納期の特例の要件である「常時10人未満」とは?

1.適用可否は支給人員で判定する

 会社や個人が、人を雇って給与を支払ったり、税理士、弁護士、司法書士などに報酬を支払ったりする場合には、その支払の都度支払金額に応じた所得税および復興特別所得税を源泉徴収することになっています。

 源泉徴収した所得税および復興特別所得税(以下「源泉所得税」といいます)は、原則として、給与などを実際に支払った月の翌月10日までに国(税務署)に納めなければなりませんが、給与の支給人員が常時10人未満である場合は、申請することによって源泉所得税を半年分まとめて年2回に分けて納めることができます。
 これを納期の特例といいます(納期の特例については、本ブログ記事「納期の特例はいつから適用される?」をご参照ください)。

 一方、給与の支給人員が常時10人以上になると、源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなりますので、その旨を届け出て原則通りの納付方法(給与などを支払った月の翌月10日までに納付)に戻さなければなりません(納期の特例に該当しなくなった場合については、本ブログ記事「納期の特例の要件に該当しなくなった場合の届出と納期限」をご参照ください)。

 このように、納期の特例が適用できるかどうかは、給与の支給人員が常時10人未満であるかどうかにより判定します。

2.常時10人未満の「常時」とは?

 常時10人未満であるかどうかの判定については、所得税基本通達 216-1で次のように記載されています。

 法第216条かっこ内に規定する「給与等の支払を受ける者が常時10人未満である」かどうかは、給与等の支払を受ける者の数が平常の状態において10人未満であるかどうかにより判定するものとし、次のような場合には、それぞれ次による。

(1) 繁忙期には臨時に使用した人数を含めると10人以上となるが、平常は10人未満である場合には、常時10人未満であるものとする。
(2) 建設業者のように労務者を日々雇い入れることを常態とする場合には、たとえ常雇人の人数が10人未満であっても、日々雇い入れる者を含めると平常は10人以上となるときは、常時10人未満ではないものとする。


 源泉所得税の納期の特例制度は、給与等の支払を受ける者が常時10人未満の源泉徴収義務者に限り認められている制度です。
 この「給与等の支払を受ける者が常時10人未満である」かどうかは、上記基本通達によると、給与の支払を受ける者の数が平常の状態において10人未満であるかどうかにより判定することとされています。
 つまり、「常時」とは「平常の状態」をいうと解されます。

 この「平常の状態」については、繁忙期などの特殊な状況を除くことが、上記基本通達(1)から読み取れます。

 また、繁忙期などの特殊な状況か否かを問わず、労働者を日々雇い入れることを常態とする場合は、それが「平常の状態」であることが上記基本通達(2)から読み取れます。

 したがって、例えば次のような建設業者を例に挙げると、Aは納期の特例が適用できるのに対し、Bは適用できないこととなります。

A:常雇の従業員は8人であるが、繁忙期には日雇労働者を5人から10人雇い入れている。
B:常雇の従業員は8人であるが、日雇労働者を通常5人から10人雇い入れている。

 Aのように労働者を日々雇い入れることを常態としない場合には、繁忙期に臨時に使用した人数を含めると給与の支給人員が10人以上になったとしても、給与の支給人員は常時10人未満であるものとされ、納期の特例を適用することができます。

 Bのように労働者を日々雇い入れることを常態とする場合には、たとえ常雇人の人数が10人未満であったとしても、日々雇い入れる者を含めて常時10人未満でなければ、納期の特例を適用することはできません。

給与支払者の定額減税の方法(月次減税事務:計算から納付まで)

 2024(令和6)年6月1日以後最初に支払う給与等(賞与を含みます)から所得税の定額減税が開始されます。
 給与所得者に対する定額減税は、給与支払者が令和6年6月以後の各月に支給する給与等から控除する「月次減税」と、年末調整の際に年調所得税額から控除する「年調減税」によって行われますが、以下では、月次減税の方法について確認します。

※ 給与所得者に対する定額減税の概要については、本ブログ記事「定額減税の実施前に給与支払者が最低限知っておきたいこと」をご参照ください。

1.月次減税対象者の確認

 月次減税の対象となるのは、令和6年6月1日現在において在職している人で、給与支払者に扶養控除等申告書を提出している人(源泉徴収税額表の甲欄適用者)です。

 定額減税は合計所得金額が1,805万円以下の人が対象ですが、この月次減税対象者の確認の時点では合計所得金額(見積額)を勘案しませんので、合計所得金額が1,805万円を超えると見込まれる人についても月次減税事務を行う点に注意してください。

2.月次減税額の計算

 ここでは、以下の扶養控除等申告書を提出した人を例に月次減税額の計算をします。

 この扶養控除等申告書の内容は次のとおりです。

・本人・・・給付 雅楽(居住者)
・同一生計配偶者・・・給付 希望(居住者であり合計所得金額48万円以下)
・扶養親族・・・給付 仕手代(居住者)

 所得税の定額減税額は、次の金額の合計額です。

(1) 本人(居住者に限ります)・・・3万円
(2) 同一生計配偶者及び扶養親族(居住者に限ります)・・・1人につき3万円

 したがって、この場合(同一生計配偶者:有、扶養親族:1人)の本人の月次減税額は、3万円(本人分)+3万円×2人(同一生計配偶者と扶養親族の分)=9万円となります。

 なお、月次減税額は、最初の月次減税事務までに提出された扶養控除等申告書の内容に基づいて決定しますので、その後「同一生計配偶者と扶養親族の数」に異動があったとしても月次減税額の再計算は行いません。
 この場合は、年末調整または確定申告で調整することになります。

3.給与支給時の月次減税額の控除

 上記2で計算した月次減税額を、令和6年6月1日以降に支給する給与等から控除していきます。
 ここでは、次の6月分給与(6月20日締・6月25日支給)を前提として、月次減税額の控除を行うものとします。

基本給 480,000 健康保険 25,450
家族手当 20,000 厚生年金 45,750
通勤手当 10,000 雇用保険 3,060
    所得税 15,480
    住民税 0
合計① 510,000 合計② 89,740
差引支給額(①-②) 420,260

 月次減税額を控除する前の所得税額15,480円は、現行の所得税法の規定等により求めたものです。
 この場合、月次減税額9万円が控除前税額15,480円を超えているため、控除する月次減税額は控除前税額と同額の15,480円となります。
 したがって、6月分給与から源泉徴収する所得税は0円となり、給与明細には次のように表示します。

基本給 480,000 健康保険 25,450
家族手当 20,000 厚生年金 45,750
通勤手当 10,000 雇用保険 3,060
    所得税 15,480
    住民税 0
    定額減税 15,480
合計① 510,000 合計② 74,260
差引支給額(①-②) 435,740

 なお、6月分給与で控除しきれなかった月次減税額(90,000円-15,480円=74,520円)は、7月以降に支給する給与・賞与から順次控除していきます。

 順次控除して控除しきれなかった月次減税額の金額がなくなった際には、その際に支給する給与等に係る控除前税額と最後に控除しきれなかった金額との差額が、実際に源泉徴収する税額となります。

 上記給与を前提とすると、6月分~10月分で控除する月次減税額は15,480円×5=77,400円ですので、10月分給与支給時点で控除しきれなかった月次減税額が90,000円-77,400円=12,600円あります。
 この12,600円は11月分給与の所得税15,480円から控除しますので、11月分給与で実際に源泉徴収する税額は15,480円-12,600円=2,880円となります。

※ 上記の6月分給与明細では住民税が0円となっています。例年であれば住民税の特別徴収は6月~翌年5月の12か月で行われますが、令和6年度は7月~翌年5月の11か月で行われるため、令和6年6月の特別徴収はありません。
 市区町村から定額減税された住民税額が記載された決定通知書が届きますので、通知の内容に従って特別徴収を実施してください。

4.月次減税後の納付書の記載

 給与支払者は各月の月次減税事務の終了後、納付書に所要事項を記載した上で、納付すべき源泉徴収税額がある場合には法定納期限までに納付しなければなりません。
 この場合、納付書の「税額」欄には、各人ごとの控除前税額から月次減税額を控除した後の金額(その給与等から実際に源泉徴収した税額)を集計して記入します。

 なお、月次減税額の控除により納付すべき税額がなくなった場合(「税額」欄の「本税」が0円)でも、その納付書を税務署に提出しなければなりません。

出所:国税庁ホームページ

納期の特例はいつから適用される?

1.納期の特例の概要

 源泉徴収した所得税および復興特別所得税(以下「源泉所得税」といいます)は、原則として、給与や税理士報酬などを実際に支払った月の翌月10日※1までに税務署に納めなければなりません。

 ただし、給与の支給人員が常時10人未満である源泉徴収義務者は、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」(以下「納期の特例申請書」といいます)を所轄税務署長に提出することで、源泉所得税を年2回にまとめて納付することができます。これを納期の特例といいます※2
 納期の特例が適用されると、源泉所得税の納付期限は次のようになります。

・その年の1月から6月までに支払った給与等の源泉所得税・・・7月10日※1
・その年の7月から12月までに支払った給与等の源泉所得税・・・翌年1月20日※1

※1 これらの納付期限が日曜日、祝日などの休日や土曜日に当たる場合には、その休日明けの日が納付期限となります。

※2 すべての源泉所得税が納期の特例の対象となるわけではありません(参考記事:「外交員報酬に係る源泉徴収税額の計算方法」、「セミナー講師料を支払った場合の源泉徴収」)。

2.申請書提出月の翌月から適用される

 税務署長から納期の特例の申請について却下の通知がない場合には、この納期の特例申請書を提出した月の翌月末日に承認があったものとみなされ、申請書を提出した月の翌月に支給する給与等に係る源泉所得税から納期の特例の適用対象になります(納期の特例申請書を提出した月については、納期の特例の適用を受けることができません)。

 例えば、2月に申請書を提出した場合は、3月末日に承認があったものとみなされ、3月に支給する給与等に係る源泉所得税から納期の特例が適用されます。
 したがって、2月支給分の納付期限は3月10日、3月~6月支給分の納付期限は7月10日となります。
 
 納期の特例が適用された場合の納付期限と使用する納付書は、具体的には次のようになります(カッコ内の「毎月用」「納特用」は使用する納付書の種類です)。

(1) 提出月が1月中の場合・・・1月支給分は2月10日(毎月用)、2月~6月支給分は7月10日(納特用)

(2) 提出月が2月中の場合・・・2月支給分は3月10日(毎月用)、3月~6月支給分は7月10日(納特用)

(3) 提出月が3月中の場合・・・3月支給分は4月10日(毎月用)、4月~6月支給分は7月10日(納特用)

(4) 提出月が4月中の場合・・・4月支給分は5月10日(毎月用)、5月~6月支給分は7月10日(納特用)

(5) 提出月が5月中の場合・・・5月支給分は6月10日(毎月用)、6月支給分は7月10日(納特用)

(6) 提出月が6月中の場合・・・6月支給分は7月10日(毎月用)、7月~12月支給分は翌年1月20日(納特用)

(7) 提出月が7月中の場合・・・7月支給分は8月10日(毎月用)、8月~12月支給分は翌年1月20日(納特用)

(8) 提出月が8月中の場合・・・8月支給分は9月10日(毎月用)、9月~12月支給分は翌年1月20日(納特用)

(9) 提出月が9月中の場合・・・9月支給分は10月10日(毎月用)、10月~12月支給分は翌年1月20日(納特用)

(10) 提出月が10月中の場合・・・10月支給分は11月10日(毎月用)、11月~12月支給分は翌年1月20日(納特用)

(11) 提出月が11月中の場合・・・11月支給分は12月10日(毎月用)、12月支給分は翌年1月20日(納特用)

(12) 提出月が12月中の場合・・・12月支給分は翌年1月10日(毎月用)、1月~6月支給分は7月10日(納特用)

3.納期の特例に該当しなくなった場合

 給与の支給人員が常時10人以上※3となり、源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなった場合は、「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」を提出することが必要です。

 この届出書を提出した場合には、その提出した日の属する納期の特例の期間から納期の特例の承認の効力が失われます。
 この場合の具体的な納付期限等については、本ブログ記事「納期の特例の要件に該当しなくなった場合の届出と納期限」をご参照ください。

※3 常時10人未満であるかどうかの判定については、本ブログ記事「納期の特例の要件である『常時10人未満』とは?」をご参照ください。

賞与(ボーナス)の社会保険料と所得税の計算方法

 社会保険料(健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料)と雇用保険料は毎月の給与から控除(天引き)しますが、ボーナス(賞与)に対しても社会保険料・雇用保険料はかかります。
 ボーナスから控除する社会保険料や所得税の計算方法は、毎月の給与から控除する場合と計算方法が異なります(雇用保険料は、ボーナスの場合も毎月の給与の場合も計算方法は同じです)。
 以下では、ボーナスに対する社会保険料・雇用保険料及び所得税の計算方法と、ボーナス支給後の手続きについて確認します。

1.賞与に対する社会保険料の計算方法

出所:全国健康保険協会ホームページ

 毎月の社会保険料は標準報酬月額に基づいて計算しますが、ボーナスから控除する社会保険料は「標準賞与額」に基づいて計算します。
 標準賞与額とは、支給する賞与額の1,000円未満の端数を切り捨てた金額をいいます。この標準賞与額に保険料率を乗じて社会保険料を算出し、算出された社会保険料を事業主と被保険者が労使折半で負担します。

 例えば、2022(令和4)年12月にAさん(兵庫県在住の38歳の従業員で扶養親族は1人)に400,800円のボーナスを支給する場合、ボーナスから控除する社会保険料と雇用保険料は次のように計算します。

標準賞与額400,000円×健康保険料率10.13%×1/2=20,260円(健康保険料)
標準賞与額400,000円×厚生年金保険料率18.3%×1/2=36,600円(厚生年金保険料)
実際支給額400,800円×雇用保険料率5/1000=2,004円(雇用保険料)※
控除合計額20,260円+36,600円+2,004円=58,864円

※社会保険料計算では、1,000円未満の端数を切り捨てた標準賞与額に保険料率を乗じますが、雇用保険料計算の際は1,000円未満の端数を切り捨てずに保険料率を乗じます。

 また、2022(令和4)年12月にBさん(兵庫県在住の41歳の従業員で扶養親族は1人)に400,800円のボーナスを支給する場合、ボーナスから控除する社会保険料と雇用保険料は次のように計算します。

標準賞与額400,000円×健康保険料率11.77%×1/2=23,540円(健康保険料・介護保険料)
標準賞与額400,000円×厚生年金保険料率18.3%×1/2=36,600円(厚生年金保険料)
実際支給額400,800円×雇用保険料率5/1000=2,004円(雇用保険料)
控除合計額23,540円+36,600円+2,004円=62,144円

2.賞与に対する所得税の計算方法

出所:国税庁ホームページ

 ボーナスに対する社会保険料と雇用保険料の計算ができたら、次は「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を用いて、所得税(源泉徴収税額)の計算をします。
 所得税の計算方法は次のとおりです。

(1) まず、「前月の社会保険料等控除後の給与等の金額」を求めます。具体的には、その人の前月の給与額から前月の給与額に対する社会保険料・雇用保険料を差し引いた金額になります。
(2) 次に、その人の扶養親族等(源泉控除対象配偶者及び控除対象扶養親族)の数に応じて、(1)で求めた金額が記載されている行の「賞与の金額に乗ずべき率」を求めます。
(3) (2)で求めた率を、ボーナスの金額からボーナスにかかる社会保険料・雇用保険料を控除した金額に乗じて所得税を算出します。

 例えば、前月のAさんの給与が260,000円、社会保険料が37,102円、雇用保険料が1,300円だった場合、ボーナス400,800円に対する所得税は次のように計算します。

(1) 前月の給与額260,000円-前月の社会保険料37,102円-前月の雇用保険料1,300円=221,598円
(2) 扶養親族等の数が1人なので、(1)の金額は「94千以上243千円未満」の区分に該当し、賞与に乗ずべき率は2.042%。
(3) 所得税=(400,800円-58,864円)×2.042%=6,982円(円未満切捨て)

3.被保険者賞与支払届の提出

 事業主が被保険者および70歳以上被用者へ賞与を支給した場合は、支給日より5日以内に「被保険者賞与支払届」により支給額等を届出します。
 この届出内容により標準賞与額が決定され、これにより賞与の保険料額が決定されるとともに、被保険者が受給する年金額の計算の基礎となるものですので、忘れずに届出をしなければなりません。
 また、賞与にかかる保険料は、毎月の保険料と合算されて賞与支払月の翌月の「納入告知書(口座振替の場合は、納入告知額通知書)」で通知されます。

年末調整に必要な書類(各種申告書と証明書等)

1.年末調整とは?

 毎月支給される給与からは所得税が源泉徴収(天引き)されていますが、その源泉徴収された所得税の1年間の合計額は、その人(給与の支払を受ける人)の1年間の給与総額に対する税額(年税額)と基本的には一致しません。
 一致しない理由は、例えば、家族の就職や結婚等により年の中途で控除対象扶養親族の人数に異動があっても、その異動後の支払分から修正するだけで遡って各月の源泉徴収税額を修正することとされていないことや、生命保険料や地震保険料などの所得控除は年末調整の際に控除することとされていることなどが挙げられます。
 このような不一致を精算するため、1年間の給与総額が確定する年末にその年に納めるべき税額(年税額)を計算し、この年税額と毎月の給与から源泉徴収した税額との差額を還付したり追加で徴収したりする手続きを年末調整といいます。
 年末調整では、勤務先に各種申告書と証明書等を提出することで、いろいろな控除が受けられます。
 以下では、年末調整の際に必要な各種申告書と証明書等について確認します。

2.提出が必要な申告書と証明書等

 次のうち、(2)の「扶養控除等(異動)申告書」と(3)の「基礎控除申告書兼配偶者控除申告書兼所得金額調整控除申告書」は基本的には全員が提出する必要がありますが、それ以外については該当する方が提出することになります。

(1) 前職の源泉徴収票

 中途入社の方は、前の勤務先が発行した「給与所得の源泉徴収票」を提出してください(複数枚ある場合はすべて)。

(2) 扶養控除等(異動)申告書

 前年の年末調整時または本年の入社時に提出済みだと思いますが、転居により住所が変わった方、家族の就職や結婚等により扶養親族の人数が減った方、出産により扶養親族の人数が増えた方などは、その事実を記載して再提出してください(異動のない方も再提出をしてください)。

(3) 基礎控除申告書兼配偶者控除申告書兼所得金額調整控除申告書

 基礎控除や配偶者控除等を受ける方は、「基礎控除申告書兼配偶者控除申告書兼所得金額調整控除申告書」を提出してください。

(4) 保険料控除申告書

 生命保険料や地震保険料、社会保険料、小規模企業共済掛金などを支払っている方(下記(5)(6)(7)(8)に該当する方)は、これらの支払を証明する書類と一緒に提出してください。

(5) 生命保険料控除証明書・地震保険料控除証明書

 ご自身が支払った生命保険料・地震保険料がある方は、保険会社から送られてくる「生命保険料控除証明書」「地震保険料控除証明書」を提出してください。

(6) 国民健康保険料・後期高齢者医療保険料の領収書等

 ご自身が支払った国民健康保険料・後期高齢者医療保険料がある方は、「領収書」または「保険料控除申告書」に本年中に支払った金額を記載して、提出してください。

(7) 社会保険料(国民年金保険料)控除証明書

 ご自身が支払った国民年金保険料がある方は、日本年金機構から送られてくる「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」を提出してください。

※ 国民年金の保険料と国民年金基金の掛金については、保険料を支払ったことを証明する書類が必要ですが、上記(6)の国民健康保険料や後期高齢者医療保険料については必要ありません。

(8) 小規模企業共済等掛金控除証明書

 ご自身が支払った小規模企業共済等掛金(iDeCoなど)がある方は、「小規模企業共済等掛金控除証明書」を提出してください。

(9) 住宅借入金等特別控除申告書・住宅借⼊⾦の年末残⾼等証明書

 住宅ローン控除を受けるために前年分以前に確定申告をした方は、税務署から送られてくる「住宅借入金等特別控除申告書」と、金融機関から送られてくる「住宅取得資⾦に係る借⼊⾦の年末残⾼等証明書」を提出してください。

事前確定届出給与を支給しなかった場合のリスクを回避するための手続き

 従来は臨時的な役員賞与は損金算入が認められていませんでしたが、事前確定届出給与の制度を利用すれば、役員賞与であっても届出通りの支給をした場合は損金算入が可能です(届出書等の書き方については、本ブログ記事「『事前確定届出給与に関する届出書』等の書き方と記載例」をご参照ください)。
 届出通りの支給をしなかった場合、例えば届出書に記載した支給時期や支給額と異なる時期や金額の支給をした場合は、その役員賞与は損金不算入となります
 事前確定届出給与の届出はしたけれども実際には全く支給しなかった場合は、そもそも支給額が0円なので損金不算入額も0円となり、特段のリスクはないように見えます。
 しかし、事前確定届出給与の支給をしなかった場合のリスクはあります。
 今回は、事前確定届出給与の支給をしなかった場合のリスクと、そのリスクを回避するための手続きについて確認します。

※ 事前確定届出給与を届出通りに支給しなかった場合でも、損金算入できることがあります。詳細については、本ブログ記事「事前確定届出給与(複数回支給)を届出通りに支給しなかった場合」及び「事前確定届出給与(複数人支給)を特定の役員だけ届出通りに支給しなかった場合」をご参照ください。

1.事前確定届出給与の支給をしなかった場合のリスク

 事前確定届給与は法人の節税対策として用いられる側面がありますが、実際の利益が当初見込んでいた利益よりも少なくなる場合は、事前確定届出給与の支給をやめることがあります。
 例えば、事前確定届出給与100万円の支給時期が到来したけれどもその支給をしなかった場合は、そもそも支給額が0円なので損金不算入額も0円です。
 しかし、この場合は次のようなリスクがあることに留意しなければなりません。

借方 金額 貸方 金額
役員賞与 100万円 未払金 100万円
未払金 100万円 債務免除益 100万円

 届出額100万円と異なる金額を支給した場合は、その全額が損金不算入となりますが、支給額が0円なのでそもそも損金算入する金額がなく、損金不算入額も0円です。
 会社としては株主総会等で役員賞与を支給しないという意思決定をしたため、会計上は役員賞与や未払金を認識(上記1行目の仕訳)することはありません(上記1行目の仕訳をするのは、会社に役員賞与を支払う意思がある場合です)。
 しかし、支給日が到来した段階で役員に報酬請求権が発生するため、会社側には報酬を支給する債務(未払金)が発生します。つまり、税務上は上記1行目の仕訳のように考えます。
 そうすると、税務上は役員賞与100万円を認識することになるので、これに対する所得税の源泉徴収が必要になります
 また、株主総会等の決議の際に役員は辞退届を提出して報酬請求権を放棄したと考えられるため、会社側に生じた報酬を支給する債務(未払金)は消滅しますが、役員賞与の支給義務が免除されたことに対する収益(債務免除益)を会社側では認識することになります(上記2行目の仕訳)。

※ 根拠条文は、次の所得税法第183条第2項(源泉徴収義務)です。
2 法人の法人税法第二条第十五号(定義)に規定する役員に対する賞与については、支払の確定した日から一年を経過した日までにその支払がされない場合には、その一年を経過した日においてその支払があつたものとみなして、前項の規定を適用する。

2.リスクを回避するための手続き

 事前確定届出給与を支給しなかった場合のリスクは、会社側では役員賞与を支払っていないにもかかわらず、①役員賞与に対する所得税の源泉徴収義務が生じる、②債務免除益に対して課税される、役員側では役員賞与をもらっていないにもかかわらず、所得税が課税されることです。
 これらのリスクは、事前確定届出給与の支給日に役員の報酬請求権が発生することに端を発しています。
 つまり、これらのリスクがあるのは、事前確定届出給与の支給日が到来した後(すでに役員の報酬請求権が発生した後)に、役員からの辞退届を受領したり株主総会等で不支給の決議をした場合です。
 したがって、これらのリスクを回避するためには、事前確定届出給与の支給日が到来する前に、役員からの辞退届を受領して株主総会等で不支給の決議をすることが必要です。
 所得税基本通達28-10(給与等の受領を辞退した場合)には、次のように規定されています。

28-10 給与等の支払を受けるべき者がその給与等の全部又は一部の受領を辞退した場合には、その支給期の到来前に辞退の意思を明示して辞退したものに限り、課税しないものとする。

 なお、事前確定届出給与を支給しなかった場合に、支給しなかったことについて税務署へ届出(報告)する必要はありません。

退職所得の受給に関する申告書を提出した人が還付を受けるためにする確定申告

1.退職金支給時の源泉徴収

 従業員の方に退職金を支給する場合には、その支給額から所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しなければなりません。
 源泉徴収の方法は、退職する従業員の方から「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受けているかどうかにより異なります。

(1) 「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受けている場合

 退職金の支給額から下記算式で計算した退職所得控除額を控除した残額を2分の1にした額(1,000円未満の端数は切り捨てます。)が課税退職所得金額となります。

① 勤続年数が20年以下の場合
  勤続年数×40万円(80万円未満の場合には80万円)
② 勤続年数が20年超の場合
(勤続年数-20年)×70万円+800万円

 上記算式において、長期欠勤や休職中の期間は勤続年数に含めますが、丙欄適用期間は除きます。また、勤続年数に1年未満の端数があるときは1年に切り上げます。さらに、障害者になったことに基因して退職した場合は、上記の金額に100万円を加算します。
 ここで計算した課税退職所得金額に、「退職所得の源泉徴収税額の速算表」の「税額」欄の算式に従い計算した額が、源泉徴収する税額になります。

(2) 「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受けていない場合

 退職金の支給額に20.42%の税率を乗じて計算した額を源泉徴収します。この場合、退職金を受給した従業員ご本人が確定申告をして、(1)と同様の計算を行い源泉徴収税額を精算することになります。

2.退職所得を確定申告して所得税の還付を受ける

 上記1(1)のように、退職金の支給を受けた人で、その勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出した人については、源泉徴収だけで課税関係が完結し、退職所得に関しての確定申告は原則不要とされています。
 しかし、「退職所得の受給に関する申告書」を提出した人でも、以下のように確定申告することによって所得税の還付を受けることができます。

(1) 控除しきれなかった所得控除額を退職所得から差し引くための確定申告

 退職所得以外の所得の合計額が所得控除の合計額未満である場合には、控除しき
れなかった所得控除の額を退職所得の金額から差し引くことによって、所得税の還付を受けることができます。
 例えば、給与所得が129万円(給与収入は210万円)、所得控除額が139万円(配偶者控除38万円、特定扶養控除63万円、基礎控除38万円)の場合には、給与所得の金額から控除することができない所得控除額10万円(139万円―129万円)を退職所得の金額から差し引くことによって、所得税の還付を受けることができます。

(2) 退職所得で損益通算を受けるための確定申告

 損益通算とは、不動産所得、事業所得、山林所得及び譲渡所得等の金額の計算上
生じた損失の金額を、一定の順序に従い他の所得の金額から差し引くことをいいま
す。
 退職所得は、国内の銀行預金の利子所得のような源泉分離課税とされている所得と違い、源泉徴収だけで課税関係が終わり確定申告できないものではありません。その年に事業所得等の損失がある場合には、確定申告をして損益通算を受けることができます。
 例えば、給与所得が129万円、事業所得の損失が139万円の場合には、事業所得の損失のうち給与所得の金額から引ききれない10万円が退職所得の金額から控除されます。その結果、給与所得と退職所得につき源泉徴収された所得税の還付を受けることができます。

納期の特例の要件に該当しなくなった場合の届出と納期限

1.納期の特例とは

 源泉徴収した所得税及び復興特別所得税は、原則として徴収した日の翌月10日が納期限となっています。
 ただし、給与の支給人員が常時10人未満である源泉徴収義務者は、給与や退職手当、税理士等の報酬・料金から源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税を申請により年2回にまとめて納付することができ、これを納期の特例(納特)といいます。 

※ 源泉所得税の納期の特例については、本ブログ記事「納期の特例はいつから適用される?」をご参照ください。

2.納期の特例に該当しなくなった場合

 顧問先の納特用の源泉納付書を作成していて、給与の支給人員が10人以上になっていることに気づくことがあります。
 このような場合(納期の特例の要件に該当しなくなった場合)は、「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」を税務署に提出しなければなりません。

※ 支給人員が10人未満であるかどうかの判定については、本ブログ記事「納期の特例の要件である『常時10人未満』とは?」をご参照ください。

3.該当しなくなった場合の納期限

 この届出書を提出した場合には、その提出した日の属する納期の特例の期間内に源泉徴収した税額のうちその提出の日の属する月分以前の各月に源泉徴収した税額は、その提出の日の属する月の翌月10日までに納付し、その後の各月に源泉徴収した税額は、原則通り支払った月の翌月10日までに納付することになります。

 具体的な納期限と使用する納付書は、次のようになります(カッコ内の「納特用」「毎月用」は使用する納付書の種類です)。

(1)提出日が2月中の場合・・・1月支給分は3月10日まで(納特用)、2月支給分は3月10日まで(毎月用)、3月支給分以降は翌月10日まで(毎月用)

(2)提出日が3月中の場合・・・1月~2月支給分は4月10日まで(納特用)、3月支給分は4月10日まで(毎月用)、4月支給分以降は翌月10日まで(毎月用)

(3)提出日が4月中の場合・・・1月~3月支給分は5月10日まで(納特用)、4月支給分は5月10日まで(毎月用)、5月支給分以降は翌月10日まで(毎月用)

(4)提出日が5月中の場合・・・1月~4月支給分は6月10日まで(納特用)、5月支給分は6月10日まで(毎月用)、6月支給分以降は翌月10日まで(毎月用)

(5)提出日が6月中の場合・・・1月~5月支給分は7月10日まで(納特用)、6月支給分は7月10日まで(毎月用)、7月支給分以降は翌月10日まで(毎月用)

(6)提出日が7月中の場合・・・1月~6月支給分は7月10日まで(納特用)、7月支給分は8月10日まで(毎月用)、8月支給分以降は翌月10日まで(毎月用)

(7)提出日が8月中の場合・・・7月支給分は9月10日まで(納特用)、8月支給分は9月10日まで(毎月用)、9月支給分以降は翌月10日まで(毎月用)

(8)提出日が9月中の場合・・・7月~8月支給分は10月10日まで(納特用)、9月支給分は10月10日まで(毎月用)、10月支給分以降は翌月10日まで(毎月用)

(9)提出日が10月中の場合・・・7月~9月支給分は11月10日まで(納特用)、10月支給分は11月10日まで(毎月用)、11月支給分以降は翌月10日まで(毎月用)

(10)提出日が11月中の場合・・・7月~10月支給分は12月10日まで(納特用)、11月支給分は12月10日まで(毎月用)、12月支給分以降は翌月10日まで(毎月用)

(11)提出日が12月中の場合・・・7月~11月支給分は1月10日まで(納特用)、12月支給分は1月10日まで(毎月用)、1月支給分以降は翌月10日まで(毎月用)

(12)提出日が1月中の場合・・・7月~12月支給分は1月10日まで(納特用)、1月支給分は2月10日まで(毎月用)、2月支給分以降は翌月10日まで(毎月用)