固定資産税の前納報奨金と還付金の処理

1.固定資産税の前納報奨金の所得区分は?

 固定資産税は、通常年4回(原則として4月、7月、12月、2月ですが、市町村によって若干異なります)に分けて納付することになっていますが、第1回目の納期に全期分を前納した場合には、市税に未納がないことなどを条件に、年税額から前納報奨金を差し引いて納付することができます。
 この前納報奨金は所得になるのですが、その所得区分は、固定資産税の課税客体である固定資産の用途によって異なりますので、注意が必要です。
 事業用固定資産に係る固定資産税は必要経費となりますので、その前納報奨金は事業所得の収入金額になります。
 一方、業務用以外の固定資産に係る前納報奨金は、利息としての性格もなくその他の対価性もないため、一時所得となります。

2.過去の年分で必要経費に算入した固定資産税の還付を受けた場合

 土地・家屋(建物)の評価・課税誤りによって固定資産税を納め過ぎた場合に、その過徴収金が遡って還付される場合があります。
 固定資産税は不動産所得の計算上必要経費に算入されますが、過去の年分で必要経費に算入していた固定資産税が還付された場合は、貸付の規模によって処理が異なります。
 貸付の規模が業務的規模の場合には、過去において過大計上していた租税公課を減額する修正申告の手続きが必要となります。
 貸付の規模が事業的規模の場合には、その還付された年分の収入金額に算入します。

再居住した場合の住宅借入金等特別控除

1.再居住した場合の適用要件

 住宅借入金等特別控除の適用を受けていた方が、2003年(平成15年)4月1日以降に転任命令に伴う転居等により控除が受けられなくなった後、その家屋に再び居住した場合は、次の要件を満たすことにより再居住年以後の年について、住宅借入金等特別控除の適用を受けることができます。

(1) 転居の事由等

 勤務先からの転任の命令に伴う転居、その他これに準ずるやむを得ない事由により、その家屋を居住の用に供さなくなったこと

(2) 居住の用に供さなくなる日までに必要な手続

 「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」、未使用の「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」、「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」を所轄税務署に提出

(3) 再適用をする最初の年分の必要書類

 「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書(再び居住の用に供した方用」、「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」、「住民票の写し」

(4) 再適用の制限

 再び居住の用に供した日の属する年に、その家屋を賃貸の用に供していた場合には、翌年以後の年についてこの特例の再適用が可能

2.再居住した場合の留意点

 したがって、例えば転地療養のため、家族全員で一時実家に移り住んだ場合には、「再居住の場合の再適用の特例」は受けられません。
 転地療養は、勤務先からの転任命令のような外的要因ではなく個人的事情であるため、上記要件の「やむを得ない事由」に該当しないからです。

 また、転勤が解消し再居住した年に賃貸していた場合に、年末時点では居住しているとして控除を受けることはできません。控除は翌年からとなりますので、ご注意ください。

住宅借入金等特別控除における連帯債務の注意点

 住宅借入金等特別控除を受けるためには、金融機関が発行した「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」が必要ですが、この残高証明書の摘要欄に連帯債務者が記載されている場合があります。
 住宅取得資金に係る借入金が、給与の支払を受ける人と配偶者又はその他の親族との連帯債務になっている場合は、家屋と土地の共有持分割合又は建物と土地の共有者による資金の負担割合で、連帯債務になっている住宅借入金の年末残高を按分計算することになります。
 ただし、家屋と土地が単独で所有されている場合など、按分計算が不要の人もいますので注意してください。
 具体的には、以下のようになります(住宅取得資金を2,000万円とします)。

(1) 共有持分割合で按分計算する場合

 住宅の持分が夫2分の1、妻2分の1で、住宅取得資金をすべて連帯債務の借入金で賄っているときは、夫と妻の借入金年末残高は、それぞれ2,000万円×1/2=1,000万円となります。

(2) 按分計算が不要の場合

 住宅をすべて夫が所有し(夫の持分1、妻の持分0)、住宅取得資金をすべて連帯債務の借入金で賄っているときは、連帯債務の全額である2,000万円が夫の残高となります。

(3) 資金の負担割合で按分計算する場合

 住宅の持分が夫2分の1、妻2分の1で、住宅取得資金2,000万円のうち500万円(4分の1)を妻の自己資金、残りの1,500万円(4分の3)を連帯債務の借入金で賄っているときは、次のようになります。
 夫の残高:2,000万円×1/2=1,000万円
 妻の残高:2,000万円×1/2-500万円=500万円
 割合で示すと、夫の残高:妻の残高=2:1となります。
 夫の残高:3/4×1/2=3/8=6/16
 妻の残高:3/4×(1/2-1/4)=3/16

法人事業概況説明書を軽視していませんか?

1.概況書は提出義務のある添付書類

 2018年(平成30年)4月1日以後終了事業年度分から法人事業概況説明書の様式が改訂されています。
 法人事業概況説明書は、2006年度(平成18年度)税制改正により、決算書や勘定科目内訳明細書などと一緒に確定申告書に添付する書類として義務付けられています。
 決算書や勘定科目内訳明細書は、間違いの無いように慎重に作成される場合が多いように思うのですが、法人事業概況説明書の作成は、これらに比べるとやや慎重さに欠けるような気がします。 

2.間違いの多い記載例

 間違いが多いのは、次の2点です。

① 表面の「資産の部合計」欄が、「負債の部合計」欄と「純資産の部合計」欄の計と一致していない。
② 裏面の「源泉徴収税額」欄が、年末調整による過不足額の精算をしているにもかかわらず精算後 の税額を記載していない(源泉徴収税額をそのまま記載している)。

 ①については、財務データから連動して法人事業概況説明書を自動作成する会計ソフトを使用していても、資産=負債+純資産となっていない場合がありますので注意が必要です。
 また、②については、12月に年末調整を行い、例えば源泉徴収税額(給与からの天引き額)が100,000円、年末調整による超過税額(還付額)が120,000円の場合、正しくは△20,000円(またはー20,000円)と記載しますが、誤って100,000円と記載しているケースです。
 国税庁のホームページに「法人事業概況説明書の書き方」が掲載されていますので、初心に帰って確認してみるのもいいかもしれません。

会社が役員から無利息又は低利率で借入れをした場合

 会社が役員に対して金銭を無償又は通常の利率よりも低い利率で貸し付けた場合には、通常取得すべき利率により計算した利息の額と実際収受した利息の額との差額に相当する金額は、その役員に供与した経済的利益となり給与課税されます。(本ブログ記事「役員に金銭を貸し付けた場合の所得税法上の問題」を参照)
 では、その逆の場合はどうでしょうか? 

1.役員側の課税関係

 つまり、役員が会社に対して無利息又は低利率で貸付けをした場合、課税上の問題は生じるのでしょうか?
 
 答は「否」です。
 会社が役員に対して金銭の貸付けをした場合と異なり、役員が会社に金銭を貸し付けた場合においては、無利息又は低利率により利息の計算を行ったとしても、適正な利率による利息との差額を徴収しなければならないということはありません。
 会社は利益の追求を目的としているため、その取引について常に経済的合理性が求められるのに対し、個人は必ずしも利益の追求のみを目的としているわけではないからです。
 したがって、貸し付けた役員側において、利息相当額の認定という課税上の問題が生じることは通常はありません(ただし、「同族会社の行為又は計算の否認」の規定(所得税法157条)が適用され、代表者に収受されるべき利息相当額として、約500億円の雑所得の認定課税が行われた事件(いわゆる平和事件)がありました)。

2.会社側の課税関係

 一方、役員から無利息又は低利率により借入れをした会社は、利息相当額の支払いを免除されたことによる利益(債務免除益)が計上されますが、これと同額の支払利息も計上されますので、やはり課税上の問題が生じることはありません

上場株式等の配当所得及び譲渡所得に係る住民税の課税方式は申告不要が得策

 2017年度(平成29年度)税制改正で、上場株式等の配当所得・譲渡所得について、所得税と住民税で異なる課税方式を選択できるようになりました。

※ 2023(令和5)年分の確定申告から、上場株式等の配当所得・譲渡所得に係る課税方式を所得税と一致させることになりました(所得税と住民税で異なる課税方式を選択することはできません)。
 これにより扶養控除や配偶者控除等の適用、非課税判定、国民健康保険税の保険料算定など、各種行政サービスに影響する場合がありますのでご注意下さい。

1.上場株式等の配当所得の課税方式

 上場株式等の配当所得については、所得税及び住民税ともに以下の課税方式を選択することができます。

(1) 申告不要
(2) 総合課税
(3) 申告分離課税

 所得税の確定申告書において、上場株式等の配当所得を総合課税又は申告分離課税として申告した場合は、住民税も同様にその課税方式が適用されます。
 しかし、納税通知書が送達される日までに、所得税の確定申告書とは別に住民税の申告書「上場株式等の配当・譲渡所得等の課税方式選択申告書」を提出することにより、所得税と異なる課税方式(申告不要、総合課税、申告分離課税)を選択することができます(例えば所得税は総合課税、住民税は申告不要など)。

2.上場株式等の譲渡所得の課税方式

 また、上場株式等の譲渡所得については、所得税及び住民税ともに以下の課税方式を選択することができます。

(1) 申告不要
(2) 申告分離課税

 この場合も、納税通知書が送達される日までに、所得税の確定申告書とは別に住民税の申告書を提出することにより、所得税と異なる課税方式(申告不要、申告分離課税)を選択することができます(例えば所得税は申告分離課税、住民税は申告不要など)。

3.住民税は申告不要が得策

 申告した上場株式等の配当所得と譲渡所得は、住民税の非課税判定や社会保険料(国民健康保険料・後期高齢者医療保険料)算定の基準となる総所得金額や合計所得金額に含まれます。社会保険料(国民健康保険料・後期高齢者医療保険料)には、この住民税の課税所得に連動する「所得割」の仕組みがあるため、申告によって所得が増えれば社会保険料も増えるリスクがあります。
 申告することで所得税の負担を軽減できても、社会保険料が増えれば、全体として負担増となる可能性があります。しかし、住民税を申告不要としておけば社会保険料には影響がありません。
 したがって、住民税は申告不要を選択することが得策といえます
 

交通費込み給与の交通費部分は確定申告でも非課税にできない

1.交通費込み給与の交通費は所得税の課税対象

 給与所得者にとって、月15万円までの交通費(通勤手当)には所得税がかからないということは、当たり前のように思われています。しかし、交通費込みで給与の支給を受けている場合は、交通費部分を非課税とすることはできません。

 所得税法第9条(非課税所得)には、「給与所得を有する者で通勤するものがその通勤に必要な交通機関の利用又は交通用具の使用のために支出する費用に充てるものとして通常の給与に加算して受ける通勤手当(これに類するものを含む。)のうち、一般の通勤者につき通常必要であると認められる部分として政令で定めるもの 」と規定されています。

 ここで注目すべき点は、通常の給与に「加算して」支給される交通費が非課税になるということです。
 したがって、交通費込みで給与の支給を受けている場合には、交通費を含めた全額が給与として所得税の課税対象になります。

2.確定申告で交通費部分を非課税とできるか?

 では、確定申告を行って、交通費込みで支給された給与から、交通費部分を抜き出して非課税とすることはできるのでしょうか?

 これについては、2008年(平成20年)の国税不服審判所の裁決(裁決事例集No.75)で、「通常の給与に加算して通勤手当等が支給されていない場合には、たとえ通勤者が通常の給与のうちから通勤費相当額を負担したとしても、(中略)、当該通勤費相当額を、非課税所得として給与等の収入金額から除外することはできない」とされています。

建物・土地の貸付けの事業的規模の判定と65万円控除

1.事業的規模か業務的規模か

(1) 形式基準(5棟10室)による判定

 不動産所得を生ずべき建物や土地の貸付けが「事業的規模」か「事業的規模に至らない(業務的規模)」かにより、事業専従者給与や青色申告特別控除等の取扱いが異なります。
 事業的規模の判定は、社会通念上事業と称する程度の規模で建物や土地の貸付けを行っているかどうかにより判断することとされていますが、次に該当する場合は、特に反証がない限り、事業として行われていると判断します(形式基準)。

① 建物の場合

イ.貸間、アパート(棟割長屋を含みます)については、独立した室数がおおむね10室以上であること

ロ.独立家屋(①は除きます)の貸付けについては、おおむね5棟以上であること

② 土地の場合

 土地、駐車場の契約件数が、おおむね50件以上であること(1室の貸付けに相当する土地の契約件数を、おおむね5件として判定します)

 例えば、貸室数が7室と貸地の契約件数が20件の場合は、建物と土地を別個に判定するのではなく、貸室7室+(貸地20件÷5件=4室)=11室として事業的規模と判定します。

(2) 実質基準による判定は難しい

 なお、実質基準として、賃貸料の収入の状況、貸付資産の管理の状況等からみて、上記の形式基準(いわゆる5棟10室基準)に準ずる事情があると認められる(賃貸収入が比較的多額、かつ、不動産管理の事務量を相当要する)場合は、原則として事業的規模と判定されます。
 しかし、実質基準での判定は、事業所得の性質として掲げられる営利性・有償性、反復・継続性、自己の危険と計算における事業遂行性、精神的・肉体的労力の程度、人的・物的設備の有無などを総合的に判断することになり、非常に難しいといえます。

※ 実質基準により事業的規模と判定された事例については、本ブログ記事「5棟10室未満でも不動産貸付が事業的規模とされた事例」をご参照ください。

2.業務的規模の不動産所得でも65万円控除できる?!

 上記のように、一般的には不動産所得の規模は形式基準によって判定します。その結果、事業的規模に至らない業務的規模と判定された不動産所得は、最高10万円の青色申告特別控除しか受けることができません(措法25の2①)。 

 しかし、業務的規模の不動産所得でも65万円の青色申告特別控除を受けられる場合があります。

 以前の記事で紹介したように、65万円の青色申告特別控除の要件に、「事業的規模の不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営む者であること」という項目があります(65万円の青色申告特別控除の要件については、本ブログ記事「青色申告特別控除と青色申告承認申請書の提出期限の注意点」を参照)。
 これは、不動産所得が事業的規模でない場合であっても、65万円控除の要件を具備する事業所得がある場合には、65万円の青色申告特別控除を適用することができることを意味します(措法25の2③)
 したがって、例えば事業所得が赤字で、不動産所得が事業として行われていない場合でも、不動産所得から65万円の特別控除ができます。

セルフメディケーション税制における「一定の取組」の留意点

1.「一定の取組」の具体例

 2017年(平成29年)1月1日よりセルフメディケーション税制が施行され、従来の医療費控除との選択適用ができるようになりました。
 この税制を利用するためには、次の要件を満たす必要があります。

(1) 所得税及び住民税の課税対象者であること
(2) 年間でスイッチOTC医薬品を1万2千円超購入していること(同一生計者の購入額を合算可能)
(3) 確定申告を行う者が健康の保持増進及び疾病の予防への一定の取組を行っていること

 上記要件のうち(3)の「一定の取組」とは、具体的には以下のものが該当します。

① 保険者(健康保険組合、市区町村国保等)が実施する健康診査
 保険事業や健康増進事業として行われる人間ドック、各種健(検)診等
② 市区町村が健康増進事業として行う健康診査
 生活保護受給者等を対象とする健康診査
③ 予防接種
 高齢者の肺炎球菌感染症及びインフルエンザの予防接種並びに任意のインフルエンザの予防接種
④ 勤務先で実施する定期健康診断
 事業主検診
⑤ 特定健康診査、特定保健指導
 いわゆるメタボ検診
⑥ 市町村が健康増進事業として実施するがん検診
 市町村が健康増進事業として行う乳がん、子宮がん検診など

2.「一定の取組」の留意点

 これらの取組を行う上での留意点は次のとおりです。

(1) 申告者が任意(全額自己負担)で受けた健康診査等は「一定の取組」には含まれません。例えば、申告者が任意で受診した人間ドック(全額自己負担)は「一定の取組」には含まれません。
 なお、任意で受けたインフルエンザの予防接種は「一定の取組」に含まれます。
(2) 上記のすべての取組を行う必要はなく、いずれか1つを行えば問題ありません。
(3) 世帯全員が取組を行う必要はなく、申告者のみが取組を行えば問題ありません。

旅行業者の売上は契約内容によっては純額で計上できる!

1.総額主義と純額主義

 企業会計原則では、「費用及び収益は、総額によって記載することを原則とし、費用の項目と収益の項目とを直接に相殺することによってその全部又は一部を損益計算書から除去してはならない。」とされています。これを総額主義といいます。
 例えば、1,000万円で仕入れた商品を1,200万円で売った場合は、損益計算書の表示は次のようになります。

 売 上 高  1,200万円
 仕 入 高  1,000万円
 売上総利益   200万円

 これに対して、費用の項目と収益の項目を相殺する純額主義による損益計算書の表示は次のようになります。

 売 上 高   200万円
 仕 入 高    0万円
 売上総利益   200万円

2.法人税と消費税への影響

 総額主義が原則とされていますので、会計処理も売上と仕入を両立する総額による処理(以下、本記事では総額主義による会計処理を「総額処理」といい、純額主義による会計処理を「純額処理」といいます)を行い、税務署等には総額主義による決算書を提出します。
 しかし、総額処理でも純額処理でも利益は200万円になりますので、法人税等の計算には影響がないといえます。
 
 一方、消費税の計算には大きな影響があります。
 総額処理によると売上が1,000万円を超えていますので、2年後は消費税の課税事業者と判定されるのに対し、純額処理では売上が1,000万円以下ですので、2年後は免税事業者と判定されます。
 もちろん、消費税では総額処理により課税事業者・免税事業者の判定を行います。

 ところが、旅行業者については、契約の内容によっては純額処理により売上を計上することができます。

3.企画旅行と手配旅行

 旅行業者が取り扱う旅行契約は、「企画旅行」と「手配旅行」に大別されます。
企画旅行は、さらに「募集型」と「受注型」に分かれます。
 「募集型企画旅行」は、旅行業者があらかじめ目的地・日程等の旅行内容や旅行代金を定めた旅行計画を作成し、パンフレット・広告などにより参加者を募集してその旅行を実施するものです。パッケージツアーまたはパック旅行といわれるものがこれにあたります。
 「受注型企画旅行」は、旅行業者が旅行者の依頼により目的地・日程等の旅行内容や旅行代金を定めた旅行計画を作成し、その旅行を実施するものです。学校の修学旅行や企業の慰安旅行などがこれにあたります。
 「手配旅行」は、旅行者のため又は運送機関や宿泊施設等のために、サービスの提供について代理して契約を締結、媒介、取次ぎをすることをいいます。JR券、航空券、宿泊券等の予約・手配がこれにあたります。

4.企画旅行は総額処理、手配旅行は純額処理

 売上の計上方法は、企画旅行は総額処理、手配旅行は純額処理になります。

(1) 企画旅行の場合・・・総額処理

 例えば、当社が企画・主催したパック旅行54,000円を旅行者に販売し、新幹線のチケット代32,400円とホテルの宿泊代10,800円(それぞれ実費)をJRとホテルに支払ったときの会計処理は、次のようになります。

 (現金預金)54,000(旅行売上)54,000
 (旅行仕入)43,200(現金預金)43,200

 企画旅行の場合は、新幹線のチケット代とホテルの宿泊代などの実費43,200円を課税仕入、パック旅行代金54,000円を課税売上として認識します。

(2) 手配旅行の場合・・・純額処理

 例えば、旅行者のために新幹線のチケット代32,400円とホテルの宿泊代10,800円(それぞれ実費)を手配し、これに手数料10,800円を上乗せして54,000円で旅行者に販売したときの会計処理は、次のようになります。

 ① 旅行者に販売時
 (現金預金)54,000(旅行売上)10,800
            (預 り 金)43,200
 ② 業者に支払時
 (預 り 金)43,200(現金預金)43,200

 手配旅行の場合は、新幹線のチケット代とホテルの宿泊代などの実費43,200円は、預り金などの通過勘定で処理し、実費に上乗せした手数料10,800円を課税売上(役務の提供の対価)として認識します。

(3) 企画旅行の例外的処理・・・純額処理

 他社が主催するパック旅行を仕入れて販売する場合や、実質が手配旅行契約と認められるもの(手配の集合体方式)については、上記(2)「手配旅行」の場合と同じ純額処理になります。