新型コロナウィルス感染症の影響による納税猶予制度の特例

 関与先様からの新型コロナウイルス感染症に関する税制上の措置についての問い合わせが増えています。中でも、本年(2020年)4月以降は、納税に関する質問が増えていますので、今回は、新たに設けられる納税猶予制度の特例について解説します。
 なお、本特例は、関係法案が国会で成立することが前提となります

※2020年(令和2年)4月30日に 「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律案」が成立・公布・施行されました。

1.納税猶予制度の特例の概要

 新型コロナウイルス感染症の影響で、2020年(令和2年)2月以降の任意の期間(1か月以上)において、事業等に係る収入が前年同期比おおむね20%以上減少し、かつ、一時の納税が困難と認められる場合には、申請することにより、無担保かつ延滞税なし1年間納税を猶予することができるようになります。

2.特例の対象者

 以下の2要件をいずれも満たす納税者(個人法人の別、規模は問わず)が対象となります。

(1) 新型コロナウイルスの影響により、2020年(令和2年)2月以降の任意の期間(1か月以上)において、事業等に係る収入※1が前年同期に比べて概ね20%以上減少していること※2
(2) 一時に納税を行うことが困難であること※3

※1 「事業等に係る収入」とは、法人の収入(売上高)のほか、個人の方の経常的な収入(事業の売上、給与収入、不動産賃料収入等)を指します。
 なお、個人の方の「一時所得」などについては、通常、新型コロナウイルスの影響により減少するものではないと考えられますので、「事業等に係る収入」には含まれません。

※2 前年の月別収入が不明の場合には、以下のような方法により収入減少割合を判断することもできます。
① 年間収入を按分した額(平均収入)と比較
② 事業開始後1年を経過していない場合は令和2年1月までの任意の期間と比較

※3 「一時に納税を行うことが困難」かどうかの判断については、少なくとも向こう半年間(現行は1か月)の事業資金を考慮に入れるなど、納税者の置かれた状況に配慮し適切に対応されるようです。

3.特例の対象となる国税

 2020年(令和2年)2月1日から2021年(令和3年)1月31日までに納期限が到来する所得税、法人税、消費税等ほぼすべての税目(印紙で納めるもの等を除く) が対象になります。
 これらのうち、既に納期限が過ぎている未納の国税(他の猶予を受けているものを含む)についても、遡ってこの特例を利用することができます※4

※4 「遡って特例を利用する」とは、例えば未納の国税について、延滞税がかかる他の猶予を受けている納税者は、特例に切り替えることにより、はじめから延滞税がないものとして猶予を受けることができるということです。
 この場合、既に延滞税を納付済みの納税者は、その還付を受けることができます。

4.特例の申請方法等

 関係法令の施行から2か月後、又は、納期限(申告納付期限が延長された場合 は延長後の期限)のいずれか遅い日までに申請が必要です。
 「納税の猶予申請書」のほか、収入や現預金の状況が分かる資料を提出することになりますが、これらの提出が難しい場合は、税務署職員が口頭により聴取することとなっています。
 なお、「納税の猶予申請書」の様式記載方法については、国税庁ホームページを参照してください。

5.特例の留意点

 納税猶予制度の特例の上記1~4以外の留意点は次のとおりです。

(1) 対象期間の損益が黒字の場合でも、収入減少などの2要件を満たせば特例を利用できます。

(2) フリーランスの方を含む事業所得者は、収入減少などの2要件を満たせば特例の対象になります。

(3) パートやアルバイトの方を含む給与所得者のうち、確定申告により納税をされる方は、収入減少などの2要件を満たせば特例の対象になります。

(4) 白色申告の場合も、収入減少などの2要件を満たせば特例の対象になります。

(5) 特例の2要件を満たさない場合でも、一般の猶予制度※5を利用できる場合があります(通常、 年1.6%の延滞税がかかります)。

(6) 猶予期間終了後は、一括して納付しなければならないということではありません。特例の適用期間が終了した後に、一般の猶予制度※5により分割納付をすることもできま す。

※5 一般の猶予制度(現行の猶予制度)については、本ブログ記事「国税の納税猶予制度」を参照してください。

国税の納税猶予制度

 関与先様からの新型コロナウイルス感染症に関する税制上の措置についての問い合わせが増えています。中でも、本年(2020年)4月以降は、納税に関する質問が増えていますので、今回は、従来からある現行の国税の納税猶予制度について解説します。
 新型コロナウイルス感染症の影響により、新たに設けられる納税猶予制度の特例については、次回解説します。

1.現行の納税猶予制度の概要

 新型コロナウイルス感染症の影響により、国税を一時に納付することができない場合には、所轄の税務署に申請して法令の要件を満たせば、原則として1年以内の期間に限り、換価の猶予(国税徴収法第151条の2)が認められます。
 また、新型コロナウイルス感染症にり患した場合等、個別の事情がある場合は、納税の猶予(国税通則法第46条)が認められる場合もあります。

2.現行の納税猶予制度の要件等

(1) 換価の猶予の要件(国税徴収法第151条の2)

 次の要件のすべてに該当する場合は、現行の納税猶予制度の適用を受けることができます。

① 国税を一時に納付することにより、事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがあると認められること

② 納税について誠実な意思を有すると認められること

③ 猶予を受けようとする国税以外の国税の滞納がないこと

④ 納付すべき国税の納期限から6か月以内に申請書が提出されていること

注1) 担保の提供が明らかに可能な場合を除いて、担保は不要となります。
注2)2019年分(令和元年分)の申告所得税、贈与税及び個人事業者の消費税の確定申告は、延長された期限(2020年(令和2年)4月 16 日)が納期限となります。
注3)既に滞納がある場合や滞納となってから6月を超える場合であっても、税務署長の職権による換価の猶予(国税徴収法第 151 条)が受けられる場合もあります。

(2) 換価の猶予の効果(国税徴収法第151条の2)

 申請が認められると、次のように猶予を受けることができます。

① 原則として1年間猶予が認められます(期間中、資力に応じて分割納付。 状況に応じて更に1年間猶予される場合があります)。

② 猶予期間中の延滞税が軽減されます(通常:8.9%/年→猶予期間中 1.6%/ 年)。

③ 財産の差押えや換価(売却)が猶予されます。

 更に個別の事情に該当する場合は、次の猶予制度(国税通則法第46条)を活用することもできます。

(3) 納税の猶予の要件(国税通則法第46条)

 新型コロナウイルス感染症に関連して以下のような個別の事情に該当する場合は、納税の猶予が認められることがあります。

① 災害により財産に相当な損失が生じた場合
 新型コロナウイルス感染症の患者が発生した施設で消毒作業が行われたことにより、備品や棚卸資産を廃棄した場合

② 本人又は家族が病気にかかった場合
 納税者本人又は生計を同じにする家族が病気にかかった場合、国税を一時に納付できない額のうち、医療費や治療等に付随する費用

③ 事業を廃止し、又は休止した場合
 納税者が営む事業について、やむを得ず休廃業をした場合、国税を一時に納付できない額のうち、休廃業に関して生じた損失や費用に相当する金額

④ 事業に著しい損失を受けた場合
 納税者が営む事業について、利益の減少等により著しい損失を受けた場合、国税 を一時に納付できない額のうち、受けた損失額に相当する金額

注)ケースにより申請に必要な書類等が異なりますので、税務署(徴収担当)に事前に相談してください。

(4) 納税の猶予の効果(国税通則法第46条)

 申請が認められると、次のように猶予を受けることができます。

① 原則として1年間猶予が認められます(状況に応じて更に1年間猶予される場合があります)。

② 猶予期間中の延滞税が軽減又は免除されます。

③ 財産の差押えや換価(売却)が猶予されます。

(5) 猶予申請書

 換価の猶予と納税の猶予に関する申請書様式及び記載要領等については、国税庁ホームページを参照してください。

新型コロナウイルス感染症の影響により法人の申告・納付期限も延長されます

 新型コロナウイルス感染症の影響により、個人の確定申告・納付期限が延長されましたが、法人についても同様の措置が講じられています。
 国税庁ホームページでは、以下の「法人税及び地方法人税並びに法人の消費税の申告・納付期限と源泉所得税の納付期限の個別指定による期限延長手続に関するFAQ」が公表されています。

1.どのような場合に個別延長が認められるか?

 新型コロナウイルス感染症の影響により、法人がその期限までに申告・納付ができな いやむを得ない理由がある場合には、下記4の手続きをとることにより期限の個別延長が認 められます。

 このやむを得ない理由については、例えば、次のような方々がいることにより、通常の業務体制が維持できないこと、事業活動を縮小せざるを得ないこと、取引先や関係会社においても感染症による影響が生じていることなどにより決算作業が間に合わず、 期限までに申告が困難なケースが該当します。

(1) 新型コロナウイ ルス感染症に感染した法人の役員や従業員等がいること
(2) 体調不良により外出を控えている方がいること
(3) 平日の在宅勤務を要請している自治体に住んでいる方がいること
(4) 感染拡大防止のため企業の勧奨により在宅勤務等をしている方がいること
(5) 感染拡大防止のため外出を控えている方がいること

2.個別延長の場合の申告・納付期限はいつか?

 新型コロナウイルス感染症の影響により、期限内に申告・納付することが困難な法人 については、申告・納付ができないやむを得ない理由がやんだ日から2か月以内の日を 指定して申告・納付期限が延長されます。
 この場合、法人の申告書等を作成・提出することが可能となった時点で申告を行 うことになりますので、申告期限及び納付期限は原則として申告書等の提出日となります

※会計事務所としては、関与先に申告前に納付書をお渡しして、納付が完了してから申告をすることになります。

3.申請や届出など申告以外の手続きも個別延長の対象となるか?

 法人税や消費税、源泉所得税に係る各種申請や届出など、申告以外の手続きについて も、新型コロナウイルス感染症の影響により提出が困難な場合は、個別に期限延長の 取扱いがあります

4.個別延長する場合はどのような手続きが必要となるか?

 別途、申請書等を提出する必要はなく、申告書の余白に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」である旨を付記します。
 源泉所得税においては、納付を行う際に納付書(所得税徴収高計算書)の摘要欄に「新型コロナウイルスに よる納付期限延長申請」である旨を付記します。

 具体的な記載方法については、国税庁ホームページ「法人税及び地方法人税並びに法人の消費税の申告・納付期限と源泉所得税の納付期限の個別指定による期限延長手続に関するFAQ」を参照してください。

オープンイノベーション促進税制

 自社にないハイテクノロジーやビジネスモデルを持つベンチャー企業と提携し、相乗効果を高め、より利益の源泉となるイノベーションを起こしやすくするようにするオープンイノベーション促進税制が創設されました。
 既存企業が従前の閉鎖的でコストの高い自己開発にこだわることなく、自社の持つ技術等とベンチャー企業が持つ技術やノウハウを組み合わせ、新分野に進出するなど事業構造を転換できる見通しがついていることが条件となります。

1.概要

 青色申告書を提出する法人で特定事業活動を行うもの(以下「対象法人」といいます)が、2020年(令和2年)4月1日から2022年(令和4年)3月31日までの間に、設立10年未満の非上場ベンチャー企業などに出資(大企業は1億円以上、中小企業は1,000万円以上の出資が対象。海外のベンチャー企業への出資は5億円以上が対象。)することにより特定株式を取得し、かつ、これをその取得した日を含む事業年度末までに有している場合において、その特定株式の取得価額の25%以下の金額を特別勘定の金額として経理したときは、その事業年度の所得の金額を上限として、その経理した金額の合計額を損金算入できるというものです。

2.適用要件

(1) 出資を行う事業会社の要件

① 国内事業会社又は国内事業会社によるCVC

※「CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)」とは、事業会社又はその子会社が運営し、持分の過半数以上を所有するファンドなどのことです。

② 1件当たり1億円以上の大規模出資(中小企業が出資する場合は1,000万円以上。海外ベンチャー企業への出資は5億円以上。)

③ 5年間の株式保有

④ 1年間の出資案件に関して、「各出資が事業会社、ベンチャー企業双方の事業革新に有効であり、制度を濫用するものでないこと」を、決算期にまとめて経済産業省に報告すること

(2) 出資を受けるベンチャー企業の要件

① 新規性・成長性のある設立10年未満の非上場ベンチャー企業(新設企業は対象外)

② 出資を行う事業会社又は他の企業グループに属さないベンチャー企業

3.出資から5年以内に株式を手放した場合

 出資した事業会社が出資から5年以内に株式を手放した場合は、優遇税制の適用によって受けた税優遇分を国に返還する措置が盛り込まれています。これは企業が税優遇を得ることだけを目的に出資するのを防ぐためです。

4.特別勘定の取崩し

(1) 特別勘定の取崩し事由

 特別勘定の金額は、次に掲げる特定株式の譲渡その他の取崩し事由に該当することとなった場合には、その事由に応じた金額を取崩して益金算入します。ただし、その特定株式の取得から5年を経過した場合は、この限りではありません。

① 特定株式につき経済産業大臣の証明が取り消された場合

② 特定株式の全部又は一部を有しなくなった場合

③ 特定株式につき配当を受けた場合

④ 特定株式の帳簿価額を減額した場合

⑤ 特定株式を組合財産とする投資事業有限責任組合等の出資額割合の変更があった場合

⑥ 特定株式に係る特別新事業開拓事業者が解散した場合

⑦ 対象法人が解散した場合

⑧ 特別勘定の金額を任意に取り崩した場合

(2) 特別勘定の経理処理

 例えば、出資額(特定株式の取得価額)が1億円の場合は、所得金額からの控除額は1億円×25%=2,500万円となりますが、これを仕訳で表すと次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
特別勘定繰入額 2,500万円 特別勘定 2,500万円

 また、特定株式を売却したなどの取崩し事由に該当した場合の仕訳は次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
特別勘定 2,500万円 特別勘定取崩益 2,500万円

新型コロナウイルス感染症緊急経済対策の概要

 2020年(令和2年)4月7日、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策における税制上の措置(案)」が閣議決定されました。
 本特例の実施については、関係法案が国会で成立すること等が前提となります。

※2020年(令和2年)4月30日に 「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律案」が成立・公布・施行されました。

1.新型コロナウイルス感染拡大に伴う納税猶予の特例

 新型コロナウイルスの感染拡大防止のための措置に起因して多くの事業者の収入が急減している現下の状況を踏まえて、無担保かつ延滞税なしで1年間、納税を猶予する特例が設けられます。
 この特例は、2020年(令和2年)2月1日から2021年(令和3年)1月31日までに納期限が到来する国税について適用されます。その際、施行日前に納期限が到来している国税についても遡及して適用することができるとされています。

2.欠損金の繰戻しによる還付の特例

 資本金1億円超10億円以下の法人も青色欠損金の繰戻し還付が受けられる特例が設けられます。
 2020年(令和2年)2月1日から2022年(令和4年)1月31日までの間に終了する各事業年度に生じた欠損金額について適用されます。ただし、大規模法人の100%子会社などは除かれます。

3.テレワーク等のための中小企業の設備投資税制

 中小企業経営強化税制の特定経営力向上設備等の対象に、テレワーク等のための設備投資に係る新たな類型としてデジタル化設備が追加されます。
 要件は遠隔操作、可視化、自動制御化のいずれかに該当する設備で、機械装置、工具、器具備品、建物附属設備、ソフトウエアが対象設備です。

4.中止等されたイベントに係る入場料等の払戻請求権を放棄した者への寄附金控除の適用

 政府の自粛要請を踏まえて文化芸術・スポーツに係る一定のイベント等を中止等した主催者に対し、観客等が入場料等の払戻請求権を放棄した場合には、当該放棄した金額(上限20万円)について、所得税における寄附金控除(所得控除又は税額控除)の対象とされます。

5.住宅ローン控除の適用要件の弾力化

 新型コロナウイルス感染症の影響による住宅建設の遅延等によって住宅への入居が遅れた場合でも、期限内に入居したのと同様の住宅ローン控除を受けることができるに適用要件が弾力化されます。

6.消費税の課税事業者選択届出書等の提出に係る特例

 新型コロナウイルス感染症の影響で2020年(令和2年)2月1日から2021年(令和3年)1月31日までの期間のうち、任意の期間(1か月以上)の収入が前年同期比おおむね50%以上減少した事業者が、申告期限までに申請書を提出し、税務署長の承認を受けた場合は、課税期間開始後でも消費税の課税事業者を選択又はやめることができる特例が設けられます。
 この特例で課税事業者を選択した課税期間の翌課税期間において、課税事業者の選択をやめることも可能です。

7.特別貸付けに係る消費貸借に関する契約書の印紙税の非課税

 公的貸付機関等又は銀行等の金融機関が、新型コロナウイルス感染症の発生により、その経営に影響を受けた事業者に対して行う金銭の特別貸付けに係る消費貸借に関する契約書のうち、2021年(令和3年)1月31日までに作成されるものについては、印紙税を課さないこととされます。
 ここでいう特別貸付けとは、当該機関が行う他の金銭の貸付けの条件に比し特別に有利な条件で行うものをいいます。
 また、施行日の前日までに作成されたものにつき印紙税が納付されている場合には、当該納付された印紙税については、過誤納金とみなして還付されます。

8.中小事業者等が所有する償却資産及び事業用家屋に係る固定資産税及び都市計画税の軽減措置

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のための措置に起因して、厳しい経営環境にある中小事業者等に対して、2021年度(令和3年度)課税の1年分に限り、償却資産及び事業用家屋に係る固定資産税及び都市計画税の負担が2分の1又はゼロとされます。
 原則として業種は限定されず、2021年(令和3年)1月31日までに認定経営革新等支援機関等の認定を受けて各市町村に申告した場合に適用されます。
 なお、この措置による固定資産税及び都市計画税の減収額については、全額国費で補填されます。

大法人の電子申告(e-Tax)が義務化されます

1.書面により提出した申告書は無効

 2018年度(平成30年度)税制改正により「電子情報処理組織による申告の特例」が創設され、2020年(令和2年)4月1日以後に開始する事業年度(課税期間)から、内国法人のうち事業年度開始時の資本金の額又は出資金の額が1億円を超える法人等は、電子申告(e-Tax)による申告書の提出が義務化されました。

 義務化の対象法人が電子申告により法定申告期限までに申告書を提出せず、書面により提出した場合は、その申告書は無効なものとして取り扱われ、無申告加算税の対象となります。
 また、2期連続で法定申告期限内に申告がない場合は、青色申告の承認の取消対象にもなりますので注意が必要です。

2.電子申告の義務化の概要

 電子申告の義務化の対象となる税目、法人の範囲、手続等は以下のとおりです。

(1) 対象税目

法人税及び地方法人税並びに消費税及び地方消費税
※地方税の法人住民税、法人事業税も対象です

(2) 対象法人の範囲

① 法人税及び地方法人税
 イ.内国法人のうち、その事業年度開始の時において資本金の額又は出資金の額が1億円を超える法人
 ロ.相互会社、投資法人及び特定目的会社
② 消費税及び地方消費税
 ①に掲げる法人に加え、国及び地方公共団体

(3) 対象手続

確定申告書、中間(予定)申告書、仮決算の中間申告書、修正申告書及び還付申告書

(4) 対象書類

申告書及び申告書に添付すべきものとされている書類の全て

3.e-Taxによる申告の特例に係る届出書

 電子申告の義務化の開始に当たり、2020年(令和2年)4月1日以後、義務化対象法人はすべて所轄税務署長に「e-Taxによる申告の特例に係る届出書」を提出しなければなりません。
※「e-Taxによる申告の特例に係る届出書」の様式は国税庁ホームページを参照

 届出書を提出する時期は、次のとおりです。
(1) 2020年(令和2年)3月31日以前に設立された法人で2020年(令和2年)4月1日以後最初に開始する事業年度(課税期間)に対象法人となる場合は同事業年度(課税期間)開始の日以後1か月以内
(2) 2020年(令和2年)4月1日以後に増資により対象法人となる場合は資本金の額又は出資金の額が1億円超となった日から1か月以内
(3) 2020年(令和2年)4月1日以後に設立された法人で設立後最初の事業年度から対象法人となる場合は設立の日から2か月以内
(4) 2020年(令和2年)4月1日以後に対象法人であって消費税の免税事業者から課税事業者となる場合は課税事業者となる課税期間開始の日から1か月以内

4.e-Taxによる申告の特例の適用がなくなった旨の届出書

 一方、減資等により資本金の額又は出資金の額が1億円以下となった場合等により義務化対象法人でなくなった場合には、所轄税務署長に対し、速やかに「e-Taxによる申告の特例の適用がなくなった旨の届出書」を提出します。
※「e-Taxによる申告の特例の適用がなくなった旨の届出書」の様式は国税庁ホームページを参照

5.例外的に書面申告が認められる場合

 電子申告義務化後において、電気通信回線の故障、災害その他の理由によって、e-Taxにより法定申告期限までに申告書を提出することが困難な場合には、所轄税務署長の承認を得た上で、書面により提出することで、例外的に申告義務が履行されたものとみなされ、その書面による申告書は有効なものとして取り扱われます。

 当該承認を得るためには、事前に「e-Taxによる申告が困難である場合の特例の申請書(取りやめの届出書)」及びe-Taxを使用することが困難であることを明らかにする書類を所轄税務署長に提出する必要があります。
※「e-Taxによる申告が困難である場合の特例の申請書(取りやめの届出書)」の様式は国税庁ホームページを参照

期限後申告でも中小企業投資促進税制、中小企業経営強化税制、商業・サービス業等活性化税制の適用はある!

 中小企業の投資促進を後押しする既存の制度には、中小企業投資促進税制、中小企業経営強化税制、商業・サービス業・農林水産業活性化税制があり、2019年度(令和元年度)税制改正で適用期限がいずれも2021年(令和3年)3月31日まで延長されました。

 これらの3税制について、期限後申告であっても各要件を具備している場合は、その適用を受けることができます。

 今回は、意外と知られていない期限後申告と投資促進3税制との関係について確認します。

1.中小企業投資促進税制の適用手続

 中小企業投資促進税制の特別償却と税額控除の適用を受けるためには、確定申告書等に下記の書類を添付する必要があります(特別償却と税額控除を重複適用することはできません)。

特別償却の場合 税額控除の場合
適用額明細書 同左
別表16(1)又は(2) 別表6(15)
特別償却の付表(3)

2.中小企業経営強化税制の適用手続

 中小企業経営強化税制の特別償却と税額控除の適用を受けるためには、確定申告書等に下記の書類を添付する必要があります(特別償却と税額控除を重複適用することはできません)。

特別償却の場合 税額控除の場合
適用額明細書 同左
別表16(1)又は(2) 別表6(24)
特別償却の付表(9)
経営力向上計画の写し 同左
経営力向上計画に係る認定書の写し 同左

3.商業・サービス業・農林水産業活性化税制の適用手続

 商業・サービス業・農林水産業活性化税制の特別償却と税額控除の適用を受けるためには、確定申告書等に下記の書類を添付する必要があります(特別償却と税額控除を重複適用することはできません)。

特別償却の場合 税額控除の場合
適用額明細書 同左
別表16(1)又は(2) 別表6(23)
特別償却の付表(8)
経営改善指導助言書類の写し 同左

4.確定申告書等は期限後申告書を含む

 上記1~3で見たように、投資促進3税制の適用を受けるためには、確定申告書等にそれぞれの税制で定められた書類を添付しなければなりません。
 ところで、この確定申告書等とは、仮決算をした場合の中間申告書と確定申告書(期限後申告書を含む)をいいます(下記条文参照)。

確定申告書(租税特別措置法第2条第27号)

法人税法第2条第30号に規定する中間申告書で同法第72条第1項各号に掲げる事項を記載したもの及び同法第144条の4第1項各号又は第2項各号に掲げる事項を記載したもの並びに同法第2条第31号に規定する確定申告書をいう。

確定申告書(法人税法第2条第31号)

第74条第1項(確定申告)又は第144条の3第1項若しくは第2項(中間申告)の規定による申告書(当該申告書に係る期限後申告書を含む。)をいう。

 したがって、何らかの事情により確定申告書の提出が期限後申告となった場合であっても、それぞれの税制で定められた書類を添付して提出した場合にはその適用を受けることができます。

医療機器は中小企業経営強化税制の適用対象外!

 2017年度(平成29年度)改正で、2019年(平成29年)3月末で廃止された生産性向上設備投資促進税制(B類型)では、医療機器を含むすべての器具及び備品が適用対象となっていました。
 しかし、新設された中小企業経営強化税制では、医療保健業を行う事業者(医療法人や個人開業医等)が取得する医療機器は、A類型及びB類型ともに適用対象外となりました
 今回は、医療業と中小企業経営強化税制との関係について述べていきます。

1.「医療保健業を行う事業者」とは?

 「医療保健業を行う事業者」とは、医療業及び保健衛生業を行う事業者、すなわち、医療業(日本標準産業分類の「大分類P-医療、福祉」・「中分類83-医療業」医師又は歯科医師等が患者に対して医業又は医業類似行為を行う事業所及びこれに直接関連するサービスを提供する事業所)及び保健衛生業(日本標準産業分類の「大分類P-医療、福祉」・「中分類84-保健衛生」保健所、健康相談施設、検疫所(動物検疫所、植物防疫所を除く)など保健衛生に関するサービスを提供する事業所)を行う事業者のことをいいます。

2.適用対象資産

 医療保険業を行う事業者(医療法人や個人開業医等)が取得又は制作をする医療機器、建物附属設備は経営力向上設備等から除外されています

 中小企業経営強化税制の適用対象資産は、中小企業等経営強化法施行規則第8条第2項の経営力向上設備等に該当することが必要ですが、その経営力向上設備等の「器具及び備品」と「建物附属設備」では、生産性向上設備(A類型)・収益力強化設備(B類型)ともに、「医療保険業を行う事業者が取得又は制作をする器具及び備品中の医療機器と建物附属設備」は除かれています(中小企業等経営強化法第19条第3項、中小企業等経営強化法施行規則第8条第2項)。

 したがって、医療法人や個人開業医が取得する医療機器(器具及び備品に該当)及び建物附属設備は、中小企業経営強化税制の適用対象とはなりません。

3.医療機器とは?

 ここで、医療機器とは、耐用年数省令別表第一の「器具及び備品」「8医療機器」に掲げられる消毒殺菌用機器、手術機器、血液透析又は血しょう交換用機器、ハバードタンクその他の作動部分を有する機能回復訓練機器、調剤機器、歯科診療用ユニット、光学検査機器及びレントゲンその他の電子装置を使用する機器等が該当し、病院、診療所等における診療用又は治療用の器具及び備品をいいます(耐用年数取扱通達2-7-13)。

 また、建物附属設備は、耐用年数省令別表第一の「建物附属設備」に掲げられているものが該当します。

 なお、医療保健業を営む者が取得する医療用の機械及び装置並びに器具及び備品については、別途、医療用機器の特別償却(租税特別措置法45の2)の検討が必要です。

中小企業投資促進税制~キュービクルは建物附属設備か機械装置か?

 製造業を営むA社から、次のような質問がありました。

「工場にキュービクル(約300万円)を設置する予定だが、中小企業投資促進税制の適用を受けることはできるか?」

 この質問の意味するところは、「キュービクルは建物附属設備と機械装置のどちらに該当するか?」ということです。
 今回は、キュービクルの資産種類について確認します。

1.中小企業投資促進税制の適用対象資産

 中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除)は、中小企業者等が一定の機械装置等の対象設備を取得・制作等した場合に、基準取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除が選択適用(税額控除は資本金3,000万円以下の法人のみ)できる制度です。

 対象設備は、機械及び装置及び一定の工具、ソフトウェア、車両及び運搬具、船舶であって一定の規模のものに限られます(中小企業投資促進税制については、本ブログ記事「中小企業等経営強化法の認定が不要の設備投資税制」を参照して下さい)。

 A社のキュービクルが建物附属設備に該当する場合は中小企業投資促進税制の適用はなく、機械装置に該当する場合は適用がありますので、資産種類の判定は慎重に行わなければなりません。

2.キュービクルの資産種類

 キュービクル(キュービクル式高圧受電設備)は、発電所から変電所を通して送られてくる高圧の電気を100Vや200Vに変圧する受電設備を収めた金属製の箱であり、小規模変電所ともいうことができます。

 ところで、耐用年数の適用等に関する取扱通達2-2-2が定める電気設備は「建物附属設備」に該当するものをいいますから、店舗や工場、事務所用の建物の照明等に係るものを指します。

 これに対し、工場等における製造工程の動力用の電源装置として使用される電気設備は「機械及び装置」に該当し、その耐用年数は設備の種類に応じた耐用年数となります。

 A社のキュービクルは工場内の機械装置のための変圧器であって、工場用建物のためのものではありませんから「機械及び装置」に該当し、中小企業投資促進税制に関する一定の要件を満たした場合には、その適用を受けることができます。

ロータリークラブ、ライオンズクラブの会費は法人と個人で経理処理が異なる!

 9月決算・11月申告法人の決算書・申告書のチェックをしていた際に、ロータリークラブの入会金と会費が決算書の「諸会費」に計上されていることに気づきました。
 ロータリークラブやライオンズクラブの入会金と通常会費については、その経理処理が法人と個人で異なります。経費(法人税法上の損金、所得税法上の必要経費)として認められるか否かについて、以下述べていきます。

1.法人の場合は交際費として損金算入

 法人が支出したロータリークラブやライオンズクラブの入会金・通常(経常)会費は、次の法人税基本通達9-7-15の2(1)より交際費となります。

「9-7-15の2 法人がロータリークラブ又はライオンズクラブに対する入会金又は会費等を負担した場合には、次による。(昭55年直法2-15「十六」により追加)

(1) 入会金又は経常会費として負担した金額については、その支出をした日の属する事業年度の交際費とする。
(2) (1)以外に負担した金額については、その支出の目的に応じて寄附金又は交際費とする。ただし、会員たる特定の役員又は使用人の負担すべきものであると認められる場合には、当該負担した金額に相当する金額は、当該役員又は使用人に対する給与とする。」

 (2)は、入会金・経常会費以外に負担した金額、例えば懇親会参加費用などは交際費となりますが、本来個人が負担すべき金額を法人で支払った場合は、その個人に対する給与となることをいっています。

 なお、ロータリークラブやライオンズクラブの入会金・通常会費の消費税の課税区分は不課税です。

2.個人の場合は必要経費不算入

 一方、個人事業主が支出したロータリークラブやライオンズクラブの入会金・通常会費は、必要経費として認められません。所得税基本通達に規定はありませんが、過去の裁決例、例えば2016年(平成28年)7月19日裁決において、個人事業主である弁護士がロータリークラブの会費の必要経費性を主張したところ、国税不服審判所は次のように判断しています。

「本件ロータリークラブは、定款に従って、各種の奉仕活動を行うとともに、会員同士の親睦を深めたり、講演や卓話を通じて教養を高めるなどの活動をしていたものと認められる。そして、請求人の本件クラブの会員としての活動の主なものは、①例会への出席、②親睦会への出席、③奉仕活動への参加及び④講演会への出席であり、請求人がこれらの活動を行うことで報酬を得ていたなどの事情は特に見当たらない。 」

「本件クラブの活動内容を踏まえ、請求人が本件クラブの会員として行う以上のような活動を社会通念に照らして客観的にみれば、その活動はいずれも営利性、有償性を有しておらず、請求人が弁護士としてその計算と危険において報酬を得ることを目的として継続的に法律事務を行う経済活動に該当するものではないというべきである。」

「そうすると、本件各会費は、請求人が本件クラブの会員であることに伴って支出したものであるから、請求人の所得を生ずべき事業と直接関係し、かつ、当該事業の遂行上必要であるとは認められない。したがって、本件各会費は、事業所得の金額の計算上必 要経費に算入されない。」

「請求人は、弁護士業においては、顧客獲得のための積極的な営業・広報動等を広く展開することが重要であり、本件クラブの会員であることは、業務遂行上必要かつ極めて有益な要因である旨主張する。しかしながら、本件クラブの会員であることで、請求人が主張するような側面があったとしても、これは、会費を支出することの直接の目的ではなく、飽くまでも間接的、副次的に生ずる効果にすぎないとみるのが相当であるから、会費を支出することが、弁護士業務の遂行上必要であるということはできない。したがって、請求人の上記主張には理由がない。」

 また、この裁決の中で、ロータリークラブの会費を法人が支出した場合は経費になるのに対し、個人が支出した場合は経費にならない理由について、国税不服審判所は次のように述べています。

「さらに、請求人は、法人が支出するロータリークラブの会費は、法人税基本通達において、クラブ加入の実質的目的を根拠に経費性が認められており、実態として全く変わりのない個人としての弁護士に関しても当然経費性が肯定されるべきである旨主張する。しかしながら、私的な消費生活を行う個人と、それを観念できない法人とでは、支出に関する取扱いを異にすることは、所得税法及び法人税法におけるそれぞれの課税所得の計算構造をみても当然に予定されているものというべきであるから、この点に関する請求人の主張にも理由がない。」