令和3年度改正後の中小企業投資促進税制

1.商業・サービス業・農林水産業活性化税制の廃止

 2021(令和3)年度税制改正で、「商業・サービス業・農林水産業活性化税制(特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は特別税額控除制度)」が適用期限(2021(令和3)年3月31日)の到来をもって廃止されました。
 この商業・サービス業・農林水産業活性化税制の対象者(商店街振興組合)や対象事業(不動産業等)を「中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は特別税額控除制度)」に盛り込む形で制度が一本化され、中小企業投資促進税制の適用期限が2年間延長されました。
 中小企業投資促進税制の改正内容は、次のとおりです。

(1) 中小企業者等の範囲

 中小企業者等の範囲について、次の見直しが行われました。

① 本制度の対象となる中小企業者等に商店街振興組合が追加されました。
② 中小企業者の判定における大規模法人から一定の独立行政法人中小企業基盤整備機構を除外する特例が廃止されました。

(2) 指定事業の範囲

 対象となる指定事業に、次の事業が追加されました。

① 不動産業
② 物品賃貸業
③ 料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブその他これらに類する事業(生活衛生同業組合の組合員が行うものに限る)

(3) 特定機械装置等の範囲

 本制度の対象となる減価償却資産から、匿名組合契約その他これに類する一定の契約の目的である事業の用に供するものが除外されました。

(4) 適用期間

 2021(令和3)年4月1日から2023(令和5)年3月31日までの間に取得等する特定機械装置等について適用されます。

 これらの改正を踏まえて、改正後の制度の内容を以下にまとめます。

2.改正後の中小企業投資促進税制

出所:中小企業庁広報資料「概要」

 中小企業者等※1で青色申告書を提出するものが、2021(令和3)年4月1日から2023(令和5)年3月31日までの間に新品の特定機械装置等※2の取得又は制作をして、その者の営む指定事業※3の用に供した場合には、基準取得価額(特定機械装置等の取得価額として一定のもの)の30%相当額の特別償却又は7%相当額の税額控除ができます。
 ただし、その事業年度の所得に対する法人税の額(個人事業主の場合は、所得税の額)の20%相当額を限度※4とし、限度を超える部分の金額については1年間の繰越しが認められています。
 なお、中小企業者等のうち特定中小企業者等※5以外の法人については、税額控除はできません。

※1 中小企業者等とは、青色申告書を提出する者のうち、以下のイ~ハに該当するものをいいます。
イ.中小企業者(中小企業者については、本ブログ記事「租税特別措置法上の『中小企業者』の定義とその判定時期」をご参照ください。ただし、本制度においては、中小企業者の判定における大規模法人から一定の独立行政法人中小企業基盤整備機構が除外する特例が廃止されています。)
ロ.常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主
ハ.農業協同組合、農業協同組合連合会、中小企業等協同組合、出資組合である商工組合及び商工組合連合会、商店街振興組合、内航海運組合、内航海運組合連合会、出資組合である生活衛生同業組合、漁業協同組合、漁業協同組合連合会、水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会、森林組合並びに森林組合連合会

※2 特定機械装置等とは、次のイ~ホの減価償却資産をいいます。ただし、匿名組合契約その他これに類する一定の契約の目的である事業の用に供するものは除外されます
イ.機会及び装置で1台又は1基の取得価額が160万円以上のもの
ロ.製品の品質管理の向上等に資する測定工具及び検査工具で1台又は1基の取得価額が120万円以上のもの(その事業年度の取得価額の合計額が120万円以上のもの(1台又は1基の取得価額が30万円未満のものを除く)を含む)
ハ.一定のソフトウェアで一のソフトウェアの取得価額が70万円以上のもの(その事業年度の取得価額の合計額が70万円以上のもの(少額減価償却資産及び一括償却資産の適用を受けたものを除く)を含む)
ニ.車両重量が3.5トン以上の普通自動車で貨物の運送の用に供するもの
ホ.内航海運業の用に供される船舶

※3 指定事業とは、製造業、建設業、農業、林業、漁業、水産養殖業、鉱業、卸売業、道路貨物運送業、倉庫業、港湾運送業、ガス業、小売業、料理店業その他の飲食店業(料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブその他これらに類する事業については生活衛生同業組合の組合員が行うものに限る)、一般旅客自動車運送業、海洋運輸業及び沿海運輸業、内航船舶賃貸業、旅行業、こん包業、郵便業、通信業、損害保険代理業及びサービス業(映画業以外の娯楽業を除く)、不動産業物品賃貸業をいいます。

※4 税額控除額は、中小企業経営強化税制、中小企業投資促進税制の控除税額の合計で、その事業年度の法人税額又は所得税額の20%が上限となります。

※5 特定中小企業者等とは、中小企業者等のうち資本金の額若しくは出資金の額が3,000万円以下の法人又は農業協同組合等をいいます。

中小企業者等の所得拡大促進税制の令和3年度改正《令和3年4月1日以後開始事業年度》

 所得拡大促進税制は、青色申告書を提出している中小企業者等が、一定の要件を満たした上で前年度より給与等の支給額を増加させた場合、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です。
 この所得拡大促進税制について、2021(令和3)年度税制改正において、適用期間の2年間延長と適用要件の見直し(継続雇用要件の撤廃等)が行われました。
 今回は、現行制度の概要と改正内容について確認します。

※ 所得拡大促進税制については、2023(令和5)年3月31日の期限到来前に2022(令和4)年度改正が行われたため、2021(令和3)年4月1日から2022(令和4)年3月31日までの間に開始する事業年度(個人事業主の場合は2022(令和4)年)について適用されることとなりました。

1.現行制度の概要

 中小企業者等※1で青色申告書を提出するものが、2018(平成30)年4月1日から2021(令和3)年3月31日までの間に開始する各事業年度(個人事業主の場合は、2019(令和元)年から2021(令和3)年までの各年)において国内雇用者※2に対して給与等※3を支給する場合において、その事業年度においてその中小企業者等の継続雇用者給与等支給額※4から継続雇用者比較給与等支給額※5を控除した金額のその継続雇用者比較給与等支給額に対する割合が1.5%以上であるとき(その中小企業者等の雇用者給与等支給額※6が比較雇用者給与等支給額※7以下である場合を除く)は、雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額の15%※8(下記(1)(2)の要件を満たす場合は25%)相当額の特別税額控除ができることとされています。
 ただし、その事業年度の所得に対する法人税額(個人事業主の場合は、その年の事業所得の金額に係る所得税額)の20%相当額が限度となります。

(1) 継続雇用者給与等支給額から継続雇用者比較給与等支給額を控除した金額のその継続雇用者比較給与等支給額に対する割合が2.5%以上であること

(2) 次に掲げる要件のいずれかを満たすこと
① その事業年度の損金の額(個人事業主の場合は、その年分の必要経費)に算入される教育訓練費※9の額から中小企業比較教育訓練費※10の額を控除した金額のその中小企業比較教育訓練費に対する割合が10%以上であること
② その中小企業者等が、その事業年度終了の日(個人事業主の場合は、その年の12月31日)までに中小企業等経営強化法に規定する経営力向上計画の認定を受けたものであり、その経営力向上計画に記載された同法に規定する経営力向上が確実に行われたものとして一定の証明がされたこと

※1 中小企業者等とは、青色申告書を提出する者のうち、以下に該当するものをいいます。
イ.中小企業者(中小企業者については、本ブログ記事「租税特別措置法上の『中小企業者』の定義とその判定時期」をご参照ください)
ロ.常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主
ハ.農業協同組合、農業協同組合連合会、中小企業等協同組合、出資組合である商工組合及び商工組合連合会、内航海運組合、内航海運組合連合会、出資組合である生活衛生同業組合、漁業協同組合、漁業協同組合連合会、水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会、森林組合並びに森林組合連合会

※2 国内雇用者とは、法人又は個人事業主の使用人のうちその法人又は個人事業主の国内に所在する事業所につき作成された賃金台帳に記載された者を指します。パート、アルバイト、日雇い労働者も含みますが、使用人兼務役員を含む役員及び役員の特殊関係者、個人事業主と特殊の関係のある者は含まれません。
 なお、特殊関係者(特殊の関係のある者)とは、法人の役員又は個人事業主の親族を指します。親族の範囲は6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族までが該当します。また、当該役員又は個人事業主と婚姻関係と同様の事情にある者、当該役員又は個人事業主から生計の支援を受けている者等も特殊関係者に含まれます。

※3 給与等とは、俸給・給料・賃金・歳費及び賞与並びに、これらの性質を有する給与(所得税法第28条第1項に規定する給与所得)をいいます。退職金など、給与所得とならないものについては、原則として給与等に該当しません。
 なお、所得税法上課税されない通勤手当等の額については、給与所得となるので、給与等に含まれます。ただし、賃金台帳に記載された支給額のみを対象に、所得税法上課税されない通勤手当等の額を含めずに計算する等、合理的な方法により継続して国内雇用者に対する給与等の支給額の計算をすることも認められます。

※4 継続雇用者給与等支給額とは、継続雇用者(前年度の期首から適用年度の期末までの全ての月分の給与等の支給を受けた従業員のうち、一定の者)に支払った給与等の総額をいいます。

出所:経済産業省「中小企業向け所得拡大促進税制ご利用ガイドブック-平成30年4月1日以降開始の事業年度用-(個人事業主は令和元年分以降用)」

※5 継続雇用者比較給与等支給額とは、継続雇用者に対する前事業年度の給与等の金額として一定の金額をいいます。

※6 雇用者給与等支給額とは、適用年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額(その給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額がある場合には、その金額を控除した金額)をいいます。

※7 比較雇用者給与等支給額とは、前事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額をいいます。

※8 その事業年度において「地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の特別税額控除制度(雇用促進税制)」の適用を受ける場合には、その規定による控除を受ける金額の計算の基礎となった者に対する給与等の支給額として一定の方法により計算した金額を控除した残額となります。

※9 教育訓練費とは、所得の金額の計算上損金の額に算入される、国内雇用者の職務に必要な技術又は知識を習得させ、又は向上させるために支出する費用で一定のものをいいます。

※10 中小企業比較教育訓練費とは、中小企業者等の適用年度開始の日前1年以内に開始した各事業年度の損金の額に算入される教育訓練費の額(その各事業年度の月数とと適用年度の月数が異なる場合には、教育訓練費の額に適用年度の月数を乗じてこれを各事業年度の月数で除して計算した金額)の合計額をその1年以内に開始した各事業年度の数で除して計算した金額をいいます。

2.令和3年度改正の内容

 所得拡大促進税制について次の見直しが行われた上、その適用期限が2年延長され、2021(令和3)年4月1日から2023(令和5)年3月31日までの間に開始する各事業年度(個人事業主の場合は、2022(令和4)年から2023(令和5)年までの各年)について適用されます。

※ 所得拡大促進税制については、2023(令和5)年3月31日の期限到来前に2022(令和4)年度改正が行われたため、2021(令和3)年4月1日から2022(令和4)年3月31日までの間に開始する事業年度(個人事業主の場合は2022(令和4)年)について適用されることとなりました。

(1) 適用要件のうち、継続雇用者給与等支給額から継続雇用者比較給与等支給額を控除した金額の継続雇用者比較給与等支給額に対する割合が1.5%以上であることの要件が、雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額の比較雇用者給与等支給額に対する割合が1.5%以上であることの要件に見直されました。

(2) 特別税額控除率(原則:15%)が25%となる要件(上記1.(1)及び(2)の要件)のうち、継続雇用者給与等支給額から継続雇用者比較給与等支給額を控除した金額の継続雇用者比較給与等支給額に対する割合が2.5%以上であることの要件が、雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額の比較雇用者給与等支給額に対する割合が2.5%以上であることの要件に見直されました。

(3) 給与等の支給額から控除される給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額(上記1.※6参照)について、その範囲が明確化されるとともに、次の見直しが行われました。
① 上記(1)及び(2)の要件を判定する場合には、雇用安定助成金額を控除しないこととする
② 特別税額控除率(15%又は25%)を乗ずる基礎となる雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額は、雇用安定助成金額を控除して計算した金額を上限とする

※ 給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額には、以下のものが該当します。
イ.その補助金、助成金、給付金又は負担金その他これらに準ずるもの(以下「補助金等」といいます)の要綱、要領又は契約において、その補助金等の交付の趣旨又は目的がその交付を受ける法人の給与等の支給額に係る負担を軽減させることが明らかにされている場合のその補助金等の交付額

該当する補助金等の例
業務改善助成金

ロ.イ以外の補助金等の交付額で、資産の譲渡、資産の貸付け及び役務の提供に係る反対給付としての交付額に該当しないもののうち、その算定方法が給与等の支給実績又は支給単価(雇用契約において時間、日、月、年ごとにあらかじめ定められている給与等の支給額をいいます)を基礎として定められているもの

該当する補助金等の例

雇用調整助成金、緊急雇用安定助成金、産業雇用安定助成金、労働移動支援助成金(早期雇い入れコース)、キャリアアップ助成金(正社員化コース)、特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース)、特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)

ハ.イ及びロ以外の補助金等の交付額で、法人の使用人が他の法人に出向した場合において、その出向した使用人(以下「出向者」といいます)に対する給与を出向元法人(出向者を出向させている法人をいいます)が支給することとしているときに、出向元法人が出向先法人(出向元法人から出向者の出向を受けている法人をいいます)から支払を受けた出向先法人の負担すべき給与に相当する金額

 なお、出向先法人は、賃金台帳に出向者と給与負担金を記載することで、集計対象となる給与総額に含めることが可能となります。
(出向先法人の負担すべき給与に相当する金額については、本ブログ記事「出向先法人が支出する給与負担金の取扱い」をご参照ください)

住宅借入金等特別控除の適用要件等の見直し

 2021(令和3)年度税制改正で、住宅借入金等特別控除制度(いわゆる住宅ローン控除)の見直しが行われました。
 改正内容は、次のとおりです。

1.控除期間13年間の特例の延長

 住宅の取得等(新築、建売・中古取得又は増改築等)で特別特例取得に該当するものをした個人が、その特別特例取得をした家屋を2021(令和3)年1月1日から2022(令和4)年12月31日までの間にその者の居住の用に供した場合には、住宅借入金等を有する場合の所得税額の控除及び当該控除の控除期間の3年間延長(控除期間13年間)の特例を適用できることとされました。
 特別特例取得とは、その対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が10%である場合の住宅の取得等で、次に掲げる区分に応じてそれぞれ次に定める期間内にその契約が締結されているものをいいます。

(1) 居住用家屋の新築・・・2020(令和2)年10月1日から2021(令和3)年9月30日までの期間
(2) 居住用家屋で建築後使用されたことのないもの若しくは中古住宅の取得又はその者の居住の用に供する家屋の増改築等・・・2020(令和2)年12月1日から2021(令和3)年11月30日までの期間

新築 令和2年10月1日~令和3年9月30日の契約
建売、中古、増改築等 令和2年12月1日~令和3年11月30日の契約

2.床面積要件の下限の引き下げ(40㎡以上)

 上記1の住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の特例は、個人が取得等をした床面積が40㎡以上50㎡未満である住宅の用に供する家屋についても適用できることとされました。
 ただし、床面積が40㎡以上50㎡未満である住宅の用に供する家屋に係る上記1の住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の特例は、その者の13年間の控除期間のうち、その年分の所得税に係る合計所得金額が1,000万円以下である場合に限り適用されます。

 上記1及び2について、その他の要件等は、現行の住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除と同様です(参考:本ブログ記事「中古住宅を取得した場合の住宅借入金等特別控除の適用要件」)。

3.適用時期

 上記の改正は、住宅の取得等で特別特例取得に該当するものをした個人が、その特別特例取得をした家屋を2021(令和3)年1月1日から2022(令和4)年12月31日までの間にその者の居住の用に供した場合に適用されます。

住宅取得等資金贈与の非課税特例の見直し

 2021(令和3)年度税制改正で、直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置が改正されています。
 今回は、その改正内容を確認します(制度の詳細については、本ブログ記事「住宅取得等資金贈与の非課税特例」をご参照ください)。

1.改正内容(非課税限度額の引き上げ)

 2021(令和3)年12月31日までに、父母や祖父母などの直系尊属から、住宅の新築・取得又は増改築のための資金(以下、「住宅取得等資金」といいます)の贈与を受けて契約を締結した場合には、住宅取得等資金のうち、住宅用家屋の区分及び契約の締結時期、対価・費用に含まれる消費税率に応じて、それぞれ次に掲げる金額(以下、「非課税限度額」といいます)までについては贈与税が課税されません。

① 改正前

契約日 ①消費税率8%の場合又は個人間売買の場合 ②消費税率10%の場合
省エネ等住宅 左記以外 省エネ等住宅 左記以外
平成28年1月~平成31年3月 1,200万円 700万円
平成31年4月~令和2年3月 1,200万円 700万円 3,000万円 2,500万円
令和2年4月~令和3年3月 1,000万円 500万円 1,500万円 1,000万円
令和3年4月~令和3年12月 800万円 300万円 1,200万円 700万円

※上表の省エネ等住宅とは、断熱等性能等級4以上、一次エネルギー消費量等級4以上、高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上、耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上又は免震建築物のいずれかに該当する住宅用家屋をいいます。

② 改正後

 2021(令和3)年4月1日から同年12月31日までの間に住宅用家屋の新築等に係る契約を締結した場合における非課税限度額が、次のとおり、2020(令和2)年4月1日から2021(令和3)年3月31日までの間の非課税限度額と同額まで引き上げられました。

契約日 ①消費税率8%の場合又は個人間売買の場合 ②消費税率10%の場合
省エネ等住宅 左記以外 省エネ等住宅 左記以外
平成28年1月~平成31年3月 1,200万円 700万円
平成31年4月~令和2年3月 1,200万円 700万円 3,000万円 2,500万円
令和2年4月~令和3年3月 1,000万円 500万円 1,500万円 1,000万円
令和3年4月~令和3年12月 1,000万円 500万円 1,500万円 1,000万円

2.改正内容(床面積要件の引き下げ)

 受贈者が贈与を受けた年分の所得税に係る合計所得金額が1,000万円以下である場合に限り、床面積要件の下限を40㎡以上(現行:50㎡以上)に引き下げられました(措令40の4の2①)。
 なお、住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例においても、同様に床面積要件の下限が40㎡以上(現行:50㎡以上)に引き下げられました(措令40の5①)。

※ 住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例とは、2003(平成15)年1月1日から2021(令和3)年12月31日までの間に、贈与の年の1月1日において20歳以上の者が、父母、祖父母等からの贈与により住宅取得等資金の取得をした場合、贈与者の年齢がその年の1月1日に60歳未満であっても、一定の要件を満たせば相続時精算課税の適用を受けることができるというものです。

3.適用時期

 上記の改正は、2021(令和3)年1月1日以後に贈与により取得する住宅取得等資金に係る贈与税について適用されます。

短期退職手当等に係る退職所得の金額の計算方法

 2021(令和3)年度税制改正で、勤続年数5年以下の一般従業員に対する退職所得の「2分の1課税」の見直しが行われました。
 この改正は、2022(令和4)年1月1日以後支給分の退職手当等について適用されます。

1.改正前の退職所得の金額の計算方法

 退職所得の金額は、その年中に支払を受ける退職手当等の収入金額から、その者の勤続年数に応じた退職所得控除額を控除した残額の2分の1に相当する金額とされており、次の算式で計算します。

 (収入金額-退職所得控除額)×1/2=退職所得の金額
※ 勤続年数5年以下の役員等の退職手当等(以下「特定役員退職手当等」といいます)については、「2分の1課税」は適用しません。

 退職所得控除額は、次の算式で計算します。

勤続年数 退職所得控除額
20年以下 40万円×勤続年数(最低80万円)
20年超 800万円+70万円×(勤続年数-20年)

 例えば、勤続年数5年の従業員に退職手当等600万円を支給する場合、退職所得の金額は次のように計算します。

 (600万円-40万円×5年)×1/2=200万円

2.改正後の退職所得の金額の計算方法

 短期退職手当等に係る退職所得の金額については、次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める金額とされました。
 なお、短期退職手当等とは、退職手当等のうち、退職手当等の支払をする者から短期勤続年数(勤続年数のうち、役員等以外の者としての勤続年数が5年以下であるものをいいます)に対応する退職手当等として支払を受けるものであって、特定役員退職手当等に該当しないものをいいます。

(1) 収入金額-退職所得控除額≦300万円 (2) 収入金額-退職所得控除額>300万円
(収入金額-退職所得控除額)×1/2 150万円+{(収入金額-(300万円+退職所得控除額)}

 上表の(1)の場合は、改正前と同じく2分の1課税が適用されます。(2)の場合は、300万円以下の部分の退職所得については2分の1課税が適用され(300万円×1/2=150万円)、300万円を超える部分の退職所得については2分の1課税が適用されません。

 例えば、勤続年数5年の従業員に退職手当等600万円を支給する場合、退職所得の金額は次のように計算します。

 150万円+{(600万円-(300万円+40万円×5年)}=250万円

 同じ条件でも、退職所得の金額は改正前の200万円から250万円に増えています。このような改正が行われた背景には、退職所得課税に対する優遇措置(退職所得控除額や2分の1課税等)を悪用するケースが目立ってきたことがあります。

税制改正による2019年4月1日以降の設備投資税制

 中小企業者等の設備投資を引き続き促進するため、中小企業投資促進税制、商業・サービス業・農林水産業活性化税制及び中小企業経営強化税制について、次のような改正が行われました(2019年度(平成31年度)税制改正)。

※ 2021(令和3)年度税制改正で、中小企業投資促進税制に商業・サービス業・農林水産業活性化税制を盛り込む形で制度を一本化した上で、中小企業投資促進税制の適用期限が2023(令和5)年3月31日まで延長されました。なお、商業・サービス業・農林水産業活性化税制は適用期限(2021(令和3)年3月31日)の到来をもって廃止されました。改正内容等については、本ブログ記事「令和3年度改正後の中小企業投資促進税制」をご参照ください。

1.中小企業投資促進税制

(1) 制度概要

 この制度は、青色申告書を提出する中小企業者等(従業員数1,000人以下の個人事業主を含む)が、新品の機械装置等を取得等し指定事業の用に供した場合に、その指定事業の用に供した日を含む事業年度において、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除が選択適用できるというものです( ただし、資本金3,000万円超1億円以下の法人は、税額控除の適用はありません)。

(2) 改正内容

 この制度については、適用期限が2021年(平成33年)3月31日まで2年延長されました。

 中小企業投資促進税制については、本ブログ記事「中小企業等経営強化法の認定が不要の設備投資税制」を参照して下さい。 

2.商業・サービス業・農林水産業活性化税制

(1) 制度概要

 この制度は、認定経営革新等支援機関等(認定を受けた税理士、公認会計士、商工会議所等)から経営改善に関する指導及び助言を受けた青色申告書を提出する中小企業者等(従業員数1,000人以下の個人事業主を含む)が、新品の経営改善に資する器具備品や建物附属設備を導入した場合に、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除が選択適用できるというものです(資本金3,000万円超1億円以下の法人は、税額控除の適用はありません)。

(2) 改正内容

 この制度については、経営改善設備の投資計画の実施を含む経営改善により、売上高又は営業利益の伸び率が2%以上となる見込みであることについて認定経営革新等支援機関等の確認を受けることを適用要件に加えた上で、適用期限が2021年(平成33年)3月31日まで2年延長されました。
 この改正は、2019年(平成31年)4月1日以後に取得等をする経営改善設備に適用されます。
 なお、同日前に交付を受けた経営改善指導助言書類に係る経営改善設備のうち同年9月30日までに取得等をしたものについては、上記の確認を受けることを不要とする経過措置が講じられます。

 商業・サービス業・農林水産業活性化税制については、本ブログ記事「中小企業等経営強化法の認定が不要の設備投資税制」を参照して下さい。 

3.中小企業経営強化税制

(1) 制度概要

 この制度は、青色申告書を提出する中小企業者等(従業員1,000人以下の個人事業主を含む)が、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき一定の新品設備を取得し指定事業の用に供した場合、即時償却又は10%の税額控除(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)を選択適用できるというものです。

(2) 改正内容

 この制度については、特定経営力向上設備等の範囲の明確化及び適正化を行った上で、適用期限が2021年(平成33年)3月31日まで2年延長されました。

「特定経営力向上設備等の範囲の明確化及び適正化」とは、具体的には、2分の1超の売電を見込む太陽光発電設備を対象設備から除外することを意味します。

 全量売電を目的とした太陽光発電設備は中小企業経営強化税制の対象になりませんが、発電した電気の一部を指定事業に使用(例えば自社の製造工場で使用)し、余った電気を売電(余剰売電)する場合は対象となります。
 ところが、最近では、太陽光発電設備の敷地に自動販売機を設置し、そこにわずかな電気を使うことで形式的に指定事業に係る要件を満たすといった、制度趣旨に反するような事例がみられるようになったことから、2分の1超の売電を見込む設備については対象設備から除外されることとなりました。

 また、売電を予定している場合には、経営力向上計画の認定申請時に一定の書類(発電の用に供する設備の概要や当該設備による発電量等の見込みを記載)の添付が義務付けられました。

 中小企業経営強化税制については、本ブログ記事「中小企業等経営強化法の認定が必要な設備投資税制」を参照して下さい。

中小企業等経営強化法の認定が必要な設備投資税制

 2017(平成29)年度税制改正によって、中小企業投資促進税制の上乗せ措置が改組され、新たに「中小企業経営強化税制」が創設されました。
 この中小企業経営強化税制をはじめ、2019(平成31)年3月31日までに取得した資産に適用される設備投資税制には以下のものがあります。

 ①中小企業投資促進税制
 ②中小企業経営強化税制
 ③固定資産税の特例
 ④商業・サービス業・農林水産業活性化税制

 上記のうち、中小企業等経営強化法の認定が必要な税制は②と③、認定がなくても活用できる税制は①と④です。
 前回は、認定がなくても活用できる①中小企業投資促進税制と④商業・サービス業・農林水産業活性化税制について述べました。今回は、認定が必要な②中小企業経営強化税制と③固定資産税の特例について述べていきます。

※ 2021(令和3)年度税制改正で、中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制の見直しが行われています。改正内容については、本ブログ記事「令和3年度改正後の中小企業投資促進税制」及び「令和3年度改正後の中小企業経営強化税制」をご参照ください。なお、(中小企業経営強化法による)固定資産税の特例と商業・サービス業・農林水産業活性化税制は、適用期限の到来をもって廃止されています。

1.中小企業経営強化税制

 まず、中小企業経営強化税制(中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除)について、その概略を記していきます。

(1) 制度概要

 青色申告書を提出する中小企業者等(従業員1,000人以下の個人事業主を含む)が、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき一定の新品設備を取得し指定事業の用に供した場合、即時償却又は10%の税額控除(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)を選択適用するこ とができます。

(2) 適用期間

 2017(平成29)年4月1日~2019(平成31)年3月31日に取得した資産

※2019(平成31)年度税制改正によって、適用期限が2021(平成33)年3月31日まで2年延長されることになりました。

(3) 指定事業

 中小企業投資促進税制の対象事業及び商業・サービス業・農林水産業活性化税制の対象事業

(4) 対象設備

 ① 生産性向上設備(A類型)・・・生産性が旧モデル比年平均1%以上向上する設備
 イ.機械及び装置・・・160万円以上(10年以内に販売開始)
  ロ.測定工具及び検査工具・・・30万円以上(5年以内に販売開始)
 ハ.器具備品・・・30万円以上(6年以内に販売開始)
 ニ.建物附属設備・・・60万円以上(14年以内に販売開始)
 ホ.ソフトウェア(情報を収集・分析・指示する機能)・・・70万円以上(5年以内に販売開始)

 ② 収益力強化設備(B類型)・・・投資利益率が年平均5%以上の投資計画に係る設備
 イ.機械及び装置・・・160万円以上
 ロ.工具・・・30万円以上
 ハ.器具備品・・・30万円以上
 ニ.建物附属設備・・・60万円以上
 ホ.ソフトウェア・・・70万円以上

※2019(平成31)年度税制改正によって、2分の1超の売電を見込む太陽光発電設備を対象設備から除外するとともに、売電を予定している場合には計画の申請時に一定の書類添付が義務付けられることとなりました。

(5) 確認者

 ① A類型・・・工業会等の証明
 ② B類型・・・経済産業局の確認
 なお、A類型・B類型ともにその業種を所轄する主務大臣に対し、中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定が必要です。

(6) 措置内容

 即時償却又は税額控除(取得価額×10%)
 税額控除額は、当期の法人税額の20%が上限です。
(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%の税額控除のみ)

(7) 留意事項

 中小企業経営強化税制は、適用できない業種(映画業を除く娯楽業、電気業、水道業、鉄道業、航空運輸業、銀行業等)があります。
 太陽光発電などのいわゆる売電は電気業に該当しますので、そのための設備は対象になりません。
 太陽光発電システム自体は対象設備ですので、自社工場用など売電ではないもの等については対象となります。
(太陽光発電設備の優遇税制については、本ブログ記事「中小企業等経営強化法に基づく太陽光発電設備の優遇税制について」を参照)

2.固定資産税の特例

 上記の中小企業経営強化税制と同じく、2017(平成29)年度税制改正により中小企業等経営強化法に係る固定資産税の特例も拡充され、従来は対象設備が機械装置に限定されていたのに対し、高効率の冷蔵陳列棚、省エネ空調等の器具備品、建物附属設備が対象設備に追加されました。
 以下では、固定資産税の特例(経営力向上計画に係る固定資産税の特例措置)について、その概略を記していきます。

(1) 制度概要

 青色申告書を提出する中小企業者等(従業員1,000人以下の個人事業主を含む)が、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき一定の新品設備を取得等した場合、固定資産税(償却資産税)が3年間にわたって2分の1に軽減されます。
 要件や手続きは中小企業経営強化税制のA類型とほぼ同じため、一緒に手続きをすることが可能です。

(2) 適用期間

 2016(平成28)年7月1日~2019(平成31)年3月31日に取得した資産

(3) 指定事業

 中小企業投資促進税制の対象事業及び商業・サービス業・農林水産業活性化税制の対象事業

(4) 対象設備

 生産性向上設備(A類型)・・・生産性が旧モデル比年平均1%以上向上する設備
 ① 機械及び装置・・・160万円以上(10年以内に販売開始)
 ② 測定工具及び検査工具・・・30万円以上(5年以内に販売開始)
 ③ 器具備品・・・30万円以上(6年以内に販売開始)
 ④ 建物附属設備・・・60万円以上(14年以内に販売開始)

 中小企業経営強化税制の対象設備であるソフトウェアは、固定資産税(償却資産税)の課税客体ではありません。

 2017(平成29)年度税制改正により対象に追加された設備(2017(平成29)年4月1日以降に取得した測定工具及び検査工具、器具備品、建物附属設備)については、対象地域・対象業種が一部限定されます。
 業種が限定される地域は、最低賃金が全国平均以上の7都府県(埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、京都、大 阪)です。上記以外の40道県においては全業種が対象です。
 機械装置については、引き続き全国・全業種で対象になります。

(5) 確認者

 工業会等の証明
 なお、その業種を所轄する主務大臣に対し、中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定が必要です。

(6) 措置内容

 固定資産税の課税標準が、3年間 2分の1に軽減。

(7) 留意事項

 2017(平成29)年度税制改正により対象に追加された設備(2017(平成29)年4月1日以降に取得した測定工具及び検査工具、器具備品、建物附属設備)については、対象地域・対象業種が一部限定されます。
 いわゆる売電用の太陽光発電システムも対象設備になります。

 なお、経営力向上計画に係る固定資産税の特例措置は、2019(平成31)年3月31日をもって終了します(期限の延長は行われません)。
 2019(平成31)年4月1日以降に取得等をした設備は、この特例措置の対象外となりますのでご注意ください。

※固定資産税の特例の廃止に伴い、2018(平成30)年度税制改正で創設された新固定資産税の特例については、本ブログ記事「生産性向上特別措置法による新固定資産税の特例」を参照してください。

中小企業等経営強化法の認定が不要の設備投資税制

 2017年度(平成29年度)税制改正によって、中小企業投資促進税制の上乗せ措置が改組され、新たに「中小企業経営強化税制」が創設されました。
 この中小企業経営強化税制をはじめ、2019年(平成31年)3月31日までに取得した資産に適用される設備投資税制には以下のものがあります。
 ①中小企業投資促進税制
 ②中小企業経営強化税制
 ③固定資産税の特例
 ④商業・サービス業・農林水産業活性化税制
 上記のうち、中小企業等経営強化法の認定が必要な税制は②と③、認定がなくても活用できる税制は①と④です。
 今回から2回に分けて、①~④の税制の概要を記していきます。今回は、認定がなくても活用できる①中小企業投資促進税制と④商業・サービス業・農林水産業活性化税制について述べていきます。

※ 2021(令和3)年度税制改正で、中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制の見直しが行われています。改正内容については、本ブログ記事「令和3年度改正後の中小企業投資促進税制」及び「令和3年度改正後の中小企業経営強化税制」をご参照ください。なお、固定資産税の特例と商業・サービス業・農林水産業活性化税制は、適用期限の到来をもって廃止されています。

1.中小企業投資促進税制

 まず、中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)について、その概略を記していきます。

※ 2021(令和3)年度税制改正で、中小企業投資促進税制に商業・サービス業・農林水産業活性化税制を盛り込む形で制度を一本化した上で、中小企業投資促進税制の適用期限が2023(令和5)年3月31日まで延長されました。改正内容等については、本ブログ記事「令和3年度改正後の中小企業投資促進税制」をご参照ください。

(1) 制度概要

 青色申告書を提出する中小企業者等(従業員数1,000人以下の個人事業主を含む)が、新品の機械装置等を取得等し指定事業の用に供した場合に、その指定事業の用に供した日を含む事業年度において、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除が選択適用できます。
 ただし、資本金3,000万円超1億円以下の法人は、税額控除の適用はありません。
 なお、従来の上乗せ措置(生産性向上設備等を取得した場合の即時償却又は10%(7%)税額控除)が改組されて、中小企業経営強化税制が創設されました。

(2) 適用期間

 1998年(平成10年)6月1日~2019年(平成31年)3月31日に取得した資産

※2019年度(平成31年度)税制改正によって、適用期限が2021年(平成33年)3月31日まで2年延長されることになりました。

(3) 指定事業

 製造業、建設業、農業、卸売業、小売業、サービス業等の一定の事業
不動産業、物品賃貸業、電気業、水道業、娯楽業(映画業を除く)、飲食店業のうち料亭・バー・キャバレー・ナイトクラブその他これらに類する事業、等は対象になりません。
 また、性風俗関連特殊営業に該当する事業も対象となりません。

(4) 対象設備

 ① 機械及び装置・・・1台160万円以上
 ② 測定工具及び検査工具・・・1台120万円以上、1台30万円以上かつ複数合計120万円以上
 ③ 一定のソフトウェア・・・一のソフトウェアが70万円以上、複数合計70万円以上
 ④ 貨物自動車(車両総重量3.5トン以上)
 ⑤ 内航船舶(取得価格の75%が対象)

(5) 措置内容

 特別償却(取得価額×30%)又は税額控除(取得価額×7%)
 税額控除額は、当期の法人税額の20%が上限です。
 (資本金3,000万円超1億円以下の法人は、税額控除の適用はありません)

(6) 留意事項

 中小企業等経営強化法の認定がなくても活用できます。

2.商業・サービス業・農林水産業活性化税制

 次に、商業・サービス業・農林水産業活性化税制(特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は税額控除)について、その概要を記していきます。

※ 2021(令和3)年度税制改正で、商業・サービス業・農林水産業活性化税制は適用期限の到来をもって廃止され、中小企業投資促進税制に一本化されました。改正内容等については、本ブログ記事「令和3年度改正後の中小企業投資促進税制」をご参照ください。

(1) 制度概要

 認定経営革新等支援機関等(認定を受けた税理士、公認会計士、商工会議所等)から経営改善に関する指導及び助言を受けた青色申告書を提出する中小企業者等(従業員数1,000人以下の個人事業主を含む)が、新品の経営改善に資する器具備品や建物附属設備を導入した場合に、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除が選択適用できます。
 なお、資本金3,000万円超1億円以下の法人は、税額控除の適用はありません。

(2) 適用期間

 2013年(平成25年)4月1日~2019年(平成31年)3月31日に取得した資産

※2019年度(平成31年度)税制改正によって、適用期限が2021年(平成33年)3月31日まで2年延長されることになりました。

(3) 指定事業

 卸売業、小売業、農林水産業、サービス業等
製造業、建設業、医療業、娯楽業(映画業を除く)、等は対象になりません。
 また、風俗営業法上の風俗営業に該当する料亭・バー・キャバレー・ナイトクラブその他これらに類する事業については、生活衛生同業組合の組合員が事業を行う場合に限り対象となります。
 なお、性風俗関連特殊営業に該当する事業については対象となりません。

(4) 対象設備

 ① 器具備品・・・1台の取得価額が30万円以上
 ② 建物附属設備・・・一の取得価額が60万円以上

(5) 確認者

 認定経営革新等支援機関等(認定を受けた税理士、公認会計士、商工会議所等)

※2019年度(平成31年度)税制改正で、経営改善設備の投資計画の実施を含む経営改善により、売上高又は営業利益の伸び率が年2%以上となる見込みであることについて認定経営革新等支援機関等の確認を受けることが適用要件に加わりました。
 この改正は、2019年(平成31年)4月1日以後に取得等をする経営改善設備に適用されます。
 なお、同日前に交付を受けた経営改善指導助言書類に係る経営改善設備のうち同年9月30日までに取得等をしたものについては、上記の確認を受けることを不要とする経過措置が講じられます。

(6) 措置内容

 特別償却(取得価額×30%)又は税額控除(取得価額×7%)
 税額控除額は、当期の法人税額の20%が上限です。
 (資本金3,000万円超1億円以下の法人は、税額控除の適用はありません)

(7) 留意事項

 中小企業等経営強化法の認定がなくても活用できます。

中小企業等経営強化法に基づく太陽光発電設備の優遇税制について

1.中小企業経営強化税制

(1) 全量売電の太陽光発電設備は対象外

 中小企業経営強化税制は、2017年(平成29年)4月1日から2019年(平成31年)3月31日までの期間に対象設備の取得等をして指定事業の用に供したときに、即時償却又は7%の税額控除(資本金3,000万円以下の法人又は個人事業主は10%の税額控除)が認められるというものです。

 この対象設備には太陽光発電設備も含まれますが、売電のみを目的とする場合(全量売電)は電気業に該当するため、中小企業経営強化税制の対象外となります。

 上述したように、中小企業経営強化税制は「指定事業」の用に供したときに認められるものです。
「指定事業」とは、具体的には、製造業、建設業、鉱業、卸売業、道路貨物運送業、倉庫業、港湾運送業、ガス業、小売業、料理店業その他の飲食店業、一般旅客自動車運送業、海洋運輸業及び沿海運輸業、内航船舶貸渡業、旅行業、こん包業、郵便業、損害保険代理業、情報通信業、学術研究、専門・技術サービス業、宿泊業、洗濯・理容・美容・浴場業、その他の生活関連サービス業、映画業、教育・学習支援業、医療、福祉業、協同組合、サービス業(廃棄物処理業、自動車整備業、機械等修理業、職業紹介・労働者派遣業、その他の事業サービス業)、農業、林業、漁業、水産養殖業、不動産業、物品賃貸業、広告業、社会保険・社会福祉・介護事業です。

 この「指定事業」に電気業は含まれていないため、全量売電型の太陽光発電設備は中小企業経営強化税制の対象にはなりません。
 ただし、発電した電気の一部をその指定事業に使用している場合(余剰売電)や自家消費の場合は、対象となります。

(2) 2019年度(平成31年度)税制改正の内容

 2019年度(平成31年度)税制改正で、中小企業経営強化税制については、特定経営力向上設備等の範囲の明確化及び適正化を行った上で、適用期限が2021年(平成33年)3月31日まで2年延長されることになりました。

「特定経営力向上設備等の範囲の明確化及び適正化」とは、具体的には、2分の1超の売電を見込む太陽光発電設備を対象設備から除外することを意味します。

 上記(1)でみたように、電気業は指定事業に含まれていないため全量売電を目的とした太陽光発電設備は中小企業経営強化税制の対象になりませんが、発電した電気の一部を指定事業に使用(例えば自社の製造工場で使用)し、余った電気を売電(余剰売電)する場合は対象となります。
 ところが、最近では、太陽光発電設備の敷地に自動販売機を設置し、そこにわずかな電気を使うことで形式的に指定事業に係る要件を満たすといった、制度趣旨に反するような事例がみられるようになったことから、2分の1超の売電を見込む設備については対象設備から除外されることとなりました。

 また、売電を予定している場合には、経営力向上計画の認定申請時に一定の書類(発電の用に供する設備の概要や当該設備による発電量等の見込みを記載)の添付が義務付けられました。

 以上の改正は2019年(平成31年)4月1日に施行される予定です。

 ※2019年(平成31年)3月16日記事更新 

2.固定資産税の特例

 一方、太陽光発電設備は、全量売電、余剰売電、自家消費を問わず、固定資産税の特例措置の適用対象となります。
  固定資産税の特例措置とは、2016年(平成28年)7月1日から2019年(平成31年)3月31日までの期間内に認定を受けた経営力向上計画に基づき対象となる機械装置を取得した場合、その翌年度から3年度分に限り、その機械装置に係る償却資産の課税標準が2分の1に軽減されるというものです(2017年(平成29年)4月1日から対象となる資産等が変更となっています)。

 この特例の適用を受けるためには、償却資産申告書に以下の書類を添付しなければなりません(大阪市の場合)。
 ①課税標準特例該当資産明細合計表
 ②工業会証明書
 ③経営力向上計画申請書の写し
 ④経営力向上計画認定書の写し

※この特例は2019年(平成31年)3月31日をもって終了します。期限の延長は行われません。
 2018年度(平成30年度)税制改正で創設された新固定資産税の特例については、本ブログ記事「生産性向上特別措置法による新固定資産税の特例」を参照してください。