外注費か給与か…国税庁の判断基準

1.国税庁法令解釈通達に一定の判断基準あり

 その業務を他の事業者に委託(外注)することが多い建設業や運送業を営む事業者の税務調査では、外注先に支払った経費が外注費なのか給与なのかで争いが起きることがあります。
 外注先に支払った経費が給与とされると、源泉所得税の徴収漏れを指摘されるとともに消費税の仕入税額控除が否認されます。
 外注費と給与のいずれに該当するかについては判然としないことが多く、明確な線引きも難しいのですが、2009年(平成21年)12月17日の「大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて(法令解釈通達)」において次の判断基準が示されており、実務上はこれらを総合的に勘案して、外注費か給与かを判断することになります。

(1) 他人が代替して業務を遂行すること又は役務を提供することが認められるかどうか。
(2) 報酬の支払者から作業時間を指定される、報酬が時間を単位として計算されるなど時間的な拘束(業務の性質上当然に存在する拘束を除く。)を受けるかどうか。
(3) 作業の具体的な内容や方法について報酬の支払者から指揮監督(業務の性質上当然に存在する指揮監督を除く。)を受けるかどうか。
(4) まだ引渡しを完了しない完成品が不可抗力のため滅失するなどした場合において、自らの権利として既に遂行した業務又は提供した役務に係る報酬の支払を請求できるかどうか。
(5) 材料又は用具等(くぎ材等の軽微な材料や電動の手持ち工具程度の用具等を除く。)を報酬の支払者から供与されているかどうか。

 以下では、これら5点の判断基準について解説します。

2.実務上の判断基準となる5つの観点

(1) 代替性の有無

 他人が代替して業務を遂行すること又は役務を提供することが認められるかどうかという観点から、外注費と給与を区分します。
 
 雇用契約に基づく役務の提供の場合、雇用された者は自分自身が仕事をすることで、その役務の対価(給与)を受け取ることができます。
 一方、請負契約に基づく役務の提供の場合、依頼主との間で仕事の期限や代金等を決定すれば、実際の仕事は必ずしも請け負った者自身に限らず、自己が雇用する第三者に任せることで、その役務の対価(外注費)を受け取ることができます。
 つまり、役務提供者が契約当事者に限定され、他の者が当事者に代わり役務の提供をできない場合や、本人が自らの判断で第三者を使うことが認められていない場合は代替性が無いといえ、給与の該当性を強めるといえます。 

(2) 拘束性の有無

 報酬の支払者から作業時間を指定される、報酬が時間を単位として計算されるなど時間的な拘束(業務の性質上当然に存在する拘束を除く。)を受けるかどうかという観点から、外注費と給与を区分します。

 勤務する日や就業時間が決められていたり、出勤簿、タイムカード又は本人からの報告等で就業時間が管理されていたりする場合には、時間的拘束があるといえ、給与の該当性を強めるといえます。

(3) 指揮監督の有無

 作業の具体的な内容や方法について報酬の支払者から指揮監督(業務の性質上当然に存在する指揮監督を除く。)を受けるかどうかという観点から、外注費と給与を区分します。

 雇用契約の場合、雇用主が定める就業規則に従わなければならず、作業現場では監督者等が個々の作業について指揮命令をするのが一般的です。
 一方、請負契約の場合、仕事の期限さえ守れば途中における進行度合いや手順等について、依頼主から特に指図を受けることがないのが通常です。
 つまり、仕様書、設計図、指示書等の交付により作業の具体的内容や方法が指示されており、業務の遂行が使用者の具体的な指揮命令を受けて行われている場合は、給与の該当性を強めるといえます。

 なお、「業務の性質上当然に存在する指揮監督を除く」とは、例えば運送業の場合、運送物品、運送先及び納入時間の指定は業務の性質上当然であり、これらが指定されているからといって指揮監督の有無に関係するものではないことをいいます。

(4) 報酬請求権の有無

 まだ引渡しを完了しない完成品が不可抗力のため滅失するなどした場合において、自らの権利として既に遂行した業務又は提供した役務に係る報酬の支払を請求できるかどうかという観点から、外注費と給与を区分します。

 請負契約の場合、引渡しを終えていない完成品が不可抗力(災害等)のため滅失して期限までに依頼主に納品できない場合は、一般的には報酬の支払を受けることができません。
 一方、雇用契約の場合、労務の提供を行えば結果に関係なく報酬を請求できます。
 給与が労務の提供自体に支払われるのに対し、外注費は労務の提供ではなく仕事の完成に対して支払われます。
 つまり、役務提供の結果による較差が少なく、業務の量に応じて報酬が支払われる場合は、給与の該当性を強めるといえます。 

(5) 材料又は用具等の供与の有無

 材料又は用具等(くぎ材等の軽微な材料や電動の手持ち工具程度の用具等を除く。)を報酬の支払者から供与されているかどうかという観点から、外注費と給与を区分します。

 雇用契約の場合は雇用主が材料や用具等を役務提供者に支給しますが、請負契約の場合は役務提供者が材料や用具等を自分で用意するのが一般的です。
 つまり、職務遂行に当たり必要な旅費、設備、備品等の費用について、原則として役務提供者が負担する場合は、外注費の該当性を強めるといえます。

 なお、「くぎ材等の軽微な材料や電動の手持ち工具程度の用具等を除く」とは、例えば据え置き式の工具など高価な器具を所有するなど、その経費の多寡も判定要素となることをいいます。

法人向け節税保険の改正後の経理処理

1.改正案の概要

 国税庁は2019年(平成31年)4月11日、法人向けの節税保険に対応した法人税基本通達の改正案を公表しました。

 改正案では、ピーク時解約返戻率(最高解約返戻率)が50%以下の定期保険等に係る支払保険料については、契約年齢や保険期間の長さによらず全額損金算入が可能です。
 一方、ピーク時解約返戻率が50%超の定期保険等に係る支払保険料については、ピーク時解約返戻率に応じた一定の金額を資産計上し、残額を損金算入することになります。

ピーク時解約返戻率 資産計上期間 資産計上額(残額は損金)
50%以下 なし 全額損金算入
50%超70%以下 保険期間の前半4割相当の期間 支払保険料の4割
70%超85%以下 支払保険料の6割
85%超 保険期間からピーク時解約返戻率となる期間等の終了日 支払保険料×ピーク時解約返戻率の7割(保険期間開始日から10年経過日までの期間は9割)

 今回は、改正案に基づく支払保険料の経理処理を、具体的な数値を用いて確認していきます。

2.ピーク時解約返戻率に応じた経理処理

(1) ピーク時解約返戻率が50%超70%以下の場合

① 経理処理の概要
・資産計上期間(保険期間の前半4割)は支払保険料の4割資産計上6割損金算入
・資産取崩期間(保険期間の7.5割経過後)は資産計上額を取崩し
・資産計上期間と資産取崩期間の間の期間(保険期間の3.5割)は全額損金算入
 ただし、被保険者1人当たりの年換算保険料相当額(保険期間中の支払保険料総額÷保険期間の年数)が20万円以下(複数の定期保険等に加入の場合は合計額)であれば、全期間を通じて全額損金算入します。
※改正案(パブリックコメント原案)では、上記のように被保険者1人当たりの年換算保険料相当額が20万円以下とされていましたが、2019年(令和元年)6月28日に国税庁ホームページで公表された「法人税基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)」では30万円以下とされました。

4割期間 3.5割期間 2.5割期間
4割資産6割損金 全額損金 全額損金+資産取崩

② 経理処理
 例えば、40歳契約・100歳満期・年払保険料100万円・ピーク時解約返戻率70%の場合の仕訳は次のとおりです。

イ.資産計上期間(4割期間):40歳~64歳

借方 金額 貸方 金額
支払保険料 60万円 現金預金 100万円
前払保険料 40万円    

ロ.イとハの間の期間(3.5割期間):65歳~85歳

借方 金額 貸方 金額
支払保険料 100万円 現金預金 100万円

ハ.資産取崩期間(2.5割期間):86歳~100歳

借方 金額 貸方 金額
支払保険料 164万円 現金預金 100万円
    前払保険料 64万円

(2) ピーク時解約返戻率が70%超85%以下の場合

① 経理処理の概要
・資産計上期間(保険期間の前半4割)は支払保険料の6割資産計上4割損金算入
・資産取崩期間(保険期間の7.5割経過後)は資産計上額を取崩し
・資産計上期間と資産取崩期間の間の期間(保険期間の3.5割)は全額損金算入

4割期間 3.5割期間 2.5割期間
6割資産4割損金 全額損金 全額損金+資産取崩

② 経理処理
 例えば、40歳契約・100歳満期・年払保険料100万円・ピーク時解約返戻率85%の場合の仕訳は次のとおりです。

イ.資産計上期間(4割期間):40歳~64歳

借方 金額 貸方 金額
支払保険料 40万円 現金預金 100万円
前払保険料 60万円    

ロ.イとハの間の期間(3.5割期間):65歳~85歳

借方 金額 貸方 金額
支払保険料 100万円 現金預金 100万円

ハ.資産取崩期間(2.5割期間):86歳~100歳

借方 金額 貸方 金額
支払保険料 196万円 現金預金 100万円
    前払保険料 96万円

(3) ピーク時解約返戻率が85%超の場合

① 経理処理の概要
・資産計上期間は、保険期間の当初10年間は支払保険料の「ピーク時解約返戻率×9割」、それ以降(※)は支払保険料の「ピーク時解約返戻率×7割」を資産計上
・解約返戻金額が最も高くなる時期(返戻金額ピーク)から資産計上額を取崩し
・資産計上期間と資産取崩期間の間の期間は全額損金算入
(※)「それ以降」の期間とは、10年経過後、「解約返戻率ピーク」又は「年間の解約払戻金の増加額が年換算保険料相当額に対して70%以下になるまで」のいずれか遅い方までの期間です。

当初10年間 それ以降 間の期間 取崩期間
「ピーク時解約返戻率×9割」を資産計上

ピーク時解約返戻率×7割」を資産計上

全額損金 全額損金+資産取崩

② 経理処理
 例えば、40歳契約・100歳満期・年払保険料100万円・ピーク時解約返戻率90%の場合の仕訳は次のとおりです。

イ.資産計上期間(当初10年間):40歳~50歳

借方 金額 貸方 金額
支払保険料 19万円 現金預金 100万円
前払保険料 81万円    

ロ.資産計上期間(それ以降):51歳~72歳

借方 金額 貸方 金額
支払保険料 37万円 現金預金 100万円
前払保険料 63万円    

ハ.間の期間(返戻金額ピークまで):73歳~91歳

借方 金額 貸方 金額
支払保険料 100万円 現金預金 100万円

ニ.資産取崩期間:92歳~100歳

借方 金額 貸方 金額
支払保険料 344万円 現金預金 100万円
    前払保険料 244万円

※資産計上期間(それ以降)の考え方

経過年数 支払総保険料 解約返戻金 解約返戻率 解約返戻金の増加率
1年 100万円 66.4万円 66.4%  
2年 200万円 158.8万円 79.4% 92.4%
24年 2,400万円 2,272.8万円 94.7% 96.7%
25年 2,500万円 2,369.1万円 94.8% 96.3%
26年 2,600万円 2,447万円 94.1% 77.9%
27年 2,700万円 2,523.6万円 93.5% 76.6%
28年 2,800万円 2,599.4万円 92.8% 75.8%
29年 2,900万円 2,674.4万円 92.2% 75.0%
30年 3,000万円 2,748万円 91.6% 73.6%
31年 3,100万円 2,820万円 91.0% 72.0%
32年 3,200万円 2,891.1万円 90.3% 71.1%
33年 3,300万円 2,960.1万円 89.7% 69.0%
34年 3,400万円 3,026.9万円 89.0% 66.8%
…   
59年 5,900万円 1,781.8万円 30.2% -901.8%
60年 6,000万円 0 0.0% -1781.8

経過年数25年で解約返戻率のピーク(94.8%)を迎える。
経過年数33年で年間の解約返戻金の増加額が年換算保険料相当額に対して70%以下になる((2,960.1万円-2,891.1万円)÷100万円=69.0%)。
25年と33年のいずれか遅い方は33年なので、72歳まで支払保険料の一部を資産計上する。

法人向け節税保険の改正後の税務取扱い

1.改正の背景

 国税庁は、2019年(平成31年)4月11日に「法人税基本通達の制定について」(法令解釈通達)等の一部改正案の意見募集(パブリックコメント)を開始しました(意見募集の受付締切日は同年5月10日)。

 これまで法人が支払う定期保険等の保険料については、定期保険について規定した法人税基本通達に加えて、商品グループ(長期平準定期保険、逓増定期保険、がん保険などのいわゆる第三分野保険)ごとの個別通達で税務取扱いが規定されてきました。

 しかし、保険会社各社の商品設計の多様化や長寿命化などにより、商品の実態と税務取扱いのルールが乖離してきていることから、商品の実態に合わせてピーク時解約返戻率(最高解約返戻率)に基づくルールを策定することになりました。

 また、商品グループごとの税務取扱いが規定されている個別通達を廃止し、単一的な資産計上ルールが新設されることになりました。

 今回の改正が行われる背景として、保険料に含まれる前払部分の割合が挙げられます。
 保険期間が長期にわたる定期保険や保険期間中に保険金額が逓増する定期保険は、その保険期間の前半において支払う保険料の中に相当多額の前払部分の保険料が含まれており、中途解約すると、その前払部分の保険料の多くが返戻されます。
 このような商品の実態に合わせてピーク時解約返戻率に応じて保険料の損金算入を制限しないと、課税所得の適正な期間計算が損なわれるからです。

2.改正の概要

(1) 対象となる保険商品

 以下に該当する保険商品は、今回の改正の対象となります。

① 契約形態:法人契約(被保険者は役員又は従業員)、個人事業主契約(被保険者は従業員)
② 保険期間:3年以上
③ 保険種類:定期保険、第三分野保険
※ 支払保険料が給与とならないもの(受取人が法人の契約など)

(2) ピーク時解約返戻率に応じた取扱い

 現行の個別通達は、保険期間や被保険者の加入年齢に着目して支払保険料の一部を資産計上する仕組である一方、新設の基本通達は、ピーク時解約返戻率に着目して資産計上する仕組となっています。

 ピーク時解約返戻率に基づいて資産計上する理由について、国税庁は次のように説明しています。

 「支払保険料に含まれる前払部分の保険料の額は、保険契約者には通知されず、把握できないことから、その金額を資産計上することは極めて困難となります。そこで、保険契約者が把握可能な指標で、前払部分の保険料の累積額に近似する解約返戻金に着目し、解約返戻率(保険契約時において契約者に示された解約返戻金相当額について、それを受けることとなるまでの間に支払うこととなる保険料の額の合計額で除した割合をいいます。)に基づいて資産計上すべき金額を算定することが、客観的かつ合理的と考えられます。また、毎年の解約返戻率の変動に伴い資産計上割合を変動させることは煩雑であり、その平均値などを求めることも困難であることから、特定可能な最高解約返戻率を用いて資産計上割合を設定するのが計算の簡便性の観点から相当です。」

 具体的な保険料の取扱いは、ピーク時解約返戻率が50%以下の場合は全額損金算入となり、50%超(保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれる)の場合は、「50%超85%以下」と「85%超」でその取扱いが異なります(下表参照)。

ピーク時解約返戻率 資産計上期間 資産計上額(残額は損金)
50%以下 なし 全額損金算入
50%超70%以下 保険期間の前半4割相当の期間 支払保険料の4割
70%超85%以下 支払保険料の6割
85%超 保険期間開始日からピーク時解約返戻率となる期間等の終了日 支払保険料×ピーク時解約返戻率の7割(保険期間開始日から10年経過日までの期間は9割)

(3) 既存契約分への遡及適用はない

 適用時期については、改正案で「2019年●月●日(改正通達の発遣日)以後の契約に係る定期保険等の保険料について適用される」ことが示されており、同日前の既存契約分への遡及適用はないようです。

※改正後の具体的な経理処理については、本ブログ記事「法人向け節税保険の改正後の経理処理」を参照してください。

法人設立届出書に登記事項証明書の添付は不要になったけれども…

1.法人設立時の届出書と提出期限

 法人を設立した際には、様々な届出書等の提出が必要です。中でも重要なのは、「青色申告の承認申請書」です。

 法人の設立初年度の青色申告の承認申請書は、設立の日以後3か月を経過した日と当該事業年度終了の日とのいずれか早い日の前日までに税務署に提出しなければなりません。
 提出を失念した場合には、青色欠損金の繰越しや租税特別措置法に規定されている特別償却・特別控除などの適用を受けることができません。

 その他、法人設立時に税務署に提出する届出書には以下のものがあります(カッコ内は提出期限)。

(1) 設立届出書(設立登記の日から2か月以内)
(2) 棚卸資産の評価方法の届出書、有価証券の評価方法の届出書、減価償却資産の償却方法の届出書(設立後最初に到来する確定申告期限)
(3) 給与支払事務所等の開設届出書(事務所開設日から1か月以内)

2.法人設立届出書等の登記事項証明書は添付省略可

 設立届出書も法人設立時の届出書のひとつですが、2017年度(平成29年度)税制改正において、企業が活動しやすいビジネス環境整備を図る観点から、次のとおり手続きの簡素化措置が講じられました。

(1) 法人の設立・解散・廃止などの届出書等において添付が必要とされていた「登記事項証明書」
(2) 税務署からの求めにより、添付していた「登記事項証明書」

については、2017年(平成29年)4月1日以後、その添付が不要となりました。

3.登記事項証明書の添付は不要になったはずなのに・・・

 上述のように2017年度(平成29年度)改正により、法人設立届出書等には登記事項証明書の添付が不要になりました。

 この度、新規の顧問先について法人設立届出書を提出する機会があったのですが、税務署の対応は上記と異なるものでした。
 新様式の法人設立届出書の「添付書類等」の欄には、これまであった「登記事項証明書」の記載がなくなっていました。
 たしかに2017年度(平成29年度)改正を反映したものとなっていたのですが、念のため税務署(大阪府内の税務署です)に問い合わせてみました。
 すると、「法人番号の導入で法人の存在は確認できるのですが、代表者等の確認のために登記事項証明書の添付をお願いします」とのことでした。

 改正では登記事項証明書の添付はしなくてもよいことになりましたが、実務の現場ではまだまだ登記事項証明書が必要のようです。

2019年(平成31年)4月1日以後に適用開始される税制改正項目

 今日から2019年度(平成31年度)が始まります。新元号も「令和」に決まりましたので、2019年5月1日以降の和暦は「令和」と表記します。

 2019年度(平成31年度)税制改正大綱は、2018年(平成30年)12月14日に発表され同年12月21年に閣議決定されました。
 今回は、この2019年度(平成31年度)税制改正項目と2018年度(平成30年度)以前の税制改正項目のうち、新年度から適用開始される項目(創設、改正、延長)について、法人税、所得税、消費税の税目別に整理します。

1.法人税

 2019年(平成31年)4月1日以後に適用開始される項目(創設、改正、延長)のうち、主要な項目とその概要は、次のとおりです。

(1) 創設される項目

① 防災・減災設備の特別償却制度

 改正中小企業等経営強化法施行日から2021年(令和3年)3月31日までに、青色申告書を提出する中小企業者のうち中小企業等経営強化法の認定を受けたものが一定の防災・減災設備等を取得等した場合は、取得価額の20%の特別償却が可能となります。

② 法人が有する仮想通貨に係る整備

 2019年(平成31年)4月1日以後終了事業年度分から、法人が期末に保有する仮想通貨について、時価法等により評価損益を計上等することとされます。

(2) 改正される項目

① 研究開発税制の見直し

 試験研究を行った一定のベンチャー企業の税額控除限度額が25%から40%に引き上げられます。
 オープンイノベーション型(特別試験研究費の額に係る税額控除制度)における税額控除上限が、法人税額の5%から10%に引き上げられます。

② みなし大企業の範囲の見直し

 100%グループ法人内の複数の大法人(資本金の額又は出資金の額が5億円以上である法人等)に発行済株式の全部を直接・間接に保有されている法人も、みなし大企業の範囲を決める大規模法人に該当することになります。

③ 業績連動給与の手続き要件の見直し

 「業務執行役員が報酬委員会等の委員ではないこと」の要件が除外等されます(経過措置あり)。

④ 地域未来投資促進税制の見直し

 一定の要件を満たす場合は、機械装置及び器具備品の特別償却率を40%から50%に、税額控除率を4%から5%にそれぞれ引き上げられます。

(3) 延長される項目

① 中小企業者等の法人税の軽減税率特例

 中小企業者等に対する法人税の軽減税率15%(年800万円以下の所得に対する税率。本則は19%)の特例が、2021年(令和3年)3月31日まで2年延長されます。

② 中小企業向け設備投資減税

 中小企業投資促進税制、商業・サービス業・農林水産業活性化税制、中小企業経営強化税制について、2021年(令和3年)3月31日まで2年延長されます(本ブログ記事「税制改正による2019年4月1日以降の設備投資税制」を参照)。

※ 2021(令和3)年度税制改正で、中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制の見直しが行われています。改正内容については、本ブログ記事「令和3年度改正後の中小企業投資促進税制」及び「令和3年度改正後の中小企業経営強化税制」をご参照ください。なお、商業・サービス業・農林水産業活性化税制は、適用期限(2021(令和3)年3月31日)の到来をもって廃止されています。

2.所得税

 2019年(平成31年)4月1日以後に適用開始される項目(改正)のうち、主要な項目とその概要は、次のとおりです。

(1) 改正される項目

① 住宅ローン控除の拡充等

 消費税率が2019年(令和1年)10月1日以降、8%から10%に引き上げられます。
 これに伴い、消費税率10%が適用される住宅取得等のうち2019年(令和1年)10月1日から2020年(令和2年)12月31日までに取得等する住宅については、現行10年の控除期間が3年延長されて13年間控除できるようになります。

② 空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例の延長等

 被相続人から相続した居住用家屋等の譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例の適用要件が、次のように緩和されます。

イ.被相続人が介護保険法に規定する要介護認定等を受け、かつ相続の開始の直前まで老人ホーム等に入居していたこと

ロ.被相続人が老人ホーム等に入所をしたときから相続の開始の直前まで、その家屋について、その者による一定の使用がなされ、かつ事業の用、貸付の用又はその者以外の者の居住の用に供されていたことがないこと

 上記要件を満たす場合は、相続の開始直前まで被相続人が対象の家屋を居住の用に供していたものとみなされ、被相続人が相続の開始直前に老人ホーム等に入居している場合でも、特例を受けることができます(2019年(平成31年)4月1日以降の譲渡に適用されます)。

3.消費税

 2019年(平成31年)4月1日以後に適用開始される項目(改正)のうち、主要な項目とその概要は、次のとおりです。

(1) 改正される項目(2019年度(平成31年度)改正)

① 輸出物品販売場制度の見直し

 既に輸出物品販売場の許可を受けている事業者に限り、臨時販売場での免税販売が認められます。2019年(令和1年)7月1日から適用されます。

② 金地金等の密輸に対応するための仕入税額控除制度の見直し

 2019年(平成31年)4月1日以降、密輸と知りながら行った課税仕入れの仕入税額控除が認められないほか、本人確認書類の写しの保存が要件に加わります。
 本人確認書類の写しの保存要件は、2019年(令和1年)10月1日以後に行う課税仕入れから適用されます。

(2) 改正される項目(2018年度(平成30年度)以前改正)

 2019年(令和1年)10月1日以降、消費税率が8%から10%に引き上げられます。
これに伴い、軽減税率制度(概要は省略)、区分記載請求書等保存方式(概要は省略)、簡易課税制度の事後選択特例、簡易課税制度のみなし仕入率の見直しが行われます。

① 簡易課税制度の事後選択特例

 「簡易課税制度選択届出書」を提出した課税期間から同制度を適用できる時限的措置です。
 2019年(令和1年)10月1日から2020年(令和2年)9月30日までの日の属する課税期間の末日までに簡易課税制度選択届出書を提出すれば適用されます。

② 簡易課税制度のみなし仕入率の見直し

 2019年(令和1年)10月1日以降、第3種事業である農業・林業・漁業のうち、軽減税率が適用される飲食料品の譲渡を行う事業が第2種事業とされ、そのみなし仕入率は80%が適用されます。

監査役の報酬を取締役会で決めることはできない

 取締役と監査役の報酬上限を株主総会で決定し、個々の配分については取締役会で決定している会社があるとします。
 取締役の報酬についてはこれでいいのですが、監査役の報酬については取締役会で決定することはできません。

 会社法第387条1項には「監査役の報酬等は、定款にその額を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。」とあります。
 定款で監査役の報酬を定めている会社はあまりないと思いますので、監査役の報酬は株主総会の決議によって定めることになります。
 これは、監査役の報酬を取締役会が決定すると、監査役の独立性に影響を及ぼすことになるからです。

 また、会社法第387条2項には「監査役が2人以上ある場合において、各監査役の報酬等について定款の定め又は株主総会の決議がないときは、当該報酬等は、前項の報酬等の範囲内において、監査役の協議によって定める。」とあります。
 監査役の報酬上限を株主総会で決定した場合でも、個々の報酬については取締役会で決めることはできず監査役の協議で決めることになります。

ゴールデンウィーク10連休と4月決算法人の前払保険料

1.口座振替を振込に変更して対応

 今年(2019年)のゴールデンウィークは、4月27日(土)から5月6日(月)までの10連休となります。そのため、生命保険料等の口座振替日が4月27日(土)以降に設定されている場合、金融機関の口座からの引落し日は5月7日(火)となります。

 そこで、税務上注意しなければならないのは、4月中に支払ったことが損金算入の要件となる前払費用です。

 前払費用は支払った日の属する事業年度の損金の額に算入できることとされており(法人税基本通達2-2-14)、例えば、前払保険料、前払家賃、前払賃借料などがあります。

 これらの前払費用は、4月決算法人の場合、4月中に支払わないと損金算入できません。特に生命保険料については、節税対策として1年分を前払いしている法人も多いものと思われますので、損金算入できなかったとしたら多大な影響を損益に与えることになります。
(短期前払費用の損金算入要件等については、本ブログ記事「短期前払費用の損金算入の注意点」を参照して下さい)

 日本生命、住友生命、三井生命、オリックス生命など、口座振替日が27日となっている生命保険会社は多いです。このようなケースでは、口座振替を振込に変更して4月中に支払うなどの対応が必要です。

2.倒産防止共済は未払計上で損金算入可

 中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)の掛金の口座振替日は毎月27日となっています。 

 この件に関して、独立行政法人中小企業基盤整備機構より、税務上の取扱いが加入者に発信され、「毎月口座振替により納付している掛金については、5月7日に引き落とされた掛金が会計上、未払い計上をしているのであれば、税務上もその未払いとなっている掛金の損金算入が認められる」とされています。
 また、毎期1年分の掛金を口座振替で前納をしている場合も同様とされております。

 つまり、4月決算法人において引き落としが5月7日であっても未払計上することによって当該年度に損金算入が可能なのは、①毎月、口座振替で納付している掛金、②毎期、口座振替で1年分を前納している場合の掛金、ということです。

 なお、既契約者が毎期でなく、新たに4月振替で前納をする場合は、3月に申出を行い口座振替をする必要があります。
(倒産防止共済の損金算入要件等については、本ブログ記事「中小企業倒産防止共済掛金の損金算入要件等」を参照して下さい。)

ピーク時の解約返戻率が50%超の定期保険等の税務取扱いの見直し

 2019年(平成31年)2月13日に国税庁から各生命保険会社に対して、「法人契約の定期保険等の税務取扱について見直しを検討している」旨の連絡がありました。
 これを受けて、翌14日から大手生命保険会社をはじめ、他の生命保険会社も当該商品の販売を一斉に停止しました。

1.見直しの具体的な内容は?

 今回、税務取扱の見直しの対象になったのは、「ピーク時の解約返戻率が50%超」の法人契約の定期保険等です。
 これに該当する保険商品は、支払保険料の全額又は一部が損金算入でき、かつ、ピーク時の解約返戻率が80%超に設定されており、中途解約すれば、払込保険料の多くを解約返戻金として受け取ることができるタイプのものです(今回の見直しの対象となった保険商品による節税と税務上のリスクについては、本ブログ記事「『低解約返戻金型逓増定期保険』の節税の仕組みと税務上のリスク」を参照)。

 現時点では検討段階であるため、具体的な改正内容や改正時期については未定とのことですが、これらの保険契約にかかる支払保険料の経理処理について、損金算入できる金額が縮小される方向性が示されています。 

2.既契約の保険料の経理処理は?

 今回の見直しが、既契約の保険商品の経理処理にも及ぶのかどうかについては、現時点では不明です。

 2008年(平成20年)の逓増定期保険、2012年(平成24年)のがん保険の改正の際は、通達改正日以降の新契約が対象となっており、既契約については従来の経理処理が認められました。

 しかし、1996年(平成8年)の逓増定期保険に関する通達改正の際は、既契約であっても通達改正日以降に払い込む保険料から影響する取扱いとなりました。

※国税庁は2019年(平成31年)4月11日に、節税保険に対応した法人税基本通達の改正案を公表しました。改正案については、本ブログ記事「法人向け節税保険の改正後の税務取扱い」を参照してください。

税制改正による2019年4月1日以降の設備投資税制

 中小企業者等の設備投資を引き続き促進するため、中小企業投資促進税制、商業・サービス業・農林水産業活性化税制及び中小企業経営強化税制について、次のような改正が行われました(2019年度(平成31年度)税制改正)。

※ 2021(令和3)年度税制改正で、中小企業投資促進税制に商業・サービス業・農林水産業活性化税制を盛り込む形で制度を一本化した上で、中小企業投資促進税制の適用期限が2023(令和5)年3月31日まで延長されました。なお、商業・サービス業・農林水産業活性化税制は適用期限(2021(令和3)年3月31日)の到来をもって廃止されました。改正内容等については、本ブログ記事「令和3年度改正後の中小企業投資促進税制」をご参照ください。

1.中小企業投資促進税制

(1) 制度概要

 この制度は、青色申告書を提出する中小企業者等(従業員数1,000人以下の個人事業主を含む)が、新品の機械装置等を取得等し指定事業の用に供した場合に、その指定事業の用に供した日を含む事業年度において、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除が選択適用できるというものです( ただし、資本金3,000万円超1億円以下の法人は、税額控除の適用はありません)。

(2) 改正内容

 この制度については、適用期限が2021年(平成33年)3月31日まで2年延長されました。

 中小企業投資促進税制については、本ブログ記事「中小企業等経営強化法の認定が不要の設備投資税制」を参照して下さい。 

2.商業・サービス業・農林水産業活性化税制

(1) 制度概要

 この制度は、認定経営革新等支援機関等(認定を受けた税理士、公認会計士、商工会議所等)から経営改善に関する指導及び助言を受けた青色申告書を提出する中小企業者等(従業員数1,000人以下の個人事業主を含む)が、新品の経営改善に資する器具備品や建物附属設備を導入した場合に、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除が選択適用できるというものです(資本金3,000万円超1億円以下の法人は、税額控除の適用はありません)。

(2) 改正内容

 この制度については、経営改善設備の投資計画の実施を含む経営改善により、売上高又は営業利益の伸び率が2%以上となる見込みであることについて認定経営革新等支援機関等の確認を受けることを適用要件に加えた上で、適用期限が2021年(平成33年)3月31日まで2年延長されました。
 この改正は、2019年(平成31年)4月1日以後に取得等をする経営改善設備に適用されます。
 なお、同日前に交付を受けた経営改善指導助言書類に係る経営改善設備のうち同年9月30日までに取得等をしたものについては、上記の確認を受けることを不要とする経過措置が講じられます。

 商業・サービス業・農林水産業活性化税制については、本ブログ記事「中小企業等経営強化法の認定が不要の設備投資税制」を参照して下さい。 

3.中小企業経営強化税制

(1) 制度概要

 この制度は、青色申告書を提出する中小企業者等(従業員1,000人以下の個人事業主を含む)が、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき一定の新品設備を取得し指定事業の用に供した場合、即時償却又は10%の税額控除(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)を選択適用できるというものです。

(2) 改正内容

 この制度については、特定経営力向上設備等の範囲の明確化及び適正化を行った上で、適用期限が2021年(平成33年)3月31日まで2年延長されました。

「特定経営力向上設備等の範囲の明確化及び適正化」とは、具体的には、2分の1超の売電を見込む太陽光発電設備を対象設備から除外することを意味します。

 全量売電を目的とした太陽光発電設備は中小企業経営強化税制の対象になりませんが、発電した電気の一部を指定事業に使用(例えば自社の製造工場で使用)し、余った電気を売電(余剰売電)する場合は対象となります。
 ところが、最近では、太陽光発電設備の敷地に自動販売機を設置し、そこにわずかな電気を使うことで形式的に指定事業に係る要件を満たすといった、制度趣旨に反するような事例がみられるようになったことから、2分の1超の売電を見込む設備については対象設備から除外されることとなりました。

 また、売電を予定している場合には、経営力向上計画の認定申請時に一定の書類(発電の用に供する設備の概要や当該設備による発電量等の見込みを記載)の添付が義務付けられました。

 中小企業経営強化税制については、本ブログ記事「中小企業等経営強化法の認定が必要な設備投資税制」を参照して下さい。

使用人賞与を未払計上する場合の注意点

1.損金算入の要件

 利益が出ている法人では、決算対策として使用人賞与を未払計上することがあります(いわゆる決算賞与です)。
 この決算賞与を損金算入するためには、以下の賞与の類型に応じて、それぞれの要件を満たすことが必要です。

(1) 支給予定日がすでに到来している賞与

  就業規則等で定められている支給予定日が到来している賞与については、次の要件を満たす必要があります。

① 使用人に支給額の通知をしていること
② その支給予定日又はその通知をした日の属する事業年度においてその支給額につき損金経理していること

 上記2要件を満たす使用人賞与については、支給予定日又は通知日のいずれか遅い日の属する事業年度に損金算入することができます。
 使用人賞与については、実際に支給をした日の属する事業年度に損金算入するのが原則ですが、この規定はその例外として、内国法人が資金繰りが悪化している等の事情で労働協約又は就業規則により定められている支給予定日が到来していながら賞与が未払状態になっている場合には、たとえ未払であっても損金の額に算入することを認めるものです。

(2) 翌期の1か月以内に支払う賞与

 翌期に支給する使用人賞与については、次の要件を満たす必要があります。

① 支給額を各人別に、かつ、全員に通知をしていること
② その支給額につき①の通知をした日の属する事業年度 終了の日の翌日から1か月以内に賞与を支給すること
③ その支給額につき①の通知をした日の属する事業年度において損金経理をしていること

 上記3要件を満たす使用人賞与については、通知日の属する事業年度に損金算入することができます。
 一般に、賞与はその支給額を通知するのとほぼ同時に支給されるのが慣行となっているものの、事業年度末において各人別に支給額が通知され、たまたま支給が遅れているような場合にまで一切損金算入することを認めないのは適当でないことから、一定範囲で通知をした日の属する事業年度においても損金の額に算入することを認めた上で、取扱いの統一性を確保し恣意性を排除する観点から、上記3要件が規定されています。

2.決算賞与の留意点

 決算賞与を未払計上するにあたっての留意点は以下のとおりです。

(1) 使用人賞与の額には、使用人兼務役員に対して支給する賞与のうち使用人としての職務に対応する部分の金額が含まれます。

(2) 例えば「基本俸給×〇か月×業績割合」などのような支給額の算式を通知しても、支給額を通知したことにはなりません。業績割合が確定していないため、支給額も決定したものとはいえないためです。
 また、「基本俸給×〇か月」などのような支給額の算式は、使用人自身が支給額を計算できますが、法令上はあくまでも「支給額」の通知を求めていますので、具体的な支給額を通知することが望ましいといえます。

(3) 税務調査では、個々の使用人に対して実際に通知されたか否かが確認事項となりますので、すべての使用人別に書面やメールで支給額を通知して証拠資料を残しておくことが必要です。

(4) 所得拡大促進税制の適用にあたって決算賞与の未払計上によって賃金要件を充足している場合、税務調査で決算賞与の損金算入が否認されると所得拡大促進税制の適用も否認されてしまうリスクがあります。

※ 所得拡大促進税制は、2022(令和4)年4月1日以降「賃上げ促進税制」に呼称が改められ、適用要件などの見直しが行われています。賃上げ促進税制の詳細については、本ブログ記事「中小企業者等の賃上げ促進税制《令和4年4月1日~令和6年3月31日開始事業年度》」をご参照ください。