上場株式等の配当所得及び譲渡所得に係る住民税の課税方式は申告不要が得策

 2017年度(平成29年度)税制改正で、上場株式等の配当所得・譲渡所得について、所得税と住民税で異なる課税方式を選択できるようになりました。

1.上場株式等の配当所得の課税方式

 上場株式等の配当所得については、所得税及び住民税ともに以下の課税方式を選択することができます。

(1) 申告不要
(2) 総合課税
(3) 申告分離課税

 所得税の確定申告書において、上場株式等の配当所得を総合課税又は申告分離課税として申告した場合は、住民税も同様にその課税方式が適用されます。
 しかし、納税通知書が送達される日までに、所得税の確定申告書とは別に住民税の申告書「上場株式等の配当・譲渡所得等の課税方式選択申告書」を提出することにより、所得税と異なる課税方式(申告不要、総合課税、申告分離課税)を選択することができます(例えば所得税は総合課税、住民税は申告不要など)。

2.上場株式等の譲渡所得の課税方式

 また、上場株式等の譲渡所得については、所得税及び住民税ともに以下の課税方式を選択することができます。

(1) 申告不要
(2) 申告分離課税

 この場合も、納税通知書が送達される日までに、所得税の確定申告書とは別に住民税の申告書を提出することにより、所得税と異なる課税方式(申告不要、申告分離課税)を選択することができます(例えば所得税は申告分離課税、住民税は申告不要など)。

3.住民税は申告不要が得策

 申告した上場株式等の配当所得と譲渡所得は、住民税の非課税判定や社会保険料(国民健康保険料・後期高齢者医療保険料)算定の基準となる総所得金額や合計所得金額に含まれます。社会保険料(国民健康保険料・後期高齢者医療保険料)には、この住民税の課税所得に連動する「所得割」の仕組みがあるため、申告によって所得が増えれば社会保険料も増えるリスクがあります。
 申告することで所得税の負担を軽減できても、社会保険料が増えれば、全体として負担増となる可能性があります。しかし、住民税を申告不要としておけば社会保険料には影響がありません。
 したがって、住民税は申告不要を選択することが得策といえます
 

個人経営の飲食業・理美容業等は社会保険加入を強制されない

 会計事務所に寄せられる相談は税金のことだけではありません。先日も飲食業を営む個人事業主さんから、社会保険に関する次のような質問を受けました。
 「従業員を10人に増やしたいが、社会保険に加入しなければならないか?」 

1.個人事業は5人以上の雇用で強制加入

 法人の場合、たとえ1人でも従業員を雇ったときは、社会保険(健康保険・厚生年金)に加入しなければなりません。
 個人事業の場合は、5人以上の従業員を雇ったときは社会保険の加入が強制されます。
 では、10人の従業員を雇用する個人経営の飲食店に社会保険の加入義務はあるのでしょうか?

2.「法定16業種」以外は任意加入

 答えは「否」です。
 5人以上の従業員を雇用する個人事業主でも、「法定16業種」に該当しない農業、漁業、一部のサービス業(旅館、飲食、理美容業、弁護士事務所、税理士事務所など)を営む者は、社会保険への加入が任意とされています。
 したがって、個人経営の飲食店は、5人以上の従業員を雇っても社会保険の加入を強制されることはありません。

※ 被用者保険(健康保険「協会けんぽ」・厚生年金)の適用を拡大する一環として、これまで被用者保険の適用業種でなかった税理士をはじめ、公認会計士、弁護士、司法書士など10の士業についても、常時5人以上の従業員を使用している個人事務所を強制適用業種に加えることとした「年金制度機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が2020(令和2)年の通常国会で成立し、公布されました(2022(令和4)年10月1日から施行)。改正内容については、本ブログ記事「5人以上の従業員を雇用している士業の個人事務所は令和4年10月から社会保険の加入が必要です」をご参照ください。

3.「法定16業種」とは?

 法定16業種とは、製造業・土木建築業・鉱業・電気ガス事業・運送業・貨物積みおろし業・清掃業・物品販売業・金融保険業・保管賃貸業・媒介周旋業・集金案内広告業・教育研究調査業・医療業・通信報道業・社会福祉事業及び更生保護事業をいいます。

外国人・年金受給者を雇用した場合や試用期間中の社会保険の取扱い

1.健康保険・厚生年金保険の加入要件

 健康保険・厚生年金保険は正社員だけではなく、法人の代表者や役員も被保険者になります。
 また、パートやアルバイトの方でも、1週間の所定労働時間及び1ヶ月の所定労働日数が、同じ事業所で同様の業務に従事している正社員の4分の3以上である場合は、被保険者になります。
 さらに、正社員の4分の3未満であっても、次の5要件をすべて満たす方は被保険者になります。

(1) 週の所定労働時間が20時間以上
(2) 勤務期間が1年以上見込まれること
(3) 月額賃金が8.8万円以上
(4) 学生以外
(5) 従業員501人以上の企業に勤務していること
 
 では、次のような場合の被保険者はどのようになるのでしょうか?

2.外国人を雇用した場合

 上記1の加入要件を満たす方は、国籍を問わず被保険者になります。

3.年金受給者を雇用した場合

 70歳未満で老齢厚生年金(特別支給を含む)を受給している人を雇用した場合でも、上記1の加入要件を満たす方は被保険者になります。

4.試用期間中の場合

 法律上の雇用契約や本人の同意にかかわりなく、上記1の加入要件を満たす方は、試用期間中であっても被保険者になります。