租税特別措置法上の「中小企業者」の定義とその判定時期

 中小企業には様々な優遇税制(例えば、所得拡大促進税制や中小企業投資促進税制など)が用意されていますが、一口に中小企業と言っても、その範囲は各税制によって異なります。中小企業の優遇税制には、それぞれ根拠となる法律があり、各制度を規律する法律によって中小企業の定義は変わります。
 今回は中小企業の優遇税制と関連の深い租税特別措置法上の中小企業者の定義と、中小企業者に該当するか否かの判定は事業年度のどの時点で行うのかについて確認します。

1.中小企業者の定義

 租税特別措置法における中小企業者の定義は、2019(平成31)年度税制改正により見直しが行われ、2019(平成31)年4月1日以後に開始する事業年度から適用されています。
 改正後の中小企業者とは、次の(1)(2)に掲げる法人をいいます。ただし、中小企業者のうち適用除外事業者※1に該当するものは除かれます。

(1) 資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人のうち次に掲げる法人以外の法人

① その発行済株式又は出資(自己の株式又は出資を除く。以下同じ。)の総数又は総額の2分の1以上を同一の大規模法人※2に所有されている法人
② 上記①のほか、その発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上を複数の大規模法人に所有されている法人
③ 受託法人

(2) 資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下※4の法人(受託法人を除く)

※1 適用除外事業者とは、基準年度(その事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度)の所得金額の合計額を各基準年度の月数の合計数で除し、これに12を乗じて計算した金額(設立後3年を経過していないことなどの一定の事由がある場合には、一定の調整を加えた金額)が15億円を超える法人をいいます。

※2 大規模法人とは、次に掲げる法人をいい、中小企業投資育成株式会社を除きます。
(1) 資本金の額又は出資金の額が1億円を超える法人
(2) 資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人
(3) 大法人※3との間にその大法人による完全支配関係がある法人
(4) 普通法人との間に完全支配関係がある全ての大法人が有する株式及び出資の全部をその全ての大法人のうちいずれか一の法人が有するものとみなした場合においてそのいずれか一の法人とその普通法人との間にそのいずれか一の法人による完全支配関係があることとなるときのその普通法人(上記(3)に掲げる法人を除く。)

※3 大法人とは、次に掲げる法人をいいます。
(1) 資本金の額又は出資金の額が5億円以上の法人
(2) 相互会社及び外国相互会社のうち、常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人
(3)  受託法人

※4 「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」においては、2020(令和2)年度改正で、常時使用する従業員の数が500人(改正前:1,000人)以下に引き下げられました(措令39の28①)。

 上記のとおり、中小企業者とは、資本金・出資金の額が1億円以下の法人、又は資本・出資を有しない法人のうち、常時使用する従業員の数が1,000人以下※4の法人をいいます。
 ただし、資本金・出資金が1億円以下であっても、大規模法人にその発行済株式・出資の総数・総額の2分の1以上を所有されていたり、複数の大規模法人にその3分の2以上を所有されている法人は、中小企業者に該当しません。
 また、2019(平成31)年度税制改正により大規模法人の定義が変更され、大法人(資本金5億円以上)による完全支配関係がある法人が加えられたため、この大法人により間接保有される法人等がみなし大企業に該当することになり、中小企業者の範囲から除外されることになりました。

2.中小企業者の判定時期

 各種の優遇税制の適用を受けるためには中小企業者であることが必要ですが、例えば、期中に増資を行ったために資本金が1億円を超えることとなった場合は、その時点で中小企業者ではなくなります。
 しかし、増資が行われるまでは中小企業者であったので、もし、中小企業者であるか否かの判定が事業年度開始の時の現況で行われるのであれば、中小企業者に該当することになります。
 このように、どの時点で中小企業者の判定を行うかは、優遇税制の適用があるかどうかを判断する上で大変重要です。
 以下では、主な優遇税制について、中小企業者の判定時期を確認します。

(1) 研究開発税制(中小企業者等が試験研究を行った場合の法人税額の特別控除)

 中小企業者等に該当するか否かについては、事業年度終了の時の現況によって判定します。

(2) 所得拡大促進税制(中小企業者等が給与等の引上げを行った場合の税額控除)

 中小企業者等に該当するか否かについては、事業年度終了の時の現況によって判定します。

※ 所得拡大促進税制については、本ブログ記事「中小企業者等の所得拡大促進税制の令和3年度改正」をご参照ください。

(3) 中小企業投資促進税制(中小企業等が機械等を取得した場合の特別償却又は特別控除)

 法人が事業年度の中途で中小企業者等に該当しなくなった場合において、その該当しないこととなった日前に取得等をして事業の用に供した機械等については適用があります

※ 税額控除は資本金3,000万円以下の中小企業者に限ります。
※ 中小企業者投資促進税制については、本ブログ記事「令和3年度改正後の中小企業投資促進税制」をご参照ください。

(4) 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

 法人が事業年度の中途で中小企業者等に該当しなくなった場合において、その該当しないこととなった日前に取得等をして事業の用に供した機械等については適用があります。

※ 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例については、本ブログ記事「30万円未満の少額減価償却資産の損金算入制度と別表16(7)の記載例」をご参照ください。

(5) 欠損金の繰戻しによる還付の不適用措置について、中小企業者等の各事業年度において生じた欠損金額は、不適用措置から除外する特例

 中小企業者等に該当するか否かについては、事業年度終了の時の現況によって判定します。

役員退職金の分割支給と源泉徴収

 役員が退職するにあたり、その退職金を一括で支払うと、会社の資金繰りに支障をきたすことがあります。このような場合は、退職金を一括支給せずに分割支給にすることができます。
 今回は、役員退職金を分割支給する場合の損金算入時期と源泉徴収税額及び分割支給の留意点について確認します。

※ 一括支給する場合については、本ブログ記事「役員退職金の損金算入時期と経理処理」をご参照ください。

1.分割支給する場合の損金算入時期

 役員退職金の損金算入時期は、原則として株主総会の決議等によりその額が具体的に確定した日の属する事業年度とされ、損金経理は要件とされていません。
 ただし、法人が役員退職金を実際に支給した日の属する事業年度において、その支払った金額を損金経理した場合には、例外としてこれも認められています。
 つまり、役員退職金の損金算入時期は、その額の確定時と支給時のいずれかによることができるということです。
 このことは、株主総会等において役員退職金の額が確定したものの、資金繰りの理由により確定額を分割支給する場合も同じです。
 したがって、役員退職金を分割支給する場合は、その額が確定した事業年度において未払金として計上するか、実際に支給した事業年度において退職金として計上すれば、損金算入が認められます。

2.分割支給した場合の源泉徴収税額の計算

 役員退職金を分割支給した場合の源泉徴収は、その退職金の総額に対する税額を計算し、その税額を各回の支給額で按分します※1
 例えば、3月決算法人の役員(勤続38年)がX1年3月に退職し、X1年5月の株主総会において5,000万円の退職金を支給することが決議されましたが、資金繰りの都合からX1年7月に3,000万円、X1年12月に2,000万円と2回に分割して支給することとした場合、源泉徴収税額は以下のように計算します。
 なお、この役員から、「退職所得の受給に関する申告書」の提出があったものとします(関連記事:「退職所得の受給に関する申告書を提出した人が還付を受けるためにする確定申告」)。

(1) 勤続38年に対する退職所得控除額:800万円+70万円×(38年-20年)=2,060万円
(2) 退職所得金額の計算:(5,000万円-2,060万円)×1/2=1,470万円
(3) 源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額※2:(1,470万円×33%-153.6万円)×102.1%=3,384,615円
(4) 7月に徴収する所得税及び復興特別所得税の額:3,384,615円×3,000万円/5,000万円=2,030,769円
(5) 12月に徴収する所得税の額:3,384,615円×2,000万円/5,000万円=1,353,846円

※1 退職所得に係る個人住民税についても、退職金支給の際に特別徴収することとされています。計算方法は、退職金の総額に対する税額を計算し、その税額を各回の支給額で按分します。
※2 参考:国税庁ホームページ「退職所得の源泉徴収税額の速算表」

3.分割支給の留意点

 役員退職金を分割支給するにあたって、留意すべき点は次のとおりです。

(1) 退職金を分割支給する場合、支給を受ける側の退職所得の収入金額とすべき時期については、原則としてその支給の起因となった退職の日とされます。
 したがって、分割で支給を受ける場合でも、その決定された金額の全額がその年の収入金額になります。
(2) 分割支給とすることに特段の理由が無く、利益調整目的などの意図があり税額に影響を及ぼす場合は、損金算入が認められない可能性があります(「赤字決算を避けるため」は合理的な理由にならず、「資金繰りの都合」は合理的な理由になります)。
 したがって、株主総会又は取締役会において分割支給の合理的な理由を説明し、支給時期と金額を明確にしたうえで、議事録を作成することが重要です。
(3) 分割期間が長期にわたる場合は、退職一時金ではなく退職年金と認定される可能性があります。
 退職金の一時払いというよりも有期年金の支給と考えた方が実態に即しているような場合には、決議日等の属する確定事業年度で全額損金処理することはできず、支給の都度、損金算入しなければなりません。
 つまり、年金総額を未払計上したとしても、その未払金相当額を確定事業年度の損金に算入することはできません。
 また、退職一時金ではなく退職年金と認定された場合、支給を受ける側にとっては退職所得ではなく雑所得として扱われることになります。

役員退職金の損金算入時期と経理処理

 役員に支給する退職金については、税務上、様々な論点があります。例えば、その適正額に関する議論は最たるものであり、税務調査の際にも、課税庁と納税者の間で度々争いが起こります。
 しかし、意外に見落とされがちなのが、役員退職金を損金に算入する時期の問題です。ここを誤ると、適正額云々以前に役員退職金の損金算入が否認されてしまいます。
 今回は、役員退職金の損金算入時期と経理処理について確認します。

1.損金算入時期の原則と例外

 税法上、役員に対して支給する退職金の損金算入時期は、原則として、株主総会、社員総会等の決議により、退職金の額が具体的に確定した日の属する事業年度とされ、損金経理は要件とされていません
 また、会社の機関として取締役会を設置しており、株主総会で役員退職金を支給することだけを決議し、具体的な支給額の決定は取締役会に一任することとしている場合は、その金額が取締役会で具体的に決定された日の属する事業年度において損金算入することとなります。
 ただし、法人が退職金を実際に支払った日の属する事業年度において、その支給額につき損金経理をした場合は、その支払った日の属する事業年度において損金算入することも認められます。
 したがって、役員に支給する退職金の損金算入時期は、その金額の確定時(原則)と支給時(例外)のいずれかによることができますが、原則の場合は損金経理は不要であり、例外の場合は損金経理が必要です。

※ 2006(平成18)年度の税制改正で、役員退職金についての損金経理要件が廃止されたため、退職金の額が確定した事業年度において仮払金等として経理した金額につき申告調整により減算することは認められます。

2.役員退職金を未払計上した場合

 上記のように、役員退職金の損金算入時期については、原則として退職金の額の確定時、例外として退職金の支給時となりますが、一般的には退職金の金額確定と支給は同じ事業年度になるものと思われます。
 しかし、資金繰り等の理由から、退職金の額の確定と支給が異なる事業年度になることも考えられます。
 例えば、3月決算法人の役員がX1年2月に退職したため、X1年5月の株主総会で退職金を1,000万円支給することが承認されましたが、資金繰りの都合から支給はX2年4月になるというような場合です。
 このとき、X2年3月期(X1年4月1日~X2年3月31日の事業年度)に役員退職金を損金算入するのであれば、次のように役員退職金を未払計上します。

借方 金額 貸方 金額
役員退職金 1,000万円 未払金 1,000万円

 そして、X2年4月の支給時に次のように処理します。

借方 金額 貸方 金額
未払金 1,000万円 現金預金 1,000万円

 また、支給日の属するX3年3月期(X2年4月1日~X3年3月31日の事業年度)に損金算入するのであれば、X2年3月期は経理処理をせず、支給日に次のように処理します。

借方 金額 貸方 金額
役員退職金 1,000万円 現金預金 1,000万円

 なお、退職金の額が具体的に確定する事業年度より前の事業年度において、取締役会で内定した金額を損金経理により未払計上した場合は、未払金に計上した時点での損金算入は認められません。
 例えば、3月決算法人の役員がX1年2月に退職したため、取締役会で1,000万円の退職金支給を内定し、その承認をX1年5月の株主総会で受けるとします。
 この場合、役員退職金1,000万円を次のように未払計上しただけでは、X1年3月期(X0年4月1日~X1年3月31日の事業年度)に損金算入することはできません。株主総会で承認を受けるのが翌期になりますので、X1年3月期においては退職金の額が確定していないからです。

借方 金額 貸方 金額
役員退職金 1,000万円 未払金 1,000万円

 この場合は、次のように実際に1,000万円の退職金をX1年3月期中に支給していれば、株主総会の承認を受ける前であってもX1年3月期に損金算入することができます。

借方 金額 貸方 金額
未払金 1,000万円 現金預金 1,000万円

注意!フリーレント契約の支払家賃の計上時期と経理処理

 不動産賃貸におけるフリーレント契約とは、賃貸借契約開始後の当初数か月間の賃料を無料にする、あるいは減額するというものです(本記事では、無料を前提とします)。
 貸主にとっては、賃貸不動産物件の稼働率の向上が見込めるというメリットがあり、また、借主にとっては初期費用を抑えることができるというメリットがありますが、賃料が無料であるということは、その間(フリーレント期間)の経理処理はどうしたらいいのか、という疑問が生じます
 この点について、前回は貸主側の処理を確認しました(前回記事「フリーレント契約の受取家賃の計上時期と経理処理」をご参照ください)。
 今回は、借主側の処理について確認します。

1.中途解約禁止条項がある場合

 フリーレント契約の場合、フリーレント期間中あるいはフリーレント期間経過直後に解約されてしまうことを防止するために、中途解約禁止条項が設けられているのが一般的です。例えば、次のようなフリーレント契約です。

「賃貸借期間2年間のうち、当初3か月間の賃料(月額40万円)はゼロとするフリーレント契約において、中途解約は禁止であり、仮に賃借人の都合で解約する場合は、賃借人はフリーレント期間に係る賃料相当額120万円(40万円×3か月)及び解約後の未経過期間に係る賃料相当額(40万円×未経過期間月数)を賃貸人に支払う。」

 このような内容のフリーレント契約の場合、貸主には受取家賃の計上時期と経理処理について、理論的方法と実務的方法の2つが認められていました。
 理論的方法は、フリーレント期間開始時から受取家賃を計上する方法であり、実務的方法は、フリーレント期間は受取家賃を計上せずフリーレント期間終了後から受取家賃を計上する方法です。

 では、借主側にも理論的方法と実務的方法が認められているのでしょうか?この点について、以下で確認します。

(1) フリーレント期間開始時から支払家賃を計上―否認される可能性あり

 上記のフリーレント契約においては、中途解約が禁止されており、仮に賃貸借期間の中途で賃借人が自己の都合で解約する場合は、賃貸人は賃借人から、フリーレント期間に係る賃料相当額120万円及び解約後の未経過期間に係る賃料相当額の支払を受けることになります。
 すなわち、賃貸借期間の2年間に係る賃料相当額840万円(40万円×(24か月-3か月))は、このフリーレント契約締結時に、これを受領する権利が確定しているといえます。
 このようなケースでは、受取家賃をフリーレント期間を含む全賃貸借期間に係る賃料として、各期間に配分して収益計上すること(理論的方法)が貸主側の経理処理として相当とされています。具体的には、月額35万円(840万円÷24か月)の受取家賃をフリーレント期間開始時から計上する処理です。

 では、この取引の裏側にある借主側にも同様の経理処理が認められるのでしょうか?具体的には、賃料を支払っていないフリーレント期間開始時から月額35万円の支払家賃を計上する次のような経理処理です。

借方 金額 貸方 金額
支払家賃 35万円 未払金 35万円

 また、フリーレント期間終了後の4か月目からの経理処理は、次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
支払家賃 35万円 現金預金 40万円
未払金 5万円    

 貸主側の裏側の処理として当然認められそうに思いますが、このような借主側の経理処理は否認される可能性があります。
 2018(平成30)年6月15日裁決(この裁決事例は、フリーレント期間の賃料を無料ではなく減額するというものでした)において、国税不服審判所は、債務が確定していないなどとして損金算入を認めませんでした(国税不服審判所ホームページ・公表裁決事例「平成30年6月15日裁決」参照)。個人的には、国税不服審判所の判断には疑問が残りますが、借主側の経理処理としては否認される可能性があることに注意が必要です。

(2) フリーレント期間終了後から支払家賃を計上

 賃料を支払っていないフリーレント期間は支払家賃を計上せず、実際に賃料の支払が始まるフリーレント期間終了後から支払家賃を計上する方法です。
 経理処理は、フリーレント期間は仕訳なし、フリーレント期間終了後の4か月目から次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
支払家賃 40万円 現金預金 40万円

2.中途解約禁止条項がない場合

 フリーレント契約において、中途解約禁止条項を設けないのはあまり一般的とはいえませんが、この場合は、上記1(2)と同様に、フリーレント期間終了後から支払家賃を計上します。

フリーレント契約の受取家賃の計上時期と経理処理

 不動産賃貸におけるフリーレント契約とは、賃貸借契約開始後の当初数か月間の賃料を無料にする、あるいは減額するというものです(本記事では、無料を前提とします)。
 貸主にとっては、賃貸不動産物件の稼働率の向上が見込めるというメリットがありますが、賃料が無料であるということは、その間(フリーレント期間)の受取家賃は計上しなくてもいいのか、という疑問が生じます。
 今回は、フリーレント契約の場合の受取家賃の計上時期と経理処理(貸主側の処理)について確認します。

※借主側の処理については、本ブログ記事「注意!フリーレント契約の場合の支払家賃の計上時期と経理処理」をご参照ください。

1.中途解約禁止条項がある場合

 フリーレント契約の場合、フリーレント期間中あるいはフリーレント期間経過直後に解約されてしまうことを防止するために、中途解約禁止条項が設けられているのが一般的です。例えば、次のようなフリーレント契約です。

「賃貸借期間2年間のうち、当初3か月間の賃料(月額40万円)はゼロとするフリーレント契約において、中途解約は禁止であり、仮に賃借人の都合で解約する場合は、賃借人はフリーレント期間に係る賃料相当額120万円(40万円×3か月)及び解約後の未経過期間に係る賃料相当額(40万円×未経過期間月数)を賃貸人に支払う。」

 以下では、このフリーレント契約の内容を前提に、受取家賃の計上時期と経理処理を確認します。

(1) フリーレント期間開始時から受取家賃を計上する

 上記のフリーレント契約においては、中途解約が禁止されており、仮に賃貸借期間の中途で賃借人が自己の都合で解約する場合は、賃貸人は賃借人から、フリーレント期間に係る賃料相当額120万円及び解約後の未経過期間に係る賃料相当額の支払をうけることになります。
 すなわち、賃貸借期間の2年間に係る賃料相当額840万円(40万円×(24か月-3か月))は、このフリーレント契約締結時に、これを受領する権利が確定しているといえます。
 したがって、このようなケースでは、受取家賃はフリーレント期間を含む全賃貸借期間に係る賃料として、各期間に配分して収益計上することになります。
 具体的には、賃貸人は月額35万円(840万円÷24か月)の受取家賃をフリーレント期間開始時から計上することになり、次のように経理処理します。

借方 金額 貸方 金額
未収入金 35万円 受取家賃 35万円

 なお、フリーレント期間(3か月間)終了後の4か月目からは、次のように経理処理します。

借方 金額 貸方 金額
現金預金 40万円 受取家賃 35万円
    未収入金 5万円

※貸方・未収入金5万円=35万円×3か月÷(24か月-3か月) 

 理論的には、上記のように受取家賃を計上することが相当と考えられますが、実務的には、次の方法も認められます。

(2) フリーレント期間終了後から受取家賃を計上する

 昨今のフリーレントは、取引実態が「賃料の免除又は値引き」といえるため、会計上フリーレント期間に対応する賃料相当額を収益に計上していない場合でも、税務上認容されます(週刊税務通信No.3338)。
 したがって、フリーレント期間の3か月間は受取家賃を計上せず、フリーレント期間終了後の4か月目から月額40万円の受取家賃を21か月間計上することになります。
 経理処理は、フリーレント期間は仕訳なし、フリーレント期間終了後の4か月目から次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
現金預金 40万円 受取家賃 40万円

2.中途解約禁止条項がない場合

 フリーレント契約において、中途解約禁止条項を設けないのはあまり一般的とはいえませんが、例えば、次のようなフリーレント契約があるとします。

「賃貸借期間2年間のうち、当初3か月間の賃料(月額40万円)はゼロとするフリーレント契約において、中途解約が可能であり、解約後の未経過期間に係る賃料相当額の支払義務はないものの、賃借人の都合で解約する場合は、賃借人はフリーレント期間に係る賃料相当額120万円(40万円×3か月)を、中途解約時に賃貸人に支払う。」

 このようなケースでは、フリーレント契約の締結時に、全賃貸借期間に係る賃料相当額が確定しているとは認められませんので、当事者間の契約に従ってフリーレント期間の3か月間は受取家賃を計上せず、フリーレント期間終了後の4か月目から月額40万円の受取家賃を21か月間計上することになります。
 経理処理は、上記1(2)と同様になります。

不祥事による役員報酬の一時的な減額は定期同額給与になるか?

 会社や役員が不祥事を起こした場合に、役員がその不祥事の責任をとって役員報酬を一定期間減額するということがよく報道されています。
 例えば、不祥事が発覚した会社でそのイメージダウンを避けるために、役員が責任をとって役員報酬を6か月間30%減額するなどという場合です。
 このような場合、その減額された役員報酬は定期同額給与として損金算入できるのでしょうか?今回は、この点について確認します。

1.臨時改定事由とは?

 事業年度の中途で役員報酬の減額が行われた場合、それが臨時改定事由によるものであるときは、定期同額給与に該当するものとされています(法人税法施行令69条1項1号)。
 臨時改定事由とは、「役員の職制上の地位の変更、役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情」をいいます。
 例えば、社長が任期途中で退任したことに伴い副社長が社長に就任する場合は、一般的には、その地位及び職務内容ともに重大な変更があると認められることから、臨時改定事由に該当するといえます。
 また、合併法人の取締役が合併後も引き続き同じ地位に留まるものの、その職務内容に大幅な変更がある場合等も臨時改定事由に該当するといえます。
 なお、ここでいう「役員の職制上の地位」とは、定款等の規定又は総会若しくは取締役会の決議等により付与されたものをいい、いわゆる自称専務等はこれに該当しません。

2.臨時改定事由に該当するか?

 ここで、今回の減額事由(不祥事の責任をとる)が「その他これらに類するやむを得ない事情」に該当するか否かがポイントになります。
 役員がとるべき不祥事の責任には、例えば法令違反により行政処分を受けるなど役員個人の行為が原因となるものや、役員は直接かかわっていなくても組織ぐるみで隠ぺいや改ざんを行うなど組織の行為が原因となるものがあります。
 いずれにせよ、これらの不祥事に対する役員の責任を問うために、一定期間役員報酬を減額することは、企業慣行として定着していると考えられます。
 そのため、役員報酬を一時的に減額する理由が、企業秩序を維持して円滑な企業運営を図るため、あるいは法人の社会的評価への悪影響を避けるために、やむを得ず行われたものであり、かつ、その処分の内容が、その役員の行為に照らして社会通念上相当のものであると認められる場合には、「やむを得ない事情」に該当するものとして、減額された期間においても引き続き同額の定期給与の支給が行われているものとして取り扱って差し支えないとされています(2006(平成18)年12月 国税庁・質疑応答事例「一定期間の減額」より)。

3.自主返還された場合

 なお、国税庁・質疑応答事例「一定期間の減額」では、不祥事の責任をとるため、いったん支給した定期給与を役員が自主的に返還した場合には、その自主返還された定期給与は定期同額給与として取り扱われるとしています。この場合、自主返還された定期給与は、雑収入等で処理することとなります。

定期同額給与の類型と改定

 同族会社では、役員報酬は経営者の個人的意思により決定できることが多いと考えられるため、法人税法は役員報酬に係る諸規定を設けています。
 これは、多額の利益が見込まれる事業年度に多額の役員報酬を計上し、法人税等の負担を軽減するといったような経営者による意図的な操作を排除するためです。
 今回は、損金算入できる役員報酬のうち、定期同額給与の類型と改定について確認します。

※ 損金算入できる役員報酬には、定期同額給与、事前確定届出給与及び業績連動給与があります(同族会社にあっては、同族会社以外の法人との間にその法人による完全支配関係があるものに限り、業績連動給与の支払者とされます)。事前確定届出給与については、本ブログ記事「事前確定届出給与の届出期限と支給額の注意点」をご参照ください。

1.定期同額給与の類型

 定期同額給与とは、次に掲げる給与をいいます。

類型 根拠条文
その支給時期が1か月以下の一定の期間ごとである給与(以下「定期給与」といいます)で、その事業年度の各支給時期における支給額又は支給額から源泉税等の額(注1)を控除した金額が同額であるもの 法人税法34条1項
その事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3か月を経過する日までに改定された定期給与 法人税法施行令69条1項1号イ
その事業年度において、その法人の役員の職制上の地位の変更、職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情(以下「臨時改定事由」といいます)により改定された定期給与 法人税法施行令69条1項1号ロ
その事業年度において、その法人の経営状況が著しく悪化したことその他これに類する理由(以下「業績悪化改定事由」といいます)により改定された定期給与(その定期給与の額を減額した改定に限られます) 法人税法施行令69条1項1号ハ
継続的に供与される経済的利益のうち、その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるもの 法人税法施行令69条1項1号ニ

(注1)源泉税等の額とは、源泉徴収をされる所得税の額、特別徴収をされる地方税の額、定期給与の額から控除される社会保険料の額その他これらに類するものの額の合計額をいいます。
(注2)上表の法人税法施行令69条1項1号イ~ハに規定する定期給与が定期同額給与に該当するためには、その改定前の各支給時期における支給額が同額であること及びその改定後の各支給時期における支給額が同額であること、が必要となります。
(注3)上表の法人税法施行令69条1項1号ニに規定する経済的利益は定期同額給与の類型の一つですが、その詳細については今回の記事では省略します。

 当該事業年度の1か月以内の各支給時期に同額を支給する場合に限り定期同額給与に該当し、損金算入が可能となります(法人税法34条1項)。事業年度の中途における増額・減額がある場合や、臨時・不定期な支給の場合には、原則として定期同額給与に該当せず、損金不算入となります。
 ただし、以下の場合は、事業年度中途における改定であっても、損金算入が認められる定期同額給与に該当します(法人税法施行令69条1項1号イ~ハ)。

2.損金算入できる定期給与の改定

(1) 定時株主総会における定期給与の改定

 上記1のとおり、その事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3か月を経過する日までに株主総会等で役員報酬を改定した場合は、その改定前の各支給時期における支給額が同額である定期給与及びその改定後の各支給時期における支給額が同額である定期給与のそれぞれについて、損金算入が認められます。
 例えば、3月決算法人が5月30日に開催した定時株主総会で、代表取締役の役員報酬月額60万円を6月分から80万円に改定した場合、改定前の60万円×2か月=120万円と改定後の80万円×10か月=800万円は、全額損金算入が認められます。

 しかし、多額の利益が見込まれるため、定時株主総会開催日に遡及して増額改定する旨の決議を行い、改定前と改定後の役員報酬の差額を決算月等に別途支給した場合は、当該差額全額が損金不算入となります。
 また、臨時株主総会等において、事業年度の中途で定期給与の増額改定が決議され、当該増額改定後の各支給時期における支給額が同額であったとしても、当該増額部分は損金不算入となります。
 例えば、3月決算法人が5月30日に開催した定時株主総会で代表取締役の役員報酬の改定を行わず、10月1日に開催した臨時株主総会で役員報酬月額60万円を10月分から80万円に改定した場合、改定後の増額部分(80万円-60万円)×6か月=120万円は損金不算入となります。
 ただし、次の臨時改定事由に該当する場合は、臨時増額改定であっても損金算入が認められます。

(2) 臨時改定事由

 代表者の急逝等やむを得ない事情により、役員の職制上の地位、職務内容に重大な変更が生じた場合は、当該役員に対する定期給与の増額改定が当該事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3か月を経過する日後に行われたものであっても、定期同額給与として取り扱われます。この場合には、増額改定前の定期給与と増額改定後の定期給与のそれぞれが、定期同額給与として取り扱われます。
 例えば、3月決算法人が、代表取締役Aの急逝により10月1日に開催した臨時株主総会において、取締役Bを代表取締役に選任するとともに、Bの役員報酬月額50万円を10月分から前任者Aと同額の80万円に増額改定した場合、改定前の50万円×6か月=300万円と改定後の80万円×6か月=480万円は、全額損金算入が認められます。

(3) 業績悪化改定事由

 役員報酬の事業年度中途における改定が行われた場合は、増額改定だけではなく減額改定についても、原則として損金不算入となります。
 例えば、業績、財務状況及び資金繰りの悪化等により、事業年度中途において定期給与を減額改定した場合には、減額改定前の定期給与のうち減額改定後の定期給与を超える部分の金額は損金不算入となります。
 例えば、3月決算法人が5月30日に開催した定時株主総会で代表取締役の役員報酬の改定を行わず、10月25日に開催した臨時株主総会で、資金繰りが悪化したために役員報酬月額60万円を11月分から40万円に改定した場合、改定前の定期給与60万円のうち改定後の定期給与40万円を超える部分の金額(60万円-40万円)×7か月=140万円は、損金不算入となります。

 しかし、減額改定が業績悪化改定事由による場合は、減額改定前と減額改定後の各支給時期における支給額が同額であれば、定期同額給与として損金算入が認められます。
 例えば、3月決算法人が5月30日に開催した定時株主総会で代表取締役の役員報酬の改定を行わず、10月25日に開催した臨時株主総会で、業績悪化改定事由により役員報酬月額60万円を11月分から40万円に改定した場合、改定前の60万円×7か月=420万円と改定後の40万円×5か月=200万円は、全額損金算入が認められます。
 この業績悪化改定事由とは、「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」と規定され、経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員報酬を減額せざるを得ない事情があることをいいますので、財務諸表の数値が相当程度悪化したことや倒産の危機に瀕したことだけではなく、経営状況の悪化に伴い、第三者である利害関係者(株主、債権者、取引先等)との関係上、役員報酬を減額せざるを得ない事情が生じていることが必要です。
 具体的には、次のような場合の減額改定は、通常、業績悪化改定事由による改定に該当します。

① 株主との関係上、経営上の責任から役員報酬を減額せざるを得ない場合
② 取引銀行との借入金返済リスケジュール協議上、役員報酬を減額せざるを得ない場合
③ 取引先等からの信用を維持・確保する必要性から策定した経営改善計画に役員報酬の減額が盛り込まれた場合

控除対象外消費税額等の処理

1.控除対象外消費税額等とは

 法人又は個人事業者が、消費税等の経理方法として税抜経理方式を採用している場合、原則として納付すべき消費税額は、仮受消費税等から仮払消費税等を控除した金額となります(いわゆる消費税差額は、原則的には生じません)。
 しかし、その課税期間の課税売上高が5億円超又は課税売上割合が95%未満である場合には、仮払消費税等のうち控除対象とされない部分の消費税額(消費税差額)が発生します。これを控除対象外消費税額等といいます。
 控除対象外消費税額等が生じるのは、仕入控除税額が課税仕入れ等に係る消費税額の全額ではなく、課税売上割合に対応した部分に限られるからです。
 例えば、建物を5,500万円(うち消費税額等500万円)で取得し、その課税期間の課税売上割合が60%だとしたら、500万円×(1-60%)=200万円が控除対象外消費税額等になります。
 この控除対象外消費税額等については、以下に掲げる方法により処理します。なお、税込経理方式を採用している場合は、消費税等は資産の取得価額又は経費の額に含まれますので、控除対象外消費税額等の調整は必要ありません。

2.資産に係る控除対象外消費税額等

 資産に係る控除対象外消費税額等は、次のいずれかの方法により損金の額又は必要経費に算入します。

(1) 資産の取得価額に算入します。

(2) 次のいずれかに該当する場合は、法人については損金経理を要件としてその事業年度の損金の額に、個人事業者はその年分の必要経費に算入します。

① その事業年度又は年分の課税売上割合が80%以上であること
② 棚卸資産に係る控除対象外消費税額等であること
③ 一の資産に係る控除対象外消費税額等が20万円未満であること

(3) 上記に該当しない場合は「繰延消費税額等」として資産計上し、5年以上の期間で償却します。

① 繰延消費税額等が生じた事業年度
 損金算入限度額=繰延消費税額等×その事業年度の月数/60×1/2

②その後の事業年度
 損金算入限度額=繰延消費税額等×その事業年度の月数/60

 例えば、200万円の繰延消費税額等が生じた場合、その生じた事業年度の損金算入限度額は、200万円×12/60×1/2=20万円となります(資産を取得した事業年度は2分の1が損金となります)。
 この場合、会計上は消費税差額200万円を全額雑損失(又は租税公課)で処理することは可能ですが、法人税の計算においては別表十六(十)で損金算入限度額20万円を計算し、限度額20万円を超える額180万円については別表四で加算します。そして、次期以降5年間にわたり180万円を認容していく必要があります。

3.経費に係る控除対象外消費税額等

 経費に係る控除対象外消費税額等は、その全額をその事業年度の損金の額又はその年分の必要経費に算入します。
 ただし、法人税の計算において、交際費等に係る控除対象外消費税額等については、消費税の計算後、会計上は経費に係る分として雑損失(又は租税公課)で処理され損金経理されますが、科目は交際費とはならなくても支出した交際費等として把握し、交際費等の損金不算入の計算が必要になります。
 この場合、交際費等に係る控除対象外消費税額等の金額を、別表十五(交際費等の損金算入に関する明細書)の「支出交際費等の額の明細」欄に、交際費自体の額とは別に記載しなければなりません。
 また、課税資産を購入して寄附した場合の控除対象外消費税額等については、支出寄附金等の額として、寄附金等の損金不算入額を計算しなければなりません。
 なお、交際費等に係る控除対象外消費税額等は、以下のようになります。

(1) 個別対応方式で計算している場合

① 課税売上対応の交際費に係る税額については、控除対象外消費税額等は生じません。
② 非課税売上対応の交際費に係る税額については、その全額が控除対象外消費税額等になります。
③ 共通対応の交際費に係る税額については、交際費等のうち次の算式で計算した金額が控除対象外消費税額等になります。
 控除対象外消費税額等=共通対応の交際費に係る税額×(1-課税売上割合)

(2) 一括比例配分方式で計算している場合

 交際費等のうち、次の算式で計算した金額が控除対象外消費税額等になります。
 控除対象外消費税額等=交際費に係る税額×(1-課税売上割合)

慰安旅行費が福利厚生費となるための3要件と注意点

 福利厚生の一環として、日頃の従業員の頑張りを労うために慰安旅行を実施することがあります。福利厚生の一環として実施する慰安旅行なので、会社が負担した旅行代は当然福利厚生費になるものと経営者(または経理担当者)は考えがちですが、必ずしもそうではありません。
 今回は、慰安旅行費が福利厚生費となるための要件と注意点について確認します。

1.福利厚生費となる要件

 会社行事として行われる慰安旅行に参加することによって従業員が経済的利益を受ければ、原則としてこの経済的利益も給与と同様に所得税の課税対象になります。
 ただし、税務上の取扱いとして、会社が負担した費用が参加した従業員の給与として課税されるかどうかは、その旅行の条件を総合的に勘案して判定することとなります。
 国税庁タックスアンサーによると、慰安旅行によって従業員に供与する経済的利益の額が少額の現物給与は強いて課税しないという少額不追及の趣旨を逸脱しないものであると認められ、かつ、その旅行が次の(1)と(2)のいずれの要件も満たすものであるときは、原則として、その旅行の費用を旅行に参加した人の給与としなくてもよいことになっています。

(1) その旅行に要する期間が4泊5日(海外旅行の場合は、外国での滞在日数が4泊5日)以内であること
(2) その旅行に参加する従業員等の数が全従業員等(工場、支店等で行う場合は、その工場、支店等の従業員等)の50%以上であること

 (1)について補足すると、海外旅行の場合は4泊5日に移動日数(機内泊や船内泊)は含めません。また、(2)について補足すると、アルバイトや契約社員の方は参加比率に含めません。
 いずれにしても、この(1)(2)の要件については形式的に判断できますので、迷うことはないと思います。

 問題は、「少額の現物給与は強いて課税しないという少額不追及の趣旨を逸脱しないものであると認められ」る少額の金額はいくらなのか?ということです。
 これについて明文規定はありませんが、国税庁タックスアンサーに参考になる記載があります。タックスアンサーには、次の3つの事例が掲載されています。

[事例1]
イ 旅行期間3泊4日
ロ 費用及び負担状況 旅行費用15万円(内使用者負担7万円
ハ 参加割合100%
・・・旅行期間・参加割合の要件及び少額不追及の趣旨のいずれも満たすと認められることから原則として課税しなくてもよい

[事例2]
イ 旅行期間4泊5日
ロ 費用及び負担状況 旅行費用25万円(内使用者負担10万円
ハ 参加割合100%
・・・旅行期間・参加割合の要件及び少額不追及の趣旨のいずれも満たすと認められることから原則として課税しなくてもよい

[事例3]
イ 旅行期間5泊6日
ロ 費用及び負担状況 旅行費用30万円(内使用者負担15万円
ハ 参加割合50%
・・・旅行期間が5泊6日以上のものについては、その旅行は、社会通念上一般に行われている旅行とは認められないことから課税

 事例1と2は給与課税しなくてもよい例であり、会社負担額の7万円(1泊あたり2.33万円)と10万円(1泊あたり2.5万円)は、いずれも少額不追及の趣旨を満たす「少額の金額」とされています。
 一方、事例3は給与課税になる例ですが、旅行期間が4泊5日を超えているためであり、会社負担額の15万円(1泊あたり3万円)が少額であるか否かについては定かではありません。
 これらの事例から、3泊4日であれば7万円、4泊5日であれば10万円までは福利厚生費として処理して差し支えないと思われます。

2.慰安旅行費の注意点

 次のような場合には、慰安旅行費の会社負担額は福利厚生費になりませんのでご注意ください。

(1) 自己都合による不参加者に対し、その旅行への参加に代えて金銭を支給する場合には、不参加者のみならず参加者に対しても、その不参加者に対して支給する金銭に相当する給与の支給があったものとして課税されます。
 なお、会社の業務上の都合(商品搬入のための休日出勤等)による不参加者に対して、その旅行への参加に代えて金銭を支給する場合は、その不参加者のみが給与課税されます。
(2) 役員だけで行う旅行は役員賞与とみなされ、損金不算入となります。また、役員個人に対して給与課税されます。
(3) 取引先に対する接待、供応、慰安等のための旅行は、交際費になります。交際費が損金算入限度額を超える場合は、その超過分は損金不算入となります。

不良債権の未収利息はいつまで計上しなければならないか?

 資金を融資した場合、その貸付金に係る利息のうち支払期日が到来していないものについては、時の経過に応じて収益として計上しなければなりません。
 元本と利息は支払期日ごとに返済を受けていくことになりますが、資金を融資した相手先の経営状態が悪化し、これらの返済が滞ることがあります。
 今後も返済が滞ることが予測される場合でも、未収利息の計上は継続しなければならないのでしょうか?
 この点について、税務上の取扱いを以下で確認します。

1.法人税基本通達2-1-25

 税務上は法人税基本通達2-1-25において、法人の有する貸付金又は当該貸付金に係る債務者について次のいずれかの事実が生じた場合には、当該貸付金から生ずる利子の額(実際に支払を受けた金額を除く)のうち当該事業年度に係るものは、当該事業年度の益金の額に算入しないことができるとされています。

(1) 債務者が債務超過に陥っていることその他相当の理由により、その支払を督促したにもかかわらず、当該貸付金から生ずる利子の額のうち当該事業年度終了の日以前6月(当該事業年度終了の日以前6月以内に支払期日がないものは1年以内にその支払期日が到来したものの全額が当該事業年度終了の時において未収となっており、かつ当該期間内にその支払期日が到来したもの以外の利子について支払を受けた金額が全くないか又は極めて少額であること
(2) 債務者につき更生手続が開始されたこと
(3) 債務者につき債務超過の状態が相当期間継続し、事業好転の見通しがないこと、当該債務者が天災事故経済事情の急変等により多大の損失を蒙ったことその他これらに類する事由が生じたため、当額貸付金の額の全部又は相当部分についてその回収が危ぶまれるに至ったこと
(4) 更生計画認可の決定債権者集会の協議決定等により当該貸付金の額の全部又は相当部分について相当期間(おおむね2年以上)棚上げされることとなったこと

 これらの事例にあたる場合は、決算処理で未収利息を計上しなくてもよいこととなっています。受け取っていない、また、受け取る見込みのない利息を収益に計上して課税されることのないように注意しなければなりません。

2.法人税基本通達2-1-25の趣旨

 法人税基本通達2-1-25に掲げる未収利息の収益計上を見合わせる場合の事情は、いずれも元本そのものが不良債権化したというものであって、さらに具体的事情によっては元本自体の貸倒処理又は貸倒引当金の設定も考慮しなければならないケースです。
 このような場合にも、原則どおり未収利息の計上を強制することは実態に合いませんので、同通達により未収利息の計上見合せの特例が設けられています。