青色申告特別控除と青色申告承認申請書の提出期限の注意点

 不動産所得、事業所得、山林所得を生ずべき業務を行う方は、税務上さまざまな特典がある「青色申告」を選択することができます。 

1.65万円の青色申告特別控除の要件

 青色申告者に対する特典はいろいろありますが、青色申告特別控除もその1つです。
 青色申告者は、次の要件を満たす場合に、不動産所得の金額又は事業所得の金額から最高65万円の青色申告特別控除額を控除することができます

(1) 現金主義を選択していないこと
(2) 事業的規模の不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営む者であること
(3) 正規の簿記の原則に従い取引を記録していること
(4) 貸借対照表、損益計算書を確定申告書に添付していること
(5) 期限内に申告書を提出していること

 上記の要件を満たさない場合は、最高10万円の控除となります。気をつけなければならないのは、上記(5)の要件を満たさない場合(期限後申告の場合)でも、10万円の青色申告特別控除の適用はあるという点です。

※ 2018年度(平成30年度)改正で、2020年(令和2年)分の所得税確定申告から、青色申告特別控除額が65万円から55万円に変わりました。
 ただし、e-Taxによる申告(電子申告)又は電子帳簿保存を行うと、引き続き65万円控除を受けることができます。
 改正内容については、本ブログ記事「電子申告したのに青色申告特別控除額が55万円?」をご覧ください。

2.65万円の青色申告特別控除の注意点

 青色申告特別控除額は、不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額の順序で控除しますが、山林所得は65万円の控除の適用はありません。
 また、控除できる金額は、青色申告特別控除前の所得金額を限度とします。 例えば、不動産所得の金額が50万円の場合は、65万円ではなく50万円の控除となります。つまり、青色申告特別控除によって、不動産所得がマイナスになることはありません。 

 なお、65万円の青色申告特別控除について当初申告の確定申告書に記載した金額を適用上限とする(修正申告等で増額できない)措置が、2011年(平成23年)分以後の所得税で廃止されました。したがって、当初申告の確定申告書に50万円の特別控除額が記載されていたとしても、修正申告等で所得が増加した場合には最大で65万円の特別控除を受けることができます。

3.青色申告承認申請書の提出期限に注意

 青色申告の特典の一つとして青色申告特別控除を挙げましたが、青色申告を選択するためには「青色申告承認申請書」を税務署に提出して承認を受ける必要があります。その提出期限を誤ると青色申告の適用が翌年になってしまうため、気をつけなければなりません。 

 青色申告承認申請書の提出期限は、以下のとおりです。

(1) 白色申告から青色申告に変更する場合
  →その年の3月15日

(2) 新規開業した場合
① 開業した日が1月1日~1月15日→開業した年の3月15日
② 開業した日が1月16日~12月31日→開業日から2か月以内

(3) 相続により事業を承継した場合
① 被相続人が青色申告をしていた場合
 イ.相続開始を知った日が1月1日~8月31日→相続開始日から4か月以内
 ロ.相続開始を知った日が9月1日~10月31日→その年の12月31日
 ハ.相続開始を知った日が11月1日~12月31日→翌年2月15日
② 被相続人が白色申告をしていた場合
 イ.相続開始を知った日が1月1日~1月15日→相続した年の3月15日
 ロ.相続開始を知った日が1月16日~12月31日→相続開始日から2か月以内

 注意を要するのは、相続により事業を承継した場合です。
 例えば、被相続人の事業(白色申告)を承継した相続人が新たに青色申告をする場合、提出期限は相続開始後4か月以内(準確定申告書の提出期限)ではなく、その年の3月15日と相続開始後2か月以内のいずれかとなります。
 また、被相続人の業務を承継した相続人が、すでに白色申告で不動産や事業などの業務を営んでいる場合は、提出期限は原則どおりその年の3月15日となります。