予定納付額の計算は「×6」が先か「÷12」が先か?

1.中間申告の方法

 事業年度が6か月を超える法人は、前事業年度の確定法人税額が20万円を超えた場合に、事業年度開始の日から6か月を経過した日から2か月以内に中間申告書(予定申告書)を提出しなければなりません。
 この中間申告には次の2つの方法があり、いずれかを選択することができます。

(1) 前年度実績による予定申告
 「前事業年度の確定法人税額×6/前事業年度の月数」で計算した税額を中間分の税額として予定申告します。
(2) 仮決算による中間申告
 事業年度開始の日以後6か月の期間を1事業年度とみなして仮決算を行い中間申告します。

2.予定申告納付額の計算方法

 上記(1)の予定申告の場合、計算式の「×6/前事業年度の月数」の分数部分に気を付けなければなりません。
 例えば、事業年度を12か月とする法人が、前事業年度の確定法人税額1,000,000円に基づいて予定納付額の計算をする場合、1,000,000円×6÷12=500,000円とするのか、1,000,000円÷12(円未満切捨て)×6=499,998円→499,900円(百円未満切捨て)とするのか、つまり、「×6」が先か「÷12」が先かということです。
 法人税については「÷12」が先で、後から「×6」をして予定納付額の計算をします(法人税法第71条第1項第1号)。
 以下に予定納付額の計算方法についてまとめます(前事業年度を12か月とします)。

(1) 先に12で除して後から6倍する税目・・・法人税(地方法人税)、消費税、事業税(地方法人特別税)
(2) 先に6倍して後から12で除す税目・・・道府県民税、市民税

社会保険料の延滞金は損金算入できます

1.社会保険料の延滞金は損金算入可能

 国税に係る延滞税・過少申告加算税・無申告加算税、地方税法の規定による延滞金・過少申告加算金・無申告加算金などは損金算入できません。これらが損金算入できないことは、感覚的にわかります。
 では、社会保険料の延滞金も損金算入できないのでしょうか?
「延滞金」ですので、感覚的には損金算入できないように思われがちですが、社会保険料の延滞金は損金算入できます。 

2.損金算入できる根拠

 同じ「延滞金」なのに損金算入できるものとできないものがあるのはなぜでしょうか?
 根拠は次の法人税法第55条にあります。

(不正行為等に係る費用等の損金不算入)
第五五条 内国法人が、その所得の金額若しくは欠損金額又は法人税の額の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装すること(以下この項及び次項において「隠蔽仮装行為」という。)によりその法人税の負担を減少させ、又は減少させようとする場合には、当該隠蔽仮装行為に要する費用の額又は当該隠蔽仮装行為により生ずる損失の額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

2 前項の規定は、内国法人が隠蔽仮装行為によりその納付すべき法人税以外の租税の負担を減少させ、又は減少させようとする場合について準用する。

3 内国法人が納付する次に掲げるものの額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
一 国税に係る延滞税、過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税及び重加算税並びに印紙税法(昭和  四十二年法律第二十三号)の規定による過怠税
二 地方税法の規定による延滞金(同法第六十五条(法人の道府県民税に係る納期限の延長の場合の延滞金)、第七十二条の四五の二(法人の事業税に係る納期限の延長の場合の延滞金)又は第三百二十七条(法人の市町村民税に係る納期限の延長の場合の延滞金)の規定により徴収されるものを除く。)、過少申告加算金、不申告加算金及び重加算金

4 内国法人が納付する次に掲げるものの額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
一 罰金及び科料(通告処分による罰金又は科料に相当するもの及び外国又はその地方公共団体が課する罰金又は科料に相当するものを含む。)並びに過料
二 国民生活安定緊急措置法(昭和四十八年法律第百二十一号)の規定による課徴金及び延滞金
三 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)の規定による課徴金及び延滞金(外国若しくはその地方公共団体又は国際機関が納付を命ずるこれらに類するものを含む。)
四 金融商品取引法第六章の二(課徴金)の規定による課徴金及び延滞金
五 公認会計士法(昭和二十三年法律第百三号)の規定による課徴金及び延滞金

5 内国法人が供与をする刑法(明治四十年法律第四十五号)第百九十八条(贈賄)に規定する賄賂又は不正競争防止法(平成五年法律第四十七号)第十八条第一項(外国公務員等に対する不正の利益の供与等の禁止)に規定する金銭その他の利益に当たるべき金銭の額及び金銭以外の資産の価額並びに経済的な利益の額の合計額に相当する費用又は損失の額(その供与に要する費用の額又はその供与により生ずる損失の額を含む。)は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

 法人税法第55条に「社会保険料の延滞金」は列挙されていませんので、損金算入可能ということになります。

JAの建物更生共済の掛金の内訳は必ず共済掛金領収証で確かめましょう

掛金が同じでも内訳は変わる

 JAの建物更生共済の掛金の内訳(必要経費・損金算入部分と積立部分)は、掛金が同額でも毎年一定ではないので注意しなければなりません。
 例えば、法人が掛金50万円を支払ったとき、前年に次のような仕訳をしていたとします。

借方 金額 貸方 金額
保 険 料 275,000 現金預金 500,000
保険積立金 225,000    

 この法人が今年も50万円の掛金を支払った場合、掛金が前年と同額なので仕訳も前年と同じでいいかというと、そうではありません。 

内訳は共済掛金領収証に載っている

 共済掛金領収証には、支払った共済掛金のうち必要経費・損金への対象となる額が「必要経費・損金対象額」として表示されています。
 この額が前年は275,000円でしたが、今年は280,000円になっていたとしたら、今年の仕訳は次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
保 険 料 280,000 現金預金 500,000
保険積立金 220,000    

 法人の場合の仕訳は上記のようになりますが、個人事業主の場合は上記仕訳の「保険積立金」が「事業主貸」になります(保険料280,000円は事業割合100%を前提としています)。

中小企業等経営強化法の認定が必要な設備投資税制

 2017年度(平成29年度)税制改正によって、中小企業投資促進税制の上乗せ措置が改組され、新たに「中小企業経営強化税制」が創設されました。
 この中小企業経営強化税制をはじめ、2019年(平成31年)3月31日までに取得した資産に適用される設備投資税制には以下のものがあります。

 ①中小企業投資促進税制
 ②中小企業経営強化税制
 ③固定資産税の特例
 ④商業・サービス業・農林水産業活性化税制

 上記のうち、中小企業等経営強化法の認定が必要な税制は②と③、認定がなくても活用できる税制は①と④です。
 前回は、認定がなくても活用できる①中小企業投資促進税制と④商業・サービス業・農林水産業活性化税制について述べました。今回は、認定が必要な②中小企業経営強化税制と③固定資産税の特例について述べていきます。

1.中小企業経営強化税制

 まず、中小企業経営強化税制(中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除)について、その概略を記していきます。

(1) 制度概要

 青色申告書を提出する中小企業者等(従業員1,000人以下の個人事業主を含む)が、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき一定の新品設備を取得し指定事業の用に供した場合、即時償却又は10%の税額控除(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)を選択適用するこ とができます。

(2) 適用期間

 2017年(平成29年)4月1日~2019年(平成31年)3月31日に取得した資産

※2019年度(平成31年度)税制改正によって、適用期限が2021年(平成33年)3月31日まで2年延長されることになりました。
(2019年(平成31年)3月16日記事更新)

(3) 指定事業

 中小企業投資促進税制の対象事業及び商業・サービス業・農林水産業活性化税制の対象事業

(4) 対象設備

 ① 生産性向上設備(A類型)・・・生産性が旧モデル比年平均1%以上向上する設備
 イ.機械及び装置・・・160万円以上(10年以内に販売開始)
  ロ.測定工具及び検査工具・・・30万円以上(5年以内に販売開始)
 ハ.器具備品・・・30万円以上(6年以内に販売開始)
 ニ.建物附属設備・・・60万円以上(14年以内に販売開始)
 ホ.ソフトウェア(情報を収集・分析・指示する機能)・・・70万円以上(5年以内に販売開始)

 ② 収益力強化設備(B類型)・・・投資利益率が年平均5%以上の投資計画に係る設備
 イ.機械及び装置・・・160万円以上
 ロ.工具・・・30万円以上
 ハ.器具備品・・・30万円以上
 ニ.建物附属設備・・・60万円以上
 ホ.ソフトウェア・・・70万円以上

※2019年度(平成31年度)税制改正によって、2分の1超の売電を見込む太陽光発電設備を対象設備から除外するとともに、売電を予定している場合には計画の申請時に一定の書類添付が義務付けられることとなりました。
(2019年(平成31年)3月16日記事更新)

(5) 確認者

 ① A類型・・・工業会等の証明
 ② B類型・・・経済産業局の確認
 なお、A類型・B類型ともにその業種を所轄する主務大臣に対し、中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定が必要です。

(6) 措置内容

 即時償却又は税額控除(取得価額×10%)
 税額控除額は、当期の法人税額の20%が上限です。
(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%の税額控除のみ)

(7) 留意事項

 中小企業経営強化税制は、適用できない業種(映画業を除く娯楽業、電気業、水道業、鉄道業、航空運輸業、銀行業等)があります。
 太陽光発電などのいわゆる売電は電気業に該当しますので、そのための設備は対象になりません。
 太陽光発電システム自体は対象設備ですので、自社工場用など売電ではないもの等については対象となります。
(太陽光発電設備の優遇税制については、本ブログ記事「中小企業等経営強化法に基づく太陽光発電設備の優遇税制について」を参照)

2.固定資産税の特例

 上記の中小企業経営強化税制と同じく、2017年度(平成29年度)税制改正により中小企業等経営強化法に係る固定資産税の特例も拡充され、従来は対象設備が機械装置に限定されていたのに対し、高効率の冷蔵陳列棚、省エネ空調等の器具備品、建物附属設備が対象設備に追加されました。
 以下では、固定資産税の特例(経営力向上計画に係る固定資産税の特例措置)について、その概略を記していきます。

(1) 制度概要

 青色申告書を提出する中小企業者等(従業員1,000人以下の個人事業主を含む)が、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき一定の新品設備を取得等した場合、固定資産税(償却資産税)が3年間にわたって2分の1に軽減されます。
 要件や手続きは中小企業経営強化税制のA類型とほぼ同じため、一緒に手続きをすることが可能です。

(2) 適用期間

 2016年(平成28年)7月1日~2019年(平成31年)3月31日に取得した資産

※適用期限の延長は行われません。

(3) 指定事業

 中小企業投資促進税制の対象事業及び商業・サービス業・農林水産業活性化税制の対象事業

(4) 対象設備

 生産性向上設備(A類型)・・・生産性が旧モデル比年平均1%以上向上する設備
 ① 機械及び装置・・・160万円以上(10年以内に販売開始)
 ② 測定工具及び検査工具・・・30万円以上(5年以内に販売開始)
 ③ 器具備品・・・30万円以上(6年以内に販売開始)
 ④ 建物附属設備・・・60万円以上(14年以内に販売開始)

 中小企業経営強化税制の対象設備であるソフトウェアは、固定資産税(償却資産税)の課税客体ではありません。

 2017年度(平成29年度)税制改正により対象に追加された設備(2017年(平成29年)4月1日以降に取得した測定工具及び検査工具、器具備品、建物附属設備)については、対象地域・対象業種が一部限定されます。
 業種が限定される地域は、最低賃金が全国平均以上の7都府県(埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、京都、大 阪)です。上記以外の40道県においては全業種が対象です。
 機械装置については、引き続き全国・全業種で対象になります。

(5) 確認者

 工業会等の証明
 なお、その業種を所轄する主務大臣に対し、中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定が必要です。

(6) 措置内容

 固定資産税の課税標準が、3年間 2分の1に軽減。

(7) 留意事項

 2017年度(平成29年度)税制改正により対象に追加された設備(2017年(平成29年)4月1日以降に取得した測定工具及び検査工具、器具備品、建物附属設備)については、対象地域・対象業種が一部限定されます。
 いわゆる売電用の太陽光発電システムも対象設備になります。

 なお、経営力向上計画に係る固定資産税の特例措置は、2019年(平成31年)3月31日をもって終了します(期限の延長は行われません)。
 2019年(平成31年)4月1日以降に取得等をした設備は、この特例措置の対象外となりますのでご注意ください。

※固定資産税の特例の廃止に伴い、2018年度(平成30年度)税制改正で創設された新固定資産税の特例については、本ブログ記事「生産性向上特別措置法による新固定資産税の特例」を参照してください。

中小企業等経営強化法の認定が不要の設備投資税制

 2017年度(平成29年度)税制改正によって、中小企業投資促進税制の上乗せ措置が改組され、新たに「中小企業経営強化税制」が創設されました。
 この中小企業経営強化税制をはじめ、2019年(平成31年)3月31日までに取得した資産に適用される設備投資税制には以下のものがあります。
 ①中小企業投資促進税制
 ②中小企業経営強化税制
 ③固定資産税の特例
 ④商業・サービス業・農林水産業活性化税制
 上記のうち、中小企業等経営強化法の認定が必要な税制は②と③、認定がなくても活用できる税制は①と④です。
 今回から2回に分けて、①~④の税制の概要を記していきます。今回は、認定がなくても活用できる①中小企業投資促進税制と④商業・サービス業・農林水産業活性化税制について述べていきます。

1.中小企業投資促進税制

 まず、中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)について、その概略を記していきます。

(1) 制度概要

 青色申告書を提出する中小企業者等(従業員数1,000人以下の個人事業主を含む)が、新品の機械装置等を取得等し指定事業の用に供した場合に、その指定事業の用に供した日を含む事業年度において、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除が選択適用できます。
 ただし、資本金3,000万円超1億円以下の法人は、税額控除の適用はありません。
 なお、従来の上乗せ措置(生産性向上設備等を取得した場合の即時償却又は10%(7%)税額控除)が改組されて、中小企業経営強化税制が創設されました。

(2) 適用期間

 1998年(平成10年)6月1日~2019年(平成31年)3月31日に取得した資産

※2019年度(平成31年度)税制改正によって、適用期限が2021年(平成33年)3月31日まで2年延長されることになりました。

(3) 指定事業

 製造業、建設業、農業、卸売業、小売業、サービス業等の一定の事業
不動産業、物品賃貸業、電気業、水道業、娯楽業(映画業を除く)、飲食店業のうち料亭・バー・キャバレー・ナイトクラブその他これらに類する事業、等は対象になりません。
 また、性風俗関連特殊営業に該当する事業も対象となりません。

(4) 対象設備

 ① 機械及び装置・・・1台160万円以上
 ② 測定工具及び検査工具・・・1台120万円以上、1台30万円以上かつ複数合計120万円以上
 ③ 一定のソフトウェア・・・一のソフトウェアが70万円以上、複数合計70万円以上
 ④ 貨物自動車(車両総重量3.5トン以上)
 ⑤ 内航船舶(取得価格の75%が対象)

(5) 措置内容

 特別償却(取得価額×30%)又は税額控除(取得価額×7%)
 税額控除額は、当期の法人税額の20%が上限です。
 (資本金3,000万円超1億円以下の法人は、税額控除の適用はありません)

(6) 留意事項

 中小企業等経営強化法の認定がなくても活用できます。

2.商業・サービス業・農林水産業活性化税制

 次に、商業・サービス業・農林水産業活性化税制(特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は税額控除)について、その概要を記していきます。

(1) 制度概要

 認定経営革新等支援機関等(認定を受けた税理士、公認会計士、商工会議所等)から経営改善に関する指導及び助言を受けた青色申告書を提出する中小企業者等(従業員数1,000人以下の個人事業主を含む)が、新品の経営改善に資する器具備品や建物附属設備を導入した場合に、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除が選択適用できます。
 なお、資本金3,000万円超1億円以下の法人は、税額控除の適用はありません。

(2) 適用期間

 2013年(平成25年)4月1日~2019年(平成31年)3月31日に取得した資産

※2019年度(平成31年度)税制改正によって、適用期限が2021年(平成33年)3月31日まで2年延長されることになりました。

(3) 指定事業

 卸売業、小売業、農林水産業、サービス業等
製造業、建設業、医療業、娯楽業(映画業を除く)、等は対象になりません。
 また、風俗営業法上の風俗営業に該当する料亭・バー・キャバレー・ナイトクラブその他これらに類する事業については、生活衛生同業組合の組合員が事業を行う場合に限り対象となります。
 なお、性風俗関連特殊営業に該当する事業については対象となりません。

(4) 対象設備

 ① 器具備品・・・1台の取得価額が30万円以上
 ② 建物附属設備・・・一の取得価額が60万円以上

(5) 確認者

 認定経営革新等支援機関等(認定を受けた税理士、公認会計士、商工会議所等)

※2019年度(平成31年度)税制改正で、経営改善設備の投資計画の実施を含む経営改善により、売上高又は営業利益の伸び率が年2%以上となる見込みであることについて認定経営革新等支援機関等の確認を受けることが適用要件に加わりました。
 この改正は、2019年(平成31年)4月1日以後に取得等をする経営改善設備に適用されます。
 なお、同日前に交付を受けた経営改善指導助言書類に係る経営改善設備のうち同年9月30日までに取得等をしたものについては、上記の確認を受けることを不要とする経過措置が講じられます。

(6) 措置内容

 特別償却(取得価額×30%)又は税額控除(取得価額×7%)
 税額控除額は、当期の法人税額の20%が上限です。
 (資本金3,000万円超1億円以下の法人は、税額控除の適用はありません)

(7) 留意事項

 中小企業等経営強化法の認定がなくても活用できます。

事前確定届出給与の届出期限と支給額の注意点

 従来は臨時的ないわゆる役員賞与については損金算入が認められていませんでしたが、事前確定届出給与の制度を利用すれば、臨時的な給与(賞与)であっても一定の要件を満たせば損金算入が可能です。
 事前確定届出給与は、その役員の職務につき、所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与で、一定の日までに納税地の所轄税務署長に対して、あらかじめ確定している支給時期、支給金額のほか必要事項を記載した届出をしている場合の当該給与をいいます。 

1.事前確定届出給与に関する届出書の提出期限

 この制度を利用するには、「事前確定届出給与に関する届出書」を納税地の所轄税務署長に提出する必要があるのですが、その提出期限に注意しなければなりません。
 以下では、3月決算法人が2019年(平成31年)5月27日に定時株主総会を開催した場合について、届出書の記載文言の内容を確認しながら、提出期限がいつになるかを述べていきます。

①「事前確定届出給与に係る株主総会等の決議をした日及びその決議をした機関等」は、「株主総会」や「取締役会」など事前確定届出給与に関する決議をした機関名と決議日を記入します。
 今回の例では、「決議をした日」が2019年(平成31年)5月27日、「決議をした機関等」が株主総会となります。

②「事前確定届出給与に係る職務の執行を開始する日」は、一般的に役員給与は定時株主総会から次の定時株主総会までの間の職務執行の対価であると考えられるため、定時株主総会開催日を記入します。
 今回の例では、2019年(平成31年)5月27日となります。

③「届出期限」欄の「①又は②に記載した日のうちいずれか早い日から1月を経過する日」は、①又は②の翌日を起算日として暦に従って計算します。
 今回の例では、①②ともに5月27日ですので、その翌日の5月28日が起算日となり6月27日が「1月を経過する日」になります。

④「届出期限」欄の「会計期間4月経過日等」は、会計期間開始の日から4月を経過する日を記入します。
 今回の例では、会計期間開始日が2019年(平成31年)4月1日ですので2019年(平成31年)7月31日となります。

⑤ 以上より、届出期限は③と④のうちいずれか早い日となりますので、今回の例では、2019年(平成31年)6月27日が届出期限となります。

2.支給額に超過額又は未払額が発生した場合

 事前確定届出給与は、届出通りの日に届出通りの金額を支給しなければなりません。
 この届出支給金額よりも多く支給した場合には、超過部分だけではなく、届出支給金額部分も含めた支給金額全額が損金不算入となります。
  また、届出支給金額よりも少なく支給した場合にも、当該支給金額全額が損金不算入となります。 未払部分をその後一括して又は数回に分割して支給し、当該支給金額との合計が届出支給金額と一致したとしても、その全額が損金不算入となります。
 事前確定届出給与は、支給時期及び支給金額が事前に確定していることが要件となっているため、超過額や未払額が発生するということは事前に確定していなかったということであり、したがって事前確定届出給与には該当せず、損金不算入となります。


短期前払費用の損金算入の注意点

1.年払い契約と決算月の支払いが必要

 顧問先であるA社(3月決算、5月申告)から、次のような相談がありました。
「契約している駐車場の家賃を2月に1年分(4月分~翌年3月分)前払いして、当期の費用として計上することに問題はないか?」
 A社は、法人税基本通達2-2-14(短期の前払費用)を適用し、その支払額の全額をその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入することを考えているようでした。
 短期前払費用は、次の要件を満たす場合は、その支払時に損金算入することが認められています。

(1) 一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるものであること(等質・等量のサービスであることが必要です)

(2) その支払った日から1年以内に提供を受ける役務にかかるものであること

(3) 継続的に支払事業年度において経費処理していること

(4) 収益の計上と対応させる必要があるものでないこと 

 A社の事例を上記要件にあてはめて考えてみると、上記のうち(1)~(3)の要件に該当しない可能性がありました。

(1) A社は契約に基づいて家賃を月払いしているため、貸主の承諾なしに年払いに変えたとしても、要件を満たしません。契約を年払いに変更する必要があります。

(2) 2月に1年分(4月〜翌年3月分)を前払いしても、支払った日から1年を越える期間を対象とする前払費用であるため、要件を満たしません。決算月の3月に1年分を前払いする必要があります。
 なお、4月~翌年3月分を例えば3月20日に前払いする場合、翌年3月20日以降の分は終期が1年を超えるように思われますが、国税庁の質疑応答事例において適用して差し支えない事例として例示されています。

(3) 継続的な経費処理(支払)を前提条件とすることから、利益が出たから今期だけまとめて1年分支払うというような利益操作のための支出は認められません。来期以降も継続して1年分の家賃を前払いして経費処理する必要があります。

 なお、(4)の要件に抵触するのは、例えば賃借しているマンション等を転貸(又貸し)することによって賃貸料収入を得ている場合です。このようなケースで支払う家賃は、収益(賃貸料収入)に直接対応する費用であるため、短期前払費用の特例を受けることはできません。

2.前払対象期間が1年超の場合は不適用

 短期前払費用について、もう1点補足すべき点があります。それは、前払対象期間が1年超となる場合は、1年以内部分と1年超部分に分けたとしても、1年以内部分だけを損金算入することは認められないということです。

 例えば、当期首に火災保険料を360,000円(3年分)支払った場合、当期に対応する保険料は360,000円×12ヶ月/36ヶ月=120,000円となり、これを損金算入できます。
 残りの2年分(360,000円-120,000円=240,000円)については、翌期以降に対応する(前払対象期間が1年超となる)保険料となりますので損金算入することはできず、全額を資産計上しなければなりません。 

 ただし、貸借対照表へは、1年以内部分と1年超部分に分けて表示しなければなりません。
 1年基準(ワン・イヤー・ルール)によって、貸借対照表日(決算日)の翌日から起算して1年以内に費用となる120,000円は「前払費用(流動資産)」、1年を超える期間を経て費用となる120,000円は「長期前払費用(投資その他の資産)」として表示します。

中小企業等経営強化法に基づく太陽光発電設備の優遇税制について

1.中小企業経営強化税制

(1) 全量売電の太陽光発電設備は対象外

 中小企業経営強化税制は、2017年(平成29年)4月1日から2019年(平成31年)3月31日までの期間に対象設備の取得等をして指定事業の用に供したときに、即時償却又は7%の税額控除(資本金3,000万円以下の法人又は個人事業主は10%の税額控除)が認められるというものです。

 この対象設備には太陽光発電設備も含まれますが、売電のみを目的とする場合(全量売電)は電気業に該当するため、中小企業経営強化税制の対象外となります。

 上述したように、中小企業経営強化税制は「指定事業」の用に供したときに認められるものです。
「指定事業」とは、具体的には、製造業、建設業、鉱業、卸売業、道路貨物運送業、倉庫業、港湾運送業、ガス業、小売業、料理店業その他の飲食店業、一般旅客自動車運送業、海洋運輸業及び沿海運輸業、内航船舶貸渡業、旅行業、こん包業、郵便業、損害保険代理業、情報通信業、学術研究、専門・技術サービス業、宿泊業、洗濯・理容・美容・浴場業、その他の生活関連サービス業、映画業、教育・学習支援業、医療、福祉業、協同組合、サービス業(廃棄物処理業、自動車整備業、機械等修理業、職業紹介・労働者派遣業、その他の事業サービス業)、農業、林業、漁業、水産養殖業、不動産業、物品賃貸業、広告業、社会保険・社会福祉・介護事業です。

 この「指定事業」に電気業は含まれていないため、全量売電型の太陽光発電設備は中小企業経営強化税制の対象にはなりません。
 ただし、発電した電気の一部をその指定事業に使用している場合(余剰売電)や自家消費の場合は、対象となります。

(2) 2019年度(平成31年度)税制改正の内容

 2019年度(平成31年度)税制改正で、中小企業経営強化税制については、特定経営力向上設備等の範囲の明確化及び適正化を行った上で、適用期限が2021年(平成33年)3月31日まで2年延長されることになりました。

「特定経営力向上設備等の範囲の明確化及び適正化」とは、具体的には、2分の1超の売電を見込む太陽光発電設備を対象設備から除外することを意味します。

 上記(1)でみたように、電気業は指定事業に含まれていないため全量売電を目的とした太陽光発電設備は中小企業経営強化税制の対象になりませんが、発電した電気の一部を指定事業に使用(例えば自社の製造工場で使用)し、余った電気を売電(余剰売電)する場合は対象となります。
 ところが、最近では、太陽光発電設備の敷地に自動販売機を設置し、そこにわずかな電気を使うことで形式的に指定事業に係る要件を満たすといった、制度趣旨に反するような事例がみられるようになったことから、2分の1超の売電を見込む設備については対象設備から除外されることとなりました。

 また、売電を予定している場合には、経営力向上計画の認定申請時に一定の書類(発電の用に供する設備の概要や当該設備による発電量等の見込みを記載)の添付が義務付けられました。

 以上の改正は2019年(平成31年)4月1日に施行される予定です。

 ※2019年(平成31年)3月16日記事更新 

2.固定資産税の特例

 一方、太陽光発電設備は、全量売電、余剰売電、自家消費を問わず、固定資産税の特例措置の適用対象となります。
  固定資産税の特例措置とは、2016年(平成28年)7月1日から2019年(平成31年)3月31日までの期間内に認定を受けた経営力向上計画に基づき対象となる機械装置を取得した場合、その翌年度から3年度分に限り、その機械装置に係る償却資産の課税標準が2分の1に軽減されるというものです(2017年(平成29年)4月1日から対象となる資産等が変更となっています)。

 この特例の適用を受けるためには、償却資産申告書に以下の書類を添付しなければなりません(大阪市の場合)。
 ①課税標準特例該当資産明細合計表
 ②工業会証明書
 ③経営力向上計画申請書の写し
 ④経営力向上計画認定書の写し

※この特例は2019年(平成31年)3月31日をもって終了します。期限の延長は行われません。
 2018年度(平成30年度)税制改正で創設された新固定資産税の特例については、本ブログ記事「生産性向上特別措置法による新固定資産税の特例」を参照してください。

中小企業倒産防止共済掛金の損金算入要件等

 企業や個人事業者の節税対策として、中小企業倒産防止共済が利用されることがあります。
 決算間近になって利益が予想よりも多く出ていた場合、中小企業倒産防止共済に加入し1年分の掛金を前納することで、最大で240万円の経費を計上することができます。

1.損金算入要件

 ただし、この掛金は本来は積立金ですので、経費にするためには明細書の添付が必要です。
 法人の場合は、「別表10(6)」と「適用額明細書」の添付が必要です。具体的には、別表10(6)の「Ⅲ 特定の基金に対する負担金等の損金算入に関する明細書」欄 に、次のように記載します。

① 基金に係る法人名 → 独立行政法人中小企業基盤整備機構
② 基金の名義 → 中小企業倒産防止共済
③ 告示番号 → 記入しません
④ 当期に支出した負担金等の額 → 掛金の支出金額
⑤ 同上のうち損金の額に算入した金額 → 掛金の支出金額

 個人事業者の場合は、中小企業基盤整備機構ホームページにある様式例「中小企業倒産防止共済掛金の必要経費算入に関する明細書」を任意の用紙で作成し、確定申告書に添付する必要があります。

2.前納申出書の提出期限

 この節税対策は加入初年度のみ効果がありますが、次年度以降も前納を希望する場合は、事前に前納申出書の提出が必要です。
 この前納申出書は、前納を希望する月の5日(土曜・日曜・祝日の場合は翌営業日)までに中小機構に届くように提出しないといけないのですが、委託団体を通して中小機構に提出する場合は、前納希望月の前月中に委託団体に提出する必要がありますので注意して下さい。
 なお、前納申出書を提出しない場合や残高不足で口座振替できなかった場合は、月払いになります。

3.個人事業の場合の注意点

 このように中小企業倒産防止共済の掛金は、法人の場合は「損金」に、個人事業の場合は「必要経費」に算入できます。
 ただし、個人事業の場合は、事業所得以外の収入(不動産所得等)は必要経費としての算入が認められていません。

4.解約手当金

 掛金の一部を引き出すことはできませんが、解約はいつでもできます。解約の手続きをすることで、掛金の納付月数と掛金総額に応じた解約手当金(最大で800万円)を受け取ることができます。
 ただし、納付月数が12か月未満の場合、解約手当金は受け取れません。また、納付月数が40か月未満の場合は、受け取れる金額が掛金総額を下回りますのでご注意ください。
 なお、解約手当金は税法上、法人の場合は益金の額、個人の場合は事業所得の収入金額となります。

特別償却と割増償却の違い

 減価償却は、大きく分けると「普通償却」と「特別償却」があります。
 法人税法で定める定額法や定率法で計算する通常の減価償却を「普通償却」といいます。
 この償却とは別に、租税政策的な目的などから通常の計算をした償却費に加えて余分に減価償却することが認められています。これを「特別償却」といいます。
 さらに、この特別償却は「初年度特別償却」と「割増償却」に分かれます。実務上、特別償却というときは初年度特別償却を指す場合が多いことから、ここでは初年度特別償却のことを特別償却と呼びます。
 この特別償却と割増償却ですが、よく似た制度なので両者を混同してしまうケースも見受けられます。
 以下では、両者の相違点について整理してみます。

1.メリット

 特別償却も割増償却も、早期に費用化することによる固定資産の陳腐化リスクに備えるメリットがあります。

2.計算方法

 特別償却は、特別償却限度額(取得価額×特別償却率)が、普通償却に上乗せされます。割増償却は、割増償却限度額(普通償却限度額×割増償却率)が、普通償却に上乗せされます。
  特別償却限度額=取得価額×特別償却率
  割増償却限度額=普通償却限度額×割増償却率
 つまり、特別償却は取得価額を基礎として計算するのに対し、割増償却は普通償却を基礎として計算します。

3.計算例

 次の簡単な数値を使って両者の計算例を示します。
  取得価額100万円
  耐用年数4年(償却率0.25)
  特別償却率20%
  割増償却率20%(適用期間2年)

(1) 特別償却を行った場合

 ①1年目
  普通償却限度額=100万円×0.25=25万円
  特別償却限度額=100万円×20%=20万円
  合計=25万円+20万円=45万円
 ②2年目
  普通償却限度額=100万円×0.25=25万円
  特別償却限度額=0(適用があるのは初年度だけです
  合計=25万円+0=25万円
 ③3年目
  普通償却限度額=100万円×0.25=25万円
 ④4年目
  普通償却限度額=100万円-(45万円+25万円+25万円)=5万円

(2) 割増償却を行った場合

 ①1年目
  普通償却限度額=100万円×0.25=25万円
  割増償却限度額=25万円×20%=5万円
  合計=25万円+5万円=30万円
 ②2年目
  普通償却限度額=100万円×0.25=25万円
  割増償却限度額=25万円×20%=5万円
  合計=25万円+5万円=30万円
 ③3年目
  普通償却限度額=100万円×0.25=25万円
  割増償却限度額=0(計算例では適用期間を2年としています
  合計=25万円+0=25万円
 ④4年目
  普通償却限度額=100万円-(30万円+30万円+25万円)=15万円

4.適用期間

 特別償却は初年度だけですが、割増償却は一定期間の適用があります。

5.減価償却費の総額

 特別償却も割増償却も、減価償却費の総額は普通償却の場合と同じです。