている場合があります。
 住宅取得資金に係る借入金が、給与の支払を受ける人と配偶者又はその他の親族との連帯債務になっている場合は、家屋と土地の共有持分割合又は建物と土地の共有者による資金の負担割合で、連帯債務になっている住宅借入金の年末残高を按分計算することになります。
 ただし、家屋と土地が単独で所有されている場合など、按分計算が不要の人もいますので注意してください。
 具体的には、以下のようになります(住宅取得資金を2,000万円とします)。

(1) 共有持分割合で按分計算する場合

 住宅の持分が夫2分の1、妻2分の1で、住宅取得資金をすべて連帯債務の借入金で賄っているときは、夫と妻の借入金年末残高は、それぞれ2,000万円×1/2=1,000万円となります。

(2) 按分計算が不要の場合

 住宅をすべて夫が所有し(夫の持分1、妻の持分0)、住宅取得資金をすべて連帯債務の借入金で賄っているときは、連帯債務の全額である2,000万円が夫の残高となります。

(3) 資金の負担割合で按分計算する場合

 住宅の持分が夫2分の1、妻2分の1で、住宅取得資金2,000万円のうち500万円(4分の1)を妻の自己資金、残りの1,500万円(4分の3)を連帯債務の借入金で賄っているときは、次のようになります。
 夫の残高:2,000万円×1/2=1,000万円
 妻の残高:2,000万円×1/2-500万円=500万円
 割合で示すと、夫の残高:妻の残高=2:1となります。
 夫の残高:3/4×1/2=3/8=6/16
 妻の残高:3/4×(1/2-1/4)=3/16

上場株式等の配当所得及び譲渡所得に係る住民税の課税方式は申告不要が得策

 2017年度(平成29年度)税制改正で、上場株式等の配当所得・譲渡所得について、所得税と住民税で異なる課税方式を選択できるようになりました。

1.上場株式等の配当所得の課税方式

 上場株式等の配当所得については、所得税及び住民税ともに以下の課税方式を選択することができます。

(1) 申告不要
(2) 総合課税
(3) 申告分離課税

 所得税の確定申告書において、上場株式等の配当所得を総合課税又は申告分離課税として申告した場合は、住民税も同様にその課税方式が適用されます。
 しかし、納税通知書が送達される日までに、所得税の確定申告書とは別に住民税の申告書「上場株式等の配当・譲渡所得等の課税方式選択申告書」を提出することにより、所得税と異なる課税方式(申告不要、総合課税、申告分離課税)を選択することができます(例えば所得税は総合課税、住民税は申告不要など)。

2.上場株式等の譲渡所得の課税方式

 また、上場株式等の譲渡所得については、所得税及び住民税ともに以下の課税方式を選択することができます。

(1) 申告不要
(2) 申告分離課税

 この場合も、納税通知書が送達される日までに、所得税の確定申告書とは別に住民税の申告書を提出することにより、所得税と異なる課税方式(申告不要、申告分離課税)を選択することができます(例えば所得税は申告分離課税、住民税は申告不要など)。

3.住民税は申告不要が得策

 申告した上場株式等の配当所得と譲渡所得は、住民税の非課税判定や社会保険料(国民健康保険料・後期高齢者医療保険料)算定の基準となる総所得金額や合計所得金額に含まれます。社会保険料(国民健康保険料・後期高齢者医療保険料)には、この住民税の課税所得に連動する「所得割」の仕組みがあるため、申告によって所得が増えれば社会保険料も増えるリスクがあります。
 申告することで所得税の負担を軽減できても、社会保険料が増えれば、全体として負担増となる可能性があります。しかし、住民税を申告不要としておけば社会保険料には影響がありません。
 したがって、住民税は申告不要を選択することが得策といえます
 

建物・土地の貸付けの事業的規模の判定と65万円控除

1.事業的規模か業務的規模か

(1) 形式基準(5棟10室)による判定

 不動産所得を生ずべき建物や土地の貸付けが「事業的規模」か「事業的規模に至らない(業務的規模)」かにより、事業専従者給与や青色申告特別控除等の取扱いが異なります。
 事業的規模の判定は、社会通念上事業と称する程度の規模で建物や土地の貸付けを行っているかどうかにより判断することとされていますが、次に該当する場合は、特に反証がない限り、事業として行われていると判断します(形式基準)。

① 建物の場合

イ.貸間、アパート(棟割長屋を含みます)については、独立した室数がおおむね10室以上であること

ロ.独立家屋(①は除きます)の貸付けについては、おおむね5棟以上であること

② 土地の場合

 土地、駐車場の契約件数が、おおむね50件以上であること(1室の貸付けに相当する土地の契約件数を、おおむね5件として判定します)

 例えば、貸室数が7室と貸地の契約件数が20件の場合は、建物と土地を別個に判定するのではなく、貸室7室+(貸地20件÷5件=4室)=11室として事業的規模と判定します。

(2) 実質基準による判定は難しい

 なお、実質基準として、賃貸料の収入の状況、貸付資産の管理の状況等からみて、上記の形式基準(いわゆる5棟10室基準)に準ずる事情があると認められる(賃貸収入が比較的多額、かつ、不動産管理の事務量を相当要する)場合は、原則として事業的規模と判定されます。
 しかし、実質基準での判定は、事業所得の性質として掲げられる営利性・有償性、反復・継続性、自己の危険と計算における事業遂行性、精神的・肉体的労力の程度、人的・物的設備の有無などを総合的に判断することになり、非常に難しいといえます。

2.業務的規模の不動産所得でも65万円控除できる?!

 上記のように、一般的には不動産所得の規模は形式基準によって判定します。その結果、事業的規模に至らない業務的規模と判定された不動産所得は、最高10万円の青色申告特別控除しか受けることができません(措法25の2①)。 

 しかし、業務的規模の不動産所得でも65万円の青色申告特別控除を受けられる場合があります。

 以前の記事で紹介したように、65万円の青色申告特別控除の要件に、「事業的規模の不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営む者であること」という項目があります(65万円の青色申告特別控除の要件については、本ブログ記事「青色申告特別控除と青色申告承認申請書の提出期限の注意点」を参照)。
 これは、不動産所得が事業的規模でない場合であっても、65万円控除の要件を具備する事業所得がある場合には、65万円の青色申告特別控除を適用することができることを意味します(措法25の2③)
 したがって、例えば事業所得が赤字で、不動産所得が事業として行われていない場合でも、不動産所得から65万円の特別控除ができます。

譲渡所得がある場合の消費税の申告

 譲渡所得がある場合の確定申告は、譲渡所得にばかり気を取られがちですが、消費税の申告も忘れないようにしましょう。

1.消費税が課税されない場合

 個人が土地や建物を売却すると、譲渡所得として所得税が課されます。所得税は、その土地や建物が居住用など生活用の資産であっても、家賃収入などを生み出す事業用の資産であっても課税されます。
 注意しなければならないのは、このような譲渡所得の基となる資産の譲渡には、消費税が課税される場合と課税されない場合があることです
  消費税が課税されない場合は、消費税の課税事業者が生活用の資産を譲渡したときや、免税事業者や事業者でない人が生活用又は事業用の資産を譲渡したときです。 

2.消費税が課税される場合

 これに対し、消費税の課税事業者が事業用の資産を譲渡したときは、消費税が課税されます。
 事業用の資産の譲渡は、事業に付随して対価を得て行われる資産の譲渡となりますので、消費税が課税されます(土地の譲渡は非課税なので、消費税は課税されません)。
 消費税が課税される場合の消費税の経理処理は、その資産をその用に供していた事業所得や不動産所得を生ずべき業務に係る取引について選択していた消費税の経理処理と同じ経理処理により行います。
 したがって、事業所得等について選択していた経理処理が税抜経理方式の場合には、譲渡所得を計算するときも税抜経理方式で行います。そして、仮受消費税等と仮払消費税等の清算などの調整は、その事業所得等の計算で行います。
 また、事業所得等について選択していた経理処理が税込経理方式の場合には、譲渡所得を計算するときも税込経理方式で行います。そして、納付すべき消費税の必要経費への算入や還付される消費税の総収入金額への算入は、その事業所得等の計算で行います。

JAの建物更生共済の掛金の内訳は必ず共済掛金領収証で確かめましょう

掛金が同じでも内訳は変わる

 JAの建物更生共済の掛金の内訳(必要経費・損金算入部分と積立部分)は、掛金が同額でも毎年一定ではないので注意しなければなりません。
 例えば、法人が掛金50万円を支払ったとき、前年に次のような仕訳をしていたとします。

借方 金額 貸方 金額
保 険 料 275,000 現金預金 500,000
保険積立金 225,000    

 この法人が今年も50万円の掛金を支払った場合、掛金が前年と同額なので仕訳も前年と同じでいいかというと、そうではありません。 

内訳は共済掛金領収証に載っている

 共済掛金領収証には、支払った共済掛金のうち必要経費・損金への対象となる額が「必要経費・損金対象額」として表示されています。
 この額が前年は275,000円でしたが、今年は280,000円になっていたとしたら、今年の仕訳は次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
保 険 料 280,000 現金預金 500,000
保険積立金 220,000    

 法人の場合の仕訳は上記のようになりますが、個人事業主の場合は上記仕訳の「保険積立金」が「事業主貸」になります(保険料280,000円は事業割合100%を前提としています)。

妻が契約者でも夫の生命保険料控除の対象にできるか?

 生命保険料控除は、保険料を支払った人自身が受けることができます。通常は生命保険料は契約者が支払うものですが、契約者でない人が保険料を支払う場合もあります。
 例えば、妻が契約者である生命保険契約について夫が保険料を支払っている場合などです。
 このような場合、夫が支払った保険料は夫の生命保険料控除の対象となるのでしょうか?それとも契約者である妻の生命保険料控除の対象となるのでしょうか?

契約者ではなく保険金受取人が重要

 保険の契約には、その契約に関する一切の権利と義務を持つ「契約者」、その保険の対象とされる「被保険者」、契約者から保険金の受取人に指定された「保険金受取人」の3つの名義があります。これらのうち、生命保険料控除の対象となるかどうかを考えるうえで重要なのは「保険金受取人」です。 

 生命保険料控除の対象となるのは、一般の生命保険契約等については保険金受取人のすべてがその保険料の払込みをする人自身か又はその配偶者その他の親族(6親等内の血族と3親等内の姻族)となっていることが必要であり、個人年金保険契約等については保険料の払込みをする人自身か又はその配偶者となっていることが必要です(ちなみに、保険金受取人は、保険料の払込みをする人と生計を一にしていなくても差し支えありません)。
 つまり、生命保険料控除の対象になるかどうかは、保険金受取人が誰になっているかが重要であり、契約者が誰であるかは要件とされていません。
 したがって、妻が契約者である生命保険契約であっても、夫が支払った保険料はその事実が明らかである限り、夫の生命保険料控除の対象となります。

 なお、妻が契約者である保険の保険料を実際に夫が支払っているかどうかについては、夫名義の口座から保険料が引き落とされていれば問題ありません。
 しかし、妻名義の口座から保険料が引き落とされている場合は、たとえ夫が保険料を負担していたとしても外見上疑義が生じかねませんので、支払い口座を夫名義のものに変更してはいかがでしょうか?

個人年金保険契約等は贈与税に注意

 一方、妻が契約者の個人年金保険契約等を夫の生命保険料控除の対象とした場合は、贈与税に注意が必要です。 夫の生命保険料控除の対象とすることによって、保険料負担者(夫)と受取人(妻)が異なることが明確になってしまうからです。
 その結果、保険料負担者(夫)から年金の受取人(妻)に対して、年金を受け取る権利が贈与されたものとみなされ、給付事由発生時点(受給開始時)で妻に贈与税が課税されます。

賃貸住宅に住んでいる場合に地震保険料控除の適用はあるか?

 会計事務所に就職して初めて顧問先の年末調整や確定申告を行ったときに、次のような疑問を抱きました。
「賃貸住宅に住んでいる場合も、地震保険料控除は適用されるのか?」
 この答えを出すには、地震保険料控除がどのような場合に適用されるのかを考える必要があります。

地震保険料控除とは

 地震保険料控除は、所得者本人又は所得者本人と生計を一にする配偶者その他の親族の所有する生活用資産(常時その居住の用に供する家屋又は生活に通常必要な家具、什器、衣服など)を保険や共済の目的とし、かつ、地震や噴火又はこれらによる津波を原因とする火災、損壊、埋没、又は流失による損害によりこれらの資産について生じた損失の額をてん補する保険金又は共済金が支払われる損害保険契約等に係る地震保険料を支払った場合に適用があります。

 難しい文章ですが、カッコ内の太字部分に注目すると、控除対象となる地震保険の目的には「住宅」と「家財」があることがわかります。 

住宅の場合

 保険の目的となる住宅は、所得者又は所得者本人と生計を一にする配偶者その他の親族が「所有」するものに限られますから、賃借している住宅について賃借人が支払った地震保険料は控除の対象とはなりません。
(そもそも賃貸契約の場合、建物の保険はオーナーが加入するものですので、賃借人が建物の保険に加入するということはないものと思われます)
 また、賃貸住宅のオーナーが自身が所有する賃貸住宅に住んでいない場合は、「常時その居住の用に供する家屋」とは言えないため、オーナーが支払った地震保険料は控除の対象とはなりません。

家財の場合

 一方、保険の目的となる家財は、所得者本人又は所得者本人と生計を一にする配偶者その他の親族の所有する生活に通常必要なものとされていますので、賃貸住宅に住んでいる人が支払った家財の地震保険料は控除の対象となります。
 ただし、一個又は一組の価額が30万円を超える宝石、貴金属、書画骨とう、美術工芸品などは「生活に通常必要」とは言えないため、これらを保険の目的とする地震保険料は控除の対象とはなりません。