産前産後期間は国民年金保険料が免除されます(届出必要)!

 次世代育成支援の観点から、国民年金第1号被保険者が出産を行った際には、出産前後の一定期間の国民年金保険料が免除される制度があります。
 今回は、国民年金保険料の産前産後期間の免除制度について確認します。

※ 国民年金第1号被保険者とは、20歳以上60歳未満の自営業者・農林漁業者とその家族、学生、無職の人をいいます。

1.届出時期

 産前産後期間の国民年金保険料の免除を受けるためには、住民登録をしている市(区)役所・町村役場の国民年金担当窓口へ届書を提出しなければなりません。

 この届出は出産予定日の6か月前から可能であり、出産後でも届出することができます。

 すでに国民年金保険料免除・納付猶予、学生納付特例が承認されている場合でも、届出は可能です。

 また、すでに保険料を納付していても届出はできます。保険料を納付している場合は、産前産後期間の保険料は還付されます。

※ 国民年金保険料免除・納付猶予については、本ブログ記事「国民年金保険料の免除・納付猶予の申請について」をご参照ください。

2.対象者

 この免除制度の対象となるのは、国民年金第1号被保険者です。ただし、国民年金の任意加入期間は対象になりません。

3.免除される期間(産前産後期間)

 出産予定日または出産日が属する月の前月から4か月間の国民年金保険料が免除されます。
 例えば、出産予定日が属する月が9月の場合は、その前月の8月から11月までの4か月間が免除期間となります。

 多胎妊娠(双子等)の場合は、出産予定日または出産日が属する月の3か月前から6か月間の国民年金保険料が免除されます。
 例えば、出産予定日が属する月が9月の場合は、その3か月前の6月から11月までの6か月間が免除期間となります。

※ 「出産予定日が属する月」と実際の「出産日が属する月」が乖離した場合でも、原則として変更は行われません。出産後に届け出た場合は、「出産日が属する月」が基準となります。
 なお、出産とは、妊娠85日(4か月)以上の出産をいいます(早産、死産、流産及び人工妊娠中絶を含みます)。 

4.将来の年金受給額は?

 産前産後期間は国民年金保険料が免除されますが、気になるのは、将来の年金受給額にどのような影響があるかということです。

 この点については、産前産後期間に係る保険料免除期間は、保険料納付済期間に算入されることになっています。
 したがって、「保険料が免除された期間」も保険料を納付したものとして老齢基礎年金の受給額に反映されます。

令和6年度地域別最低賃金が10月1日から順次引き上げられます

 最低賃金は、パート、アルバイト、正社員、臨時、嘱託など雇用形態や呼称の如何を問わず、すべての労働者に適用されます。
 近年は最低賃金引き上げの流れが続いており、2024(令和6)年度の全国加重平均は時給1,055円と過去最高となっており、引き上げ幅51円も過去最高となっています。
 以下では、2024(令和6)年度の最低賃金について確認します。

1.最低賃金とは?

 最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低額を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければならないとする制度です。
 仮に、最低賃金額より低い賃金を労働者、使用者双方の合意の上で定めても、それは法律によって無効とされ、最低賃金額と同様の定めをしたものとみなされます。
 また、使用者が労働者に最低賃金未満の賃金しか支払っていない場合には、使用者は労働者に対してその差額を支払わなくてはなりません。
 地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、最低賃金法に罰則(50万円以下の罰金)が定められています※1
 なお、特定(産業別)最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、労働基準法に罰則(30万円以下の罰金)が定められています※2

※1 「地域別最低賃金」とは、産業や職種にかかわりなく、各都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に対して適用される最低賃金です。各都道府県に1つずつ、全部で47件の最低賃金が定められています。

※2 「特定(産業別)最低賃金」は、特定の産業について設定されている最低賃金です。関係労使が基幹的労働者を対象として、「地域別最低賃金」よりも金額水準の高い最低賃金を定めることが必要と認める産業について設定されており、全国で224件の最低賃金が定められています(令和6年3月31日現在)。

2.最高額は東京都の時給1,163円

 厚生労働省は、都道府県労働局に設置されている地方最低賃金審議会が答申した2024(令和6)年度の地域別最低賃金の改定額(以下「改定額」)を取りまとめました。改定額及び発効予定年月日は、次の別紙のとおりです。

出所:厚生労働省ホームページ

 この「令和6年度地域別最低賃金答申状況」は、厚生労働大臣の諮問機関である中央最低賃金審議会が令和6年7月25日に示した「令和6年度地域別最低賃金額改定の目安について」などを参考として、各地方最低賃金審議会が調査・審議して答申した結果を、厚生労働省が取りまとめて令和6年8月29日に公表したものです。

 答申された改定額は、都道府県労働局での関係労使からの異議申出に関する手続を経た上で、都道府県労働局長の決定により、10月1日から11月1日までの間に順次発効される予定です。

 地域別最低賃金の全国整合性を図るため目安額のランクが設けられていますが、4区分だったランクが前年度から3区分に変更されています。
 改定額を見ていくとAからCの47都道府県すべてで50円以上引き上げられ、東京都は時給1,163円と最高です。
 最高額1,163円(東京都)と最低額951円(秋田県)の金額差は212円です。最高額に対する最低額の割合は81.8%(951円÷1,163円≒81.8%)と8割を超えており、地域格差は少しずつ改善しています※3

※3 前年度の比率は80.2%でした。なお、この比率は10年連続で改善されています。

3.令和6年度の引き上げ幅は50円~84円

 また、地域経済の活性化や若年層の流出を防ぎ労働人口を確保するには、目安より高い金額の上乗せが必至とした回答が27県あり、目安を上回る引き上げが賃金の低い地方で相次ぎました。
 下表は、2024(令和6)年度の改定額を引き上げ幅ごとに見たものです。

引き上げ幅 改定額
50円

北海道1010円 宮城 973円 栃木 1004円 群馬 985円 埼玉1078円 千葉1076円 東京1163円 神奈川1162円 富山998円 山梨988円 長野 998円 静岡1034円 愛知1077円 三重 1023円 滋賀1017円 京都1058円 大阪1114円 奈良 986円 岡山982円 広島 1020円

51円

石川 984円 岐阜1001円 兵庫1052円 和歌山980円 山口979円 福岡992円

52円

茨城 1005円 香川970円

53円

福井984円

54円

秋田951円 新潟985円 熊本952円

55円

青森953円 山形955円 福島955円 高知952円 長崎953円 大分954円 宮崎952円  

56円

佐賀956円 鹿児島953円 沖縄952 円    

57円

鳥取957円

58円

島根 962円

59円

岩手952円 愛媛 956円   

84円

徳島980円  

国民年金保険料が免除される所得基準の計算方法~確定申告書との違いに注意!

 国民年金保険料の納付が経済的に困難な場合は、本人の申請により保険料の納付が免除される制度があります。

 免除される額には、全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除の4つの区分があり、所得に応じて免除の区分が承認(決定)されます。

 以下では、国民年金保険料の免除を受けるための所得基準の計算方法と、計算の際に注意を要する確定申告書の控除額との違いについて確認します。

※ 本記事の前編である保険料免除制度の内容については、「国民年金保険料の免除・納付猶予の申請について」をご参照ください。

1.日本年金機構が公表している所得基準の計算式

 国民年金保険料の免除を受けるためには、本人、配偶者(別世帯の配偶者を含む)、世帯主それぞれの前年所得(1月から6月までに申請する場合は前々年所得)が一定額以下でなければなりません。

 この「一定額以下」という所得基準については、日本年金機構ホームページにおいて次の計算式が公表されています。

(1) 全額免除
(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円

(2) 4分の3免除
88万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

(3) 半額免除
128万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

(4) 4分の1免除
168万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等


 本人、配偶者(別世帯の配偶者を含む)、世帯主それぞれの前年所得が、上記計算式で計算した金額以下であれば、保険料の免除を受けることができます。

 ところが、実際に計算しようとすると、いくつかの疑問が生じます。

 例えば、計算式(1)における「扶養親族等の数」の「等」には配偶者や事業専従者も含まれるのか、(2)~(4)における「扶養親族等控除額」や「社会保険料控除額等」の「等」には所得税における扶養控除や社会保険料控除以外に何が含まれるのか、などです。

 しかし、日本年金機構のホームページでは、これらの内容に関する詳細な記載は見当たりません。

 保険料が免除される所得を計算する際のベースとなるのは、確定申告書の数字です。そこで、確定申告書との異同点を中心に「扶養親族等の数」、「扶養親族等控除額」、「社会保険料控除額等」の内容について、以下で確認していきます。

2.計算式の「扶養親族等の数」とは?

 全額免除の所得基準は、「(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円」の計算式で求められます。

 この計算式における「扶養親族等の数」は、扶養控除の対象親族(控除対象扶養親族)だけではなく、16歳未満の扶養親族(年少扶養親族)と同一生計配偶者(控除対象配偶者)も該当します。

 一方、青色事業専従者として給与の支払を受けている人または白色事業専従者は該当しません。

3.計算式の「扶養親族等控除額」とは?

 一部免除(4分の3免除、半額免除、4分の1免除)の所得基準は、「〇〇万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等」の計算式で求められます。

 この計算式における「扶養親族等控除額」は、以下のものが該当します。

(1) 老人控除対象配偶者(70歳以上の同一生計配偶者)または老人扶養親族1人につき48万円
(2) 16歳以上23歳未満の扶養親族1人につき63万円
(3) それ以外の同一生計配偶者または扶養親族1人につき38万円

 ここで注意を要するのは、所得基準の計算式における「扶養親族等控除額」は、必ずしも確定申告書の控除額と一致しないということです。

 具体的な相違点は、次のとおりです。

所得基準の計算式 確定申告書の控除額との違い
老人控除対象配偶者(70歳以上の同一生計配偶者)または老人扶養親族1人につき48万円 老人扶養親族のうち、同居老親等については1人につき58万円の控除額となるが、計算式では同居老親等についても48万円の控除額となる。
16歳以上23歳未満の扶養親族1人につき63万円 16歳以上19歳未満の一般控除対象扶養親族については1人につき38万円の控除額となるが、計算式では一般控除対象扶養親族についても63万円の控除額となる(19歳以上23歳未満の特定扶養親族と同額)。
それ以外の同一生計配偶者または扶養親族1人につき38万円 16歳未満の年少扶養親族については扶養控除の対象外であるが、計算式では年少扶養親族についても38万円の控除額となる。

4.計算式の「社会保険料控除額等」とは?

 一部免除(4分の3免除、半額免除、4分の1免除)の所得基準の計算式における「社会保険料控除額等」は、以下のものが該当します。

(1) 障がい者1人につき27万円
(2) 特別障がい者1人につき40万円
(3) 寡婦または寡夫1人につき27万円
(4) 特別寡婦1人につき35万円
(5) 勤労学生1人につき27万円
(6) 雑損控除額
(7) 医療費控除額
(8) 社会保険料控除額
(9) 小規模企業共済等掛金控除額
(10) 配偶者特別控除額
(11) 純損失及び雑損失の控除額 など

 ここでも注意を要するのは、確定申告書の控除額との違いです。具体的には次のとおりです。

所得基準の計算式 確定申告書の控除額との違い
特別障がい者1人につき40万円 同居特別障害者については1人につき75万円の控除額となるが、計算式では同居特別障害者についても40万円の控除額となる。

 なお、確定申告書の所得控除のうち、以下のものは保険料免除を受けるための所得基準の計算式には含まれません。

(1) 生命保険料控除
(2) 地震保険料控除
(3) 基礎控除
(4) 寄附金控除

5.所得基準の計算方法と免除の区分

 国民年金保険料の免除を受けるための所得基準を計算するにあたっては、上記2,3、4における「扶養親族等の数」、「扶養親族等控除額」、「社会保険料控除額等」の範囲を把握し、確定申告書の控除額との違いに注意する必要があります。

 例えば、次の家族構成を例にした場合、免除を受けるための所得基準の計算方法と免除の区分は以下のようになります。

【家族構成5人】
① 本人・・・・・令和5年分の事業所得295万円(青色申告)、世帯主
② 配偶者・・・・青色事業専従者で令和5年分の給与所得41万円、46歳
③子ども・・・・小学生(12歳)と高校生(16歳)、無収入
④母親・・・・・令和5年分の年金所得15万円、71歳、同居
⑤所得控除・・・社会保険料控除30万円、生命保険料控除10万円、寄附金控除5万円
【所得基準の計算と免除の区分】

A.全額免除
所得基準:(3(子ども2人、母親)+1)×35万円+32万円=172万円
→本人の所得295万円>所得基準172万円のため、全額免除は受けられない。

B.4分の3免除
所得基準;88万円+48万円(同居老親)+38万円(年少扶養)+63万円(一般扶養)+30万円(社保控除)=267万円
→本人の所得295万円>267万円のため、4分の3免除は受けられない。

C.半額免除
所得基準:128万円+48万円(同居老親)+38万円(年少扶養)+63万円(一般扶養)+30万円(社保控除)=307万円
→本人の所得295万円≦307万円のため、半額免除を受けられる。

※ 配偶者の所得は41万円であるため、A、B、Cにおける所得基準をクリアしている。

 最後に、上記の例における本人の確定申告書を以下に示します。青枠で囲んだ箇所が所得基準の計算対象となりますが、確定申告書の控除額との違いに注意してください。

(1) 確定申告書では扶養控除が96万円(同居老親58万円+一般扶養親族38万円)となりますが、所得基準の計算では149万円(同居老親48万円+年少扶養親族38万円+一般扶養親族63万円)となります。

(2) 確定申告書では生命保険料控除10万円、基礎控除48万円、寄附金控除5万円が記載されていますが、所得基準の計算では対象外となります。

国民年金保険料の免除・納付猶予の申請について

 収入の減少や失業等により国民年金保険料を納めることが経済的に困難な場合は、保険料の納付が「免除」または「猶予」される制度があります。
 この制度を利用することで、将来の年金受給権の確保だけでなく、万一の事故などにより障害を負ったときの障害基礎年金の受給資格を確保することができます。
 以下では、免除または納付猶予を受けるための申請について確認します

※ 学生の方には「学生納付特例制度」、生活保護の生活扶助を受けている方や障害年金を受けている方には「法定免除制度」、出産を予定している方や出産した方には「産前産後期間の免除制度」が用意されていますので、これらの方は今回の「免除・納付猶予制度」の対象ではありません。 

1.保険料免除・納付猶予の申請

 国民年金保険料の免除や納付猶予を受けるためには、本人による申請が必要です。

(1) 免除申請(全額免除・一部免除)

 本人、配偶者(別世帯の配偶者を含む)、世帯主それぞれの前年所得(1月から6月までに申請する場合は前々年所得)が一定額以下の場合や失業等の理由がある場合など、保険料を納めることが経済的に困難な場合は、本人が申請書を提出し、承認されると保険料の納付が免除されます。

 免除される額は、全額、4分の3、半額、4分の1の4種類があります※1。例えば、全額免除の場合は、前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であることが必要です。

(扶養親族等の数※2+1)×35万円+32万円

※1 一部免除(4分の3、半額、4分の1)の場合、減額された保険料を納付しないと一部免除が無効となり未納期間となりますので、減額された保険料の納付が必要です。

※2 扶養親族等の数には、青色事業専従者として給与の支払を受けている人または白色事業専従者は含まれません。

(2) 納付猶予申請

 20歳以上50歳未満の方で、本人、配偶者(別世帯の配偶者を含む)それぞれの前年所得(1月から6月までに申請する場合は前々年所得)が一定額以下(全額免除の所得基準と同じ)の場合には、本人が申請書を提出し、承認されると保険料の納付が猶予されます。

 なお、上記(1)の免除(全額免除・一部免除)を受けた期間は、将来の老齢基礎年金の額が増額(国庫負担分が反映)されますが、納付猶予を受けた期間は老齢基礎年金の額は増額されません。

 また、免除(全額免除・一部免除)または納付猶予が承認されると、付加年金および国民年金基金は利用できません(付加年金および国民年金基金は、過去に遡っての加入ができません)。

2.申請できる期間

 免除申請または納付猶予申請ができる期間は、次のとおりです。

① 過去期間
 申請書が受理された月から2年1か月前(すでに保険料が納付済みの月を除く)まで

② 将来期間
 翌年6月(1月~6月に申請したときは、その年の6月)分まで

 ただし、1枚の申請書で申請できるのは、7月から次の年の6月までの12か月となりますので、必要に応じて年度ごとに申請書を提出します(免除等の1年度は7月~翌年6月)。

 例えば、令和6年7月に、令和4年6月から令和7年6月までの期間を申請する場合、以下の4枚の申請書が必要になります。

 イ.令和3年度分(令和4年6月~令和4年6月)
 ロ.令和4年度分(令和4年7月~令和5年6月)
 ハ.令和5年度分(令和5年7月~令和6年6月)
 ニ.令和6年度分(令和6年7月~令和7年6月)

 なお、この例の場合は、令和4年5月以前は時効により申請できません。

3.免除(全額免除・一部免除)と納付猶予の違い

 保険料の免除(全額免除・一部免除)と納付猶予は、以下の表のとおり、その期間が年金額に反映されるかどうかに違いがあります。

  全額免除 一部免除※1 納付猶予
老齢基礎年金の受給資格期間への算入 あり あり あり
老齢基礎年金の年金額への反映 あり※2 あり※2 なし
障害基礎年金、遺族基礎年金の受給資格期間への算入 あり あり あり

※1 一部免除の承認を受けている期間は、減額された保険料を納付している必要があります。未納の場合は、一部免除が無効となります。

※2 保険料を全額納めた場合と比べて、受け取る年金額の割合が以下のとおりとなります(2009(平成21)年4月以降の免除期間)。
・全額免除の場合・・・・2分の1
・4分の3免除の場合・・・8分の5
・半額免除の場合・・・・8分の6
・4分の1免除の場合・・・8分の7

 上表のとおり、納付猶予の期間は、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金を受け取るために必要な受給資格期間にカウントされますが、年金額には反映されません。

4.免除等された保険料の追納

 上記のように、保険料の免除・納付猶予の承認を受けた期間がある場合は、保険料を全額納付した場合と比べて、将来受け取る年金額が少なくなります。

 しかし、これらの期間が10年以内であれば、後から保険料を納付(追納)して老齢基礎年金の受給額を満額に近づけることが可能です。
 例えば、免除等承認月が2014(平成26)年10月の場合、2024(令和6)年10月31日まで追納できます。

 ただし、以下の点には注意が必要です。

(1) 追納を行うには追納申込書の提出が必要ですが、追納期限の直前に提出すると期限までに追納できなくなる場合があります。
(2) 老齢基礎年金を受け取っている方は追納できません。
(3) 免除等の承認を受けた期間の翌年度から起算して3年度目以降に保険料を追納する場合は、当時の保険料額に経過期間に応じた加算額が上乗せされます。

令和6年10月1日から変わる税金・社会保険その他の主な制度

 2024(令和6)年10月1日から、税金や社会保険などにおいて制度変更が行われるものがあります。
 それらの中には、会社の経営や従業員の働き方などに影響を及ぼすものもありますので、どのような制度変更があるのかを確認しておくことは有意義であると思われます。
 以下では、令和6年10月1日から変更される主な制度について確認します。

1.中小企業倒産防止共済掛金の損金算入制限

 中小企業倒産防止共済制度(経営セーフティ共済)は、取引先事業者が倒産した際に無担保・無保証人で掛金の最大10倍(上限額8,000万円)の金額を借りることができ、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度です。

 取引先の突然の倒産などの「もしも」のときに備えるというのが本来の目的ですが、掛金全額(1年間で最大240万円)を損金または必要経費に算入できることから、節税対策としても活用されています。

 一方、掛金の積立額は上限800万円とされており、上限に達した後は任意のタイミングで解約して解約手当金を受け取ることになりますが、この解約手当金は収益(益金または収入金額)となります。

 黒字のタイミングで解約すれば解約手当金がすべて課税対象となってしまい、せっかくの損金算入が単なる課税の繰り延べになってしまいますので、節税効果を活かすためには解約するタイミングは重要です。

 一般的には、赤字のタイミングで解約したり、役員退職金や大規模修繕などの大型の経費を計上するタイミングで解約して、解約手当金と相殺する方法があります。

 さらに、解約した後にすぐに再加入して、掛金(前納すれば最大240万円)と解約手当金を相殺するという方法が用いられることがありましたが、この部分が中小企業庁に不適切であると指摘され、見直しが行われました。

 その結果、2024(令和6)年10月1日以後に解約した中小企業倒産防止共済については、解約の日から2年を経過する日までの間に支出する掛金は損金算入することができないとされました。
 これにより、解約後すぐに再加入して節税するというスキームが封じられることになります。

 もし、再加入による掛金の損金算入を検討している場合は、令和6年9月30日までに現契約を一度解約した上で再加入する必要があります。

※ 損金算入制限については、「中小企業倒産防止共済の再加入後の損金算入制限に注意」をご参照下さい。

2.免税事業者等からの仕入れに係る経過措置の適用の制限

 インボイス制度の下では、免税事業者等(消費者、免税事業者又は登録を受けていない課税事業者)からの課税仕入れについては、仕入税額控除のために保存が必要なインボイスの交付を受けることができないことから、仕入税額控除を行うことができません。

 ただし、インボイス制度開始から一定期間(6年間)は、免税事業者等からの課税仕入れであっても、仕入税額相当額の一定割合(80%・50%)を仕入税額とみなして控除できる経過措置が設けられています。

期間 割合
令和5年10月1日から令和8年9月30日まで 仕入税額相当額の80%
令和8年10月1日から令和11年9月30日まで 仕入税額相当額の50%

 上記経過措置が2024(令和6)年度税制改正により見直しが行われ、一の免税事業者等から行う当該経過措置の対象となる課税仕入れの額の合計額がその年又はその事業年度で税込み10億円を超える場合には、その超えた部分の課税仕入れについて、本経過措置は適用できないこととされました。
 この改正は、2024(令和6)年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます。

※ 経過措置については、「インボイス制度導入後の免税事業者からの仕入れに係る仕入税額控除の特例(経過措置)」をご参照下さい。

3.パート・アルバイトの社会保険加入義務の拡大

 パートやアルバイトで働く方の社会保険(健康保険及び厚生年金保険)加入義務の判定基準が、2024(令和6)年10月1日から変わります。

 パートやアルバイトで働く短時間労働者の方でも、一定の要件を満たす場合は社会保険に加入しなければなりません。
 一定の要件とは次の4要件をいい、これらの要件をすべて満たす場合は社会保険の加入義務が生じます。

(1) 週の所定労働時間が20時間以上であること
(2) 所定内賃金が月額8.8万円以上であること
(3) 2か月を超える雇用の見込みがあること
(4) 学生でないこと

 現在、厚生年金保険の被保険者数が101人以上の企業等で働く上記4要件を満たす短時間労働者は、社会保険の加入対象となっています。
 この短時間労働者の加入要件がさらに拡大され、令和6年10月1日から厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業等で働く短時間労働者の社会保険加入が義務化されます。

 今回の加入要件の拡大に伴い、該当するパート・アルバイトの方やその家族の生活、働き方の選択などに大きな影響を及ぼす可能性がありますので、事前に制度変更の周知を図る必要があります。

※ 加入要件の詳細については、「従業員51人以上の会社で働くパート・アルバイトの社会保険加入義務(令和6年10月1日~)」をご参照ください。

4.代表取締役等住所非表示措置

 現行の会社法においては、株式会社の代表取締役など会社の代表者は氏名と住所を登記する必要があり、登記後はその氏名と住所が登記簿上で公開されます。

 この登記簿上の代表者の住所について、2024(令和6)年10月1日から登記申請時に代表者の住所を非公開にすることができるという制度(代表取締役等住所非表示措置)が始まります。

 この措置により、登記事項証明書等で公開が必要だった代表者の氏名と住所のうち、住所を非公開にすることができるようになります。
 ただし、非公開にできるのは住所の一部であり、最小行政区画までは公開されます。つまり、市区町村(東京都においては特別区、指定都市においては区)までは公開されます。

 なお、代表取締役等住所非表示措置が講じられた場合には、登記事項証明書等によって会社代表者の住所を証明することができないこととなるため、金融機関から融資を受けるに当たって不都合が生じたり、不動産取引等に当たって必要な書類(会社の印鑑証明書等)が増えたりするなど、一定の支障が生じることが想定されます。

 そのため、代表取締役等住所非表示措置の申出をする前に、このような影響があり得ることについて、慎重かつ十分な検討が必要です。

※ 制度の詳細については、「令和6年10月1日から登記申請時に社長の住所を非公開にできます」をご参照ください。

5.給与所得者の保険料控除申告書

 2024(令和6)年10月1日以後に提出する「給与所得者の保険料控除申告書」について、以下の「申告者との続柄」の記載を要しないこととされました。

(1) 社会保険料について、社会保険料のうちに自己と生計を一にする配偶者その他の親族が負担すべきものがある場合におけるこれらの者の申告者との続柄
(2) 新生命保険料及び旧生命保険料について、保険金、年金、共済金、確定給付企業年金、退職年金又は退職一時金の受取人の申告者との続柄
(3) 介護医療保険料について、保険金、年金又は共済金の受取人の申告者との続柄
(4) 新個人年金保険料及び旧個人年金保険料について、年金の受取人の申告者との続柄

6.地域別最低賃金の引き上げ

 最低賃金は、パート、アルバイト、正社員、臨時、嘱託など雇用形態や呼称の如何を問わず、すべての労働者に適用されます。

 近年は最低賃金引き上げの流れが続いており、2024(令和6)年度の全国加重平均は時給1,055円と過去最高となっており、引き上げ幅51円も過去最高となっています。
 令和6年度の地域別最低賃金を見ると、最高額は東京都の1,163円、最低額は秋田県の951円となっています。

 令和6年度地域別最低賃金は、令和6年10月1日から同年11月1日にかけて順次引き上げられる予定です。

※ 詳細については、「令和6年度地域別最低賃金が10月1日から順次引き上げられます」をご参照ください。

7.郵便料金の値上げ

 2024(令和6)年10月1日から郵便料金が値上げされます。主な郵便料金の変更内容は次のとおりです。

出所:日本郵便ホームページ

従業員51人以上の会社で働くパート・アルバイトの社会保険加入義務(令和6年10月1日~)

 パートやアルバイトで働く方の社会保険加入義務の判定基準が、2024(令和6)年10月1日から変わります。
 判定基準には労働者側の要件と企業側の要件がありますが、今回変更されるのは企業側の要件です。
 以下では、両者の要件を踏まえて、2024(令和6)年10月1日以降の社会保険加入義務について確認します。

※ 関連記事「パート・アルバイトの税制上と社会保険制度上の年収の壁

1.労働者側の4要件

 パートやアルバイトで働く短時間労働者の方でも、一定の要件を満たす場合は社会保険(健康保険及び厚生年金保険)に加入しなければなりません。
 一定の要件とは具体的には次のとおりであり、これら4要件をすべて満たす場合は社会保険の加入義務が生じます。

(1) 週の所定労働時間が20時間以上であること

 20時間以上というのは契約上の所定労働時間であり、臨時の残業時間は含みません。
 ただし、契約上の所定労働時間が20時間に満たない場合でも、実労働時間が2か月連続で20時間となり、それ以降も続く見込みのときは3か月目から加入対象となります。

(2) 所定内賃金が月額8.8万円以上であること

 月額8.8万円以上というのは、基本給と手当の合計額です。
 ただし、残業代、賞与、臨時的な賃金(結婚手当等)、最低賃金に算入しないことが定められた賃金(精皆勤手当、通勤手当及び家族手当)は含みません。

(3) 2か月を超える雇用の見込みがあること

 当初の雇用期間が2か月以内であっても、当該期間を超えて雇用されることが見込まれる場合は、契約当初から加入対象となります。

(4) 学生でないこと

 学生とは、大学、高等学校、専修学校、各種学校(修業年限が1年以上の課程に限ります)等に在学する方をいいます。
 ただし、休学中、定時制、通信制の方は、学生であっても加入対象となります。

 上記の4要件をすべて満たすパート・アルバイトの方は社会保険の加入義務がありますが、この4要件は労働者側の要件です。
 これらのパート・アルバイトの方が働く場である企業側にも要件(企業規模要件)があり、その要件に該当すればその企業は「特定適用事業所」となります。

 つまり、特定適用事業所で働くパート・アルバイトの方で上記4要件を満たす人は、社会保険に加入する必要があります。

2.企業側の要件(特定適用事業所)

 特定適用事業所とは、1年のうち6月間以上、従業員数(厚生年金保険の被保険者の総数)が101人以上となることが見込まれる企業等のことです。
 この特定適用事業所の企業規模は段階的に拡大され、現在は101人以上となっていますが、2024(令和6)年10月1日からは51人以上となります。

 したがって、令和6年10月1日からは、従業員数(厚生年金保険の被保険者数)が51人以上の企業等で働くパート・アルバイトの方で、4要件をすべて満たす人は社会保険の加入義務があります。

出所:日本年金機構ホームページ

 なお、「従業員数51人以上」は厚生年金保険の被保険者数が対象になりますので、70歳以上で健康保険のみ加入している人は対象になりません。
 また、「51人以上」とは、その企業等における厚生年金保険の被保険者の総数が、12か月のうち6か月以上51人以上となることが見込まれることを指します

 ここで注意しなければならない点は、令和6年10月1日時点で51人以上を判定するのではなく、過去12か月間で判定をするということです。
 裏を返せば、令和6年10月1日時点で51人に満たなくても特定適用事業所になり得るということです。

※ 法人事業所の場合は、同一法人格に属する(法人番号が同一である)すべての適用事業所の被保険者数の総数、個人事業所の場合は、適用事業所単位の被保険者数をカウントします。

3.日本年金機構から通知書が届く

 日本年金機構(年金事務所)では、これまでに提出している「資格取得届」や「資格喪失届」などから、各事業所における厚生年金保険の被保険者数を把握しています。

 そこで、令和6年10月1日から新たに特定適用事業所となる事業所や特定適用事業所となる可能性のある事業所には、令和6年9月上旬以降、順次各種の通知書が送付される予定になっていますので、通知書が届いたら必ず確認するようにしてください

 通知書が届く9月に入ってから、10月以降社会保険に加入しなければならないパート・アルバイトの方に「来月から社会保険に加入する」ことを伝えることになると、該当するパート・アルバイトの方やその家族の生活、働き方の選択などに大きな影響を及ぼしかねず、また、考える時間も十分に与えることができません。

 厚生年金保険の被保険者数の確認は今からでもできますので、日本年金機構からの通知書を待つことなく、自社が特定適用事業所に該当するか又は該当しそうかを確認してみてはいかがでしょうか。

※ 令和5年10月から令和6年7月までの各月のうち、厚生年金保険の被保険者の総数が6か月以上51人以上となったことが確認できる場合は、同年9月上旬に「特定適用事業所該当事前のお知らせ」が届き、同年10月上旬に「特定適用事業所該当通知書」が届きます。
 また、令和5年10月から令和6年7月又は8月までの各月のうち、厚生年金保険の被保険者の総数が5か月51人以上となったことが確認できる場合は、同年9月上旬に「特定適用事業所に関する重要なお知らせ」が届きます。

令和6年度国民年金保険料と免除制度・納付猶予制度

 年金制度は、すべての国民に共通の基礎年金を支給する制度と基礎年金にさらに年金を上乗せする制度とがあり、全体として「2階建て」の年金制度となっています。
 「2階建て」年金制度の1階部分(基礎年金を支給する制度)を担うのが国民年金で、2階部分(基礎年金にさらに年金を上乗せする制度)を担うのが厚生年金などです。

 国民年金の保険料は定額で、第1号被保険者(20歳以上60歳未満の自営業者、農業者、学生、無職の方など)は自分で負担します。
 第2号被保険者(70歳未満の会社員や公務員など厚生年金の加入者)は、加入する制度からまとめて国民年金に拠出金が支払われますので、厚生年金の保険料以外に保険料を負担する必要はありません。
 第3号被保険者(厚生年金に加入している第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者)は、配偶者が加入する制度から拠出されるため、本人は国民年金の保険料を負担する必要はありません。
 
 以下では、第1号被保険者の国民年金保険料と免除制度等の概要について確認します。

1.令和6年度国民年金保険料

 2024(令和6)年4月から2025(令和7)年3月までの国民年金第1号被保険者の保険料は次のとおりです。

納付方法 1ヵ月分 6ヵ月分 1年分 2年分
毎月納付 16,980円 101,880円 203,760円 413,880円
現金・クレジット(カッコ内は割引額) 1ヵ月前納はありません 101,050円(830円) 200,140円(3,620円) 398,590円(15,290円)
口座振替(カッコ内は割引額) 16,920円(60円) 100,720円(1,160円) 199,490円(4,270円) 397,290円(16,590円)

2.保険料の免除制度・納付猶予制度

 第1号被保険者の方で所得が少ない場合や失業等により国民年金保険料の納付が困難なときは、本人の申請によって保険料の納付が免除・猶予される制度があります。
 ただし、学生の方は下記(1)(2)の申請ができず、国民年金に任意加入している方は(1)(2)(3)の申請ができません。

(1) 免除(全額免除・一部免除)制度
 本人、配偶者、世帯主それぞれの前年所得(1月から6月までに申請する場合は前々年所得)が一定額以下の場合や、失業等の事由がある場合に、保険料が全額免除または一部免除(4分の3、半額、4分の1)となります。
 免除申請は、一定の将来期間の他、過去2年(申請月の2年1ヵ月前の月分)までさかのぼってすることができます(すでに国民年金の保険料が納付済の月は対象外です)。
 なお、一部免除については、減額された保険料を納めないと未納期間となりますのでご注意ください。

※ 保険料免除の所得基準(年額)は次のとおりです(前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であることが必要です)。

免除割合 計算式
全額免除 (扶養親族等の数+1)×35万円+32万円
4分の3免除 88万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
半額免除 128万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
4分の1免除 168万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

(2) 納付猶予制度
 20歳以上50歳未満の方で、本人、配偶者それぞれの前年所得(1月から6月までに申請する場合は前々年所得)が一定額以下の場合や、失業等の事由がある場合に、保険料の納付が猶予されます。

※ 納付猶予の所得基準(年額)は次のとおりです(前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であることが必要です)。

制度 計算式
納付猶予制度 (扶養親族等の数+1)×35万円+32万円

(3) 学生納付特例制度
 日本国内に住むすべての方は20歳になった時から国民年金の被保険者となり保険料の納付が義務づけられていますが、学生の方には、申請により在学中の保険料の納付が猶予される「学生納付特例制度」が設けられています。
 学生納付特例を受けようとする年度の前年の所得が一定以下の学生の方が対象です。なお、家族の方の所得の多寡は問いません。

※ 学生納付特例の所得基準(年額)は次のとおりです(前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であることが必要です)。

制度 計算式
学生納付特例制度 128万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等

令和6年度雇用保険料率・労災保険料率・子ども子育て拠出金率について

 2024(令和6)年4月から厚生労働省関係の制度変更が実施されますので、給与計算ソフトを使用している場合等はその設定を見直す必要があります。
 以下では、2024(令和6)年度の雇用保険料率、労災保険料率、子ども・子育て拠出金率について確認します。

1.令和6年度の雇用保険料率

 2024(令和6)年度の雇用保険料率は据え置きとなり、2023(令和5)年度の料率から改定はありません。
 2024(令和6)年4月1日~2025(令和7)年3月31日の雇用保険料率は、次のとおりです。

事業の種類 一般事業 農林水産業・清酒製造業 建設業
被保険者負担率 6.0/1000 7.0/1000 7.0/1000
事業主負担率 9.5/1000 10.5/1000 11.5/1000
合計負担率 15.5/1000 17.5/1000 18.5/1000

 園芸サービス、牛馬の育成、酪農、養鶏、養豚、内水面養殖及び特定の船員を雇用する事業については、一般事業の率が適用されます。

2.令和6年度の労災保険料率

 「労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則の一部を改正する省令」が施行されたことに伴い、2024(令和6)年4月1日から労災保険料率が改定されます。
 したがって、2024(令和6)年度の労災保険の概算保険料は新しい料率で、2023(令和5)年度の改定保険料はこれまでの料率で申告しなければなりません(関連記事:「7月10日期限の労働保険・社会保険・納期特例の給与集計は発生ベース?支払ベース?」)。
 なお、改定後の保険料率は業種によって異なり、前年度と変わっていない業種もあります。
 2024(令和6)年度と2023(令和5)年度の労災保険料率は、次のとおりです(単位:1/1,000)。

事業の種類の分類 番号 事業の種類 令和6年度料率 令和5年度料率
林業 02・03 林業 52 60
漁業 11 海面漁業 18 18
12 定置網漁業又は海面魚類養殖業 37 38
鉱業 21 金属鉱業、非金属鉱業又は石炭鉱業 88 88
23 石灰石鉱業又はドロマイト鉱業 13 16
24 原油又は天然ガス鉱業 2.5 2.5
25 採石業 37 49
26 その他の鉱業 26 26
建設事業 31 水力発電施設、ずい道等新設事業 34 62
32 道路新設事業 11 11
33 舗装工事業 9 9
34 鉄道又は軌道新設事業 9 9
35 建築事業 9.5 9.5
38 既設建築物設備工事業 12 12
36 機械装置の組立て又は据付けの事業 6 6.5
37 その他の建設事業 15 15
製造業 41 食料品製造業 5.5 6
42 繊維工業又は繊維製品製造業 4 4
44 木材又は木製品製造業 13 14
45 パルプ又は紙製造業 7 6.5
46 印刷又は製本業 3.5 3.5
47 化学工業 4.5 4.5
48 ガラス又はセメント製造業 6 6
66 コンクリート製造業 13 13
62 陶磁器製品製造業 17 18
49 その他の窯業又は土石製品製造業 23 26
50 金属精錬業 6.5 6.5
51 非鉄金属精錬業 7 7
52 金属材料品製造業 5 5.5
53 鋳物業 16 16
54 金属製品製造業又は金属加工業 9 10
63 洋食器、刃物、手工具又は一般金属製造業 6.5 6.5
55 めつき業 6.5 7
56 機械器具製造業 5 5
57 電気機械器具製造業 3 2.5
58 輸送用機械器具製造業 4 4
59 船舶製造又は修理業 23 23
60 計量器、光学機械、時計等製造業 2.5 2.5
64 貴金属製品、装身具、皮革製品等製造業 3.5 3.5
61 その他の製造業 6 6.5
運輸業 71 交通運輸事業 4 4
72 貨物取扱事業 8.5 9
73 港湾貨物取扱事業 9 9
74 港湾荷役業 12 13
電気、ガス、水道又は熱供給の事業 81 電気、ガス、水道又は熱供給の事業 3 3
その他の事業 95 農業又は海面漁業以外の漁業 13 13
91 清掃、火葬又はと畜の事業 13 13
93 ビルメンテナンス業 6 5.5
96 倉庫業、警備業、消毒又は害虫駆除の事業又はゴルフ場の事業 6.5 6.5
97 通信業、放送業、新聞業又は出版業 2.5 2.5
98 卸売業・小売業、飲食店又は宿泊業 3 3
99 金融業、保険業又は不動産業 2.5 2.5
94 その他の各種事業 3 3
船舶所有者の事業 90 船舶所有者の事業 42 47

3.令和6年度の子ども・子育て拠出金率

 2024(令和6)年度の子ども・子育て拠出金率は据え置きとなり、2023(令和5)年度の拠出金率(3.600/1000)から改定はありません。

年収130万円以上となっても社会保険の扶養のまま働ける?

 厚生労働省は、人手不足への対応が急務となる中でパートやアルバイトで働く短時間労働者が「年収の壁」を意識せず働くことができる環境づくりを支援するため、当面の対応として年収の壁・支援強化パッケージ(「106万円の壁」対応、「130万円の壁」対応)に取り組むとしています。
 今回は、年収の壁・支援強化パッケージのうち「130万円の壁」への対応について確認します。

出所:厚生労働省ホームページ

1.「130万円の壁」とは?

 厚生年金保険及び健康保険においては、会社員の配偶者等で年収が130万円未満の方(厚生年金保険の被保険者数が常時100人以下の事業所で働く短時間労働者の場合)は、被扶養者(20歳以上60歳未満の配偶者は、併せて国民年金第3号被保険者となります)として保険料の負担が発生しません。

 このような被扶養者の方の収入が増加して年収が130万円以上となった場合、勤務先の厚生年金保険・健康保険に加入するか(被扶養者が会社員の場合)、あるいは国民年金・国民健康保険に加入するか(被扶養者が個人事業主の場合)、いずれかの形で被扶養者(第3号被保険者)ではなくなるため、社会保険料の負担が発生することとなります。
 保険料負担が生じるとその分手取り収入が減少するため、これを回避する目的で就業調整する方が意識している収入基準(年収換算で130万円)がいわゆる「年収の壁(130 万円の壁)」です(年収の壁については、本ブログ記事「パート・アルバイトの税制上と社会保険制度上の年収の壁」をご参照ください)。

※ 2024(令和6)年10 月からは、常時 50 人以下となります。

2.「一時的な収入変動」である旨を事業主が証明

 この年収の壁は、繁忙期などに労働力を確保したい事業主側からすれば悩みの種となっています。
 また、近年では人手不足に加えて最低賃金が全国的に上がってきていますので、今後は扶養内での勤務を希望するパート・アルバイトの方の働き控えがさらに加速する可能性もあります(最低賃金については、本ブログ記事「令和5年度地域別最低賃金が10月1日~中旬にかけて引き上げられます」をご参照ください)。

 そこで、パート・アルバイトで働く方が繁忙期に労働時間を延ばすなどにより収入が一時的に上がったとしても、連続2回(年1回の確認の場合は連続2年)までであれば、事業主がその旨を証明することで引き続き扶養に入り続けることが可能となる措置(事業主の証明による被扶養者認定の円滑化)が講じられました。
 今回の措置については、2023(令和5)年10月20日以降の被扶養者認定及び被扶養者の収入確認において適用されます。

3.留意事項

 今回の措置(事業主の証明による被扶養者認定の円滑化)は、被扶養者の収入確認に当たって、通常提出が求められる書類と併せて一時的な収入変動である旨の事業主の証明を提出することで、健康保険組合等の保険者による円滑な被扶養者認定を図るものです。
 したがって、事業主が一時的な収入増加であることを証明したとしても、健康保険組合等の保険者がそれを認めないときは扶養に入り続けることはできません。

 一時的な収入増加と認められる具体的な上限額については、当該上限が新たな「年収の壁」となりかねないこと、一時的な事情によるものかどうかは収入金額のみでは判断が困難であることから示されていませんが、各保険者において雇用契約書等も踏まえつつ、増収が一時的なものかどうかが確認されます。
 なお、①被扶養者が被保険者と同一世帯に属している場合に被扶養者の年間収入が被保険者の年間収入を上回る場合、②被扶養者が被保険者と同一世帯に属していない場合に被扶養者の年間収入が被保険者からの援助による収入額を上回る場合等で、当該被保険者がその世帯の生計維持の中心的役割を果たしていると認められない場合には、被扶養者の認定が削除されることとなります。

 また、一時的な収入増加の要因としては、主に時間外勤務(残業)手当や臨時的に支払われる繁忙手当等が想定されます。
 そのため、一時的な収入変動に該当する主なケースとしては、①当該事業所の他の従業員が休職・退職したことにより当該労働者の業務量が増加したケース、②当該事業所における業務の受注が好調だったことにより当該事業所全体の業務量が増加したケース、③突発的な大口案件により当該事業所全体の業務量が増加したケースなどが想定されます。
 一方で、基本給が上がった場合や恒常的な手当が新設された場合、労働契約における所定労働時間・日数が増加した場合など、今後も引き続き収入が増えることが確実な場合は一時的な収入増加とは認められません。

パート・アルバイトの税制上と社会保険制度上の年収の壁

 年末が近づいてくると、パートやアルバイトで働く人の中には、ある一定の年収を超えないように就業調整をする人が出てきます。
 例えば、年収103万円を超えると配偶者控除や扶養控除の対象から外れるため、労働時間を抑制して103万円というラインを超えないようにします。
 この103万円というラインのことを一般に「年収の壁」と呼びますが、年収の壁は103万円だけではありません。
 以下においては、パートやアルバイトで働く給与所得者を前提として、税制上と社会保険制度上の年収の壁について確認します。

1.100万円の壁(住民税)

 年収の壁としてまず直面するのは、住民税における100万円の壁です。給与収入が年間で100万円を超えると住民税がかかります(兵庫県宝塚市や西宮市の場合)。
 住民税は、所得金額に応じて課税される「所得割と、定額で課税される「均等割」から成りますが、住んでいる地域や家族構成によって住民税が非課税となる所得金額は異なります。
 例えば、宝塚市で均等割が非課税となる所得は、次の算式で算出します。

 35万円×(同一生計配偶者+扶養親族数+本人)+10万円+21万円(同一生計配偶者または扶養親族を有する場合のみ)

 単身の場合は、35万円×1+10万円=45万円が非課税となる所得であり、給与収入に置き換えると100万円(45万円+給与所得控除55万円)となります。
 詳しくは本ブログ記事「住民税非課税世帯とは?」をご参照ください。

2.103万円の壁(所得税)

 年収の壁として広く一般に認識されているのは、所得税における103万円の壁です。
 配偶者控除や扶養控除の対象となるには合計所得金額が48万円以下であることが必要ですが、年収が103万円であれば、給与収入103万円-給与所得控除55万円=48万円となるので、配偶者控除や扶養控除の対象となります。
 また、年収が103万円であれば、給与収入103万円-給与所得控除55万円-基礎控除48万円=0円となるので本人にも所得税はかかりません。

3.106万円の壁(社会保険)

 社会保険制度上の年収の壁として、106万円の壁があります。
 ①従業員が101人以上(2024(令和6)年10月からは51人以上)、②週の労働時間が20時間以上、③月収8.8万円以上(年収106万円以上)、④2か月を超える雇用の見込、⑤学生でない、といった条件を満たす場合は、パートやアルバイト従業員が自ら社会保険被保険者となり社会保険の扶養から外れます(関連記事「従業員51人以上の会社で働くパート・アルバイトの社会保険加入義務(令和6年10月1日~)」)。

4.130万円の壁(社会保険)

 所得税における103万円の壁と同様に広く一般に認識されているのが、社会保険における130万円の壁です。
 130万円の壁とは、社会保険被保険者である給与所得者(例えば夫)が扶養する者(例えば妻)については、夫が負担する社会保険料のみで妻の健康保険料及び国民年金保険料まで賄われるという年収の分岐点のことをいいます。
 従業員が101人以上(2024(令和6)年10月からは51人以上)の企業では106万円、それより規模の小さい企業では130万円が年収の壁となっています(関連記事「年収130万円以上となっても社会保険の扶養のまま働ける?」)。

5.150万円の壁(所得税)

 年収103万円を超えると配偶者控除の対象から外れますが(上記2)、年収150万円以下であれば、配偶者特別控除は満額の38万円が適用されます(ただし、給与所得者の合計所得金額が900万円以下の場合です)。
 年収150万円を超えると、段階的に配偶者特別控除が減っていきます。

6.180万円の壁(社会保険)

 意外と見落とされやすいのが、社会保険における180万円の壁です。
 60歳以上や障がい者の方は、年収130万円ではなく年収180万円までは社会保険の扶養に入ることができます(関連記事「扶養判定における遺族年金の取扱いは所得税と社会保険で異なる!」)。

7.201万円の壁(所得税)

 年収150万円を超えると段階的に配偶者特別控除が減っていきますが(上記5)、年収201万円を超えると配偶者特別控除はゼロとなります。
 201万円の壁とは、配偶者特別控除が適用されるか否かの年収の分岐点のことをいいます。