令和8年4月1日よりマイカー通勤手当の非課税限度額が引き上げられました

 電車やバスなどの交通機関を利用している役員や従業員に対して支給する通勤手当は、月額15万円以下であれば所得税および復興特別所得税(以下「所得税等」といいます)が非課税となっています

 一方、電車やバスなどの交通機関を利用せずに、マイカー等の交通用具で通勤する場合の通勤手当にも、所得税等の非課税限度額が設けられています。

 このマイカー等で通勤する場合の非課税限度額について、2026(令和8)年度税制改正により、次の改正が行われました。

・通勤距離が片道65キロメートル以上について新たな距離区分が設けられ、非課税限度額が引き上げられました。
・一定の要件を満たす駐車場等を利用し、その料金を負担することを常例とする場合の1か月当たりの非課税限度額については、その通勤距離の区分に応じた非課税限度額に1か月当たりのその駐車場等の料金相当額(上限5,000円)を加算した金額とすることとされました。

 この改正は、2026(令和8)年4月1日以後に支払われるべき通勤手当(同日前に支払われるべき通勤手当の差額として追加支給するものを除きます)について適用されます。

 以下では、改正後の非課税限度額について確認します。

通勤手当を区分せず給与に含めて支給する場合については、「交通費込み給与の交通費部分は確定申告でも非課税にできない」をご参照ください。

1.マイカーや自転車などで通勤している場合

 マイカーや自転車などの交通用具を使用して通勤している場合の1か月当たりの非課税限度額は、片道の通勤距離(通勤経路に沿った長さ)に応じて定められています。
 改正後の1か月当たりの非課税限度額は、次のとおりです。

片道の通勤距離 1か月当たりの非課税限度額
改正後 改正前
2キロメートル未満 全額課税 同左
2キロメートル以上10キロメートル未満 4,200円 同左
10キロメートル以上15キロメートル未満 7,300円 同左
15キロメートル以上25キロメートル未満 13,500円 同左
25キロメートル以上35キロメートル未満 19,700円 同左
35キロメートル以上45キロメートル未満 25,900円 同左
45キロメートル以上55キロメートル未満 32,300円 同左
55キロメートル以上65キロメートル未満 38,700円 38,700円
65キロメートル以上75キロメートル未満 45,700円
75キロメートル以上85キロメートル未満 52,700円
85キロメートル以上95キロメートル未満 59,600円
95キロメートル以上 66,400円

 上表の1か月当たりの非課税限度額を超えて通勤手当を支給する場合は、超える部分の金額が給与として課税されます。

 改正後の非課税限度額は、2026(令和8)年4月1日以後に支払われるべき通勤手当について適用されますが、次に掲げる通勤手当については、改正後の非課税限度額は適用されません。

(1) 令和8年3月31日以前に支払われた通勤手当
(2) 令和8年3月31日以前に支払われるべき通勤手当で同年4月1日以後に支払われるもの
(3) (1)又は(2)の通勤手当の差額として追加支給されるもの

2.電車やバスなどの交通機関で通勤している場合

 電車やバスなどの交通機関を利用して通勤している場合の非課税限度額は、月額15万円以下とされています。
 これは、通勤のための運賃・時間・距離等の事情に照らして、最も経済的かつ合理的な経路および方法で通勤した場合の通勤定期券などの金額です。

 新幹線や特急列車を利用した場合の運賃等の額も、その通勤方法や経路が「最も経済的かつ合理的な経路および方法」に該当する場合は非課税の通勤手当に含まれますが、グリーン料金は最も経済的かつ合理的な通勤経路および方法のための料金とは認められないため、非課税の通勤手当に含まれません。

 したがって、通勤手当が月額15万円以下だったとしても、そこにグリーン料金が含まれている場合は、グリーン料金部分については給与として課税されます。

3.交通機関とマイカー等を併用して通勤している場合

 電車やバスなどの交通機関とマイカーや自転車などの交通用具を併用して通勤している場合は、両者の合計額が月額15万円までなら所得税等が非課税となります(交通用具を使用する通勤距離が片道2キロメートル未満である場合を除きます)。

 具体的には、次の(1)と(2)を合計した金額が月額15万円以内であれば、非課税の通勤手当となります。

(1) 電車やバスなどの交通機関を利用する場合の1か月間の通勤定期券などの金額(上記2参照)
(2) マイカーや自転車などの交通用具を使用して通勤する片道の距離で定められている1か月当たりの非課税限度額(上記1参照)

 例えば、自宅から自宅の最寄駅まではマイカーを使用し(片道距離12キロメートル)、自宅の最寄駅から勤務先の最寄駅までは電車を利用する(1か月定期券15,000円)場合は、7,300円+15,000円=22,300円が非課税の通勤手当となります。

4.マイカーや自転車などで通勤して駐車場も利用する場合

 マイカーや自転車などの交通用具を使用して通勤し、一定の要件を満たす駐車場等を利用している場合は、次の(1)と(2)を合計した金額が非課税限度額となります(通勤距離が片道2キロメートル未満である場合を除きます)。

(1) マイカーや自転車などの交通用具を使用して通勤する片道の距離で定められている1か月当たりの非課税限度額(上記1参照)
(2) 1か月当たりの駐車場等の料金相当額(上限5,000円

「一定の要件を満たす駐車場等」とは、通勤のために使用する交通用具の駐車のための駐車場等のうち、その通勤手当の支払を受ける人の勤務する場所の周辺にあるものをいいます。

5.交通機関とマイカー等を併用して通勤して駐車場も利用する場合

 電車やバスなどの交通機関とマイカーや自転車などの交通用具を併用して通勤し、一定の要件を満たす駐車場等も利用している場合は、次の(1)~(3)の合計額が月額15万円までなら所得税等が非課税となります(交通用具を使用する通勤距離が片道2キロメートル未満である場合を除きます)。

(1) 電車やバスなどの交通機関を利用する場合の1か月間の通勤定期券などの金額(上記2参照)
(2) マイカーや自転車などの交通用具を使用して通勤する片道の距離で定められている1か月当たりの非課税限度額(上記1参照)
(3) 1か月当たりの駐車場等の料金相当額(上限5,000円

「一定の要件を満たす駐車場等」とは、通勤のために使用する交通用具の駐車のための駐車場等のうち、その通勤手当の支払を受ける人の勤務する場所の周辺又はその人が通勤のために利用する交通機関の駅若しくは停留所その他の施設の周辺にあるものをいいます。

上場株式等に係る譲渡損失の「損益通算」と「繰越控除」の注意点

 上場株式等を、金融商品取引業者(証券会社や投資信託委託会社など)を通じて譲渡したことにより生じた譲渡損失の金額は、確定申告をすることによって、その年分の上場株式等の配当所得等の金額と損益通算することができます。

 また、損益通算してもなお控除しきれない譲渡損失の金額については、翌年以後3年間にわたり、確定申告をすることによって、上場株式等の譲渡所得等の金額および上場株式等の配当所得等の金額から繰越控除することができます。

 今回は、上場株式等に係る譲渡損失の損益通算と繰越控除について、適用を受ける際の注意点と手続きを確認します。

1.損益通算の注意点

 上場株式等に係る譲渡損失の金額は損益通算の対象となりますが、以下の点に注意しなければなりません。

(1) 上場株式等の譲渡損失(赤字)の金額は他の上場株式等に係る譲渡益(黒字)の金額から控除できますが、その控除をしてもなお控除しきれない譲渡損失の金額は、下記(3)の場合を除き、他の所得(不動産所得、事業所得、給与所得など)の金額から控除することはできません。

(2) 上場株式等の譲渡損失(赤字)の金額は、一般株式等に係る譲渡益(黒字)の金額から控除することはできません※1

※1 一般株式等に係る譲渡損失(赤字)の金額は、「特定中小会社の発行株式に係る譲渡損失の損益通算および繰越控除」の場合を除き、上場株式等に係る譲渡益(黒字)の金額から控除することはできません。

(3) 上場株式等を、金融商品取引業者等を通じて譲渡※2したことにより生じた譲渡損失(赤字)の金額は、確定申告をすることによって、その年分の上場株式等の配当等に係る利子所得および配当所得の金額(以下「上場株式等の配当所得等の金額」といいます)から控除することができます※3

※2 上場株式等の譲渡であっても、いわゆる相対取引などにより生じた譲渡損失については、損益通算できません。

※3 上場株式等の配当等に係る配当所得については、申告分離課税を選択したものに限ります。
 なお、上場株式等の配当等に係る利子所得については、総合課税を選択することができず、申告分離課税のみとなります。詳細については、「配当所得に係る総合課税・申告分離課税・申告不要制度の選択上の注意点」をご参照ください。

(4) 非課税口座(NISA)および未成年者口座(ジュニアNISA)内で生じた上場株式等に係る譲渡損失(赤字)の金額については、他の上場株式等の譲渡益(黒字)の金額および上場株式等の配当所得等の金額と損益通算できません※4

※4 NISA口座およびジュニアNISA口座では、配当金や譲渡益等は非課税となる一方で、これらの譲渡損失はないものとされます。

(5) 損益通算の適用を受けるためには、次の手続きが必要となります。

① 損益通算の規定の適用を受けようとする年分の確定申告書に、この規定の適用を受けようとする旨を記載すること

②「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」および「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」を提出すること

2.繰越控除の注意点

 上場株式等に係る譲渡損失の金額について、損益通算してもなお控除しきれない場合は、翌年以後3年間にわたり、確定申告をすることによって、上場株式等の譲渡所得等の金額および上場株式等の配当所得等の金額から繰越控除することができます。

 ただし、以下の点に注意する必要があります。

(1) 繰り越された上場株式等に係る譲渡損失の金額は、一般株式等に係る譲渡所得等の金額から控除することはできません。

(2) 上場株式等の譲渡であっても、いわゆる相対取引などにより生じた譲渡損失については、繰越控除できません。

(3) 非課税口座(NISA)及び未成年者口座(ジュニアNISA)内で生じた上場株式等に係る譲渡損失については、繰越控除できません。

(4) 繰越控除の適用を受けるためには、次の手続きが必要となります。

① 上場株式等に係る譲渡損失の金額が生じた年分の確定申告において、「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」および「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」を提出すること

その後の年において連続して※5「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」を提出すること

※5 上場株式等の譲渡がなかった年も、譲渡損失を翌年へ繰り越すための申告が必要です。

③ この繰越控除を受けようとする年分の確定申告において、「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」および一般株式等に係る譲渡所得等の金額または上場株式等に係る譲渡所得等の金額がある場合には「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」を提出すること

上場株式等の譲渡所得や配当所得における「源泉徴収ありの特定口座」のメリットと留意点

 上場株式等を、金融商品取引業者(証券会社や投資信託委託会社など)を通じて譲渡したことにより生じた譲渡損失の金額は、確定申告をすることによって、その年分の上場株式等の配当所得等の金額と損益通算することができます。

 また、損益通算してもなお控除しきれない譲渡損失の金額については、翌年以後3年間にわたり、確定申告をすることによって、上場株式等の譲渡所得等の金額および上場株式等の配当所得等の金額から繰越控除することができます。

 今回は、上場株式等の譲渡所得や配当所得において、多くの方が利用していると思われる「源泉徴収ありの特定口座」(以下「源泉徴収口座」といいます)について確認します。

※ 関連記事:「配当所得に係る総合課税・申告分離課税・申告不要制度の選択上の注意点

1.簡易申告口座と源泉徴収口座

 金融商品取引業者を通じて行う上場株式等の売買については特定口座制度があり、特定口座には、「簡易申告口座」と「源泉徴収口座」の2種類があります。

 簡易申告口座では、金融商品取引業者が、特定口座内で生じた年間の譲渡損益を計算し、その内容を記載した特定口座年間取引報告書を交付します。
 
 源泉徴収口座では、金融商品取引業者が、特定口座内で生じた年間の譲渡損益、利子所得・配当所得( 譲渡損失と通算) を計算し、その内容を記載した特定口座年間取引報告書を交付します。

 簡易申告口座とは異なり、源泉徴収口座では特定口座内で生じた所得に対して源泉徴収(所得税15.315%、住民税5%)が行われますので、その特定口座内の上場株式等の譲渡による所得を申告不要とすることができます。

特定口座の種類 源泉徴収 申告方法
簡易申告口座 なし 申告分離課税
源泉徴収口座 あり
(国税15.315%、地方税5%)
申告分離課税または申告不要

2.源泉徴収口座のメリットと留意点

 源泉徴収口座には、申告不要を選択することができるなど、以下のようなメリットがあります。

(1) 証券会社などの金融商品取引業者が、源泉徴収口座内の上場株式等の譲渡所得や配当所得の年間の損益を計算して「特定口座年間取引報告書」を作成してくれます。

(2) 証券会社などの金融商品取引業者が、源泉徴収口座内の上場株式等の譲渡所得や配当所得の税金の計算をして源泉徴収(納付)してくれますので、確定申告を不要とすることができます。

(3) 申告不要を選択した場合、その源泉徴収口座内で生じた上場株式等の譲渡所得や配当所得の金額については、合計所得金額に算入されません。
 したがって、所得控除の適用要件や国民健康保険の保険料、医療費の窓口負担割合などに影響しません(関連記事:「後期高齢者の医療費の自己負担割合(1割・2割・3割)の判定基準となる所得額はいくら?」)。

 一方、源泉徴収口座には、以下のような留意点もあります。

(1) 源泉徴収口座以外の口座や他の証券会社等の損益と損益通算するには、確定申告をする必要があります。

(2) 源泉徴収口座の譲渡損失を繰越控除するためには、確定申告をする必要があります。この場合、その源泉徴収口座内の株式等の配当金をすべて申告(申告分離課税)しなければなりません。

(3) 上場株式の配当金の受取方法を「株式数比例配分方式」に設定していないと、特定口座内で上場株式等の配当金を受け取ることができません(公募株式投資信託の分配金などは、株式数比例配分方式」以外の方法でも特定口座で受け取ることができます)。

(4) 上場株式等の配当等については、1回に支払を受けるべき額ごとに申告する・しない(申告不要)の選択をすることができますが、源泉徴収口座内の上場株式等の配当等については、口座ごとにその選択をする必要があります(譲渡損失を申告する場合はすべて申告(上記(2)参照))。

(5) 特定口座の「源泉徴収あり・なし」の変更は、毎年最初に上場株式等の譲渡をするときまでにできますが、前年に「源泉徴収あり」を選択していた場合で、本年最初に上場株式等の譲渡をするときより前にその特定口座に上場株式等の配当等を受け入れていたときは、変更することができません。

医師の指示に基づいて購入した治療目的のサプリメントは医療費控除の対象となるか?

 医療費控除の対象となる医療費には、医師または歯科医師による診療または治療の対価がありますが、治療または療養に必要な医薬品の購入の対価も医療費控除の対象となります。

 医薬品の購入費用については、治療または療養に必要なものであれば医療費控除の対象となります。
 例えば、風邪をひいた場合の風邪薬などの購入費用は、風邪の治療に必要ですので医療費控除の対象となります。
 一方、ビタミン剤などの病気の予防や健康増進のために用いられる医薬品の購入費用は、治療が目的ではないため医療費控除の対象となりません。

 ビタミン剤などと同様に、病気の予防や健康増進のために用いられるものにサプリメントがありますが、このようなサプリメントも治療が目的ではないため医療費控除の対象となりません。

 では、治療や療養のためにサプリメントを購入した場合、その購入費用は医療費控除の対象となるのでしょうか?
 さらに、そのサプリメントは購入前に診療(カウンセリング)が必要な医療機関専用のもので、自分の判断ではなく医師の指示に基づいて購入したものだったとしたらどうでしょうか?

 今回は、この点について確認します。

1.漢方薬やビタミン剤の購入費用

 医師の指示に基づくサプリメントの購入費用が医療費控除の対象となるか否かについて考えるとき、次の国税庁ホームページ・質疑応答事例が参考になります(下線は筆者による)。

【照会要旨】
 漢方薬やビタミン剤の購入費用は、医療費控除の対象になりますか。

【回答要旨】
 治療又は療養に必要な場合には、医療費控除の対象となります。

 医薬品の購入費用で医療費控除の対象となるものは、治療又は療養に必要なものであることが必要です(所得税法施行令第207条)。
 漢方薬やビタミン剤は、治療又は療養のために効能があるほか、疾病の予防や健康の増進にも効能があり、これらの購入費用について医療費控除を受けるためには、その漢方薬やビタミン剤が医薬品であることに加え、その費用が治療又は療養に必要なものであることが必要となります。

注)医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第1項《医薬品の定義》に規定する医薬品に該当しない漢方薬等の購入費用は、医療費控除の対象とはなりません(所得税基本通達73-5)。

 上記質疑応答事例にあるように、漢方薬やビタミン剤は治療や療養だけでなく、病気の予防や健康増進にも効能があります。
 これらが医療費控除の対象となるためには、次の要件をどちらも満たす必要があります。

(1) 医薬品であること
(2) 治療または療養に必要なもの

 サプリメントも、治療や療養だけでなく、病気予防や健康増進にも効能があります。
 このようなサプリメントが医療費控除の対象となるかどうかについては、実は上記の2要件を満たすかどうかというシンプルな判断基準があることがわかります。

※ 「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下「医薬品に関する法律」といいます)第2条第1項《医薬品の定義》に規定する医薬品に該当する必要があります(「薬事法」が2014(平成26)年に改正されて現在の名称に変更されました)。

2.医師の指示に基づくサプリメントの購入

 では、医師の指示に基づく治療目的のサプリメントは医療費控除の対象となるのでしょうか?

 ここでは、以下の説例をもとに考えてみます。

【設例】
・患者は、医師の指示により、医師の指定したサプリメントを治療のために購入した。
・このサプリメントは医療機関専用のもので、購入前に診療(カウンセリング)を受けることが必須条件となっている。

 「医師の指示」、「医師の指定した」、「治療のため」、「医療機関専用」、「購入前に診療を受ける」など、医療費控除を連想させるいろんな修飾語がついていますが、惑わされてはいけません。

 これらの修飾語の中で、医療費控除の対象を考える上で重要なのは「治療のため」だけです。

 そして、もう一つ重要なのは、そのサプリメントが「医薬品であるかどうか」です。

 上記設例において、そのサプリメントが医薬品に関する法律上の医薬品であれば、2要件を満たしますので医療費控除の対象となります。
 そのサプリメントが医薬品に関する法律上の医薬品に該当せず、「食品」に分類されるものであれば、医療費控除の対象となりません。

 また、サプリメントが医薬品に関する法律上の医薬品であっても、病気の予防や健康増進のために購入したのであれば、医療費控除の対象となりません。
 
 サプリメントが医療費控除の対象となるか否かについて迷ったときは、2要件(「治療」のための「医薬品」)を満たすかどうかで判断することになります。

※ 関連記事:「迷いやすい医療費控除の例」、「マスク、PCR検査、オンライン診療は医療費控除の対象になるか?」、「文書料は医療費控除の対象となるか?」、「医療費のお知らせ(医療費通知)で医療費控除を受ける際の注意点





損失申告をした翌年の確定申告書の記載例(繰越損失を全額控除した場合)

 青色申告を行う個人事業者は、事業で赤字が出た場合は、その赤字を他の所得と損益通算(控除)することができ、損益通算しても控除しきれない赤字が残るときは翌年に繰り越すことができます。

 この控除しきれない赤字(損失)を繰り越すために行う確定申告のことを損失申告といいます

 以下では、損失申告をした翌年に、繰越損失を全額控除した場合の確定申告書の記載例を確認します。

※ 損失申告については、「損失申告と確定申告書第四表の記載例」をご参照ください。

1.前年の確定申告書第四表

 前年の途中に事業を開業して、会社員時代の給与所得850,000円と開業後の事業所得の赤字が1,000,000円あるケースを想定します。

 この場合、前年において給与所得850,000円と事業所得の赤字1,000,000円を損益通算しても、控除しきれない赤字が150,000円残ります。

 この赤字を翌年に繰り越すために、確定申告書第一表・第二表と一緒に、次の第四表(一)と(二)を税務署に提出します。

2.損失申告の翌年の確定申告書第一表

 今年は開業2年目で、事業所得は4,000,000円の黒字となったケースを想定します(青色申告特別控除650,000円控除後)。

 この場合、前年から繰り越されてきた赤字(損失)が150,000円ありますので、確定申告書第一表の記載は次のようになります。

 事業所得以外に所得がない場合は、通常であれば、上図の「合計⑫」欄の金額は事業所得と同額の4,000,000円になります。

 しかし、前年から繰り越されてきた赤字(損失)が150,000円ありますので、「合計⑫」欄の金額は4,000,000円-150,000円=3,850,000円となります。

 ここで、若干の疑問が生じます。今年の確定申告において、前年に損失申告をしたときと同じように確定申告書第四表の記載はしなくてもいいのでしょうか?

 答えは、「第四表は不要」です。

 上図の「合計⑫」欄には、前年から繰り越されてきた赤字(損失)を今年の事業所得から控除した結果の3,850,000円が記載されています。

 つまり、繰越損失を控除してもなお所得が残りますので、今年は損失申告ではないということです。したがって、第四表は不要です。

 しかし、今年の確定申告で第四表を提出しないということは、前年の繰越損失の金額を第三者はどうやって確認するのか疑問が生じるかもしれません。

 この場合、第一表の「その他」の「本年分で差し引く繰越損失額62」欄に控除した繰越損失額を記載しますので、ここで確認することができます。

 なお、前年の繰越損失額が全額控除できずに一部が残る場合は、第四表が必要となります。

医療費のお知らせ(医療費通知)で医療費控除を受ける際の注意点

 医療費控除を受ける場合は、医療費の領収書から「医療費控除の明細書」を作成し、確定申告書に添付しなければならないこととされています。

 しかし、医療保険者から交付を受けた「医療費のお知らせ」がある場合は、「医療費のお知らせ」を添付することによって「医療費控除の明細書」の記載を簡略化することができ、医療費の領収書の保存も不要となります。

 以下では、この「医療費のお知らせ」で医療費控除を受ける際の注意点について確認します。

1.医療費通知とは?

 「医療費のお知らせ」は、健康保険組合などの医療保険者が発行する医療費の額等を通知する書類です。

 この「医療費のお知らせ」のうち、次の6項目の記載があるもの(後期高齢者医療広域連合から発行された書類の場合は(3)を除きます)を「医療費通知」といい、「医療費通知」を確定申告書に添付することによって、「医療費控除の明細書」の記載を簡略化することができ、医療費の領収書の保存も不要となります

(1) 被保険者等の氏名
(2) 療養を受けた年月
(3) 療養を受けた者の氏名
(4) 療養を受けた病院、診療所、薬局等の名称
(5) 被保険者等が支払った医療費の額
(6) 保険者等の名称

※ インターネットを利用して医療保険者から通知を受けた医療費通知情報で、その医療保険者の電子署名およびその電子署名に係る電子証明書が付されたものも医療費通知となります。

2.医療費のお知らせに欠落や不備がある場合

 医療費通知には、上記1の(1)~(6)の6項目が記載されている必要があります。

 しかし、この6項目を「医療費のお知らせ」に記載することは、各医療保険者の任意とされているため、交付を受けた「医療費のお知らせ」に6項目のいずれかの項目の記載がないことも考えられます。

 このような場合は、その「医療費のお知らせ」に欠落している事項を補完記入するか、実際に支払った医療費の領収書に基づいて必要事項を記載した「医療費控除の明細書」を確定申告書に添付することにより、医療費控除の適用を受けることができます。なお、この場合には当該医療費の領収書を確定申告期限等から5年間保存する必要があります。

3.医療費のお知らせに記載がない医療費がある場合

 医療費のお知らせは、保険医療機関等から診療報酬等の請求があり、支払が確定されたものについて作成されます。
 そのため、保険医療機関等からの請求が遅れた場合などは、支払った医療費がこのお知らせに記載されないことがあります

 また、自由診療に区分される診療や薬局での医薬品の購入など、医療費のお知らせに記載されないものもあります。

 このような場合には、これらの医療費に係る領収書に基づき「医療費控除の明細書」へ必要事項を記載し、その上でこの明細書と「医療費通知」(6項目が記載された「医療費のお知らせ」)を併せて確定申告書に添付して提出することで、医療費控除の適用を受けることができます。

 なお、この場合の「医療費控除の明細書」の記載および控除額の計算は、次の手順によります。

① 「医療費通知」の内容に基づいて「1 医療費通知に関する事項」の各欄に金額を記載する。
② 「医療費通知」に記載されていない医療費については、領収書に基づいて「2 医療費(上記1以外)の明細」の各欄に必要事項を記載する。
③ 「3 控除額の計算」により医療費控除の額の計算を行う。

※ 逆に、古い受診年月(前年)の医療費が記載されている場合もありますので、注意が必要です。

4.医療費のお知らせに記載された負担額と実際の負担額とが異なる場合

 医療費のお知らせの患者負担額は、保険医療機関等の窓口で支払う自己負担額(10円未満を四捨五入)とは異なり、1円単位での表示となります。

 そのため、「医療費のお知らせ」の患者負担額と窓口で実際に支払った医療費の額が相違する場合があります。

 このような場合は、「医療費通知」(6項目が記載された「医療費のお知らせ」)に記載された患者負担額に基づいて医療費控除の額を計算しても差し支えありません。

自己負担半額以上・会社負担7,500円以下でも食事補助が給与課税される場合

 福利厚生の一環として、会社が従業員や役員(以下「従業員等」といいます)に支給する食事は、一定の要件を満たせば給与として課税されません。

 しかし、要件を満たしている(ように見える)場合でも、会社が行う従業員等の食事補助が給与として課税されるケースがあります。
 
 今回は、一見すると非課税となる要件を満たしているにもかかわらず、食事補助が給与課税されるケースについて確認します。

※ この記事は、2026(令和8)年度税制改正を踏まえて、2026年4月1日にリライトしています。

1.食事補助が給与課税されない要件

 福利厚生の一環として会社が従業員等に対して支給する食事は、次の2要件を満たせば給与課税されません(所得税基本通達36-38の2)。

(1) 従業員等が食事の価額の半分以上を負担していること
(2) 会社の負担額(食事の価額-従業員等が負担している金額)が1ヶ月当たり7,500円(税抜き)以下であること
※1

 この2要件を満たしていなければ、食事の価額から従業員等が負担している金額を控除した残額が給与として課税されます。

 ここでいう食事の価額は、次の金額をいいます(所得税基本通達36-38)。

① 仕出し弁当などを取り寄せて支給する場合は、業者に支払う金額
② 社員食堂などで会社が作った食事を支給する場合は、食事の材料費や調味料等に要した、いわゆる直接費の額

 また現金で食事代の補助をする場合は、深夜勤務者に夜食の支給ができないために1食当たり650円(税抜き)以下の金額※2を支給する場合を除き、補助をする全額が給与課税されます。

 なお、通常の勤務時間外に残業又は宿日直をした人に支給する食事は、無料で支給しても給与課税されませんが、深夜勤務を本来の職務とする人がその勤務に伴い食事の支給を受ける場合には、その支給額は給与課税されます。

※1 2026(令和8)年度税制改正で、3,500円から7,500円に引き上げられました。
※2 2026(令和8)年度税制改正で、300円から650円に引き上げられました。

2.食事補助が給与課税されるケース

 上記1の2要件を満たせば、会社が行う食事補助は給与課税されません。では、次のような場合はどうでしょうか?

① 会社の従業員等が、会社が指定した近隣の飲食店(以下「指定飲食店」といいます)を昼食で利用した。

② 従業員等は、指定飲食店において食事の提供を受けた後、食事代を支払い、指定飲食店から領収証を受領し、その領収証を会社に提出した。

③ 会社は、領収証に記載された食事代の50%相当額を個人別に集計し、月末で締めて翌月5日に、食事代負担金を従業員等の預金口座に振り込んだ。

④ 食事代負担金は、月額7,500円(税抜)を上限としている。

 一見すると2要件を満たしているため、給与課税されないようにも思えますが、結論を先に述べると、従業員等が受ける食事代負担金は、その従業員等に対する給与所得の収入金額となり、給与課税されます。

 会社が従業員等に対し食事を支給する場合(注:「食事」を支給するのであって「食事代」を支給するのではありません)に、その従業員等から実際に徴収している対価の額がその食事の価額の50%相当額以上であり、かつ、会社の負担額が月額7,500円を超えないときには、上記1でみたように、会社が行う食事補助は給与課税されません。

 給与課税されるか否かのポイントは、上記1の2要件の前提として、会社が行う食事補助は現物支給であることが条件となっています。
 したがって、食事補助として金銭で支給する場合は給与課税されます。

 従業員等が飲食店に食事代を支払い、会社が従業員等に現金で食事代を補助する場合には、食事という現物ではなく金銭を支給するものであることから、「会社が従業員等に対し食事を支給する場合」に該当せず、「深夜勤務に伴う夜食の現物支給に代えて支給する金銭」に該当するときを除き、補助をする全額が給与として課税されることとなります

 会社が行う食事補助については、給与課税されないための2要件にばかり注目しがちですが、原則として現物支給であることが必要ですので注意しなければなりません。

※ なお、会社と飲食店との間の契約により、従業員等の食事代を会社が飲食店に支払う場合は、「会社が従業員等に対し食事を支給する場合」に該当するため、2要件を満たせば給与課税されません。

国民年金保険料を前納した場合の社会保険料控除の取扱い

 納税者が、自己または自己と生計を一にしている配偶者その他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合は、その支払った金額の全額について社会保険料控除の適用を受けることができます。

 未納のものについては控除できませんが、これまで未納となっていた過去の社会保険料を一括して支払った場合は、支払った年分において、その支払った金額の全額(延滞金は除く)について社会保険料控除の適用を受けることができます

 では逆に、社会保険料を前納した場合、その前納した金額の全額について社会保険料控除の適用を受けることはできるのでしょうか?

 今回は、この点について確認します。

詳細については、「滞納していた国民健康保険料・国民年金保険料と延滞金は社会保険料控除の対象となるか?」をご参照ください。

1.前納分を期間按分して控除する

 社会保険料を前納した場合は、次の算式により計算した金額をその年において支払った金額として、社会保険料控除を適用します(所得税基本通達74・75-1)。

前納した社会保険料等の総額(前納により割引された場合には、その割引後の金額)×前納した社会保険料等に係るその年中に到来する納付期日の回数/前納した社会保険料等に係る納付期日の総回数

 上記算式より、前納した社会保険料の金額を期間按分して、各年分の保険料に相当する額を各年に控除することがわかります。

 なお、上記算式の「社会保険料等」には、小規模企業共済等掛金も含まれます。したがって、小規模企業共済等掛金を前納した場合も、上記算式により期間按分して小規模企業共済等掛金控除を適用します。

2.前納した社会保険料等の特例

 一方、所得税基本通達74・75-2には、前納した社会保険料等について次のように規定されています。

 前納した社会保険料等のうちその前納の期間が1年以内のもの及び法令に一定期間の社会保険料等を前納することができる旨の規定がある場合における当該規定 に基づき前納したものについては、その前納をした者がその前納した社会保険料等の全額をその支払った年の社会保険料等として確定申告書又は給与所得者の保険料控除申告書に記載した場合には、74・75-1の(2)にかかわらず、その全額をその年において支払った社会保険料等の金額として差し支えない。
 なお、この前納した社会保険料等の特例(以下この項において「特例」という。)を適用せずに確定申告書を提出した場合には、その後において更正の請求をするときにおいても、この特例を適用することはできないことに留意する。

 すなわち、前納分については、前納期間が1年以内のもの及び法令に一定期間の社会保険料を前納することができる旨の規定がある場合は、その前納した年に社会保険料控除を適用することができます。

 国民年金保険料は、国民年金法第93条により2年分を前納することができるとされています。
 したがって、国民年金保険料を2年分前納した場合は、その前納した金額の全額が、その支払った年分の社会保険料控除の対象となります

 なお、上記1のように、各年分の保険料に相当する額を各年に控除する方法を選択することもできます。

小規模企業共済等掛金については、1年分の掛金を前納した場合はその全額が小規模企業共済等掛金控除の対象となりますが、13か月以上の掛金を前納した場合は、その年の掛金に充当される分だけが控除の対象になります。

個人事業者が個人に支払う家賃の支払調書は提出が必要か?

 法定調書は、「所得税法」、「相続税法」、「租税特別措置法」、「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」の規定により、税務署への提出が義務づけられている資料です。

 2025(令和7)年12月31日時点において63種類の法定調書があり、そのうち所得税法に規定するものは43種類あります。

 この43種類のうち不動産関係の支払調書は3種類ありますが、なかでも「不動産の使用料等の支払調書」については、支払調書を提出しなければならない人の範囲が判然としないケースもあり、ネット上でも誤った情報が散見されます。

 以下では、個人事業者(借主)が個人(貸主)に対して家賃を支払った場合において、不動産関係の支払調書を提出する必要があるのか否かについて確認します。

1.不動産の使用料等の支払調書

 個人事業者が、事務所や店舗等の家賃を支払った場合に、まず提出が想定されるのが「不動産の使用料等の支払調書」です。

 国税庁の「令和7年分給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」(以下「手引き」といいます)には、「提出する必要がある方」と「支払調書の提出範囲」が次のように記載されています。

出所:国税庁ホームページ

 支払調書の提出範囲については、「同一の方に対する令和7年中の支払金額の合計が15万円を超えるもの」とされていますので、15万円という金額を基準に提出範囲を判定する点に疑義は生じないものと思われます。

 一方、支払調書を提出する必要のある方については、手引きに明確に記載されているにもかかわらず誤った情報が散見されます。

 例えば、「個人事業者が個人に対して支払った家賃が年間15万円を超える場合は、その個人事業者は支払調書を提出しなければならない」とか、「支払った相手先の個人が不動産業者である場合は支払調書を提出しなければならない」などです。

 ここでもう一度、手引きの文言を確認します(太字と下線は筆者による)。

 令和7年中に不動産、不動産の上に存する権利、船舶(総トン数20トン以上のものに限ります。)、航空機の借受けの対価や不動産の上に存する権利の設定の対価(以下これらの対価を「不動産の使用料等」といいます。)の支払をする法人(国、都道府県等の公法人や人格のない社団等を含みます。)不動産業者である個人の方(主として建物の賃貸借の代理や仲介を目的とする事業を営んでいる方は除きます。)です。
 また、法人に支払う不動産の使用料等については、賃借料を除く、権利金、更新料等のみを提出してください。

 上記手引きの文言から、支払調書を提出しなければならないのは、端的にいうと、法人と不動産業者である個人です。

 したがって、例えば、飲食店を営む個人事業者が、個人に対して年間15万円を超える家賃を支払ったとしても、その個人事業者は「不動産の使用料等の支払調書」を提出する必要はありません。

 また、不動産業者である個人事業者でも、建物の賃貸借の代理や仲介を主な業務としている場合は、個人に対して年間15万円を超える家賃を支払ったとしても、その個人事業者は「不動産の使用料等の支払調書」を提出する必要はありません。

 ここで気になるのは、個人事業者が、貸主である個人から事務所や店舗を借りる際に、不動産業者に仲介手数料を支払った場合です。
 この場合、仲介手数料を支払った個人事業者は、年間の家賃支払額が15万円を超えたとしても「不動産の使用料等の支払調書」を提出する必要はありませんが、「不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書」は提出しなければならないのでしょうか?

2.不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書

 「不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書」について、「提出する必要がある方」と「支払調書の提出範囲」が手引きに記載されています。

出所:国税庁ホームページ

 上記1と同様に、15万円という金額を基準に支払調書の提出範囲を判定することが記載されています。
 また、提出する必要がある方についても、次のように記載されています(太字と下線は筆者による)。

 令和7年中に不動産、不動産の上に存する権利、船舶(総トン数20トン以上のものに限ります。)、航空機の売買又は貸付けのあっせん手数料(以下これらの手数料を「不動産売買等のあっせん手数料」といいます。)の支払をする法人(国、都道府県等の公法人や人格のない社団等を含みます。)不動産業者である個人(主として建物の賃貸借の代理や仲介を目的とする事業を営んでいる方を除きます。)の方です。

 上記文言から明らかなように、支払調書を提出しなければならないのは、端的にいうと、法人と不動産業者である個人です。

 したがって、例えば、飲食店を営む個人事業者が、店舗を借りる際に不動産業者に15万円を超える仲介手数料を支払ったとしても、その個人事業者は「不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書」を提出する必要はありません。

3.まとめ

 今回は、個人事業者が個人に対して家賃を支払った場合に、その個人事業者が支払調書を提出する必要があるのか否かについて確認しました。
 また、個人事業者が店舗等を借りる際に仲介手数料を支払った場合に、その個人事業者が支払調書を提出する必要があるのか否かについても確認しました。

 いずれの場合も、家賃や仲介手数料の金額の多寡にかかわらず、個人事業者は支払調書を提出する必要はありません。
 
 不動産業者である個人事業者で不動産の売買等を主な業務としている場合は、15万円という金額を基準として支払調書の提出の要否を判定します。

※ 関連記事:「『不動産の使用料等の支払調書』の注意事項」、「『不動産の使用料等の支払調書』に定額の水道代・電気代は含まれるか?」、「返還されない敷金・保証金と『不動産の使用料等の支払調書』」、「支払調書の提出の要否で迷いやすいケース

個人の申告漏れ所得金額が高額な上位10業種(令和6事務年度)

 国税庁は2025(令和7)年12月に、2024(令和6)事務年度(令和6年7月~令和7年6月)における「所得税及び消費税調査等の状況」を報道発表資料として公表しました。

 以下では、2024(令和6)事務年度について、所得税の調査等の状況と事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種についてみていきます。

1.所得税の調査等の状況

 国税庁の公表資料によると、調査の選定にAIを活⽤するなどして効率的に調査を⾏った結果、追徴税額の総額は、前事務年度に引き続き過去最高を記録しています。

 「実地調査」と「簡易な接触」を合わせた「調査等」の合計件数は、73万6千件(対前年比121.7%)で、そのうち申告漏れ等の⾮違があった件数は36万9千件(同118.5%)となっています。

 「実地調査」と「簡易な接触」を合わせた「調査等」による申告漏れ所得⾦額は、9,317億円(同93.5%)となっています。

 「実地調査」と「簡易な接触」を合わせた「調査等」による追徴税額は、1,431億円(同102.4%)と、過去最⾼となっています。

  実地調査 簡易な接触 調査等合計
特別・一般 着眼
調査等件数(件) 36,404(98.1%) 10,492(100.5%) 46,896(98.7%) 689,440(123.7%) 736,336(121.7%)
申告漏れ等の非違件数(件) 32,001(97.9%) 7,177(96.4%) 39,178(97.6%) 329,549(121.5%) 368,727(118.5%)
申告漏れ所得金額(億円) 5,411(106.5%) 404(92.9%) 5,815(105.4%) 3,502(78.7%) 9,317(93.5%)
追徴税額(億円) 1,090(107.0%) 42(89.4%) 1,132(106.2%) 299(90.1%) 1,431(102.4%)
1件当たり追徴税額(万円) 299(108.7%) 40(88.9%) 241(107.6%) 4(66.7%) 19(82.6%)

(備考)
(1) 上表のカッコ内の数字は、対前年比の割合を示しています。

(2) 実地調査(特別調査・一般調査)とは、高額・悪質な不正計算が見込まれる事案を対象に深度ある調査を行うもので、特に、特別調査は、多額な脱漏が見込まれる個人を対象に、相当の日数(1件当たり10日以上を目安)を確保して実施しているものです。

(3) 実地調査(着眼調査)とは、資料情報や申告内容の分析の結果、申告漏れ等が見込まれる個人を対象に実地に臨場して短期間で行う調査です。

(4) 簡易な接触とは、原則、納税者宅等に臨場することなく、文書、電話による連絡又は来署依頼による面接を行い、申告内容を是正するものです。

2.直近5年間の申告漏れ所得金額が高額な上位10業種

 国税庁は、公表している「所得税及び消費税調査等の状況」の中で、「参考計表」として「事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種」を挙げています。
 
 2024(令和6)事務年度(令和6年7月~令和7年6月)から2020(令和2)事務年度(令和2年7月~令和3年6月)までの直近5事務年度における上位10業種は、以下のとおりです。

順位 R6 R5 R4 R3 R2
1 キャバクラ 経営コンサルタント 経営コンサルタント 経営コンサルタント プログラマー
2 眼科医 ホステス、ホスト くず金卸売業 システムエンジニア 畜産農業(肉用牛)
3 ホステス、ホスト コンテンツ配信 ブリーダー ブリーダー 内科医
4 経営コンサルタント くず金卸売業 焼肉 商工業デザイナー キャバクラ
5 太陽光発電 ブリーダー タイル工事 不動産代理仲介 太陽光発電
6 バー 焼き鳥 冷暖房設備工事 外構工事 建築士
7 コンテンツ配信 太陽光発電 鉄骨、鉄筋工事 型枠工事 経営コンサルタント
8 ブリーダー 内科医 太陽光発電 機械部品受託加工 小売業・犬
9 スナック スナック バー 一般貨物自動車運送 不動産代理仲介
10 システムエンジニア 西洋料理 電気通信工事 司法書士、行政書士 商工業デザイナー

※ 上記調査事績は、特別調査及び一般調査に基づく実施結果です。