1.中間申告不要の場合
消費税の課税事業者は、中間申告が不要の場合を除き、中間申告書を提出してその申告書に記載された税額を申告期限までに納付しなければなりません。
中間申告書の提出義務は、直前の課税期間の確定消費税額(年税額)に応じて、次のように規定されています。
直前課税期間の確定消費税額(国税) | 中間申告 | 申告期限 | 納付税額 |
---|---|---|---|
4,800万円超 | 1月ごと年11回 | 一月中間申告対象期間の末日の翌日から2か月以内(最初の1か月は3か月以内) | 直前課税期間の確定消費税額×1/12 |
400万円超4,800万円以下 | 3月ごと年3回 | 三月中間申告対象期間の末日の翌日から2か月以内 | 直前課税期間の確定消費税額×3/12 |
48万円超400万円以下 | 6月ごと年1回 | 六月中間申告対象期間の末日の翌日から2か月以内 | 直前課税期間の確定消費税額×6/12 |
48万円以下 | 中間申告不要 |
中間申告が不要の場合は、次のとおりです。
(1) 設立1期目の法人(合併によるものを除く)
(2) その年に新規開業した個人事業者(相続による事業承継を含む)
(3) 事業年度が3か月以下の法人
(4) 課税期間の短縮の特例を受けている事業者
(5) 直前課税期間の確定消費税額(年税額・国税のみ)が48万円以下の事業者
今回は、中間申告が不要である上記(5)の事業者が、中間申告書を提出する場合の任意の中間申告制度についてみていきます。
2.任意の中間申告制度
直前課税期間の確定消費税額(年税額・国税のみ)が48万円以下であることにより中間申告書を提出する義務がない事業者は、「任意の中間申告書を提出する旨の届出書」を提出することにより、その届出書の提出をした日以後にその末日が到来する六月中間申告対象期間から、自主的に六月中間申告書及び納付をすることができます。
例えば、2022(令和4)年から適用を受けようとする個人事業者は、2022(令和4)年6月30日までに届出書を納税地の所轄税務署長に提出すれば、同年8月31日を期限として自主的に六月中間申告書及び納付をすることができます。
また、2022(令和4)年4月1日に事業年度が開始する法人は、2022(令和4)年9月30日までに届出書を納税地の所轄税務署長に提出すれば、同年11月30日を期限として自主的に六月中間申告書及び納付をすることができます。
任意の中間申告制度を選択した事業者が、その適用を受けることをやめようとするときは、「任意の中間申告書を提出することの取りやめ届出書」を納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。
3.任意の中間申告書を提出しなかった場合
任意の中間申告制度を選択した事業者が、六月中間申告書をその提出期限までに提出しなかった場合には、「任意の中間申告書を提出することの取りやめ届出書」を提出したものとみなされます。
したがって、任意の中間申告制度には、提出期限までに中間申告書の提出があったものとみなされる「みなし申告」の取扱いはなく、任意の中間申告をしたい場合には必ず申告書の提出が必要です。
一方、任意の中間申告制度では、提出期限までに申告書の提出がない限り、未納となって延滞税が課されることはありません。
4.翌期以降の任意の中間申告制度の選択の効力
上記3で述べたように、任意の中間申告制度を選択した事業者が、六月中間申告書をその提出期限までに提出しなかった場合には、「任意の中間申告書を提出することの取りやめ届出書」を提出したものとみなされます。
では、当期に任意の中間申告制度を選択して任意の中間申告書を提出した事業者が、来期は基準期間(前期)における課税売上高が1,000万円以下となるため免税事業者となる場合はどうでしょうか?
このように免税事業者となった場合については、中間申告書や確定申告書を提出する義務がないことから、任意の中間申告制度を選択していたとしても中間申告書を提出する必要はありません。
したがって、中間申告書を提出しなかったとしても「任意の中間申告書を提出することの取りやめ届出書」を提出したものとはみなされず、引き続き任意の中間申告制度の選択の効力は存続します。
一方、課税事業者については、直前の課税期間が免税事業者であったため確定申告書を提出する義務がなかったことや、直前の課税期間に還付申告書を提出していたため、直前の課税期間の確定消費税額の金額がない場合であっても、任意の中間申告制度の選択の効力を存続させるためには、自主的に中間申告書(消費税額を「0円」とする中間申告書又は仮決算による中間申告書)を提出する必要があります。