交通費込み給与の交通費部分は確定申告でも非課税にできない

1.交通費込み給与の交通費は所得税の課税対象

 給与所得者にとって、月15万円までの交通費(通勤手当)には所得税がかからないということは、当たり前のように思われています。しかし、交通費込みで給与の支給を受けている場合は、交通費部分を非課税とすることはできません。

 所得税法第9条(非課税所得)には、「給与所得を有する者で通勤するものがその通勤に必要な交通機関の利用又は交通用具の使用のために支出する費用に充てるものとして通常の給与に加算して受ける通勤手当(これに類するものを含む。)のうち、一般の通勤者につき通常必要であると認められる部分として政令で定めるもの 」と規定されています。

 ここで注目すべき点は、通常の給与に「加算して」支給される交通費が非課税になるということです。
 したがって、交通費込みで給与の支給を受けている場合には、交通費を含めた全額が給与として所得税の課税対象になります。

2.確定申告で交通費部分を非課税とできるか?

 では、確定申告を行って、交通費込みで支給された給与から、交通費部分を抜き出して非課税とすることはできるのでしょうか?

 これについては、2008年(平成20年)の国税不服審判所の裁決(裁決事例集No.75)で、「通常の給与に加算して通勤手当等が支給されていない場合には、たとえ通勤者が通常の給与のうちから通勤費相当額を負担したとしても、(中略)、当該通勤費相当額を、非課税所得として給与等の収入金額から除外することはできない」とされています。