法人設立や本店移転があった事業年度の均等割の計算方法

1.1月に満たないときは1月とし、1月に満たない端数があるときは端数を切り捨て

 法人が地方団体に納めるべき税金として、法人住民税(都道府県民税と市町村民税)があります。
 法人住民税は、都道府県及び市町村に事務所、事業所(以下「事務所等※1」といいます)又は寮等※2を有する法人等に課税され、法人の規模に応じて決まる「均等割」と法人税(国税)の額に応じて決まる「法人税割」とがあります。
 法人税割は、黒字で国に法人税を納めている法人に課税されるのに対して、均等割は赤字の法人でも課税されます。
 均等割は、事業年度末日現在の資本金等の金額等と従業者数により、都道府県ごと・市町村ごとに年税額が決められており、事務所等又は寮等を有していた月数に応じて計算します。通常は12か月で計算しますが、事業年度中に法人設立や本店移転があった場合等は、暦に従って月数を計算し、これが1月に満たないときは1月とし、1月に満たない端数があるときは端数を切り捨てます。
 「1月に満たないときは1月とし」とは、例えばその事業年度における事務所等又は寮等を有していた月数が25日間の場合は、これを1か月とカウントすることをいいます。
 「1月に満たない端数があるときは端数を切り捨てます」とは、例えばその事業年度における事務所等又は寮等を有していた月数が11か月と25日の場合は、11か月とカウントすることをいいます。
 以下において、事例ごとに均等割の計算方法を確認します。

※1 自己が所有するものか否かにかかわらず、事業の必要から設けられた人的及び物的設備であって、そこで継続して事業が行われる場所をいいます。
※2 宿泊所・クラブ・保養所・集会所その他これらに類するもので、法人が従業者の宿泊・慰安・娯楽等の便宜を図るために常時設けている施設をいいます。したがって、寮等とよばれるものであっても、その実質が独身寮・社員住宅などのように特定の従業者が居住するための施設は含まれません。

2.法人設立事業年度の均等割

 例えば、兵庫県神戸市でx1年4月5日に設立した3月決算法人の設立事業年度(x2年3月期)の均等割は、次のように計算します(均等割の年額を、法人県民税22,000円、法人市民税50,000円とします)。

(1) 法人県民税の均等割

 22,000円×11か月÷12か月=20,166円→20,100円
※ 月数は、暦に従って計算するとx1年4月からx2年3月までの11か月と26日ですが、4月の26日(4/5~4/30)は切捨てて11か月となります。

(2) 法人市民税の均等割

 50,000円×11か月÷12か月=45,833円→45,800円
※ 月数は、暦に従って計算するとx1年4月からx2年3月までの11か月と26日ですが、4月の26日(4/5~4/30)は切捨てて11か月となります。

3.本店移転があった事業年度の均等割

 例えば、大阪府東大阪市の3月決算法人が、x1年6月25日に本店を大阪府枚方市に移転した場合のx2年3月期の均等割は、次のように計算します(均等割の年額を、法人府民税20,000円、法人市民税は東大阪市・枚方市ともに50,000円とします)。

(1) 法人府民税の均等割

 20,000円×12か月÷12か月=20,000円→20,000円
※ 大阪府内に事務所等を有していた月数は、x1年4月からx2年3月までの12か月です。

(2) 法人市民税の均等割

① 東大阪市の均等割
 50,000円×2か月÷12か月=8,333円→8,300円
※ 月数は、暦に従って計算するとx1年4月からx1年6月までの2か月と25日ですが、6月の25日(6/1~6/25)は切捨てて2か月となります。

②枚方市の均等割
 50,000円×9か月÷12か月=37,500円→37,500円
※ 月数は、暦に従って計算するとx1年6月からx2年3月までの9か月と5日ですが、6月の5日(6/26~6/30)は切捨てて9か月となります。

 法人府民税計算の月数は12か月でしたが、法人市民税計算の月数は2か月+9か月=11か月となります。

4.法人設立と本店移転が同一事業年度の場合の均等割

 例えば、大阪府東大阪市でx1年4月5日に設立した3月決算法人が、x1年6月25日に本店を大阪府枚方市に移転した場合のx2年3月期の均等割は、次のように計算します(均等割の年額を、法人府民税20,000円、法人市民税は東大阪市・枚方市ともに50,000円とします)。

(1) 法人府民税の均等割

 20,000円×11か月÷12か月=18,333円→18,300円
※ 月数は、暦に従って計算するとx1年4月からx2年3月までの11か月と26日ですが、4月の26日(4/5~4/30)は切捨てて11か月となります。

(2) 法人市民税の均等割

① 東大阪市の均等割
 50,000円×1か月÷12か月=4,166円→4,100円
※ 月数は、暦に従って計算するとx1年4月は26日(4/5~4/30)、5月は31日、6月は25日(6/1~6/25)になりますが、4月の26日と6月の25日は1月未満の端数ですので切捨てて1か月となります。

②枚方市の均等割
 50,000円×9か月÷12か月=37,500円→37,500円
※ 月数は、暦に従って計算するとx1年6月からx2年3月までの9か月と5日ですが、6月の5日(6/26~6/30)は切捨てて9か月となります。

 法人府民税計算の月数は11か月でしたが、法人市民税計算の月数は1か月+9か月=10か月となります。

所得税と個人住民税の所得控除額の違い

1.所得税はかからないのに住民税はかかる?

 個人住民税(市民税・県民税)は、前年の所得を基礎として課税されます。例えば、2022(令和4)年度の個人住民税は、2021(令和3)年分の所得を基礎として計算されます。
 2021(令和3)年分の年末調整や確定申告をした結果、所得税を納める必要のない人でも、2022(令和4)年度の個人住民税は納めなければならない場合があります。これは、所得税と住民税の計算方法の違いに起因するものです。
 今回は、所得税と住民税の計算方法のうち、所得控除額の違いについて確認します。

※ 住民税が非課税となる場合については、本ブログ記事「住民税非課税世帯とは?」をご参照ください。

2.所得控除額の相違点

 所得税と住民税の所得控除額の相違点は、次のとおりです。

種類 所得税 住民税

雑損控除

次のうち、いずれか多い方の金額
① (損失額-保険金等による補てん額)-総所得金額等の10%
② 災害関連支出の金額-5万円
同左
医療費控除 (1) 従来の医療費控除
 最高 2,000,000円
(2) セルフメディケーション税制
 最高 88,000円
同左
社会保険料控除 支払った保険料の全額 同左
小規模企業共済等掛金控除 支払った第1種共済掛金と心身障害者扶養共済掛金等の全額 同左
生命保険料控除 (1) 一般の生命保険料
 新契約 最高40,000円
 旧契約 最高50,000円
(2) 介護医療保険料
 最高 40,000円
(3) 個人年金保険料
 新契約 最高40,000円
 旧契約 最高50,000円
(4) (1)~(3)の合計額
 最高 120,000円
(1) 一般の生命保険料
 新契約 最高28,000円
 旧契約 最高35,000円
(2) 介護医療保険料
 最高 28,000円
(3) 個人年金保険料
 新契約 最高28,000円
 旧契約 最高35,000円
(4) (1)~(3)の合計額
 最高 70,000円
地震保険料控除 (1) 地震保険料
 最高 50,000円
(2) 旧長期損害保険料
 最高 15,000円
(3) (1)と(2)の合計額
 最高 50,000円
(1) 地震保険料
 最高 25,000円
(2) 旧長期損害保険料
 最高 10,000円
(3) (1)と(2)の合計額
 最高 25,000円
寄附金控除 特定寄附金の額-2,000円 税額控除
障害者控除 (1) 普通障害者
 270,000円
(2) 特別障害者
 400,000円
(3) 同居特別障害者
 750,000円
(1) 普通障害者
 260,000円
(2) 特別障害者
 300,000円
(3) 同居特別障害者
 530,000円
寡婦控除  270,000円  260,000円
ひとり親控除  350,000円  300,000円
勤労学生控除  270,000円  260,000円
配偶者控除 (1) 一般の控除対象配偶者
 最高 380,000円
(2) 老人控除対象配偶者
 最高 480,000円
(1) 一般の控除対象配偶者
 最高 330,000円
(2) 老人控除対象配偶者
 最高 380,000円
配偶者特別控除  最高 380,000円  最高 330,000円
扶養控除 (1) 一般扶養親族
 380,000円
(2) 特定扶養親族
 630,000円
(3) 老人扶養親族
 480,000円
(4) 同居老親等
 580,000円
(1) 一般扶養親族
 330,000円
(2) 特定扶養親族
 450,000円
(3) 老人扶養親族
 380,000円
(4) 同居老親等
 450,000円
基礎控除  最高 480,000円  最高 430,000円

住民税非課税世帯とは?

 住民税非課税世帯には、低所得者を救済する目的で多くの恩恵(例えば、国民健康保険料・介護保険料・高額療養費が軽減される、新型コロナウイルス感染症の影響の長期化による臨時特別給付金の支給など)が用意されています。
 今回は、これらの恩恵を受けることができる住民税非課税世帯について確認します。

1.個人住民税の概要

 個人住民税とは、都道府県や市区町村の住民がその地方団体に納付する税金で、道府県民税(都民税を含みます)と市町村民税(特別区民税を含みます)を総称したものです。
 個人住民税は、前年の所得金額に応じて課税される「所得割」※1、定額で課税される「均等割」※2から成ります※3
 その年の1月1日現在において、市区町村内に住所を有する者については均等割と所得割が課税され、市区町村内に事務所、事業所又は家屋敷を有する者でその市町村内に住所を有しない者には均等割が課税されます※4

※1 標準税率は、道府県民税4%(2%)、市町村民税6%(8%)です。( )内は指定都市に住所を有する者の2018(平成30)年度分以後の税率です。

※2 市町村民税・道府県民税均等割(標準税率)は次のとおりです。

  標準税率 復興特別税 合計
市町村民税 3,000円 500円 3,500円
道府県民税 1,000円 500円 1,500円
合計 4,000円 1,000円 5,000円

注)2014(平成26)年度から2023(令和5)年度までの10年間は、東日本大震災被災地の復興財源に充てるため、均等割額に500円ずつが加算されます。
 また、例えば大阪府では森林環境税を確保するため、大阪府税条例の規定により2016(平成28)年度から2023(令和5)年度までの8年間は、個人府民税の均等割額に300円が加算されます(大阪府民税の均等割は1,800円になります)。

※3 他に、預貯金の利子等に課税される「利子割」、一定の上場株式等の配当等に課税される「配当割」、源泉徴収特定口座内の株式等の譲渡益に課税される「株式等譲渡所得割」がありますが、本記事では省略します。

※4 市区町村の属する都道府県においても道府県民税が課税されますが、個人住民税は市町村が市町村民税と道府県民税を併せて課税します。

2.個人住民税が非課税となる者

 個人住民税が課税されない者は、次のとおりです。

※ 2023(令和5)年分の確定申告から、上場株式等の配当所得・譲渡所得に係る課税方式を所得税と一致させることになりました(所得税と住民税で異なる課税方式を選択することはできません)。
 これにより扶養控除や配偶者控除等の適用、非課税判定、国民健康保険税の保険料算定など、各種行政サービスに影響する場合がありますのでご注意下さい。

(1) 均等割・所得割ともに非課税となるケース

① 生活保護法の規定によって生活扶助を受けている者(教育扶助や医療扶助を受けているだけではこれに該当しません)
② 障害者、未成年者、寡婦又はひとり親で、前年の合計所得金額の合計が135万円以下の者(前年の所得が給与所得のみの場合は収入金額が2,044,000円未満の者)
③ 前年の合計所得金額が各地方自治体の条例で定める金額以下の者(例えば大阪市や神戸市の場合は、次の算式で求めた額以下の者)
  35万円×(本人+同一生計配偶者+扶養親族数)+10万円+21万円
  ただし、21万円は同一生計配偶者又は扶養親族がいる場合のみ加算します。

(2) 均等割が非課税となるケース

 均等割のみを課すべき者のうち、前年の合計所得金額が各地方自治体の条例で定める金額以下の者(例えば大阪市や神戸市の場合は、次の算式で求めた額以下の者)
  35万円×(本人+同一生計配偶者+扶養親族数)+10万円+21万円
  ただし、21万円は同一生計配偶者又は扶養親族がいる場合のみ加算します。

(3) 所得割が非課税となるケース

 前年の総所得金額等が次の算式で求めた額以下の者
 35万円×(本人+同一生計配偶者+扶養親族数)+10万円+32万円
 ただし、32万円は同一生計配偶者又は扶養親族がいる場合のみ加算します。

3.個人住民税の非課税世帯とは?

 均等割と所得割の両方が非課税の場合は、「住民税非課税」となります。そして、世帯全員が住民税非課税であれば、「住民税非課税世帯」ということです。

償却資産申告書の修正方法(修正申告)

1.過誤納金は5年度分なら還付可能

 償却資産の所有者は、毎年1月1日現在に所有する償却資産の内容を、その年の1月31日までにその償却資産所在の市町村に対して申告をしなければなりません(償却資産の課税標準額が150万円(免税点)未満の場合は課税されませんが、申告は必要です)。
 この償却資産の申告が間違っていた場合、例えば既に廃棄済みの資産を誤って申告していた場合などは、修正申告によって過誤納金(本来は納付する必要のない税金)の還付を受けることができます。
 過誤納金は、第1期の法定納期限(市町村によって異なりますが、ここでは4月30日とします)から5年以内であれば還付を受けることができます。例えば、2021(令和3)年12月に、過去に廃棄済みの資産を申告していたことが発覚した場合は、2017(平成29)年度~2021(令和3)年度分の固定資産税(償却資産税)について過誤納金の還付を受けることができます。

2.修正申告の方法

 修正申告(償却資産申告書の修正)の方法については、特段法令等で規定されていません。そのため、市町村によって対応は異なりますが、概ね以下の2つの方法に分類されると思われます(実際に修正申告をする際は、必ず当該市町村に確認をしてください)。
 以下では、機械装置(取得価額80万円)を2020(令和2)年に廃棄していたにもかかわらず、2021(令和3)年度分の償却資産申告書から除外せずに申告していたケースを想定して、修正申告の方法をみていきます。

(1) 誤った申告書を差し換える方法(差換修正)

 まず、前提として、2021(令和3)年度の申告において、次のような償却資産申告書を提出していたとします。

 本来であれば、2020(令和2)年に廃棄した機械装置80万円を「前年中に減少したもの(ロ)」の欄に次のように記載して、2021(令和3)年度償却資産申告書を作成すべきでした(同申告書の上欄余白部分に「修正」又は「修正申告」と記載します)。

 「差換修正」の方法は、元の誤った申告書を、このように本来あるべき申告書に書き換える方法です。これにより、誤って提出した申告書を正しい申告書に差し換えたことになります。

(2) 誤った部分を追加する方法(追加修正)

 「追加修正」の方法は、2021(令和3)年度償却資産申告書を、次のように作成する方法です (同申告書の上欄余白部分に「修正」又は「修正申告」と記載します) 。

 上記(1)の「差換修正」の方法と見比べると、「前年前に取得したもの(イ)」の欄の金額が異なっています。
 「差換修正」の方法 では、2021(令和3)年度の申告前(言い換えると、2020(令和2)年度の申告後)の数字が記載されているのに対し、「追加修正」の方法では、2021(令和3)年度の申告後(誤って提出した2021(令和3)年度償却資産申告書の「計((イ)-(ロ)+(ハ))(ニ)」の欄)の数字が記載されています。これにより、誤って提出した申告書を追加修正したことになります。

3.還付には修正申告の根拠資料の提示が必要

 修正申告は上記のように行いますが、修正申告書の提出のみをもって過誤納金が還付されるわけではありません。修正申告の根拠資料、上記の例であれば「廃棄したことを証明する書類(例えば、廃棄業者に引き渡したことが確認できる書類や社内の稟議書など)」の提示も必要です。

被災地に義援金を送金した場合等の税務上の取扱い

 個人又は法人が、災害により被害を受けられた方を支援するために、被災地の地方公共団体に設置される災害対策本部等に義援金や支援金を支払った場合等の税務上の取扱いについて確認します。
 なお、義援金は「お悔やみや応援の気持ちを込めて被災者に直接届けるお金」のことをいい、支援金は「自分が応援したい団体に寄付し、被災地の支援活動に役立ててもらうお金」のことをいいますが、本稿では両者を合わせて「義援金」といいます。

1.被災地の地方公共団体に設置された災害対策本部に対して義援金を支払った場合

 個人又は法人が、被災地の地方公共団体に設置された災害対策本部に対して義援金を支払った場合の税務上の取扱いは、次のとおりです。

個人  個人の方が、被災地の地方公共団体に設置された災害対策本部に対して支払った義援金は「特定寄附金」に該当し、寄附金控除の対象となります。
 なお、当該義援金は、地方公共団体に対する寄附金として個人住民税の寄附金税額控除の対象となり、原則としてふるさと納税に該当します(ワンストップ特例制度の適用ができますが、通常は返礼品はありません)。
法人  法人が、被災地の地方公共団体に設置された災害対策本部に対して支払った義援金は「国等に対する寄附金」に該当し、その全額が損金の額に算入されます。

2.日本赤十字社又は社会福祉法人中央共同募金会等に対して義援金を支払った場合

 個人又は法人が、日本赤十字社や社会福祉法人中央共同募金会等が被災者への支援を目的として設けた専用口座に対して義援金を支払った場合の税務上の取扱いは、次のとおりです。

個人  個人が、日本赤十字社や社会福祉法人中央共同募金会等に対して支払った義援金については、その義援金が最終的に地方公共団体(義援金配分委員会等)に対して拠出されるものであるときは、「特定寄附金」に該当し、寄附金控除の対象となります。
 なお、当該義援金は、地方公共団体に対する寄附金として個人住民税の寄附金税額控除の対象となり、原則としてふるさと納税に該当します(ワンストップ特例制度の適用ができますが、通常は返礼品はありません)。
法人  法人が、日本赤十字社や社会福祉法人中央共同募金会等に対して支払った義援金については、その義援金が最終的に義援金配分委員会等に対して拠出されることが募金趣意書等において明らかにされているものであるときは、「国等に対する寄附金」に該当し、その全額が損金の額に算入されます。

※ 日本赤十字社や社会福祉法人中央共同募金会等に対して支払った義援金であっても、例えば、日本赤十字社や社会福祉法人中央共同募金会等の事業資金として使用されるなど、最終的に地方公共団体に拠出されるものでないものについては、上記と異なる取扱いになる場合がありますので、義援金の支払先に確認する必要があります。

3.被災地の救援活動等を行っている認定NPO法人等に対して義援金を支払った場合

 被災地の救援活動や被災者への救護活動を行っているNPO法人が「認定NPO法人等」であり、支払った義援金がその認定NPO法人等の行う特定非営利活動に係る事業に関連するものであるときには、その義援金は「認定NPO法人等に対する寄附金」に該当します。
 個人又は法人が、認定NPO法人に対して義援金を支払った場合の税務上の取扱いは、次のとおりです。

個人  個人の方が、「認定NPO法人等に対する寄附金」として支払った義援金は、寄附金控除(所得控除)又は寄附金特別控除(税額控除)の対象となります(選択適用)。ふるさと納税には該当しません。
法人  法人が、「認定NPO法人等に対する寄附金」として支払った義援金は、「特定公益増進法人に対する寄附金」に含めて損金算入限度額を計算し(特別損金算入限度額)、その範囲内で損金の額に算入されます。

4.被災地の救援活動等を行っている認定NPO法人等以外の法人等に対して義援金を支払った場合

 個人又は法人が、認定NPO法人等以外の法人等に対して義援金を支払った場合(※)には、次に掲げるような支払先の区分に応じて、税務上の取扱いが異なります。
 支払先の区分や支払った義援金の税務上の取扱いについては、直接支払先の法人等に確認する必要があります。

※ 「国等に対する寄附金」及び「指定寄附金」に該当するものを支払った場合を除きます。

支払先

公益社団法人・公益財団法人の場合(その法人の主たる目的である業務に関連するものに限ります)

NPO法人(認定NPO法人等でないもの)、職場の有志で組織した団体などの人格のない社団等の場合
個人  寄附金控除(所得控除)の対象となります。
 支払先が一定の要件を満たす公益社団法人・公益財団法人である場合には、寄附金特別控除(税額控除)との選択適用が可能です。
 寄附金控除等の対象となりません。
法人  特定公益増進法人に対する寄附金として、特別損金算入限度額の範囲内で損金の額に算入できます。  一般の寄附金として、損金算入限度額の範囲内で損金の額に算入できます。

5.募金団体を通じて地方公共団体に対して義援金を支払った場合

 関係する個人、法人から義援金を集め、これを取りまとめた上で、一括して地方公共団体に対して支払う場合(※)、義援金を取りまとめる団体(以下「募金団体」といいます)に寄附した個人、法人の税務上の取扱いは、次のとおりです。

※ 税務署において、募金団体に対して支払う義援金が、最終的に国、地方公共団体に拠出されるものであるかどうかの確認が行われます。

個人  個人が、募金団体に対して支払った義援金については、その義援金が最終的に地方公共団体(義援金配分委員会等)に対して拠出されることが募金団体が発行する預り証において明らかにされているものであるときは、「特定寄附金」に該当し、寄附金控除の対象となります。
 なお、当該義援金は、地方公共団体に対する寄附金として個人住民税の寄附金税額控除の対象となり、原則としてふるさと納税に該当します(ワンストップ特例制度の適用ができますが、通常は返礼品はありません)。
法人  法人が、募金団体に対して支払った義援金については、その義援金が最終的に義援金配分委員会等に対して拠出されることが募金団体が発行する預り証において明らかにされているものであるときは、「国等に対する寄附金」に該当し、その全額が損金の額に算入されます。

6.法人が被災した取引先に対して義援金を支払った場合

 法人が、被災した取引先に対し、被災前の取引関係の維持・回復を目的として、災害を受けた取引先が通常の営業活動を再開するための復旧過程にある期間において支出する災害見舞金は、交際費等に該当せず損金の額に算入されます。

7.法人が自社製品を被災者に提供した場合

 法人が、不特定又は多数の被災者を救援するために緊急に行う自社製品等の提供に要する費用は、寄附金又は交際費等には該当せず、広告宣伝費に準ずるものとして損金の額に算入されます。

役員退職金の分割支給と源泉徴収

 役員が退職するにあたり、その退職金を一括で支払うと、会社の資金繰りに支障をきたすことがあります。このような場合は、退職金を一括支給せずに分割支給にすることができます。
 今回は、役員退職金を分割支給する場合の損金算入時期と源泉徴収税額及び分割支給の留意点について確認します。

※ 一括支給する場合については、本ブログ記事「役員退職金の損金算入時期と経理処理」をご参照ください。

1.分割支給する場合の損金算入時期

 役員退職金の損金算入時期は、原則として株主総会の決議等によりその額が具体的に確定した日の属する事業年度とされ、損金経理は要件とされていません。
 ただし、法人が役員退職金を実際に支給した日の属する事業年度において、その支払った金額を損金経理した場合には、例外としてこれも認められています。
 つまり、役員退職金の損金算入時期は、その額の確定時と支給時のいずれかによることができるということです。
 このことは、株主総会等において役員退職金の額が確定したものの、資金繰りの理由により確定額を分割支給する場合も同じです。
 したがって、役員退職金を分割支給する場合は、その額が確定した事業年度において未払金として計上するか、実際に支給した事業年度において退職金として計上すれば、損金算入が認められます。

2.分割支給した場合の源泉徴収税額の計算

 役員退職金を分割支給した場合の源泉徴収は、その退職金の総額に対する税額を計算し、その税額を各回の支給額で按分します※1
 例えば、3月決算法人の役員(勤続38年)がX1年3月に退職し、X1年5月の株主総会において5,000万円の退職金を支給することが決議されましたが、資金繰りの都合からX1年7月に3,000万円、X1年12月に2,000万円と2回に分割して支給することとした場合、源泉徴収税額は以下のように計算します。
 なお、この役員から、「退職所得の受給に関する申告書」の提出があったものとします(関連記事:「退職所得の受給に関する申告書を提出した人が還付を受けるためにする確定申告」)。

(1) 勤続38年に対する退職所得控除額:800万円+70万円×(38年-20年)=2,060万円
(2) 退職所得金額の計算:(5,000万円-2,060万円)×1/2=1,470万円
(3) 源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額※2:(1,470万円×33%-153.6万円)×102.1%=3,384,615円
(4) 7月に徴収する所得税及び復興特別所得税の額:3,384,615円×3,000万円/5,000万円=2,030,769円
(5) 12月に徴収する所得税の額:3,384,615円×2,000万円/5,000万円=1,353,846円

※1 退職所得に係る個人住民税についても、退職金支給の際に特別徴収することとされています。計算方法は、退職金の総額に対する税額を計算し、その税額を各回の支給額で按分します。
※2 参考:国税庁ホームページ「退職所得の源泉徴収税額の速算表」

3.分割支給の留意点

 役員退職金を分割支給するにあたって、留意すべき点は次のとおりです。

(1) 退職金を分割支給する場合、支給を受ける側の退職所得の収入金額とすべき時期については、原則としてその支給の起因となった退職の日とされます。
 したがって、分割で支給を受ける場合でも、その決定された金額の全額がその年の収入金額になります。
(2) 分割支給とすることに特段の理由が無く、利益調整目的などの意図があり税額に影響を及ぼす場合は、損金算入が認められない可能性があります(「赤字決算を避けるため」は合理的な理由にならず、「資金繰りの都合」は合理的な理由になります)。
 したがって、株主総会又は取締役会において分割支給の合理的な理由を説明し、支給時期と金額を明確にしたうえで、議事録を作成することが重要です。
(3) 分割期間が長期にわたる場合は、退職一時金ではなく退職年金と認定される可能性があります。
 退職金の一時払いというよりも有期年金の支給と考えた方が実態に即しているような場合には、決議日等の属する確定事業年度で全額損金処理することはできず、支給の都度、損金算入しなければなりません。
 つまり、年金総額を未払計上したとしても、その未払金相当額を確定事業年度の損金に算入することはできません。
 また、退職一時金ではなく退職年金と認定された場合、支給を受ける側にとっては退職所得ではなく雑所得として扱われることになります。

副業の給与所得が会社にバレない方法とは?

 かつては副業を禁止する会社が多かったのですが、最近は副業を容認(あるいは推奨)する会社が増えてきています。公務員でも、届出さえしておけば副業が許される自治体もあるようです。
 今は世の中が副業に対して寛容になったとはいえ、一方で副業を禁止する会社もあり、また、副業が解禁されている会社に勤めていても、副業していることを会社に知られたくない場合もあるかと思います。
 今回は、副業が会社にバレない一般的な方法と、副業の「給与所得」が会社にバレないイレギュラーな方法について述べます。

1.副業がバレない一般的な方法

 会社員が会社勤めの傍ら行う副業には、様々なものがあります。例えば、アフィリエイト、FX取引、仮想通貨取引、原稿執筆、講演、UBER EATS ドライバーなどがあります。これらの活動によって得た所得は、雑所得に区分されます。
 また、自分が所有するマンションの一室を賃貸して家賃収入を得ることもありますが、これは不動産所得に区分されます。
 さらに、副業ではありませんが、例えば自分の居住する住宅を売って売却代金を受け取ると、これは譲渡所得になります。
 これらの活動によって得た所得は、基本的には確定申告をする必要があります。その結果、これらの所得は本業の給与所得と合算されて住民税が課税され、会社で給与から天引き(特別徴収)されますので、会社の経理担当者に給与以外に所得があると気づかれる可能性があります。
 このような副業が会社にバレないようにするために、一般的によく行われるのは次の方法です。

 所得税の確定申告書第二表には、「住民税・事業税に関する事項」欄に住民税の徴収方法を選択する箇所があります(上図参照)。この箇所の「自分で納付」に〇をつけて申告すると、副業による所得に関する住民税の通知・納付書が自宅に届きますので、その分を自分で納付すれば、副業を会社に知られずに済みます(自分で納付する方法のことを「普通徴収」といいます)。
 一般的には以上の方法で、会社に届く住民税の特別徴収税額の決定通知書には給与所得だけが記載され、「その他の所得計」欄や「主たる給与以外の合算所得区分」欄に副業分が記載されることはありません(兵庫県宝塚市の場合)。しかし、市町村によっては対応が異なる可能性もありますので、確定申告の前に確認しておく方がいいと思います。

 なお、会社員の副業による雑所得等が20万円以下の場合は、確定申告をしなくてもよいことになっています(詳しくは、本ブログ記事「給与所得者と公的年金等受給者の確定申告不要制度の注意点」をご参照ください)。

2.副業が給与所得の場合はどうする?

 一般的には上記1の方法により副業を会社に知られないようにするのですが、副業で得た収入が給与所得に該当する場合はどうでしょうか?
 例えば、コンビニ、スーパー、レストラン、居酒屋、塾、専門学校などでアルバイトをしている場合、これらで得た収入は給与所得になります。副業が給与所得の場合、上記1の方法は使えません。
 上記1の図をよく見ると、「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」となっているのがわかります。
 つまり、給与所得以外の所得(雑所得や不動産所得など)については、確定申告書第二表で住民税の徴収方法を選択できるのですが、給与所得の場合は住民税の徴収方法は選択できず、原則として特別徴収になります。
 また、本業と副業の2か所から給与所得を得ていますので、たとえ副業の給与所得が20万円以下だったとしても、確定申告不要制度は使えません。
 そうすると、副業で得た所得を確定申告して、さらに住民税を特別徴収されると、会社に副業がバレる可能性があります。
 このような場合は、どうすることもできないのでしょうか?

 残された唯一の方法は、自分が住んでいる市区町村に住民税の普通徴収の申し出をすることです。
 本来は2か所からの給与所得は合算され、その合計に対して住民税が課税され、一律特別徴収されますので、副業分の住民税だけを普通徴収にするというのはイレギュラーな手続きになります。
 しかし、副業を会社に知られたくない旨を伝えると、この普通徴収の申し出に対応してくれる市区町村もあります。
 イレギュラーな手続きになりますので、原則として納税者本人が市区町村の窓口で手続きをする必要があります(同居家族であれば委任状がなくても手続きできる場合があります)。申し出といっても何か特別な様式があるわけではなく、2か所分の源泉徴収票と印鑑を持参して、本業は特別徴収、副業は普通徴収を希望することを担当者に相談するだけです。相談できる期限は所得税の確定申告期限と同じであり、所得税の確定申告が済んでいなくても相談できます。
 市区町村によって対応は異なると思いますが、一度相談してみる価値はあると思います。

事業税の計算上の留意点(所得税との相違点)

 前回、所得税の確定申告の際に見落とされがちな第二表の「事業税に関する事項」欄の記載方法について確認しました。
 今回はその続編として、個人事業税の計算方法と留意点についてみていきます。

1.税額の計算式

 個人事業税の計算は、所得税の事業所得・不動産所得をもとに行います。計算式を示すと、次のようになります。なお、所得税における雑損控除、医療費控除、配偶者控除などの「所得控除」については、個人事業税では適用がありませんのでご注意ください。

(1) 所得税の事業所得・不動産所得の金額
(2) 所得税の事業専従者控除(給与)額
(3) 個人事業税の事業専従者控除(給与)額
(4) 青色申告特別控除額
(5) 非課税所得金額
(6) 損失の繰越控除額
(7) 被災事業用資産の損失の繰越控除額
(8) 事業用資産の譲渡損失の控除額
(9) 事業用資産の譲渡損失の繰越控除額
(10) 事業主控除額(年290万円)
(11) 課税標準額
× (12) 税率
(13) 年税額

 以下では、この計算式の各項目の留意点についてみていきます。

2.計算上の留意点(所得税との相違点)

(1) 所得税の事業所得・不動産所得の金額

 所得税の確定申告の際に次の算式で計算した事業所得・不動産所得の金額です。

 総収入金額-必要経費-青色事業専従者給与又は事業専従者控除-青色申告特別控除=所得金額

(2) 所得税の事業専従者控除(給与)額

 所得税の確定申告で「事業税が課税される事業」に係る所得金額の計算上認められた事業専従者控除(給与)額です。
※ 「事業税が課税される事業」については、前回記事「確定申告書B第二表『事業税に関する事項』欄の記載」(以下「前回記事」といいます)をご参照ください。

(3) 個人事業税の事業専従者控除(給与)額

 原則として、上記(2)の「所得税の事業専従者控除(給与)額」と同額となりますが、所得税で「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出していない場合で、事業主と生計を一にする配偶者や15歳以上のその他の親族でその事業に専ら従事している人に対して、実際に給与の支払いがされている場合は、事業税では事業専従者にできますのでその給与額を控除します。

(4) 青色申告特別控除額

 所得税の所得の計算上認められた青色申告特別控除額は、事業税の所得の計算上は適用がありませんので加算します。

(5) 非課税所得金額

 非課税所得については、前回記事をご参照ください。

(6) 損失の繰越控除額

 所得税と同様の要件のもとに認められます。ただし、事業税が課税される所得に対する損失額に限られます。

(7) 被災事業用資産の損失の繰越控除額

 所得税と同じ対象の資産について同じ要件のもとに、事業税の所得計算上生じた損失額で当該年度に控除される損失額です。

(8) 事業用資産の譲渡損失の控除額

 譲渡損失が生じた年分の所得から控除します。青色申告者で譲渡損失が生じた年分の所得から控除しきれなかった場合は、一定の要件のもと、翌年以降3年間繰越控除が認められます。

(9) 事業用資産の譲渡損失の繰越控除額

 上記(8)と同じです。

(10) 事業主控除額(年290万円)

 事業を開廃業した場合は、事業を行っていた月数(1月に満たない端数は1月とします)に応じて次の額を控除します(単位:万円)。

事業期間 1月 2月 3月 4月 5月 6月
事業主控除額 24.2 48.4 72.5 96.7 120.9 145
事業期間 7月 8月 9月 10月 11月 12月
事業主控除額 169.2 193.4 217.5 241.7 265.9 290

(11) 課税標準額

 上記(1)~(10)までの計算を終えた段階(課税標準額)で1,000円未満の端数があるときは、その端数を切り捨てます。

(12) 税率

 税率については、前回記事をご参照ください。

(13) 年税額

 年税額に100円未満の端数があるときは、その端数を切り捨てます。なお、年税額が100円未満の場合は0円となります。
 年税額が1万円を超える場合は、8月及び11月の2期に分割して納付します。また、年税額が1万円以下の場合は、全額を8月に納付します。

3.計算例

 昨年7月に夫婦で飲食店を開業し、昨年の年間収入は1,000万円で必要経費は600万円でした。また、「青色申告承認申請書」「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出しており、妻に75万円の給与を支給し、青色申告特別控除額は65万円でした。
 この場合の個人事業税の計算は、次のようになります。

 総収入金額(1,000万円)-必要経費(600万円)-青色事業専従者給与(75万円)-青色申告特別控除(65万円)=所得金額260万円

 {所得金額(260万円)+青色申告特別控除(65万円)-事業主控除(145万円)}×税率(5%)=年税額(90,000円)
 
 年税額90,000円を、8月(第1期分)と12月(第2期分)にそれぞれ45,000円ずつ納付します。

確定申告書B第二表の「事業税に関する事項」欄の記載

 個人事業税は、個人の行う物品販売業、製造業などの事業に対し、前年中の所得を課税標準として、その個人の事務所又は事業所(事務所又は事業所を設けないで行う事業については、住所又は居所)所在の都道府県が課税する税金です。
 通常は、所得税の確定申告をすれば、住民税(市・県民税)の申告と個人事業税の申告があったものとして取り扱われますので、別途申告は不要です。ただし、所得税の確定申告の際に、第二表の住民税・事業税に関する事項を記載しなければなりません。
 今回は、第二表の住民税・事業税に関する事項のうち、見落とされがちな「事業税に関する事項」欄の記載について確認します。

1.事業税が課税される事業

 個人事業税が課税される事業は、第1種事業(37業種)、第2種事業(3業種)及び第3種事業(30業種)に区分されており、所得税及び住民税の区分でいえば、概ね営業等所得及び不動産所得の一部に対して課税されます。

区分 標準税率
【第1種事業】
物品販売業、保険業、金銭貸付業、物品貸付業、製造業、請負業、印刷業、出版業、写真業、旅館業、料理店業、飲食店業、遊技場業、不動産売買業、不動産貸付業、駐車場業、広告業、運送業、運送取扱業、倉庫業、席貸業、周旋業、代理業、仲立業、問屋業、サウナ風呂等の公衆浴場業、演劇興行業、遊覧所業、興信所業、案内業、冠婚葬祭業、電気供給業、土石採取業、電気通信事業、船舶ていけい場業、両替業、商品取引業
5%
【第2種事業】
畜産業、水産業、薪炭製造業
4%
【第3種事業】
医業、歯科医業、薬剤師業、獣医業、弁護士業、司法書士業、行政書士業、公証人業、弁理士業、税理士業、公認会計士業、計理士業、社会保険労務士業、コンサルタント業、設計監督者業、不動産鑑定業、デザイン業、諸芸師匠業、歯科衛生士業、歯科技工士業、測量士業、土地家屋調査士業、海事代理士業、理容業、美容業、クリーニング業、第1種事業以外の公衆浴場業(銭湯)、印刷製版業
5%
【第3種事業】
あんま・マッサージ・指圧・はり・きゅう・柔道整復その他の医業に類する事業、装蹄師業
3%

2.事業税が課税されない所得

 林業、鉱物の掘採事業にかかる所得については課税されません。また、上表に記載のある事業に該当する場合でも、次の所得については課税されません。

区分
【第2種事業】
畜産業、水産業及び薪炭製造業で自家労力(事業を行う人又はその同居の親族の労力)によって事業を行った日数の合計がその年中における延べ労働日数の2分の1を超える場合はその所得
【第3種事業】
医業、歯科医業、薬剤師業、あんま・マッサージ・指圧・はり・きゅう・柔道整復その他の医業に類する事業を行っている人の社会保険診療に係る所得
【第3種事業】
あんま・マッサージ・指圧・はり・きゅう・柔道整復その他の医業に類する事業を行うもので、両眼の視力を喪失した人及び万国式視力表により測定した両眼の視力が0.06以下の視力障害のある人が行うものはその所得

3.申告

 所得税の確定申告又は住民税(市町村税・県民税)の申告をした場合は、個人事業税の申告があったものとして取り扱われますので、重ねて申告する必要はありません。
 ただし、次のような場合には、県税事務所に個人事業税の申告をする必要があります。以下に該当するときで申告をしなかった場合は、事業税の各種控除(損失の繰越控除、事業用資産の譲渡損失の控除等)を受けることができません。

(1) 法人成りなどで年の中途で事業を廃止した場合は、事業廃止後1か月以内
(2) 事業主の死亡で年の中途で事業を廃止し、準確定申告(廃止した年分に係る所得税の確定申告)を行っていない場合は、死亡後4か月以内

4.「事業税に関する事項」欄の記載

 所得税の確定申告書B第二表には、このような「事業税に関する事項」欄が設けられています。
 この欄は個人事業税の計算上必要ですから、個人事業税が課税される事業所得などがある人は、該当項目があれば記載しなければなりません。該当項目があるにもかかわらず記載がない場合は、事業税の各種控除を受けることができません。
 以下で、各項目の記載上の留意点を述べていきます。

(1) 所得税で控除対象配偶者などとした専従者

 所得税で「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出していない場合で、事業主と生計を一にする配偶者や15歳以上のその他の親族でその事業に専ら従事している人に対して、実際に給与の支払いがされている場合は、事業税では事業専従者にできますので、その人の氏名及び給与額を記載します。

(2) 非課税所得など

 個人事業税には非課税の事業がありますので、事業所得のうち個人事業税が課税されない所得(上記2参照)がある場合は、下記の非課税所得番号を番号欄に、その所得金額(事業専従者控除(給与)額を差し引く前の金額)を所得金額欄に記載します。
 ただし、8番の社会保険診療報酬に係る所得がある場合は、所得ではなく収入金額を記載します。これは、収入金額をもとに県税事務所で所得金額が計算されるからです。

① 複数の事業を兼業している人で、そのうち次に掲げる事業により生ずる所得がある場合

番号 所得
1 畜産業(農業に付随して行うものを除く)から生ずる所得
2 水産業(小規模な水産動植物の採捕の事業を除く)から生ずる所得
3 薪炭製造業から生ずる所得
4 あんま・マッサージ・指圧・はり・きゅう・柔道整復その他の医業に類する事業(両眼の視力を喪失した人その他両眼の視力0.06以下の人が行うものを除く)から生ずる所得
5 装蹄師業から生ずる所得

② 次に掲げる所得(非課税所得)がある場合

番号 非課税所得
6 林業から生ずる所得
7 鉱物掘採業から生ずる所得
8 社会保険診療報酬に係る収入
9 外国での事業に係る所得(外国に有する事務所等で生じた所得)
10 地方税法第72条の2に定める個人の行う事業に該当しないものから生ずる所得

(3) 損益通算の特例適用前の不動産所得

 個人事業税では、所得税における不動産所得の損益通算の特例措置(損失の金額のうち、土地等を取得するために要した負債の利子の額に相当する部分の損益通算不適用)の規定は適用されませんので、これに該当する金額がある場合は、適用前の不動産所得を記載します。
※ 所得税における不動産所得の損益通算の特例措置については、本ブログ記事「賃貸用不動産取得に要した借入金利子の必要経費算入と損益通算」をご覧ください。

(4) 不動産所得から差し引いた青色申告特別控除額

 所得税で青色申告者に認められている青色申告特別控除は、個人事業税では認められていません。
 青色申告特別控除額を不動産所得から控除した場合は、その金額を記載します。

(5) 事業用資産の譲渡損失など

 事業税が課税される事業に使用していた機械装置、車両運搬具、工具器具備品など事業用資産を、その事業に使用しなくなってから1年以内に譲渡した場合で、譲渡損失があれば記載します。
 なお、譲渡益と譲渡損がある場合は損益通算せず、損失額のみを記載します。ただし、土地、建物、無形の固定資産は対象になりません。
 また、白色申告者において、事業の所得の計算上生じた損失のうち、被災事業用資産の損失の金額がある場合は、その金額を記載します。
 これらの損失の内容は、第二表の「雑所得(公的年金等以外)、総合課税の配当所得・譲渡所得、一時所得に関する事項」欄にも記載します。
 この「事業用資産の譲渡損失など」欄に記載がない場合は控除できませんので、ご注意ください。

(6) 前年中の開(廃)業

 事業主控除額(年290万円)は年間事業月数により算出しますので、新たに事業を開始した場合又は事業を廃止した場合は、記入欄の「開始・廃止」の該当する文字を〇で囲み、その月日を記載します。

(7) 他都道府県の事務所等

 個人事業税は、事業所等が所在する都道府県により課税され、また、他の都道府県にも事務所等がある場合には、所得金額をその事務所等の従業員数で按分して課税されます。
 したがって、他都道府県に事務所等がある場合は〇印を記入し、その所在地と月末ごとの従業員数を、それぞれ事務所や事業所ごとに適宜用紙に書いて添付します。

※ 第二表「事業税に関する事項」欄の記載方法については、個人事業税の計算構造を知れば理解が深まります。個人事業税の計算については、この記事の続編である「事業税の計算上の留意点(所得税との相違点)」をご覧ください。

給与の支払がない場合の法定調書合計表と給与支払報告書の提出の要否

 年末調整が終われば、その後の処理として「法定調書」「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」(以下「合計表」といいます)と「給与支払報告書(個人別明細書、総括表)」(以下「報告書」といいます)を提出しなければなりません。
 基本的には、それぞれ税務署から郵送されてくる「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表の作成と提出の手引」と「給与支払報告書等の作成及び提出についての手引書」に従って作業を進めていきます。
 この作業は、従業員に給与を支払っていることが前提になりますが、事業者(個人事業主)によっては、従業員を雇っておらず給与の支払がない場合もあります。このような事業者においては、従業員の年末調整という作業は必要ありませんが、その後の合計表と報告書の提出についてはどうでしょうか?
 今回は、給与の支払がない場合の合計表と報告書の提出の要否について確認します。

1.合計表の提出について

 個人事業主の中には、従業員を雇わず1人で事業を行っている場合があります。また、開業後間もない時期のため、青色事業専従者に給与を支払っていない個人事業主もいることと思います。
 このような場合、合計表を税務署に提出する必要はあるのでしょうか?
 これについては、「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表の作成と提出の手引」に記載があります。令和2年分であれば手引の32ページ右下に、次のように書かれています(太字加工は筆者による)。

 税務署へ提出する法定調書がない場合は、合計表の「(摘要)」欄に「該当なし」と記載の上、提出をお願いします。
 なお、e-Taxのメッセージボックス及びマイナポータルに「法定調書提出期限のお知らせ」(以下「お知らせ」といいます。)が届いている方で、お知らせを通じて「提出義務なし」と回答した場合には、上記の合計表の提出は必要ありません(おしらせは11月下旬から12月上旬に送信される予定です。)。

 つまり、給与の支払がない場合でも合計表の「1 給与所得の源泉徴収票合計表(375)」の摘要欄に「該当なし」と記載して提出する必要がありますが、メッセージボックスのお知らせを通じて「提出義務なし」と回答した場合は提出する必要はないということです。いずれにせよ、税務署に対する意思表示は必要であり、それを怠ると税務署から連絡がきますのでご注意ください。
 なお、合計表を提出しなかったり虚偽記載をした場合は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます(所得税法242条5号)。

2.報告書の提出について

 一方、個人住民税の基礎資料となる報告書は市町村に提出します。報告書は税務署に提出する源泉徴収票と提出範囲が異なり、前年中に給与等を支払ったすべての従業員等(パート・アルバイト、役員等を含む)について提出が必要です。
 では、前年中に給与の支払がなかった場合、報告書は提出するのでしょうか?
 答えは「否」です。給与の支払がない場合、報告書は提出不要です。個人別明細書に0と記載して提出することも、総括表に0と記載して提出することも、市町村は求めていないようです。ただし、市町村によって対応が異なることもありますので、当該市町村に確認した方が良いかもしれません(連絡先については、「給与支払報告書等の作成及び提出についての手引書」の「市町村所在地一覧表」に載っています)。