扶養判定における遺族年金の取扱いは所得税と社会保険で異なる!

 納税者に所得税法上の控除対象扶養親族となる人がいる場合には、その納税者は扶養控除を受けて所得税を節税することができます。
 また、被保険者に社会保険制度上(協会けんぽ)の被扶養者となる人がいる場合には、被保険者だけではなく、その被扶養者についての病気・けが・死亡・出産についても保険給付が行われます。
 所得税法上の控除対象扶養親族の判定には所得基準があり、社会保険制度上の被扶養者の判定には収入基準がありますが、遺族年金の取扱いは両者で異なります。
 以下では、扶養判定の際の遺族年金の取扱いについて確認します。

1.所得税の扶養控除と遺族年金

(1) 控除対象扶養親族となる人の要件

 扶養親族とは、その年の12月31日(納税者が年の中途で死亡しまたは出国する場合は、その死亡または出国の時)の現況で、次の4つの要件のすべてに当てはまる人をいいます。

① 配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)、または都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること
② 納税者と生計を一にしていること
③ 年間の合計所得金額が48万円以下であること(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
④ 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと、または白色申告者の事業専従者でないこと

 控除対象扶養親族とは、上記の扶養親族のうち、その年の12月31日現在の年齢が16歳以上の人(一般の控除対象扶養親族といいます)が該当します。

(2) 扶養控除の判定と遺族年金

 控除対象扶養親族に該当する人がいる場合、納税者は扶養控除を受けることができますが、特にお年寄りを扶養している納税者は、所得税の特例を受けることができます。
 例えば、一般の控除対象扶養親族がいる場合は38万円の扶養控除となりますが、老人扶養親族(控除対象扶養親族のうち、その年の12月31日現在の年齢が70歳以上の方をいいます)がいる場合は48万円の扶養控除となり、さらに同居老親(老人扶養親族のうち、納税者やその配偶者の直系尊属(父母、祖父母など)で、納税者やその配偶者との同居を常としている方をいいます)であれば58万円の扶養控除となります。
 老人扶養親族や同居老親に該当する方の多くは年金を受給されていると思われますが、この年金も含めて合計所得金額が48万円以下でなければなりません。

 では、所得税が非課税とされる遺族年金は、合計所得金額48万円以下の判定にあたって含まれるのでしょうか?
 例えば、遺族厚生年金120万円とパート収入60万円がある同一生計の母(70歳)を扶養控除の対象とすることはできるのでしょうか?

 扶養親族に該当するか否かを判定する場合の合計所得金額には、所得税法やその他の法令の規定によって非課税とされる所得の金額は含まれないことになっています。
 厚生年金保険法に基づく遺族厚生年金や国民年金法に基づく遺族基礎年金などは非課税所得なので、上記の母の合計所得金額は5万円(給与収入60万円-給与所得控除55万円=給与所得5万円)となり、扶養控除の対象とすることができます(母が他の人の扶養控除の対象になっていないことが前提です)。
 

2.社会保険の被扶養者と遺族年金

(1) 被扶養者となる人の要件

 社会保険(健康保険)の被扶養者に該当する条件は、日本国内に住所(住民票)を有しており、被保険者により主として生計を維持されていること、および次の①と②のいずれにも該当した場合です

① 収入要件
 年間収入130万円未満(60歳以上または障害者の場合は年間収入180万円未満)かつ
 ・同居の場合は収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満
 ・別居の場合は収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満

② 同一世帯の条件
ア.被保険者と同居している必要がない者
 ・配偶者
 ・子、孫および兄弟姉妹
 ・父母、祖父母などの直系尊属
イ.被保険者と同居していることが必要な者
 ・上記ア以外の3親等内の親族(伯叔父母、甥姪とその配偶者など)
 ・内縁関係の配偶者の父母および子(当該配偶者の死後、引き続き同居する場合を含む)

※ 協会けんぽ以外の健康保険(健康保険組合など)の被扶養者については、被保険者の勤務先の健康保険組合によって要件が異なります。本記事では、協会けんぽを前提としています。

(2) 被扶養者の判定と遺族年金

 所得税法上は遺族年金は非課税所得であり、扶養控除の判定にあたっても合計所得金額には含まれないことを上記1で確認しました。
 では、社会保険(健康保険)においては、年間収入130万円未満(60歳以上または障害者の場合は年間収入180万円未満)という被扶養者の判定にあたって、遺族年金は収入に含まれるのでしょうか?

 結論を先に述べると、健康保険の被扶養者となる収入要件の判定には、遺族年金も含まれます。
 例えば、遺族厚生年金120万円とパート収入60万円がある同一生計の母(70歳)の場合、合計所得金額が48万円以下ですので所得税では扶養控除の対象となります。
 しかし、遺族年金も合わせた収入合計が180万円ですので年間収入180万円未満という収入要件を満たさず、健康保険では被扶養者の対象にはなりません。

ふるさと納税の一足早い駆け込み需要

 例年であれば、年末に集中するふるさと納税ですが、今年(2023(令和5)年)は9月中に駆け込みでふるさと納税をする人が増えているようです。その背景には、総務省が今年の6月に行ったふるさと納税の自治体側のルールの見直しが影響しているものと思われます。
 今回は、ふるさと納税についてどのような改正があったのかを確認します。

1.自治体側のルール改正

 ふるさと納税をしようとする人は、ふるさと納税ポータルサイトなどでその年の自分の所得に応じた「ふるさと納税限度額」を確認した上で、ふるさと納税をしています。
 今回総務省が見直しを行ったのは、ふるさと納税をする寄附側のルールではなく、寄附を募る自治体側のルールです。

 これまでもふるさと納税を受ける自治体側には、「返礼品は寄附額の3割以内でなければならない」とか「地場産品でなければならない」などの他に、「返礼品を含む必要経費は寄附額の5割以下」というルールがありました。
 このルールは、ふるさと納税の過度な返礼品競争を防ぐため、返礼品の調達費用や送料など、自治体が寄附を募る経費の総額を寄附額の5割以下とする基準です。

 ところが、総務省によると、寄附を受領したことを示す書類の発送費用などを含めると5割を超えるケースが相次いで確認されたことから、今回の改正(基準の厳格化)に至りました。
 改正内容は次のとおりで、2023(令和5)年10月1日から2024(令和6)年9月30日まで適用されます。

(1) 募集に要する費用について、ワンストップ特例事務や寄附金受領証の発行などの付随費用も含めて寄付金額の5割以下とする(募集適正基準の改正)
(2) 加工品のうち熟成肉と精米について、原材料がふるさと納税の対象となる地方団体と同一の都道府県産であるものに限り、返礼品として認める(地場産品基準の改正)

※ 熟成肉などを返礼品としていながら、原料は別の都道府県から仕入れ、その自治体で熟成させたケースなどがあったため、熟成肉と精米については原材料がその都道府県で生産されたものに限るとしています。

2.返礼品の実質的な値上げ

 上記1.(1)の改正により、返礼品だけではなく、送料、書類代、送付の人件費や広告宣伝費なども含めて寄付額の5割以下にするには、寄附額に占める返礼品の割合を下げたり、寄附額を引き上げるなどの方策が考えられますが、いずれにしても返礼品の実質的な値上げと言えそうです。
 このような事情を背景に、9月中にふるさと納税をしようとする人が増えたため、一足早い駆け込み需要につながっているものと思われます。

個人事業主の家事按分の取扱い

 自宅を事務所として利用している個人事業主の場合、家賃や水道光熱費など、プライベートと事業を兼ねた支出が生じる場合があります。これを家事関連費といいます。
 この家事関連費の事業割合(事業利用分)を計算して、経費として計上することを家事按分といいます。
 以下では、家事按分の取扱いについて確認します。

1.白色申告は事業割合50%超でないとダメ?

 家事関連費の経費算入については、所得税法施行令第96条で次のように定められています。

(家事関連費)
第九十六条 法第四十五条第一項第一号(必要経費とされない家事関連費)に規定する政令で定める経費は、次に掲げる経費以外の経費とする。
一 家事上の経費に関連する経費の主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合における当該部分に相当する経費
二 前号に掲げるもののほか、青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者に係る家事上の経費に関連する経費のうち、取引の記録等に基づいて、不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務の遂行上直接必要であつたことが明らかにされる部分の金額に相当する経費


 つまり、家事関連費については、次の場合は必要経費に算入できます。

(1) 白色申告の場合は、家事関連費の主たる部分が業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合
(2) 青色申告の場合は、業務の遂行上直接必要であったことが取引の記録等で明らかな場合

 ここで気になるのは、白色申告の場合には「主たる部分」という文言が付いていることです。
 この「主たる部分」については、国税庁の法令解釈通達に次のように示されています。

(業務の遂行上必要な部分)
45-2 令第96条第1号に規定する「主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要」であるかどうかは、その支出する金額のうち当該業務の遂行上必要な部分が50%を超えるかどうかにより判定するものとする。ただし、当該必要な部分の金額が50%以下であっても、その必要である部分を明らかに区分することができる場合には、当該必要である部分に相当する金額を必要経費に算入して差し支えない。

 白色申告の場合は、家事関連費のうち業務の遂行上必要な部分が50%を超えるかどうかにより判定しますが、50%以下であっても必要な部分が明らかに区分できる場合は経費算入してかまわないとされています。
 したがって、青色申告でも白色申告でも、プライベートと事業の明確な区分ができれば必要経費に算入できますので、実務的な取扱いに違いはありません。
 なお、上記(1)の白色申告の場合には、「取引の記録等」の文言がありませんが、白色申告でも帳簿書類に基づいた税額を申告しますので、この点においても青色申告との実務的な取扱いに違いはありません。

2.事業割合は変更してもいい

 家事按分の事業割合について、例えば家賃の按分については「この月だけ業務で使用する面積がどうしても増える」といった場合もあると思います。そんな時は明確な理由・記録等があれば、事業割合を変更してもかまいません。
 また、家事関連費の事業支出が少額になる場合などは、計算根拠やそれを証明する資料の整備をするといったコストをかけず、「経費計上しない」という選択をすることも可能です。

 事業割合を明確に区分できない場合は家事按分が認められないケースもありますので、根拠を示してきちんと説明できることが大事です。

外貨建預金の為替差益を申告(認識)しなければならない場合

 前回の記事(「外貨建預金の為替差益を申告(認識)しなくてもよい場合とは?」)で、外貨建預金を払い出しても為替差損益を認識しなくてもよいケースについて確認しましたが、今回は外貨建預金を払い出して為替差損益を認識しなければならないケースについて確認します。

1.為替差益を認識しなければならないケース

 例えば、次のような取引があった場合、建物の購入時点で預金A及び預金Bに係る為替差益を認識して雑所得として申告する必要はあるでしょうか?

 米ドル建で預け入れていた預金10万ドル(以下「預金A」という)と5万ドル(以下「預金B」という)を払い出し、これらの資金を用いて米国内にある貸付用の建物を12万ドルで購入し、残りの3万ドルは引き続き米ドルで保有している。

・預金Aの預入時のレート:1ドル=100円(円からドルへの交換と預金Aの預入は同日)
預金Bの預入時のレート:1ドル=112円(円からドルへの交換と預金Bの預入は同日)
預金の払出時のレート:1ドル=115円
建物購入時のレート:1ドル=120円

※ 便宜上、預金の利子は考慮しない。

 この場合、建物の購入時点で為替差益を認識する必要があります。したがって、雑所得として申告する必要があります。

 外貨建取引とは、外国通貨で支払が行われる資産の販売及び購入、役務の提供、金銭の貸付け及び借入れその他の取引をいい、居住者が外貨建取引を行った場合には、その外貨建取引の金額の円換算額はその外貨建取引を行った時における外国為替の売買相場により換算した金額として、その者の各年分の各種所得の金額を計算するものとされています(所得税法第57条の3第1項)。

 上記の例のように、外貨建の預金をもって貸付用の建物を外貨建取引により購入した場合には、新たな経済的価値(その購入時点における評価額)を持った資産が外部から流入したことにより、それまでは評価差額にすぎなかった為替差損益に相当するものが所得税法第36条の「収入すべき金額」として実現したものと考えられますので、当該建物の購入価額の円換算額とその購入に充てた外国通貨を取得した時の為替レートにより円換算した金額との差額(為替差損益)を所得として認識する必要があります。

 つまり、資産の種類が変わった場合(預金から現金、預金から有価証券など)や外貨の種類が変わった場合(ドルから円など)には、為替差損益を認識する必要があります。

2.為替差損益の計算方法

 上記1の例のように、建物の購入に充てた外国通貨の取得が複数回ある場合の為替差損益の計算については、所得税法施行令第118条第1項(譲渡所得の基因となる有価証券の取得費等)の規定に準じて、次のとおり計算するのが相当です。

(1) 保有するドルの1ドル当たりのレートの計算
 預金A:100円×10万ドル=10,000,000円
 預金B:112円×5万ドル=5,600,000円
 1ドル当たりのレート:(10,000,000円+5,600,000円)÷15万ドル=104円

(2) 為替差益の計算
 (120円-104円)×12万ドル=1,920,000円

 なお、購入した建物は、その購入時の為替レートによる円換算額を取得価額として、その後の不動産所得の金額を計算する際に減価償却費が計算されるほか、当該建物を譲渡した場合の取得費も当該取得価額を基に計算されることになります(所得税法第57条の3第1項)。

ふるさと納税返礼品を一時所得で申告する際の収入金額(時価)とは?

1.返礼品が一時所得となる根拠

 一時所得とは、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の臨時・偶発的な所得で、労務やその他の役務又は資産の譲渡による対価としての性質を有しないものをいい、例えば、次のようなものが該当します。

・福引や懸賞の当選金品(業務に関して受けるものを除く)
・競馬や競輪の払戻金(営利を目的とする継続的行為から生じたものを除く)
・生命保険契約等の一時金(業務に関して受けるものを除く)
・損害保険契約や建物更生共済等と満期返戻金、解約返戻金
・法人から贈与された金品(業務に関して受けるもの、継続的に受けるものを除く)
・売買契約の解除に伴い取得する違約金(業務に関して受けるものを除く)
・ 逸失物拾得者や埋蔵物発見者が受ける報奨金や新たに所有権を取得する資産
・時効により取得した土地等

 ふるさと納税をした人が地方公共団体から受ける特産品等の返礼品は、一時所得に該当します。
 所得税法上、各種所得の金額の計算上収入すべき金額には、金銭以外の物又は権利その他経済的利益の価額も含まれますが、ふるさと納税の謝礼として受ける特産品等に係る経済的利益については、所得税法第9条に規定する非課税所得のいずれにも該当せず、また、地方公共団体は法人とされていますので(地方自治法第2条第1項)、法人からの贈与により取得するものと考えられます。
 したがって、特産品等に係る経済的利益は一時所得に該当します。

2.返礼品の時価は「返礼品調達価格」だけど・・・

 一時所得の金額は次のように計算しますので、ふるさと納税以外に一時所得に該当するものがないときは、受け取った返礼品の価格が50万円までなら課税関係は生じません。

 一時所得の金額=一時所得に係る総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(50万円が上限)

 この算式において、一時所得に係る総収入金額に算入すべき金額は受け取った返礼品の価格になりますが、返礼品の価格とはいかなるものをいうのでしょうか?
 一時所得の総収入金額には、金銭によるもののほか金銭以外の物又は権利その他経済的利益の価額も含まれ、経済的利益の価額は時価により計算します。
 では、返礼品という経済的利益の時価は、どのように算出するのでしょうか?

 国税不服審判所の令和2年8月6日裁決や令和4年2月7日裁決では、返礼品の時価は「地方公共団体が返礼品の調達に当たって現に支出した金額(返礼品調達価格)」とされています(令和4年2月7日裁決は公表裁決事例(裁決事例集No.126)で閲覧できます)。

 以下は、返礼品の時価を争点とする令和4年2月7日裁決の要約です。

(1) 返礼品は、ふるさと納税を受けた地方公共団体が、その謝礼として当該ふるさと納税をした個人に送付するものであるから、当該地方公共団体は、募集に要する費用の額や当該返礼品について、予算計画、返礼品の選定、調達個数、市場調査、事業者との折衝などを踏まえて、ふるさと納税の金額に応じた返礼品を選定し調達するものと推測することができる。このため、当該返礼品を選定し調達を行う地方公共団体が、当該返礼品の価値を最も理解しているものと考えられる。

(2) また、ふるさと納税をした個人は、地方公共団体からの贈与により返礼品を取得するのであるが、ふるさと納税制度における返礼品の提供が当該個人に対する謝礼であることからすれば、当該贈与による当該個人に供与されることとなる経済的利益の価額は、地方公共団体が謝礼(返礼品の調達・提供)のために支出した返礼品調達価格をその算定の基礎とすることが相当である(以下、ふるさと納税を受けた地方公共団体が返礼品の調達に当たって現に支出した金額を「返礼品調達価格」といい、当該調達先の事業者を「調達事業者」という)。
 そして、返礼品調達価格については、地方公共団体と調達事業者との合意により成立したものであり、地方公共団体がふるさと納税の金額に応じた返礼品をホームページ等で公開していることを踏まえると、当該合意された金額について、地方公共団体と調達事業者との間に特別な動機を挟む余地はなく、通常、地方公共団体が当該返礼品をその調達時における時価を超える金額で調達することはないと考えられる。
 なお、返礼品について、地方公共団体と調達事業者との間で不当に高額又は低額で取引されたといった事情は見受けられない。

(3) さらに、地方公共団体は、通常、調達事業者による返礼品の発送をもって、当該調達事業者へその代金(返礼品調達価格)を支払っているものと考えられ、当該代金は当該発送により確定するものと認められる。そうすると、地方公共団体が返礼品を調達した時期とふるさと納税をした者が当該返礼品を取得する時期は、近接していると認められ、この二つの時期を同時期であるとみても特段不合理ではない。

(4) これらのことからすると、返礼品に係る返礼品調達価格は、地方公共団体が返礼品を調達した時における当該返礼品の客観的交換価値(時価)を示すものと評価することができる。

 裁決では返礼品調達価格を時価としていますが、この返礼品調達価格を一般の納税者が知るのは困難であると思われます。
 税務署の調査担当職員だからこそ、地方公共団体に対して返礼品に係る照会を行って回答を得ることができるのであり、同様の照会を一般の納税者が行ったとしても、対応してくれる地方公共団体があるのかどうかは疑問です。

白色申告に関する誤解~損益通算・繰越控除・青色申告承認後の白色申告

 前回(「白色申告に関する誤解~現金主義と収支内訳書」)に続いて、白色申告に関する誤解をとり上げます。

1.白色申告は損益通算できない?

 不動産所得、事業所得、山林所得及び譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額は、一定の順序(第一次通算、第二次通算、第三次通算)で他の所得の金額から控除することができます。
 例えば、不動産外交員など事業所得と給与所得がある人で、事業所得の損失が200万円で給与所得が60万円の場合は、給与所得は0となり、140万円の損失が残ります(60万円-200万円=△140万円)。
 このように、他の黒字の所得金額から損失の金額を差し引くことを、損益通算といいます。
 この損益通算は、その対象となる損失の金額や損益通算の順序などが厳密に決められていますが、青色申告だけに適用する旨の規定はありません。したがって、白色申告の場合でも、損益通算はできます。

2.白色申告は損失の繰越控除ができない?

 青色申告の場合は、損失の生じた年の翌年から3年間にわたってその損失を繰越控除できます。
 先の例でいえば、損益通算して生じた140万円の損失を翌年の所得から控除することができ、それでも控除しきれない損失の金額がある場合は翌々年、翌々翌年の所得から控除することができます。
 では、白色申告の場合は、損失の繰越控除ができないのでしょうか?
 この答えを出すためには、繰越控除できる損失には次の2種類があることを理解する必要があります。

(1) 純損失の繰越控除
 純損失の金額とは、事業所得、不動産所得、総合譲渡所得、山林所得の4つの所得の損失のうち、損益通算しても控除しきれない損失の金額をいいます。先の例で生じた140万円の損失は純損失です。
 青色申告の場合は、この純損失の金額のすべてを、純損失の生じた年の翌年から3年間の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除することができます。
 しかし、白色申告の場合は、純損失の金額のうち、変動所得の損失と被災事業用資産の損失の金額に限り控除することができます。先の例で生じた140万円の純損失は、繰越控除できません。

(2) 雑損失の繰越控除
 雑損控除の額がその年分の所得金額から控除できなかった場合、その控除不足額を雑損失の生じた年分の翌年以後3年間の総所得金額、分離短期(長期)譲渡所得の金額、申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得の金額、株式等に係る譲渡所得等の金額、先物取引に係る雑所得等の金額、山林所得金額、又は退職所得金額から控除することができます。
 この雑損失の金額については、青色申告の場合も白色申告の場合も、そのすべてを控除することができます。

 したがって、白色申告は雑損失の金額についてはすべて繰越控除できるが、純損失の金額については変動所得の損失と被災事業用資産の損失の金額しか繰越控除ができないということになります。

3.青色申告の承認後は白色申告できない?

 青色申告の特典を受けるためには、税務署に青色申告承認申請書を期限までに提出しなければなりません。
 では、青色申告の承認を受けた後でも、白色申告はできるのでしょうか?

 青色申告については、所得税法143条に次のように規定されています。

不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務を行なう居住者は、納税地の所轄税務署長の承認を受けた場合には、確定申告書及び当該申告書に係る修正申告書を青色の申告書により提出することができる。

 いわゆる「できる」規定ですので、青色申告の承認を受けたとしても青色申告が強制されるものではありません。
 つまり、青色申告の承認後であっても白色申告をすることができます。

白色申告に関する誤解~現金主義と収支内訳書

 所得税の確定申告には青色申告と白色申告があります。青色申告を行う場合は、税務署に期限までに青色申告承認申請書を提出したり、55万円(電子申告等をすれば65万円)の青色申告特別控除を適用するためには複式簿記による記帳が必要であったりしますので、青色申告の特典を受けるためには手続きや会計処理に若干の煩雑さが伴います。
 白色申告を行う場合は、税務署への届出も必要ありませんし、単式簿記による記帳でも構いませんので、青色申告に比べれば煩雑さはありません。そのため、白色申告はシンプルで簡単というイメージがありますが、このことが白色申告に関する以下のような誤解を生んでいるのかもしれません。

1.白色申告は現金主義でよい?

 発生主義に比べると現金主義は簡単なイメージがあるため、このような誤解があるのかもしれませんが、青色申告も白色申告も、原則として発生主義による記帳を行わなければなりません※1
 現金主義による記帳は、一定の要件※2を満たす青色申告者のみに認められた特典であり、白色申告者に現金主義の適用はありません。

※1 令和4年分以後の業務に係る雑所得(サラリーマンが行うアフィリエイトなど、いわゆる副業)については、その年の前々年分の収入金額が300万円以下である人は、業務に係る雑所得の金額の計算上総収入金額および必要経費に算入すべき金額は、その年において収入した金額および支出した費用の額とすることができます。ただし、この特例を受けるには、確定申告書にこの特例を受ける旨を記載しなければなりません。

※2 不動産所得と事業所得について、その年の前々年分の不動産所得の金額及び事業所得の金額(事業専従者給与(控除)の額を必要経費に算入しないで計算した金額)の合計額が300万円以下であり、「現金主義による所得計算の特例を受けることの届出書」を、適用を受けようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後に新たに開業した場合には、開業した日から2月以内)に提出する必要があります。

2.白色申告の事業所得は収支内訳書を添付しなくてよい?

 収支内訳書を確定申告書に添付して提出する義務のある人は、次のいずれにも該当する人です。

(1) 事業所得、不動産所得又は山林所得を生ずべき業務を行っている人
(2) 青色申告をしていない人
(3) 確定申告書を提出する人

 また、収支内訳書を添付する確定申告書には、次の申告書も含まれます。

① 還付を受けるための申告書
② 損失申告用の申告書
③ 準確定申告書

 したがって、確定申告書を提出する義務がある場合だけではなく、確定申告書が提出される限り、要件に該当すれば収支内訳書を添付することになります。
 つまり、事業所得や不動産所得がある白色申告者は、確定申告書に収支内訳書を添付しなければなりません※3

※3 業務に係る雑所得のある人(アフィリエイトを行うサラリーマンなど)は上記の要件を満たさないため、これまでは収支内訳書の添付は不要でした。
 しかし、令和4年分以後の所得税においては、業務に係る雑所得を有する場合で、その年の前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が1,000万円を超える人は、確定申告書を提出する際に総収入金額や必要経費の内容を記載した収支内訳書を添付する必要があります。

令和4年分以後の「業務に係る雑所得」の書類保存・現金主義の特例・収支内訳書添付について

1.雑所得の3つの区分

 雑所得とは、他の9種類の所得(利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得および一時所得)のいずれにも当たらない所得をいい、例えば、公的年金等、非営業用貸金の利子、副業に係る所得が該当します。
 これらの雑所得は、次の3つに区分されます。

(1) 公的年金等の雑所得
 例えば、国民年金、厚生年金、恩給、企業年金などです。

(2) 業務に係る雑所得
 業務に係る雑所得とは、副業に係る所得のうち営利を目的とした継続的なものをいいます。例えば、サラリーマンが行うアフィリエイトやUBER EATS ドライバーの報酬などです。

(3) その他の雑所得
 上記(1)(2)以外の雑所得です。例えば、非営業用貸金の利子、生命保険契約に基づく年金、還付加算金などです。

 確定申告書第一表では、次のように区分されています。

2.現金預金取引等書類の保存

 2022(令和4)年分以後の所得税において、上記1.(2)の業務に係る雑所得を有する場合で、その年の前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える人は、「現金預金取引等関係書類」」を5年間保存する必要があります。

 例えば、令和4年分の業務に係る雑所得を確定申告する場合に、2020(令和2)年分の業務に係る雑所得の収入金額(収入金額から必要経費を差引いた所得ではありません)が300万円を超えていた人は、令和4年分の現金預金取引等関係書類を保存しなければなりません。
 たとえ令和4年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円以下であったとしても、令和2年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超えていたら、書類の保存義務が生じます。

 なお、現金預金取引等書類とは、居住者等が上記1.(2)の業務に関して作成し、または受領した請求書、領収書その他これらに類する書類(自己の作成したこれらの書類でその写しのあるものは、その写しを含みます)のうち、現金の収受もしくは払出しまたは預貯金の預入もしくは引出しに際して作成されたものをいいます。

3.現金主義の特例

 また、その年の前々年分の収入金額が300万円以下である人は、業務に係る雑所得の金額の計算上総収入金額および必要経費に算入すべき金額は、その年において収入した金額および支出した費用の額とすることができます(収入や費用の計上時期を現金の出し入れを基準とする、いわゆる現金主義の特例)。
 ただし、この特例を受けるには、確定申告書にこの特例を受ける旨を記載しなければなりません。

※ 青色申告の特典である現金主義の特例とは異なる制度です。青色申告における現金主義の特例は、その年の前々年分の不動産所得の金額及び事業所得の金額(事業専従者給与(控除)の額を必要経費に算入しないで計算した金額)の合計額が300万円以下である人(青色申告者)が、税務署に届出をした場合に受けることができます。

4.収支内訳書の添付

 収支内訳書を確定申告書に添付して提出する義務のある人は、次のいずれにも該当する人です。

(1) 事業所得、不動産所得又は山林所得を生ずべき業務を行っている人
(2) 青色申告をしていない人
(3) 確定申告書を提出する人

 したがって、業務に係る雑所得のある人(アフィリエイトを行うサラリーマンなど)は上記の要件を満たさないため、これまでは収支内訳書の添付は不要でした。
 
 しかし、令和4年分以後の所得税においては、業務に係る雑所得を有する場合で、その年の前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が1,000万円を超える人は、確定申告書を提出する際に総収入金額や必要経費の内容を記載した書類(収支内訳書など)を添付する必要があります。

確定申告書第一表の「区分」欄を見落としていませんか?

 2021(令和3)年分から、確定申告書第一表左側の「収入金額等」、「所得金額等」、「所得から差し引かれる金額」の各欄に、新たに15か所の「区分」欄(下図の🔵部分)が設けられていることにお気づきでしょうか?
 また、確定申告書第一表右側の「税金の計算」、「その他」の各欄には、少しづつ形を変えながら、2022(令和4)年分では6か所の「区分」欄(下図の🔴部分)が設けられています。
 この「区分」欄には、何を記載すればいいのでしょうか?
 以下では、この「区分」欄の記載内容について確認します。

1.収入金額等の㋐欄又は㋑欄の「区分」

 ㋐欄又は㋑欄の「区分」には、その年の記帳・帳簿の保存の状況について、次の場合に応じて、それぞれ次の数字を記入します。
 なお、4又は5に当てはまる場合、10万円を超える青色申告特別控除の適用は受けられません。

電子帳簿保存法の規定に基づく優良な電子帳簿の要件を満たし、電磁的記録による保存に係る届出書(又は電磁的記録に係る承認申請書)を提出し、総勘定元帳、仕訳帳等について電磁的記録による備付け及び保存を行っている場合 1
会計ソフト等の電子計算機を使用して記帳している場合(1に該当する場合を除きます) 2
総勘定元帳、仕訳帳等を備え付け、日々の取引を正規の簿記の原則(複式簿記)に従って記帳している場合(1又は2に該当する場合を除きます)

3

日々の取引を正規の簿記の原則(複式簿記)以外の簡易な方法で記帳している場合(2に該当する場合を除きます) 4
上記のいずれにも該当しない場合(記帳の仕方が分からない場合を含みます) 5

2.収入金額等の㋒欄の「区分1」と「区分2」

 ㋒欄の「区分1」又は「区分2」には、次の場合に応じて、それぞれ次の数字を記入します。

㋒欄の「区分1」には、国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例(措法41の4の3)の適用がある場合は、「1」を記入します。 1
㋒欄の「区分2」には、上記1.収入金額等の㋐欄又は㋑欄の「区分」の記入の仕方を参照し、その年の記帳・帳簿の保存の状況について記入します。 1~5

3.収入金額等の㋔欄の「区分」

 ㋔欄の「区分」には、次の場合に応じて、それぞれ次の数字を記入します。

(1) あなたの給与等の収入金額(税込)が850万円を超え、①あなた、同一生計配偶者若しくは扶養親族のいずれかが特別障害者である場合、又は②23歳未満の扶養親族がいる場合 1
(2) あなたに給与所得と公的年金等の雑所得がある場合で、給与所得控除後の給与等の金額と公的年金等の雑所得の金額の合計額が10万円を超える場合 2
(1)及び(2)の両方に該当する場合 3

4.収入金額等の㋖欄の「区分」

 ㋖欄の「区分」には、次の場合に該当するときは、次の数字を記入します。

業務に係る雑所得の金額の計算上、現金主義の特例を適用する場合 1

5.収入金額等の㋗欄の「区分」

 ㋗欄の「区分」には、次の場合に応じて、それぞれ次の数字を記入します。

個人年金保険に係る収入がある場合 1
暗号資産取引に係る収入がある場合 2
個人年金保険に係る収入及び暗号資産取引に係る収入の両方がある場合 3

6.所得金額等の⑥欄の「区分」

 ⑥欄の「区分」には、給与所得者の特定支出控除を受ける場合にのみ、「給与所得者の特定支出に関する明細書」の区分番号を記入します。

通勤費 1
職務上の旅費 256
転居費(転任に伴うもの) 2
研修費 4
資格取得費(人の資格を取得するための費用) 8
帰宅旅費(単身赴任に伴うもの) 16
勤務必要経費:図書費 32
勤務必要経費:衣服費 64
勤務必要経費:交際費等 128

7.所得から差し引かれる金額の⑰~⑱欄の「区分」

 ⑰~⑱欄の「区分」には、次の場合に該当するときは、次の数字を記入します。

ひとり親控除の適用を受ける場合 1

8.所得から差し引かれる金額の㉑~㉒欄の「区分1」と「区分2」

 ㉑~㉒欄の「区分1」又は「区分2」には、次の場合に応じて、それぞれ次の数字を記入します。

配偶者控除の適用を受ける場合は、「区分1」には記入しません。 不要
配偶者特別控除の適用を受ける場合は、「区分2」に「1」を記入します。 1
国外居住親族の配偶者がいる場合、「親族関係書類」及び「送金関係書類」の両方を給与等の支払者に提出・提示している場合以外は「区分2」に「1」を、「親族関係書類」及び「送金関係書類」の両方を給与等の支払者に提出・提示している場合は「2」を記入します。 1又は2

9.所得から差し引かれる金額の㉓欄の「区分」

 ㉓欄の「区分」には、次の場合に応じて、それぞれ次の数字を記入します。

国外居住親族の扶養親族がいる場合、「親族関係書類」及び「送金関係書類」の両方を給与等の支払者に提出・提示している場合以外は「1」を、「親族関係書類」及び「送金関係書類」の両方を給与等の支払者に提出・提示している場合は「2」を記入します。
国外居住親族の扶養親族が複数いる場合は、その全員の「親族関係書類」及び「送金関係書類」を提出・提示している場合にのみ、「2」を記入します。
1又は2

10.所得から差し引かれる金額の㉗欄の「区分」

 ㉗欄の「区分」には、次の場合に応じて、それぞれ次の数字を記入します。

医療費控除を選択する場合は、「区分」には記入しません。 不要
セルフメディケーション税制による医療費控除の特例を選択する場合は、「区分」に「1」と記入します。 1

11.税金の計算の㉝欄の「区分」

 ㉝欄の「区分」には、次の場合に該当するときは、次の数字を記入します。

事業を営む方が、中小事業者が機械等を取得した場合の所得税額の特別控除など、事業所得等の特例に係る税額控除の適用を受ける場合には、左側空欄 に「投資税額等」、「区分」 に「1」と記入し、控除額を記入します。 1

12.税金の計算の㉞欄の「区分1」と「区分2」

 ㉞欄の「区分1」と「区分2」には、次の場合に応じて、それぞれ次の数字を記入します。

「区分1」は、東日本大震災の被災者の方が、適用期間の特例や住宅の再取得等に係る住宅借入金等特別控除の控除額の特例又は重複適用の特例の適用を受ける場合、「東日本大震災により自己の所有する家屋が被害を受け居住の用に供することができなくなった場合に住宅借入金等特別控除等を受けられる方へ」を参考に記入します。 左記
給与所得者が、既に年末調整でこの控除の適用を受けている場合には、源泉徴収票の「住宅借入金等特別控除の額」欄の額(摘要欄の「住宅借入金等特別控除可能額」欄に金額が記載されている場合はその額)を㉞欄に転記し、「区分2」に「1」を記入します。 1

13.税金の計算の㊳~㊵欄の「区分」

 ㊳~㊵欄の「区分」には、次の場合に応じて、それぞれ次の数字を記入します。

住宅耐震改修特別控除の場合 1
住宅特定改修特別税額控除の場合 2
認定住宅等新築等特別税額控除の場合 3
複数の控除がある場合 4

14.税額の計算の㊻~㊼欄の「区分」

 ㊻~㊼欄の「区分」には、次の場合に応じて、それぞれ次の数字を記入します。

外国税額控除のみ適用があり、かつ、外国税額控除が復興特別所得税から控除されている場合 1
分配時調整外国税相当額控除のみ適用があり、かつ、分配時調整外国税相当
額控除が復興特別所得税から控除されている場合
2
外国税額控除及び分配時調整外国税相当額控除の両方の適用があり、かつ、どちらかの控除(又は両方の控除)が復興特別所得税から控除されている場合 3

15.その他の63欄の「区分」

 63欄の「区分」には、「変動所得・臨時所得の平均課税の計算書」の記載に基づいて、次の場合に応じて、それぞれ次の数字を記入します。

(1) 計算書④欄に金額がある場合
計算書①欄に金額がないときは「3」を記入し、それ以外のときは記入を要しません。
3又は不要
(2) (1)に該当しない場合で計算書③欄に金額があるとき
計算書②欄に金額がないときは「2」を記入し、それ以外のときは記入を要しません。
2又は不要
(3) (1)及び(2)に該当しない場合で計算書②欄に金額があるとき
区分欄には「1」を記入します。
1
(4) (1)、(2)及び(3)に該当しない場合
区分欄の記入は要しません。
不要
出所:国税庁ホームページ

土地等の取得に要した借入金利子の計算方法と記載例

1.不動産所得に係る損益通算の特例

 不動産所得、事業所得、山林所得及び譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額は、一定の順序(第一次通算、第二次通算、第三次通算)で他の所得の金額から控除することができます。これを損益通算といいます。
 ところが、不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額がある場合に、その年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した金額のうちに、不動産所得を生ずべき業務の用に供する土地等(土地又は土地の上に存する権利をいいます)を取得するために要した借入金の利子の額があるときは、次の金額は生じなかったものとされて損益通算の対象にはなりません(事業税では通算できます)。

(1)「土地等の取得に要した借入金利子の額>不動産所得の損失の金額」の場合
 この場合、不動産所得の損失の金額は生じなかったものとされ、損益通算の対象にはなりません。
 例えば、総収入金額が100万円、必要経費が140万円(そのうち土地取得に要した借入金利子が60万円)だとすると、不動産所得の金額は100万円-140万円=△40万円(損失)になります。
 この場合(借入金利子60万円>損失40万円の場合)、不動産所得の損失40万円は生じなかったものとされ損益通算の対象にはなりません。 

(2)「土地等の取得に要した借入金利子の額≦不動産所得の損失の金額」の場合
 この場合、不動産所得の損失の金額のうち土地等の取得に要した借入金利子の額に相当する金額は生じなかったものとされ、損益通算の対象にはなりません。
 例えば、総収入金額が70万円、必要経費が140万円(そのうち土地取得に要した借入金利子が60万円)だとすると、不動産所得の金額は70万円-140万円=△70万円(損失)になります。
 この場合(借入金利子60万円≦損失70万円の場合)、不動産所得の損失70万円のうち土地取得に要した借入金利子に相当する部分の60万円の損失は生じなかったものとされ損益通算の対象にはなりません(損失のうち10万円だけが損益通算されます)。

 以上のように、不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額がある場合に、土地等の取得に要した借入金の利子の額があるときは、損益通算に注意しなければなりません。
 では、土地等の取得に要した借入金の利子の額は、どのように計算するのでしょうか?
 土地と建物を一括して購入した場合に、土地取得のための資金と建物取得のための資金を別々の金融機関から借り入れている場合は、計算上の問題は特にありません。
 しかし、土地取得のための資金と建物取得のための資金を同一の金融機関から借り入れている場合も多いものと思われます。このような場合には、土地等の取得に要した借入金の利子の額の計算は、次のようにします。

2.土地等の取得に要した借入金の利子の額の計算

 次の設例を用いて、土地等の取得に要した借入金の利子の額の計算方法を確認します。

設例
・土地の取得価額・・・4,000万円
・建物の取得価額・・・6,000万円
・自己資金・・・・・・2,000万円
・借入金・・・・・・・8,000万円
・令和4年分の借入金利子の額・・・160万円
・令和5年分の借入金利子の額・・・152万円
計算
①まず、借入金が建物の取得に優先的に充てられたものとして、土地の取得に要した借入金の額を求めます。

8,000万円(借入金総額)-6,000万円(建物の取得価額)=2,000万円(土地の取得に要した借入金)

②次に、土地の取得に要した借入金の利子の額を求めます。

令和4年分:160万円×2,000万円/8,000万円=40万円
令和5年分:152万円×2,000万円/8,000万円=38万円

※ 令和5年分以降も、当初の借入金の振分け割合(2,000万円/8,000万円)で計算します。

3.収支内訳書(不動産所得用)と確定申告書第一表の記載

 上記の設例において、令和4年分の不動産所得の損失の金額が100万円だとすると、収支内訳書(不動産所得用)と確定申告書第一表の記載は次のようになります。