個人年金保険の一時金は一時所得以外に雑所得でも申告可能

 個人年金保険は、毎年「年金」として受け取る人が多いと思われますが、将来の年金を「一時金」として一括受給することもできます。
 年金と一時金、どちらで受け取った方が良いのかについては、たびたび議論されるところではありますが、今回はその議論はさておき、一時金として一括受給した場合の所得区分について述べていきます。

1.所得税基本通達35-3

 一般的には、個人年金保険を「年金」として受給した場合の所得区分は雑所得、「一時金」として一括受給した場合の所得区分は一時所得と考えられています。
 ところが、所得税基本通達35-3(年金に代えて支払われる一時金)では、次のように規定されています。

35-3 令第183条第1項、令第184条第1項、令第185条又は令第186条の規定の対象となる年金の受給資格者に対し当該年金に代えて支払われる一時金のうち、当該年金の受給開始日以前に支払われるものは一時所得の収入金額とし、同日後に支払われるものは雑所得の収入金額とする。ただし、同日後に支払われる一時金であっても、将来の年金給付の総額に代えて支払われるものは、一時所得の収入金額として差し支えない。

 つまり、①受給開始日以前に支払われる一時金(解約返戻金等)は一時所得、②同日に支払われる一時金は雑所得、③同日に支払われる一時金のうち、将来の年金給付の総額に代えて支払われる一時金一時所得として差し支えない、とされています。
 ①の受給開始日以前に支払われる一時金とは解約返戻金等であり、これは一時所得になります。今回問題としているのは、②③の受給開始日後に支払われる一時金です。
 そうすると、上記通達の「差し支えない」という文言から、受給開始日後に支払われる一時金は雑所得が原則であり、一時所得とするのは例外のようにも読み取れます。
 この点について、以下で確認します。

2.有期年金の場合は雑所得又は一時所得

 個人年金保険は、有期年金と終身年金に大別されます。
 有期年金とは、年金の支払期間(保証期間)終了後に受給資格者が生存していても、年金は支払われないものをいいます。例えば、10年有期年金であれば、支払開始から10年間だけ年金が支払われ、その後は受給資格者が生存していても、年金は支払われないことになります。
 一方、終身年金は、終身にわたって年金が支払われるもの、つまり、受給資格者が生存している限り年金が支払われるものをいいます。

 ここで少し整理すると、受給開始日後に支払われる一時金のうち、今回問題としているのは有期年金です。
 有期年金は、年金の保証期間終了をもって年金の支払がストップする仕組みですので、有期年金の一時金は、所得税基本通達35-3でいう「将来の年金給付の総額に代えて支払われるもの」に該当し、「一時所得の収入金額として差し支えない」ことになります。
 すなわち、同通達における一時金の所得区分は雑所得を原則とし、将来の年金給付の総額に代えて支払われる一時金については、一時所得とすることもできるということです。
 個人年金保険の一時金は、税務メリットのあるケースが多いと考えられる一時所得で申告するのが一般的だと思われますが、「一時金=一時所得」と定型的に考えるのではなく、雑所得とした場合の税務メリット(例えば、他の雑所得の損失との内部通算が認められる等)も考慮した方がいいかもしれません。
 ただし、次の保証期間付終身年金の一時金については、一時所得とすることはできず雑所得になります。

3.保証期間付終身年金の場合は雑所得

 保証期間付終身年金は、受給資格者が保証期間終了後も生存していれば、引き続き年金が支払われるというものです。
 保証期間に係る一時金を受給しても、その後生存していれば再び年金を受給できる仕組みですので、保証期間付終身年金の一時金は、一時所得となる「将来の年金給付の総額に代えて支払われる一時金」に該当しないとされています(国税庁・質疑応答事例参照)。
 したがって、保証期間付終身年金の一時金の所得区分は雑所得になります。

生命保険金を受け取ったときの税金

 生命保険金を受け取った場合、その保険金が死亡に基づくものか、満期によるものか、また、保険料の負担者は誰なのかなどによって課税関係が異なります。
 今回は、生命保険金を受け取ったときの課税関係について整理します。

1.死亡保険金を受け取ったとき

 例えば、「契約者:夫、被保険者:夫、受取人:妻」の生命保険契約の保険料を、夫が支払っていたとします。
 このような状況で夫が亡くなった場合は、妻は保険会社から死亡保険金を受け取ります。このとき、妻が受け取った死亡保険金は相続税の課税対象(みなし相続財産)となります。
 また、「契約者:夫、被保険者:夫、受取人:妻」の生命保険契約の保険料を、妻が支払っていたとします。
 このような状況で夫が亡くなった場合も、妻は保険会社から死亡保険金を受け取るのですが、さきほどの例とは異なり、妻が受け取る死亡保険金はみなし相続財産にはなりません。
 妻が自分で保険料を支払って、自分で保険金をもらったわけですから、一時所得として所得税の課税対象になります。
 さらに一例を挙げると、「契約者:夫、被保険者:夫、受取人:妻」の生命保険契約の保険料を、子が支払っていたとします。
 この場合も、妻が受け取る死亡保険金はみなし相続財産にはなりません。子が保険料を支払っていたからこそ、妻は保険金を受け取っているのですから、この場合は子から妻への贈与となり、贈与税の課税対象(みなし贈与財産)となります。
 死亡保険金に限らず、生命保険金を受け取った場合の課税関係において重要なことは、誰が保険料を支払っていたか(誰が保険料の負担者なのか)ということです。
 保険契約者が保険料負担者であることが一般的ですが、必ずしもそうではないケースもありますので、注意しなければなりません。
 下表は、被保険者が死亡した場合の課税関係の例を示したものです。

  負担者 被保険者 受取人 課税関係
死亡保険金 妻に相続税:保険金-(500万円×法定相続人)
妻の一時所得※:(保険金-支払保険料-50万円)×1/2
妻に贈与税:保険金-110万円
夫の一時所得※:(保険金-支払保険料-50万円)×1/2
子に贈与税:保険金-110万円

※ 一定の一時払養老保険等の差益は、源泉徴収だけで納税が完了する源泉分離課税となります。また、年金方式で保険金を受け取った場合は、その年ごとの雑所得として所得税及び復興特別所得税がかかります。

2.満期保険金・解約返戻金を受け取ったとき

 上記1は死亡保険金を受け取ったときの課税関係でしたが、満期保険金や解約返戻金を受け取ったときの課税関係はどうなるでしょうか。
 例えば、「契約者:夫、被保険者:夫、受取人:妻」の生命保険契約の保険料を、夫が支払っていたとします。
 このような状況で保険契約が満期を迎えた場合は、妻は保険会社から満期保険金を受け取ります。満期保険金は、夫がまだ亡くなっていませんので、みなし相続財産にはなりません。この満期保険金は、夫が保険料を支払っていたからこそ、保険会社から妻に支払われるものです。したがって、夫から妻への贈与となり、贈与税の課税対象(みなし贈与財産)となります。
 また、「契約者:夫、被保険者:夫、受取人:妻」の生命保険契約の保険料を、妻が支払っていたとします。
 このような状況で、保険契約が満期を迎えた場合に妻が受け取る満期保険金は、みなし贈与財産にはなりません。
 妻が自分で保険料を支払って、自分で保険金をもらったわけですから、一時所得として所得税の課税対象になります。
 満期保険金や解約返戻金を受け取ったときの課税関係についても、誰が保険料を支払っていたか(誰が保険料負担者なのか)ということが重要です。
 下表は、満期保険金や解約返戻金を受け取った場合の課税関係の例を示したものです。

  負担者 被保険者 受取人 課税関係
満期保険金解約返戻金 妻に贈与税:保険金-110万円
妻の一時所得※:(保険金-支払保険料-50万円)×1/2
妻に贈与税:保険金-110万円
夫の一時所得※:(保険金-支払保険料-50万円)×1/2
子に贈与税:保険金-110万円

※ 一定の一時払養老保険等の差益は、源泉徴収だけで納税が完了する源泉分離課税となります。また、年金方式で保険金を受け取った場合は、その年ごとの雑所得として所得税及び復興特別所得税がかかります。

控除対象外消費税額等の処理

1.控除対象外消費税額等とは

 法人又は個人事業者が、消費税等の経理方法として税抜経理方式を採用している場合、原則として納付すべき消費税額は、仮受消費税等から仮払消費税等を控除した金額となります(いわゆる消費税差額は、原則的には生じません)。
 しかし、その課税期間の課税売上高が5億円超又は課税売上割合が95%未満である場合には、仮払消費税等のうち控除対象とされない部分の消費税額(消費税差額)が発生します。これを控除対象外消費税額等といいます。
 控除対象外消費税額等が生じるのは、仕入控除税額が課税仕入れ等に係る消費税額の全額ではなく、課税売上割合に対応した部分に限られるからです。
 例えば、建物を5,500万円(うち消費税額等500万円)で取得し、その課税期間の課税売上割合が60%だとしたら、500万円×(1-60%)=200万円が控除対象外消費税額等になります。
 この控除対象外消費税額等については、以下に掲げる方法により処理します。なお、税込経理方式を採用している場合は、消費税等は資産の取得価額又は経費の額に含まれますので、控除対象外消費税額等の調整は必要ありません。

2.資産に係る控除対象外消費税額等

 資産に係る控除対象外消費税額等は、次のいずれかの方法により損金の額又は必要経費に算入します。

(1) 資産の取得価額に算入します。

(2) 次のいずれかに該当する場合は、法人については損金経理を要件としてその事業年度の損金の額に、個人事業者はその年分の必要経費に算入します。

① その事業年度又は年分の課税売上割合が80%以上であること
② 棚卸資産に係る控除対象外消費税額等であること
③ 一の資産に係る控除対象外消費税額等が20万円未満であること

(3) 上記に該当しない場合は「繰延消費税額等」として資産計上し、5年以上の期間で償却します。

① 繰延消費税額等が生じた事業年度
 損金算入限度額=繰延消費税額等×その事業年度の月数/60×1/2

②その後の事業年度
 損金算入限度額=繰延消費税額等×その事業年度の月数/60

 例えば、200万円の繰延消費税額等が生じた場合、その生じた事業年度の損金算入限度額は、200万円×12/60×1/2=20万円となります(資産を取得した事業年度は2分の1が損金となります)。
 この場合、会計上は消費税差額200万円を全額雑損失(又は租税公課)で処理することは可能ですが、法人税の計算においては別表十六(十)で損金算入限度額20万円を計算し、限度額20万円を超える額180万円については別表四で加算します。そして、次期以降5年間にわたり180万円を認容していく必要があります。

3.経費に係る控除対象外消費税額等

 経費に係る控除対象外消費税額等は、その全額をその事業年度の損金の額又はその年分の必要経費に算入します。
 ただし、法人税の計算において、交際費等に係る控除対象外消費税額等については、消費税の計算後、会計上は経費に係る分として雑損失(又は租税公課)で処理され損金経理されますが、科目は交際費とはならなくても支出した交際費等として把握し、交際費等の損金不算入の計算が必要になります。
 この場合、交際費等に係る控除対象外消費税額等の金額を、別表十五(交際費等の損金算入に関する明細書)の「支出交際費等の額の明細」欄に、交際費自体の額とは別に記載しなければなりません。
 また、課税資産を購入して寄附した場合の控除対象外消費税額等については、支出寄附金等の額として、寄附金等の損金不算入額を計算しなければなりません。
 なお、交際費等に係る控除対象外消費税額等は、以下のようになります。

(1) 個別対応方式で計算している場合

① 課税売上対応の交際費に係る税額については、控除対象外消費税額等は生じません。
② 非課税売上対応の交際費に係る税額については、その全額が控除対象外消費税額等になります。
③ 共通対応の交際費に係る税額については、交際費等のうち次の算式で計算した金額が控除対象外消費税額等になります。
 控除対象外消費税額等=共通対応の交際費に係る税額×(1-課税売上割合)

(2) 一括比例配分方式で計算している場合

 交際費等のうち、次の算式で計算した金額が控除対象外消費税額等になります。
 控除対象外消費税額等=交際費に係る税額×(1-課税売上割合)

副業の給与所得が会社にバレない方法とは?

 かつては副業を禁止する会社が多かったのですが、最近は副業を容認(あるいは推奨)する会社が増えてきています。公務員でも、届出さえしておけば副業が許される自治体もあるようです。
 今は世の中が副業に対して寛容になったとはいえ、一方で副業を禁止する会社もあり、また、副業が解禁されている会社に勤めていても、副業していることを会社に知られたくない場合もあるかと思います。
 今回は、副業が会社にバレない一般的な方法と、副業の「給与所得」が会社にバレないイレギュラーな方法について述べます。

1.副業がバレない一般的な方法

 会社員が会社勤めの傍ら行う副業には、様々なものがあります。例えば、アフィリエイト、FX取引、仮想通貨取引、原稿執筆、講演、UBER EATS ドライバーなどがあります。これらの活動によって得た所得は、雑所得に区分されます。
 また、自分が所有するマンションの一室を賃貸して家賃収入を得ることもありますが、これは不動産所得に区分されます。
 さらに、副業ではありませんが、例えば自分の居住する住宅を売って売却代金を受け取ると、これは譲渡所得になります。
 これらの活動によって得た所得は、基本的には確定申告をする必要があります。その結果、これらの所得は本業の給与所得と合算されて住民税が課税され、会社で給与から天引き(特別徴収)されますので、会社の経理担当者に給与以外に所得があると気づかれる可能性があります。
 このような副業が会社にバレないようにするために、一般的によく行われるのは次の方法です。

 所得税の確定申告書第二表には、「住民税・事業税に関する事項」欄に住民税の徴収方法を選択する箇所があります(上図参照)。この箇所の「自分で納付」に〇をつけて申告すると、副業による所得に関する住民税の通知・納付書が自宅に届きますので、その分を自分で納付すれば、副業を会社に知られずに済みます(自分で納付する方法のことを「普通徴収」といいます)。
 一般的には以上の方法で、会社に届く住民税の特別徴収税額の決定通知書には給与所得だけが記載され、「その他の所得計」欄や「主たる給与以外の合算所得区分」欄に副業分が記載されることはありません(兵庫県宝塚市の場合)。しかし、市町村によっては対応が異なる可能性もありますので、確定申告の前に確認しておく方がいいと思います。

 なお、会社員の副業による雑所得等が20万円以下の場合は、確定申告をしなくてもよいことになっています(詳しくは、本ブログ記事「給与所得者と公的年金等受給者の確定申告不要制度の注意点」をご参照ください)。

2.副業が給与所得の場合はどうする?

 一般的には上記1の方法により副業を会社に知られないようにするのですが、副業で得た収入が給与所得に該当する場合はどうでしょうか?
 例えば、コンビニ、スーパー、レストラン、居酒屋、塾、専門学校などでアルバイトをしている場合、これらで得た収入は給与所得になります。副業が給与所得の場合、上記1の方法は使えません。
 上記1の図をよく見ると、「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」となっているのがわかります。
 つまり、給与所得以外の所得(雑所得や不動産所得など)については、確定申告書第二表で住民税の徴収方法を選択できるのですが、給与所得の場合は住民税の徴収方法は選択できず、原則として特別徴収になります。
 また、本業と副業の2か所から給与所得を得ていますので、たとえ副業の給与所得が20万円以下だったとしても、確定申告不要制度は使えません。
 そうすると、副業で得た所得を確定申告して、さらに住民税を特別徴収されると、会社に副業がバレる可能性があります。
 このような場合は、どうすることもできないのでしょうか?

 残された唯一の方法は、自分が住んでいる市区町村に住民税の普通徴収の申し出をすることです。
 本来は2か所からの給与所得は合算され、その合計に対して住民税が課税され、一律特別徴収されますので、副業分の住民税だけを普通徴収にするというのはイレギュラーな手続きになります。
 しかし、副業を会社に知られたくない旨を伝えると、この普通徴収の申し出に対応してくれる市区町村もあります。
 イレギュラーな手続きになりますので、原則として納税者本人が市区町村の窓口で手続きをする必要があります(同居家族であれば委任状がなくても手続きできる場合があります)。申し出といっても何か特別な様式があるわけではなく、2か所分の源泉徴収票と印鑑を持参して、本業は特別徴収、副業は普通徴収を希望することを担当者に相談するだけです。相談できる期限は所得税の確定申告期限と同じであり、所得税の確定申告が済んでいなくても相談できます。
 市区町村によって対応は異なると思いますが、一度相談してみる価値はあると思います。

青色申告と白色申告の特典比較

1.白色申告は現金主義で記帳できるという誤解

 青色申告と白色申告には、それぞれ適用できる特典がありますが、両者を混同して適用を誤ってはいけません。
 例えば、「青色申告の記帳は発生主義によらないといけないが、白色申告の場合は現金主義で記帳することができる」という認識があるとすれば、これは誤解です。
 青色申告も白色申告も、原則として発生主義による記帳を行わなければなりません。現金主義による記帳は、一定の要件を満たす青色申告者のみに認められた特典であり、白色申告者に現金主義の適用はありません。
 また、白色申告者が取得価額30万円未満の少額減価償却資産を必要経費に算入することはできません。これも青色申告者のみに認められた特典です。
 このような適用誤りを防止するために、青色申告と白色申告について、それぞれに認められている特典の比較を行います。

2.主な特典の比較

 青色申告と白色申告の特典は、次のとおりです。

特典 青色申告 白色申告
青色申告特別控除 最高65万円又は10万円を不動産所得、事業所得、山林所得から順次控除できる 適用なし
青色事業専従者給与
事業専従者控除
事業的規模の所得において、労務の対価として相当と認められる金額の範囲内で支払われた給与は、全額必要経費に算入できる 事業的規模の所得において、専従者1人あたり最高50万円(配偶者は86万円)を必要経費に算入できる
現金主義 前々年の不動産所得及び事業所得の合計額が300万円以下の場合は、現金主義による所得計算ができる 適用なし
少額減価償却資産の特例 取得価額が30万円未満の少額減価償却資産は、業務の用に供した年に、全額必要経費に算入できる(年間300万円が限度) 適用なし
貸倒引当金 事業的規模の所得において、個別評価、一括評価(事業所得に限る)による貸倒引当金の計上ができる 事業的規模の所得において、個別評価のみ認められる
低価法 棚卸資産は低価法により評価できる 適用なし
純損失の繰越控除 損失額のうち、同一年中の所得と通算しても控除しきれない金額は、翌年以降3年間にわたり控除できる 変動所得又は被災事業用資産の損失に限り繰越控除できる
純損失の繰戻し還付 前年分の所得に対する税金から還付を受けられる 適用なし

慰安旅行費が福利厚生費となるための3要件と注意点

 福利厚生の一環として、日頃の従業員の頑張りを労うために慰安旅行を実施することがあります。福利厚生の一環として実施する慰安旅行なので、会社が負担した旅行代は当然福利厚生費になるものと経営者(または経理担当者)は考えがちですが、必ずしもそうではありません。
 今回は、慰安旅行費が福利厚生費となるための要件と注意点について確認します。

1.福利厚生費となる要件

 会社行事として行われる慰安旅行に参加することによって従業員が経済的利益を受ければ、原則としてこの経済的利益も給与と同様に所得税の課税対象になります。
 ただし、税務上の取扱いとして、会社が負担した費用が参加した従業員の給与として課税されるかどうかは、その旅行の条件を総合的に勘案して判定することとなります。
 国税庁タックスアンサーによると、慰安旅行によって従業員に供与する経済的利益の額が少額の現物給与は強いて課税しないという少額不追及の趣旨を逸脱しないものであると認められ、かつ、その旅行が次の(1)と(2)のいずれの要件も満たすものであるときは、原則として、その旅行の費用を旅行に参加した人の給与としなくてもよいことになっています。

(1) その旅行に要する期間が4泊5日(海外旅行の場合は、外国での滞在日数が4泊5日)以内であること
(2) その旅行に参加する従業員等の数が全従業員等(工場、支店等で行う場合は、その工場、支店等の従業員等)の50%以上であること

 (1)について補足すると、海外旅行の場合は4泊5日に移動日数(機内泊や船内泊)は含めません。また、(2)について補足すると、アルバイトや契約社員の方は参加比率に含めません。
 いずれにしても、この(1)(2)の要件については形式的に判断できますので、迷うことはないと思います。

 問題は、「少額の現物給与は強いて課税しないという少額不追及の趣旨を逸脱しないものであると認められ」る少額の金額はいくらなのか?ということです。
 これについて明文規定はありませんが、国税庁タックスアンサーに参考になる記載があります。タックスアンサーには、次の3つの事例が掲載されています。

[事例1]
イ 旅行期間3泊4日
ロ 費用及び負担状況 旅行費用15万円(内使用者負担7万円
ハ 参加割合100%
・・・旅行期間・参加割合の要件及び少額不追及の趣旨のいずれも満たすと認められることから原則として課税しなくてもよい

[事例2]
イ 旅行期間4泊5日
ロ 費用及び負担状況 旅行費用25万円(内使用者負担10万円
ハ 参加割合100%
・・・旅行期間・参加割合の要件及び少額不追及の趣旨のいずれも満たすと認められることから原則として課税しなくてもよい

[事例3]
イ 旅行期間5泊6日
ロ 費用及び負担状況 旅行費用30万円(内使用者負担15万円
ハ 参加割合50%
・・・旅行期間が5泊6日以上のものについては、その旅行は、社会通念上一般に行われている旅行とは認められないことから課税

 事例1と2は給与課税しなくてもよい例であり、会社負担額の7万円(1泊あたり2.33万円)と10万円(1泊あたり2.5万円)は、いずれも少額不追及の趣旨を満たす「少額の金額」とされています。
 一方、事例3は給与課税になる例ですが、旅行期間が4泊5日を超えているためであり、会社負担額の15万円(1泊あたり3万円)が少額であるか否かについては定かではありません。
 これらの事例から、3泊4日であれば7万円、4泊5日であれば10万円までは福利厚生費として処理して差し支えないと思われます。

2.慰安旅行費の注意点

 次のような場合には、慰安旅行費の会社負担額は福利厚生費になりませんのでご注意ください。

(1) 自己都合による不参加者に対し、その旅行への参加に代えて金銭を支給する場合には、不参加者のみならず参加者に対しても、その不参加者に対して支給する金銭に相当する給与の支給があったものとして課税されます。
 なお、会社の業務上の都合(商品搬入のための休日出勤等)による不参加者に対して、その旅行への参加に代えて金銭を支給する場合は、その不参加者のみが給与課税されます。
(2) 役員だけで行う旅行は役員賞与とみなされ、損金不算入となります。また、役員個人に対して給与課税されます。
(3) 取引先に対する接待、供応、慰安等のための旅行は、交際費になります。交際費が損金算入限度額を超える場合は、その超過分は損金不算入となります。

電子申告したのに青色申告特別控除額が55万円?

 2018年度(平成30年度)改正で、2020年(令和2年)分の所得税確定申告から、青色申告特別控除額が65万円から55万円に変わります。
 ただし、e-Taxによる申告(電子申告)又は電子帳簿保存を行うと、引き続き65万円控除を受けることができます。
 そこで、令和2年分は是非とも電子申告を行って65万円控除を受けたいところですが、電子申告の方法を誤ると55万円控除しか受けられない場合があります。
 今回は、この電子申告をはじめ、青色申告に関する間違いやすい事例を3点確認します。

1.電子申告と65万円控除

 令和2年分の確定申告において、青色申告者(電子帳簿保存法に係る承認は受けていません)が確定申告書を電子申告により期限内に提出し、青色申告決算書を別途書面(郵送)により提出しました。この場合、65万円控除を受けることができるでしょうか?

 答えは「否」です。
 青色申告特別控除額65万円を適用することができるのは、次のいずれかの要件を満たす場合です(措法25の2③④⑥)。

(1) 所定の期限内に電子帳簿保存法第4条第1項又は第5条第1項の承認申請書を提出し、その年中の事業に係る仕訳帳及び総勘定元帳について税務署長の承認を受けて、電磁的記録による備付け及び保存を行い、かつ、期限内に貸借対照表及び損益計算書等を添付した確定申告書を提出した場合
(2) 期限内に電子申告により確定申告書、貸借対照表及び損益計算書等を送信(提出)した場合

 (1)は電子帳簿の保存、(2)は電子申告に関する規定ですが、(2)の太字部分に注目すると、確定申告書だけではなく貸借対照表と損益計算書も電子申告しなければならないことがわかります。
 本事例の場合、青色申告決算書(貸借対照表及び損益計算書)は書面により提出していますので要件を満たさず、55万円控除しか受けることができません。意外と見落としやすいポイントかもしれませんので、注意が必要です。

※ 2022(令和4)年1月1日から施行される改正電子帳簿保存法では、税務署長の事前承認は不要になります。

関連記事:「税務署・確定申告会場で電子申告しても65万円控除は受けられない」

2.貸倒引当金は青色申告者の特典?

 白色申告者が、貸倒引当金は青色申告者でなければ適用できないと判断しましたが、この判断は妥当でしょうか?

 答えは「否」です。
 貸倒引当金は青色申告の特典の一つですが、個別評価による貸倒引当金については、不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を営む者であれば、青色申告者でなくても適用を受けることができます(所法52①)。
 なお、一括評価による貸倒引当金については、事業所得を生ずべき事業を営む青色申告者のみが適用を受けることができます(所法52②)。

3.青色申告の純損失を翌年の白色申告で繰越控除できる?

 前年に青色申告者の純損失の金額が生じた場合で、翌年分が白色申告(給与所得のみ)の場合は、繰越控除ができるでしょうか?

 答えは「正」です。
 純損失の繰越控除の要件に、連続して確定申告書を提出していることとありますが、翌年以後については青色申告書の提出は要件ではないので、白色申告でも繰越控除ができます(所法70①④)。
 
 なお、白色申告者に純損失の金額が生じた場合、一切繰越控除が認められないということではありません。
 白色申告者であっても、純損失の金額のうち、変動所得の損失と被災事業用資産の損失については、その純損失の発生した年分の確定申告書を提出していれば、繰越控除ができます(所法70②)。
 さらに、当初申告要件及び期限内提出要件はないため、期限後申告又は更正の請求でも繰越損失を生じさせることができます(所法70④)。

中古住宅を取得した場合の住宅借入金等特別控除の適用要件

 住宅借入金等特別控除(いわゆる住宅ローン控除)は、新築住宅から中古住宅、増改築まで幅広く適用があります。
 中古住宅の場合は住宅ローン控除を受けられないと思っている方も見受けられますが、要件を満たせば適用を受けることができますので、確定申告をして税負担を軽くしましょう。 
 個人が中古住宅を取得した場合で、次の1~5の要件をすべて満たすときは、住宅ローン控除の適用を受けることができます。
 なお、居住の用に供する住宅を二つ以上所有する場合、控除の適用対象は主として居住の用に供する一つの住宅に限られます。

※ 2021(令和3)年度税制改正で、住宅借入金等特別控除制度について床面積要件等の見直しがされています。改正内容については、本ブログ記事「住宅借入金等特別控除の適用要件等の見直し」をご参照ください。

1.家屋等に関する要件〈築年数等〉

 取得した中古住宅が、次の(1)~(4)のいずれにも該当する住宅であること

(1) 建築後使用されたものであること

(2) 次の①~③のいずれかに該当する住宅であること

① 家屋が建築された日からその取得の日までの期間が20年(マンションなどの耐火建築物の建物の場合には25年)以下であること

※ 「耐火建築物」とは、建物登記簿に記載された家屋の構造のうち、建物の主たる部分の構成材料が、石造、れんが造、コンクリートブロック造、鉄骨造(軽量鉄骨造は含みません)、鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造のものをいいます。

② 地震に対する安全上必要な構造方法に関する技術的基準又はこれに準ずるもの (耐震基準)に適合する建物であること

※ 次の証明書等が付された家屋の場合は、上記①の築年数の要件を満たすものとされます。
イ.耐震基準適合証明書(家屋取得の日前2年以内に証明のための調査が終了したもの)
ロ.建設住宅性能評価書(評価等級が1~3のもの)の写し(家屋取得の日前2年以内に評価されたもの)
ハ.既存住宅売買瑕疵担保責任保険契約が締結されていることを証する書類(家屋取得の日前2年以内に締結されたもの)

③ 2014年(平成26年)4月1日以後に取得した中古住宅で、上記①又は②のいずれにも該当しない一定のもの(要耐震改修住宅)のうち、その取得の日までに耐震改修を行うことについて申請をし、かつ、居住の用に供した日までにその耐震改修(租税特別措置法41条の19の2(既存住宅の耐震改修をした場合の所得税額の特別控除)第1項又は41条の19の3(既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除)第6項若しくは第8項の適用を受けるものを除きます。)により家屋が耐震基準に適合することにつき証明がされたものであること

(3) 取得の時に生計を一にしており、その取得後も引き続き生計を一にする親族や特別な関係のある者などからの取得でないこと

(4) 贈与による取得でないこと

2.家屋等に関する要件〈床面積〉

 取得した住宅の床面積が50平方メートル以上であり、床面積の2分の1以上の部分が専ら自己の居住の用に供するものであること

※ この場合の床面積の判断基準は、次のとおりです。

(1) 床面積は、登記簿に表示されている床面積により判断します。

(2) マンションの場合は、階段や通路など共同で使用している部分(共有部分)については床面積に含めず、登記簿上の専有部分の床面積で判断します。

(3) 店舗や事務所などと併用になっている住宅の場合は、店舗や事務所などの部分も含めた建物全体の床面積によって判断します。

(4) 夫婦や親子などで共有する住宅の場合は、床面積に共有持分を乗じて判断するのではなく、ほかの人の共有持分を含めた建物全体の床面積によって判断します。
 ただし、マンションのように建物の一部を区分所有している住宅の場合は、その区分所有する部分(専有部分)の床面積によって判断します。

3.取得者に関する要件

次の(1)~(3)のいずれにも該当すること

(1) 取得者は居住者であること(2016年(平成28年)4月1日以後の取得については、非居住者でも可)

(2) 取得の日から6か月以内に居住の用に供し、適用を受ける各年の12月31日まで引き続いて住んでいること

※ 個人が死亡した日の属する年にあっては、同日まで引き続き住んでいれば適用を受けることができます。

※ 中古住宅を取得した後、その住宅に入居することなく増改築等工事を行った場合の住宅借入金等特別控除については、新型コロナウイルス感染症の影響によって工事が遅延したことなどにより、その住宅への入居が控除の適用要件である入居期限要件(取得の日から6か月以内)を満たさないこととなった場合でも、次の①~③の要件を満たすときは、その適用を受けることができます(新型コロナ税特法6条、新型コロナ税特令4条)。

① 中古住宅の取得をした日から5か月を経過する日又は新型コロナ税特法の施行の日(2020年(令和2年)4月30日)から2か月を経過する日のいずれか遅い日までに、増改築等の契約を締結していること

② 増改築等の終了後6か月以内に、中古住宅に入居していること

③ 2021年(令和3年)12月31日までに中古住宅に入居していること

(3) この特別控除の適用を受ける年分の合計所得金額が、3,000万円以下であること

※ 合計所得金額とは、次の①~⑦の合計額をいいます。

① 純損失、雑損失、居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失、特定居住用財産の譲渡損失、上場株式等に係る譲渡損失、特定投資株式に係る譲渡損失及び先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除を適用する前の総所得金額

② 特別控除前の分離課税の長(短)期譲渡所得の金額

③ 株式等に係る譲渡所得等の金額

④ 上場株式等の配当所得等(上場株式等に係る譲渡損失との損益通算後の金額)

⑤ 先物取引に係る雑所得等の金額

⑥ 山林所得金額

⑦ 退職所得金額

4.借入金に関する要件

 10年以上にわたり分割して返済する方法になっている中古住宅の取得のための一定の借入金又は債務(住宅とともに取得するその住宅の敷地の用に供される土地等の取得のための借入金等を含みます)があること

※ 一定の借入金又は債務とは、例えば銀行等の金融機関、独立行政法人住宅金融支援機構、勤務先などからの借入金や独立行政法人都市再生機構、地方住宅供給公社、建設業者などに対する債務です。
 ただし、勤務先からの借入金の場合には、無利子又は0.2%(2016年(平成28年)12月31日以前に居住の用に供する場合は1%)に満たない利率による借入金は、この特別控除の対象となる借入金には該当しません。
 また、親族や知人からの借入金は全て、この特別控除の対象となる借入金には該当しません。

5.重複適用排除の対象となる譲渡所得の特例

 取得した家屋をその居住の用に供した個人が次の(1)(2)の期間において、その取得をした家屋及びその敷地の用に供している土地等以外の資産(それまでに住んでいた家屋など)について、居住用財産を譲渡した場合の譲渡所得の課税の特例の適用を受けていないこと

(1) 2020年(令和2年)4月1日以後に譲渡した場合
 その居住の用に供した年とその前2年・後3年の計6年間

(2) 2020年(令和2年)3月31日以前に譲渡した場合
 その居住の用に供した年とその前後2年ずつの計5年間

※ 重複適用排除の対象となるのは、以下の譲渡所得の特例です。
・居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法31の3)
・居住用財産の譲渡所得の特別控除(措法35①)
・特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法36の2、36の5)
・既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換え及び交換の場合の譲渡所得の課税の特例(措法37の5)

屋号付き口座は所得税の還付口座にできません

 令和2年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告書の受付は、令和3年2月16日(火)から同年3月15日(月)までです
 また、確定申告の必要がない方でも、ふるさと納税等の寄附金控除や医療費控除などにより、源泉徴収された税金の還付を受けるための申告(還付申告)をすることができます。
 この還付申告については、令和3年2月15日(月)以前でも行えます。令和2年分であれば、令和3年1月1日から令和7年12月31日まで申告することができます。
 今回は、還付申告する際の還付口座(還付される税金の受取口座)の留意点を確認します。

※ 国税庁より、2021年(令和3年)2月2日、申告所得税(及び復興特別所得税)、贈与税及び個人事業者の消費税(及び地方消費税)の申告期限・納付期限について、全国一律で令和3年4月15日(木)まで延長されることが発表されました。
 これに伴い、振替納税に係る振替日についても、申告所得税は令和3年5月31日(月)、個人事業者の消費税は令和3年5月24日(月)とされました。

1.還付金の受取方法

 還付金の受取りには、「預貯金口座への振込みによる方法」と「最寄りのゆうちょ銀行各店舗又は郵便局に出向いて受け取る方法」とがあります。
 あまり利用されていないように思うのですが、後者の受取方法の場合は、後日、国庫金送金通知書が送付されますので、指定したゆうちょ銀行の各店舗や郵便局窓口に国庫金送金通知書と身分証明書(運転免許証又は国民健康保険被保険者証など、本人であることを証するもの)を持参して還付金を受け取ります。
 前者の受取方法の場合は、指定した金融機関の預貯金口座に還付金が直接振り込まれます。税務署もこの方法を推しているように思います。

2.還付口座の記載方法と留意点

 還付金の受取りに預貯金口座への振込みを希望する場合は、確定申告書第一表の「還付される税金の受取場所」欄に、申告者本人の取引している金融機関名、預貯金の種別及び口座番号を記載します。
 具体的には、次のように記載します。

(1) 銀行等の預金口座の場合の記載方法

「預金種類」欄は、該当する預金種類に印を付けます(総合口座の場合は「普通」に印を付けます)。
「口座番号記号番号」欄は、口座番号のみを左詰めで記入します。

(2) ゆうちょ銀行の貯金口座の場合の記載方法

「口座番号記号番号」欄は、貯金総合通帳の記号番号のみを左詰めで記入します。その際、以下の点に注意してください。
① 他の金融機関との振込用の「店名(店番)」「口座番号」は記入しません。
② 記号部分と番号部分の間に1桁の数字(通帳再発行時に表示される「-2」などの枝番)がある場合は、その数字の記入は不要です。例えば、「12340 - 2 - 12345671」の「-2」は不要です。

※ ゆうちょ銀行の各店舗又は郵便局窓口での受取りを希望する場合は、受取りを希望する郵便局名等を記入します。

(3) 還付口座の留意点

 預貯金口座への振込みを希望する場合は、原則として、銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫、農業協同組合、漁業協同組合及びゆうちょ銀行の預貯金口座を指定することができます。
 ただし、以下の点に留意する必要があります。
① 還付金の振込みに指定できる預貯金口座については、申告者本人名義のものに限られます。申告者本人の氏名のほかに店名、事務所名などの名称(屋号)が含まれる場合は振込みできないことがありますので、申告者本人の氏名のみの口座を指定します。
旧姓のままの名義である場合には、振込みができません。
③ 納税管理人の指定をしている場合は、その納税管理人の名義の預貯金口座となります。
一部のインターネット専用銀行については還付金の振込みができませんので、振込みの可否について、あらかじめ利用しているインターネット専用銀行に確認する必要があります。

不動産賃貸における立退料の取扱い

1.借主が立退料をもらったとき

 事務所や住居などを借りている個人が、その事務所などを明渡して立退料を受け取った場合には、所得税法上の各種所得の金額の計算上収入金額になります。
 受け取った立退料は、その内容から次の3つに区分され、その取扱いは次のようになります。

内容 立退料の取扱い
家屋の明渡しによって消滅する権利の対価の額に相当する金額 譲渡所得の収入金額
立ち退きに伴って、その家屋で行っていた事業の休業等による収入金額又は必要経費を補填する金額 事業所得等の収入金額
上記に該当する部分を除いた金額 一時所得の収入金額

2.貸主が立退料を支払ったとき

 建物を賃貸している場合に、借家人に立ち退いてもらうため、立退料を支払うことがあります。このような立退料の取扱いは次のようになります。

内容 立退料の取扱い
賃貸している建物やその敷地を譲渡するために支払う立退料 譲渡所得の譲渡費用
土地、建物等を取得する際に、その土地、建物等を使用していた者に支払う立退料 土地、建物等の取得費又は取得価額
敷地のみを賃貸し、建物の所有者が借地人である場合に、借地人に立ち退いてもらうための立退料 土地の取得費(借地権の買い戻しの対価)
上記に該当しない立退料で、不動産所得の基因となっていた建物の賃借人を立ち退かせるために支払う立退料 不動産所得の必要経費

3.貸主が居住するために支払う立退料

 上記2で見たように、不動産所得の基因となっていた建物の賃借人を立ち退かせるために支払う立退料は、不動産所得の必要経費になります。
 では、次のような場合、立退料は不動産所得の必要経費になるのでしょうか?
 例えば、サラリーマンが転勤のためマイホームを賃貸していましたが、人事異動で再びマイホームに住む必要が生じたため、借家人に家屋の明渡しを求めて立退料を支払った場合です。
 このサラリーマンは、転勤の期間中、受領した家賃を不動産所得として年々確定申告をしていましたので、自己が居住するために支払う今回の立退料も必要経費にしたいところです。
 しかし、結論を先に述べると、自己が居住するために支払う立退料は不動産所得の必要経費にはなりません。
 所得税法の必要経費の理念は、「収入を得るために必要な経費」とされています。したがって、立退料を支払った場合には、その立退料が収入を得るために必要なものであるかどうかが必要経費か否かを判断する基準となります。
 今回のケースでは、賃貸していた家屋から発生した家賃収入は立退料を支払う以前のものであり、立退料を支払ったことにより発生したものではありません。よって、自己が居住するために支払う立退料は「収入を得るために必要な経費」に該当せず家事費となり、不動産所得の必要経費にはなりません。