家屋と一体の建築設備は家屋と償却資産のどちらに該当するか?

 家屋(建物)には、家屋と一体となって家屋の効用を高める設備(電気設備、給排水設備、衛生設備、空調設備、消火設備、運搬設備等の建築設備)が取り付けられていますが、固定資産税においては、これらを家屋と償却資産に区分して評価します。

 家屋として評価するものには固定資産税が課され、償却資産として評価するものについては償却資産税が課されますので、家屋と償却資産の区分は重要です。

 しかし、家屋と一体となっているが故に、その区分が判然としないケースもあります。区分のポイントは、家屋と設備の所有者が同じであるか否かという点です。
 この観点から、建築設備における家屋と償却資産の区分について確認します。

1.家屋と設備の所有者が同じ場合

 家屋と一体となって家屋の効用を高める建築設備のうち、取り外しが容易で別の場所に自在に移動のできるもの、屋外に設置された配線又は配管、特定の生産又は業務の用に供されるもの等については、償却資産として取り扱います。

 家屋と建築設備の所有者が同じである場合の家屋と償却資産の区分について、代表的なものを以下に例示します。

建築設備の種類 設備の分類 設備の内容 家屋 償却資産
建築工事 内装・造作等 床・壁・天井仕上、造作・建具、外壁の仕上げ等
店舗造作等工事一式
 
電気設備 受変電設備 設備一式(配線・配管を含む)  
予備電源設備 発電機設備、蓄電池設備、無停電電源設備等(配線・配管を含む)  
中央監視設備 設備一式(配線・配管を含む)  
動力照明設備 屋外設備一式、特定の生産又は業務用設備(ネオンサイン、投光器、スポットライト等)  
屋内設備一式、分電盤  
電力引込設備 引込工事  
動力配線設備 特定の生産又は業務用設備(工場等機械の動力源である動力配線)  
上記以外の設備  
電話設備 電話機、交換機等の機器  
配管・配線、端子盤等  
LAN設備 設備一式  
放送・拡声設備 マイク、スピーカー、アンプ等の機器  
配管・配線等  
監視カメラ
( ITV)設備
受像機(テレビ)、カメラ、録画装置等の機器  
配管・配線等  
給排水衛生設備 給排水設備 屋外設備、引込工事、特定の生産又は業務用設備  
配管、高架水槽、受水槽、ポンプ等  
給湯設備 局所式給湯設備(電気温水器・湯沸器用)  
局所式給湯設備(ユニットバス用、床暖房用等)、
中央式給湯設備
 
ガス設備 屋外設備、引込工事、特定の生産又は業務用設備  
屋内の配管、バルブ、排気筒等  
衛生設備 設備一式(洗面器、大小便器等)  
消火設備 消火器、避難器具、ホース及びノズル、ガスボンベ等  
消火栓設備、スプリンクラー設備等  
空調設備 空調設備 壁掛型ルームエアコン、特定の生産又は業務用設備  
上記以外の設備  
換気設備 特定の生産又は業務用設備  
上記以外の設備  
その他の設備等 運搬設備 工場用ベルトコンベア、垂直搬送機  
エレベーター、エスカレーター、小荷物専用昇降機  
厨房設備 顧客の求めに応じるサービス設備(飲食店・ホテル・百貨店等)、寮・病院・社員食堂等の厨房設備  
上記以外の設備  
その他の設備 冷凍・冷蔵倉庫における冷却装置、ろ過装置、POSシステム、広告塔、文字看板、袖看板、簡易間仕切(衝立)、機械式駐車設備(ターンテーブルを含む)、駐輪設備、ゴミ処理設備、メールボックス、カーテン・ブラインド等  
外構工事 外構工事 工事一式(門・塀・フェンス・植栽等)  

2.家屋と設備の所有者が異なる場合

 賃貸ビル等を借り受けて事業をしている賃借人(テナント)が、自己の費用により附加施工又は譲渡等によって取得した建築設備で事業の用に供することができるものについては、賃借人(テナント)がその建築設備を償却資産として申告することとなります。

 この場合(家屋と建築設備の所有者が異なる場合)上記1の表において「家屋」と区分されているものについても、償却資産として申告しなければなりません。

 具体的には、次のとおりです(は上記1の表において家屋と区分されているものです)。

建築設備の種類 設備の分類 設備の内容 家屋 償却資産
建築工事 内装・造作等 床・壁・天井仕上、造作・建具、外壁の仕上げ等
店舗造作等工事一式
 
電気設備 受変電設備 設備一式(配線・配管を含む)  
予備電源設備 発電機設備、蓄電池設備、無停電電源設備等(配線・配管を含む)  
中央監視設備 設備一式(配線・配管を含む)  
動力照明設備 屋外設備一式、特定の生産又は業務用設備(ネオンサイン、投光器、スポットライト等)  
屋内設備一式、分電盤  
電力引込設備 引込工事  
動力配線設備 特定の生産又は業務用設備(工場等機械の動力源である動力配線)  
上記以外の設備  
電話設備 電話機、交換機等の機器  
配管・配線、端子盤等  
LAN設備 設備一式  
放送・拡声設備 マイク、スピーカー、アンプ等の機器  
配管・配線等  
監視カメラ
( ITV)設備
受像機(テレビ)、カメラ、録画装置等の機器  
配管・配線等  
給排水衛生設備 給排水設備 屋外設備、引込工事、特定の生産又は業務用設備  
配管、高架水槽、受水槽、ポンプ等  
給湯設備 局所式給湯設備(電気温水器・湯沸器用)  
局所式給湯設備(ユニットバス用、床暖房用等)、
中央式給湯設備
 
ガス設備 屋外設備、引込工事、特定の生産又は業務用設備  
屋内の配管、バルブ、排気筒等  
衛生設備 設備一式(洗面器、大小便器等)  
消火設備 消火器、避難器具、ホース及びノズル、ガスボンベ等  
消火栓設備、スプリンクラー設備等  
空調設備 空調設備 壁掛型ルームエアコン、特定の生産又は業務用設備  
上記以外の設備  
換気設備 特定の生産又は業務用設備  
上記以外の設備  
その他の設備等 運搬設備 工場用ベルトコンベア、垂直搬送機  
エレベーター、エスカレーター、小荷物専用昇降機  
厨房設備 顧客の求めに応じるサービス設備(飲食店・ホテル・百貨店等)、寮・病院・社員食堂等の厨房設備  
上記以外の設備  
その他の設備 冷凍・冷蔵倉庫における冷却装置、ろ過装置、POSシステム、広告塔、文字看板、袖看板、簡易間仕切(衝立)、機械式駐車設備(ターンテーブルを含む)、駐輪設備、ゴミ処理設備、メールボックス、カーテン・ブラインド等  
外構工事 外構工事 工事一式(門・塀・フェンス・植栽等)  

償却資産税の申告対象となる資産とは?

 償却資産に対する固定資産税を償却資産税といいます。
 償却資産とは、土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産で、所得税法又は法人税法の所得の計算上減価償却の対象となる資産です。

 毎年1月1日現在において償却資産を所有している法人や個人事業者は、1月31日までにその償却資産を市役所等に申告しなければなりません。

 しかし、実際に申告書を作成する際には、どの資産が申告対象であるのか判断に迷うケースもありますので、以下では償却資産税の申告対象となる資産について、基本的事項の確認をします。

1.申告対象となる資産

 申告対象となる資産は、毎年1月1日現在において事業の用に供することができる資産です。
 なお、次に掲げる資産も申告が必要ですのでご注意ください。

(1)建設仮勘定で経理されている資産
(2)簿外資産(帳簿に記載されていない資産)
(3)償却済資産(減価償却を終わって帳簿上残存価額のみ計上されている資産)
(4)遊休資産(稼働を休止しているが利用可能な資産)
(5)未稼働資産(既に完成または据付済であるが未だ稼働していない資産)
(6)大型特殊自動車(陸運局への登録の有無にかかわらず償却資産に該当)
(7)賃貸ビル等を借り受けて事業をしている者が、自己の費用で付加施工した内部造作等及び譲渡等によって取得した内部造作等で、事業の用に供することができる資産
(8)美術品等のうち取得価額が1点100万円未満であるもの
(9)使用可能期間が1年未満又は取得価額が20万円未満の償却資産であっても個別に減価償却しているもの
(10)租税特別措置法の規定を適用し、即時償却等をしているもの(中小企業者等の少額資産(取得価額30万円未満)の損金算入の特例適用資産

※ 下記3をご参照ください。

2.申告対象とならない資産

 次の(1)~(9)に該当する資産は、償却資産税の課税対象にならないので申告の必要はありません。

(1)使用可能期間が1年未満又は取得価額が10万円未満の償却資産で、税務会計上一時に損金算入または必要経費に算入しているもの(固定資産として計上しないもの)
(2)取得価額が20万円未満の償却資産で、税務会計上3年間で一括償却しているもの
(3)無形減価償却資産(ソフトウェア、営業権、特許権等)
(4)繰延資産(創立費、開業費等)
(5)自動車税又は軽自動車税の課税対象となる自動車等
(6)平成20年4月1日以降に締結されたリース契約のうち、法人税法第64条の2第1項又は所得税法第67条の2第1項に規定するリース資産(所有権移転外リース及び所有権移転リース)で、取得価額20万円未満のもの
(7)生物(ただし、観賞用・興行用のものは申告対象)、立木、果樹
(8)美術品等のうち取得価額が1点100万円以上であるもの
(9)1月2日以降に取得し、翌年1月1日までの間に減少した資産

※ 下記3をご参照ください。

3.少額の減価償却資産の取扱い

 地方税法第341条第4号及び地方税法施行令第49条の規定により、下記(1)~(3)の資産については、償却資産税の申告対象から除かれます。

(1)取得価額10万円未満の資産のうち一時に損金算入したもの
(2)取得価額20万円未満の資産のうち3年間で一括償却したもの
(3)平成20年4月1日以降に締結されたリース契約のうち、法人税法第64条の2第1項又は所得税法第67条の2第1項に規定するリース資産で、取得価額20万円未満のもの

 一方、中小企業者等の少額資産(取得価額30万円未満)の損金算入の特例適用資産は、償却資産税の申告対象となっています。

 少額の減価償却資産の償却資産税における取扱いをまとめると、次のようになります。

区分 償却資産税の申告
少額の減価償却資産の損金(必要経費)算入の対象となる減価償却資産(使用可能期間1年未満又は取得価額10万円未満) 申告対象外
一括償却資産の損金(必要経費)算入の対象となる減価償却資産(取得価額20万円未満) 申告対象外
リース資産でそのリース資産の所有者が取得した際における取得価額が20万円未満のもの 申告対象外
中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金(必要経費)算入の対象となる減価償却資産(取得価額30万円未満) 申告対象
取得価額10万円未満又は20万円未満でも個別償却を選択したもの 申告対象

4.まとめ

 上記1~3について、償却方法と取得価額により申告対象をまとめると、次のようになります。

  10万円未満 10万円以上20万円未満 20万円以上30万円未満 30万円以上
一時損金算入 申告対象外      
3年一括償却 申告対象外 申告対象外    
リース資産 申告対象外 申告対象外 申告対象 申告対象
中小企業特例 申告対象外 申告対象 申告対象  
個別減価償却 申告対象 申告対象 申告対象 申告対象

事務所・店舗等を移転した場合の償却資産申告書の記載例

1.償却資産税の申告対象

 償却資産とは、土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産で、所得税法又は法人税法の所得の計算上減価償却の対象となる資産をいいます。
 例えば、飲食店を営む個人事業主であれば、店舗で使用している冷蔵庫やレジスター、エアコン等が該当します。

 償却資産は毎年1月1日現在での所有状況を、1月31日までにその償却資産の所在地の市区町村へ申告することになっています。

 1月1日現在において事業の用に供することができる資産であれば、遊休資産(稼動を休止しているが、維持補修が行われている資産)、未稼働資産(すでに完成しているが、まだ稼働していない資産)、償却済み資産(減価償却を終わり、残存価額のみ帳簿に計上されている資産)なども申告対象となります
 一方、自動車税・軽自動車税の課税対象となる車両無形固定資産(ソフトウェア、鉱業権、漁業権、特許権等)、繰延資産(創立費、開業費、試験研究費等)などは申告対象とはなりません
 また、少額の減価償却資産については、取得価額10万円未満の資産のうち一時に損金算入したもの、取得価額20万円未満の資産のうち3年間で一括償却したものなどは申告対象から除外されますが、中小企業者等が取得価額30万円未満の減価償却資産の合計額 300万円までを損金算入した場合(中小企業者等の少額資産特例)は申告対象となります

※ 取得価額が10万円未満の資産であっても、一時に損金算入せず個別に減価償却しているものは償却資産税の申告対象となります。

2.移転前と移転後の両方の所在地に申告が必要

 先に述べたように、償却資産は毎年1月1日現在での所有状況を、1月31日までにその償却資産の所在地の市区町村へ申告することになっています。
 もし、本店や事務所、店舗等を移転し償却資産の所在地が変わった場合は、移転後の所在地だけではなく移転前の所在地の市区町村に対しても償却資産申告書を提出する必要があります。
 次の設例を用いて、飲食業を行っている法人が店舗を移転した場合の償却資産申告書記載例を示します。

 株式会社ITAMIは、兵庫県伊丹市○○1-2-3に所在する店舗で飲食業を行っていたが、令和5年9月29日にその店舗を廃止し、令和5年9月30日から兵庫県宝塚市○○町4-5-6へ店舗を移転(開設)した。
 令和6年1月26日に、令和6年度償却資産申告書を伊丹市と宝塚市に提出した。

 旧店舗の所在地の伊丹市には、償却資産申告書の「備考」欄(下図の赤枠内)に必要事項を記入して、申告書だけを提出します。
 種類別明細書(増加資産・全資産)は提出する必要はありません(ただし、これは兵庫県伊丹市の例であって、市区町村によっては種類別明細書の提出も求められることがあります)。

 新店舗の所在地の宝塚市には、償却資産申告書と種類別明細書(増加資産・全資産)を提出します。
 償却資産申告書の書き方のポイントは、次のとおりです。

(1) 伊丹市の申告書に記載されている「前年前に取得したもの(イ)」欄の金額を、宝塚市の申告書の「前年中に取得したもの(ハ)」欄に転記します。下図記載例では令和5年1月2日以降に取得した償却資産が無いことを前提としていますが、もし取得した償却資産があればその金額も加算します。

(2) 申告書の「異動事項」欄に異動日の日付を記入し、該当項目を〇で囲みます。今回はア~オに該当する項目がありませんので、「備考」欄に伊丹市より転入と記載します。

 種類別明細書(増加資産・全資産)の書き方のポイントは、次のとおりです。

(1) 「資産の種類」、「資産の名称等」、「数量」、「取得年月」、「取得価額」、「耐用年数」の各欄は、伊丹市の種類別明細書(増加資産・全資産)に記載されている内容を転記します。
 「増加事由」欄は3(移動による受け入れ)を〇で囲み、「摘要」欄に伊丹市よりと記入します。

(2) もし令和5年1月2日以降に取得した償却資産がある場合は、その取得の記入をします。


 

償却資産申告書の修正方法(修正申告)

1.過誤納金は5年度分なら還付可能

 償却資産の所有者は、毎年1月1日現在に所有する償却資産の内容を、その年の1月31日までにその償却資産所在の市町村に対して申告をしなければなりません(償却資産の課税標準額が150万円(免税点)未満の場合は課税されませんが、申告は必要です)。
 この償却資産の申告が間違っていた場合、例えば既に廃棄済みの資産を誤って申告していた場合などは、修正申告によって過誤納金(本来は納付する必要のない税金)の還付を受けることができます。
 過誤納金は、第1期の法定納期限(市町村によって異なりますが、ここでは4月30日とします)から5年以内であれば還付を受けることができます。例えば、2021(令和3)年12月に、過去に廃棄済みの資産を申告していたことが発覚した場合は、2017(平成29)年度~2021(令和3)年度分の固定資産税(償却資産税)について過誤納金の還付を受けることができます。

2.修正申告の方法

 修正申告(償却資産申告書の修正)の方法については、特段法令等で規定されていません。そのため、市町村によって対応は異なりますが、概ね以下の2つの方法に分類されると思われます(実際に修正申告をする際は、必ず当該市町村に確認をしてください)。
 以下では、機械装置(取得価額80万円)を2020(令和2)年に廃棄していたにもかかわらず、2021(令和3)年度分の償却資産申告書から除外せずに申告していたケースを想定して、修正申告の方法をみていきます。

(1) 誤った申告書を差し換える方法(差換修正)

 まず、前提として、2021(令和3)年度の申告において、次のような償却資産申告書を提出していたとします。

 本来であれば、2020(令和2)年に廃棄した機械装置80万円を「前年中に減少したもの(ロ)」の欄に次のように記載して、2021(令和3)年度償却資産申告書を作成すべきでした(同申告書の上欄余白部分に「修正」又は「修正申告」と記載します)。

 「差換修正」の方法は、元の誤った申告書を、このように本来あるべき申告書に書き換える方法です。これにより、誤って提出した申告書を正しい申告書に差し換えたことになります。

(2) 誤った部分を追加する方法(追加修正)

 「追加修正」の方法は、2021(令和3)年度償却資産申告書を、次のように作成する方法です (同申告書の上欄余白部分に「修正」又は「修正申告」と記載します) 。

 上記(1)の「差換修正」の方法と見比べると、「前年前に取得したもの(イ)」の欄の金額が異なっています。
 「差換修正」の方法 では、2021(令和3)年度の申告前(言い換えると、2020(令和2)年度の申告後)の数字が記載されているのに対し、「追加修正」の方法では、2021(令和3)年度の申告後(誤って提出した2021(令和3)年度償却資産申告書の「計((イ)-(ロ)+(ハ))(ニ)」の欄)の数字が記載されています。これにより、誤って提出した申告書を追加修正したことになります。

3.還付には修正申告の根拠資料の提示が必要

 修正申告は上記のように行いますが、修正申告書の提出のみをもって過誤納金が還付されるわけではありません。修正申告の根拠資料、上記の例であれば「廃棄したことを証明する書類(例えば、廃棄業者に引き渡したことが確認できる書類や社内の稟議書など)」の提示も必要です。

中小企業等経営強化法の認定が必要な設備投資税制

 2017(平成29)年度税制改正によって、中小企業投資促進税制の上乗せ措置が改組され、新たに「中小企業経営強化税制」が創設されました。
 この中小企業経営強化税制をはじめ、2019(平成31)年3月31日までに取得した資産に適用される設備投資税制には以下のものがあります。

 ①中小企業投資促進税制
 ②中小企業経営強化税制
 ③固定資産税の特例
 ④商業・サービス業・農林水産業活性化税制

 上記のうち、中小企業等経営強化法の認定が必要な税制は②と③、認定がなくても活用できる税制は①と④です。
 前回は、認定がなくても活用できる①中小企業投資促進税制と④商業・サービス業・農林水産業活性化税制について述べました。今回は、認定が必要な②中小企業経営強化税制と③固定資産税の特例について述べていきます。

※ 2021(令和3)年度税制改正で、中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制の見直しが行われています。改正内容については、本ブログ記事「令和3年度改正後の中小企業投資促進税制」及び「令和3年度改正後の中小企業経営強化税制」をご参照ください。なお、(中小企業経営強化法による)固定資産税の特例と商業・サービス業・農林水産業活性化税制は、適用期限の到来をもって廃止されています。

1.中小企業経営強化税制

 まず、中小企業経営強化税制(中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除)について、その概略を記していきます。

(1) 制度概要

 青色申告書を提出する中小企業者等(従業員1,000人以下の個人事業主を含む)が、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき一定の新品設備を取得し指定事業の用に供した場合、即時償却又は10%の税額控除(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)を選択適用するこ とができます。

(2) 適用期間

 2017(平成29)年4月1日~2019(平成31)年3月31日に取得した資産

※2019(平成31)年度税制改正によって、適用期限が2021(平成33)年3月31日まで2年延長されることになりました。

(3) 指定事業

 中小企業投資促進税制の対象事業及び商業・サービス業・農林水産業活性化税制の対象事業

(4) 対象設備

 ① 生産性向上設備(A類型)・・・生産性が旧モデル比年平均1%以上向上する設備
 イ.機械及び装置・・・160万円以上(10年以内に販売開始)
  ロ.測定工具及び検査工具・・・30万円以上(5年以内に販売開始)
 ハ.器具備品・・・30万円以上(6年以内に販売開始)
 ニ.建物附属設備・・・60万円以上(14年以内に販売開始)
 ホ.ソフトウェア(情報を収集・分析・指示する機能)・・・70万円以上(5年以内に販売開始)

 ② 収益力強化設備(B類型)・・・投資利益率が年平均5%以上の投資計画に係る設備
 イ.機械及び装置・・・160万円以上
 ロ.工具・・・30万円以上
 ハ.器具備品・・・30万円以上
 ニ.建物附属設備・・・60万円以上
 ホ.ソフトウェア・・・70万円以上

※2019(平成31)年度税制改正によって、2分の1超の売電を見込む太陽光発電設備を対象設備から除外するとともに、売電を予定している場合には計画の申請時に一定の書類添付が義務付けられることとなりました。

(5) 確認者

 ① A類型・・・工業会等の証明
 ② B類型・・・経済産業局の確認
 なお、A類型・B類型ともにその業種を所轄する主務大臣に対し、中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定が必要です。

(6) 措置内容

 即時償却又は税額控除(取得価額×10%)
 税額控除額は、当期の法人税額の20%が上限です。
(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%の税額控除のみ)

(7) 留意事項

 中小企業経営強化税制は、適用できない業種(映画業を除く娯楽業、電気業、水道業、鉄道業、航空運輸業、銀行業等)があります。
 太陽光発電などのいわゆる売電は電気業に該当しますので、そのための設備は対象になりません。
 太陽光発電システム自体は対象設備ですので、自社工場用など売電ではないもの等については対象となります。
(太陽光発電設備の優遇税制については、本ブログ記事「中小企業等経営強化法に基づく太陽光発電設備の優遇税制について」を参照)

2.固定資産税の特例

 上記の中小企業経営強化税制と同じく、2017(平成29)年度税制改正により中小企業等経営強化法に係る固定資産税の特例も拡充され、従来は対象設備が機械装置に限定されていたのに対し、高効率の冷蔵陳列棚、省エネ空調等の器具備品、建物附属設備が対象設備に追加されました。
 以下では、固定資産税の特例(経営力向上計画に係る固定資産税の特例措置)について、その概略を記していきます。

(1) 制度概要

 青色申告書を提出する中小企業者等(従業員1,000人以下の個人事業主を含む)が、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき一定の新品設備を取得等した場合、固定資産税(償却資産税)が3年間にわたって2分の1に軽減されます。
 要件や手続きは中小企業経営強化税制のA類型とほぼ同じため、一緒に手続きをすることが可能です。

(2) 適用期間

 2016(平成28)年7月1日~2019(平成31)年3月31日に取得した資産

(3) 指定事業

 中小企業投資促進税制の対象事業及び商業・サービス業・農林水産業活性化税制の対象事業

(4) 対象設備

 生産性向上設備(A類型)・・・生産性が旧モデル比年平均1%以上向上する設備
 ① 機械及び装置・・・160万円以上(10年以内に販売開始)
 ② 測定工具及び検査工具・・・30万円以上(5年以内に販売開始)
 ③ 器具備品・・・30万円以上(6年以内に販売開始)
 ④ 建物附属設備・・・60万円以上(14年以内に販売開始)

 中小企業経営強化税制の対象設備であるソフトウェアは、固定資産税(償却資産税)の課税客体ではありません。

 2017(平成29)年度税制改正により対象に追加された設備(2017(平成29)年4月1日以降に取得した測定工具及び検査工具、器具備品、建物附属設備)については、対象地域・対象業種が一部限定されます。
 業種が限定される地域は、最低賃金が全国平均以上の7都府県(埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、京都、大 阪)です。上記以外の40道県においては全業種が対象です。
 機械装置については、引き続き全国・全業種で対象になります。

(5) 確認者

 工業会等の証明
 なお、その業種を所轄する主務大臣に対し、中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定が必要です。

(6) 措置内容

 固定資産税の課税標準が、3年間 2分の1に軽減。

(7) 留意事項

 2017(平成29)年度税制改正により対象に追加された設備(2017(平成29)年4月1日以降に取得した測定工具及び検査工具、器具備品、建物附属設備)については、対象地域・対象業種が一部限定されます。
 いわゆる売電用の太陽光発電システムも対象設備になります。

 なお、経営力向上計画に係る固定資産税の特例措置は、2019(平成31)年3月31日をもって終了します(期限の延長は行われません)。
 2019(平成31)年4月1日以降に取得等をした設備は、この特例措置の対象外となりますのでご注意ください。

※固定資産税の特例の廃止に伴い、2018(平成30)年度税制改正で創設された新固定資産税の特例については、本ブログ記事「生産性向上特別措置法による新固定資産税の特例」を参照してください。

中小企業等経営強化法に基づく太陽光発電設備の優遇税制について

1.中小企業経営強化税制

(1) 全量売電の太陽光発電設備は対象外

 中小企業経営強化税制は、2017年(平成29年)4月1日から2019年(平成31年)3月31日までの期間に対象設備の取得等をして指定事業の用に供したときに、即時償却又は7%の税額控除(資本金3,000万円以下の法人又は個人事業主は10%の税額控除)が認められるというものです。

 この対象設備には太陽光発電設備も含まれますが、売電のみを目的とする場合(全量売電)は電気業に該当するため、中小企業経営強化税制の対象外となります。

 上述したように、中小企業経営強化税制は「指定事業」の用に供したときに認められるものです。
「指定事業」とは、具体的には、製造業、建設業、鉱業、卸売業、道路貨物運送業、倉庫業、港湾運送業、ガス業、小売業、料理店業その他の飲食店業、一般旅客自動車運送業、海洋運輸業及び沿海運輸業、内航船舶貸渡業、旅行業、こん包業、郵便業、損害保険代理業、情報通信業、学術研究、専門・技術サービス業、宿泊業、洗濯・理容・美容・浴場業、その他の生活関連サービス業、映画業、教育・学習支援業、医療、福祉業、協同組合、サービス業(廃棄物処理業、自動車整備業、機械等修理業、職業紹介・労働者派遣業、その他の事業サービス業)、農業、林業、漁業、水産養殖業、不動産業、物品賃貸業、広告業、社会保険・社会福祉・介護事業です。

 この「指定事業」に電気業は含まれていないため、全量売電型の太陽光発電設備は中小企業経営強化税制の対象にはなりません。
 ただし、発電した電気の一部をその指定事業に使用している場合(余剰売電)や自家消費の場合は、対象となります。

(2) 2019年度(平成31年度)税制改正の内容

 2019年度(平成31年度)税制改正で、中小企業経営強化税制については、特定経営力向上設備等の範囲の明確化及び適正化を行った上で、適用期限が2021年(平成33年)3月31日まで2年延長されることになりました。

「特定経営力向上設備等の範囲の明確化及び適正化」とは、具体的には、2分の1超の売電を見込む太陽光発電設備を対象設備から除外することを意味します。

 上記(1)でみたように、電気業は指定事業に含まれていないため全量売電を目的とした太陽光発電設備は中小企業経営強化税制の対象になりませんが、発電した電気の一部を指定事業に使用(例えば自社の製造工場で使用)し、余った電気を売電(余剰売電)する場合は対象となります。
 ところが、最近では、太陽光発電設備の敷地に自動販売機を設置し、そこにわずかな電気を使うことで形式的に指定事業に係る要件を満たすといった、制度趣旨に反するような事例がみられるようになったことから、2分の1超の売電を見込む設備については対象設備から除外されることとなりました。

 また、売電を予定している場合には、経営力向上計画の認定申請時に一定の書類(発電の用に供する設備の概要や当該設備による発電量等の見込みを記載)の添付が義務付けられました。

 以上の改正は2019年(平成31年)4月1日に施行される予定です。

 ※2019年(平成31年)3月16日記事更新 

2.固定資産税の特例

 一方、太陽光発電設備は、全量売電、余剰売電、自家消費を問わず、固定資産税の特例措置の適用対象となります。
  固定資産税の特例措置とは、2016年(平成28年)7月1日から2019年(平成31年)3月31日までの期間内に認定を受けた経営力向上計画に基づき対象となる機械装置を取得した場合、その翌年度から3年度分に限り、その機械装置に係る償却資産の課税標準が2分の1に軽減されるというものです(2017年(平成29年)4月1日から対象となる資産等が変更となっています)。

 この特例の適用を受けるためには、償却資産申告書に以下の書類を添付しなければなりません(大阪市の場合)。
 ①課税標準特例該当資産明細合計表
 ②工業会証明書
 ③経営力向上計画申請書の写し
 ④経営力向上計画認定書の写し

※この特例は2019年(平成31年)3月31日をもって終了します。期限の延長は行われません。
 2018年度(平成30年度)税制改正で創設された新固定資産税の特例については、本ブログ記事「生産性向上特別措置法による新固定資産税の特例」を参照してください。