個人住民税(市・県民税)の申告の要否について

 2024(令和6)年度の個人住民税(市・県民税)は、2023(令和5)年中の所得等により計算され、2024(令和6)年1月1日に居住していた市区町村で課税されます。
 2023(令和5)年分の所得税確定申告期間は、2024(令和6)年2月16日(金)から3月15日(金)までとなっています。
 この間に所得税の確定申告をした人は、原則として個人住民税の申告をする必要はありません。
 一方、所得税の確定申告をする必要のない人(例えば、公的年金等の収入金額が400万円以下で公的年金等以外の所得金額が20万円以下の人)でも、個人住民税の申告はしなければなりません(確定申告不要制度については、本ブログ記事「給与所得者と公的年金等受給者の確定申告不要制度の注意点」をご参照ください)。
 以下では、個人住民税の申告の要否について確認します。

1.住民税の申告が必要な人

 以下の人は、2024(令和6)年度個人住民税の申告が必要です。

(1) 賦課期日(令和6年1月1日)現在において市内に在住し、かつ前年(令和5年)中の合計所得金額が43万円を超える人
(2) 賦課期日(令和6年1月1日)現在において市内に在住し、前年(令和5年)中の合計所得金額が43万円以下の人のうち課税(所得)証明書が必要な人
(3) 賦課期日(令和6年1月1日)現在において市外に在住し、市内に事業所や事務所がある個人事業者

※ 例えば、宝塚市に住んでいる人が西宮市の事業所で事業を行っている個人事業者である場合は、宝塚市には均等割と所得割を納付し、西宮市には均等割を納付することになります。

出所:西宮市ホームページ

2.住民税の申告が不要な人

 以下の人は、2024(令和6)年度個人住民税の申告は不要です。

(1) 所得税の確定申告をする人※1
(2) 前年(令和5年)中に所得がなかった人※2
(3) 前年(令和5年)中の所得が給与のみで、勤務先から市役所に給与支払報告書が提出されている人
(4) 前年(令和5年)中の所得が公的年金のみで、扶養・配偶者などの控除が前年(令和5年)分の公的年金などの源泉徴収票に記載されている内容どおりの人※2

※1 所得税の確定申告をする場合でも、確定申告書第2表の住民税に関する事項に記入もれ等があると、所得税額に影響がなくても個人住民税額等に影響する場合がありますので注意が必要です。

出所:宝塚市ホームページ

※2 上記(2)に該当する人でも健康保険の手続きなどで所得申告が必要な場合や、上記(4)に該当する人でも生命保険料控除や医療費控除などを追加する場合は、申告が必要となることがあります。

外貨建預金の為替差益を申告(認識)しなくてもよい場合とは?

 毎年確定申告時期になると、各地に設けられた確定申告相談会場に多くの一般納税者の方が訪れます。
 その相談会場で最近増えてきたのが、外貨建預金が満期等となった場合の為替差益に関するご相談です。
 例えば、外貨建預金を解約して円転した場合に為替差益が生じているときは、これを雑所得として申告する必要があります。
 しかし、以下のように外貨建預金の為替差益を申告しなくてもよいケースもあります。

1.為替差益を認識する必要がないケース

 例えば、次のような取引があった場合、為替差益を認識して雑所得として申告する必要はあるでしょうか?

 A銀行に米ドル建で預け入れていた定期預金(以下「本件預金」という)1万ドルが満期となったため、満期日に全額を払い出した。
 同日、本件預金の元本部分1万ドルをB銀行に預け入れた。

・預入時のレート:1ドル=100円(円からドルへの交換と本件預金の預入は同日)
・払出時のレート:1ドル=125円
・為替差益:(125円-100円)×1万ドル=25万円

 この場合、定期預金をA銀行から払い出してB銀行に預け入れる際に、元本部分について25万円の為替差益が発生していますが、この為替差益を認識する必要はありません。したがって、雑所得として申告する必要もありません。

 外貨建取引とは、外国通貨で支払が行われる資産の販売及び購入、役務の提供、金銭の貸付け及び借入れその他の取引をいい、居住者が外貨建取引を行った場合には、その外貨建取引の金額の円換算額はその外貨建取引を行った時における外国為替の売買相場により換算した金額として、その者の各年分の各種所得の金額を計算するものとされています(所得税法第57条の3第1項)。

 ただし、外国通貨で表示された預貯金を受け入れる金融機関を相手方とする当該預貯金に関する契約に基づき預入が行われる当該預貯金の元本に係る金銭により引き続き同一の金融機関に同一の外国通貨で行われる預貯金の預入は、上記の外貨建取引には該当しないものとされています(所得税法施行令第167条の6第2項)。

 したがって、外貨建預貯金として預け入れていた元本部分の金銭につき、①同一の金融機関に、②同一の外国通貨で、③継続して預け入れる場合の預貯金の預入については、外貨建取引に該当しないこととされていますので、その元本部分に係る為替差損益が認識されることはありません。

2.なぜ認識する必要がないのか?

 上記1のようなケースでは、外貨建預貯金の預入及び払出が行われたとしても、その元本部分に関しては、同一の外国通貨で預入及び払出が行われる限り、その金額に増減はなく、実質的には外国通貨を保有し続けている場合と変わりはないといえます。

 所得税法施行令第167条の6第2項の規定は、このような外貨の保有状態に実質的な変化がない外貨建預貯金の預入及び払出については、その都度これらを外貨建取引として為替差損益を認識することは実情に即さないものであると考えられることから、所得税法第57条の3第1項でいう外貨建取引から除かれることを明らかにした例示規定であると解されています。

 このようなことを踏まえると、本件預金の預入及び払出は、他の金融機関へ預け入れる場合であるとしても、同一の外国通貨で行われる限り、その預入・払出は所得税法施行令第167条の6第2項でいう外国通貨で行われる預貯金の預入に類するものと解され、所得税法第57条の3第1項の外貨建取引に該当しない、すなわち、為替差損益を認識しないとすることが相当と考えられています。

 なお、蛇足ながら、年収2,000万円以下の給与所得者で外貨建預金の為替差益を含めた給与所得以外の所得が年間20万円以下の場合等は、確定申告不要です。

株主優待券の所得税の課税関係

 株式を保有する人は、株式の値上がりによる売却益を期待したり、配当を受け取ったりすること以外に、株主の特典である株主優待を受けることができます。中には、株主優待で生活をしている人もいるそうですが、株主が受け取る株主優待券に所得税はかからないのでしょうか?
 今回は、株主優待券の課税関係について確認します。

1.配当所得に株主優待券は含まれる?

 配当所得とは、以下に掲げるように、株主や出資者が法人から受ける剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配、投資信託及び投資法人に関する法律第137条の金銭の分配、基金利息並びに投資信託及び特定受益証券発行信託の収益の分配に係る所得をいいます(所得税法第24条第1項)。

① 法人から受ける剰余金の配当(例:決算配当、中間配当金)
② 法人から受ける利益の配当(例:決算配当、中間配当金)
③ 剰余金の分配(例:農業協同組合等から受ける出資に対する剰余金の配当金)
④ 投資法人から受ける金銭の分配
⑤ 基金利息(例:相互保険会社の基金に対する利息)
⑥ 投資信託の収益の分配(公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託を除く)
⑦ 特定受益証券発行信託の収益の分配

 また、配当所得については、所得税基本通達24-1(剰余金の配当、利益の配当又は剰余金の分配に含まれるもの)において、次のように規定されています。

24-1 法第24条第1項に規定する「剰余金の配当」、「利益の配当」及び「剰余金の分配」には、剰余金又は利益の処分により配当又は分配をしたものだけでなく、法人が株主等に対しその株主等である地位に基づいて供与した経済的な利益が含まれる。

 ここで気になるのは、この基本通達の「その株主等である地位に基づいて供与した経済的な利益」という部分です。この部分の文言からすぐに思い起こされるのは株主優待券ですが、株主優待券も配当所得に含まれるのでしょうか?

 これに関しては、所得税基本通達24-2(配当等に含まれないもの)で、次のように規定されています。

24-2 法人が株主等に対してその株主等である地位に基づいて供与した経済的な利益であっても、法人の利益の有無にかかわらず供与することとしている次に掲げるようなもの(これらのものに代えて他の物品又は金銭の交付を受けることができることとなっている場合における当該物品又は金銭を含む。)は、法人が剰余金又は利益の処分として取り扱わない限り、配当等(法第24条第1項に規定する配当等をいう。以下同じ。)には含まれないものとする。

(1) 旅客運送業を営む法人が自己の交通機関を利用させるために交付する株主優待乗車券等
(2) 映画、演劇等の興行業を営む法人が自己の興行場等において上映する映画の鑑賞等をさせるために交付する株主優待入場券等
(3) ホテル、旅館業等を営む法人が自己の施設を利用させるために交付する株主優待施設利用券等
(4) 法人が自己の製品等の値引販売を行うことにより供与する利益
(5) 法人が創業記念、増資記念等に際して交付する記念品


 基本通達24-2において、 法人の利益の有無にかかわらず供与される株主優待券は、配当所得に含まれないことが明記されています。配当所得に含まれないのであれば、確定申告は不要でしょうか?

2.株主優待券は雑所得

 上記基本通達24-2には、次のような注意書きがあります。

(注) 上記に掲げる配当等に含まれない経済的な利益で個人である株主等が受けるものは、法第35条第1項《雑所得》に規定する雑所得に該当し、配当控除の対象とはならない。

 つまり、株主優待券は配当所得ではありませんが、雑所得に該当するということです。したがって、原則として確定申告が必要ですが、確定申告が不要の場合もあります。確定申告不要制度については、本ブログ記事「給与所得者と公的年金等受給者の確定申告不要制度の注意点」をご参照ください。