電子取引データ保存への対応が難しい場合は猶予措置で紙保存!

1.宥恕措置は令和5年12月31日で終わる

 2022(令和4)年1月1日から施行されている改正電子帳簿保存法は、次の3つに区分されています。

・電子帳簿等保存
・スキャナ保存
・電子取引データ保存

 上記の3つの区分のうち、改正電子帳簿保存法で義務化されたのは電子取引データ保存であり、他の2つについては任意(利用したい事業者(対応可能な事業者)のみが対応すればいい)とされています。
 そこで、法人・個人を問わず全ての事業者が最低限対応しなければならないのは電子取引データ保存ということになりますが、電子データを単に保存するのではなく保存要件(真実性と可視性の確保)に従った電子データの保存が必要であったため、長年紙ベースで保存をしてきた事業者の対応は進みませんでした(保存要件については、本ブログ記事「事務処理規程と検索機能が実務対応の鍵:電子取引データ保存」をご参照ください)。
 このような事業者の状況を考慮して、改正法施行日直前の2022(令和4)年度税制改正大綱において2年間の宥恕措置が設けられ、2023(令和5)年12月31日までに⾏う電子取引については、保存すべき電子データをプリントアウトして紙で保存し、税務調査等の際に提示・提出できるようにしていれば差し⽀えないとされました。
 しかし、この宥恕措置は適用期限である2023(令和5)年12月31日をもって廃止されるため、2024(令和6)年1月1日からは保存要件に従った電子データの保存が必要となります。

2.猶予措置により紙保存でも電帳法違反にならない

 宥恕措置によって、2022(令和4)年1月1日から施行されている改正電子帳簿保存法のスタートは、実質的に2年間先送りにされたといえます。
 この2年間を電子取引データ保存への対応準備期間とするのが宥恕措置の趣旨でしたが、現状では事業者の準備が大きく進んだとはいえません。
 こうした状況を受けて、2023(令和5)年度税制改正では、宥恕措置に代わって猶予措置が設けられ、次の(1)(2)の要件をいずれも満たしている場合には、改ざん防⽌(真実性)や検索機能(可視性)など保存時に満たすべき要件に沿った対応は不要となり、電子データを単に保存しておくことができることとされました。

(1) 保存時に満たすべき要件に従って電子データを保存することができなかったことについて、所轄税務署⻑が相当の理由があると認める場合(事前申請等は不要)
(2) 税務調査等の際に、電子データの「ダウンロードの求め」及びその電子データをプリントアウトした書面の提示・提出の求めにそれぞれ応じることができるようにしている場合

 つまり、この猶予措置により、上記の要件を満たせば2024(令和6)年1月1日以降も電子データの紙保存が認められることになります。

3.宥恕措置と猶予措置の相違点

 宥恕措置も猶予措置も、要件に従った電子データの保存ができない場合は紙保存を認めるという点は同じですが、異なる点もあります。
 宥恕措置とは、①2年間に限り、②電子帳簿保存法で定められた要件に従って電子データを保存することができなかったとしても、③やむを得ない事情があり、④税務調査等の際に電子データをプリントアウトした書面の提示・提出ができるなら、紙保存を認めるというものです。
 一方、猶予措置とは、①電子帳簿保存法で定められた要件に従って電子データを保存することができなかったとしても、②相当の理由があり、③税務調査等の際に電子データのダウンロードの求めに応じ、電子データをプリントアウトした書面の提示・提出ができるなら、紙保存を認めるというものです。
 両者を比較すると、以下の相違点があることがわかります。
 第一に、宥恕措置は2年間の経過措置であるのに対し、猶予措置は本則として規定された恒久的措置であることです。
 したがって、猶予措置の適用を受けることができる限り、電子データの紙保存がいつまでも認められることになります。
 第二に、宥恕措置における「やむを得ない事情」が、猶予措置では「相当の理由」に変わっている点です。
 宥恕措置での「やむを得ない事情」とは、要件に従って電磁的記録の保存を行うための準備を整えることが困難な事情等(保存に係るシステム等や社内のワークフローの整備が間に合わない等)が該当します。
 そして、税務調査等の際に、税務職員から「やむを得ない事情」について確認等があった場合には、各事業者における対応状況や今後の見通しなどを、具体的でなくても構わないので適宜知らせることで差し支えないとされています。
 猶予措置における「相当の理由」については、国税庁から今後示されるFAQや通達の解説を待つことになりますが、宥恕措置と同じように、電子化対応が難しい理由や進捗状況などを説明すれば認められると思われます。
 第三に、宥恕措置では電子取引データの「ダウンロードの求め」に応じる必要はありませんでしたが、猶予措置ではプリントアウトした書面の提示・提出に加え、電子データについても「ダウンロードの求め」に応じる必要があります。
 宥恕措置では紙での提示・提出が認められていましたが、猶予措置では紙に加えてデータ形式でも提示・提出できるようにする必要があります。
 したがって、猶予措置でも紙保存が認められますが、電子データを保存しなくてもいいということではありません。電子帳簿保存法が定める要件に沿った対応は不要ですが、電子データを「単に」保存しておく必要があります。

賃上げ促進税制における出向者の取扱い

 賃上げ促進税制は、青色申告書を提出している中小企業者等が、一定の要件を満たした上で前年度より給与等の支給額を増加させた場合、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です(詳細については、本ブログ記事「中小企業者等の賃上げ促進税制《令和4年4月1日~令和6年3月31日開始事業年度》」をご参照ください)。

 この賃上げ促進税制においては、雇用者給与等支給額及び比較雇用者給与等支給額に、給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額(雇用安定助成金額を除きます)がある場合には、当該金額を控除して要件の適用判定を行うこととされています。

 今回は、「給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額」のうち、出向先法人が出向元法人に支払う給与負担金の取扱いについて確認します。

1.出向者の賃金台帳が出向元法人にある場合

 「給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額」は雇用者給与等支給額から控除するため、法人の使用人が他の法人に出向した場合において、その出向した使用人に対する給与を出向元法人(出向者を出向させている法人)が支給する際、出向元法人が出向先法人(出向元法人から出向者の出向を受けている法人)から支払を受けた出向先法人が負担すべき給与に相当する金額(給与負担金)は、雇用者給与等支給額から控除します。

 例えば、出向元法人に出向者の賃金台帳がある場合、出向元法人が出向者の給与に充てる給与負担金を出向先法人から受け取っているので、出向元法人の雇用者給与等支給額から当該給与負担金を控除しなければなりません。
 一方、出向先法人では出向者の賃金台帳がないため、給与負担金を雇用者給与等支給額の計算に含めることはできません。

2.出向者の賃金台帳が出向先法人にある場合

 出向先法人が出向元法人に出向者に係る給与負担金を支払う場合において、出向先法人の賃金台帳に当該出向者を記載しているときは、出向先法人が支払う給与負担金は出向先法人の雇用者給与等支給額に含まれます。

 出向先法人の賃金台帳に当該出向者の記載がない場合は、出向先法人が支払う給与負担金は出向先法人の雇用者給与等支給額に含まれません。

 例えば、出向先法人に出向者の賃金台帳がある場合、出向先法人が出向元法人に支払う給与負担金は、出向先法人の雇用者給与等支給額に含めます。
 一方、出向元法人では出向者の賃金台帳がないため、雇用者給与等支給額に含めることはできません。

中小企業者等の賃上げ促進税制《令和4年4月1日~令和6年3月31日開始事業年度》

1.簡素化された所得拡大促進税制

 賃上げ促進税制は、青色申告書を提出している中小企業者等が、一定の要件を満たした上で前年度より給与等の支給額を増加させた場合、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です。
 賃上げ促進税制は、従来からあった所得拡大促進税制が2022(令和4)年度税制改正で呼称が改められたものです。基本的な内容は所得拡大促進税制を踏襲しつつも、適用要件などの見直しが行われ、制度自体はより簡素化されたものとなりました。
 2022(令和4)年度税制改正による主な変更点は、次のとおりです。

・上乗せ要件を簡素化&控除率引き上げ(控除率最大40%) 
・教育訓練費増加要件に係る明細書の「添付義務」を「保存義務」へ変更
経営力向上要件は廃止 
出所:中小企業庁ホームページ

 以下では、賃上げ促進税制の内容について確認します。

2.賃上げ促進税制の内容

 2022(令和4)年度税制改正による賃上げ促進税制の内容は、次のとおりです。

(1) 制度概要

 中小企業者等で青色申告書を提出するものが、国内雇用者※1に対して給与等※2を支給する場合において、一定の要件(通常要件)を満たす場合には、その雇用者給与等支給増加額の15%(上乗せ要件を満たす場合は最大40%)の税額控除を適用できます。

※1 国内雇用者とは、法人又は個人事業主の使用人のうちその法人又は個人事業主の国内に所在する事業所につき作成された賃金台帳に記載された者を指します。パート、アルバイト、日雇い労働者も含みますが、使用人兼務役員を含む役員及び役員の特殊関係者、個人事業主の特殊関係者は含まれません。
 なお、特殊関係者とは、法人の役員又は個人事業主の親族などを指します。親族の範囲は6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族までが該当します。また、当該役員又は個人事業主と婚姻関係と同様の事情にある者、当該役員又は個人事業主から生計の支援を受けている者等も特殊関係者に含まれます。

※2 給与等とは、俸給・給料・賃金・歳費及び賞与並びに、これらの性質を有する給与(所得税法第28条第1項に規定する給与等)をいいます。したがって、例えば、所得税法第9条(非課税所得)の規定により非課税とされる給与所得者に対する通勤手当等についても、原則的には本制度における「給与等」に含まれることになります。ただし、賃金台帳に記載された支給額のみを対象に、所得税法上課税されない通勤手当等の額を含めずに計算する等、合理的な方法により継続して国内雇用者に対する給与等の支給額の計算をすることも認められます。
 なお、退職金など、給与所得とならないものについては、原則として給与等に含まれません。

(2) 適用期間

 2022(令和4)年4月1日から2024(令和6)年3月31日までの間に開始する各事業年度(個人事業主は2023(令和5)年及び2024(令和6)年の各年が対象)

(3) 適用対象者

 適用対象となる中小企業者等とは、青色申告書を提出する者のうち、以下の①~③に該当するものを指します。

① 以下のイ、ロのいずれかに該当する法人(ただし、前3事業年度の所得金額の平均額が15億円を超える法人は対象外)

イ.資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人
ただし、以下の法人は対象外
(イ) 同一の大規模法人※3から2分の1以上の出資を受ける法人
(ロ) 2以上の大規模法人※3から3分の2以上の出資を受ける法人

※3 大規模法人とは、資本金の額若しくは出資金の額が1億円超の法人、資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人超の法人又は大法人(資本金の額又は出資金の額が5億円以上である法人等)との間に当該大法人による完全支配関係がある法人等をいい、中小企業投資育成株式会社を除きます。

ロ.資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人以下の法人

② 常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主

③ 農業協同組合、農業協同組合連合会、中小企業等協同組合、出資組合である商工組合及び商工組合連合会、内航海運組合、内航海運組合連合会、出資組合である生活衛生同業組合、漁業協同組合、漁業協同組合連合会、水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会、森林組合並びに森林組合連合会

(4) 適用要件

 通常要件(税額控除率15%)と上乗せ要件(税額控除率15%と10%)は、次のとおりです。

① 通常要件(税額控除率15%)
 雇用者給与等支給額が前事業年度と比べて1.5%以上増加していること

雇用者給与等支給額(適用年度)- 比較雇用者給与等支給額(前事業年度)/比較雇用者給与等支給額(前事業年度) ≧1.5%

  雇用者給与等支給額※4及び比較雇用者給与等支給額※5に、給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額(雇用安定助成金額※6を除きます)がある場合には、当該金額を控除して要件の適用判定を行います。

※4 雇用者給与等支給額とは、適用年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される全ての国内雇用者に対する給与等の支給額をいいます。

※5 比較雇用者給与等支給額とは、前事業年度における雇用者給与等支給額をいいます。

※6 雇用安定助成金額(国又は地方公共団体から受ける雇用保険法第62条第1項第1号に掲げる事業として支給が行われる助成金その他これに類するものの額)には、以下のものが該当します。
a 雇用調整助成金、産業雇用安定助成金又は緊急雇用安定助成金の額
b aに上乗せして支給される助成金の額その他のaに準じて地方公共団体から支給される助成金の額

出所:中小企業庁ホームページ

② 上乗せ要件(税額控除率15%)
 雇用者給与等支給額が前事業年度と比べて2.5%以上増加していること

雇用者給与等支給額(適用年度)- 比較雇用者給与等支給額(前事業年度)/比較雇用者給与等支給額(前事業年度) ≧2.5%

 雇用者給与等支給額及び比較雇用者給与等支給額に、給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額(雇用安定助成金額を除きます)がある場合には、当該金額を控除して要件の適用判定を行います。

③ 上乗せ要件(税額控除率10%)
 教育訓練費の額が前事業年度と比べて10%以上増加していること

教育訓練費の額(適用年度)- 比較教育訓練費の額(前事業年度)/比較教育訓練費の額(前事業年度) ≧10%

 教育訓練費とは、所得の金額の計算上損金の額に算入される、国内雇用者の職務に必要な技術又は知識を習得させ、又は向上させるために支出する費用のうち一定のものをいいます。
 具体的には、法人が教育訓練等を自ら行う場合の費用(外部講師謝金等、外部施設使用料等)、他の者に委託して教育訓練等を行わせる場合の費用(研修委託費等)、他の者が行う教育訓練等に参加させる場合の費用(外部研修参加費等)などをいいます。
 なお、教育訓練の対象者は法人又は個人の国内雇用者です。したがって、以下の者は国内雇用者ではないため対象外となります。

イ.当該法人の役員又は個人事業主
ロ.使用人兼務役員
ハ.当該法人の役員又は個人事業主の特殊関係者((イ) 役員の親族、(ロ) 事実上婚姻関係と同様の事情にある者、(ハ)役員から生計の支援を受けている者、(ニ) (ロ)又は(ハ)と生計を一にする親族)
ニ.内定者等の入社予定者

(5) 税額控除額

① 通常要件(税額控除率15%)を満たす場合
 控除対象雇用者給与等支給増加額の15%を法人税額又は所得税額から控除します。ただし、税額控除額は法人税額又は所得税額の20%が上限となります。

税額控除額 = 控除対象雇用者給与等支給増加額 ×15%

 控除対象雇用者給与等支給増加額とは、適用年度の雇用者給与等支給額から前事業年度の比較雇用者給与等支給額を控除した金額をいいます。ただし、調整雇用者給与等支給増加額を上限とします。
 調整雇用者給与等支給増加額とは、適用年度の雇用安定助成金額を控除した雇用者給与等支給額から、前事業年度の雇用安定助成金額を控除した比較雇用者給与等支給額を控除した金額をいいます。
 なお、雇用者給与等支給額及び比較雇用者給与等支給額に、給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額(雇用安定助成金額を除きます)がある場合には、当該金額を控除して計算を行います。

出所:中小企業庁ホームページ

② 上乗せ要件(税額控除率15%)を満たす場合
 上記(5)①の通常要件の控除率15%に15%が上乗せされて、税額控除率は30%となります(通常要件15%+上乗せ要件15%=30%)。
 下記③を併用する場合は、税額控除率は40%となります(通常要件15%+上乗せ要件15%+上乗せ要件10%=40%)。
 ただし、税額控除額は法人税額又は所得税額の20%が上限となります。

③ 上乗せ要件(税額控除率10%)を満たす場合
 上記(5)①の通常要件の控除率15%に10%が上乗せされて、税額控除率は25%となります(通常要件15%+上乗せ要件10%=25%)。
 上記②を併用する場合は、税額控除率は40%となります(通常要件15%+上乗せ要件15%+上乗せ要件10%=40%)。
 ただし、税額控除額は法人税額又は所得税額の20%が上限となります。

中間法人税等還付金の会計処理と別表四・五(一)・五(二)の記載例

 当期の決算で、法人税・住民税・事業税(以下「法人税等」といいます)の年税額が中間納付税額より少なくなった場合は、その差額が還付されます。
 中間納付税額が還付される場合の会計処理とそれに伴う税務処理(別表調整)については、いろんな書籍等で解説されていますが、その多くが別表四と別表五(一)の関連を示すに留まり、別表五(二)に言及しているものはあまり見かけません。
 また、事業税の税務処理が法人税・住民税と異なるため、事業税と法人税・住民税を分けて解説している書籍等が多いといえます。これは、分けて解説することによって読者の理解を促すという執筆者の意図によるものですが、一方で全体像がつかみにくいという面があります。
 以下ではこれらの点を踏まえて、中間納付税額還付金の会計処理とそれに伴う別表四・別表五(一)・別表五(二)の記載例を確認します。

1.中間納付税額還付金の会計処理

 当期の決算で、中間(予定)納付した法人税等の税額が還付される場合の会計処理は何通りかありますが、会計処理方法によって別表調整はすべて変わってきます。
 中間(予定)納付はあくまでも年度決算に基づいた確定申告の予納であり、すべて確定申告で精算されるものであること、また、簿記学習者の多くが慣れ親しんだ方法であると思われることから、ここでは仮払金として資産計上する方法を採用することとします(具体的な勘定科目は、中間納付税額は「仮払法人税等」、中間納付税額還付金は「未収入金」とします)。

【設例】
(1) 当期分の中間納付税額(仮払法人税等)
① 法人税・・・・・707,400円
② 地方法人税・・・72,900円
③ 事業税・・・・・285,700円
④ 法人県民税・・・18,000円(うち均等割11,000円)
⑤ 法人市民税・・・67,400円(うち均等割25,000円)
※ ①~⑤の合計・・1,151,400円

(2) 当期の年度決算に基づく年税額(法人税、住民税及び事業税)
① 法人税・・・・・0円
② 地方法人税・・・0円
③ 事業税・・・・・0円
④ 法人県民税・・・22,000円
⑤ 法人市民税・・・45,800円
⑥ 受取利息の源泉徴収税額(所得税及び復興特別所得税)・・・2,783円
※ ①~⑥の合計・・70,583円

(3) 中間納付税額還付金(未収入金)
① 法人税・・・・・707,400円
② 地方法人税・・・72,900円
③ 事業税・・・・・285,700円
④ 法人県民税・・・7,000円
⑤ 法人市民税・・・42,400円
※ ①~⑤の合計・・1,115,400円

(4) 確定納付税額(未払法人税等)
① 法人県民税・・・11,000円
② 法人市民税・・・20,800円
※ ①~②の合計・・31,800円

(1) 中間納付時の会計処理

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
仮払法人税等 1,151,400 普通預金 1,151,400

(2) 年度決算時の会計処理

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
法人税、住民税及び事業税 70,583 仮払法人税等 2,783
未収入金 1,115,400 仮払法人税等 1,151,400
    未払法人税等 31,800

(参考)受取利息の源泉徴収税額(所得税及び復興特別所得税)2,783円の仕訳

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
普通預金 15,389 受取利息 18,172
仮払法人税等 2,783    

※ 所得税及び復興特別所得税の税率:15.315%

2.別表四、五(一)、五(二)の記載例

 上記1の設例における会計処理をした場合の別表四、五(一)、五(二)の記載例は、次のとおりです。

 法人税等の中間納付税額の還付金を未収入金で会計処理した場合の別表調整のポイントは次のとおりです。

(1) 中間法人税・地方法人税と中間住民税については、当期の未収計上額を別表四の2番3番の①②で加算し、同額を「仮払税金認定損」として21番の①②で減算します。
 また、別表四で減算した仮払税金認定損の金額を、「仮払税金」として別表五(一)の3番の③(増欄)に△を付して記入し、マイナスの積立金として繰越処理をします。
 同時に、還付されるべき未収計上額を、「未収還付法人税等」「未収還付道府県民税」「未収還付市民税」として別表五(一)の22番・23番・24番の③(増欄)に記入し、繰越処理をします。

(2) 中間事業税については、当期の未収計上額を別表四で加算せず、「仮払税金認定損」として別表四の21番の①②で減算します。
 また、別表四で減算した仮払税金認定損の金額を、「仮払税金」として別表五(一)の3番の③(増欄)に△を付して記入し、マイナスの積立金として繰越処理をします。

(3) 上記(1)(2)における法人税・地方法人税・住民税と事業税の処理の違いは、別表四での加減算にあります。
 すなわち、法人税・地方法人税と住民税は別表四で加算・減算するのに対して、事業税は加算せずに減算するだけということです。

(4) 別表五(二)においては、中間納付した法人税・地方法人税・住民税・事業税のうち、当期の未収計上額を3番・8番・13番・18番の④に記入します。
 また、別表五(二)の31番に損益計算書の「法人税、住民税及び事業税」の金額を記入すると、41番の金額は貸借対照表の「未払法人税等」の金額と一致します。

(5) 別表四の13番①②の金額531,783円は、前期に未払計上した事業税529,000円と当期の受取利息の源泉徴収税額2,783円の合計額です。

※ 翌年度に中間納付税額が還付されたときの会計処理と別表調整については、本ブログ記事「翌期の中間法人税等還付金の会計処理と別表四・五(一)・五(二)の記載例」をご参照ください。

事務処理規程の書き方と記載例:電子取引データ保存

1.事務処理規程による運用が現実的

 2022(令和4)年1月1日から施行されている改正電子帳簿保存法では、①電子帳簿等保存、②スキャナ保存、③電子取引データ保存のうち、③電子取引データ保存が義務化されました。
 この電子取引データ保存にあたっては、真実性(保存されたデータが改ざんされていないこと)と可視性(保存されたデータを検索・表示できること)が確保されていなければなりません。
 この2要件のうち、真実性を確保するためには、次の(1)~(4)のうち、いずれかの保存措置を行う必要があります。

(1) タイムスタンプが付された後、取引情報の授受を行う
(2) 取引情報の授受後、その業務に係る通常の期間(2か月+7日以内)を経過した後速やかにタイムスタンプを付す
※ 2023(令和5)年度税制改正で、「保存を行う者又は監督者に関する情報を確認できるようにしておく」という要件が廃止されました。
(3) 記録事項の訂正・削除の履歴を確認できるシステム又は訂正・削除を行うことができないシステムで、取引情報の授受及び保存を行う
(4) 正当な理由がない訂正・削除の防止に関する事務処理規程を定め、その規程に沿った運用を行う

 中小企業や個人事業主の実情を踏まえると、真実性を確保するためには上記(4)の事務処理規程による運用が現実的だと思われます(詳細については、本ブログ記事「電子取引データ保存の実務対応~事務処理規程と検索機能」をご参照ください)。
 そこで、以下において事務処理規程の記載例を確認します。

2.事務処理規程の記載例

 事務処理規程は、上記1のとおり真実性を確保する観点から必要な措置として要件とされたものです。
 この規程については、どこまで整備すればデータ改ざん等の不正を防ぐことができるのかについて、事業規模等を踏まえて個々に検討する必要がありますが、国税庁ホームページには参考資料(各種規程等のサンプル)として、法人の例と個人事業主の例がそれぞれWord形式でダウンロードできるようになっています。
 ここでは法人の例を用いて、事務処理規程の記載例を以下に示します(赤文字部分は国税庁のひな型に補足を加えたものです)。

(法人の例)

電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程

第1章 総則

(目的)
第1条 この規程は、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法の特例に関する法律第7条に定められた電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存義務を履行するため、○○株式会社(貴社名を記載)において行った電子取引の取引情報に係る電磁的記録を適正に保存するために必要な事項を定め、これに基づき保存することを目的とする。

(適用範囲)
第2条 この規程は、○○株式会社(貴社名を記載)の全ての役員及び従業員(契約社員、パートタイマー及び派遣社員を含む。以下同じ。)に対して適用する。

(管理責任者)
第3条 この規程の管理責任者は、●●(責任者名を記載)とする。

第2章 電子取引データの取扱い

(電子取引の範囲)
第4条 当社における電子取引の範囲は以下に掲げる取引とする。
一 EDI取引
二 電子メールを利用した請求書等の授受
三 クラウドサービスを利用した請求書等の授受
四 ウェブサービスを利用した請求書等の授受
五 キャッシュレスサービスを利用した支払証明等の受領
六 ペーパーレスFAXを利用した請求書等の授受
七 記録媒体による請求書等の授受
八 上記に掲げるものの他、電子データにより行われる各種の取引に係る請求書等の授受

記載に当たってはその範囲を具体的に記載してください(法人が行う可能性のある全ての電子取引を具体的に列挙するのは困難であるため、八において網羅的な条項を設けています)

(取引データの保存)
第5条 取引先から受領した取引関係情報及び取引相手に提供した取引関係情報のうち、第6条に定めるデータについては、保存サーバ、保存メディア、クラウドストレージ等(ウェブサービスを提供する者、○○株式会社(貴社名を記載)の全ての役員及び従業員のものを含む)内に、△△年間保存する(下線部については、青色欠損金との関係から「10年間」程度が妥当と思われます。また、「当該取引関係情報の法定保存期間にあわせて保存する」と記載することも可能です)

(対象となるデータ)
第6条 保存する取引関係情報は以下のとおりとする。
一 見積依頼情報
二 見積回答情報
三 確定注文情報
四 注文請け情報
五 納品情報
六 支払情報
七 ▲▲

上記第6条の下線部は、貴社の取引上発生する可能性のある証憑を限定列挙することが困難であるため、代表的な書類の名称とそれに類する情報を含ませて、以下のように記載することも可能です。

一 見積書その他これに類する情報
二 契約書その他これに類する情報
三 注文書その他これに類する情報
四 納品書その他これに類する情報
五 請求書その他これに類する情報
六 領収書その他これに類する情報
七 上記に掲げるものの他、電子データにより行われる各種の取引に係る請求書等の授受

(運用体制)
第7条 保存する取引関係情報の管理責任者及び処理責任者は以下のとおりとする。
一 管理責任者 ○○部△△課 課長 XXXX(貴社責任者情報を記載)
二 処理責任者 ○○部△△課 係長 XXXX(貴社責任者情報を記載)

(訂正削除の原則禁止)
第8条 保存する取引関係情報の内容について、訂正及び削除をすることは原則禁止とする。

(訂正削除を行う場合)
第9条 業務処理上やむを得ない理由によって保存する取引関係情報を訂正または削除する場合は、処理責任者は「取引情報訂正・削除申請書」に以下の内容を記載の上、管理責任者へ提出すること。
一 申請日
二 取引伝票番号
三 取引件名
四 取引先名
五 訂正・削除日付
六 訂正・削除内容
七 訂正・削除理由
八 処理担当者名
2 管理責任者は、「取引情報訂正・削除申請書」の提出を受けた場合は、正当な理由があると認める場合のみ承認する。
3 管理責任者は、前項において承認した場合は、処理責任者に対して取引関係情報の訂正及び削除を指示する。
4 処理責任者は、取引関係情報の訂正及び削除を行った場合は、当該取引関係情報に訂正・削除履歴がある旨の情報を付すとともに「取引情報訂正・削除完了報告書」を作成し、当該報告書を管理責任者に提出する。
5 「取引情報訂正・削除申請書」及び「取引情報訂正・削除完了報告書」は、事後に訂正・削除履歴の確認作業が行えるよう整然とした形で、訂正・削除の対象となった取引データの保存期間が満了するまで保存する。

附則

(施行)
第10条 この規程は、令和○年○月○日(運用開始日付を記載)から施行する。

 

事務処理規程と検索機能が実務対応の鍵:電子取引データ保存

1.義務化された電子取引データ保存

 2022(令和4)年1月1日から施行されている改正電子帳簿保存法は、次の3つに区分されています。

・電子帳簿等保存
・スキャナ保存
・電子取引データ保存

 上記の3つの区分のうち、改正電子帳簿保存法で義務化されたのは電子取引データ保存であり、他の2つについては任意(利用したい事業者(対応可能な事業者)のみが対応すればいい)とされています。
 電子取引データ保存とは、取引情報の授受を電子メールやウェブサイト上、EDI(電子データ交換)システムなどを用いて行った場合に、これらの電子取引をその電子データのまま保存することをいいます(電子取引等の具体例については、本ブログ記事「改正電子帳簿保存法:電子取引と電子データの具体例」をご参照ください)。
 改正電子帳簿保存法には2年間の宥恕規定が設けられていますので、2023(令和5)年12月31日までに⾏う電子取引については、保存すべき電子データをプリントアウトして紙で保存し、税務調査等の際に提示・提出できるようにしていれば差し⽀えありません。
 しかし、2024(令和6)年1月1日からは、法人・個人を問わずすべての事業者が、保存要件に従った電子データの保存をしなければなりません。

2.保存要件:真実性の確保

 電子データの保存要件には、真実性(保存されたデータが改ざんされていないこと)と可視性(保存されたデータを検索・表示できること)があります。
 真実性を確保するためには、次の(1)~(4)のうち、いずれかの保存措置を行う必要があります。

(1) タイムスタンプが付された後、取引情報の授受を行う
(2) 取引情報の授受後、その業務に係る通常の期間内(2か月+7日以内)にタイムスタンプを付す
※ 2023(令和5)年度税制改正で、「保存を行う者又は監督者に関する情報を確認できるようにしておく」という要件が廃止されました。
(3) 記録事項の訂正・削除の履歴を確認できるシステム又は訂正・削除を行うことができないシステムで、取引情報の授受及び保存を行う
(4) 正当な理由がない訂正・削除の防止に関する事務処理規程を定め、その規程に沿った運用を行う

 中小企業や個人事業主の実情を鑑みると、上記(1)~(3)には次のような対応し難い面があると思われます。

(1)については、すべての取引先からタイムスタンプが付されたデータをもらうのは実質的に不可能である。
(2)については、タイムスタンプの付与に対応したシステムの導入コストやランニングコスト等が発生する。
(3)についても、訂正・削除の履歴を管理できるシステム等の導入コストやランニングコストが発生する。

 これらのことを考慮すると、(4)の事務処理規程による運用は、新たにシステムを導入するためのコストも発生せず現状のシステムで対応可能であるため、中小企業や個人事業主にとっては現実的な対応であるといえます(事務処理規程については、本ブログ記事「事務処理規程の書き方と記載例:電子取引データ保存」をご参照ください)。

3.保存要件:可視性の確保

 電子データのもう一つの保存要件である可視性を確保するためには、次の(1)~(3)の保存措置を行う必要があります。

(1) 電子計算機(パソコン等)、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及びこれらの操作マニュアルを備え付けて、保存しているデータを画面・書面に速やかに出力できるようにしておく
(2) 電子計算機処理システムの概要書(データ作成ソフトマニュアル等)を備え付ける
(3) 次の①~③の検索機能を確保する
取引年月日、取引金額、取引先の3つの項目で検索できること
② 日付又は金額の範囲指定により検索できること
③ 2つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件により検索できること

 上記のうち(1)と(2)については、特に問題はないと思われます。可視性の要件を満たすためには、(3)の検索機能の確保への対応が必要になります。
 ただし、検索機能の確保には、次のような例外があります。

・税務職員によるダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合は、上記(3)の検索要件のうち②③は不要です。
・ダウンロードの求めに応じることに加えて、法人の場合は2期前(個人事業主の場合は2年前)の売上高が5,000万円以下の場合、又はデータを出力した書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力され、取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理されたものに限ります)を提示・提出できるようにしている場合は、上記(3)の検索機能の確保自体が不要となります。
※ 2023(令和5)年度税制改正で、売上高が1,000万円以下から5,000万円以下に引き上げられました。

 したがって、多くの中小企業や個人事業主が、検索機能を確保するために実質的に対応しなければならないのは、上記(3)のうち①ということになります(例外(データを出力した書面を提示・提出できるようにしている場合)で検索機能の確保が不要となる売上高5,000万円超の事業者も、取引年月日等及び取引先ごとにきちんと整理された電子データの保存は必要ですので、実質的には上記(3)①へ対応しておくことが望まれます)。
 (3)①については、検索機能を確保する簡易な方法として、国税庁ホームページに下図の方法(索引簿を作成するかファイル名に規則性を持たせるか)が示されています。

出所;国税庁ホームページ

改正電子帳簿保存法:電子取引と電子データの具体例

1.電子取引とは?

 2022(令和4)年1月1日から施行されている改正電子帳簿保存法には、2年間の宥恕規定が設けられています。
 宥恕規定はシステム対応が間に合わなかった事業者に適用される経過措置であり、これにより2023(令和5)年12月31日までは、「電子取引」を「電子データ」で保存せずに「出力書面(紙)」で保存することができます。
 しかし、2024(令和6)年1月1日からは、「電子取引」をプリントアウトして「紙」で保存することは認められなくなり、「電子データ」で保存しなければなりません。
 ところが、「電子データ」のまま保存しなければならない「電子取引」には、具体的にどのようなものが該当するのかわかりにくい一面があります。
 この点については、国税庁ホームページの「電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係)」の「問2 電子取引とは、どのようなものをいいますか。」において、以下の回答が示されています。

 「電子取引」とは、取引情報の授受を電磁的方式により行う取引をいいます(法2六)。
 なお、この取引情報とは、取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいいます。
 具体的には、いわゆるEDI取引、インターネット等による取引、電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルによる場合を含む。)、インターネット上にサイトを設け、当該サイトを通じて取引情報を授受する取引等をいいます。


 一定の回答が示されてはいるものの、電子取引が具体的にどのようなものをいうのかについては、やはり判然としません。

2.電子取引の具体例と保存対象となる電子データ

 しかし、国税庁ホームページの「電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係)」を読み進めると、次の「問3」の質問が電子取引の具体例を考えるにあたって参考になります。

 当社は以下のような方法により仕入や経費の精算を行っていますが、データを保存しておけば出力した書面等の保存は必要ありませんか。
(1) 電子メールにより請求書や領収書等のデータ(PDFファイル等)を受領
(2) インターネットのホームページからダウンロードした請求書や領収書等のデータ(PDFファイル等)又はホームページ上に表示される請求書や領収書等のスクリーンショットを利用
(3) 電子請求書や電子領収書の授受に係るクラウドサービスを利用
(4) クレジットカードの利用明細データ、交通系ICカードによる支払データ、スマートフォンアプリによる決済データ等を活用したクラウドサービスを利用
(5) 特定の取引に係るEDIシステムを利用
(6) ペーパーレス化されたFAX機能を持つ複合機を利用
(7) 請求書や領収書等のデータをDVD等の記録媒体を介して受領


 この「問3」の質問に対して、回答では「(1)~(7)のいずれも『電子取引』(法2五)に該当すると考えられます」と示されていますので、「問3」の内容を参考にして、電子取引の範囲と具体例及び対象となる電子データについて下表にまとめます。

電子取引の範囲 電子取引の具体例 対象となる電子データ
(1) 電子メールによる請求書や領収書等のデータ(PDFファイル等)の授受 取引先等との受発注等 ・メールに添付された請求書・領収書等のPDFファイル等
・メール本文
(2) インターネットのホームページからダウンロードした請求書や領収書等のデータ(PDFファイル等)の受領又はホームページ上に表示される請求書や領収書等のスクリーンショットの利用 Amazon、Rakuten等のEC(電子商取引)サイト 電子請求書、電子領収書、注文詳細等のメールや画面等
・Yahoo!オークション等のオークションサイト
・メルカリ、ラクマ、PayPayフリマ等のフリーマーケットサイト
商品画面、取引履歴画面、連絡メール等
クレジットカード 電子提供される利用明細書等
ネットバンキング 振込等各種取引、ペイジーやデビット等決済の詳細、入出金履歴等の明細
電気・ガス、携帯電話等のインフラ会社等のお客様管理ページ 電子請求書、電子領収書等
(3) クラウドサービスを利用した電子請求書や電子領収書の授受 Misoca、楽楽明細等の請求書発行システム 電子請求書、電子領収書等
(4) クレジットカードの利用明細データ、交通系ICカードによる支払データ、スマートフォンアプリによる決済データ等の受領 ・JCB、三井住友カード等のクレジットカード
・ICOCA、Suica、iD等の電子マネー
・PayPay、LINEPay等のアプリ
電子提供される利用明細書等、決済完了通知、決済履歴等の画面等
(5) EDIシステムを利用した請求書等の授受 インフォマート、ビーエルトラスト、スマクラ等のEDIサービス 電子契約書、電子請求書・電子領収書等受発注に関する商取引文書
(6) ペーパーレスFAXを利用した請求書等の授受

複合機で受信後に出力指定することによりプリントアウトされるもの

複合機内に受信されたFAXデータ、発信の場合は相手に送信したデータ
eFax等のインターネットファックス クラウド上の受信データ、発信の場合は相手に送信したデータ
(7) DVD等の記録媒体を介した請求書や領収書等のデータの受領 DVD、CD-R、USBメモリ等 電子契約書、電子請求書・電子領収書等受発注に関する商取引文書

「事前確定届出給与に関する届出書」等の書き方と記載例

 従来は臨時的ないわゆる役員賞与については損金算入が認められていませんでしたが、事前確定届出給与の制度を利用すれば、臨時的な給与(賞与)であっても一定の要件を満たせば損金算入が可能です。
 この制度を利用するには、納税地の所轄税務署長に対して、あらかじめ確定している支給時期・支給金額のほか、必要事項を記載した届出書等を届出期限までに提出しなければなりません。 
 以下では、3月決算法人が2023(令和5)年5月27日に定時株主総会を開催し、それに基づく事前確定届出給与に関する届出を2023(令和5)年6月7日に届け出た場合の「事前確定届出給与に関する届出書」と「付表1(事前確定届出給与等の状況(金銭交付用))」について、書き方と記載例を確認します。

1.「事前確定届出給与に関する届出書」の書き方と記載例

 以下において、「事前確定届出給与に関する届出書」の主な項目について書き方を確認します。その他の項目については、上図の記載例をご参照ください。

(1)「①事前確定届出給与に係る株主総会等の決議をした日及びその決議をした機関等」欄は、「株主総会」や「取締役会」など事前確定届出給与に関する決議をした機関名と決議日を記入します。
 今回の例では、「決議をした日」が2023(令和5)年5月27日、「決議をした機関等」が株主総会となります。

(2)「②事前確定届出給与に係る職務の執行を開始する日」欄は、一般的に役員給与は定時株主総会から次の定時株主総会までの間の職務執行の対価であると考えられるため、定時株主総会開催日を記入します。
 今回の例では、2023(令和5)年5月27日となります。

※ 事前確定届出給与対象者のうちその職務の執行を開始する日が異なる者がいる場合には、この欄の余白部分に、例えば「一部役員については令和○年○月○日」等と記載します。

(3)「届出期限」欄の「①又は②に記載した日のうちいずれか早い日から1月を経過する日」は、①又は②の翌日を起算日として暦に従って計算します。
 今回の例では、①②ともに5月27日ですので、その翌日の5月28日が起算日となり6月27日が「1月を経過する日」になります。

(4)「届出期限」欄の「会計期間4月経過日等」は、会計期間開始の日から4月を経過する日を記入します。
 今回の例では、会計期間開始日が2023(令和5)年4月1日ですので2023(令和5)年7月31日となります。

(5) 以上より、届出期限は(3)と(4)のうちいずれか早い日となりますので、今回の例では、2023(令和5)年6月27日が届出期限となります。

(注)定期給与を受けていない者に対して、株主総会等で決議した「所定の時期に確定した額の金銭等を交付する旨の定め」に基づいて継続して毎年支給する給与、例えば、非常勤役員に対して四半期ごとに支給する給与についても、この届出が必要となります。
 ただし、同族会社に該当しない法人が、定期給与を支給しない役員に対して支給する給与で金銭によるものについては、この届出は必要ありません。
 詳細については、本ブログ記事「届出不要の事前確定届出給与とは?」をご参照ください。

2.「付表1(事前確定届出給与等の状況(金銭交付用))」の書き方と記載例

 この付表は、「所定の時期に確定した額の金銭を交付する旨の定め」に基づき支給する給与について届け出る場合に、「事前確定届出給与に関する届出書」に添付するものです。
 以下において、「付表1(事前確定届出給与等の状況(金銭交付用))」の主な項目について書き方を確認します。その他の項目については、上図の記載例をご参照ください。

(1) 「事前確定届出給与に係る職務の執行の開始の日(職務執行期間)」欄には、「所定の時期に確定した額の金銭等を交付する旨の定め」に係る職務の執行の開始の日(定時株主総会の開催日など)及び職務執行期間(定時株主総会の開催日から次の定時株主総会の開催日までの期間など)を記載します。

(2) 「当該事業年度」欄には、この届出をする事業年度を記載します。

(3) 用紙左側の「事前確定届出給与に関する事項」の「支給時期(年月日)」欄及び「支給額(円)」欄には、次のように記載します。

① 「区分」欄の「届出額」欄は、前回以前の届出において届け出た事前確定届出給与の支給時期及び支給額について記載します。
 「届出額」欄の記載例では、前回の届出で「令和4年12月6日に800,000円を支給する」こととしていた事前確定届出給与について記載しています。

② 「区分」欄の「支給額」欄は、①の事前確定届出給与の実際の支給時期及び支給額について記載します。
 「支給額」欄の記載例では、前回の届出通りに実際に支給が行われたことを記載しています。

③ 「区分」欄の「今回の届出額」欄は、今回の届出において届け出る事前確定届出給与について、届出の時において予定されている支給時期及び支給額について記載します。
 「今回の届出額」欄の記載例では、「令和5年12月5日に900,000円を支給する」こととしている事前確定届出給与について記載しています。

(4) 用紙右側の「事前確定届出給与以外の給与に関する事項」の「支給時期(年月日)」欄及び「支給額(円)」欄には、事前確定届出給与対象者に対して支給した、又は支給しようとする事前確定届出給与以外の給与について、届出の時において予定されている支給時期及び支給額を記載します。


平均調達金利と貸付金利息の計算方法

1.給与課税されない場合

 会社が役員又は従業員に対して金銭を貸し付けた場合には、収受すべき利息の額が適正か否かが問題となります。
 その貸付が無償又は通常の利率よりも低い利率で行われた場合は、通常収受すべき利率により計算した利息の額と実際に収受した利息の額との差額が、役員又は従業員に対する給与として所得税が課税されます。
 しかし、無償又は通常の利率よりも低い利率で行われた貸付けであっても、以下の場合には給与として課税されないことになっています(参考:国税庁ホームページ「金銭を貸し付けたとき」)。

(1) 災害や病気などで臨時に多額の生活資金が必要となった役員または使用人に、その資金に充てるため、合理的と認められる金額や返済期間で金銭を貸し付ける場合
(2) 会社における借入金の平均調達金利など合理的と認められる貸付利率を定め、この利率によって役員または使用人に対して金銭を貸し付ける場合
(3) 上記(1)および(2)以外の貸付金の場合で、「役員または使用人に貸し付けた金銭の利息について」の利率により計算した利息の額と実際に支払う利息の額との差額が1年間で5,000円以下である場合

 ここで、上記(2)の平均調達金利とは、いかなるものをいうのでしょうか?以下において、その計算方法をみていきます。

2.平均調達金利の計算方法

 平均調達金利とは、会社が貸付けを行った日の前事業年度中における借入金の平均残高に占める前事業年度中に支払うべき利息の額の割合など合理的に計算された利率をいいます。

 平均調達金利=前事業年度中に支払うべき利息の額÷前事業年度中における借入金の平均残高

 上記算式において、支払利息の額については前事業年度の損益計算書を見ればすぐにわかりますが、借入金の平均残高については別途計算が必要です。
 平均残高の計算方法は、原則としては加重平均により求めますが、実務的には次のように単純平均により簡便に求めても差し支えありません。

 借入金の平均残高=各月の借入金残高年間合計額÷事業年度の月数

 例えば、3月決算法人の前事業年度の借入金残高が、次のように推移していたとします(単位:円)。

前期 借入金Aの残高 借入金Bの残高 AとBの合計残高
4月末 60,800,000 41,985,000 102,785,000
5月末 78,990,000 41,770,000 120,760,000
6月末 70,902,000 78,225,000 149,127,000
7月末 69,884,000 75,170,000 145,054,000
8月末 69,361,000 74,995,000 144,316,000
9月末 36,271,000 74,740,000 144,011,000
10月末 60,315,000 72,525,000 132,840,000
11月末 42,792,000 74,310,000 117,102,000
12月末 27,502,000 74,095,000 101,597,000
1月末 43,746,000 73,880,000 117,626,000
2月末 56,656,000 73,665,000 130,321,000
3月末 50,056,000 64,594,000 114,650,000
合計 700,275,000 819,914,000 1,520,189,000

 この場合、借入金の各月末残高の年間合計額は1,520,189,000円になります。これを前事業年度の月数12か月で割って、借入金の平均残高126,682,417円を求めます。

 借入金の平均残高=1,520,189,000円÷12か月=126,682,417円

 次に、前事業年度の損益計算書の支払利息の額が1,713,560円だとすると、これを平均残高126,682,417円で割って、平均調達金利1.35%を求めます。

 平均調達金利=1,713,560円÷126,682,417円×100=1.35%

3.貸付金利息の計算方法

 平均調達金利の計算ができたら、貸付金利息の計算をします。貸付金利息は、例えば次のように計算します。

 各月の貸付金利息=各月の貸付金残高×平均調達金利÷12

 例えば、3月決算法人の役員に対する当期の貸付金残高が下表のように推移していたとします(単位:円)。
 この場合、4月末の貸付金利息は次のように計算します。

 4月末の貸付金利息=600,000円×1.35%÷12=675円

 この計算を3月末まで行い、各月末の貸付金利息の合計額18,379円が年間の貸付金利息となります。

当期 貸付金残高 貸付金利息
4月末 600,000 675
5月末 850,000 956
6月末 850,000 956
7月末 1,130,000 1,271
8月末 1,480,000 1,665
9月末 1,180,000 1,327
10月末 1,150,000 1,293
11月末 1,450,000 1,631
12月末 1,750,000 1,968
1月末 1,800,000 2,025
2月末 2,050,000 2,306
3月末 2,050,000 2,306
合計 18,379

 また、次のような方法で貸付金利息を計算することもできます。

 年間貸付金利息=(期首貸付金残高+期末貸付金残高)÷2×その期の借入金平均利率

 上記の例で期首の貸付金残高が300,000円だとすると、貸付金利息は次のようになります。

 年間貸付金利息=(300,000円+2,050,000円)÷2×1.35%=15,862円

 計算方法によって貸付金利息の計算結果も変わりますが、いずれも実務上よく使われる計算方法であり、その計算結果も合理的なものと認められます。

繰延資産の任意償却はいつまで可能か?

 繰延資産の償却方法に任意償却という方法があります。法人でも個人でもこの任意償却により繰延資産を償却することができますが、すべての繰延資産に任意償却が適用できるわけではありません。
 また、任意償却による場合に何年以内に償却をしなければならないか、償却期間の途中で均等償却から任意償却に変更できるのか、ということも気になります。
 今回は、任意償却のこれらの点について確認します。

1.会計上の繰延資産と税法上の繰延資産

 繰延資産とは、支出した費用でその支出の効果が1年以上に及ぶものをいいます。
 繰延資産には、旧商法上の繰延資産(以下「会計上の繰延資産」といいます)と法人税法施行令14条6号資産(以下「税法上の繰延資産」といいます)があります。
 また、所得税法施行令7条にも会計上の繰延資産と税法上の繰延資産が例示されています。
 法人税と所得税で異なるのは、所得税における会計上の繰延資産には、法人に関するもの(創立費、株式交付費、社債等発行費)がない点です。

 法人税法における会計上の繰延資産と税法上の繰延資産の範囲は、以下のとおりです。

法人税法上の繰延資産 会計上の繰延資産 創立費、開業費、開発費、株式交付費、社債等発行費

税法上の繰延資産

(長期前払費用等)

施設の負担金 公共的施設(道路、堤防、護岸など)
共同的施設(会館、アーケードなど)
資産賃借のための権利金等 建物賃借のための権利金
電子計算機等の賃借に伴う費用
役務の提供を受けるための権利金等 ノウハウの頭金
広告宣伝用資産の贈与費用 看板、ネオン、どん帳など
その他 同業者団体の加入金など

 所得税法における会計上の繰延資産と税法上の繰延資産の範囲は、以下のとおりです。

所得税法上の繰延資産 会計上の繰延資産 開業費、開発費

税法上の繰延資産

(長期前払費用等)

施設の負担金 公共的施設(道路、堤防、護岸など)
共同的施設(会館、アーケードなど)
資産賃借のための権利金等 建物賃借のための権利金
電子計算機等の賃借に伴う費用
役務の提供を受けるための権利金等 ノウハウの頭金
広告宣伝用資産の贈与費用 看板、ネオン、どん帳など
その他 同業者団体の加入金など

2.会計上の繰延資産は任意償却が可能

 繰延資産は、収益との対応関係を考慮して、その支出した費用を原則として償却を通じてその効果の及ぶ期間ににわたって費用配分します。
 ただし、会計上の繰延資産については、均等償却だけではなく任意償却の方法によることもできます。
 任意償却とは、繰延資産の額の範囲内の金額を償却費として認めるもので、その下限が設けられていないことから、支出した年に全額償却してもよく、全く償却しなくてもよいという方法です。
 例えば、開業費(開業準備のために支出した広告宣伝費など)の償却期間は5年とされていますので、その支出した費用を原則として60か月で均等償却(月割償却)することになります。
 一方、任意償却の場合は、その支出した費用を支出した年に全額償却(一時償却)してもよく、全く償却しない(償却額0円)こともできます。
 利益が出ているのなら全額償却することも可能ですし、また、利益が出ていないのであれば、利益が出るまで償却しないことも可能です。

3.任意償却に償却期間の制限はあるか?

 ここで気になるのが、任意償却の場合、何年以内に償却をしなければならないかということです。
 例えば、開業費を均等償却する場合は、その償却期間は5年とされていますが、任意償却による場合も5年以内に償却しなければならないのでしょうか?
 結論を先に述べると、任意償却が可能な会計上の繰延資産の未償却残高は、いつでも償却費として損金算入または必要経費に算入することができます。
 繰延資産となる費用(例えば開業費)を支出した後5年を経過した場合に、償却費を損金算入または必要経費に算入できないとする特段の規定はないことから、繰延資産の未償却残高はいつでも償却費として損金算入または必要経費に算入することができます。
 つまり、何年以内に償却しなければならないというような償却期間の制限はなく、償却期間経過後であっても未償却残高がなくなるまで任意償却することができます。
 なお、会計上の繰延資産(例えば開業費)については、支出した年において5年間で均等償却する方法を選択した場合でも、2年目以降にその未償却残高を任意償却することができます。