インボイス登録申請書等の書面による提出先が変わります

 インボイス制度に関する申請書等には、例えば「適格請求書発行事業者の登録申請書」や「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」などがありますが、これらを書面で提出する場合の提出先が以下のように変わります。

1.令和8年9月23日(水)までの提出先

 これまでと同様、管轄の各国税局(沖縄国税事務所)のインボイス登録センターに提出(郵送)します。

 インボイス登録センターの所在地(提出先)については、国税庁ホームページ(各局(所)インボイス登録センターのご案内)に掲載されていますが、札幌国税局インボイス登録センターについては、2026(令和8)年7月13日(月)に移転していますので、提出の際はご注意ください。

2.令和8年9月24日(木)以降の提出先

 管轄の各国税局(沖縄国税事務所)の業務センターに提出(郵送)します。

 業務センターの所在地(提出先)についても、国税庁ホームページ(税務署の内部事務のセンター化について)に掲載されています。
 なお、2026(令和8)年7月10日(金)から、全税務署が内部事務のセンター化の対象署となっています。

3.インボイス制度に関する申請書等の様式変更

 2026(令和8)年6月以降、インボイス制度に関する申請書等を含む国税関係の各種様式が順次変更されます※。

 変更後においては、新様式(AI‐OCR様式)により提出(郵送)します。

※ 紙で提出される申告書や申請書を自動でデータ化する「AI‐OCR」の本格運用が開始されます。
 これに伴い、AI‐OCRで文字や数字の読み取りを行うため、一部の書面申告書等についてレイアウトが変更されます。

4.e-Taxによる提出の場合

 インボイス関係の申請書等を書面により提出する場合は上記1~3のとおりですが、e-Taxにより提出する場合の提出先については、特に意識する必要はありません。

 e‑Taxで送信すれば、提出先は自動処理されます(自動的に正しい部署へ届きます)。

 なお、国税庁では、2026(令和8)年9月24日(木)に国税システムの更改(KSK(国税総合管理)からKSK2へ移行)を予定しています。

 KSK2の導入に伴い、2026(令和8)年9月19日(土)0時から同年9月24日(木)8時30分の間においてはe-Taxが利用できませんのでご注意ください。

個人の青色申告の承認が取り消される場合とは?

 個人の青色申告は、複式簿記による帳簿の作成や保存等を行う必要があるため、基本的に白色申告よりも事務負担が増えます。

 一方、事務負担が増加する見返りとして、青色申告には様々な特典が設けられています。
 例えば、青色申告特別控除、青色事業専従者給与、40万円未満の少額減価償却資産の特例、一括評価による貸倒引当金、純損失の繰越控除などです※。

 青色申告は、所得金額の計算などについて有利な取扱いが受けられるため、一定水準の記帳をし、その記帳に基づいて正しい申告をしなければなりませんが、税務調査等で青色申告の承認が取り消される場合があります。

 今回は、個人の青色申告の承認が取り消される場合について確認します。

※ 青色申告の特典については、「青色申告と白色申告の特典比較」をご参照ください。

1.青色申告承認の取消事由

 個人の青色申告の承認取り消しについては、所得税法第150条第1項(青色申告の承認の取消し)に規定されています。

 また、税務署の取扱基準を示した「事務運営指針」では、所得税法第 150条第1項各号に掲げる事実及びその程度、記帳状況、改善可能性等を総合勘案の上、真に青色申告書を提出するにふさわしくない場合について、承認取り消しを行うこととされています。

 以下において、所得税法と事務運営指針を基に、個人の青色申告承認の取消事由についてみていきます。

(1) 帳簿書類を税務調査で提示しない場合(所得税法第 150条第1項第1号)

 帳簿書類の備付け、記録又は保存とは、単に物理的に帳簿書類が存在することのみを意味するにとどまらず、これを税務職員に提示することを含みます。

 したがって、税務調査の際に帳簿書類の提示を再三にわたり求められたにもかかわらず、正当な理由なくその提示を拒否した場合には、青色申告の承認の取消事由に該当することとなり、その提示がされなかった年分のうち最も古い年分以後の年分について、その承認が取り消されます。

(2) 税務署長の指示に従わない場合(所得税法第 150条第1項第2号)

 帳簿書類の備付け、記録又は保存について、税務署長の指示に従わない場合は、青色申告の承認の取消事由に該当することとなり、当該指示に係る年分以後の年分について、その承認が取り消されます。

(3) 隠ぺい又は仮装を行った場合等(所得税法第 150条第1項第3号)

 次のいずれかに該当する場合には、その該当することとなった年分以後の年分について、その承認が取り消されます。

① 決定又は更正がされた場合において、当該決定又は更正後の所得金額のうち隠ぺい又は仮装の事実に基づく所得金額が、当該決定又は更正に係る所得金額の50%に相当する金額を超えるとき(当該隠ぺい又は仮装の事実に係る所得金額が 500万円に満たないときを除く)

② 純損失の金額を減額する更正(所得金額があることとなる更正を含む)がされた場合において、当該更正により減少した部分の純損失の金額(所得金額があることとなる更正の場合にあっては、当該所得金額を加算した金額)のうち隠ぺい又は仮装の事実に基づく金額が、当初の申告に係る純損失の金額(所得金額があることとなる更正の場合にあっては、当該所得金額を加算した金額の50%に相当する金額を超えるとき(当該隠ぺい又は仮装の事実に係る純損失の金額が 500万円に満たないときを除く)

③ 帳簿書類への記載等が不十分である等のため、所得税法第 156条の規定による推計によらなければ適正な所得金額の計算ができないと認められる状況にある場合

2.取り消しに関するよくある誤解(期限後申告の場合)

 個人の青色申告の承認が取り消されるのは上記1の事由に該当した場合ですが、よくある誤解が、「2事業年度連続で期限内(2月16日~3月15日)に申告しなかった場合は、青色申告の承認が取り消される」というものです。

 2事業年度連続で期限後申告をした場合に青色申告の承認が取り消されるのは法人だけであって、個人については2年連続で期限後申告となっても、そのことが原因で青色申告の承認が取り消されることはありません※。

※ 詳細については、「無申告でも所得税の青色申告は取り消されない」をご参照ください。

賃上げ促進税制の繰越税額控除制度の注意点

 中小企業向け賃上げ促進税制は、青色申告書を提出している中小企業者等が、前年度より 給与等の支給額を増加させた場合に、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です。

 賃上げ促進税制における税額控除額は、調整前法人税額の20%を限度とするとされていますので、中小企業者等が要件を満たす賃上げを実施しても、その実施した事業年度に控除しきれなかった金額(税額控除限度超過額)が生じることがあります。

 この税額控除限度超過額はその期で失効せず、その後5年間の繰越控除が認められています(2024(令和6)年度税制改正)。

 以下では、中小企業向け賃上げ促進税制の繰越税額控除制度を適用する際の注意点について確認します。

1.ゼロ申告でも賃上げ促進税制の別表を添付

 この繰越税額控除の適用を受けるためには、税額控除限度超過額が生じた事業年度以後の各事業年度の確定申告書に繰越税額控除限度超過額の明細書を添付し、繰越控除の適用を受ける事業年度の確定申告書に控除の対象となる繰越税額控除限度超過額と控除を受ける金額を記載するとともに、その金額の計算に関する明細書を添付する必要があります※。

 このように、その適用に当たっては、賃上げ促進税制の別表を作成・提出し続けることが要件となっています。

 繰越欠損金の発生事業年度や繰越欠損金がある事業年度であっても、賃上げ促進税制による税額控除限度超過額が発生した場合には、ゼロ申告でも賃上げ促進税制の別表を添付することになります。

 従来においても、ゼロ申告の事業年度でも、税務調査で納税額が出ることになる可能性がある場合に備えて、法人税申告書に賃上げ促進税制の別表を添付しておき、税額控除の適用の可能性を担保しておくべき、と言われていました。

 2024(令和6)年度税制改正で5年間の繰越控除が可能となりましたので、今後はこのようなリスク管理的な配慮ではなく、5年間の内に黒字を達成すれば税額控除の適用を受けられるようにしておく必要があります。

※ 賃上げ促進税制の別表の書き方については、「中小企業者等の賃上げ促進税制に係る別表六の書き方と記載例《令和6年4月1日~令和9年3月31日開始事業年度》」をご参照ください。

2.継続的な賃上げが不可欠

 ところで、賃上げ促進税制のほかにも各種の税額控除制度があります。例えば、中小企業者等が機械等を取得した場合の税額控除制度(中小企業投資促進税制)などです。

 中小企業投資促進税制では、翌期に法人税額があれば税額控除が可能です。

 しかし、賃上げ促進税制では、繰越税額控除を適用する各事業年度において、雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額より増加していなければ控除は認められない、という追加要件が課されている点には注意が必要です。

 税額控除の権利は保持できても、実際に税額控除をするには継続的な賃上げが不可欠だということです。

 また、賃上げ促進税制での税額控除額は、調整前法人税額の20%を限度とするとされています。
 複数の税額控除制度を適用する場合、調整前法人税額の20%という部分は、重複して適用を受けられます。

 ただし、20%の税額控除が幾つもあった場合、その合計額については、調整前法人税額の90%を限度とする制限規定があります。
 したがって、調整前法人税額の90%を超える部分の金額(調整前法人税額超過額)は、調整前法人税額から控除することができません。

 この調整前法人税額超過額は、各種の税額控除制度による控除可能期間が最も長いものから順次成ることとされています。
 つまり、調整前法人税額超過額は、まず残りの控除可能期間の長いものに配賦し、次に控除可能期間が同じものについては、法人の選択により配賦することとされています。

社会保険料を給与から天引きするタイミングの原則と例外

 先日、顧問先の社長さんから次のような質問がありました。

 「6月1日に雇用した新入社員の給与を6月25日に支給したところ、その新入社員から『社会保険料が天引きされているのはおかしい』と指摘されたが、当社の処理は間違っているのか?」

 この会社の給与の締め日は毎月20日で、給与の支給日は当月の25日です。この会社では新しく従業員を雇用したときの社会保険料については、入社後初めて支給する給与から天引きすることにしています。

 今回の例もこれまで通りの処理をしただけなのですが、この処理は間違っているのでしょうか?

1.原則的な処理は「翌月徴収」

 この新入社員の方は6月1日に入社しましたので、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の資格取得日は6月1日となり、6月分の社会保険料が発生します。

 その6月分の社会保険料を、翌月の7月25日に支給する給与から天引きして、7月末に納付するというのが原則的な流れとなります。

 この原則的な流れからすると、新入社員の方の指摘は正しく会社の処理は間違っているようにも見えます。

 なぜなら、6月分の社会保険料を当月の6月25日に支給する給与から天引きして7月末に納付することになりますので、原則的な流れと比べると天引きするタイミングが1か月早くなっているからです。

 しかし、結論を先に述べると、このような処理が一概に間違っているとはいえません。

2.例外的な処理は「当月徴収」

 上記1でみたように、原則的な処理においては、当月分(6月分)の社会保険料を翌月(7月)に支給する給与から天引きして翌月末(7月末)に納付することになります。

 この場合、数年後にこの従業員が退職したとき、例えば、数年後の10月31日に退職したときは、10月分の社会保険料が発生しますので、その10月分の社会保険料を翌月の11月25日に支給する最後の給与から天引きします。

 また、10月30日に退職したときは、10月分の社会保険料は発生しませんので、翌月の11月25日に支給する最後の給与から社会保険料は天引きしません。

 一方、今回のように、6月分の社会保険料を、当月の6月25日に支給する給与から天引きして、7月末に納付するという例外的な処理も認められます。

 原則的な処理より1か月早い天引きになりますが、違法ではなく採用している事業所も多くあります。

 この例外的な処理において、数年後にこの従業員が退職したとき、例えば、数年後の10月31日に退職したときは、10月分の社会保険料が発生しますので、その10月分の社会保険料を当月の10月25日に支給する給与から天引きします。
 この場合、11月25日に支給する最後の給与からは社会保険料を天引きしません。

 また、10月30日に退職したときは、10月分の社会保険料は発生しませんので、当月の10月25日に支給する給与から社会保険料は天引きしません。
 この場合、11月25日に支給する最後の給与からも社会保険料を天引きしません。

 このような例外的な処理が認められるのは、原則的な処理と社会保険料を天引きするタイミングにズレがあったとしても、不合理が生じないからです。

 原則的な処理に比べて、例外的な処理は社会保険料の天引きを開始するタイミングが1か月早くなりますが、その分、天引きを終了するタイミングも1か月早くなります。

 従業員の入社から退職までを考えると、給与から天引きする社会保険料の額や回数は、原則的な処理でも例外的な処理でも同じになり、不合理は生じません。



社用車は購入すべきかリースすべきか?

 社用車の調達に際しては、主に、①自社で購入して管理・運用する方法、②リース会社に毎月リース料を支払い運用するカーリースの方法、さらには③必要な時に必要な分だけ利用できる最近流行りのカーシェアを使うという方法があります。

 ③のカーシェアによる方法は、恒常的に利用が必要でなければ、税金・自動車保険料(任意保険)・車検(定期点検)費用・駐車場代など、維持にかかる経費削減に効果的ですが、今回は、恒常的に社用車が必要な会社にとって、①と②のどちらがより良い選択肢かについて、それぞれのメリット・デメリットを比較します。

1.購入のメリット・デメリット

(1) 購入のメリット

 購入する場合は、支払総額がリースよりも少なく済みます。
 また、自社で減価償却(定率法)を行いますので、購入初年度の節税効果が大きいことの期待もあります。
 売却や廃棄処分についても、自社で自由に設定できます。

(2) 購入のデメリット

 購入する場合は、購入時に車両代金や納車整備費用、各種税金等がかかりますので、一時的にまとまった資金調達が必要となります。
 また、毎年の自動車税や定期点検整備費用、車検時には車検代金や各種税金の支払いが発生します。
 税金や保険、車検や整備などの管理を自社でしなければならないため、これらの事務負担が発生します。

2.カーリースのメリット・デメリット

(1) カーリースのメリット

 カーリースとは、利用者が希望するクルマをリース会社が代行して購入し、一定の期間に渡って貸し出すサービスです。
 そのため、車の所有権はリース会社にありますが、月々定額のリース料に初期費用や税金などが含まれているため、リース開始時にまとまった資金を用意する必要がありません。
 また、契約期間中も車検や整備などの管理をリース会社が行うため、その業務負担を抑えることができます。

(2) カーリースのデメリット

 中途解約する場合は違約金を支払うことになりますので、車が不要になっても中途解約できない場合があります。
 また、リース会社が資金調達と事務管理をしますので、その分のコストがリース会社の儲けとしてリース料に上乗せされるため、支払総額が購入する場合よりも大きくなります。

3.自宅は購入か賃貸か?と同じテーマ

 購入とリースのメリット・デメリットは、それぞれ裏表の関係にあります。
 自社で資金を調達して税金メリットを取るのか、自社の事務管理を省いてその分の負担金を多く支払うのかなど、それぞれ自社の資金調達環境や社内管理体制などによって、どちらがより良い選択肢となるのかは変わってきます。
 個別環境によって変わってくるところは、「住宅は購入か賃貸か?」に似ている比較ともいえます。

青色事業専従者給与を事業収入以外の資金で支払ったら否認されるのか?

 青色申告には様々な特典がありますが、その一つに青色事業専従者給与があります。

 個人事業者が生計を一にする親族に給与を支払っても必要経費にできませんが(所得税法第56条)、青色申告の承認を受けている個人事業者が青色事業専従者給与に関する届出書を税務署に提出している場合は、労務の対価として相当と認められる給与については必要経費にすることができます(所得税法第57条第1項)。

 税務調査の際には、青色事業専従者給与が労務の対価として相当か否かが争われるケースが多いと思われますが、税務署が「事業収入以外の資金(給与収入)から支払われていたこと」を否認理由の一つに挙げた裁決例があります。

 以下では、この税務署の否認理由について、国税不服審判所がどのように判断したのかを確認します。

1.必要経費算入の要件

 青色事業専従者給与については、所得税法第57条第1項に次のように規定されています(下線は筆者による)。

青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者と生計を一にする配偶者その他の親族(年齢15歳未満である者を除く。)で専らその居住者の営む前条に規定する事業に従事するもの(以下この条において「青色事業専従者」という。)が当該事業から次項の書類に記載されている方法に従いその記載されている金額の範囲内において給与の支払を受けた場合には、前条の規定にかかわらず、その給与の金額でその労務に従事した期間、労務の性質及びその提供の程度、その事業の種類及び規模、その事業と同種の事業でその規模が類似するものが支給する給与の状況その他の政令で定める状況に照らしその労務の対価として相当であると認められるものは、その居住者のその給与の支給に係る年分の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上必要経費に算入し、かつ、当該青色事業専従者の当該年分の給与所得に係る収入金額とする。

 青色事業専従者給与が必要経費に算入されるための要件について、所得税法第57条第1項は、前段で形式的要件(事業から支払われた給与であること)、後段で実質的要件(労務の対価として相当な金額であること)を挙げています。

 このうち、税務署が形式的要件を満たしていないことを否認理由の一つとして挙げたのが次の裁決例です。

2.平成27年4月13日裁決

(1) 事案の概要

 医師として複数の病院に勤務するとともに自ら診療所を営む納税者が妻に対して支払った青色事業専従者給与について、税務署は、次の理由から「当該事業から」給与の支払を受けた場合に該当しないため、事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないと主張しました。

① 事業収入より給与収入が約4倍多い
 青色事業専従者給与の原資は診療所の事業収入ではなく、勤務先病院からの給与収入である。

② 事業用口座から支払われていない
 事業用の預金口座ではなく、勤務先病院からの給与収入が振り込まれる口座から直接現金を引き出して支払っている。

 ①②の理由から、青色事業専従者給与は給与収入から支払われているため事業からの支払といえず、必要経費に算入できないとしました。

(2) 審判所の判断

 これに対し、審判所は次の理由から「青色事業専従者給与は事業から支払われた給与に該当する」として、税務署の主張を退けました。

① 青色事業専従者給与は勤務先病院の給与振込口座から現金出金されていたが、出金時または年末に「事業主借」勘定へ振替処理がされており、事業用とされた現金から支払われていた。

② 所得税法第57条は、事業収入以外から事業に流入した資金により青色事業専従者給与が支払われた場合に、当該支払を必要経費に算入することを認めない旨を規定したものではない。

 ①②の理由から、青色事業専従者給与は事業から支払われていたものと認められるため、税務署の主張には理由がないとしました。

 個人事業では、事業主の個人資金を事業に補填することは通常の処理であり、事業主借勘定に振り替えられ事業用とされた現金から支払われている以上、「事業から支払われた給与」に該当するということです。

 ただし、この裁決例では、所得税法第57条第1項後段の実質的要件(労働の対価として相当な金額であること)により、その青色事業専従者給与の大部分が否認されています。

固定資産税・不動産取得税の免税点の引き上げ(令和8年度税制改正)

 2026(令和8)年度税制改正で、固定資産税と不動産取得税の免税点が引き上げられています。
 以下では、改正前と改正後の免税点について確認します。

1.固定資産税の免税点

 固定資産税の免税点の見直しは、1991(平成3)年以来となります。

 固定資産税の課税対象(課税客体)は土地、家屋、償却資産ですが、今回の税制改正では、家屋に係る免税点が30万円(改正前は20万円)に、償却資産に係る免税点が180万円(改正前は150万円)に引き上げられています。

 土地に係る免税点については、1991(平成3)年よりも地価が下落していることから、従前の30万円で据え置きとなっています。

 改正前と改正後の固定資産税の免税点は、次のとおりです。改正後の免税点は、2027(令和9)年度以後の年度分の固定資産税について適用されます。

固定資産税の課税対象 改正前 改正後
土地 30万円 30万円
家屋 20万円 30万円
償却資産 150万円 180万円

※ 償却資産税に関連する参考記事は、次のとおりです。
・「償却資産税の申告対象となる資産とは?」
・「償却資産の申告で迷いやすいケース」
・「家屋と一体の建築設備は家屋と償却資産のどちらに該当するか?」
・「事務所・店舗等を移転した場合の償却資産申告書の記載例」
・「償却資産申告書の修正方法(修正申告)」

2.不動産取得税の免税点

 不動産取得税の免税点の見直しは、1973(昭和48)年以来となります。

 不動産取得税の課税対象は土地と家屋です。不動産取得税は、土地や家屋の購入、贈与、家屋の建築などで不動産を取得(相続などの場合は除く)した際に、取得した人に対して課される税金です。

 今回の税制改正で、不動産取得税の免税点は、土地に係る免税点が16万円(改正前は10万円)に、家屋に係る免税点のうち建築に係るもの(建築分)は66万円(改正前は23万円)に、その他のもの(承継分:建築以外で取得)は34万円(改正前は12万円)に引き上げられています。

 改正前と改正後の不動産取得税の免税点は次のとおりです。改正後の免税点は、2026(令和8)年度以後の年度分の不動産取得税について適用されます。

不動産取得税の課税対象 改正前 改正後
土地 10万円 16万円
家屋(建築分) 23万円 66万円
家屋(承継分) 12万円 34万円

免税事業者からの仕入れに係る経過措置(8割控除の後は7割・5割・3割控除へ段階的に縮小)

 インボイス制度が始まって以降、中小企業・小規模事業者からは依然として「経理負担が重い」「消費税の負担が増えた」という声が多く聞かれます。
 こうした状況を踏まえ、2026(令和8)年度税制改正において仕入税額控除の経過措置が見直され、その適用期限が延長されました。
 今回は、免税事業者からの仕入に係る仕入税額控除の経過措置について、改正内容を確認します。

1.免税事業者からの仕入れに係る経過措置とは?

 インボイス制度の下では、インボイス(登録番号が記載された請求書等)が交付されない課税仕入れは、買い手側で仕入税額控除をすることができません。

 免税事業者はインボイスを発行することができませんので、免税事業者との取引の縮小や廃止を考える事業者が出てくる可能性があります。

 このような事態を避けるため、免税事業者からの仕入れであっても、一定期間は一定割合の控除を認める「経過措置」が設けられました。

 具体的には、インボイス制度が導入された2023(令和5)年10月1日から2026(令和8)年9月30日までの3年間は仕入税額の8割控除を認め、2026(令和8)年10月1日から2029(令和11)年9月30日までの3年間は5割控除を認めるというものでした。

期間 控除割合
2023(令和5)年10月1日~2026(令和8)年9月30日 8割
2026(令和8)年10月1日~2029(令和11)年9月30日 5割
2029(令和11)年10月1日~ 控除不可

2.改正後の控除割合の推移

 今回の税制改正により、控除割合の引下げペースが緩和され、次のように段階的に縮小されることとなりました。

期間 控除割合
2023(令和5)年10月1日~2026(令和8)年9月30日 8割
2026(令和8)年10月1日~2028(令和10)年9月30日 7割
2028(令和10)年10月1日~2030(令和12)年9月30日 5割
2030(令和12)年10月1日~2031(令和13)年9月30日 3割
2031(令和13)年10月1日~ 控除不可

 改正前は「8割→5割」という2段階の縮小が予定されていましたが、改正後は「8割→7割→5割→3割」という4段階の縮小になり、 買い手側の負担増のペースが緩和されました。

3.年間適用上限額の引下げ

 経過措置の濫用防止の観点から、経過措置の対象となる免税事業者ごとの課税仕入れの合計額に係る制限も改正されています。

 改正前は、一の免税事業者から行う経過措置の対象となる課税仕入れの額の合計額がその年又はその事業年度で税込み10億円を超える場合には、その超えた部分の課税仕入れについて経過措置は適用できませんでした。

 今回の改正で、税込み10億円という年間適用上限額が、税込み1億円に引き下げられました。

 この改正も、2026(令和8)年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます。

2割特例・3割特例を適用した課税期間の翌課税期間の簡易課税制度選択届出書はいつまでに提出すればいいか?(令和8年度税制改正)

 消費税の申告方法には、仕入控除税額について実額で計算する「本則課税」、業種ごとに決められたみなし仕入率を用いて仕入控除税額を計算する「簡易課税」、売上税額の2割を納税額として計算する「2割特例」、売上税額の3割を納税額として計算する「3割特例」があります。

 これらのうち、2割特例は2026(令和8)年9月30日の属する課税期間の末日を以って終了し、3割特例は個人事業者限定で2027(令和9)年分と2028(令和10)年分の消費税申告で適用することができます。

 2割特例と3割特例については事前の届出が不要で、適用を受ける旨を確定申告書に付記することで適用できますが、簡易課税は、原則として適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。

 しかし、2割特例や3割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間に簡易課税の適用を受ける場合は、「消費税簡易課税制度選択届出書の提出に係る特例」が設けられており、必ずしも適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに提出する必要はありません。

 2割特例・3割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間であれば、簡易課税制度選択届出書を事前(簡易課税の適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで)に提出していないときでも、簡易課税の適用を受けることができます。

 2割特例・3割特例の適用を受けたインボイス発行事業者が、その適用を受けた課税期間の翌課税期間に係る確定申告期限まで※に、その翌課税期間から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した簡易課税制度選択届出書を提出した場合には、その翌課税期間から簡易課税の適用を受けることができます(消費税簡易課税制度選択届出書の提出に係る特例)。

 例えば、、令和8年分まで2割特例で申告を行っていた個人事業者が、翌年分(令和9年分)は3割特例で申告しようとしていたところ、3割特例より簡易課税の方が有利であることが判明した場合は、令和9年分から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した簡易課税制度選択届出書を令和9年分の消費税確定申告期限(令和10年3月31日)まで※に提出すれば、令和9年分から簡易課税制度の適用を受けることができます。

 また、令和10年分まで3割特例で申告を行っていた個人事業者が、翌年分(令和11年分)の申告を簡易課税で行う場合は、令和11年分から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した簡易課税制度選択届出書を令和11年分の消費税確定申告期限(令和12年4月1日)までに提出すれば、令和11年分から簡易課税制度の適用を受けることができます。

※ 赤文字部分が改正で変わった箇所です。改正前は、「その適用を受けた課税期間の翌課税期間の末日」とされていました(令和9年分の消費税申告を簡易課税で行う場合は、令和9年12月31日までに選択届出書を提出しないと、令和9年分の申告を簡易課税で行うことはできないとされていました)。

3割特例と簡易課税制度はどちらが有利か?

 2023(令和5)年10月1日に導入されたインボイス制度は、多くの事業者に影響を及ぼしています。
 特に、本来は免税事業者であるにもかかわらず、インボイス制度の導入を機にインボイス発行事業者の登録をして課税事業者となった事業者の負担は大きいといえます。

 このような事業者の税負担や事務負担を軽減するために、簡易課税制度と基本的には同じ計算構造である「2割特例」が設けられましたが、2026(令和8)年9月30日に期限を迎えます。

 そこで、引き続き小規模事業者の負担に配慮した「3割特例」が、2026(令和8)年度税制改正で設けられました。

 3割特例は個人事業者のみが適用可能(法人は適用不可)であり、かつ、2027(令和9)年分と2028(令和10)年分の消費税申告においてのみ適用可能となっています※。

 今回は、「3割特例」と簡易課税制度について、税負担と事務負担の両面から比較を行います。

※ 3割特例については、「2割特例が終われば個人事業者限定で3割特例あり(令和8年度税制改正)」をご参照ください。

1.納税額の計算上どちらが有利か?

 3割特例は売上税額の3割を納税額とするものですが、具体的には簡易課税制度と同様に以下のように計算します。

 消費税納税額=課税売上げに係る消費税額-課税売上げに係る消費税額×70%

 簡易課税制度におけるみなし仕入率は、事業区分に応じて下表のように定められていますが、3割特例は、簡易課税制度におけるみなし仕入率を事業区分にかかわらず一律に70%とすることと同義です。

 したがって、下表の第4種から第6種に該当する事業のうち1種類の事業のみを行う場合は、簡易課税制度よりも「3割特例」の方が納税額が少なくなり有利となります(第3種に該当する事業のみを行う場合は、簡易課税制度のみなし仕入率70%=3割特例の70%となり、両者の納税額は同額となります)。

事業区分 該当する事業 みなし仕入率
第1種事業 卸売業 90%
第2種事業 小売業、農林漁業(飲食料品の譲渡に係る事業) 80%
第3種事業 製造業、建築業、農林漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く)など 70%
第4種事業 第1・2・3・5・6種以外の事業(飲食店業など) 60%
第5種事業 運輸・通信業、金融・保険業、サービス業(飲食店業を除く) 50%
第6種事業 不動産業 40%

 第1種から第6種に該当する事業のうち2種類以上の事業を行う場合は、簡易課税制度のみなし仕入率と3割特例の70%を比較して、どちらか有利な方を適用します。

 例えば、第1種と第2種に該当する事業を行っている場合は、簡易課税制度のみなし仕入率は必ず80%以上となりますので、簡易課税制度の方が3割特例よりも納税額が少なく有利となります。

 一方、第5種と第6種に該当する事業を行っている場合は、簡易課税制度のみなし仕入率が50%を上回ることはありませんので、3割特例の方が簡易課税制度よりも納税額が少なく有利となります。

 つまり、みなし仕入率が70%を上回れば簡易課税制度が有利になり、下回れば3割特例が有利になります。

2.事務負担は3割特例が有利

 納税額の計算上、3割特例と簡易課税制度のどちらが有利になるかについては上記1のとおりですが、事務負担の軽減という点では、簡易課税制度よりも3割特例の方が有利になります。

 3割特例も簡易課税制度も納税額の計算にインボイスは必要ないという点では同じですが、3割特例は一律70%の仕入税額控除を行うため、簡易課税制度のようにどの事業に該当するかという事業区分の判定をする必要がありません。
 したがって、適用税率毎(軽減税率8%と標準税率10%)の売上税額を把握するだけで納税額の計算ができます。

 また、簡易課税制度の適用を受ける場合には、原則として事前に簡易課税制度選択届出書の提出が必要ですが、3割特例の場合は事前の届出は不要であり、申告書に設けられた記載欄に3割特例の適用を受ける旨を付記するだけです。

 さらに、3割特例には2年間の継続適用要件(いわゆる2年縛り)もありません。

 以上のことから、事務負担軽減という面では、3割特例の方が簡易課税制度よりも有利となります。