賞与(ボーナス)の社会保険料と所得税の計算方法

 社会保険料(健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料)と雇用保険料は毎月の給与から控除(天引き)しますが、ボーナス(賞与)に対しても社会保険料・雇用保険料はかかります。
 ボーナスから控除する社会保険料や所得税の計算方法は、毎月の給与から控除する場合と計算方法が異なります(雇用保険料は、ボーナスの場合も毎月の給与の場合も計算方法は同じです)。
 以下では、ボーナスに対する社会保険料・雇用保険料及び所得税の計算方法と、ボーナス支給後の手続きについて確認します。

1.賞与に対する社会保険料の計算方法

出所:全国健康保険協会ホームページ

 毎月の社会保険料は標準報酬月額に基づいて計算しますが、ボーナスから控除する社会保険料は「標準賞与額」に基づいて計算します。
 標準賞与額とは、支給する賞与額の1,000円未満の端数を切り捨てた金額をいいます。この標準賞与額に保険料率を乗じて社会保険料を算出し、算出された社会保険料を事業主と被保険者が労使折半で負担します。

 例えば、2022(令和4)年12月にAさん(兵庫県在住の38歳の従業員で扶養親族は1人)に400,800円のボーナスを支給する場合、ボーナスから控除する社会保険料と雇用保険料は次のように計算します。

標準賞与額400,000円×健康保険料率10.13%×1/2=20,260円(健康保険料)
標準賞与額400,000円×厚生年金保険料率18.3%×1/2=36,600円(厚生年金保険料)
実際支給額400,800円×雇用保険料率5/1000=2,004円(雇用保険料)※
控除合計額20,260円+36,600円+2,004円=58,864円

※社会保険料計算では、1,000円未満の端数を切り捨てた標準賞与額に保険料率を乗じますが、雇用保険料計算の際は1,000円未満の端数を切り捨てずに保険料率を乗じます。

 また、2022(令和4)年12月にBさん(兵庫県在住の41歳の従業員で扶養親族は1人)に400,800円のボーナスを支給する場合、ボーナスから控除する社会保険料と雇用保険料は次のように計算します。

標準賞与額400,000円×健康保険料率11.77%×1/2=23,540円(健康保険料・介護保険料)
標準賞与額400,000円×厚生年金保険料率18.3%×1/2=36,600円(厚生年金保険料)
実際支給額400,800円×雇用保険料率5/1000=2,004円(雇用保険料)
控除合計額23,540円+36,600円+2,004円=62,144円

2.賞与に対する所得税の計算方法

出所:国税庁ホームページ

 ボーナスに対する社会保険料と雇用保険料の計算ができたら、次は「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を用いて、所得税(源泉徴収税額)の計算をします。
 所得税の計算方法は次のとおりです。

(1) まず、「前月の社会保険料等控除後の給与等の金額」を求めます。具体的には、その人の前月の給与額から前月の給与額に対する社会保険料・雇用保険料を差し引いた金額になります。
(2) 次に、その人の扶養親族等(源泉控除対象配偶者及び控除対象扶養親族)の数に応じて、(1)で求めた金額が記載されている行の「賞与の金額に乗ずべき率」を求めます。
(3) (2)で求めた率を、ボーナスの金額からボーナスにかかる社会保険料・雇用保険料を控除した金額に乗じて所得税を算出します。

 例えば、前月のAさんの給与が260,000円、社会保険料が37,102円、雇用保険料が1,300円だった場合、ボーナス400,800円に対する所得税は次のように計算します。

(1) 前月の給与額260,000円-前月の社会保険料37,102円-前月の雇用保険料1,300円=221,598円
(2) 扶養親族等の数が1人なので、(1)の金額は「94千以上243千円未満」の区分に該当し、賞与に乗ずべき率は2.042%。
(3) 所得税=(400,800円-58,864円)×2.042%=6,982円(円未満切捨て)

3.被保険者賞与支払届の提出

 事業主が被保険者および70歳以上被用者へ賞与を支給した場合は、支給日より5日以内に「被保険者賞与支払届」により支給額等を届出します。
 この届出内容により標準賞与額が決定され、これにより賞与の保険料額が決定されるとともに、被保険者が受給する年金額の計算の基礎となるものですので、忘れずに届出をしなければなりません。
 また、賞与にかかる保険料は、毎月の保険料と合算されて賞与支払月の翌月の「納入告知書(口座振替の場合は、納入告知額通知書)」で通知されます。

労働保険の年度更新の仕組みと会計処理(仕訳)

1.労働保険とは?

 労働保険は、労災保険(労働者災害補償保険)と雇用保険に分かれます。
 労災保険は、従業員が仕事中にけがをしたり通勤途中で事故にあった場合に、その治療費や診療費を負担する保険で、その保険料は事業主が全額負担します。
 雇用保険は、失業した場合に当面の生活費を補償する保険で、その保険料は負担割合に応じて事業主と従業員が負担します。

※ 2022(令和4)年度の雇用保険料率については、本ブログ記事「令和4年度雇用保険料率が段階的に改定されます」をご参照ください。

2.労働保険の年度更新とは?

 労働保険料を計算する期間を「保険年度」といい、毎年4月1日から翌年の3月31日までの1年間を単位とします。この1年間に支払われる賃金総額の見込額に事業の種類ごとに定められた保険料率を掛けて算出した概算保険料を、その年度の6月1日から7月10日までに当年度分(4/1~翌3/31)として労働基準監督署(ハローワーク等)へ申告・納付します。

 労働保険料の申告・納付では、当年度分の概算保険料だけではなく、前年度に支給された実際の賃金総額をもとに算定した確定保険料と前年度に納付した概算保険料との差額を精算します。この一連の手続きを「労働保険の年度更新」といいます。
 つまり、年度更新は、前年度の概算保険料の精算と当年度の概算保険料の納付という2つの手続きから成ります。
 概算保険料の精算は、前年度分の確定保険料が前年度に納付した概算保険料より多い場合は前年度の不足分を納付し、前年度分の確定保険料が前年度に納付した概算保険料より少ない場合は当年度の概算保険料の納付額に充当されます(原則として還付金は受け取りません)。

 なお、労働保険の年度更新の際には、労災保険料と雇用保険料の他に一般拠出金も納付します。
 一般拠出金とは、石綿(アスベスト)健康被害者の救済費用にあてるため創設されたもので、全額を事業主が負担します。

3.年度更新の会計処理

 労働保険の会計処理は、前年度の概算保険料を精算する必要があることから、他の社会保険(健康保険・厚生年金)より少し複雑です。
 会計処理上のポイントは、労働保険の手続きの流れと誰が保険料を負担するのかを理解することです。そのうえで、事業主負担分は法定福利費として費用処理し、従業員負担分は立替金などの勘定科目で処理します。

 労働保険の会計処理には、法人税法で認められている会計処理と期間帰属を重視した会計処理がありますが、ここでは実務的に有用な前者の会計処理について確認します。

【設例】
(1) 前年度(R4年度)の概算保険料329,200円の内訳
労災保険:85,800円
雇用保険:243,400円(事業主負担分162,300円 従業員負担分81,100円

(2) 前年度(R4年度)の確定保険料337,800円の内訳
労災保険:88,400円
雇用保険:249,400円(事業主負担分166,300円 従業員負担分83,100円

(3) 当年度(R5年度)の概算保険料393,200円の内訳
労災保険:88,400円
雇用保険:304,800円(事業主負担分194,000円 従業員負担分110,800円

※ 一般拠出金は省略します

(1) 前年度(R4年度)概算保険料の納付

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
法定福利費 248,100 ※2 現金預金 329,200
立替金 ※1 81,100 ※3    

※1 立替金勘定以外に「仮払金」勘定なども可
※2 事業主負担分:85,800+162,300=248,100
※3 従業員負担分:81,100
※4 (参考)R4年度(R4.4.1~R5.3.31)の給与支給時の仕訳(1年間の合計額)

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
給料手当 ××× 現金預金 ×××
    立替金 ※1 83,100 ※2

※1 立替金勘定以外に「預り金」勘定なども可
※2 前年度(R4年度)雇用保険(従業員負担分)の確定保険料

(2) 前年度(R4年度)概算保険料と確定保険料の精算

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
法定福利費 6,600 ※1 現金預金 8,600
立替金 2,000 ※2    

※1 事業主負担分:88,400+166,300-248,100=6,600
※2 従業員負担分:83,100-81,100=2,000

(3) 当年度(R5年度)概算保険料の納付

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
法定福利費 282,400 ※1 現金預金 393,200
立替金 110,800 ※2    

※1 事業主負担分:88,400+194,000=282,400
※2 従業員負担分:110,800

 年度更新の一連の流れに沿った会計処理(仕訳)を示すと、上記のようになります。あとは保険年度ごとに(2)と(3)の仕訳を繰り返し行っていくことになります。