セミナーや社内研修などで、外部から弁護士等を講師として招き、講演を依頼する企業も多いと思います。セミナー等を開催した企業は、その支払う講師料から所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しなければなりません。
源泉徴収の対象は、原則として消費税を含めた金額ですが、請求書等で報酬と消費税が明確に区分されている場合は、その報酬の額のみを源泉徴収の対象とすることができます。
例えば、弁護士に講師料54,000円(消費税4,000円を含む)を支払う場合、50,000円×10.21%=5,105円を源泉徴収し、講師には54,000円-5,105円=48,895円を渡します。
また、源泉徴収した企業は、その所得税及び復興特別所得税5,105円を、支払った月の翌月10日までに税務署に納めなければなりません。納期の特例の対象にはなりませんので、ご注意下さい。
カテゴリー: 所得税
退職所得の受給に関する申告書を提出した人が還付を受けるためにする確定申告
1.退職金支給時の源泉徴収
従業員の方に退職金を支給する場合には、その支給額から所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しなければなりません。
源泉徴収の方法は、退職する従業員の方から「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受けているかどうかにより異なります。
(1) 「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受けている場合
退職金の支給額から下記算式で計算した退職所得控除額を控除した残額を2分の1にした額(1,000円未満の端数は切り捨てます。)が課税退職所得金額となります。
① 勤続年数が20年以下の場合
勤続年数×40万円(80万円未満の場合には80万円)
② 勤続年数が20年超の場合
(勤続年数-20年)×70万円+800万円
上記算式において、長期欠勤や休職中の期間は勤続年数に含めますが、丙欄適用期間は除きます。また、勤続年数に1年未満の端数があるときは1年に切り上げます。さらに、障害者になったことに基因して退職した場合は、上記の金額に100万円を加算します。
ここで計算した課税退職所得金額に、「退職所得の源泉徴収税額の速算表」の「税額」欄の算式に従い計算した額が、源泉徴収する税額になります。
(2) 「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受けていない場合
退職金の支給額に20.42%の税率を乗じて計算した額を源泉徴収します。この場合、退職金を受給した従業員ご本人が確定申告をして、(1)と同様の計算を行い源泉徴収税額を精算することになります。
2.退職所得を確定申告して所得税の還付を受ける
上記1(1)のように、退職金の支給を受けた人で、その勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出した人については、源泉徴収だけで課税関係が完結し、退職所得に関しての確定申告は原則不要とされています。
しかし、「退職所得の受給に関する申告書」を提出した人でも、以下のように確定申告することによって所得税の還付を受けることができます。
(1) 控除しきれなかった所得控除額を退職所得から差し引くための確定申告
退職所得以外の所得の合計額が所得控除の合計額未満である場合には、控除しき
れなかった所得控除の額を退職所得の金額から差し引くことによって、所得税の還付を受けることができます。
例えば、給与所得が129万円、所得控除額が139万円の場合には、給与所得の金額から控除することができない所得控除額10万円(139万円―129万円)を退職所得の金額から差し引くことによって、所得税の還付を受けることができます。
(2) 退職所得で損益通算を受けるための確定申告
損益通算とは、不動産所得、事業所得、山林所得及び譲渡所得等の金額の計算上生じた損失の金額を、一定の順序に従い他の所得の金額から差し引くことをいいます。
退職所得は、国内の銀行預金の利子所得のような源泉分離課税とされている所得と違い、源泉徴収だけで課税関係が終わり確定申告できないものではありません。
その年に事業所得等の損失がある場合には、確定申告をして損益通算を受けることができます。
例えば、給与所得が129万円、事業所得の損失が139万円の場合には、事業所得の損失のうち給与所得の金額から引ききれない10万円が退職所得の金額から控除されます。
その結果、給与所得と退職所得につき源泉徴収された所得税の還付を受けることができます。
賃貸用不動産の取得に要した借入金を借り換えた場合の借入金利子の必要経費算入額
1.借入金利子の取扱い
賃貸用の不動産を取得するために要した借入金の利子は、その支払時期によって次のように取り扱います。
(1) 不動産賃貸業開始後で不動産使用後の場合は、必要経費に算入します。
(2) 不動産賃貸業開始後で不動産使用前の場合は、必要経費に算入するか不動産の取得価額に算入するか選択します(所得税基本通達37-27)。
(3) 不動産賃貸業開始前の場合は、不動産の取得価額に算入します。
上記(2)のようなケースもありますが、基本的には、借入金利子は業務開始前は取得価額に算入し、業務開始後は必要経費に算入します。
(借入金利子の取扱いについては、本ブログ記事「賃貸用不動産取得に要した借入金利子の必要経費算入と損益通算」を参照)
2.借り換えた場合の必要経費算入額
(1) 減額して借り換えた場合
賃貸用不動産を取得するために要した借入金を、返済中に借り換える場合があります。
この場合、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入する借入金利子の額はいくらにすればいいでしょうか?
所得税基本通達38-8の4では、次のように規定されています。
「固定資産を取得するために要した借入金を借り換えた場合には、借換え前の借入金の額(借換え時までの当該借入金に係る未払利子を含む。)と借換え後の借入金の額とのうちいずれか低い金額は、借換え後もその固定資産の取得資金に充てられたものとして取り扱う。」
例えば、借換え前(借換え時)の借入金の残高が500万円、借換え後の借入金の額が300万円だとしたら、低い金額の300万円を借換え後も固定資産の取得資金に充てられたものとします。
したがって、必要経費に算入する借入金利子も、借換え後の300万円に対する利子になります。
(2) 増額して借り換えた場合
上記(1)のように減額して借り換えた場合はわかりやすいのですが、増額して借り換えた場合は少し複雑です。
例えば、借換え前(借換え時)の借入金残高が500万円、借換え後の借入金の額が700万円だとしたら、低い金額の500万円を借換え後も固定資産の取得資金に充てられたものとします。ここまではわかります。
では、必要経費に算入する借入金利子はいくらにすればいいでしょうか?
旧借入金500万円の返済予定表に記載されている利子を、借換え後は支払っていないにもかかわらず、必要経費に算入するのでしょうか?
また、旧借入金の借換え時の残りの支払期間が5年で、新借入金の借換え後の支払期間が7年だとしたら、必要経費に算入できるのは5年だけということになるのでしょうか?
いろいろと考えだすとわからなくなってしまいましたので、税務署に聞いてみました。
回答は、「新借入金の利子を、借換え時の旧借入金残高と新借入金残高の比で按分して、旧借入金に対応する利子部分を必要経費に算入して下さい。」というものでした。
簡単な数値例によって、次のようなケースを想定してみます。
借換え前(旧借入金:年利率1.2%)
| 返済日 | 返済額 | 元金 | 利子 | 残高 |
|---|---|---|---|---|
| 1月25日 | 105,800円 | 100,000円 | 5,800円 | 5,700,000円 |
| 2月25日 | 105,700円 | 100,000円 | 5,700円 | 5,600,000円 |
| 3月25日 | 105,600円 | 100,000円 | 5,600円 | 5,500,000円 |
| 4月25日 | 105,500円 | 100,000円 | 5,500円 | 5,400,000円 |
| 5月25日 | 105,400円 | 100,000円 | 5,400円 | 5,300,000円 |
| 6月25日 | 105,300円 | 100,000円 | 5,300円 | 5,200,000円 |
| 7月25日 | 105,200円 | 100,000円 | 5,200円 | 5,100,000円 |
| 8月25日 | 105,100円 | 100,000円 | 5,100円 | 5,000,000円 |
| 合計 | 43,600円 |
借換え後(新借入金:年利率0.6%)
| 返済日 | 返済額 | 元金 | 利子 | 残高 |
|---|---|---|---|---|
| 7,000,000円 | ||||
| 9月20日 | 103,500円 | 100,000円 | 3,500円 | 6,900,000円 |
| 10月20日 | 103,450円 | 100,000円 | 3,450円 | 6,800,000円 |
| 11月20日 | 103,400円 | 100,000円 | 3,400円 | 6,700,000円 |
| 12月20日 | 103,350円 | 100,000円 | 3,350円 | 6,600,000円 |
| 合計 | 13,700円 |
このケースでは、必要経費に算入する借入金利子は次のようになります。
43,600円+13,700円×5,000,000円/7,000,000円≒53,385円
不動産の貸付けでも事業所得となる場合
不動産所得とは、不動産、不動産の上に存する権利、船舶又は航空機の貸付けによる所得をいいます。
不動産の貸付けによる所得は、事業として行われている場合でも事業所得とはならずに不動産所得となります。
一方で不動産の貸付けによる所得は、人的役務の提供が主になるものや事業に付随して行われるものについては、事業所得や雑所得に区分されるものもあります。
不動産の貸付けから生じる所得で、その所得区分を迷いやすい例を以下に挙げます。
1.不動産所得となるもの
(1) アパート、賃貸マンション、貸家、駐車場などの家賃収入
(2) 地上権、借地権などの貸付け、設定による収入(借地権等の設定のうち、一定金額以上の権利金を収入し た場合は、譲渡所得となります)
(3) 総トン数20トン以上の船舶の貸付収入
(4) 広告等のため、土地、家屋の屋上や側面などを使用させる場合の賃貸収入
2.事業所得又は雑所得となるもの
(1) ホテル、賄いつき下宿、時間貸し駐車場や自転車預り業の収入(事業又は雑)
(2) 従業員宿舎の収入(事業)
(3) 総トン数20トン未満の船舶の貸付収入(事業又は雑)
(4) 浴場業、飲食業における広告の掲示による収入(事業)
賃貸期間の経過に応じて返還しないこととなる敷金
1.不動産所得の収入計上時期
不動産を賃貸したことにより収受する地代・家賃、共益費などは、契約や慣習などにより支払日が定められている場合はその定められた支払日、支払日が定められていない場合は実際に支払を受けた日(ただし、請求があったときに支払うべきものと定められているものは、その請求の日)に不動産所得の収入金額に算入します。
また、不動産を賃貸することにより一時に受け取る権利金や礼金は、貸し付ける資産の引渡しを必要とするものは引渡しのあった日、引渡しを必要としないものについては、契約の効力発生の日に収入金額に算入します。
一方、敷金や保証金は本来は預り金ですから、受け取っても収入にはなりませんが、返還を要しないものは、返還を要しないことが確定した日にその金額を収入金額に算入する必要があります。
2.賃貸期間の経過に応じて返還しないこととなる敷金
不動産の賃貸の際に収受する敷金や保証金は、原則として退去時に借主に返還しますので、不動産所得の計算上その預かった年分の収入金額には算入しません。
しかし、敷金・保証金について、賃貸期間の経過に応じて返還しない金額が増加する定めとなっている場合は、その増加する部分の金額をそれぞれの年分の収入金額に算入する必要があります。
以下の具体例で、収入金額に算入する部分の金額を確認します。
(1) 賃貸借契約の内容
2019年(平成31年)3月6日に収受した敷金が400,000円で、敷金の返還条件が次の場合。
①1年以内に解約したときは、敷金の10%を返還しない
②2年以内に解約したときは、敷金の15%を返還しない
③2年を超えて解約したときは、敷金の20%を返還しない
(2) 収入金額に算入する部分の金額
①の場合
400,000円×10%(居住期間にかかわりなく返還しない割合を乗じます)=40,000円を、2019年(平成31年分)の収入金額に算入します。
②の場合
400,000円×(15%-10%)=20,000円を、2020年(平成32年分)の収入金額に算入します。
③の場合
400,000円×(20%-10%-5%)=20,000円を、2021年(平成33年分)の収入金額に算入します。
不動産所得の計算をするときは、敷金のすべてを預り金として処理する前に、敷金の返還条件を契約書で確認しておく必要があります。
日本フルハップの会費は法人と個人で経理処理が異なる!
1.法人と個人で異なる経理処理
2018年分(平成30年分)の確定申告から新規に関与先となった個人事業主の方から、前年の確定申告書を見せていただきました。前年まではその方のお父さんが確定申告(事業所得)をされていたのですが、ご高齢のため会計事務所に依頼したとのことでした。
確定申告書以外に出納帳等も見せていただいたのですが、ご自身が加入されている日本フルハップの会費の全額を必要経費に算入されていることに気づきました。
法人の場合は、会費(加入者1名につき月額1,500円)の全額を損金算入することができるのですが、個人事業の場合は、加入者が誰であるかにより経理処理が異なります。
2.会費の経理処理
日本フルハップの会費は指定の信用金庫の口座から自動振替されますが、その経理処理は以下のようになります。
(1) 法人事業所(振替口座は法人名義)の場合
→全額損金に計上します(勘定科目は「諸会費」等)
(2) 個人事業所(振替口座は事業主名義)の場合
① 事業主及び事業主と生計を一にする配偶者その他の親族が加入者の場合
→保険料相当部分(852円)は事業主個人の負担となり(勘定科目は「事業主貸」等)、保険料相当部分以外(648円)は必要経費に算入します(勘定科目は「諸会費」等)
② その他の加入者の場合
→全額必要経費に算入します(勘定科目は「諸会費」等)
なお、消費税については、法人・個人ともに同じ扱いになり、会費に消費税は含まれません(保険料相当部分は非課税、保険料相当部分以外は不課税)。
2013年(平成25年)4月以降の会費から、上記のように変わっていますので、ご注意ください。
上場株式等の配当の申告不要制度は損益通算時も適用可能
1.申告分離課税
2009年(平成21年)1月1日以後に支払を受けるべき上場株式等の配当所得については、総合課税に代えて申告分離課税により確定申告をすることができます。
申告分離課税を選択した場合の留意点は次の通りです。
(1) 総合課税を選択した場合は配当控除の適用がありますが、申告分離課税を選択した場合は配当控除を適用することができません。
(2) その年分に生じた上場株式等の譲渡損失の金額と損益通算ができます。
例えば、その年分のA株式の配当100とB株式の譲渡損失90を損益通算して、配当所得を10とすることができます。
(3) 前年以前3年以内に生じた上場株式等の譲渡損失を繰越控除することができます。
例えば、その年分の配当100と3年前に生じた譲渡損失90を損益通算して、その年分の配当所得を10とすることができます。
(4) 確定申告をする上場株式等の配当所得のすべてについて、総合課税と申告分離課税のいずれかを選択しなければなりません。
例えば、A株式は総合課税、B株式は申告分離課税という選択はできず、A・B株式ともに総合課税又はA・B株式ともに申告分離課税という選択をしなければなりません。
2.申告不要制度
上場株式等の配当については、確定申告をしないで20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)の税率による源泉徴収だけで課税関係を終了させることができます。
申告不要制度を選択した場合の留意点は次の通りです。
(1) 上記1.(4)にある通り、上場株式等の配当所得のすべてについて総合課税と申告分離課税のいずれかを選択しなければなりませんが、1銘柄1回に支払われる配当等ごとに申告不要の特例を適用し、上場株式等の配当所得に算入せずに申告することは可能です。
例えば、A・B株式ともに申告分離課税を選択している場合に、A株式の中間配当については申告分離課税で申告し、A株式の期末配当については申告不要とすることは可能です。
なお、特定口座(源泉徴収選択口座)内配当等について申告不要の特例を適用する場合には、特定口座単位で行うことになります。
(2) 上記1.(2)(3)の損益通算の適用を受けるために確定申告書を提出する場合にも、申告不要の特例を適用することができます。
例えば、A株式の配当60、B株式の配当40、C株式の譲渡損失90を損益通算して、60+40-90=10をその年分の配当所得とすることもできますし、B株式の配当40を申告しないで60-90=△30の譲渡損失を翌年に繰り越すこともできます(この場合、A株式の配当は0となり、その年分の配当所得は0となります)。
固定資産税の前納報奨金と還付金の処理
1.固定資産税の前納報奨金の所得区分は?
固定資産税は、通常年4回(原則として4月、7月、12月、2月ですが、市町村によって若干異なります)に分けて納付することになっていますが、第1回目の納期に全期分を前納した場合には、市税に未納がないことなどを条件に、年税額から前納報奨金を差し引いて納付することができます。
この前納報奨金は所得になるのですが、その所得区分は、固定資産税の課税客体である固定資産の用途によって異なりますので、注意が必要です。
事業用固定資産に係る固定資産税は必要経費となりますので、その前納報奨金は事業所得の収入金額になります。
一方、業務用以外の固定資産に係る前納報奨金は、利息としての性格もなくその他の対価性もないため、一時所得となります。
2.過去の年分で必要経費に算入した固定資産税の還付を受けた場合
土地・家屋(建物)の評価・課税誤りによって固定資産税を納め過ぎた場合に、その過徴収金が遡って還付される場合があります。
固定資産税は不動産所得の計算上必要経費に算入されますが、過去の年分で必要経費に算入していた固定資産税が還付された場合は、貸付の規模によって処理が異なります。
貸付の規模が業務的規模の場合には、過去において過大計上していた租税公課を減額する修正申告の手続きが必要となります。
貸付の規模が事業的規模の場合には、その還付された年分の収入金額に算入します。
再居住した場合の住宅借入金等特別控除
1.再居住した場合の適用要件
住宅借入金等特別控除の適用を受けていた方が、2003年(平成15年)4月1日以降に転任命令に伴う転居等により控除が受けられなくなった後、その家屋に再び居住した場合は、次の要件を満たすことにより再居住年以後の年について、住宅借入金等特別控除の適用を受けることができます。
(1) 転居の事由等
勤務先からの転任の命令に伴う転居、その他これに準ずるやむを得ない事由により、その家屋を居住の用に供さなくなったこと
(2) 居住の用に供さなくなる日までに必要な手続
「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」、未使用の「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」、「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」を所轄税務署に提出
(3) 再適用をする最初の年分の必要書類
「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書(再び居住の用に供した方用」、「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」、「住民票の写し」
(4) 再適用の制限
再び居住の用に供した日の属する年に、その家屋を賃貸の用に供していた場合には、翌年以後の年についてこの特例の再適用が可能
2.再居住した場合の留意点
したがって、例えば転地療養のため、家族全員で一時実家に移り住んだ場合には、「再居住の場合の再適用の特例」は受けられません。
転地療養は、勤務先からの転任命令のような外的要因ではなく個人的事情であるため、上記要件の「やむを得ない事由」に該当しないからです。
また、転勤が解消し再居住した年に賃貸していた場合に、年末時点では居住しているとして控除を受けることはできません。控除は翌年からとなりますので、ご注意ください。
住宅借入金等特別控除における連帯債務の注意点
住宅借入金等特別控除を受けるためには、金融機関が発行した「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」が必要ですが、この残高証明書の摘要欄に連帯債務者が記載されている場合があります。
住宅取得資金に係る借入金が、給与の支払を受ける人と配偶者又はその他の親族との連帯債務になっている場合は、家屋と土地の共有持分割合又は建物と土地の共有者による資金の負担割合で、連帯債務になっている住宅借入金の年末残高を按分計算することになります。
ただし、家屋と土地が単独で所有されている場合など、按分計算が不要の人もいますので注意してください。
具体的には、以下のようになります(住宅取得資金を2,000万円とします)。
(1) 共有持分割合で按分計算する場合
住宅の持分が夫2分の1、妻2分の1で、住宅取得資金をすべて連帯債務の借入金で賄っているときは、夫と妻の借入金年末残高は、それぞれ2,000万円×1/2=1,000万円となります。
(2) 按分計算が不要の場合
住宅をすべて夫が所有し(夫の持分1、妻の持分0)、住宅取得資金をすべて連帯債務の借入金で賄っているときは、連帯債務の全額である2,000万円が夫の残高となります。
(3) 資金の負担割合で按分計算する場合
住宅の持分が夫2分の1、妻2分の1で、住宅取得資金2,000万円のうち500万円(4分の1)を妻の自己資金、残りの1,500万円(4分の3)を連帯債務の借入金で賄っているときは、次のようになります。
夫の残高:2,000万円×1/2=1,000万円
妻の残高:2,000万円×1/2-500万円=500万円
割合で示すと、夫の残高:妻の残高=2:1となります。
夫の残高:3/4×1/2=3/8=6/16
妻の残高:3/4×(1/2-1/4)=3/16