青色申告決算書の作成上の注意点とチェックポイント

 青色申告をする個人事業者が、所得税の確定申告をするにあたって、まず作成しなければならないものが青色申告決算書です。

 正しい経営判断を行うためにも、正しい税金の計算・申告を行うためにも、青色申告決算書は正確に作成しなければなりません。

 以下では、青色申告決算書の損益計算書の項目を中心に、作成上の注意点を○×形式で解説し、チェックポイントについても確認します。

1.売上(収入)金額

(1)「 12 月に売った商品(あるいは提供したサービス)100,000円の入金が来年1 月になるため、12月の「 売上金額①」に含めていない」 → ×

⇒12月に売った商品の代金が来年の1月に振り込まれるとしても、12月の売上として計上しなければなりません。仕訳は次のようになります。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
売掛金 100,000 売上 100,000

(2) 「来年1 月に発送する商品の手付金10,000円を12月に現金で受け取ったため、12月の売上に含めた」 → ×

⇒商品の引渡しをしていないため、まだ売上を計上しません。12月に受け取った手付金は前受金として、次のように仕訳します。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現金 10,000 前受金 10,000

(3) 「定額減税の不足額給付金40,000円が10月に市役所から振り込まれたため、雑収入に含めた」 → ×

不足額給付金に所得税は課税されませんので(非課税)、雑収入として計上する必要はありません。事業専用口座に振り込まれた場合は、次のように仕訳します。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
普通預金 40,000 事業主借 40,000

(4) 「小規模事業者持続化補助金750,000円が振り込まれたので、雑収入に含めた」 → ○

小規模事業者持続化補助金は所得税の課税対象となっていますので、雑収入として計上します。

(5) 「事業専用の普通預金口座に利息1,000円がついていたので、受取利息として雑収入に含めた」 → ×

預貯金の利子は「利子所得」に該当し、口座に入金される際に一律15.315%の所得税・復興特別所得税と5%の道府県民税利子割が源泉徴収され、これにより納税が完結する源泉分離課税の対象となりますので、確定申告をすることはできません。
 事業専用口座の場合は、次のように仕訳します。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
普通預金 1,000 事業主借 1,254
事業主貸 254    

(6) 「事業で使用していた営業車を売ったら売却益が200,000 円出たので、固定資産売却益として雑収入に含めた」 → ×

営業車の売却益は「譲渡所得」に該当し「譲渡所得」として申告しますので、事業所得の計算上は売却益を計上しません。
 簿価300,000円の営業車を500,000円で売って売却益が200,000円出た場合の仕訳は次のようになります。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
普通預金 500,000 車両運搬具 300,000
    事業主借 200,000

チェックポイント:決算書1ページの「売上金額①」は、決算書2ページの「月別売上(収入)金額及び仕入金額」の「 売上(収入)金額」の計の金額、決算書3ページの「売上(収入)金額の明細」の「売上(収入)金額」の計の金額確定申告書第一表アの金額と一致していますか?

2.売上原価

(1) 「12月の仕入代金80,000円の支払いが来年1月のため、12月の仕入金額に含めていない」 → ×

⇒12月に仕入れた商品代金の支払いが来年の1月であったとして、12月の仕入として計上しなければなりません。仕訳は次のようになります。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
仕入 80,000 買掛金 80,000

チェックポイント:決算書1ページの「仕入金額③」は、決算書2ページの「月別売上(収入)金額及び仕入金額」の「仕入金額」の計の金額、決算書3ページの「仕入金額の明細」の「仕入金額」の計の金額と一致していますか?

3,経費

(1) 「所得税を支払ったので、租税公課として計上した」 → ×
(2) 「住民税を支払ったので、租税公課として計上した」 → ×
(3) 「事業税を支払ったので、租税公課として計上した」 → ○

所得税と住民税は経費になりませんが、事業税は経費になります。所得税と住民税を支払ったときは原則として仕訳不要ですが、事業用の現金や事業専用口座で支払った場合の仕訳は次のようになります。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
事業主貸 ××× 現金又は普通預金 ×××

(4) 「国民健康保険料・国民年金保険料を支払ったので、租税公課として計上した」 → ×

国民健康保険料と国民年金保険料は経費になりませんが、所得控除(社会保険料控除)として確定申告書第一表で合計所得から控除します。
 国民健康保険料と国民年金保険料を支払ったときは、原則として仕訳不要ですが、事業用の現金や事業専用口座で支払ったときの仕訳は、次のようになります。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
事業主貸 ××× 現金又は普通預金 ×××

(5) 「店舗兼住宅の固定資産税200,000円を現金で支払ったので、全額を租税公課として計上した」 → ×

⇒店舗兼住宅の固定資産税のうち、事業割合に応じた金額を計上しなければなりません。
 例えば、面積比で家事按分した事業割合が50%の場合は、次のように仕訳します。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
租税公課 100,000 現金 100,000

(6) 「ライオンズクラブの会費を支払ったので、接待交際費として計上した」 → ×

個人事業者が支払ったライオンズクラブやロータリークラブの会費は、経費になりません(法人の場合は、交際費として経費になります)。※ 関連記事「ロータリークラブ、ライオンズクラブの会費は法人と個人で経理処理が異なる!

(7) 「12月10日に車両(新車)を2,400,000円で購入して営業車として使用しているので、全額を車両費として計上した」 → ×

⇒車両は資産として計上し、耐用年数にわたって減価償却することによって費用化していきます。
 この例では、減価償却費の計算は次のようになります。

 減価償却費=2,400,000円×0.167×1か月/12か月=33,400円

 0.167は、耐用年数6年の場合の定額法の償却率です。また、年内の使用期間は12/10から12/31までの22日間ですが、日割計算はせずに月割計算をしますので、1か月/12か月を掛けます。仕訳は次のようになります。※ 関連記事「自家用車を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却費の計算

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
減価償却費 33,400 車両運搬具 33,400

チェックポイント:決算書1ページの「減価償却費⑱」は、決算書3ページの「減価償却費の計算」の「(リ)本年分の必要経費算入額」の計の金額と一致していますか?

(8) 「同一生計の夫が所有者である自宅(一戸建て)の一室を事業用に使用しているため、自宅の固定資産税のうち事業割合に応じた金額を租税公課として計上した」 → ○

⇒上記(5)と同じパターンです。

(9) 「同一生計の夫が所有者である自宅(一戸建て)の一室を事業用に使用しているため、夫に事業割合に応じた家賃を支払って地代家賃として計上した」 → ×

⇒同一生計の夫が所有している自宅(一戸建て)の一室を事業用に使用していることを理由に、夫に家賃を支払ったとしても、経費にはなりません。夫の方でも不動産収入になりません。家計の中で資金が移動したに過ぎません。※ 関連記事「個人事業主が同一生計親族に支払う家賃は必要経費にできない

チェックポイント:決算書1ページの「地代家賃㉓」は、決算書2 ページの「地代家賃の内訳」の「左の賃借料のうち必要経費算入額」の計の金額と一致していますか?

(10) 「『青色申告特別控除前の所得金額㊸』が50,000 円で青色申告特別控除額が650,000円(確定申告をe-Tax で行うため)だったので、所得金額㊺を△600,000 円とした」 → ×

⇒青色申告特別控除額は「青色申告特別控除前の所得金額㊸」を上限として控除しますので、青色申告特別控除を引くことにより、所得がマイナス(損失)となることはありません。この例では、所得金額㊺は0円となります。

チェックポイント:決算書1ページの「所得金額㊺」は、確定申告書第一表①の金額と一致していますか?

(12) その他のチェックポイント

チェックポイント:決算書1ページの「給料賃金⑳」は、決算書2ページの「 給料賃金の内訳」の「 支給額合計」の計の金額と一致していますか?

チェックポイント:決算書1ページの「 専従者給与㊳」は、決算書2ページの「 専従者給与の内訳」の「 支給額合計」の計の金額と一致していますか?

 以上、青色申告決算書の作成上の注意点とチェックポイントを確認しました。

 この青色申告決算書を基に、確定申告書第一表と第二表を作成して確定申告を行いますが、個人事業者が令和7年分の確定申告をするにあたっては、令和7年度税制改正の内容を押さえておく必要があります。

 次回は、個人事業者が押さえておきたい令和7年度税制改正の内容について確認します。

青色申告決算書を経営判断に活用する!

 青色申告をする個人事業者が、所得税の確定申告をするにあたって、まず作成しなければならないものが青色申告決算書です。

 青色申告決算書は、税金の計算のために必要なものですが、ご自身の経営判断に活かすこともできます。

 今回は、青色申告決算書を経営判断に活用するための基礎知識として、青色申告決算書に段階的に出てくる4つの利益の内容と、そこから得られる経営指標となり得る情報について確認します。

 青色申告決算書の構成は次のようになっており、計算過程で4つの利益が算出されます。

(1) 売上金額-売上原価=差引金額⑦(≒売上総利益)
(2) 差引金額⑦(≒売上総利益)-経費=差引金額㉝(≒営業利益)
(3) 差引金額㉝(≒営業利益)+繰戻額等-繰入額等=青色申告特別控除前の所得金額㊸( ≒経常利益)
(4) 青色申告特別控除前の所得金額㊸(≒経常利益)-青色申告特別控除額=所得金額㊺

 (1)の計算過程で算出される利益を「 売上総利益」といい、「粗利(あらり)」ともいいます。
 八百屋さんを例にすると、100円で大根を仕入れて150円で売ったら売上総利益は50円となります。
 売上総利益は、このような本業の商品やサービスそのものが持つ利益の大きさを表します(本業以外の収入である雑収入(空箱や作業くずの売却代金など)が含まれるので、厳密な意味の売上総利益と少し異なります)。

 この売上総利益が十分に確保できていない場合は、商品の仕入原価や製造コストが高すぎる、あるいは販売価格が低すぎるなど、事業の根幹にかかわる問題があるかもしれません。
 売上総利益を見ることで、現在取り扱っている商品を入れ替えたり、サービスの内容を見直したりするなどして、儲かる経営体質にするためのヒントが得られます。

 (2)の計算過程で算出される利益を「 営業利益」といいます。
 八百屋さんの売上総利益が50円でも、人件費や家賃などの経費が30円かかったら営業利益は20円となります。
 営業利益は、このような本業の収益力(本業でどれだけ稼ぐ力があるか)を表します( 経費の中に本業以外の活動から生ずる利子割引料(借入金利子など)が含まれるので、厳密な意味の営業利益と少し異なります)。

 売上総利益から引く経費( 販売費および一般管理費)は、本業の商品やサービスを売るための営業活動のための費用(販売員の給料・広告宣伝費など)や、事業を管理 ・運営するためにかかる間接的な費用 (事務員の給料・事務所の家賃 ・水道光熱費など)です。
 売上総利益がプラスとなっているのに営業利益がマイナスとなっている場合は、営業活動や事業の管理・運営方法に問題があるかもしれません。
 営業利益を見ることで、どの商品やサービスに、より多くの経営資源(ヒト(人材)・モノ(物資)・カネ(資金) ・時間・情報など)を投入していくべきかを判断するためのヒントが得られます。

 (3)の計算過程で算出される利益(青色申告特別控除前の所得金額)は、商品やサービスの販売といった営業活動等とは直接関係がない営業外収益( 本業以外の収益)と営業外費用( 本業以外の費用)を加味した利益で「 経常利益」といいます。
 八百屋さんの営業利益が20円で、空箱の売却代金が3円、銀行からの借入金利子の支払いが5円の場合、経常利益は18円となります。
 営業利益が本業の収益力(稼ぐ力)を表すのに対し、経常利益は本業以外の活動も含めた総合的な収益力を表します。

 (4)の計算過程で算出される利益(所得金額㊺)は、青色申告特別控除額(最大65万円)を引いた後の利益であり、法人にはない個人事業者特有の利益です。
 この利益(所得)を、確定申告書第一表・所得金額等の「事業・営業等①」欄に転記し、税金の計算を行います。

 以上のように、青色申告決算書からは、経営判断をする上で貴重な情報を得ることができます。
 正しい経営判断を行うためにも、正しい税金の計算・申告を行うためにも、青色申告決算書は正確に作成しなければなりません。

 次回は、青色申告決算書の作成上の注意点とチェックポイントについて確認します。

令和7年分基礎控除・配偶者控除等・特定親族特別控除・所得金額調整控除申告書の書き方と記載例

 2025(令和7)年度税制改正において、所得税の基礎控除と給与所得控除の見直し、特定親族特別控除の新設が行われました。

 この税制改正に伴い、令和7年分の年末調整の際に会社に提出する次の書類の様式が変更・追加されていますので、注意が必要です。

・給与所得者の基礎控除申告書
・給与所得者の配偶者控除等申告書
・給与所得者の特定親族特別控除申告書
・所得金額調整控除申告書

 これらの各申告書は、下図のように4つが一体の書式になって、1つの書類にまとめられています。

 以下では、令和7年度税制改正を踏まえて、令和7年分基礎控除・配偶者控除等・特定親族特別控除・所得金額調整控除申告書の書き方を確認します。

 なお、令和7年分扶養控除等(異動)申告書については様式に変更はありませんが、改正内容に留意した書き方をしなければなりません。令和7年分扶養控除等(異動)申告書については、「令和7年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の書き方と記載例」をご参照ください。

1.氏名、住所などの記入

(1) 所轄税務署長
 給与の支払者(勤務先)の所在地等の所轄税務署長を記入します。

(2) 給与の支払者の法人番号
 この申告書を受理した給与の支払者が、給与の支払者の法人番号を付記しますので、あなた(給与所得者)が記入する必要はありません。

2.給与所得者の基礎控除申告書の記入

(1) あなたの本年中の合計所得金額の見積額の計算
 給与所得については、令和7年中の給与の収入金額(給与を2か所以上から受けている場合は、その合計額)の見積額を「収入金額」欄に記入し、その給与の収入金額を基に下表を使用して「所得金額」を計算します。

給与の収入金額(A) 給与所得の金額
1円以上    650,999円以下 0円
651,000円以上 1,899,999円以下 A-650,000円
1,900,000円以上 3,599,999円以下 A÷4(千円未満切捨て)…B
B×2.8-80,000円
3,600,000円以上 6,599,999円以下 A÷4(千円未満切捨て)…B
B×3.2-440,000円
6,600,000円以上 8,499,999円以下 A×0.9-1,100,000円
   8,500,000円以上 A-1,950,000円

 ただし、所得金額調整控除の適用を受ける人は、上の表に従って求めた給与所得の金額から所得金額調整控除の控除額を差し引いた額を記入してください。
 所得金額調整控除の額の計算方法は、次のとおりです(①②の両方がある場合は、その合計額)。
① (給与の収入金額※1-850万円)×10%
 ※1 1,000万円を超える場合は1,000万円
② 給与所得控除後の給与等の金額※2+公的年金等に係る雑所得の金額※2-10万円
 ※2 10万円を超える場合は10万円

 例えば、給与の収入金額が8,970,000円の場合、上の表より給与所得の金額は8,970,000円-1,950,000円=7,020,000円と計算されますが、所得金額調整控除の額(8,970,000円-8,500,000円)×10%=47,000円を差し引いた6,973,000円を「所得金額」欄に記入します。

(2) 控除額の計算
 上記(1) の「あなたの本年中の合計所得金額の見積額の計算」の表で計算した合計額を基に「判定」欄の該当箇所に✓を付け、判定結果に対応する控除額を「基礎控除の額」欄に記入します。

(3) 区分Ⅰ
 配偶者控除又は配偶者特別控除の適用を受けようとする人は、「控除額の計算」の「判定」欄の判定結果に対応する記号(A~C)を記入します。

3.給与所得者の配偶者控除等申告書の記入

(1) 配偶者の氏名、個人番号など
 一定の要件の下、個人番号の記載を要しない場合がありますので、給与の支払者に確認してください(本ブログ記事「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書のマイナンバー記載を省略する方法」をご参照ください)。
 また、配偶者が非居住者である場合には、「非居住者である配偶者」欄に○を付け、「生計を一にする事実」欄にその年に送金等をした金額の合計額を記入します。この場合、親族関係書類及び送金関係書類の添付等が必要ですが、親族関係書類については、扶養控除等(異動)申告書を提出した際に添付等をしているときは必要ありません。

(2) 配偶者の本年中の合計所得金額の見積額の計算
 上記 2.(1)を参考に、配偶者の収入金額、所得金額を記入して下さい。例えば、給与収入の見積額が1,190,000円の場合には、所得金額は1,190,000円-650,000円=540,000円となります。

(3) 判定及び区分Ⅱ
 上記3.(2)で計算した合計所得金額及び配偶者の生年月日を基に、「判定」欄の該当箇所に✓を付け、判定結果に対応する記号(①~④)を「区分Ⅱ」欄に記入します。

(4) 控除額の計算
 「控除額の計算」の表に基礎控除申告書の区分Ⅰの判定結果(A~C)とこの申告書の区分Ⅱの判定結果(①~④)を当てはめ、配偶者控除額又は配偶者特別控除額を求めます。

(5) 配偶者控除の額又は配偶者特別控除の額
 区分Ⅱが①又は②の場合は「配偶者控除の額 」欄に、区分Ⅱが③又は④の場合は「 配偶者特別控除の額 」欄に、「控除額の計算」の表で求めた配偶者控除額又は配偶者特別控除額を記入します。

4.給与所得者の特定親族特別控除申告書の記入(新設)

(1) 特定親族の氏名、個人番号など
 「特定親族」とは、あなたと生計を一にする年齢19歳以上23歳未満(平成15年1月2日~平成19年1月1日生)の親族(里子を含み、配偶者、青色事業専従者として給与の支払を受ける人及び白色事業専従者を除きます)で、合計所得金額が58万円超123万円以下である人をいいます。
 特定親族が非居住者である場合には、「非居住者である特定親族」欄に○を付け、「生計を一にする事実」欄に送金額等を記載します。この場合、親族関係書類及び送金関係書類の添付等が必要ですが、親族関係書類については、扶養控除等(異動)申告書を提出した際に添付等をしているときは、必要ありません。

(2) 特定親族の本年中の合計所得金額の見積額の計算
 上記2.(1)を参考に、特定親族の収入金額、所得金額を記入して下さい。例えば、給与収入の見積額が1,290,000円の場合には、所得金額は1,290,000円-650,000円=640,000円となります。

(3) 特定親族特別控除の額
 「控除額の計算」の表に特定親族の本年中の合計所得金額の見積額を当てはめ、対応する控除額を「特定親族特別控除の額」欄に記載します。例えば、合計所得金額が640,000円の場合は「58万円超85万円以下」の区分に該当しますので、特定親族特別控除の額は63万円となります。

※ 特定親族特別控除の詳細については、「特定親族特別控除の創設と源泉徴収事務への影響(令和7年度税制改正)」をご参照ください。

5.所得金額調整控除申告書の記入

(1) 要件
 該当する要件に✓を付けます。複数の項目に該当する場合は、いずれか1つを選んで✓を付けます。
 「特別障害者」とは、障害者のうち身体障害者手帳に身体上の障害の程度が一級又は二級である者として記載されている人など、精神又は身体に重度の障害のある人をいいます。
 「同一生計配偶者」とは、あなたと生計を一にする配偶者(青色事業専従者として給与の支払を受ける人及び白色事業専従者を除きます)で、令和7年中の合計所得金額の見積額が58万円以下の人をいいます。
 「扶養親族」とは、あなたと生計を一にする親族(配偶者、青色事業専従者として給与の支払を受ける人及び白色事業専従者を除きます)で、令和7年中の合計所得金額の見積額が58万円以下の人をいいます。 なお、児童福祉法の規定により養育を委託されたいわゆる里子や老人福祉法の規定により養護を委託されたいわゆる養護老人で、あなたと生計を一にし、令和7年中の合計所得金額の見積額が58万円以下の人も扶養親族に含まれます。

(2) ☆扶養親族等
 「要件」欄で「同一生計配偶者が特別障害者」、「扶養親族が特別障害者」、「扶養親族が年齢23歳未満」の項目に✓を付けた場合、その要件に該当する同一生計配偶者又は扶養親族の氏名、個人番号及び生年月日等を記入します。
 なお、「扶養親族が特別障害者」、「扶養親族が年齢23歳未満」の項目に✓を付けた場合でその扶養親族が2人以上いる場合は、いずれか1人の氏名、個人番号及び生年月日を記入します(扶養親族が年齢23歳未満の場合については、「所得金額調整控除における『23歳未満の扶養親族』とは?」をご参照ください)。
 また、 一定の要件の下、個人番号の記載を要しない場合がありますので、給与の支払者に確認してください (上記3.(1)参照)。

(3) ★特別障害者
 「特別障害者に該当する事実」欄には、障害の状態又は交付を受けている手帳などの種類と交付年月日、障害の程度(障害の等級)などの特別障害者に該当する事実を記入します。
 なお、特別障害者に該当する人が「扶養控除等(異動)申告書」に記載している特別障害者と同一である場合には、特別障害者に該当する事実の代わりに「扶養控除等申告書のとおり」と記載することも認められています。

※所得金額調整控除については、本ブログ記事「令和2年分から適用される基礎控除の改正と所得金額調整控除の新設」をご参照ください。

マイカー、自転車、徒歩で通勤する者に支給する通勤手当は課税仕入れになるか?

 電車やバスなどの公共交通機関を利用して通勤する従業員には、給与以外に通勤手当が支給されていると思われます(定期券など現物による支給を含みます)。
 通勤手当のうち、通勤に通常必要であると認められる部分は、給与を支払う事業者の課税仕入れになります。

 一方、公共交通機関ではなく、マイカーや自転車、徒歩で通勤する従業員もいます。これらの者に支給する通勤手当は、消費税の課税仕入れに該当するのでしょうか?

 以下では、この点について確認します。

1.マイカー・自転車通勤者の通勤手当の非課税限度額(所得税)

 所得税では、公共交通機関で通勤する場合と、マイカーや自転車などで通勤する場合の、非課税となる通勤手当の限度額が決められています(所得税法施行令第20条の2)。

 電車やバスなどの公共交通機関を利用して通勤している場合の非課税限度額は、月額15万円とされています。

 また、マイカーや自転車などを使用して通勤している場合の1か月当たりの非課税限度額は、片道の通勤距離(通勤経路に沿った長さ)に応じて決められています(例えば、片道の距離が2キロメートル以上10キロメートル未満の場合は月額4,200円まで非課税など)。

 これらの非課税限度額は、通勤のための運賃・時間・距離等の事情に照らして、最も経済的かつ合理的な経路および方法で通勤した場合が前提となっています。

 なお、所得税法施行令第20条の2は、通勤のため交通機関を利用することを常例とする者と、自動車その他の交通用具を使用することを常例とする者についての定めであり、徒歩通勤者についての定めはありません。

※ 関連記事:「マイカー通勤手当の非課税限度額が引き上げられました」、「給与課税される通勤手当・切手の購入・軽油引取税の消費税の取扱い

2.通常必要であると認められる通勤手当は課税仕入れになる(消費税)

 消費税における通勤手当の取扱いについては、以下の消費税法基本通達11-6-5(通常必要であると認められる通勤手当)に規定されています(下線は筆者による)。

11-6-5 規則第15条の4第3号《請求書等の交付を受けることが困難な課税仕入れ》に規定する「通勤者につき通常必要であると認められる部分」とは、事業者が通勤者に支給する通勤手当が、当該通勤者がその通勤に必要な交通機関の利用又は交通用具の使用のために支出する費用に充てるものとした場合に、その通勤に通常必要であると認められるものをいう。
 したがって、所法令第20条の2各号《非課税とされる通勤手当》に定める金額を超えているかどうかにかかわらないことに留意する。(令5課消2-9により追加)


 上記基本通達のとおり、通勤に通常必要であると認められる通勤手当は、電車やバスなどの公共交通機関を利用する場合も、マイカーや自転車などの交通用具を使用する場合も、給与を支払う事業者の課税仕入れになります。

 通勤に通常必要であると認められる通勤手当は、事業者の業務上の必要に基づく支出の実費弁償であり、事業者が課税仕入れに該当する定期券等を購入して通勤者に交付するのと同じであることから、通勤手当の支給も課税仕入れに係る支払い対価に該当するものとして取り扱われています。

 なお、所得税法施行令第20条の2と同様に、消費税法基本通達11-6-5においても、徒歩通勤者に対する規定はありません。

 徒歩通勤者の場合は、マイカーや自転車などの「交通用具」を使用するための支出が無いため、事業者が通勤手当を支給したとしても、その事業者の業務上の必要に基づく支出の実費弁償としての性格がありません。

 したがって、徒歩通勤者に支給する通勤手当は課税仕入れに該当しません。給与として課税対象外(不課税)となります。

3.所得税の非課税限度額を超えても課税仕入れとなる

 ところで、消費税法基本通達11-6-5には、「したがって、所法令第20条の2各号《非課税とされる通勤手当》に定める金額を超えているかどうかにかかわらないことに留意する。」という重要な一文があります。

 これは、上記1でみたように、所得税では、公共交通機関を利用する場合は月額15万円、マイカーや自転車などを使用する場合は距離に応じて一定額の非課税限度額が定められていますが、消費税では、所得税の非課税限度額にかかわりなく、通勤に通常必要であるかどうかで課税仕入れの判断をすることを示しています。

 したがって、例えば、所得税において給与課税される月額15万円を超える部分の通勤手当は、通勤に通常必要なものであれば、消費税の課税仕入になります。

 非課税限度額を超えて給与課税される通勤手当は、給与なのだから不課税になるという誤解のないようにご注意ください。
 

遺産分割前でも相続預金を引き出せる「払戻し制度」とは?

 相続が発生して被相続人(故人)の死亡を金融機関に連絡すると、被相続人の預金口座が凍結され、相続人(遺族)は自由に引き出しができなくなります。
 そうすると、被相続人と一緒に生活していた相続人が当面の生活費に困ったり、相続人が葬儀費用などを立替て支払う必要が出てきます。

 このような相続人の生活上の切迫したニーズに対応するため、2018(平成30)年7月の民法等の改正により、遺産分割協議が終了する前でも各相続人が単独で相続預金の一部を引き出せる「払戻し制度」が設けられ、2019(令和1)年7月1日から施行されています。

 今回は、この相続預金の払戻し制度の内容と注意点について確認します。

1.2つの払戻し制度

 相続預金の払戻し制度とは、遺産分割協議が終了する前でも各相続人が単独で相続預金を一定額まで引き出せる制度です。
 これにより、葬儀費用や被相続人の医療費などの支払い、相続人の当面の生活費などに充てることができます。

 払戻し制度は、遺産分割の公平性を図りつつ相続人の資金需要に対応できるように、次の2つの制度が設けられています。

(1) 金融機関への直接請求による払戻し制度

 2つの払戻し制度のうち、最初の選択肢となるのが、各相続人が直接金融機関に請求する方法です。
 家庭裁判所に遺産の分割の審判や調停が申し立てられていない場合は、こちらの方法を利用できます。

 各相続人は、相続預金のうち、口座ごと(定期預金の場合は明細ごと)に以下の計算式で求められる額については、家庭裁判所の判断を経ずに、金融機関から単独で払戻しを受けることができます。
  ただし、同一の金融機関(同一の金融機関の複数の支店に相続預金がある場合はその全支店)からの払戻しは150万円が上限になります。

単独で払戻しができる額=相続開始時の預金(口座・明細基準)×1/3×払戻しを行う相続人の法定相続分

 例えば、相続人が長男と次男の2名で、相続開始時の預金額が1口座の普通預金600万円であった場合、長男が単独で払戻しができる額は、600万円×1/3×1/2=100万円となります。

 この制度を利用するに当たっては、概ね以下の書類が必要となります。ただし、金融機関により必要となる書類が異なる場合がありますので、くわしくは取引金融機関にお問い合わせください。

① 被相続人の除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書(出生から死亡までの連続したもの)

② 相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書

③ 預金の払戻しをする相続人の印鑑証明書

④ 預金の払戻しをする相続人の本人確認書類

(2) 家庭裁判所への申し立てによる払戻し制度

 家庭裁判所に遺産の分割の審判や調停が申し立てられている場合に、各相続人が家庭裁判所へ申し立ててその審判を得ることにより、相続預金の全部または一部を仮に取得し、金融機関から単独で払戻しを受けることができます。
 
 ただし、生活費の支弁等の事情により相続預金の仮払いの必要性が認められ、かつ、他の相続人の利益を害しない場合に限られます。

単独で払戻しができる額=家庭裁判所が仮取得を認めた金額

 この制度を利用するに当たっては、概ね以下の書類が必要となります。ただし、金融機関により必要となる書類が異なる場合がありますので、くわしくは取引金融機関にお問い合わせください。

① 家庭裁判所の審判書謄本(審判書上確定表示がない場合は、さらに審判確定証明書も必要)

② 預金の払戻しをする相続人の印鑑証明書

③ 預金の払戻しをする相続人の本人確認書類

2.払戻し制度の注意点

 払戻し制度の導入により、相続手続きが長期化しても、相続人が葬儀費用や医療費、当面の生活費を確保できるようになり、相続開始直後の経済的な混乱を緩和することが可能となりました。

 一方で、払戻し制度を利用するにあたっては、以下の点にも注意する必要があります。

(1) 払戻し制度によって引き出した預金は遺産分割の対象資産に含まれるため、遺産分割協議で決まった金額より多く引き出していた場合は超過額を精算し、過不足が生じないようにしなければなりません。

(2) 払戻し制度によって預金を引き出して費消してしまうと、単純承認したとみなされ相続放棄ができません。
 この制度を利用する前に、被相続人に多額の債務がないかどうかを確認しておく必要があります。

(3) 被相続人が遺言を残していた場合はその遺言が何より優先されますので、例えば、「預貯金の全額は長男が相続するものとする」という遺言がある場合は、預貯金は全て長男のものとなるため、他の相続人は引き出すことができません。

(4) 払戻し制度は同意不要とはいえ、一方的な預金の引き出しが原因で遺産分割協議が紛糾するケースもあります。
 可能であれば事前に他の相続人に連絡し、理解を得ておくなどして、他の相続人とのトラブルを防止する必要があります。

リース資産について中小企業が賃貸借処理した場合の仕入税額控除(新リース会計基準)

 2024(令和6)年9月に企業会計基準委員会より新リース会計基準が公表され、これを受けて2025(令和7)年度税制改正で新リース会計基準を踏まえた税務上の対応がなされています。

 以下では、新リース会計基準の下で、所有権移転外ファイナンス・リース取引について中小企業が「賃貸借取引に準じた会計処理」(以下「賃貸借処理」といいます)をした場合の仕入税額控除について確認します。

1.新リース会計基準で賃貸借処理は認められるか?

 新リース会計基準では、借り手の会計処理について、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分が廃止され、すべてのリースについて使用権資産とリース負債を貸借対照表に計上する「売買取引に準じた会計処理」(以下「売買処理」といいます)に統一されました(短期リース・少額リースを除きます)。

 そのため、所有権移転外ファイナンス・リース取引やオペレーティング・リース取引については、新リース会計基準の下では賃貸借処理ではなく売買処理をすることになり、会計処理が煩雑になる懸念があります。

 しかし、この懸念に対して結論を述べると、上場企業や会社法上の大企業は新リース会計基準が強制適用されますが、未上場企業や中小企業は新リース会計基準が強制適用されず、従来通りの会計処理を継続することができます

 つまり、所有権移転外ファイナンス・リース取引やオペレーティング・リース取引について、新リース会計基準の下でも中小企業は賃貸借処理をすることが可能です。 

新リース会計基準については、「新リース会計基準の導入が中小企業に及ぼす会計上と税務上の影響(令和7年度税制改正)」をご参照ください。

2.賃貸借処理した場合の仕入税額控除の時期

 上記1のように、新リース会計基準の下でも、中小企業は売買処理によらずに賃貸借処理をすることができます。

 では、所有権移転外ファイナンス・リース取引(以下「移転外リース取引」といいます)について借り手が賃貸借処理をしている場合に、そのリース料を支払うべき日の属する課税期間において仕入税額控除(分割控除)することは認められるでしょうか?
 
 移転外リース取引は、リース資産の引渡し時にリース資産の売買があったものとして取り扱われるため、移転外リース取引について借り手が賃貸借処理をしている場合でも、原則として当該リース資産の引渡しを受けた日の属する課税期間において、そのリース資産の取得価格に係る消費税額を仕入税額控除(一括控除)することになります

 ただし、一括控除を原則としながらも、そのリース料を支払うべき日の属する課税期間に仕入税額控除(分割控除)することも認められます。

 なお、令和7年度税制改正により、リース譲渡に係る資産の譲渡等の時期の特例(延払基準)が廃止されましたが、貸し手における処理にかかわらず、借り手において会計上賃貸借処理が可能な場合には、引き続き分割控除することができます。

例えば、会計上賃貸借処理をしている借り手が一括控除する場合など、会計処理の方法と消費税額の計算が異なる場合、帳簿の摘要欄等にリース料総額を記載する方法や、会計上のリース資産の計上価額から消費税における課税仕入れに係る支払対価の額を算出するための資料を作成し、帳簿と合わせて保存する方法などにより、帳簿においてリース料総額(対価の額)を明らかにする必要があります。

3.賃貸借処理に基づいて分割控除している場合の留意点

 移転外リース取引に係るリース資産の仕入税額控除の時期については、そのリース資産の引渡しを受けた日の属する課税期間(リース期間の初年度)において一括控除することが原則であるため、賃貸借処理に基づいて分割控除している場合には、以下の点に留意する必要があります。

(1) 仕入税額控除の時期を変更することの可否

 例えば、賃貸借処理しているリース期間が3年の移転外リース取引(リース料総額660,000円)について、リース期間の初年度にその課税期間に支払うべきリース料(220,000円)について仕入税額控除を行い、2年目にその課税期間に支払うべきリース料と残額の合計額(440,000円)について仕入税額控除を行うといった処理は認められません。

(2) 簡易課税から原則課税に移行した場合等の取扱い

 次に掲げるような場合のリース期間の2年目以降の課税期間については、その課税期間に支払うべきリース料について仕入税額控除することができます。

① リース期間の初年度において簡易課税制度を適用し、リース期間の2年目以降は原則課税に移行した場合

② リース期間の初年度において免税事業者であった者が、リース期間の2年目以降は課税事業者となった場合

新リース会計基準の導入が中小企業に及ぼす会計上と税務上の影響(令和7年度税制改正)

 リース取引は、契約内容によって「ファイナンス・リース取引」と「オペレーティング・リース取引」に分けられ、さらに、ファイナンス・リース取引は、「所有権移転ファイナンス・リース取引」と「所有権移転外ファイナンス・リース取引」に分けられます。

 ファイナンス・リース取引とは、リース期間中に契約を解除できない(ノンキャンセラブル)、かつ、借り手がリース物件の経済的利益を享受しコストを負担する(フルペイアウト)リース取引をいいます。
 
 さらに、ファイナンス・リース取引は、リース期間終了後に資産の所有権が貸し手から借り手に移ると認められる所有権移転ファイナンス・リース取引と、リース期間が終了しても借り手に所有権が移らない所有権移転外ファイナンス・リース取引に分かれます。

 また、オペレーティング・リース取引とは、ファイナンス・リース取引以外のリース取引をいいます。

 これらのリース取引について、2024(令和6)年9月に企業会計基準委員会より新リース会計基準が公表され、2025(令和7)年度税制改正で新リース会計基準を踏まえた税務上の対応がなされています。

 以下では、借り手である中小企業の立場から、新リース会計基準の導入が及ぼす会計上と税務上の影響について確認します。

1.新基準によるオペレーティング・リース取引の会計上の取扱い

 2024(令和6)年9月に、企業会計基準委員会より新リース会計基準が公表されました。旧リース会計基準からの見直しの内容は次のとおりです。

(1) 借り手については、これまでのファイナンス・リース(売買取引に準じた会計処理)とオペレーティング・リース(賃貸借取引に準じた会計処理)との区分を廃止し、使用権資産とリース負債を計上する単一の会計モデルを採用することとされました。

(2) 貸し手については、引き続きファイナンス・リースとオペレーティング・リースを区分することとし、その区分に応じた処理を行うこととされました。
 なお、ファイナンス・リースの場合の会計処理のうち、リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法による会計処理は、収益認識会計基準において割賦基準が認められなくなったことを踏まえて、廃止することとされました。

(3) 新リース会計基準は、2027(令和9)年4月1日以後に開始する事業年度の期首から適用することとされていますが、2025(令和7)年4月1日以後に開始する事業年度の期首からの早期適用も認めることとされました。

出所:国税庁ホームページ

 新リース会計基準では、ファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引の区分は廃止され、原則として、すべてのリース取引はオンバランスでの会計処理に統一されます。
 オンバランスとは、貸借対照表に資産や負債を計上し、売買取引に準じた会計処理を行うことをいいます。

 したがって、これまで賃貸借取引に準じた会計処理(資産や負債を計上せずにリース料を費用計上する会計処理)が認められていたオペレーティング・リース取引についても、ファイナンス・リース取引と同様に売買取引に準じた会計処理となりますので、従来に比べてリース取引の会計処理が煩雑になる懸念があります。

2.オペレーティング・リース取引の税務上の取扱い

 新リース会計基準では、オペレーティング・リース取引について、会計上は売買取引に準じた会計処理を行うこととされましたが、法人税法上は従来と変わらず、賃貸借取引に準じた会計処理とされました(法人税法第53条が新設されました)。

出所:国税庁ホームページ

 したがって、オペレーティング・リース取引については、会計上は新リース会計基準に則った売買取引に準じた会計処理を行い、税務上は賃貸借取引に準じた会計処理を行うことになりますので、会計上と税務上で会計処理の乖離が生じ、申告調整が必要となります。 

 ところが、中小企業など、監査対象法人以外の法人については、新リース会計基準によらず、引き続き「中小企業の会計に関する指針」又は「中小企業の会計に関する基本要領」に則った会計処理も可能とされていますので、オペレーティング・リース取引について会計上も賃貸借取引に準じた会計処理を行った場合は、会計上と税務上で会計処理の乖離は生じず、申告調整も不要となります。

 また、旧リース会計基準においては、所有権移転ファイナンス・リース取引は売買取引に準じた会計処理を行いますが、所有権移転外ファイナンス・リース取引については、「借り手が中小企業」又は「リース期間が1年以内、又は、リース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下」の条件に該当する場合は、賃貸借取引に準じた会計処理が認められていました。

 新リース会計基準においても「短期リース(リース期間が12か月以内)」と「少額リース(重要性の乏しいリース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下のリースなど)については、オンバランス不要の賃貸借取引に準じた会計処理が認められていますので、多くの中小企業は簡便な賃貸借取引に準じた会計処理を行うものと思われます。

 そのため、今回の新リース会計基準の導入が借り手である中小企業に与える影響は、実質的には大きくないものと思われます。

令和7年度地域別最低賃金が10月1日から順次引き上げられます

 最低賃金は、パート、アルバイト、正社員、臨時、嘱託など雇用形態や呼称の如何を問わず、すべての労働者に適用されます。

 近年は最低賃金引き上げの流れが続いており、2025(令和7)年度の全国加重平均は時給1,121円(昨年度は1,055円)と過去最高となっており、引き上げ幅66円(昨年度は51円)も過去最高となっています。

 最低賃金の引き上げには、物価上昇局面における国民の生活水準の改善という狙いがある一方、事業主にとっては人件費の増加による経営圧迫というリスクをもたらしています。

 以下では、2025(令和7)年度の最低賃金について確認します。

1.最低賃金とは?

 最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低額を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければならないとする制度です。
 仮に、最低賃金額より低い賃金を労働者、使用者双方の合意の上で定めても、それは法律によって無効とされ、最低賃金額と同様の定めをしたものとみなされます。

 また、使用者が労働者に最低賃金未満の賃金しか支払っていない場合には、使用者は労働者に対してその差額を支払わなくてはなりません。
 地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、最低賃金法に罰則(50万円以下の罰金)が定められています※1

 なお、特定(産業別)最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、労働基準法に罰則(30万円以下の罰金)が定められています※2

※1 「地域別最低賃金」とは、産業や職種にかかわりなく、各都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に対して適用される最低賃金です。各都道府県に1つずつ、全部で47件の最低賃金が定められています。

※2 「特定(産業別)最低賃金」は、特定の産業について設定されている最低賃金です。関係労使が基幹的労働者を対象として、「地域別最低賃金」よりも金額水準の高い最低賃金を定めることが必要と認める産業について設定されており、全国で224件の最低賃金が定められています(令和7年3月31日現在)。

2.最高額は東京都の時給1,226円

 厚生労働省は、都道府県労働局に設置されている地方最低賃金審議会が答申した2025(令和7)年度の地域別最低賃金の改定額(以下「改定額」)を取りまとめました。改定額及び発効予定年月日は、次のとおりです。

出所:厚生労働省ホームページ

 この「令和7年度地域別最低賃金答申状況」は、厚生労働大臣の諮問機関である中央最低賃金審議会が令和7年8月4日に示した「令和7年度地域別最低賃金額改定の目安について」などを参考として、各地方最低賃金審議会が調査・審議して答申した結果を、厚生労働省が取りまとめて公表したものです。

 答申された改定額は、都道府県労働局での関係労使からの異議申出に関する手続を経た上で、都道府県労働局長の決定により、令和7年10月1日から令和8年3月31日までの間に順次発効される予定です。

 地域別最低賃金の全国整合性を図るため目安額のランクが設けられていますが、4区分だったランクが前々年度から3区分に変更されています。
 改定額を見ていくとAからCの47都道府県すべてで63円以上引き上げられ、東京都は時給1,226円と最高です。
 最高額1,226円(東京都)と最低額1,023円(高知県、宮崎県、沖縄県)の金額差は203円です。最高額に対する最低額の割合は83.4%(1,023円÷1,226円≒83.4%)と8割を超えており、地域格差は少しずつ改善しています※3

※3 前年度の比率は81.8%でした。なお、この比率は11年連続で改善されています。

3.令和7年度の引き上げ幅は63円~82円

 下表は、2025(令和7)年度の改定額を引き上げ幅ごとに見たものです。

引き上げ幅 改定額
63円

埼玉1141円 東京1226円 神奈川1225円 長野 1061円     静岡1097円 愛知1140円 滋賀1080円 大阪1177円 

64円

栃木 1068円 千葉1140円 富山1062円 山梨1052円      岐阜1065円 三重 1087円 京都1122円 兵庫1116円 山口1043円 

65円

北海道1075円 宮城 1038円 新潟1050円 奈良 1051円     和歌山1045円 岡山1047円 広島 1085円 福岡1057円

66円

徳島1046円 香川1036円

69円

茨城1074円 福井1054円 

70円

石川 1054円  

71円

島根 1033円 高知1023円 宮崎1023円 沖縄1023 円    

73円

鳥取1030円 鹿児島1026円 

74円

佐賀1030円 

76円

青森1029円    

77円

山形1032円 愛媛 1033円   

78円

福島1033円 群馬 1063円 長崎1031円 

79円

岩手1031円 

80円

秋田1031円 

81円

大分1035円

82円

熊本1034円

税抜経理方式と税込経理方式を併用する場合の問題点とその調整のための会計処理

 消費税(地方消費税を含みます。以下同じ)の会計処理方法には税込経理方式と税抜経理方式があり、どちらの方式を選択してもよいことになっていますが※1、選択した方式は、その事業者が行うすべての取引に適用するのが原則です。

 ところが、税抜経理方式を選択適用している場合は、一定の条件の下で、税込経理方式を併用することができます※2

 しかし、税抜経理方式を選択適用する場合の税込経理方式の併用(以下「併用方式」といいます)には、問題点もあります。

 以下では、併用方式の問題点とそれを調整するための会計処理について確認します。

※1 免税事業者は、税込経理方式しか適用できません。

※2 税抜経理方式を選択適用している場合の税込経理方式の併用条件等については、「税抜経理方式の場合に棚卸資産を税込で計上するときの条件と損益に与える影響」をご参照ください。
 なお、税込経理方式を選択適用している場合は、すべての取引について税込経理方式しか適用できません。

1.併用方式の問題点

 事業者がすべての取引について税抜経理方式を選択適用した場合、消費税等が課される取引については税抜金額で計上し、課税売上げに対する消費税等の額は仮受消費税等とし、また、課税仕入れに対する消費税等の額は仮払消費税等とします。

 例えば、税込330万円の商品を仕入れて、その商品を税込550万円で売った場合の会計処理は次のようになります(税率10%)。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
仕入 300万円 現金預金 330万円
仮払消費税等 30万円    
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現金預金 550万円 売上 500万円
    仮受消費税等 50万円

 

 また、決算において、仮受消費税等の合計額から仮払消費税等の合計額を差し引いて(精算して)、納税額を未払計上します。上記以外の取引が無かったものとすると、決算仕訳は次のようになります。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
仮受消費税等 50万円 仮払消費税等 30万円
    未払消費税等 20万円

 一方、併用方式においては、売上などの収益に係る取引については必ず税抜経理をしなければなりませんが、次の各グループに関する取引のいずれかについては、グループごとに税込経理を適用することが認められています。

(1) 棚卸資産の取得
(2) 固定資産・繰延資産の取得
(3) 販売費・一般管理費など(以下「経費等」といいます)の支出

 この場合、仮受消費税等の合計額から仮払消費税等の合計額を差し引いた金額は、納税額または還付税額と一致しません。

 例えば、経費等の支出に係る取引について税込経理を適用した場合には、経費等に含まれる消費税等を仮払消費税等としないため、その課税期間の仮受消費税等の合計額から仮払消費税等の合計額を差し引いた金額と納付すべき税額または還付されるべき税額との間に差額が出ます。

 上記の例(税込330万円の商品を仕入れて、その商品を税込550万円で売った場合)を、併用方式(仕入を税込処理)で会計処理すると次のようになります。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
仕入 330万円 現金預金 330万円
仮払消費税等 0万円    
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現金預金 550万円 売上 500万円
    仮受消費税等 50万円
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
仮受消費税等 50万円 仮払消費税等 0万円
    未払消費税等 20万円

 上記の決算仕訳においては、仮受消費税等の合計額(50万円)から仮払消費税等の合計額(0円)を差し引いた金額(50万円)と未払消費税等(20万円)との間に差額(30万円)が出ており仕訳が成り立ちません。

 また、所得金額または損益の点から検討すると、この例では、税込経理した仕入に含まれる消費税の額(30万円)だけ経費等の額が多くなります。
 裏を返せば、すべての取引について税抜経理方式を適用した場合に比べて、一部を税込経理する併用方式を適用した場合は、利益が少なく算出されることになります(下図)。

税抜経理方式と併用方式は会計処理(記帳)の方法であって消費税の納税額の計算方法ではありませんので、どちらの方式を適用したとしても納税額(未払消費税等)は同じになります。

2.差額を益金または総収入金額に算入

 併用方式により生じた、仮受消費税等の合計額から仮払消費税等の合計額を差し引いた金額と納付すべき税額または還付されるべき税額との差額については、法人においては、その課税期間を含む事業年度の益金の額に算入し、個人事業者においては、その課税期間を含む年の総収入金額に算入します。

 上記1の例では、併用方式の決算仕訳は次のようになります。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
仮受消費税等 50万円 仮払消費税等 0万円
    未払消費税等 20万円
    雑収入 30万円

 その結果、すべての取引について税抜経理方式を適用した場合と併用方式を適用した場合の利益は同額となり、所得金額または損益の点からも、併用方式の問題点は解消されます(下図)。

税抜経理方式の場合に棚卸資産を税込で計上するときの条件と損益に与える影響

 消費税(地方消費税を含みます。以下同じ)の会計処理方法には税込経理方式と税抜経理方式があり、どちらの方式を選択してもよいことになっていますが※1、選択した方式は、その事業者が行うすべての取引に適用するのが原則です。

 棚卸資産を例に挙げると、税込経理方式を選択している場合は棚卸資産も税込金額で計上し、税抜経理方式を選択している場合は棚卸資産も税抜金額で計上します。

 ところが、税抜経理方式を選択適用している場合は、一定の条件の下で、棚卸資産を税込金額で計上することもできます※2

 以下では、棚卸資産を中心に、税抜経理方式を選択適用する場合の税込経理方式の併用条件と併用が損益に与える影響について確認します。

※1 免税事業者は、税込経理方式しか適用できません。

※2 税込経理方式を選択適用している場合に、棚卸資産を税抜金額で計上することはできません。

1.税抜経理方式と税込経理方式の併用条件

 税抜経理方式を選択適用する場合は、売上げなどの収益に係る取引については、必ず税抜経理をしなければなりません。

 一方、次の各グループに関する取引のいずれかについては、税抜経理方式を選択適用していても税込経理方式を適用することが認められています。

(1) 棚卸資産の取得
(2) 固定資産・繰延資産の取得
(3) 販売費・一般管理費など(以下「経費等」といいます)の支出

 ただし、以下の条件に留意する必要があります。

イ.売上などの収益に係る取引に加えて、上記(1)(2)(3)のうち、少なくとも1グループについては税抜経理をしなければなりません(例えば、(1)は税込み、(2)と(3)は税抜きなどは認められますが、(1)(2)(3)すべてを税込みとすることはできません)。

ロ.棚卸資産の取得に関する取引については、継続適用を条件として、固定資産・繰延資産の取得に関する取引と異なる経理方式を適用することができます。

ハ.税抜経理方式と税込経理方式を併用して適用する場合でも、個々の棚卸資産、固定資産、繰延資産、または個々の経費等について異なる経理方式を適用することはできません(例えば、棚卸資産のうち、ある棚卸資産は税抜きとし、そのほかの棚卸資産は税込みとする処理は認められません)。

 なお、上記(1)棚卸資産の取得について税込経理をする場合に、「棚卸資産の取得」という文言から、期末棚卸資産だけでなく、その仕入時(棚卸資産の取得時)も税込経理する必要があるのかというとそうではなく、仕入時は税抜金額で計上し、決算時は期末棚卸資産を税込金額で計上します。

 したがって、決算書の当期仕入高は税抜金額で、期末棚卸高は税込金額で表示されることになります。

2.併用方式が損益に与える影響

 税抜経理方式と税込経理方式は会計処理の方法であって消費税の納税額の計算方法ではありませんので、どちらの方式を選択適用したとしても納税額に差異はなく、算出される利益は原則として同じになります。

 しかし、税抜経理方式を選択適用している場合に棚卸資産を税込金額で計上するとき(以下「併用方式」といいます)は、税抜経理方式のみで会計処理する場合と比べて、利益は大きくなります。

 例えば、税込110万円分(税率10%)の期末在庫(期末棚卸資産)があったとすると、税抜経理方式のみで会計処理する場合の期末在庫が100万円であるのに対し、併用方式の場合の期末在庫は110万円となるので、消費税10万円分だけ期末在庫が大きくなり、その分売上原価が小さくなります。
 売上原価が10万円小さくなると、売上総利益が10万円大きく算出されることになります。
 その結果、課税される法人税(個人の場合は所得税)も多くなります。

 上図は、説明を簡略化するため、期首在庫(期首棚卸資産)を無いものとしていますが、税抜経理方式から税込経理方式に、税込経理方式から税抜経理方式に変更した場合でも、期首在庫の価額について、仕入時に計上した金額を修正する必要はありません。
 会計処理を変更した場合でも、前期の期末在庫の金額をそのまま当期の期首在庫の金額として引き継ぎます。