不足額給付の続報-対象者判定のためのフローチャート

 兵庫県宝塚市では、2024(令和6)年8~10月に、定額減税しきれないと見込まれる方へ給付金(調整給付)が支給されました
 調整給付は2023(令和5)年の課税情報に基づき算定されていましたので、2024(令和6)年分所得税や定額減税の実績額が確定した際に、調整給付に不足が生じる方がいます。
 また、青色事業専従者など、税制度上定額減税の対象外であった方もいます。

 これらの方が定額減税を補足する給付金(不足額給付)の対象となるか否かについては、本ブログ記事「定額減税調整給付金(不足額給付)の対象となる人の具体例と給付額の計算例」、「所得税・住民税が非課税でも青色事業専従者等は定額減税調整給付金(不足額給付)の対象となる!」において詳細を記載しています。

 2025(令和7)年7月23日に、宝塚市のホームページにおいて不足額給付に関する情報が更新され、不足額給付の対象となるか否かを判定するためのフローチャート(下図)が公表されました。

出所:宝塚市ホームページ

 
 宝塚市では、不足額給付の対象者には、2025(令和7)年8月下旬に市から書面が送付されます
 申請受け付けは、2025(令和7)年9月頃から開始される予定です

 なお、不足額給付の対象者のうち、転入者(2024(令和6)年1月2日~2025(令和7)年1月1日に宝塚市へ転入した方)については、転入前の自治体で発行された調整給付支給要件確認書(調整給付額の算出根拠となる資料)を添えて、2025(令和7)年9月~10月末(予定)にご自身で申し出・申請を行う必要があります。

 転入者については、当初調整給付に関する情報を宝塚市で把握できず、対象者を特定できないことから宝塚市から通知書面などは送付されませんのでご注意ください。

 宝塚市における不足額給付の申請手続き等については、「不足額給付の申請受付開始時期と提出書類(兵庫県宝塚市の場合)」をご参照ください。

※ 2025(令和7)年9月1日に宝塚市のホームページが更新されました。それによると、8月29日に支給事前通知書(お知らせ)・確認書が発送され、9月1日~5日に順次お手元に届く予定とのことです。
 なお、一部の方については支給額の算定に時間を要しているため、9月中旬頃をめどに確認書が送付されるようです。
 黄色の封筒で届きますので、届き次第、内容の確認をしてください。

毎年7月10日は事務手続き期限の集中日

 毎年7月10日は、事務手続きの期限が集中します。代表的なものを挙げると、労働 保険(労災保険・雇用保険)の年度更新、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の算定基礎届、納期の特例(源泉所得税)、新年度の特別徴収住民税の納付開始などがあります。

 以下では、これらの手続きの概要について確認します。

1.労働保険の年度更新

 労災保険と雇用保険をあわせて労働保険といいます。

 労働保険の保険料は、前年4月1日から当年3月31日までの1年間を単位として計算し、その額はすべての労働者(雇用保険については被保険者)に支払われる賃金の総額※1に、その事業ごとに定められた保険料率を乗じて算定します※2

 事業主は、新年度の概算 保険料を納付するための申告・納付と、前年度の保険料を精算するための確定保険料の申告・納付の手続きが必要です。これを年度更新といいます。

 この年度更新の手続きは、毎年6月1日から7月10日までの間(土日祝日を除く)に行わなければなりません。

※1 賃金の総額には、通勤手当等の交通費(非課税分、現物支給の定期代等)を含みます。

※2 2025(令和7)年度の保険料率については、「令和7年度の雇用保険料率が改定されます(労災保険料率・子ども子育て拠出金率は据え置き)」をご参照ください。

2.社会保険の算定基礎届

 健康保険と厚生年金保険をあわせて社会保険といいます。

 事業主は、社会保険の被保険者の実際の報酬と標準報酬月額との間に大きな差が生じないように、7月1日現在で使用している全被保険者の当年3か月間(4月、5月、6月)に支払った給与等を算定基礎届によって届出をする必要があります。

 このように、毎年1回標準報酬月額の見直しを行うことを定時決定といい、見直し後の標準報酬月額は、原則として当年9月から翌年8月までの各月に適用されます。

 算定基礎届(届出用紙)は、6月中旬以降に事業所あてに送付され、5月中旬頃までに届出された被保険者の氏名、生年月日、従前の標準報酬月額等が印字されています※3

 算定基礎届の提出期間は、毎年7月1日から7月10日まで(10日が土曜または日曜の場合は、翌営業日が提出期限)とされています※4

※3 定時決定は、7月1日現在で事業所に在籍している全被保険者(従業員・役員)を対象として行われる標準報酬月額の見直しであるため、6月30日以前に退職・退任した従業員・役員については定時決定の対象外となります。
 したがって、6月30日以前に退職・退任した従業員・役員の情報が印字されている場合には、算定基礎届の「備考」欄の「9 その他」欄に「退職・退任年月」を記入します。

※4 算定基礎届送付時に同封されている返信用封筒により事務センターへ郵送する場合は、7月1日より前に郵送すると事務センターに届かずに戻ってくることがあるようですので、算定基礎届は提出期間内に提出する必要があります。

3.納期の特例

 事業主は、源泉徴収した所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」といいます)を、原則として、給与などを実際に支払った月の翌月10日までに国に納めなければなりません。

 ただし、給与の支給人員が常時10人未満である事業主は、源泉徴収した所得税等を半年分まとめて納めることができる特例があります。これを納期の特例といいます※5

 この特例の適用を受けていると、その年の1月から6月までに源泉徴収した所得税等は7月10日、7月から12月までに源泉徴収した所得税等は翌年1月20日が、それぞれ納付期限となります。

 ただし、この特例の適用対象となるのは、給与や退職金から源泉徴収をした所得税等と、税理士、弁護士、司法書士などの一定の報酬から源泉徴収をした所得税等に限られています※6

※5 納期の特例については、「納期の特例の要件である「常時10人未満」とは?」、「納期の特例はいつから適用される?」、「納期の特例の要件に該当しなくなった場合の届出と納期限」をご参照ください。

※6 納期の特例の対象とならない外交員報酬などについては、報酬を支払った月の翌月10日までに、源泉徴収した所得税等を納めなければなりません(関連記事:「外交員報酬に係る源泉徴収税額の計算方法」、「ホステス等に支払う報酬・料金の源泉徴収税額の計算方法」、「セミナー講師料を支払った場合の源泉徴収」)。

4.特別徴収した新年度の住民税の納付開始

 特別徴収とは、毎月の給与から差し引いた個人住民税を、事業主(給与支払者)が従業員(納税義務者)に代わり納付する制度で、所得税等の源泉徴収と同じ仕組みのものです。

 特別徴収義務者である事業主は、従業員の給与から個人住民税を毎月天引きして、翌月10日までに納付しなければなりません。

 新年度の個人住民税は6月に支給する給与から特別徴収を開始し、その特別徴収した新年度の個人住民税は、7月10日までに納付しなければなりません。年度が変わって特別徴収する個人住民税の額が変わりますので、注意が必要です。

 なお、毎月納付する手間を減らす方法として、源泉徴収した所得税等と同様に、従業員が常時10人未満である事業主には納期を年2回とする納期の特例が個人住民税にも認められています。

 源泉徴収した所得税等の納期限は7月10日(1月~6月徴収分)と1月20日(7月~12月徴収分)ですが、個人住民税の納期限は6月10日(12月~5月徴収分)と12月10日(6月~11月徴収分)となり、所得税等と個人住民税では納期限が異なります※7

※7 個人住民税を毎月納付する手間を減らすには、納期の特例を受けることになりますが、所得税等と納期限がズレていますので、それを煩雑に感じる場合もあります。
 そのような場合は、1年分(当年6月分~翌年5月分)の納付書を持参して一括納付することができる市区町村もあります。
 特に届出は必要ありませんが、市区町村によって取扱いが異なりますので、事前に市区町村に相談・確認する必要があります。

個人住民税を普通徴収することが認められる場合とは?

 個人の都道府県民税と市区町村民税をあわせて一般に「個人住民税」といい、事業主(給与支払者)には、従業員の個人住民税を特別徴収することが義務付けられています。

 個人住民税の特別徴収とは、事業主が給与を支払う際に、所得税と同様に毎月の給与から個人住民税を天引きし、従業員に代わって毎月納付する制度です。

 事業主には個人住民税の特別徴収義務がありますので、事業主や従業員の希望により普通徴収(従業員自らが納付書で年4回に分けて納付すること)を選択することはできません。

 しかし、一定の要件に該当する場合は、個人住民税を普通徴収することも認められています。
 今回は、個人住民税の特別徴収制度の仕組みと普通徴収の要件について確認します。

1.特別徴収制度の仕組み

 個人住民税の特別徴収の事務の流れは、次のとおりです。

出所:兵庫県ホームページ「パンフレット」

(1) 給与支払報告書の提出(図表①)

 事業主は、毎年1月31日までに従業員が1月1日現在に居住している市町村に給与支払報告書を提出します。

(2) 特別徴収税額決定通知書の送付(図表③④)

 個人住民税の徴収期間は、6月から翌年5月までの12か月間です。毎年5月31日までに、従業員が居住している市町村から事業主あてに「特別徴収税額決定通知書(特別徴収義務者用・納税義務者用)」が送付されます
 この通知書に年税額と月割額が記載されていますので、6月に支給する給与から特別徴収(給与から天引き)を開始します。

納税義務者用の通知書には、通知した税額の算出根拠となる所得金額や所得控除の適用状況等が記載されています。
 これらの個人情報を保護するため、個人情報保護シールを貼付した状態で送付されますので、シールを貼付した状態で従業員に渡し、必ず従業員本人がシールをはがして内容を確認するようにしてください。

(3) 納期と納付方法(図表⑤⑥)
 
 事業主は給与から天引きした個人住民税を、翌月の10日までに市町村から送付される納付書により納付します。

 なお、従業員が常時10名未満の事業主は、市町村への申請により年12回の納期を年2回(第1回:12月10日、第2回:6月10日)とする「納期の特例」の適用を受けることができます。

2.普通徴収の要件と手続き

 原則として従業員の個人住民税は特別徴収しなければなりませんが、下記の要件に該当する従業員については、給与支払報告書を提出する際に「普通徴収切替理由書兼仕切紙」を添付することで、該当者の個人住民税を普通徴収とすることができます。

a.退職者または給与支払報告書を提出した年の5月31日までの退職予定者
b.給与支払額が少なく、個人住民税を特別徴収しきれない人
c.給与の支払が不定期(毎月支給されていない)な人
d.他の事業者から支払われる給与から特別徴収されている人(乙欄適用者)


 普通徴収とするための具体的な手続きは、上記のa.~d.に該当する従業員がいる場合、給与支払報告書提出時に「普通徴収切替理由書兼仕切紙」を添付のうえ、給与支払報告書個人別明細書摘要欄に略号(a~d)を記載します

 上記のa.~d.に該当する旨を申し出ない場合は、普通徴収の要件に該当するかどうかを市町村で確認できないため、特別徴収となります。

エルタックス(eLTAX)で提出する場合も、「普通徴収」欄へのチェックに加え、摘要欄に略号(a~d)を記載する必要があります。

出所:兵庫県ホームページ

令和7年度税制改正で年収の壁はこのように変わった!

 2025(令和7)年度税制改正において、物価上昇局面における税負担の調整や就業調整対策の観点から、所得税の基礎控除や給与所得控除の引き上げ、特定親族特別控除の創設等が行われました※。

 以下では、これらの税制改正により、従前からあった給与所得者の年収の壁がどのように変わったのかについて確認します。

※ 令和7年度税制改正の内容については、「基礎控除・給与所得控除の引き上げと源泉徴収事務・年収の壁への影響(令和7年度税制改正)」、「特定親族特別控除の創設と源泉徴収事務への影響(令和7年度税制改正)」、「扶養親族等の所得要件・住宅借入金等特別控除・生命保険料控除の見直し(令和7年度税制改正)」をご参照ください。

1.110万円の壁(住民税)

 改正で給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられたことにより、住民税が非課税となる年収が、従前の100万円から110万円に変わりました。

 住民税は、所得金額に応じて課税される「所得割と、定額で課税される「均等割」から成りますが、住んでいる地域や家族構成によって住民税が非課税となる所得金額は異なります。

 例えば、兵庫県宝塚市で均等割が非課税となる所得は、次の算式で算出します。

 35万円×(同一生計配偶者+扶養親族数+本人)+10万円+21万円(同一生計配偶者または扶養親族を有する場合のみ)

 単身の場合は、35万円×1+10万円=45万円が非課税となる所得であり、給与収入に置き換えると110万円(45万円+給与所得控除65万円)となります。

2.123万円の壁(所得税)

 従前の103万円の壁は、年収の壁として広く一般に認識されていたものと思われます。

 改正で基礎控除と給与所得控除最低保障額がそれぞれ10万円ずつ引き上げられたことにより、この103万円の壁が123万円の壁に変わりました。

 また、改正により、配偶者控除や扶養控除の対象となる合計所得金額が48万円以下から58万円以下に変わりましたので、配偶者や扶養親族の年収が123万円以下であれば、配偶者控除や扶養控除の対象となります(給与収入123万円-給与所得控除65万円=58万円)。

 ただし、123万円の壁は配偶者控除や扶養控除の対象となる給与収入を意味するものであり、従前の103万円の壁が持っていた納税者本人に所得税がかからない給与収入という意味はありません。

 納税者本人に所得税がかからない年収の壁については、下記4をご参照ください。

3.150万円の壁(所得税):2つの意味

 従前からあった150万円の壁は、配偶者特別控除について満額の38万円を適用できる年収の壁でしたが、改正により、150万円の壁の意味は以下のように変わりました。

 扶養親族の年収が123万円を超えると扶養控除の対象から外れますので(上記2)、年齢19歳以上23歳未満の扶養親族(以下「大学生年代」といいます)についても、年収が123万円を超えると63万円の扶養控除を適用することができません。

 しかし、大学生年代については、年収が123万円を超えても、令和7年度税制改正で新設された特定親族特別控除を適用することができ、年収が150万円以下であれば、特定親族特別控除について満額の63万円を適用することができます。

 さらに、大学生年代の年収が150万円を超えても188万円以下であれば、納税者本人は段階的に逓減する特定親族特別控除を受けることができます。

 また、勤労学生本人が受けられる勤労学生控除の合計所得金額の要件が、改正により従前の75万円以下から85万円以下に変わりましたので、勤労学生本人の給与収入が150万円以下であれば、勤労学生控除27万円を受けることができます(給与収入150万円-給与所得控除65万円=85万円)。

 なお、社会保険における150万円の壁については、下記8をご参照ください。

4.160万円の壁(所得税):2つの意味

 改正後の年収160万円の壁については、以下の二つの意味があります。

 第一に、納税者本人に所得税がかからない従前の103万円の壁が、160万円の壁に変わりました。

 改正により基礎控除の10万円の引き上げが行われましたが、さらに低~中所得者層の税負担への配慮から、特例として最大95万円の基礎控除が設けられました。

 したがって、給与所得控除最低保障額65万円と合わせて、年収160万円以下であれば、納税者本人に所得税はかかりません(給与収入160万円-給与所得控除65万円-基礎控除95万円=給与所得0円)。

 第二に、配偶者特別控除について満額の38万円を適用できる年収の壁が、従前の150万円から160万円に変わりました。

 満額の38万円を適用できる合計所得金額の上限は従前どおりの95万円ですが、給与所得控除最低保障額が10万円引き上げられたことにより、配偶者の年収が160万円以下であれば、納税者本人は配偶者特別控除38万円の適用を受けることができます(ただし、納税者の合計所得金額が900万円以下の場合です)。

 また、配偶者の年収が160万円を超えても201万円以下(正確には201万5,999円以下)であれば、納税者本人は段階的に逓減する配偶者特別控除を受けることができます。

5.188万円の壁(所得税)

 大学生年代の年収が150万円を超えると段階的に特定親族特別控除が減っていきますが、年収188万円を超えると特定親族特別控除はゼロとなります(上記3)。

 188万円の壁とは、特定親族特別控除が適用されるか否かの年収の分岐点のことをいい、改正後に新しくできた年収の壁です。

6.201万円の壁(所得税)

 配偶者の年収が160万円を超えると段階的に配偶者特別控除が減っていきますが、年収201万円(正確には201万5,999円)を超えると配偶者特別控除はゼロとなります(上記4)。

 201万円の壁とは、配偶者特別控除が適用されるか否かの年収の分岐点のことをいいますが、改正後もこの部分は変わっていません。

7.106万円の壁(社会保険)

 令和7年度税制改正は、以下の社会保険制度上の年収の壁である106万円の壁には影響ありません。

 ①従業員が51人以上(2024(令和6)年10月以降)、②週の労働時間が20時間以上、③月収8.8万円以上(年収106万円以上)、④2か月を超える雇用の見込、⑤学生でない、といった条件を満たす場合は、パートやアルバイトで働く人が自ら社会保険被保険者となり社会保険の扶養から外れます(関連記事「従業員51人以上の会社で働くパート・アルバイトの社会保険加入義務(令和6年10月1日~)」)。

8.130万円の壁と150万円の壁(社会保険)

 令和7年度税制改正によって19歳以上23歳未満の親族等を扶養する場合における特定扶養控除の要件の見直し等が行われたことを踏まえ、扶養認定日が2025(令和7)年10月1日以降で、扶養認定を受ける人(被扶養者)が19歳以上23歳未満の場合(被保険者の配偶者を除く)は、現行の「年間収入130万円未満」が「年間収入150万円未満」に変わりますなお、この「年間収入要件」以外の要件に変更はありません。

 年齢要件(19歳以上23歳未満)は、扶養認定日が属する年の12月31日時点の年齢で判定します。
 例えば、扶養認定を受ける人が令和7年11月に19歳の誕生日を迎える場合には、令和7年(暦年)における年間収入要件は150万円未満となります。

 令和7年10月1日以降の届出で、令和7年10月1日より前の期間について認定する場合、19歳以上23歳未満の被扶養者にかかる年間収入の要件は130万円未満で判定します。

 130万円又は150万円の壁とは、社会保険被保険者である給与所得者(例えば親)が扶養する者(例えば子)については、親が負担する社会保険料のみで子の健康保険料及び国民年金保険料まで賄われるという年収の分岐点のことをいいます。

 従業員が51人以上(2024(令和6)年10月以降)の企業では106万円、それより規模の小さい企業では130万円又は150万円が年収の壁となります。

※ 社会保険の150万円の壁については、「令和7年10月1日から19歳以上23歳未満の人の健康保険の被扶養者認定基準が年収150万円未満に変わります」をご参照ください。

特定親族特別控除の創設と源泉徴収事務への影響(令和7年度税制改正)

 2025(令和7)年度税制改正において、物価上昇局面における税負担の調整や就業調整対策の観点から、所得税の基礎控除や給与所得控除の引き上げ、、特定親族特別控除の創設等が行われました。

 これらの改正は、原則として2025(令和7)年12月1日に施行され、2025(令和7)年分以後の所得税から適用されます。

 前回は基礎控除と給与所得控除の引き上げについて確認しましたので、今回は新設された特定親族特別控除の内容と、この特定親族特別控除が2025(令和7)年の源泉徴収事務に与える影響について確認します。

※ 基礎控除と給与所得控除の引き上げについては、「基礎控除・給与所得控除の引き上げと源泉徴収事務・年収の壁への影響(令和7年度税制改正)」をご参照ください。

1.特定親族とは?

 2025(令和7)年度税制改正で、居住者が特定親族を有する場合には、その居住者の総所得金額等から、その特定親族1人につき、その特定親族の合計所得金額に応じて63万円~3万円を控除する特定親族特別控除が創設されました。

 特定親族とは、居住者と生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族(配偶者、青色事業専従者として給与の支払を受ける人及び白色事業専従者を除きます)で合計所得金額が58万円超123万円以下の人をいいます。

 収入が給与だけの場合には、その年中の収入金額が123万円超188万円以下であれば、合計所得金額が58万円超123万円以下となります(給与収入123万円-給与所得控除65万円=58万円、給与収入188万円-給与所得控除65万円=123万円)。

 なお、親族の合計所得金額が58万円以下の場合は、特定親族特別控除の対象とはなりませんが、扶養控除の対象となります。

 居住者と生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族(配偶者、青色事業専従者として給与の支払を受ける人及び白色事業専従者を除きます)で合計所得金額が58万円以下の人は特定扶養親族に該当しますので、これまで通り扶養控除額は63万円となります。

2.特定親族特別控除額

 所得税の特定親族特別控除額は、下表のとおりです。

特定親族の合計所得金額
※カッコ内は収入が給与だけの場合の収入金額
特定親族特別控除額
58万円超 85万円以下 (123万円超 150万円以下) 63万円
85万円超 90万円以下(150万円超 155万円以下) 61万円
90万円超 95万円以下(155万円超 160万円以下) 51万円
95万円超 100万円以下(160万円超 165万円以下) 41万円
100万円超 105万円以下(165万円超 170万円以下) 31万円
105万円超 110万円以下(170万円超 175万円以下) 21万円
110万円超 115万円以下(175万円超 180万円以下) 11万円
115万円超 120万円以下(180万円超 185万円以下) 6万円
120万円超 123万円以下(185万円超 188万円以下)  3万円

 上の表のとおり、生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族の収入が給与のみの場合は、年収150万円までは特定扶養控除と同額の63万円の控除が受けられ、年収150万円を超えても188万円までは、控除額が逓減する配偶者特別控除と同様の仕組みとなっています(いわゆる年収の壁については、「令和7年度税制改正で年収の壁はこのように変わった!」をご参照ください)。

3.源泉徴収事務への影響

 上記の税制改正は、原則として、2025(令和7)年12月1日に施行され、2025(令和7)年分以後の所得税及び2026(令和8)年度以後の住民税について適用されます。

 そのため、2025(令和7)年12月に行う年末調整など、2025(令和7)年12月以後の源泉徴収事務に変更が生じますが、11月までの給与の源泉徴収事務に変更は生じません

 したがって、2025(令和7)年分の給与の源泉徴収事務においては、2025(令和7)年12月に行う年末調整の際に、特定親族特別控除を適用します。

 なお、年末調整において特定親族特別控除の適用を受けようとする人は、給与の支払者に「給与所得者の特定親族特別控除申告書」を提出する必要があります。

4.住民税の特定親族特別控除(参考)

 個人住民税における特定親族特別控除額は、下表のとおりです。

特定親族の合計所得金額
※カッコ内は収入が給与だけの場合の収入金額
特定親族特別控除額
58万円超 95万円以下(123万円超 160万円以下) 45万円
95万円超 100万円以下(160万円超 165万円以下) 41万円
100万円超 105万円以下(165万円超 170万円以下) 31万円
105万円超 110万円以下(170万円超 175万円以下) 21万円
110万円超 115万円以下(175万円超 180万円以下) 11万円
115万円超 120万円以下(180万円超 185万円以下) 6万円
120万円超 123万円以下(185万円超 188万円以下)  3万円

 上の表のとおり、生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族の収入が給与のみの場合は、年収160万円までは特定扶養控除と同額の45万円の控除が受けられ、年収160万円を超えても188万円までは、控除額が逓減する配偶者特別控除と同様の仕組みとなっています。

基礎控除・給与所得控除の引き上げと源泉徴収事務・年収の壁への影響(令和7年度税制改正)

 2025(令和7)年度税制改正において、物価上昇局面における税負担の調整や就業調整対策の観点から、所得税の基礎控除や給与所得控除の引き上げ、、特定親族特別控除の創設等が行われました。

 これらの改正は、原則として2025(令和7)年12月1日に施行され、2025(令和7)年分以後の所得税から適用されます。

 以下では、基礎控除と給与所得控除の引き上げの内容と、これらの引き上げが2025(令和7)年の源泉徴収事務や、いわゆる年収の壁に与える影響について確認します。

※ 特定親族特別控除については、「特定親族特別控除の創設と源泉徴収事務への影響(令和7年度税制改正)」をご参照ください。

1.基礎控除の引き上げ

 令和7年度税制改正により、合計所得金額が2,350万円以下である個人の基礎控除額が48万円から10万円引き上げられ、58万円となりました。

 さらに、低~中所得者層の税負担への配慮から、基礎控除の特例として、所得額に応じて58万円に37万円~5万円の上乗せが行われています。

 なお、基礎控除の改正は所得税のみの改正であり、住民税の基礎控除額は従前通りの43万円です。

 改正後の所得税の基礎控除額は、下表のとおりです。

合計所得金額
※カッコ内は収入が給与だけの場合の収入金額※2
基礎控除額
改正前 令和7・8年分 令和9年分以後
132万円以下
(200万3,999円以下)
48万円 95万円※1 95万円※1
132万円超~336万円以下
(200万3,999円超~475万1,999円以下)
88万円※1 58万円
336万円超~489万円以下
(475万1,999円超~665万5,556万円以下)
68万円※1
489万円超~655万円以下
(665万5,556円超~850万円以下)
63万円※1
655万円超~2,350万円以下
(850万円超~2,545万円以下)
58万円
2,350万円超~2,400万円以下
(2,545万円超~2,595万円以下)
48万円※3
2,400万円超~2,450万円以下
(2,595万円超~2,645万円以下)
32万円※3
2,450万円超~2,500万円以下
(2,645万円超~2,695万円以下)
16万円※3
2,500万円超
(2,695万円超)
0円※3

※1 基礎控除の特例として、58万円にそれぞれ37万円、30万円、10万円、5万円を加算した金額となります(この加算は居住者についてのみ適用があります)。
 なお、合計所得金額132万円以下の低所得者層への特例は恒久的措置となりますが、132万円超~655万円以下の中所得者層への特例は令和7年分及び令和8年分の期間限定となります。
※2 特定支出控除や所得金額調整控除の適用がある場合は、表の金額とは異なります。
※3 合計所得金額2,350万円超の場合の基礎控除額に改正はありません(合計所得金額については、「『合計所得金額』『総所得金額』『総所得金額等』の違いとは?」をご参照ください)。

2.給与所得控除の引き上げ

 令和7年度税制改正により、給与の収入金額が190万円以下の個人について、給与所得控除額の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられました。

 給与所得控除の改正は、所得税だけではなく住民税にも適用されます(令和7年分以後の所得税及び令和8年度以後の住民税)。

 改正後の給与所得控除額は、下表のとおりです。

給与の収入金額(A) 改正前 令和7年分以後
162万5,000円以下 55万円 65万円
162万5,000円超~180万円以下 A×40%-10万円
180万円超~190万円以下 A×30%+8万円
190万円超~360万円以下 同左
360万円超~660万円以下 A×20%+44万円
660万円超~850万円以下 A×10%+110万円
850万円超 195万円(上限)

3.源泉徴収事務と年収の壁への影響

 上記1及び2の税制改正は、原則として、2025(令和7)年12月1日に施行され、2025(令和7)年分以後の所得税及び2026(令和8)年度以後の住民税について適用されます。

 そのため、2025(令和7)年12月に行う年末調整など、2025(令和7)年12月以後の源泉徴収事務に変更が生じますが、11月までの給与の源泉徴収事務に変更は生じません。

 したがって、2025(令和7)年分の給与の源泉徴収事務においては、2025(令和7)年12月に行う年末調整の際に、改正後の基礎控除額と「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」に基づいて1年間の税額を計算し、改正前の「源泉徴収税額表」によって計算した源泉徴収税額との精算を行います。

 なお、基礎控除と給与所得控除の改正により、所得税が課税されない給与収入(いわゆる年収の壁)が、これまでの103万円から令和7年分は160万円(基礎控除95万円+給与所得控除65万円)に変わります

 また、給与所得控除の改正により、住民税が課税されない給与収入については、これまでの概ね100万円から2026(令和8)年度は110万円(45万円+給与所得控除65万円)に変わります(各自治体によって異なります)

※ 年収の壁については、「令和7年度税制改正で年収の壁はこのように変わった!」をご参照ください。

不足額給付の申請受付開始時期と提出書類(兵庫県宝塚市の場合)

 宝塚市では2024(令和6)年8~10月に、定額減税しきれないと見込まれる方へ給付金(調整給付)が支給されました※。

 調整給付は2023(令和5)年の課税情報に基づき算定されていましたので、2024(令和6)年分所得税や定額減税の実績額が確定した際に、調整給付に不足が生じる方がいます。

 また、青色事業専従者など、税制度上定額減税の対象外であった方もいます。

 今回は、現時点の情報に基づいて、これらの方に対して行われる宝塚市の不足額給付について確認します。

※ 調整給付の詳細については、「調整給付金(定額減税補足給付金)の算定方法と疑問点の検証」をご参照ください。

1.不足額給付の対象者と手続き

 不足額給付の対象者は、2025(令和7)年1月1日時点で宝塚市に住民登録がある、下記の表A~Cに該当する方です。
 対象者には、2025(令和7)年8月下旬~9月に宝塚市から書面が送付される予定ですので、案内に従い申請手続きをしてください。

対象者 不足額給付 実施時期 実施自治体
A
・所得税の実績値と推計値が異なることにより調整給付額に不足が生じる人
・税額修正により令和6年度住民税所得割額が減少したことにより不足が生じる人
調整給付(当初)と調整給付(実績)の差額を支給(端数は1万円単位に切上げ) 令和7年8月以降(予定) 令和7年1月1日の課税自治体
B
税制度上、定額減税の扶養親族の対象外(合計所得48万円超の者、青色事業専従者、事業専従者(白色)など)で諸要件を満たす人
原則、4万円を支給(令和6年1月1日に国外居住であった場合は3万円)
C
・令和5年の合計所得が1805万円超で当初調整給付の対象外だったが、令和6年の合計所得が1805万円以下だった人
・令和6年1月1日時点で非居住だったが、令和7年1月1日以前に入国して居住者となり、令和6年分の所得税が発生した人
所得税分(3万円)のみを基礎として不足額給付を算定して支給(住民税は対象外)

Aの詳細については、「定額減税調整給付金(不足額給付)の対象となる人の具体例と給付額の計算例」をご参照ください。
Bの詳細については、「所得税・住民税が非課税でも青色事業専従者等は定額減税調整給付金(不足額給付)の対象となる!」をご参照ください。

2.転入者の場合の手続き

 不足額給付の対象となる方のうち、転入者(2024(令和6)年1月2日~2025(令和7)年1月1日に宝塚市へ転入した方)については、転入前の自治体で発行された調整給付支給要件確認書(調整給付額の算出根拠となる資料)を添えて、2025(令和7)年9月~10月末(予定)にご自身で申し出・申請を行う必要があります。

 転入者については、当初調整給付に関する情報を宝塚市で把握できず、対象者を特定できないことから宝塚市から通知書面などは送付されませんのでご注意ください。

3.申請時に提出する書類

 不足額給付の申請受け付けは、2025(令和7)年9月頃に開始される予定です。申請をするにあたって、提出が必要な書類は以下のとおりです(宝塚市の場合)。

(1) 青色事業専従者等(上記1の表のBに該当する人)

 青色事業専従者、事業専従者(白色)、合計所得48万円超の者など、上記1の表のBに該当する人については、以下の書類の提出が必要です。

① 申請者の令和6年分源泉徴収票(または令和6年分確定申告書)
② 申請者の令和6年度税額決定通知書(または令和6年度(非)課税証明書)
③ 住民票の写し(世帯全員)
④ 世帯全員の令和5年度および令和6年度課税証明書
⑤ 低所得世帯向け給付および当初調整給付を受給していない旨の確認書(後日ホームページで公開されます)
⑥ 事業主の令和6年分確定申告書、青色事業専従者給与に関する届出書(または青色申告決算書)
※ ⑥は専従者のみ
※ 提出書類の概要については、「所得税・住民税が非課税の青色事業専従者等が不足額給付を申請する際に必要な書類」をご参照ください。

(2) 転入者

 転入者については、以下の書類の提出が必要です。

① 転入前の自治体で発行された調整給付支給要件確認書(調整給付額の算出根拠となる資料)
※ 紛失した場合は、調整給付を受給した自治体へご自身で再発行依頼をしてください。
※ 税額修正や扶養是正があった場合はその旨が分かる資料も必要です。
② 所得税分控除不足額(令和6年分の実績)が分かる資料
※ 令和6年分の源泉徴収票と、確定申告していない旨の誓約書(後日ホームページで公開されます)
※ 令和6年分確定申告書 など
③ 住民票(令和7年1月1日以降さらに転居があった場合)

所得税・住民税が非課税の青色事業専従者等が不足額給付を申請する際に必要な書類

 定額減税の調整給付(不足額給付)の給付方法には、プッシュ型給付と申請型給付があります。

 プッシュ型給付とは、市区町村が支給要件を確認し、給付対象者に2025(令和7)年6月頃~7月頃に通知を発送する方法です。
 したがって、原則として自ら申請する必要はありません(プッシュ型給付の詳細については、「定額減税調整給付金(不足額給付)の対象となる人の具体例と給付額の計算例」をご参照ください)。

 一方、申請型給付とは、下記の支給要件をすべて満たす人が、自ら申請書を使用して申請する方法です。

(1) 2025(令和7)年1月1日時点で当該市区町村に住民票がある
(2) 2024(令和6)年分所得税及び2024(令和6)年度個人住民税所得割ともに定額減税前税額がゼロ(≒本人として定額減税対象外)
(3) 税制度上、「扶養親族」から外れてしまう(≒扶養親族等としても定額減税対象外)
(4) 低所得世帯向け給付の対象世帯の世帯主・世帯員に該当していない(≒一体措置の対象外)


 上記要件を満たして申請型給付に該当する可能性があるのは、事業専従者(青色事業専従者、白色申告者の事業専従者)と合計所得が48万円を超えている人です(申請型給付の詳細については、「所得税・住民税ともに非課税の青色事業専従者等は定額減税調整給付金(不足額給付)の対象となるか?」をご参照ください)。

 これらの人が申請によって不足額給付を受ける際に、申請書と一緒に提出が必要となるのは以下の書類です。

提出書類 確認事項
①申請者の令和6年分源泉徴収票又は令和6年分確定申告書の控え 令和6年分所得税の税額・合計所得金額を把握するための資料
②申請者の令和6年度税額決定通知書又は令和6年度(非)課税証明書 令和6年度個人住民税所得割の税額・合計所得金額を把握するための資料
③事業主の令和6年分確定申告書の控え、青色事業専従者給与に関する届出書又は青色申告決算書の控え 青色事業専従者・事業専従者(白色)を把握するための資料
④住民票の写し(世帯全員) 世帯員を把握するための資料
⑤世帯全員の令和5年度及び令和6年度(非)課税証明書 世帯主及び世帯員の令和5年度及び令和6年度個人住民税の税額を把握するための資料
⑥低所得世帯向け給付、調整給付(当初)を受給していない旨の確認書(誓約書) 受給していないことを確認するための資料(書類がなく確認できない場合の誓約書含む)

 提出書類を対象者ごとにまとめると、下表のようになります。

対象者 支給要件の確認
所得税・個人住民税所得割がゼロ 制度上、扶養親族対象外 低所得世帯向け給付の受給なし
青色事業専従者・事業専従者(白色) ①②⑥ ①③ ④⑤⑥
合計所得金額48万円超の人 ①②⑥ ①② ④⑤⑥

 上記書類のうち、申請者の市区町村間の異動がない場合など、市区町村で容易に把握できる情報については提出不要とされることがあります(例えば、②、④、⑤や①、③の一部)。

 現時点では、多くの市区町村が申請スケジュールや申請方法等を公表していませんが、不足額給付の対象となる人はご自身がお住いの市区町村への確認が必要です。

 なお、すでに申請の受付を開始し、申請期限を2025(令和7)年5月下旬に設定している市区町村もありますので、早めに確認することをお勧めします。

所得税・住民税が非課税でも青色事業専従者等は定額減税調整給付金(不足額給付)の対象となる!

 2024(令和6)年度に実施された調整給付金(当初給付)の支給額に不足が生じる人を対象に、その不足する金額を支給する給付(不足額給付)が各市区町村(2025(令和7)年1月1日時点で住民登録がある自治体)によって行われます。

 この不足額給付の対象となる人は、次の2つのケースに分かれます。

(1) 令和5年所得等を基に推計した令和6年分推計所得税額により算定された調整給付金(当初給付)と、令和6年分所得税および定額減税の実績額等により算定した本来給付すべき金額との間で差額(不足)が生じた人

(2) 本人が非課税または扶養親族に該当しなかったため定額減税の対象外であり、低所得世帯向け給付の対象世帯主・世帯員にも該当しなかった人

 上記のうち(1)のケースについては前回の記事「定額減税調整給付金(不足額給付)の対象となる人の具体例と給付額の計算例」で確認しましたので、今回は、(2)のケースに該当する人の要件を確認し、不足額給付の対象となる具体例を2例挙げます。

※ 調整給付金(当初給付)については、「調整給付金(定額減税補足給付金)の算定方法と疑問点の検証」をご参照ください。

1.申請型給付の対象となる要件

 先に見たように、不足額給付の対象となる人は2つのケースに分かれます。

 前回に確認した(1)のケースでは、市区町村が支給要件を確認し、給付対象者には2025(令和7)年6月頃から7月頃にかけて「支給のお知らせ」「確認書」などの通知が発送される予定です(プッシュ型給付)。

 今回確認する(2)のケースでは、下記の支給要件のいずれも満たす人が、原則として自ら申請書により申請する必要があります(申請型給付)※1

① 所得税及び個人住民税所得割ともに定額減税前税額がゼロ(≒本人として定額減税対象外)
② 税制度上、「扶養親族」から外れてしまう(≒扶養親族等としても定額減税対象外)
③ 低所得世帯向け給付※2の対象世帯の世帯主・世帯員に該当していない(≒一体措置の対象外)


 これら①~③の要件をすべて満たす人は不足額給付の対象となり、原則4万円が給付されます。
 ただし、2024(令和6)年1月1日時点で国外居住者であった場合は3万円となります(個人住民税分の1万円は給付されません)。

 不足額給付の対象となり得る可能性があるのは、次の①②の人です。

① 青色事業専従者、事業専従者(白色
② 合計所得金額48万超の人※3

 以下では、この2例について具体的にみていきます。

※1 多くの市区町村では、現時点で申請スケジュール等が公表されていませんが、すでに申請の受付を開始している市区町村もありますのでご注意ください。
 また、申請書による申請がない場合でも、課税資料等を基に上記支給要件を満たすことが確認できた場合には、給付金の通知を発送する市区町村もあります。
 申請開始時期や申請方法等は市区町村によって異なりますので、ご自身がお住いの市区町村にご確認ください。
 なお、申請に必要な書類については、「所得税・住民税が非課税の青色事業専従者等が不足額給付を申請する際に必要な書類」をご参照ください。

※2 低所得世帯向け給付金とは、令和5年度非課税世帯への給付(7万円)、令和5年度均等割のみ課税世帯への給付(10万円)、令和6年度新たに非課税世帯もしくは均等割のみ課税となった世帯への給付(10万円)をいいます。

※3 合計所得金額については、「『合計所得金額』『総所得金額』『総所得金額等』の違いとは?」をご参照ください。

2.青色事業専従者、事業専従者(白色)

 下図における妻は、上記1の①~③の要件を満たすため、不足額給付の対象となります。

 下図における妻は、個人事業主である夫の個人商店を手伝う事業専従者ですので、税法上、配偶者控除・扶養控除の対象とならず、夫の定額減税において扶養親族等となりません(要件②)。

 また、妻自身の給与収入が概ね100万円に満たないため、所得税・住民税が課税されず、本人として定額減税の対象外となります(要件①)。

 さらに、世帯内に納税者(個人住民税所得割課税者)である夫がいるため、低所得世帯向け給付の対象に該当しません(要件③)。

 以上から、下図における妻は、不足額給付の対象となります。

3.合計所得金額48万超の人

 下図における父は、上記1の①~③の要件を満たすため、不足額給付の対象となります。

 下図における父は、年金収入が158万円以上あるため、合計所得金額が48万円を超えていますので、息子の定額減税において扶養親族等となりません(要件②)。

 また、父の年金収入は158万円~概ね170万円以下ですが、所得控除等により所得税・住民税ともに非課税となり、本人としても定額減税の対象外となります(要件①)。

 さらに、世帯内に納税者(個人住民税所得割課税者)である息子がいるため、低所得世帯向け給付の対象に該当しません(要件③)。

 以上から、下図における父は、不足額給付の対象となります。

定額減税調整給付金(不足額給付)の対象となる人の具体例と給付額の計算例

 2024(令和6)年度に実施された調整給付金(当初給付)の支給額に不足が生じる人を対象に、その不足する金額を支給する給付(不足額給付)が各市区町村(2025(令和7)年1月1日時点で住民登録がある自治体)によって行われます。

 この不足額給付の対象となる人は、次の2つのケースに分かれます。

(1) 令和5年所得等を基に推計した令和6年分推計所得税額により算定された調整給付金(当初給付)と、令和6年分所得税および定額減税の実績額等により算定した本来給付すべき金額との間で差額(不足)が生じた人

(2) 本人が非課税または扶養親族に該当しなかったため定額減税の対象外であり、低所得世帯向け給付の対象世帯主・世帯員にも該当しなかった人

 今回は、上記のうち(1)のケースに該当する人の具体例を4例挙げ、それぞれの場合の不足額給付の計算例について確認します((2)のケースについては、次回に確認します)。

※ 調整給付金(当初給付)については、「調整給付金(定額減税補足給付金)の算定方法と疑問点の検証」をご参照ください。

1.令和5年所得よりも令和6年所得が減少した人

 令和5年所得に基づく推計所得税額が6万円、所得税分のみの定額減税額が9万円、調整給付(当初)は3万円でした。

 その後令和6年所得が確定し、所得税額(実績)が4万5千円、所得税分のみの定額減税額が9万円となり、調整給付(実績)は4万5千円となります。

 この場合、調整給付(当初)3万円と調整給付(実績)4万5千円の差額は1万5千円となりますが、端数は1万円単位で切上げされるため、2万円が不足額給付として給付されます。

2.令和5年所得がなく、令和6年所得がある人

 令和5年中は学生で所得がなかったため、令和6年分推計所得税額、定額減税額がともに0円となり(定額減税の対象外)、調整給付(当初)も0円でした。

 令和6年中に就職したことにより、令和6年所得税額(実績)が6万円となったので、定額減税額(所得税分)の3万円分が減税され、所得税額は3万円となります。したがって、定額減税しきれない所得税の金額はありません。

 一方、定額減税額(住民税分)については、令和6年度分住民税が発生していないことから減税することができないため、住民税分の1万円が不足額給付として給付されます。

3.令和6年中に扶養親族が増えた人

 令和5年の扶養状況は2人(妻、子1人)だったため、所得税分のみの定額減税額は9万円((本人+同一生計配偶者1人+扶養親族1人)×3万円)でしたが、その後令和6年中に子どもが生まれて扶養人数が1人増えたため、所得税分のみの定額減税額が12万円((本人+同一生計配偶者1人+扶養親族2人)×3万円)となりました。

 令和5年所得に基づく令和6年分推計所得税額が6万円、定額減税額が9万円で調整給付(当初)は3万円でしたが、令和6年の所得税額(実績)が6万円、定額減税額が12万円となったことで、調整給付(実績)は6万円となります。

 これより、調整給付(当初)3万円と調整給付(実績)6万円との差額の3万円が不足額給付として給付されます。

4.税額修正により、令和6年度分個人住民税所得割が減少した人

 令和6年度住民税の当初決定時には個人住民税所得割額が2万円、個人住民税分のみの定額減税額が2万円のため、調整給付(当初)は0円でした。

 その後(当初決定後)に申告の修正を行い、個人住民税所得割が1万円に減少しました。

 不足額給付の計算時には減少後の個人住民税所得割で計算するため、個人住民税所得割が1万円、個人住民税分のみの定額減税額が2万円、不足額給付時の調整給付(実績)が1万円となりますので、調整給付(当初)0円と不足額給付時の調整給付(実績)1万円との差額の1万円が不足額給付として給付されます。