法人事業概況説明書を軽視していませんか?

1.概況書は提出義務のある添付書類

 2018年(平成30年)4月1日以後終了事業年度分から法人事業概況説明書の様式が改訂されています。
 法人事業概況説明書は、2006年度(平成18年度)税制改正により、決算書や勘定科目内訳明細書などと一緒に確定申告書に添付する書類として義務付けられています。
 決算書や勘定科目内訳明細書は、間違いの無いように慎重に作成される場合が多いように思うのですが、法人事業概況説明書の作成は、これらに比べるとやや慎重さに欠けるような気がします。 

2.間違いの多い記載例

 間違いが多いのは、次の2点です。

① 表面の「資産の部合計」欄が、「負債の部合計」欄と「純資産の部合計」欄の計と一致していない。
② 裏面の「源泉徴収税額」欄が、年末調整による過不足額の精算をしているにもかかわらず精算後 の税額を記載していない(源泉徴収税額をそのまま記載している)。

 ①については、財務データから連動して法人事業概況説明書を自動作成する会計ソフトを使用していても、資産=負債+純資産となっていない場合がありますので注意が必要です。
 また、②については、12月に年末調整を行い、例えば源泉徴収税額(給与からの天引き額)が100,000円、年末調整による超過税額(還付額)が120,000円の場合、正しくは△20,000円(またはー20,000円)と記載しますが、誤って100,000円と記載しているケースです。
 国税庁のホームページに「法人事業概況説明書の書き方」が掲載されていますので、初心に帰って確認してみるのもいいかもしれません。

会社が役員から無利息又は低利率で借入れをした場合

 会社が役員に対して金銭を無償又は通常の利率よりも低い利率で貸し付けた場合には、通常取得すべき利率により計算した利息の額と実際収受した利息の額との差額に相当する金額は、その役員に供与した経済的利益となり給与課税されます。(本ブログ記事「役員に金銭を貸し付けた場合の所得税法上の問題」を参照)
 では、その逆の場合はどうでしょうか? 

1.役員側の課税関係

 つまり、役員が会社に対して無利息又は低利率で貸付けをした場合、課税上の問題は生じるのでしょうか?
 
 答は「否」です。
 会社が役員に対して金銭の貸付けをした場合と異なり、役員が会社に金銭を貸し付けた場合においては、無利息又は低利率により利息の計算を行ったとしても、適正な利率による利息との差額を徴収しなければならないということはありません。
 会社は利益の追求を目的としているため、その取引について常に経済的合理性が求められるのに対し、個人は必ずしも利益の追求のみを目的としているわけではないからです。
 したがって、貸し付けた役員側において、利息相当額の認定という課税上の問題が生じることは通常はありません(ただし、「同族会社の行為又は計算の否認」の規定(所得税法157条)が適用され、代表者に収受されるべき利息相当額として、約500億円の雑所得の認定課税が行われた事件(いわゆる平和事件)がありました)。

2.会社側の課税関係

 一方、役員から無利息又は低利率により借入れをした会社は、利息相当額の支払いを免除されたことによる利益(債務免除益)が計上されますが、これと同額の支払利息も計上されますので、やはり課税上の問題が生じることはありません

無申告でも所得税の青色申告は取り消されない

 個人事業主のAさんから確定申告に関する相談がありました。Aさんは喫茶店を営んでいましたが、ご自身が高齢(とはいえ、まだ70代前半)になったことなどを踏まえて、一旦事業を廃止することを考えているとのことでした。その際、税務署に何か届出をしないといけないか、というご相談でした。
 「一旦事業を廃止する」ということは、数年後に事業を再開する可能性もあるということです。

1.事業を廃止した場合の届出

 個人事業者が事業を廃止した場合には、次の書類を税務署に提出する必要があります。

(1) 個人事業の開業・廃業等届出書
 個人事業を廃止したときは、廃止した日から1月以内に提出します。
 なお、管轄の都道府県税事務所には、「事業開始(廃止)等申告書」を廃止した日から10日以内に提出します。

(2) 所得税の青色申告の取りやめ届出書
 青色申告をしている場合に、青色申告をやめようとする年の翌年3月15日までに提出します。

(3) 事業廃止届出書
 消費税の課税事業者で、廃止する事業のほかに課税売上に当たる所得がない場合に速やかに提出します。

(4) 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
 従業員や専従者に給与を支払っていた場合は、事務所を廃止した日から1月以内に提出します。
 なお、事業を行う事務所等を廃止した場合には、上記(1)の「個人事業の開業・廃業等届出書」を所轄税務署長に提出することになっていますので(所得税法229条)、この「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」を提出する必要はありません(所得税法230条)。

(5) 所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書
 予定納税義務のある個人事業者が、事業の廃止や休業等により予定納税額が多すぎると見込まれる場合に、予定納税額の減額を求める手続です。以下の期間に提出します。
① 第1期分および第2期分の減額申請は、その年の7月1日から7月15日まで
② 第2期分のみの減額申請は、その年の11月1日から11月15日まで

2.青色申告の取りやめ届出書の提出は慎重に

 Aさんの場合、上記のうち、(1)個人事業の開業・廃業等届出書と(2) 所得税の青色申告の取りやめ届出書を提出する必要がありました。
 Aさんはしばらく休養した後、2~3年後に店舗を改装したうえで再び喫茶店を始めることを考えていました。事業再開の可能性がありますので、廃業というよりは休業という状態でした。
 このような状況のもと、(1)の個人事業の開業・廃業等届出書については、これを提出したとしても、その後に事業所得が発生すれば申告・納税の必要がありますので、形式的な手続きといえます。

 しかし、(2)の 所得税の青色申告の取りやめ届出書については、慎重に考えないといけません。
 これを提出すると、その後に事業を再開した場合に「所得税の青色申告承認申請書」を提出しなければ青色申告の特典が受けられず、さらにその提出期限を誤ると青色申告の適用が1年遅れてしまうからです(青色申告承認申請書の提出期限については、本ブログ記事「青色申告特別控除と青色申告承認申請書の提出期限の注意点」を参照)。この点を考慮すると、できれば取りやめ届出書は提出せずに済ませたいところです。
 問題は、青色申告の取りやめ届出書を提出しない場合は、たとえ無申告でも青色申告の効力が継続できるか否かという点です。

3.法人の青色申告は2期連続無申告の場合取り消される

 法人の青色申告の承認の取消しについては、次の法人税法第127条第1項に定められています。

第121条第1項(青色申告)の承認を受けた内国法人につき次の各号のいずれかに該当する事実がある場合には、納税地の所轄税務署長は、当該各号に定める事業年度まで遡つて、その承認を取り消すことができる。この場合において、その取消しがあつたときは、当該事業年度開始の日以後その内国法人が提出したその承認に係る青色申告書(納付すべき義務が同日前に成立した法人税に係るものを除く。)は、青色申告書以外の申告書とみなす。

第1号 その事業年度に係る帳簿書類の備付け、記録又は保存が前条第1項に規定する財務省令で定めるところに従つて行われていないこと

第2号 その事業年度に係る帳簿書類について前条第2項の規定による税務署長の指示に従わなかつたこと

第3号 その事業年度に係る帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽し又は仮装して記載し又は記録し、その他その記載又は記録をした事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由があること

第4号 第74条第1項(確定申告)の規定による申告書をその提出期限までに提出しなかつたこと

 また、上記法人税法第127条第1項第4号の規定による取り消しは、国税庁ホームページの事務運営指針によると、「2事業年度連続して期限内に申告書の提出がない場合に行うものとする。この場合、当該2事業年度目の事業年度以後の事業年度について、その承認を取り消す。」とされています。

 つまり、法人については、2期連続して期限後申告(無申告を含む)をすると、2期目から青色申告が取り消されます

4.個人の青色申告は無申告でも取り消されない

 法人と同様に、個人の青色申告の承認の取消しについては、次の所得税法第150条第1項に定められています。

第143条(青色申告)の承認を受けた居住者につき次の各号のいずれかに該当する事実がある場合には、納税地の所轄税務署長は、当該各号に掲げる年までさかのぼつて、その承認を取り消すことができる。この場合において、その取消しがあつたときは、その居住者の当該年分以後の各年分の所得税につき提出したその承認に係る青色申告書は、青色申告書以外の申告書とみなす。

第1号 その年における第143条に規定する業務に係る帳簿書類の備付け、記録又は保存が第148条第1項(青色申告者の帳簿書類)に規定する財務省令で定めるところに従つて行なわれていないこと

第2号 その年における前号に規定する帳簿書類について第148条第2項の規定による税務署長の指示に従わなかつたこと

第3号 その年における第1号に規定する帳簿書類に取引の全部又は一部を隠ぺいし又は仮装して記載し又は記録し、その他その記載又は記録をした事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由があること

 法人税法第127条第1項と所得税法第150条第1項のそれぞれ第1号から第3号までの内容は同じです。
 ところが、所得税法第150条第1項には法人税法第127条第1項第4号のような規定がありません。
 つまり、個人については、期限後申告や無申告の場合でも青色申告は取り消されないということです。所得税法第150条第1項では、申告書の未提出は青色申告の承認取り消しの要件となっていないため、休業中であっても法人のように申告書を提出する必要はありません。
 個人の場合は、青色申告の取りやめ届出書を提出しない限り、無申告でも青色申告の効力は継続します。

 Aさんには、以上の点を踏まえて、2~3年後の事業再開に備えて「個人事業の開業・廃業等届出書」と「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を提出せずに、休業の手続きをとることを提案しました。

予定納付額の計算は「×6」が先か「÷12」が先か?

1.中間申告の方法

 事業年度が6か月を超える法人は、前事業年度の確定法人税額が20万円を超えた場合に、事業年度開始の日から6か月を経過した日から2か月以内に中間申告書(予定申告書)を提出しなければなりません。
 この中間申告には次の2つの方法があり、いずれかを選択することができます。

(1) 前年度実績による予定申告
 「前事業年度の確定法人税額×6/前事業年度の月数」で計算した税額を中間分の税額として予定申告します。
(2) 仮決算による中間申告
 事業年度開始の日以後6か月の期間を1事業年度とみなして仮決算を行い中間申告します。

2.予定申告納付額の計算方法

 上記(1)の予定申告の場合、計算式の「×6/前事業年度の月数」の分数部分に気を付けなければなりません。
 例えば、事業年度を12か月とする法人が、前事業年度の確定法人税額1,000,000円に基づいて予定納付額の計算をする場合、1,000,000円×6÷12=500,000円とするのか、1,000,000円÷12(円未満切捨て)×6=499,998円→499,900円(百円未満切捨て)とするのか、つまり、「×6」が先か「÷12」が先かということです。
 法人税については「÷12」が先で、後から「×6」をして予定納付額の計算をします(法人税法第71条第1項第1号)。
 以下に予定納付額の計算方法についてまとめます(前事業年度を12か月とします)。

(1) 先に12で除して後から6倍する税目・・・法人税(地方法人税)、消費税、事業税(地方法人特別税)
(2) 先に6倍して後から12で除す税目・・・道府県民税、市民税

社会保険料の延滞金は損金算入できます

1.社会保険料の延滞金は損金算入可能

 国税に係る延滞税・過少申告加算税・無申告加算税、地方税法の規定による延滞金・過少申告加算金・無申告加算金などは損金算入できません。これらが損金算入できないことは、感覚的にわかります。
 では、社会保険料の延滞金も損金算入できないのでしょうか?
「延滞金」ですので、感覚的には損金算入できないように思われがちですが、社会保険料の延滞金は損金算入できます。 

2.損金算入できる根拠

 同じ「延滞金」なのに損金算入できるものとできないものがあるのはなぜでしょうか?
 根拠は次の法人税法第55条にあります。

(不正行為等に係る費用等の損金不算入)
第五五条 内国法人が、その所得の金額若しくは欠損金額又は法人税の額の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装すること(以下この項及び次項において「隠蔽仮装行為」という。)によりその法人税の負担を減少させ、又は減少させようとする場合には、当該隠蔽仮装行為に要する費用の額又は当該隠蔽仮装行為により生ずる損失の額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

2 前項の規定は、内国法人が隠蔽仮装行為によりその納付すべき法人税以外の租税の負担を減少させ、又は減少させようとする場合について準用する。

3 内国法人が納付する次に掲げるものの額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
一 国税に係る延滞税、過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税及び重加算税並びに印紙税法(昭和  四十二年法律第二十三号)の規定による過怠税
二 地方税法の規定による延滞金(同法第六十五条(法人の道府県民税に係る納期限の延長の場合の延滞金)、第七十二条の四五の二(法人の事業税に係る納期限の延長の場合の延滞金)又は第三百二十七条(法人の市町村民税に係る納期限の延長の場合の延滞金)の規定により徴収されるものを除く。)、過少申告加算金、不申告加算金及び重加算金

4 内国法人が納付する次に掲げるものの額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
一 罰金及び科料(通告処分による罰金又は科料に相当するもの及び外国又はその地方公共団体が課する罰金又は科料に相当するものを含む。)並びに過料
二 国民生活安定緊急措置法(昭和四十八年法律第百二十一号)の規定による課徴金及び延滞金
三 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)の規定による課徴金及び延滞金(外国若しくはその地方公共団体又は国際機関が納付を命ずるこれらに類するものを含む。)
四 金融商品取引法第六章の二(課徴金)の規定による課徴金及び延滞金
五 公認会計士法(昭和二十三年法律第百三号)の規定による課徴金及び延滞金

5 内国法人が供与をする刑法(明治四十年法律第四十五号)第百九十八条(贈賄)に規定する賄賂又は不正競争防止法(平成五年法律第四十七号)第十八条第一項(外国公務員等に対する不正の利益の供与等の禁止)に規定する金銭その他の利益に当たるべき金銭の額及び金銭以外の資産の価額並びに経済的な利益の額の合計額に相当する費用又は損失の額(その供与に要する費用の額又はその供与により生ずる損失の額を含む。)は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

 法人税法第55条に「社会保険料の延滞金」は列挙されていませんので、損金算入可能ということになります。

JAの建物更生共済の掛金の内訳は必ず共済掛金領収証で確かめましょう

掛金が同じでも内訳は変わる

 JAの建物更生共済の掛金の内訳(必要経費・損金算入部分と積立部分)は、掛金が同額でも毎年一定ではないので注意しなければなりません。
 例えば、法人が掛金50万円を支払ったとき、前年に次のような仕訳をしていたとします。

借方 金額 貸方 金額
保 険 料 275,000 現金預金 500,000
保険積立金 225,000    

 この法人が今年も50万円の掛金を支払った場合、掛金が前年と同額なので仕訳も前年と同じでいいかというと、そうではありません。 

内訳は共済掛金領収証に載っている

 共済掛金領収証には、支払った共済掛金のうち必要経費・損金への対象となる額が「必要経費・損金対象額」として表示されています。
 この額が前年は275,000円でしたが、今年は280,000円になっていたとしたら、今年の仕訳は次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
保 険 料 280,000 現金預金 500,000
保険積立金 220,000    

 法人の場合の仕訳は上記のようになりますが、個人事業主の場合は上記仕訳の「保険積立金」が「事業主貸」になります(保険料280,000円は事業割合100%を前提としています)。

中小企業等経営強化法の認定が必要な設備投資税制

 2017(平成29)年度税制改正によって、中小企業投資促進税制の上乗せ措置が改組され、新たに「中小企業経営強化税制」が創設されました。
 この中小企業経営強化税制をはじめ、2019(平成31)年3月31日までに取得した資産に適用される設備投資税制には以下のものがあります。

 ①中小企業投資促進税制
 ②中小企業経営強化税制
 ③固定資産税の特例
 ④商業・サービス業・農林水産業活性化税制

 上記のうち、中小企業等経営強化法の認定が必要な税制は②と③、認定がなくても活用できる税制は①と④です。
 前回は、認定がなくても活用できる①中小企業投資促進税制と④商業・サービス業・農林水産業活性化税制について述べました。今回は、認定が必要な②中小企業経営強化税制と③固定資産税の特例について述べていきます。

※ 2021(令和3)年度税制改正で、中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制の見直しが行われています。改正内容については、本ブログ記事「令和3年度改正後の中小企業投資促進税制」及び「令和3年度改正後の中小企業経営強化税制」をご参照ください。なお、(中小企業経営強化法による)固定資産税の特例と商業・サービス業・農林水産業活性化税制は、適用期限の到来をもって廃止されています。

1.中小企業経営強化税制

 まず、中小企業経営強化税制(中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除)について、その概略を記していきます。

(1) 制度概要

 青色申告書を提出する中小企業者等(従業員1,000人以下の個人事業主を含む)が、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき一定の新品設備を取得し指定事業の用に供した場合、即時償却又は10%の税額控除(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)を選択適用するこ とができます。

(2) 適用期間

 2017(平成29)年4月1日~2019(平成31)年3月31日に取得した資産

※2019(平成31)年度税制改正によって、適用期限が2021(平成33)年3月31日まで2年延長されることになりました。

(3) 指定事業

 中小企業投資促進税制の対象事業及び商業・サービス業・農林水産業活性化税制の対象事業

(4) 対象設備

 ① 生産性向上設備(A類型)・・・生産性が旧モデル比年平均1%以上向上する設備
 イ.機械及び装置・・・160万円以上(10年以内に販売開始)
  ロ.測定工具及び検査工具・・・30万円以上(5年以内に販売開始)
 ハ.器具備品・・・30万円以上(6年以内に販売開始)
 ニ.建物附属設備・・・60万円以上(14年以内に販売開始)
 ホ.ソフトウェア(情報を収集・分析・指示する機能)・・・70万円以上(5年以内に販売開始)

 ② 収益力強化設備(B類型)・・・投資利益率が年平均5%以上の投資計画に係る設備
 イ.機械及び装置・・・160万円以上
 ロ.工具・・・30万円以上
 ハ.器具備品・・・30万円以上
 ニ.建物附属設備・・・60万円以上
 ホ.ソフトウェア・・・70万円以上

※2019(平成31)年度税制改正によって、2分の1超の売電を見込む太陽光発電設備を対象設備から除外するとともに、売電を予定している場合には計画の申請時に一定の書類添付が義務付けられることとなりました。

(5) 確認者

 ① A類型・・・工業会等の証明
 ② B類型・・・経済産業局の確認
 なお、A類型・B類型ともにその業種を所轄する主務大臣に対し、中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定が必要です。

(6) 措置内容

 即時償却又は税額控除(取得価額×10%)
 税額控除額は、当期の法人税額の20%が上限です。
(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%の税額控除のみ)

(7) 留意事項

 中小企業経営強化税制は、適用できない業種(映画業を除く娯楽業、電気業、水道業、鉄道業、航空運輸業、銀行業等)があります。
 太陽光発電などのいわゆる売電は電気業に該当しますので、そのための設備は対象になりません。
 太陽光発電システム自体は対象設備ですので、自社工場用など売電ではないもの等については対象となります。
(太陽光発電設備の優遇税制については、本ブログ記事「中小企業等経営強化法に基づく太陽光発電設備の優遇税制について」を参照)

2.固定資産税の特例

 上記の中小企業経営強化税制と同じく、2017(平成29)年度税制改正により中小企業等経営強化法に係る固定資産税の特例も拡充され、従来は対象設備が機械装置に限定されていたのに対し、高効率の冷蔵陳列棚、省エネ空調等の器具備品、建物附属設備が対象設備に追加されました。
 以下では、固定資産税の特例(経営力向上計画に係る固定資産税の特例措置)について、その概略を記していきます。

(1) 制度概要

 青色申告書を提出する中小企業者等(従業員1,000人以下の個人事業主を含む)が、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき一定の新品設備を取得等した場合、固定資産税(償却資産税)が3年間にわたって2分の1に軽減されます。
 要件や手続きは中小企業経営強化税制のA類型とほぼ同じため、一緒に手続きをすることが可能です。

(2) 適用期間

 2016(平成28)年7月1日~2019(平成31)年3月31日に取得した資産

(3) 指定事業

 中小企業投資促進税制の対象事業及び商業・サービス業・農林水産業活性化税制の対象事業

(4) 対象設備

 生産性向上設備(A類型)・・・生産性が旧モデル比年平均1%以上向上する設備
 ① 機械及び装置・・・160万円以上(10年以内に販売開始)
 ② 測定工具及び検査工具・・・30万円以上(5年以内に販売開始)
 ③ 器具備品・・・30万円以上(6年以内に販売開始)
 ④ 建物附属設備・・・60万円以上(14年以内に販売開始)

 中小企業経営強化税制の対象設備であるソフトウェアは、固定資産税(償却資産税)の課税客体ではありません。

 2017(平成29)年度税制改正により対象に追加された設備(2017(平成29)年4月1日以降に取得した測定工具及び検査工具、器具備品、建物附属設備)については、対象地域・対象業種が一部限定されます。
 業種が限定される地域は、最低賃金が全国平均以上の7都府県(埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、京都、大 阪)です。上記以外の40道県においては全業種が対象です。
 機械装置については、引き続き全国・全業種で対象になります。

(5) 確認者

 工業会等の証明
 なお、その業種を所轄する主務大臣に対し、中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定が必要です。

(6) 措置内容

 固定資産税の課税標準が、3年間 2分の1に軽減。

(7) 留意事項

 2017(平成29)年度税制改正により対象に追加された設備(2017(平成29)年4月1日以降に取得した測定工具及び検査工具、器具備品、建物附属設備)については、対象地域・対象業種が一部限定されます。
 いわゆる売電用の太陽光発電システムも対象設備になります。

 なお、経営力向上計画に係る固定資産税の特例措置は、2019(平成31)年3月31日をもって終了します(期限の延長は行われません)。
 2019(平成31)年4月1日以降に取得等をした設備は、この特例措置の対象外となりますのでご注意ください。

※固定資産税の特例の廃止に伴い、2018(平成30)年度税制改正で創設された新固定資産税の特例については、本ブログ記事「生産性向上特別措置法による新固定資産税の特例」を参照してください。

中小企業等経営強化法の認定が不要の設備投資税制

 2017年度(平成29年度)税制改正によって、中小企業投資促進税制の上乗せ措置が改組され、新たに「中小企業経営強化税制」が創設されました。
 この中小企業経営強化税制をはじめ、2019年(平成31年)3月31日までに取得した資産に適用される設備投資税制には以下のものがあります。
 ①中小企業投資促進税制
 ②中小企業経営強化税制
 ③固定資産税の特例
 ④商業・サービス業・農林水産業活性化税制
 上記のうち、中小企業等経営強化法の認定が必要な税制は②と③、認定がなくても活用できる税制は①と④です。
 今回から2回に分けて、①~④の税制の概要を記していきます。今回は、認定がなくても活用できる①中小企業投資促進税制と④商業・サービス業・農林水産業活性化税制について述べていきます。

※ 2021(令和3)年度税制改正で、中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制の見直しが行われています。改正内容については、本ブログ記事「令和3年度改正後の中小企業投資促進税制」及び「令和3年度改正後の中小企業経営強化税制」をご参照ください。なお、固定資産税の特例と商業・サービス業・農林水産業活性化税制は、適用期限の到来をもって廃止されています。

1.中小企業投資促進税制

 まず、中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)について、その概略を記していきます。

※ 2021(令和3)年度税制改正で、中小企業投資促進税制に商業・サービス業・農林水産業活性化税制を盛り込む形で制度を一本化した上で、中小企業投資促進税制の適用期限が2023(令和5)年3月31日まで延長されました。改正内容等については、本ブログ記事「令和3年度改正後の中小企業投資促進税制」をご参照ください。

(1) 制度概要

 青色申告書を提出する中小企業者等(従業員数1,000人以下の個人事業主を含む)が、新品の機械装置等を取得等し指定事業の用に供した場合に、その指定事業の用に供した日を含む事業年度において、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除が選択適用できます。
 ただし、資本金3,000万円超1億円以下の法人は、税額控除の適用はありません。
 なお、従来の上乗せ措置(生産性向上設備等を取得した場合の即時償却又は10%(7%)税額控除)が改組されて、中小企業経営強化税制が創設されました。

(2) 適用期間

 1998年(平成10年)6月1日~2019年(平成31年)3月31日に取得した資産

※2019年度(平成31年度)税制改正によって、適用期限が2021年(平成33年)3月31日まで2年延長されることになりました。

(3) 指定事業

 製造業、建設業、農業、卸売業、小売業、サービス業等の一定の事業
不動産業、物品賃貸業、電気業、水道業、娯楽業(映画業を除く)、飲食店業のうち料亭・バー・キャバレー・ナイトクラブその他これらに類する事業、等は対象になりません。
 また、性風俗関連特殊営業に該当する事業も対象となりません。

(4) 対象設備

 ① 機械及び装置・・・1台160万円以上
 ② 測定工具及び検査工具・・・1台120万円以上、1台30万円以上かつ複数合計120万円以上
 ③ 一定のソフトウェア・・・一のソフトウェアが70万円以上、複数合計70万円以上
 ④ 貨物自動車(車両総重量3.5トン以上)
 ⑤ 内航船舶(取得価格の75%が対象)

(5) 措置内容

 特別償却(取得価額×30%)又は税額控除(取得価額×7%)
 税額控除額は、当期の法人税額の20%が上限です。
 (資本金3,000万円超1億円以下の法人は、税額控除の適用はありません)

(6) 留意事項

 中小企業等経営強化法の認定がなくても活用できます。

2.商業・サービス業・農林水産業活性化税制

 次に、商業・サービス業・農林水産業活性化税制(特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は税額控除)について、その概要を記していきます。

※ 2021(令和3)年度税制改正で、商業・サービス業・農林水産業活性化税制は適用期限の到来をもって廃止され、中小企業投資促進税制に一本化されました。改正内容等については、本ブログ記事「令和3年度改正後の中小企業投資促進税制」をご参照ください。

(1) 制度概要

 認定経営革新等支援機関等(認定を受けた税理士、公認会計士、商工会議所等)から経営改善に関する指導及び助言を受けた青色申告書を提出する中小企業者等(従業員数1,000人以下の個人事業主を含む)が、新品の経営改善に資する器具備品や建物附属設備を導入した場合に、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除が選択適用できます。
 なお、資本金3,000万円超1億円以下の法人は、税額控除の適用はありません。

(2) 適用期間

 2013年(平成25年)4月1日~2019年(平成31年)3月31日に取得した資産

※2019年度(平成31年度)税制改正によって、適用期限が2021年(平成33年)3月31日まで2年延長されることになりました。

(3) 指定事業

 卸売業、小売業、農林水産業、サービス業等
製造業、建設業、医療業、娯楽業(映画業を除く)、等は対象になりません。
 また、風俗営業法上の風俗営業に該当する料亭・バー・キャバレー・ナイトクラブその他これらに類する事業については、生活衛生同業組合の組合員が事業を行う場合に限り対象となります。
 なお、性風俗関連特殊営業に該当する事業については対象となりません。

(4) 対象設備

 ① 器具備品・・・1台の取得価額が30万円以上
 ② 建物附属設備・・・一の取得価額が60万円以上

(5) 確認者

 認定経営革新等支援機関等(認定を受けた税理士、公認会計士、商工会議所等)

※2019年度(平成31年度)税制改正で、経営改善設備の投資計画の実施を含む経営改善により、売上高又は営業利益の伸び率が年2%以上となる見込みであることについて認定経営革新等支援機関等の確認を受けることが適用要件に加わりました。
 この改正は、2019年(平成31年)4月1日以後に取得等をする経営改善設備に適用されます。
 なお、同日前に交付を受けた経営改善指導助言書類に係る経営改善設備のうち同年9月30日までに取得等をしたものについては、上記の確認を受けることを不要とする経過措置が講じられます。

(6) 措置内容

 特別償却(取得価額×30%)又は税額控除(取得価額×7%)
 税額控除額は、当期の法人税額の20%が上限です。
 (資本金3,000万円超1億円以下の法人は、税額控除の適用はありません)

(7) 留意事項

 中小企業等経営強化法の認定がなくても活用できます。

事前確定届出給与の届出期限と支給額の注意点

 従来は臨時的ないわゆる役員賞与については損金算入が認められていませんでしたが、事前確定届出給与の制度を利用すれば、臨時的な給与(賞与)であっても一定の要件を満たせば損金算入が可能です。
 事前確定届出給与は、その役員の職務につき、所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与で、一定の日までに納税地の所轄税務署長に対して、あらかじめ確定している支給時期、支給金額のほか必要事項を記載した届出をしている場合の当該給与をいいます。 

1.事前確定届出給与に関する届出書の提出期限

 この制度を利用するには、「事前確定届出給与に関する届出書」を納税地の所轄税務署長に提出する必要があるのですが、その提出期限に注意しなければなりません。
 以下では、3月決算法人が2019年(平成31年)5月27日に定時株主総会を開催した場合について、届出書の記載文言の内容を確認しながら、提出期限がいつになるかを述べていきます。

①「事前確定届出給与に係る株主総会等の決議をした日及びその決議をした機関等」は、「株主総会」や「取締役会」など事前確定届出給与に関する決議をした機関名と決議日を記入します。
 今回の例では、「決議をした日」が2019年(平成31年)5月27日、「決議をした機関等」が株主総会となります。

②「事前確定届出給与に係る職務の執行を開始する日」は、一般的に役員給与は定時株主総会から次の定時株主総会までの間の職務執行の対価であると考えられるため、定時株主総会開催日を記入します。
 今回の例では、2019年(平成31年)5月27日となります。

③「届出期限」欄の「①又は②に記載した日のうちいずれか早い日から1月を経過する日」は、①又は②の翌日を起算日として暦に従って計算します。
 今回の例では、①②ともに5月27日ですので、その翌日の5月28日が起算日となり6月27日が「1月を経過する日」になります。

④「届出期限」欄の「会計期間4月経過日等」は、会計期間開始の日から4月を経過する日を記入します。
 今回の例では、会計期間開始日が2019年(平成31年)4月1日ですので2019年(平成31年)7月31日となります。

⑤ 以上より、届出期限は③と④のうちいずれか早い日となりますので、今回の例では、2019年(平成31年)6月27日が届出期限となります。

2.支給額に超過額又は未払額が発生した場合

 事前確定届出給与は、届出通りの日に届出通りの金額を支給しなければなりません。
 この届出支給金額よりも多く支給した場合には、超過部分だけではなく、届出支給金額部分も含めた支給金額全額が損金不算入となります。
  また、届出支給金額よりも少なく支給した場合にも、当該支給金額全額が損金不算入となります。 未払部分をその後一括して又は数回に分割して支給し、当該支給金額との合計が届出支給金額と一致したとしても、その全額が損金不算入となります。
 事前確定届出給与は、支給時期及び支給金額が事前に確定していることが要件となっているため、超過額や未払額が発生するということは事前に確定していなかったということであり、したがって事前確定届出給与には該当せず、損金不算入となります。


短期前払費用の損金算入の注意点

1.年払い契約と決算月の支払いが必要

 顧問先であるA社(3月決算、5月申告)から、次のような相談がありました。
「契約している駐車場の家賃を2月に1年分(4月分~翌年3月分)前払いして、当期の費用として計上することに問題はないか?」
 A社は、法人税基本通達2-2-14(短期の前払費用)を適用し、その支払額の全額をその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入することを考えているようでした。
 短期前払費用は、次の要件を満たす場合は、その支払時に損金算入することが認められています。

(1) 一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるものであること(等質・等量のサービスであることが必要です)

(2) その支払った日から1年以内に提供を受ける役務にかかるものであること

(3) 継続的に支払事業年度において経費処理していること

(4) 収益の計上と対応させる必要があるものでないこと 

 A社の事例を上記要件にあてはめて考えてみると、上記のうち(1)~(3)の要件に該当しない可能性がありました。

(1) A社は契約に基づいて家賃を月払いしているため、貸主の承諾なしに年払いに変えたとしても、要件を満たしません。契約を年払いに変更する必要があります。

(2) 2月に1年分(4月〜翌年3月分)を前払いしても、支払った日から1年を越える期間を対象とする前払費用であるため、要件を満たしません。決算月の3月に1年分を前払いする必要があります。
 なお、4月~翌年3月分を例えば3月20日に前払いする場合、翌年3月20日以降の分は終期が1年を超えるように思われますが、国税庁の質疑応答事例において適用して差し支えない事例として例示されています。

(3) 継続的な経費処理(支払)を前提条件とすることから、利益が出たから今期だけまとめて1年分支払うというような利益操作のための支出は認められません。来期以降も継続して1年分の家賃を前払いして経費処理する必要があります。

 なお、(4)の要件に抵触するのは、例えば賃借しているマンション等を転貸(又貸し)することによって賃貸料収入を得ている場合です。このようなケースで支払う家賃は、収益(賃貸料収入)に直接対応する費用であるため、短期前払費用の特例を受けることはできません。

2.前払対象期間が1年超の場合は不適用

 短期前払費用について、もう1点補足すべき点があります。それは、前払対象期間が1年超となる場合は、1年以内部分と1年超部分に分けたとしても、1年以内部分だけを損金算入することは認められないということです。

 例えば、当期首に火災保険料を360,000円(3年分)支払った場合、当期に対応する保険料は360,000円×12ヶ月/36ヶ月=120,000円となり、これを損金算入できます。
 残りの2年分(360,000円-120,000円=240,000円)については、翌期以降に対応する(前払対象期間が1年超となる)保険料となりますので損金算入することはできず、全額を資産計上しなければなりません。 

 ただし、貸借対照表へは、1年以内部分と1年超部分に分けて表示しなければなりません。
 1年基準(ワン・イヤー・ルール)によって、貸借対照表日(決算日)の翌日から起算して1年以内に費用となる120,000円は「前払費用(流動資産)」、1年を超える期間を経て費用となる120,000円は「長期前払費用(投資その他の資産)」として表示します。