賃貸用不動産の取得に要した借入金を借り換えた場合の借入金利子の必要経費算入額

1.借入金利子の取扱い

 賃貸用の不動産を取得するために要した借入金の利子は、その支払時期によって次のように取り扱います。

(1) 不動産賃貸業開始後で不動産使用後の場合は、必要経費に算入します。
(2) 不動産賃貸業開始後で不動産使用前の場合は、必要経費に算入するか不動産の取得価額に算入するか選択します(所得税基本通達37-27)。
(3) 不動産賃貸業開始前の場合は、不動産の取得価額に算入します。

 上記(2)のようなケースもありますが、基本的には、借入金利子は業務開始前は取得価額に算入し、業務開始後は必要経費に算入します。
(借入金利子の取扱いについては、本ブログ記事「賃貸用不動産取得に要した借入金利子の必要経費算入と損益通算」を参照)

2.借り換えた場合の必要経費算入額

(1) 減額して借り換えた場合

 賃貸用不動産を取得するために要した借入金を、返済中に借り換える場合があります。
 この場合、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入する借入金利子の額はいくらにすればいいでしょうか?

 所得税基本通達38-8の4では、次のように規定されています。

 「固定資産を取得するために要した借入金を借り換えた場合には、借換え前の借入金の額(借換え時までの当該借入金に係る未払利子を含む。)と借換え後の借入金の額とのうちいずれか低い金額は、借換え後もその固定資産の取得資金に充てられたものとして取り扱う。」

 例えば、借換え前(借換え時)の借入金の残高が500万円、借換え後の借入金の額が300万円だとしたら、低い金額の300万円を借換え後も固定資産の取得資金に充てられたものとします。
 したがって、必要経費に算入する借入金利子も、借換え後の300万円に対する利子になります。

(2) 増額して借り換えた場合

 上記(1)のように減額して借り換えた場合はわかりやすいのですが、増額して借り換えた場合は少し複雑です。
 例えば、借換え前(借換え時)の借入金残高が500万円、借換え後の借入金の額が700万円だとしたら、低い金額の500万円を借換え後も固定資産の取得資金に充てられたものとします。ここまではわかります。

 では、必要経費に算入する借入金利子はいくらにすればいいでしょうか?
 旧借入金500万円の返済予定表に記載されている利子を、借換え後は支払っていないにもかかわらず、必要経費に算入するのでしょうか?
 また、旧借入金の借換え時の残りの支払期間が5年で、新借入金の借換え後の支払期間が7年だとしたら、必要経費に算入できるのは5年だけということになるのでしょうか?

 いろいろと考えだすとわからなくなってしまいましたので、税務署に聞いてみました。
 回答は、「新借入金の利子を、借換え時の旧借入金残高と新借入金残高の比で按分して、旧借入金に対応する利子部分を必要経費に算入して下さい。」というものでした。

 簡単な数値例によって、次のようなケースを想定してみます。

借換え前(旧借入金:年利率1.2%)

返済日 返済額 元金 利子 残高
1月25日 105,800円 100,000円 5,800円 5,700,000円
2月25日 105,700円 100,000円 5,700円 5,600,000円
3月25日 105,600円 100,000円 5,600円 5,500,000円
4月25日 105,500円 100,000円 5,500円 5,400,000円
5月25日 105,400円 100,000円 5,400円 5,300,000円
6月25日 105,300円 100,000円 5,300円 5,200,000円
7月25日 105,200円 100,000円 5,200円 5,100,000円
8月25日 105,100円 100,000円 5,100円 5,000,000円
合計     43,600円  


借換え後(新借入金:年利率0.6%)

返済日 返済額 元金 利子 残高
        7,000,000円
9月20日 103,500円 100,000円 3,500円 6,900,000円
10月20日 103,450円 100,000円 3,450円 6,800,000円
11月20日 103,400円 100,000円 3,400円 6,700,000円
12月20日 103,350円 100,000円 3,350円 6,600,000円
合計     13,700円  

 このケースでは、必要経費に算入する借入金利子は次のようになります。

 43,600円+13,700円×5,000,000円/7,000,000円≒53,385円