「事前確定届出給与に関する届出書」等の書き方と記載例

 従来は臨時的ないわゆる役員賞与については損金算入が認められていませんでしたが、事前確定届出給与の制度を利用すれば、臨時的な給与(賞与)であっても一定の要件を満たせば損金算入が可能です。
 この制度を利用するには、納税地の所轄税務署長に対して、あらかじめ確定している支給時期・支給金額のほか、必要事項を記載した届出書等を届出期限までに提出しなければなりません。 
 以下では、3月決算法人が2023(令和5)年5月27日に定時株主総会を開催し、それに基づく事前確定届出給与に関する届出を2023(令和5)年6月7日に届け出た場合の「事前確定届出給与に関する届出書」と「付表1(事前確定届出給与等の状況(金銭交付用))」について、書き方と記載例を確認します。

1.「事前確定届出給与に関する届出書」の書き方と記載例

 以下において、「事前確定届出給与に関する届出書」の主な項目について書き方を確認します。その他の項目については、上図の記載例をご参照ください。

(1)「①事前確定届出給与に係る株主総会等の決議をした日及びその決議をした機関等」欄は、「株主総会」や「取締役会」など事前確定届出給与に関する決議をした機関名と決議日を記入します。
 今回の例では、「決議をした日」が2023(令和5)年5月27日、「決議をした機関等」が株主総会となります。

(2)「②事前確定届出給与に係る職務の執行を開始する日」欄は、一般的に役員給与は定時株主総会から次の定時株主総会までの間の職務執行の対価であると考えられるため、定時株主総会開催日を記入します。
 今回の例では、2023(令和5)年5月27日となります。

※ 事前確定届出給与対象者のうちその職務の執行を開始する日が異なる者がいる場合には、この欄の余白部分に、例えば「一部役員については令和○年○月○日」等と記載します。

(3)「届出期限」欄の「①又は②に記載した日のうちいずれか早い日から1月を経過する日」は、①又は②の翌日を起算日として暦に従って計算します。
 今回の例では、①②ともに5月27日ですので、その翌日の5月28日が起算日となり6月27日が「1月を経過する日」になります。

(4)「届出期限」欄の「会計期間4月経過日等」は、会計期間開始の日から4月を経過する日を記入します。
 今回の例では、会計期間開始日が2023(令和5)年4月1日ですので2023(令和5)年7月31日となります。

(5) 以上より、届出期限は(3)と(4)のうちいずれか早い日となりますので、今回の例では、2023(令和5)年6月27日が届出期限となります。

(注)定期給与を受けていない者に対して、株主総会等で決議した「所定の時期に確定した額の金銭等を交付する旨の定め」に基づいて継続して毎年支給する給与、例えば、非常勤役員に対して四半期ごとに支給する給与についても、この届出が必要となります。
 ただし、同族会社に該当しない法人が、定期給与を支給しない役員に対して支給する給与で金銭によるものについては、この届出は必要ありません。
 詳細については、本ブログ記事「届出不要の事前確定届出給与とは?」をご参照ください。

2.「付表1(事前確定届出給与等の状況(金銭交付用))」の書き方と記載例

 この付表は、「所定の時期に確定した額の金銭を交付する旨の定め」に基づき支給する給与について届け出る場合に、「事前確定届出給与に関する届出書」に添付するものです。
 以下において、「付表1(事前確定届出給与等の状況(金銭交付用))」の主な項目について書き方を確認します。その他の項目については、上図の記載例をご参照ください。

(1) 「事前確定届出給与に係る職務の執行の開始の日(職務執行期間)」欄には、「所定の時期に確定した額の金銭等を交付する旨の定め」に係る職務の執行の開始の日(定時株主総会の開催日など)及び職務執行期間(定時株主総会の開催日から次の定時株主総会の開催日までの期間など)を記載します。

(2) 「当該事業年度」欄には、この届出をする事業年度を記載します。

(3) 用紙左側の「事前確定届出給与に関する事項」の「支給時期(年月日)」欄及び「支給額(円)」欄には、次のように記載します。

① 「区分」欄の「届出額」欄は、前回以前の届出において届け出た事前確定届出給与の支給時期及び支給額について記載します。

② 「区分」欄の「支給額」欄は、①の事前確定届出給与の実際の支給時期及び支給額について記載します。

③ 「区分」欄の「今回の届出額」欄は、今回の届出において届け出る事前確定届出給与について、届出の時において予定されている支給時期及び支給額について記載します。
 「今回の届出額」欄の記載例では、「令和5年12月5日に900,000円を支給する」こととしている事前確定届出給与について記載しています。

(4) 用紙右側の「事前確定届出給与以外の給与に関する事項」の「支給時期(年月日)」欄及び「支給額(円)」欄には、事前確定届出給与対象者に対して支給した、又は支給しようとする事前確定届出給与以外の給与について、届出の時において予定されている支給時期及び支給額を記載します。

 なお、事前確定届出給与に関する届出はしたけれど実際には支給しなかった場合の手続き等については、本ブログ記事「事前確定届出給与を支給しなかった場合のリスクを回避するための手続き」をご参照ください。


平均調達金利と貸付金利息の計算方法

1.給与課税されない場合

 会社が役員又は従業員に対して金銭を貸し付けた場合には、収受すべき利息の額が適正か否かが問題となります。
 その貸付が無償又は通常の利率よりも低い利率で行われた場合は、通常収受すべき利率により計算した利息の額と実際に収受した利息の額との差額が、役員又は従業員に対する給与として所得税が課税されます。
 しかし、無償又は通常の利率よりも低い利率で行われた貸付けであっても、以下の場合には給与として課税されないことになっています(参考:国税庁ホームページ「金銭を貸し付けたとき」)。

(1) 災害や病気などで臨時に多額の生活資金が必要となった役員または使用人に、その資金に充てるため、合理的と認められる金額や返済期間で金銭を貸し付ける場合
(2) 会社における借入金の平均調達金利など合理的と認められる貸付利率を定め、この利率によって役員または使用人に対して金銭を貸し付ける場合
(3) 上記(1)および(2)以外の貸付金の場合で、「役員または使用人に貸し付けた金銭の利息について」の利率により計算した利息の額と実際に支払う利息の額との差額が1年間で5,000円以下である場合

 ここで、上記(2)の平均調達金利とは、いかなるものをいうのでしょうか?以下において、その計算方法をみていきます。

2.平均調達金利の計算方法

 平均調達金利とは、会社が貸付けを行った日の前事業年度中における借入金の平均残高に占める前事業年度中に支払うべき利息の額の割合など合理的に計算された利率をいいます。

 平均調達金利=前事業年度中に支払うべき利息の額÷前事業年度中における借入金の平均残高

 上記算式において、支払利息の額については前事業年度の損益計算書を見ればすぐにわかりますが、借入金の平均残高については別途計算が必要です。
 平均残高の計算方法は、原則としては加重平均により求めますが、実務的には次のように単純平均により簡便に求めても差し支えありません。

 借入金の平均残高=各月の借入金残高年間合計額÷事業年度の月数

 例えば、3月決算法人の前事業年度の借入金残高が、次のように推移していたとします(単位:円)。

前期 借入金Aの残高 借入金Bの残高 AとBの合計残高
4月末 60,800,000 41,985,000 102,785,000
5月末 78,990,000 41,770,000 120,760,000
6月末 70,902,000 78,225,000 149,127,000
7月末 69,884,000 75,170,000 145,054,000
8月末 69,361,000 74,995,000 144,316,000
9月末 36,271,000 74,740,000 144,011,000
10月末 60,315,000 72,525,000 132,840,000
11月末 42,792,000 74,310,000 117,102,000
12月末 27,502,000 74,095,000 101,597,000
1月末 43,746,000 73,880,000 117,626,000
2月末 56,656,000 73,665,000 130,321,000
3月末 50,056,000 64,594,000 114,650,000
合計 700,275,000 819,914,000 1,520,189,000

 この場合、借入金の各月末残高の年間合計額は1,520,189,000円になります。これを前事業年度の月数12か月で割って、借入金の平均残高126,682,417円を求めます。

 借入金の平均残高=1,520,189,000円÷12か月=126,682,417円

 次に、前事業年度の損益計算書の支払利息の額が1,713,560円だとすると、これを平均残高126,682,417円で割って、平均調達金利1.35%を求めます。

 平均調達金利=1,713,560円÷126,682,417円×100=1.35%

3.貸付金利息の計算方法

 平均調達金利の計算ができたら、貸付金利息の計算をします。貸付金利息は、例えば次のように計算します。

 各月の貸付金利息=各月の貸付金残高×平均調達金利÷12

 例えば、3月決算法人の役員に対する当期の貸付金残高が下表のように推移していたとします(単位:円)。
 この場合、4月末の貸付金利息は次のように計算します。

 4月末の貸付金利息=600,000円×1.35%÷12=675円

 この計算を3月末まで行い、各月末の貸付金利息の合計額18,379円が年間の貸付金利息となります。

当期 貸付金残高 貸付金利息
4月末 600,000 675
5月末 850,000 956
6月末 850,000 956
7月末 1,130,000 1,271
8月末 1,480,000 1,665
9月末 1,180,000 1,327
10月末 1,150,000 1,293
11月末 1,450,000 1,631
12月末 1,750,000 1,968
1月末 1,800,000 2,025
2月末 2,050,000 2,306
3月末 2,050,000 2,306
合計 18,379

 また、次のような方法で貸付金利息を計算することもできます。

 年間貸付金利息=(期首貸付金残高+期末貸付金残高)÷2×その期の借入金平均利率

 上記の例で期首の貸付金残高が300,000円だとすると、貸付金利息は次のようになります。

 年間貸付金利息=(300,000円+2,050,000円)÷2×1.35%=15,862円

 計算方法によって貸付金利息の計算結果も変わりますが、いずれも実務上よく使われる計算方法であり、その計算結果も合理的なものと認められます。

繰延資産の任意償却はいつまで可能か?

 繰延資産の償却方法に任意償却という方法があります。法人でも個人でもこの任意償却により繰延資産を償却することができますが、すべての繰延資産に任意償却が適用できるわけではありません。
 また、任意償却による場合に何年以内に償却をしなければならないか、償却期間の途中で均等償却から任意償却に変更できるのか、ということも気になります。
 今回は、任意償却のこれらの点について確認します。

1.会計上の繰延資産と税法上の繰延資産

 繰延資産とは、支出した費用でその支出の効果が1年以上に及ぶものをいいます。
 繰延資産には、旧商法上の繰延資産(以下「会計上の繰延資産」といいます)と法人税法施行令14条6号資産(以下「税法上の繰延資産」といいます)があります。
 また、所得税法施行令7条にも会計上の繰延資産と税法上の繰延資産が例示されています。
 法人税と所得税で異なるのは、所得税における会計上の繰延資産には、法人に関するもの(創立費、株式交付費、社債等発行費)がない点です。

 法人税法における会計上の繰延資産と税法上の繰延資産の範囲は、以下のとおりです。

法人税法上の繰延資産 会計上の繰延資産 創立費、開業費、開発費、株式交付費、社債等発行費

税法上の繰延資産

(長期前払費用等)

施設の負担金 公共的施設(道路、堤防、護岸など)
共同的施設(会館、アーケードなど)
資産賃借のための権利金等 建物賃借のための権利金
電子計算機等の賃借に伴う費用
役務の提供を受けるための権利金等 ノウハウの頭金
広告宣伝用資産の贈与費用 看板、ネオン、どん帳など
その他 同業者団体の加入金など

 所得税法における会計上の繰延資産と税法上の繰延資産の範囲は、以下のとおりです。

所得税法上の繰延資産 会計上の繰延資産 開業費、開発費

税法上の繰延資産

(長期前払費用等)

施設の負担金 公共的施設(道路、堤防、護岸など)
共同的施設(会館、アーケードなど)
資産賃借のための権利金等 建物賃借のための権利金
電子計算機等の賃借に伴う費用
役務の提供を受けるための権利金等 ノウハウの頭金
広告宣伝用資産の贈与費用 看板、ネオン、どん帳など
その他 同業者団体の加入金など

2.会計上の繰延資産は任意償却が可能

 繰延資産は、収益との対応関係を考慮して、その支出した費用を原則として償却を通じてその効果の及ぶ期間ににわたって費用配分します。
 ただし、会計上の繰延資産については、均等償却だけではなく任意償却の方法によることもできます。
 任意償却とは、繰延資産の額の範囲内の金額を償却費として認めるもので、その下限が設けられていないことから、支出した年に全額償却してもよく、全く償却しなくてもよいという方法です。
 例えば、開業費(開業準備のために支出した広告宣伝費など)の償却期間は5年とされていますので、その支出した費用を原則として60か月で均等償却(月割償却)することになります。
 一方、任意償却の場合は、その支出した費用を支出した年に全額償却(一時償却)してもよく、全く償却しない(償却額0円)こともできます。
 利益が出ているのなら全額償却することも可能ですし、また、利益が出ていないのであれば、利益が出るまで償却しないことも可能です。

3.任意償却に償却期間の制限はあるか?

 ここで気になるのが、任意償却の場合、何年以内に償却をしなければならないかということです。
 例えば、開業費を均等償却する場合は、その償却期間は5年とされていますが、任意償却による場合も5年以内に償却しなければならないのでしょうか?
 結論を先に述べると、任意償却が可能な会計上の繰延資産の未償却残高は、いつでも償却費として損金算入または必要経費に算入することができます。
 繰延資産となる費用(例えば開業費)を支出した後5年を経過した場合に、償却費を損金算入または必要経費に算入できないとする特段の規定はないことから、繰延資産の未償却残高はいつでも償却費として損金算入または必要経費に算入することができます。
 つまり、何年以内に償却しなければならないというような償却期間の制限はなく、償却期間経過後であっても未償却残高がなくなるまで任意償却することができます。
 なお、会計上の繰延資産(例えば開業費)については、支出した年において5年間で均等償却する方法を選択した場合でも、2年目以降にその未償却残高を任意償却することができます。

法人成りにおける個人と法人の税務上の取扱い

 個人事業主が既存事業を法人化することを、法人成りといいます。法人成りの際には、個人事業主時代の棚卸資産や固定資産等を法人に引き継ぐことがあります。
 主な引き継ぎ方法には現物出資と売却がありますが、一般的には売却によることが多いと思われます。
 そこで、以下では、法人成りに際して個人から法人へ棚卸資産や固定資産を売却した場合の税務上の取扱いについて確認します。

1.個人から法人へ棚卸資産を売却した場合

 個人事業主が棚卸資産(商品や原材料など)を法人へ売却した場合は、所得税における所得区分は事業所得になります。したがって、個人の確定申告では、通常の売上に加えて法人成りの際の法人への売上も計上しなければなりません。
 また、棚卸資産が課税資産の場合は消費税における課税区分は課税売上に該当しますが、非課税資産(例えば、不動産販売業における土地など)の場合は非課税売上に該当します。
 一方、個人から棚卸資産を購入した法人は、その棚卸資産を仕入(商品)として計上します。

2.個人から法人へ減価償却資産を売却した場合

 個人事業主が減価償却資産(建物附属設備、車両運搬具、備品など)を法人へ売却した場合は、所得税法における所得区分は譲渡所得(総合課税)になります。
 また、課税資産の場合は消費税における課税区分は課税売上に該当しますが、非課税資産(例えば、介護タクシー事業における福祉車両など)の場合は非課税売上に該当します。
 一方、個人から減価償却資産を購入した法人は、その減価償却資産を有形固定資産として計上し、中古資産の取得として見積法又は簡便法による耐用年数で減価償却を行います(中古資産の耐用年数によらずに、法定耐用年数で減価償却することもできます)。
 ただし、取得価額が30万円未満の少額減価償却資産については、損金経理を要件として全額を損金算入することができます(青色申告を行う中小企業者)。

※ 車椅子のまま車に乗るタイプであれば消費税は非課税ですが、助手席や後部座席が回転・昇降するタイプは、消費税の課税対象となります。

3.個人から法人へ事業用建物・土地を売却した場合

 個人事業主が事業用の建物や土地を法人へ売却した場合は、所得税法における所得区分は譲渡所得(分離課税)になります。
 また、建物(課税資産)の場合は消費税における課税区分は課税売上に該当しますが、土地(非課税資産)の場合は非課税売上に該当します。
 一方、個人から建物や土地を購入した法人は、その建物や土地を有形固定資産として計上し、建物については中古資産の取得として見積法又は簡便法による耐用年数で減価償却を行います(中古資産の耐用年数によらずに、法定耐用年数で減価償却することもできます)。
 仮に、建物の取得価額が30万円未満だった場合は、損金経理を要件として全額を損金算入することができます(青色申告を行う中小企業者)。
 なお、土地は非減価償却資産であるため、減価償却は行いません。

会社・役員間において賃貸物件の原状回復(内部造作の撤去)をしない場合の課税関係

 会社とその役員との間で、建物の賃貸借取引を行う場合があります。例えば、役員所有の建物に、会社が内装工事を行って本店や営業所として賃借する場合などです。
 この賃貸借契約が終了するにあたり、会社が入居時に行った内装工事(内部造作)を撤去せずにそのままの状態で退去する場合があります。
 この場合の会社側の会計処理として、内装工事の簿価(未償却残高)を固定資産除却損として費用計上することが考えられますが、税務上は気をつけなければならないことがあります。
 以下では、会社が原状回復(内部造作の撤去)をせずに賃貸物件を退去する場合の、会社と役員双方の課税関係について確認します。

1.概要

 不動産販売業を営むA社は、社長のB氏が法人成りしてできた会社です。法人成りの際に、B氏の自宅を増築(B氏が費用負担)し、そこに内装工事(A社が費用負担)を行って本店兼営業所として使用していましたが、この度、B氏個人が新たに建築した建物をA社の新社屋(本店兼営業所)として使用することになり、登記も済ませました。
 A社では法人成りの際の内装工事代350万円を建物勘定で資産計上しており、当期首の簿価(未償却残高)は260万円となっています。

 本店移転に伴って、旧本店(B氏自宅の増築部分)は廃止し営業所(支店)としても使用しません。宅建業法では営業所に専任の宅建資格者(宅地建物取引士)を設置しなければなりませんが、A社には宅建資格者がB氏1名しかいませんので、旧本店を営業所(支店)として使用することはできません(B氏は新社屋の専任資格者になります)。

 したがって、旧本店を今後事業の用に供することはありませんが、内装はそのままにしています。内装工事の内容は、床を土足仕様にしたり、営業所の入口としてガラス扉を設けたりしたことが主なものです。
 なお、旧本店を事業の用に供することはありませんが、そのままの内装の状態でB氏の自宅として使う可能性はあります(例えば、子供の勉強部屋など)。

 また、これまでA社からB氏に旧本店の家賃を支払っていましたが、新社屋への移転に伴って旧本店との賃貸借契約を解除し、新社屋の家賃をA社からB氏に支払う賃貸借契約を新たに結びました。
 どちらの契約もA社に原状回復義務があり、B氏に造作等の買取義務はありませんが、旧本店との賃貸借契約を解除するにあたって、A社においては内装の撤去工事の費用を節約できること及び撤去工事をしても廃材の売却収入が見込めないこと、B氏においては現状でも自宅として使用可能であることから、内装はそのままにしています。

2.旧本店の内部造作の処理と課税関係

 このような状況の下で、A社で資産計上されている建物:内装工事(期首簿価260万円)の処理方法と、それぞれの場合におけるA社とB氏の課税関係は、次のように考えられます。

(1) A社からB氏へ無償譲渡(賃貸借契約解除時に除却)

 この場合のA社の会計上の仕訳は、次のようになります。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
減価償却費 17万円 建物 260万円
固定資産除却損 243万円    

 これに対して、税務上の仕訳は次のようになります。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
減価償却費 17万円 建物 260万円
建物譲渡原価 243万円    
寄附金 243万円 建物譲渡収益 243万円

 減価償却費17万円は、期首から賃貸借契約解除時までの月割額です。A社が内部造作を放棄してそのままの状態で退去するということは、A社からB氏へ内部造作の無償譲渡が行われたということです。このとき、A社では建物の簿価243万円を固定資産除却損として会計処理しています。

 ところが、税務上は、有償譲渡だけではなく無償譲渡に係る収益も益金の額に算入することになります(法人税法第22条第2項)。 つまり、資産の無償譲渡が行われた場合には、原則としてその資産の時価で譲渡されたものとみなされます。
 また、その資産の時価と譲渡対価の額との差額のうち実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額は、寄附金の額に含まれるものとされます(法人税法第37条第8項)。
 したがって、会計上は固定資産除却損を計上していたとしても、税務上は寄附金とみなされ、寄附金とみなされた金額のうち損金不算入部分の金額は課税されます。
 ただし、固定資産除却損は、第三者間の取引であれば造作を放棄する合理的な理由(撤去費用を負担せずにすむ)がある場合(※)は、その無償譲渡は贈与等には該当せず寄附金課税されないと解されています(税務通信3434号)。
 
※ 第三者間取引でも、造作を取り壊すより放棄した方がコストが低いような場合(撤去費用が廃材売却収入より多くかかる場合)は合理的な理由と認められますが、そうでない場合(撤去費用を上回る廃材売却収入がある場合)は寄附金課税されると考えられます。

 A社の無償譲渡が第三者との取引であれば、固定資産除却損は税務上も損金算入されると考えられますので、課税上の特段の問題は生じません。
 しかし、今回のA社の無償譲渡は役員B氏との取引であるため、税務上は次のように考える必要があります。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
減価償却費 17万円 建物 260万円
建物譲渡原価 243万円    
役員給与 243万円 建物譲渡収益 243万円

 会計上は固定資産除却損を計上していたとしても、税務上は損金不算入の役員給与とみなされます。
 したがって、A社については、固定資産除却損243万円が損金不算入とされ法人税等が課税されます。また、役員給与243万円に対して、所得税の源泉徴収が必要になります。

 一方、B氏については、受贈益課税されます。すなわち、契約上は原状回復義務がA社にあるにもかかわらずそれを免除したということは、B氏にとって価値ある資産を譲り受けたものとして捉えられますので、役員給与として受贈益課税されると考えられます。
 したがって、B氏については、役員給与243万円に対して所得税の負担が生じます。

(2) A社からB氏へ有償譲渡(賃貸借契約解除時に売却)

 この場合のA社の会計処理は、次のようになります。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
減価償却費 17万円 建物 260万円
現金預金 243万円    

 時価の算定が困難であることから、売却時点の簿価243万円を時価としています(※)。
 この場合、A社においては税務上も売却損益は生じないため、特段の課税関係は生じないと考えられます。
 ただし、A社が消費税の課税事業者である場合は、243万円の課税売上が発生します(上記(1)の場合も同じ)。

※ 時価には再調達価額や売却可能価額などがありますが、時価を見積もるのが困難な場合は基本的には簿価を時価とするのが一般的です。

 一方、B氏においても、特段の課税関係は生じません。

(3) まとめ

 A社としては、固定資産除却損を計上して法人税等の節税を考えたいところですが、会社と役員間の取引においては、固定資産除却損の計上(無償譲渡)を行う場合も結局は時価で譲渡したものとみなされ、A社とB氏に税負担が生じます。
 安易な除却損の計上には、気をつけなければなりません。

改正電子帳簿保存法:最低限どんな対応をしたらいいのか?

1.なぜ今回の改正が注目されているのか?

 電子帳簿保存法とは、帳簿や決算書、請求書などの国税関係帳簿・書類を電子データで保存するための要件を定めた法律です。この法律自体は1998(平成10)年に施行されており、その後に何度か改正されていますが、これまではあまり注目されることはなかったように思います。
 ところが、2022(令和4)年1月1日から施行されている今回の改正法が注目されているのは、「電子取引」については電子データ保存が義務化されたためです。
 この改正法により、電子取引については、これまでのようにプリントアウトして「紙」で保存することは認められなくなり、「電子データ」で保存しなければならなくなりました。この改正は、法人・個人や規模の大小にかかわらず、すべての事業者が対応しなければならないため、過去の改正に比べて注目度が上がっています。
 なお、2022(令和4)年1月1日からの対応が難しい場合は、2024(令和6)年1月1日からの対応でもよいことになっています。

※ 電子取引とは、例えば、次のようなものが該当します(詳細については、本ブログ記事「改正電子帳簿保存法~電子取引と電子データの具体例」をご参照ください)。
・電子メールに添付されている請求書や領収書等のPDFを授受する
・ショッピングサイトで商品を購入した際に、そのWEBサイトから請求書や領収書等のPDFをダウンロードする
・クレジットカードの利用明細データやスマートフォンアプリの決済データ等をクラウドサービスなどから受領する

2.すべてが電子化されるわけではない

出所:国税庁ホームページ

 「電子データ」での保存が必要ということは、何か専用のシステムを導入しないといけないのでは?と考えがちですが、必ずしもそうとは言えません。
 この点に関しては、改正された電子帳簿保存法が次の3つに区分されていることを理解し、それぞれ別個に対応を考えることが重要です。

 (1) 電子帳簿等保存
 (2) スキャナ保存
 (3) 電子取引データ保存

 これらのうち、端的に言うと、(1)と(2)に対応するためには専用のシステム(会計ソフトや証票管理システムなど)の導入が必要ですが、(3)については専用のシステムがなくても対応することができます。
 また、今回の改正法では、(1)と(2)について対応するかどうかは任意とされていますので、この制度を利用したい事業者(対応可能な事業者)のみが対応すればいいことになっています。したがって、今回の改正法で全ての事業者が対応しなければならないのは(3)です。
 (3)だけに対応する場合、これまでと何が変わるのかと言えば、電子取引で受領した電子データ(例えば、メールに添付された請求書のPDF)は「紙」ではなく「電子データ(PDF)」のまま保存するということです。言い換えれば、電子取引に該当しない「紙」で受け取った請求書は、これまで通り「紙」で保存するということです。すべてが電子化されるわけではありません。

3.最低限必要な対応とは?

 改正電子帳簿保存法の全て(上記2.(1)~(3))に対応しようとすると、専用システムの導入などにコストがかかります。現時点でそこまで考えていない事業者の方(コストをかけないで改正法に対応したい事業者の方)は、最低限、(3)電子取引データ保存への対応を考えて下さい。
 具体的な対応方法は、次のとおりです。

 ① 不当な訂正削除の防止に関する「事務処理規程」の制定・遵守
 ② モニター・操作説明書等の備付け
 ③ 検索要件の充足

 ①については、国税庁ホームページから事務処理規定のひな型(法人の例と個人事業者の例)をダウンロードすることができますので、それを参考に自社の業務内容に合わせて作成してください。
 ③については、電子データのファイル名に規則性を持たせて(「日付・金額・相手方」を記載して)検索可能な状態で電子データを保存する方法と、表計算ソフト等で索引簿を作成し、その索引簿を使用して電子データを検索できるようにする方法があります。

出所:国税庁ホームページ

4.将来のDXを見据えて電子帳簿保存法に対応

 電子帳簿保存法に対応することによって、業務のデジタル化が進み、業務の効率化や生産性の向上などを図ることができます。また、業務のデジタル化は、ビジネスモデルを変革して新たな価値を生み出すDX(デジタルトランスフォーメーション)にもつながります。
 いきなり電子帳簿保存法のすべてに対応する必要はありませんので、まずは「電子取引データ保存」に対応し、その後はできるところから始めていきましょう。

繰延資産の経理処理と別表16(6)の記載例

1.会計上の繰延資産と税法上の繰延資産

 繰延資産とは、支出した費用でその支出の効果が1年以上に及ぶものをいいます。
 繰延資産には、旧商法上の繰延資産(以下「会計上の繰延資産」といいます)と法人税法施行令14条6号資産(以下「税法上の繰延資産」といいます)があります。
 繰延資産は、収益との対応関係を考慮して、原則として償却を通じてその効果の及ぶ期間ににわたって費用配分しますが、会計上の繰延資産については、その支出した費用を支出事業年度で全額損金算入することができます(一時償却が認められています)

法人税法上の繰延資産(広義) 会計上の繰延資産・・・一時償却が認められる
税法上の繰延資産(狭義)・・・均等償却を行う

2.繰延資産の経理処理

 繰延資産の経理処理について、以下の設例で確認します(3月決算法人を前提とします)。

(1) 令和4年6月28日 新しい市場開拓のためリサーチ会社に1,000,000円を支払い、繰延資産(開発費)として計上した。この調査は、当期中に完了報告を受けた。

借方 金額 貸方 金額
開発費 1,000,000 現金預金 1,000,000

(2) 令和5年3月31日 上記(1)で計上した繰延資産について、償却を行った。

借方 金額 貸方 金額
開発費償却 1,000,000 開発費 1,000,000

※ 開発費は会計上の繰延資産に該当し、支出事業年度で全額損金算入できます。
  なお、繰延資産に該当する支出費用を償却費以外の科目をもって損金経理したときも、法人税法第32条第1項(繰延資産の償却費の損金算入)に規定する「償却費として損金経理をした金額」として取り扱われます(法基通8-3-2)。
 この場合は、資産計上→償却という過程を経ずに、上記(1)の仕訳のみを行います。

(3) 令和5年3月1日 ノウハウの頭金6,000,000円を支払った。この契約では、同日から向こう1年間のノウハウの使用料2,400,000円は支払わないことになっている。

借方 金額 貸方 金額
長期前払費用 3,600,000 現金預金 6,000,000
使用料 2,400,000    

※ ノウハウの頭金は税法上の繰延資産に該当します。
  なお、ノウハウの設定契約において、頭金の全部又は一部を使用料に充当する旨の定めがある場合又は頭金の支払により一定期間は使用料を支払わない旨の定めがある場合には、その頭金のうち使用料に充当される部分の金額又はその支払わないこととなる使用料の額に相当する部分の金額は、前払費用として処理することができます(法基通8-1-6)。
 今回のケースでは、頭金(600万円)のうちノウハウの使用料相当部分(240万円)については、支出時より1年間の短期前払費用の特例が適用できますので「使用料」勘定で費用処理をし、360万円については「長期前払費用」勘定で繰延資産として計上しています。

(4) 令和5年3月31日 上記(3)で計上した繰延資産について、償却を行った。

借方 金額 貸方 金額
長期前払費用償却 60,000 長期前払費用 60,000

※ ノウハウの頭金は税法上の繰延資産に該当し、5年(60か月)で償却します。
  3,600,000×1か月/60か月=60,000

3.別表16(6)の記載例

 別表16(6)は、法人税法施行令第64条第1項第2号(繰延資産の償却限度額)の規定により均等償却を行うこととされている繰延資産について、当期の償却費として損金経理をした金額がある場合に使用します。
 また、法人税法施行令第64条第1項第1号(繰延資産の償却限度額)の規定により一時に償却ができることとされている繰延資産について、当期の償却費として損金経理をした金額がある場合に使用します。

 上記2.の設例(1)~(4)の会計処理から別表16(6)を作成すると、次のようになります。

 なお、繰延資産の種類ごとに区分し、区分ごとの合計額を記載する場合は、「支出した年月2」、「償却期間の月数4」及び「当期の期間のうちに含まれる償却期間の月数5」、「翌期への繰越額の内訳」の「20」及び「21」の各欄の記載は必要ありません。

※ 繰延資産の内容や償却期間等については、本ブログ記事「繰延資産の種類と償却」をご参照ください。

繰延資産の種類と償却

1.会計上の繰延資産と税法上の繰延資産

 繰延資産とは、支出した費用でその支出の効果が1年以上に及ぶものをいいます。
 繰延資産には、旧商法上の繰延資産(以下「会計上の繰延資産」といいます)と法人税法施行令14条6号資産(以下「税法上の繰延資産」といいます)があります。
 繰延資産は、収益との対応関係を考慮して、原則として償却を通じてその効果の及ぶ期間ににわたって費用配分します。
 ただし、会計上の繰延資産については、その支出した費用を支出事業年度で全額損金算入することができます(一時償却が認められています)

法人税法上の繰延資産(広義) 会計上の繰延資産・・・一時償却が認められる
税法上の繰延資産(狭義)・・・均等償却を行う

2.繰延資産の範囲

 会計上の繰延資産と税法上の繰延資産の範囲は、以下のとおりです。

法人税法上の繰延資産 会計上の繰延資産 創立費、開業費、開発費、株式交付費、社債等発行費

税法上の繰延資産

(長期前払費用等)

施設の負担金 公共的施設(道路、堤防、護岸など)
共同的施設(会館、アーケードなど)
資産賃借のための権利金等 建物賃借のための権利金
電子計算機等の賃借に伴う費用
役務の提供を受けるための権利金等 ノウハウの頭金
広告宣伝用資産の贈与費用 看板、ネオン、どん帳など
その他 同業者団体の加入金など

(1) 会計上の繰延資産

① 創立費
 法人の設立のために支出した費用(発起人に支払った報酬及び設立登記のために支出した登録免許税を含みます)で、法人の負担に帰すべき次のような費用をいいます。
 なお、支出費用の負担が定款等で定められていなくとも、その費用は創立費に該当するものとされています(法基通8-1-1)。

イ.定款、株式申込証、設立趣意書、目録見積等の作成費
ロ.株式募集のための広告費
ハ.創立事務所の賃借料
ニ.設立事務に使用する使用人の給料、手当等
ホ.金融機関又は証券会社の取扱手数料
ヘ.創立総会に関する費用その他法人の設立のために要する費用

② 開業費
 開業のための広告宣伝費及び接待費その他法人の設立後事業を開始するまでの間に開業準備のため特別に支出した費用をいいます。

③ 開発費
 新たな技術若しくは新たな経営組織の採用、資源の開発又は市場の開拓のために特別に支出した費用をいいます。

④ 株式交付費
 株券等の印刷費、資本金の増加の登記についての登録免許税その他自己の株式(出資を含みます)の交付のために支出した費用をいいます。

⑤ 社債等発行費
 社債券等の印刷費その他債券(新株予約権を含みます)の発行のために支出する費用をいいます。

(2) 税法上の繰延資産

① 施設の負担金
イ.公共的施設の負担金
 自己の便益を受ける公共的施設の設置又は改良のために支出する費用で、これに該当する例としては、次のような費用があります(法基通8-1-3)。
 なお、国、地方公共団体、商店街等の行う街路の簡易舗装、街灯、がんぎ等の簡易な施設で主として一般公衆の便益に供されるもののために充てられる負担金は、これを繰延資産としないでその負担金を支出する日の属する事業年度の損金の額に算入することができます(以下、ロにおいて同じ)(法基通8-1-13)。

(イ) 自己の必要に基づいて行う道路、堤防、護岸、その他の施設又は工作物(以下「公共的施設」といいます)の設置等のために要する費用(自己の利用する公共的施設につきその設置等を国等が行う場合におけるその設置等に要する費用の一部の負担金を含みます)又は自己の有する道路その他の施設又は工作物を国等に提供した場合におけるその施設又は工作物の価額に相当する金額
(ロ) 国等の行う公共的施設の設置等により著しく利益を受ける場合におけるその設置等に要する費用の一部の負担金(土地所有者又は借地権を有する法人が土地の価格の上昇に基因して納付するものを除きます)
(ハ) 鉄道業を営む法人の行う鉄道の建設に当たり支出するその施設に連絡する地下道等の建設に要する費用の一部の負担金

ロ.共同的施設の負担金
 自己が便益を受ける共同的施設の設置又は改良のために支出する費用で、これに該当する例としては、所属する協会、組合、商店街等の行う共同的施設の建設又は改良に要する費用の負担金があります(法基通8-1-4)。
 なお、共同的施設の相当部分が貸室に供される等協会等の本来の用以外の用に供されているときは、その部分に対応する負担金は、協会等に対する寄附金となります(法基通8-1-4)。

② 資産賃借のための権利金等
 資産の賃借又は使用のために支出する権利金、立退料その他の費用で、次のような費用はこれに該当します(法基通8-1-5)。

イ.建物を賃借するために支出する権利金、立退料その他の費用
ロ.電子計算機その他機器の賃借に伴って支出する引取運賃、関税、据付費その他の費用

③ 役務の提供を受けるための権利金等
 役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用で、これに該当する例としては、ノウハウの設定契約に際して支出する一時金又は頭金の費用があります(法基通8-1-6)。
 なお、ノウハウの設定契約において、頭金の全部又は一部を使用料に充当する旨の定めがある場合又は頭金の支払により一定期間は使用料を支払わない旨の定めがある場合には、その頭金のうち使用料に充当される部分の金額又はその支払わないこととなる使用料の額に相当する部分の金額は、前払費用として処理することができます(法基通8-1-6)。
 例えば、3月決算法人が3月1日にノウハウの頭金600万円(償却期間5年=60か月)を支払った場合に、契約により同日から向こう1年間のノウハウ使用料240万円を支払わないこととなっているときは、次のように仕訳をします。

借方 金額 貸方 金額
長期前払費用 3,600,000 現金預金 6,000,000
使用料 2,400,000    
長期前払費用償却 60,000 長期前払費用 60,000

※ 使用料相当部分は支出時より1年間の短期前払費用となります。また、繰延資産については、3,600,000×1か月/60か月=60,000円を償却します。

④ 広告宣伝用資産の贈与費用
 製品等の広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用で、これに該当する例としては、その特約店等に対し自己の製品等の広告宣伝等のため、広告宣伝用の看板、ネオンサイン、どん帳、陳列棚、自動車のような資産(展示用モデルハウスのように見本としての性格を併せて有するものを含みます)を贈与した場合(その資産を取得することを条件として金銭を贈与した場合又はその贈与した資産の改良等に充てるために金銭等を贈与した場合を含みます)又は著しく低い対価で譲渡した場合におけるその資産の取得価額又はその資産の取得価額からその譲渡価額を控除した金額に相当する費用があります(法基通8-1-8)。

⑤ その他
 ①から④までのほか、自己が便益を受けるために支出する費用で、次のものが該当します。

イ.スキー場のゲレンデ整備費用(法基通8-1-9)
ロ.出版権の設定の対価(法基通8-1-10)
ハ.同業者団体等の加入金(法基通8-1-11)
ニ.職業運動選手等の契約金等(法基通8-1-12)

3.繰延資産の償却限度額

 繰延資産は、収益との対応関係を考慮して、原則として償却を通じてその効果の及ぶ期間ににわたって費用配分します。
 ただし、会計上の繰延資産については、その支出した費用を支出事業年度で全額損金算入することができます(一時償却が認められています)
 繰延資産の償却額として損金算入されるのは、償却費として損金経理した額のうち、下表の償却限度額に達するまでの金額です。
 なお、繰延資産に該当する支出費用を償却費以外の科目をもって損金経理したときも、法人税法第32条第1項(繰延資産の償却費の損金算入)に規定する「償却費として損金経理をした金額」として取り扱われます(法基通8-3-2)。 

A 会計上の繰延資産 支出事業年度で全額損金算入可
B 税法上の繰延資産 繰延資産×その事業年度の月数/償却年数×12

※ 支出事業年度の場合には、次による償却を行う。
繰延資産×支出の日から事業年度終了の日までの月数/償却年数×12
C 少額な繰延資産 上記Bのうち支出金額が20万円未満のものは支出事業年度で全額損金算入可

※ 支出事業年度で全額損金算入しなかった場合は、以後上記Bによる。

4.税法上の繰延資産の償却期間

 税法上の繰延資産の償却期間(償却年数)は、次のとおりです。

区分 種類 費用の範囲 償却期間
施設の負担金 (1) 公共的施設

① その施設等を負担者が専用する場合

その施設の耐用年数の7/10相当年数

② ①以外のもの

その施設の耐用年数の4/10相当年数
(2) 共同的施設 ① 負担者が専ら利用するもの その施設の耐用年数の7/10相当年数(土地の場合は45年)
② 一般公衆も利用するもの 5年(その施設等の耐用年数が5年未満のときは、その年数)
資産賃借のための権利金等 (3) 建物賃借のための権利金

① 賃借建物の新築の際に支払った権利金等で、その額が建築費の大部分を占め、建物の存続期間中賃借できるもの

その建物の耐用年数の7/10相当年数
② 上記以外の権利金で、契約・慣習等によって明渡しの際、借家権として転売できるもの その建物の賃借後の見積耐用年数の7/10相当年数
③ その他のもの 5年(賃借期間が5年未満で、契約の更新に際し再び権利金等の支払を要することが明らかなときは、その賃借期間)
(4) 電子計算機等の賃借に伴う費用   機器の耐用年数の7/10相当年数(その年数が契約による年数を超えるときは、その賃借期間)
役務の提供を受けるための権利金等 (5) ノウハウの頭金   5年(設定契約の有効期間が5年未満で、契約の更新に際し再び頭金等の支払を要することが明らかなときは、その有効期間)
広告宣伝用資産の贈与費用 (6) 広告宣伝用資産の贈与費用   その資産の耐用年数の7/10相当年数(5年を最高とする)
その他 (7) スキー場のゲレンデ整備費用   12年
(8) 出版権の設定の対価   設定契約に定める存続期間(設定契約に存続期間の定めがない場合には、3年)
(9) 同業者団体等の加入金   5年
(10) 職業運動選手等の契約金等   契約期間(契約期間の定めがない場合には、3年)

※ 償却年数に1年未満の端数が生じたときは、その端数を切り捨てます。また、(1)の①に該当する道路用地、又は道路として舗装の上国等へ提供した土地(舗装を含みます)の償却期間は、「その施設の耐用年数」を15年として計算します。

 なお、繰延資産の償却額の計算に関する明細書(別表十六(六))の記載例については、本ブログ記事「繰延資産の経理処理と別表16(6)の記載例」をご参照ください。

30万円未満の少額減価償却資産の損金算入制度と別表16(7)の記載例

1.制度の概要

 青色申告書を提出する中小企業者等※1が、2006(平成18)年4月1日から2026(令和8)年3月31日※2までの間に取得等した減価償却資産で、その取得価額が30万円未満であるもの(以下「少額減価償却資産※3」といいます)については、その事業の用に供した日の属する事業年度において、全額損金算入することができます。

 ただし、適用を受ける事業年度における少額減価償却資産の取得価額の合計額が300万円(事業年度が1年に満たない場合には300万円を12で除し、これにその事業年度の月数を掛けた金額。月数は暦に従って計算し、1か月に満たない端数を生じたときは1か月とします)を超えるときは、その取得価額の合計額のうち300万円に達するまでの少額減価償却資産の取得価額の合計額が限度となります。

 この特例の適用を受けるためには、事業の用に供した事業年度において、少額減価償却資産の取得価額に相当する金額につき損金経理するとともに、確定申告書等に以下の少額減価償却資産の取得価額に関する明細書(別表16(7))を添付して申告することが必要です。

※1 資本金1億円以下で大規模法人の子会社等でない法人が適用対象です。なお、常時使用する従業員(パート、アルバイトを含む)の数については、2020(令和2)年度改正で500人(改正前は1,000人)以下に引き下げられました(措令39の28①)。
 中小企業者の定義については、本ブログ記事「租税特別措置法上の『中小企業者』の定義とその判定時期」をご参照ください。

※2 2024(令和6)年度税制改正で適用期限が2年間延長され、2026(令和8)年3月31日までの間に取得等した減価償却資産について適用されることとなりました。

※3 取得価額が30万円未満である減価償却資産で、資産の種類に制限はなく、中古資産も対象となります。

2.別表16(7)の書き方と記載例

(1) 資産区分
 資産区分欄の「種類1」「構造2」「細目3」の各欄は、減価償却資産の耐用年数省令別表第1から別表第6までに定める種類、構造及び細目に従って記載します。
 機械及び装置については、耐用年数省令別表第2の番号を「構造2」に記載します。

 「事業の用に供した年月4」欄は、当該事業年度の中途で事業の用に供した資産について、その事業の用に供した年月を記載します。

(2) 取得価額
 「取得価額又は制作価額5」欄には、対象資産の取得価額を記入します。30万円未満の金額の判定において消費税を含むか否かについては、税込経理方式を採用していれば税込で、税抜経理方式を採用していれば税抜で判断します。

 「法人税法上の圧縮記帳による積立金計上額6」欄には、圧縮記帳の規定の適用を受ける場合において、圧縮記帳による圧縮額を積立金として積み立てる経理をしたときに、その積み立てた金額(積立限度超過額を除きます)を記載します。

 「差引改定取得価額7」欄には、(5)-(6)の金額を記入します。

(3) 当期の少額減価償却資産の取得価額の合計額
 「当期の少額減価償却資産の取得価額の合計額8」欄には、「差引改定取得価額7」欄の合計額を記入します。
 この合計額は300万円以下でなければなりませんが、300万円以下の金額の判定において消費税を含むか否かについては、上記(2)と同様に、税込経理方式を採用していれば税込で、税抜経理方式を採用していれば税抜で判断します。

 また、合計額が300万円を超える場合は、300万円以下になるように資産を選択します。
 例えば、少額減価償却資産を25万円/個のものを11個、22万円/個のものを1個、24万円/のものを1個取得した場合は、合計額が321万円になります。このような場合は、25万円/個のものを11個、24万円/個のものを1個選択して、合計額が299万円になるようにします。
 22万円/個のものについては、この特例の適用対象外となり通常の減価償却をします。

事前確定届出給与を支給しなかった場合のリスクを回避するための手続き

 従来は臨時的な役員賞与は損金算入が認められていませんでしたが、事前確定届出給与の制度を利用すれば、役員賞与であっても届出通りの支給をした場合は損金算入が可能です(届出書等の書き方については、本ブログ記事「『事前確定届出給与に関する届出書』等の書き方と記載例」をご参照ください)。

 届出通りの支給をしなかった場合、例えば届出書に記載した支給時期や支給額と異なる時期や金額の支給をした場合は、その役員賞与は損金不算入となります

 事前確定届出給与の届出はしたけれども実際には全く支給しなかった場合は、そもそも支給額が0円なので損金不算入額も0円となり、特段のリスクはないように見えます。
 しかし、事前確定届出給与の支給をしなかった場合のリスクはあります。
 今回は、事前確定届出給与の支給をしなかった場合のリスクと、そのリスクを回避するための手続きについて確認します。

※ 事前確定届出給与を届出通りに支給しなかった場合でも、損金算入できることがあります。詳細については、本ブログ記事「事前確定届出給与(複数回支給)を届出通りに支給しなかった場合」及び「事前確定届出給与(複数人支給)を特定の役員だけ届出通りに支給しなかった場合」をご参照ください。

1.事前確定届出給与の支給をしなかった場合のリスク

 事前確定届給与は法人の節税対策として用いられる側面がありますが、実際の利益が当初見込んでいた利益よりも少なくなる場合は、事前確定届出給与の支給をやめることがあります。

 例えば、事前確定届出給与100万円の支給時期が到来したけれどもその支給をしなかった場合は、そもそも支給額が0円なので損金不算入額も0円です。
 しかし、この場合は次のようなリスクがあることに留意しなければなりません。

借方 金額 貸方 金額
役員賞与 100万円 未払金 100万円
未払金 100万円 債務免除益 100万円

 届出額100万円と異なる金額を支給した場合は、その全額が損金不算入となりますが、支給額が0円なのでそもそも損金算入する金額がなく、損金不算入額も0円です。
 会社としては株主総会等で役員賞与を支給しないという意思決定をしたため、会計上は役員賞与や未払金を認識(上記1行目の仕訳)することはありません(上記1行目の仕訳をするのは、会社に役員賞与を支払う意思がある場合です)。

 しかし、支給日が到来した段階で役員に報酬請求権が発生するため、会社側には報酬を支給する債務(未払金)が発生します。つまり、税務上は上記1行目の仕訳のように考えます。
 そうすると、税務上は役員賞与100万円を認識することになるので、これに対する所得税の源泉徴収が必要になります
 また、株主総会等の決議の際に役員は辞退届を提出して報酬請求権を放棄したと考えられるため、会社側に生じた報酬を支給する債務(未払金)は消滅しますが、役員賞与の支給義務が免除されたことに対する収益(債務免除益)を会社側では認識することになります(上記2行目の仕訳)。

※ 根拠条文は、次の所得税法第183条第2項(源泉徴収義務)です。
2 法人の法人税法第二条第十五号(定義)に規定する役員に対する賞与については、支払の確定した日から一年を経過した日までにその支払がされない場合には、その一年を経過した日においてその支払があつたものとみなして、前項の規定を適用する。

2.リスクを回避するための手続き

 事前確定届出給与を支給しなかった場合のリスクは、会社側では役員賞与を支払っていないにもかかわらず、①役員賞与に対する所得税の源泉徴収義務が生じる、②債務免除益に対して課税される、役員側では役員賞与をもらっていないにもかかわらず、所得税が課税されることです。

 これらのリスクは、事前確定届出給与の支給日に役員の報酬請求権が発生することに端を発しています。
 つまり、これらのリスクがあるのは、事前確定届出給与の支給日が到来した後(すでに役員の報酬請求権が発生した後)に、役員からの辞退届を受領したり株主総会等で不支給の決議をした場合です。

 したがって、これらのリスクを回避するためには、事前確定届出給与の支給日が到来する前に、役員からの辞退届を受領して株主総会等で不支給の決議をすることが必要です。
 所得税基本通達28-10(給与等の受領を辞退した場合)には、次のように規定されています。

28-10 給与等の支払を受けるべき者がその給与等の全部又は一部の受領を辞退した場合には、その支給期の到来前に辞退の意思を明示して辞退したものに限り、課税しないものとする。

 なお、事前確定届出給与を支給しなかった場合に、支給しなかったことについて税務署へ届出(報告)する必要はありません。