住民税・事業税における青色申告特別控除の取扱い

1.住民税のみの申告でも青色申告特別控除を適用できるか?

 所得税の申告義務がない人も住民税の申告は必要です。
 給与所得者と公的年金等受給者の確定申告不要制度は、所得税(国税)における規定であり、住民税(地方税)にはこの規定はありません。そのため、所得税では申告不要とされた20万円以下の所得は、住民税では申告が必要です。
 
 では、所得税の確定申告書を提出していない人が住民税の申告をする場合、青色申告特別控除の適用はできるのでしょうか?

 青色申告特別控除については、所得税申告書の提出は要件となっていません。したがって、所得税の申告義務がない人が住民税の申告のみを行う場合、当該年分について青色申告の承認を受けていれば、住民税においても青色申告特別控除額(10万円)を控除できます(租税特別措置法25の2①、地方税法313条②)。

2.事業税における青色申告特別控除

 事業税では、青色申告特別控除の特例措置が講じられていないので、課税標準となる事業の所得は、青色申告特別控除額を控除しないで算定します。

上場株式等の配当の申告不要制度は損益通算時も適用可能

1.申告分離課税

 2009年(平成21年)1月1日以後に支払を受けるべき上場株式等の配当所得については、総合課税に代えて申告分離課税により確定申告をすることができます。
 申告分離課税を選択した場合の留意点は次の通りです。

(1) 総合課税を選択した場合は配当控除の適用がありますが、申告分離課税を選択した場合は配当控除を適用することができません。

(2) その年分に生じた上場株式等の譲渡損失の金額と損益通算ができます。
 例えば、その年分のA株式の配当100とB株式の譲渡損失90を損益通算して、配当所得を10とすることができます。

(3) 前年以前3年以内に生じた上場株式等の譲渡損失を繰越控除することができます。
 例えば、その年分の配当100と3年前に生じた譲渡損失90を損益通算して、その年分の配当所得を10とすることができます。

(4) 確定申告をする上場株式等の配当所得のすべてについて、総合課税と申告分離課税のいずれかを選択しなければなりません。
 例えば、A株式は総合課税、B株式は申告分離課税という選択はできず、A・B株式ともに総合課税又はA・B株式ともに申告分離課税という選択をしなければなりません。

2.申告不要制度

 上場株式等の配当については、確定申告をしないで20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)の税率による源泉徴収だけで課税関係を終了させることができます。
 申告不要制度を選択した場合の留意点は次の通りです。

(1) 上記1.(4)にある通り、上場株式等の配当所得のすべてについて総合課税と申告分離課税のいずれかを選択しなければなりませんが、1銘柄1回に支払われる配当等ごとに申告不要の特例を適用し、上場株式等の配当所得に算入せずに申告することは可能です。
 例えば、A・B株式ともに申告分離課税を選択している場合に、A株式の中間配当については申告分離課税で申告し、A株式の期末配当については申告不要とすることは可能です。
 なお、特定口座(源泉徴収選択口座)内配当等について申告不要の特例を適用する場合には、特定口座単位で行うことになります。

(2) 上記1.(2)(3)の損益通算の適用を受けるために確定申告書を提出する場合にも、申告不要の特例を適用することができます。
 例えば、A株式の配当60、B株式の配当40、C株式の譲渡損失90を損益通算して、60+40-90=10をその年分の配当所得とすることもできますし、B株式の配当40を申告しないで60-90=△30の譲渡損失を翌年に繰り越すこともできます(この場合、A株式の配当は0となり、その年分の配当所得は0となります)。

自動車売買における消費税の取扱いーリサイクル預託金と未経過自動車税

1.自動車リサイクル預託金の譲渡は5%を課税売上割合の分母へ

 2014年度(平成26年度)税制改正で課税売上割合の計算上、金銭債権の譲渡が行われた場合、有価証券の譲渡等があった場合と同様に譲渡対価の5%を分母に含めることとされました。
 この金銭債権には自動車リサイクル預託金(リサイクル料金から資金管理料金を除く部分)も対象となっています。

 自動車リサイクル預託金は、使用済自動車から発生する廃棄物の処理やリサイクルを行うための費用として車両の購入者が支払い、廃車まで資金管理法人(自動車リサイクル促進センター)により管理運用される仕組みです。 

 リサイクル預託金は、消費税の課税実務上は次のように処理されます。

 (1) 自動車の取得時・・・不課税
 (2) 中古車の譲渡時・・・非課税売上
 (3) 自動車の廃車時・・・課税仕入

 注意を要するのは(2)です。中古車を販売した場合のリサイクル預託金は非課税売上となりますが、課税売上割合の計算上は、譲渡対価全額ではなくその5%相当額のみを分母に含めることとなります。

2.中古車売買時の未経過自動車税等の消費税の処理

 顧問先の会計担当者の方から、年に数回、車両売買時の仕訳を聞かれることがあります。その際、注意しなければならないのは、自動車税等の消費税の取扱いです。
 自動車税は、その年4月1日(賦課期日)における自動車の所有者に対し、翌年3月31日までの1年分が課税されます。年の中途で中古車の売買をする場合は、売買時から年度末までの未経過期間分の自動車税を精算することが商慣行となっています。 

 自動車税の精算金は法律等で義務付けられたものではないので、売買する中古車の譲渡対価に含めることとされています(消費税基本通達10-1-6)。つまり、自動車税の精算金は租税ではなく、車両の譲渡対価の一部を構成するものとして取扱います。
 したがって、消費税については、譲渡者が受け取る精算金は課税売上げ、購入者が支払う精算金は課税仕入れとして処理することになります。

 また、自賠責保険料の未経過期間分について精算する場合も同様です。

固定資産税の前納報奨金と還付金の処理

1.固定資産税の前納報奨金の所得区分は?

 固定資産税は、通常年4回(原則として4月、7月、12月、2月ですが、市町村によって若干異なります)に分けて納付することになっていますが、第1回目の納期に全期分を前納した場合には、市税に未納がないことなどを条件に、年税額から前納報奨金を差し引いて納付することができます。
 この前納報奨金は所得になるのですが、その所得区分は、固定資産税の課税客体である固定資産の用途によって異なりますので、注意が必要です。
 事業用固定資産に係る固定資産税は必要経費となりますので、その前納報奨金は事業所得の収入金額になります。
 一方、業務用以外の固定資産に係る前納報奨金は、利息としての性格もなくその他の対価性もないため、一時所得となります。

2.過去の年分で必要経費に算入した固定資産税の還付を受けた場合

 土地・家屋(建物)の評価・課税誤りによって固定資産税を納め過ぎた場合に、その過徴収金が遡って還付される場合があります。
 固定資産税は不動産所得の計算上必要経費に算入されますが、過去の年分で必要経費に算入していた固定資産税が還付された場合は、貸付の規模によって処理が異なります。
 貸付の規模が業務的規模の場合には、過去において過大計上していた租税公課を減額する修正申告の手続きが必要となります。
 貸付の規模が事業的規模の場合には、その還付された年分の収入金額に算入します。

再居住した場合の住宅借入金等特別控除

1.再居住した場合の適用要件

 住宅借入金等特別控除の適用を受けていた方が、2003年(平成15年)4月1日以降に転任命令に伴う転居等により控除が受けられなくなった後、その家屋に再び居住した場合は、次の要件を満たすことにより再居住年以後の年について、住宅借入金等特別控除の適用を受けることができます。

(1) 転居の事由等

 勤務先からの転任の命令に伴う転居、その他これに準ずるやむを得ない事由により、その家屋を居住の用に供さなくなったこと

(2) 居住の用に供さなくなる日までに必要な手続

 「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」、未使用の「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」、「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」を所轄税務署に提出

(3) 再適用をする最初の年分の必要書類

 「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書(再び居住の用に供した方用」、「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」、「住民票の写し」

(4) 再適用の制限

 再び居住の用に供した日の属する年に、その家屋を賃貸の用に供していた場合には、翌年以後の年についてこの特例の再適用が可能

2.再居住した場合の留意点

 したがって、例えば転地療養のため、家族全員で一時実家に移り住んだ場合には、「再居住の場合の再適用の特例」は受けられません。
 転地療養は、勤務先からの転任命令のような外的要因ではなく個人的事情であるため、上記要件の「やむを得ない事由」に該当しないからです。

 また、転勤が解消し再居住した年に賃貸していた場合に、年末時点では居住しているとして控除を受けることはできません。控除は翌年からとなりますので、ご注意ください。

住宅借入金等特別控除における連帯債務の注意点

 住宅借入金等特別控除を受けるためには、金融機関が発行した「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」が必要ですが、この残高証明書の摘要欄に連帯債務者が記載されている場合があります。
 住宅取得資金に係る借入金が、給与の支払を受ける人と配偶者又はその他の親族との連帯債務になっている場合は、家屋と土地の共有持分割合又は建物と土地の共有者による資金の負担割合で、連帯債務になっている住宅借入金の年末残高を按分計算することになります。
 ただし、家屋と土地が単独で所有されている場合など、按分計算が不要の人もいますので注意してください。
 具体的には、以下のようになります(住宅取得資金を2,000万円とします)。

(1) 共有持分割合で按分計算する場合

 住宅の持分が夫2分の1、妻2分の1で、住宅取得資金をすべて連帯債務の借入金で賄っているときは、夫と妻の借入金年末残高は、それぞれ2,000万円×1/2=1,000万円となります。

(2) 按分計算が不要の場合

 住宅をすべて夫が所有し(夫の持分1、妻の持分0)、住宅取得資金をすべて連帯債務の借入金で賄っているときは、連帯債務の全額である2,000万円が夫の残高となります。

(3) 資金の負担割合で按分計算する場合

 住宅の持分が夫2分の1、妻2分の1で、住宅取得資金2,000万円のうち500万円(4分の1)を妻の自己資金、残りの1,500万円(4分の3)を連帯債務の借入金で賄っているときは、次のようになります。
 夫の残高:2,000万円×1/2=1,000万円
 妻の残高:2,000万円×1/2-500万円=500万円
 割合で示すと、夫の残高:妻の残高=2:1となります。
 夫の残高:3/4×1/2=3/8=6/16
 妻の残高:3/4×(1/2-1/4)=3/16

法人事業概況説明書を軽視していませんか?

1.概況書は提出義務のある添付書類

 2018年(平成30年)4月1日以後終了事業年度分から法人事業概況説明書の様式が改訂されています。
 法人事業概況説明書は、2006年度(平成18年度)税制改正により、決算書や勘定科目内訳明細書などと一緒に確定申告書に添付する書類として義務付けられています。
 決算書や勘定科目内訳明細書は、間違いの無いように慎重に作成される場合が多いように思うのですが、法人事業概況説明書の作成は、これらに比べるとやや慎重さに欠けるような気がします。 

2.間違いの多い記載例

 間違いが多いのは、次の2点です。

① 表面の「資産の部合計」欄が、「負債の部合計」欄と「純資産の部合計」欄の計と一致していない。
② 裏面の「源泉徴収税額」欄が、年末調整による過不足額の精算をしているにもかかわらず精算後 の税額を記載していない(源泉徴収税額をそのまま記載している)。

 ①については、財務データから連動して法人事業概況説明書を自動作成する会計ソフトを使用していても、資産=負債+純資産となっていない場合がありますので注意が必要です。
 また、②については、12月に年末調整を行い、例えば源泉徴収税額(給与からの天引き額)が100,000円、年末調整による超過税額(還付額)が120,000円の場合、正しくは△20,000円(またはー20,000円)と記載しますが、誤って100,000円と記載しているケースです。
 国税庁のホームページに「法人事業概況説明書の書き方」が掲載されていますので、初心に帰って確認してみるのもいいかもしれません。

会社が役員から無利息又は低利率で借入れをした場合

 会社が役員に対して金銭を無償又は通常の利率よりも低い利率で貸し付けた場合には、通常取得すべき利率により計算した利息の額と実際収受した利息の額との差額に相当する金額は、その役員に供与した経済的利益となり給与課税されます。(本ブログ記事「役員に金銭を貸し付けた場合の所得税法上の問題」を参照)
 では、その逆の場合はどうでしょうか? 

1.役員側の課税関係

 つまり、役員が会社に対して無利息又は低利率で貸付けをした場合、課税上の問題は生じるのでしょうか?
 
 答は「否」です。
 会社が役員に対して金銭の貸付けをした場合と異なり、役員が会社に金銭を貸し付けた場合においては、無利息又は低利率により利息の計算を行ったとしても、適正な利率による利息との差額を徴収しなければならないということはありません。
 会社は利益の追求を目的としているため、その取引について常に経済的合理性が求められるのに対し、個人は必ずしも利益の追求のみを目的としているわけではないからです。
 したがって、貸し付けた役員側において、利息相当額の認定という課税上の問題が生じることは通常はありません(ただし、「同族会社の行為又は計算の否認」の規定(所得税法157条)が適用され、代表者に収受されるべき利息相当額として、約500億円の雑所得の認定課税が行われた事件(いわゆる平和事件)がありました)。

2.会社側の課税関係

 一方、役員から無利息又は低利率により借入れをした会社は、利息相当額の支払いを免除されたことによる利益(債務免除益)が計上されますが、これと同額の支払利息も計上されますので、やはり課税上の問題が生じることはありません

上場株式等の配当所得及び譲渡所得に係る住民税の課税方式は申告不要が得策

 2017年度(平成29年度)税制改正で、上場株式等の配当所得・譲渡所得について、所得税と住民税で異なる課税方式を選択できるようになりました。

※ 2023(令和5)年分の確定申告から、上場株式等の配当所得・譲渡所得に係る課税方式を所得税と一致させることになりました(所得税と住民税で異なる課税方式を選択することはできません)。
 これにより扶養控除や配偶者控除等の適用、非課税判定、国民健康保険税の保険料算定など、各種行政サービスに影響する場合がありますのでご注意下さい。

1.上場株式等の配当所得の課税方式

 上場株式等の配当所得については、所得税及び住民税ともに以下の課税方式を選択することができます。

(1) 申告不要
(2) 総合課税
(3) 申告分離課税

 所得税の確定申告書において、上場株式等の配当所得を総合課税又は申告分離課税として申告した場合は、住民税も同様にその課税方式が適用されます。
 しかし、納税通知書が送達される日までに、所得税の確定申告書とは別に住民税の申告書「上場株式等の配当・譲渡所得等の課税方式選択申告書」を提出することにより、所得税と異なる課税方式(申告不要、総合課税、申告分離課税)を選択することができます(例えば所得税は総合課税、住民税は申告不要など)。

2.上場株式等の譲渡所得の課税方式

 また、上場株式等の譲渡所得については、所得税及び住民税ともに以下の課税方式を選択することができます。

(1) 申告不要
(2) 申告分離課税

 この場合も、納税通知書が送達される日までに、所得税の確定申告書とは別に住民税の申告書を提出することにより、所得税と異なる課税方式(申告不要、申告分離課税)を選択することができます(例えば所得税は申告分離課税、住民税は申告不要など)。

3.住民税は申告不要が得策

 申告した上場株式等の配当所得と譲渡所得は、住民税の非課税判定や社会保険料(国民健康保険料・後期高齢者医療保険料)算定の基準となる総所得金額や合計所得金額に含まれます。社会保険料(国民健康保険料・後期高齢者医療保険料)には、この住民税の課税所得に連動する「所得割」の仕組みがあるため、申告によって所得が増えれば社会保険料も増えるリスクがあります。
 申告することで所得税の負担を軽減できても、社会保険料が増えれば、全体として負担増となる可能性があります。しかし、住民税を申告不要としておけば社会保険料には影響がありません。
 したがって、住民税は申告不要を選択することが得策といえます
 

交通費込み給与の交通費部分は確定申告でも非課税にできない

1.交通費込み給与の交通費は所得税の課税対象

 給与所得者にとって、月15万円までの交通費(通勤手当)には所得税がかからないということは、当たり前のように思われています。しかし、交通費込みで給与の支給を受けている場合は、交通費部分を非課税とすることはできません。

 所得税法第9条(非課税所得)には、「給与所得を有する者で通勤するものがその通勤に必要な交通機関の利用又は交通用具の使用のために支出する費用に充てるものとして通常の給与に加算して受ける通勤手当(これに類するものを含む。)のうち、一般の通勤者につき通常必要であると認められる部分として政令で定めるもの 」と規定されています。

 ここで注目すべき点は、通常の給与に「加算して」支給される交通費が非課税になるということです。
 したがって、交通費込みで給与の支給を受けている場合には、交通費を含めた全額が給与として所得税の課税対象になります。

2.確定申告で交通費部分を非課税とできるか?

 では、確定申告を行って、交通費込みで支給された給与から、交通費部分を抜き出して非課税とすることはできるのでしょうか?

 これについては、2008年(平成20年)の国税不服審判所の裁決(裁決事例集No.75)で、「通常の給与に加算して通勤手当等が支給されていない場合には、たとえ通勤者が通常の給与のうちから通勤費相当額を負担したとしても、(中略)、当該通勤費相当額を、非課税所得として給与等の収入金額から除外することはできない」とされています。