令和6年10月1日から登記申請時に社長の住所を非公開にできます

 商業登記規則等の一部を改正する省令(令和6年法務省令第28号)によって、2024(令和6)年10月1日から代表取締役等住所非表示措置が施行されます。
 以下では、代表取締役等住所非表示措置について確認します。

1.制度の概要

 現行の会社法においては、株式会社の代表取締役など会社の代表者は氏名と住所を登記する必要があり、登記後はその氏名と住所が登記簿上で公開されます。
 また、その住所に変更があった場合は、2週間以内に変更登記をしなければならないとされています。

 代表取締役等住所非表示措置とは、一定の要件の下、株式会社の代表取締役、代表執行役又は代表清算人(以下「代表取締役等」といいます)の住所の一部を登記事項証明書や登記事項要約書、登記情報提供サービス(以下「登記事項証明書等」といいます)に表示しないこととする措置です。

 この措置により、登記事項証明書等で公開が必要だった代表取締役等の氏名と住所のうち、住所の一部を非公開にすることができるようになります。

※ 最小行政区画までは公開されます。つまり、市区町村(東京都においては特別区、指定都市においては区)までは公開されます。

2.一定の要件(手続き)

 代表取締役等住所非表示措置を講ずることを希望する場合は、以下の要件を満たす必要があります。

(1) 登記申請と同時に申し出ること

 代表取締役等住所非表示措置を講ずることを希望する者は、登記官に対してその旨を申し出る必要があります。
 また、代表取締役等住所非表示措置の申出は、設立の登記や代表取締役等の就任の登記、代表取締役等の住所移転による変更の登記など、代表取締役等の住所が登記されることとなる登記の申請と同時にする場合に限りすることができます。
 したがって、住所の非表示だけを求めての申出はできません

※ 既に退任をした代表取締役等の住所や閉鎖事項証明書等に記載された住所など、過去の住所についての非表示の申出はできません。

(2) 所定の書面を添付すること

 代表取締役等住所非表示措置の申出に当たっては、以下の区分に応じた書面の添付が必要となります。

① 上場会社である株式会社の場合
 株式会社の株式が上場されていることを認めるに足りる書面(既に代表取締役等住所非表示措置が講じられている場合は不要です)

② 上場会社以外の株式会社の場合
 以下のイからハまでの書面
イ.株式会社が受取人として記載された書面がその本店の所在場所に宛てて配達証明郵便により送付されたことを証する書面等
ロ.代表取締役等の氏名及び住所が記載されている市町村長等による証明書(例:住民票の写しなど)
ハ.株式会社の実質的支配者の本人特定事項を証する書面(例:資格者代理人の法令に基づく確認の結果を記載した書面など)

※ 既に代表取締役等住所非表示措置が講じられている場合は、ロのみの添付で足ります。
 また、株式会社が一定期間内に実質的支配者リストの保管の申出をしている場合は、ハの添付は不要です。

3.留意事項

 代表取締役等住所非表示措置が講じられた場合には、登記事項証明書等によって会社代表者の住所を証明することができないこととなるため、金融機関から融資を受けるに当たって不都合が生じたり、不動産取引等に当たって必要な書類(会社の印鑑証明書等)が増えたりするなど、一定の支障が生じることが想定されます。
 そのため、代表取締役等住所非表示措置の申出をする前に、このような影響があり得ることについて、慎重かつ十分な検討が必要です。

 また、代表取締役等住所非表示措置が講じられた場合であっても、会社法に規定する登記義務が免除されるわけではないため、代表取締役等の住所に変更が生じた場合には、その旨の登記の申請をする必要があります。

 なお、代表取締役等住所非表示措置が講じられた株式会社から当該措置を希望しない旨の申出があった場合や、当該株式会社が本店所在場所に実在しないことが認められた場合などは、登記官が職権で当該措置を終了させることとなります。
 
※ 代表取締役等住所非表示措置を希望しない旨の申出は、登記申請と同時である必要はなく、単独で行うことができます。

定額減税額を追加するための「予定納税額の減額申請書」の書き方と記載例

1.同一生計配偶者等の分は申請により予定納税額より控除

 給与所得者については2024(令和6)年6月1日以後最初に支払われる給与等から、公的年金等の受給者についても令和6年6月1日以後最初に支払われる公的年金等から、それぞれ所得税の定額減税が開始されます※1
 所得税の定額減税額は、次の金額の合計額です。

(1) 本人(居住者に限ります)・・・3万円
(2) 同一生計配偶者及び扶養親族(居住者に限ります)※2・・・1人につき3万円

 一方、個人事業主については原則として令和6年分の所得税確定申告で定額減税を行うことになりますが、予定納税の対象者については、令和6年分確定申告を待たずに、令和6年6月以後に通知される令和6年分の所得税に係る第1期分予定納税額(7月)※3から本人分の定額減税額3万円が控除されています

 また、予定納税額の減額申請の手続により、本人分に加えて同一生計配偶者及び扶養親族分の定額減税額を予定納税額から控除することもできます(令和6年分の合計所得金額の見積額が1,805万円以下の居住者に限ります)。

※1 給与所得者の定額減税については「給与支払者の定額減税の方法(月次減税事務:計算から納付まで)」を、公的年金等受給者の定額減税については「定額減税を受ける公的年金等の受給者は確定申告の要否に注意」をご参照ください。

※2 青色申告者の事業専従者としてその年に給与の支払を受けている人または白色申告者の事業専従者を除きます。
 したがって、個人事業主本人の定額減税額の計算においては、これらの者を計算対象人数としてカウントしません。
 なお、青色事業専従者自身が定額減税を受けることができるか否かについては、「青色事業専従者自身の定額減税について」をご参照ください。

※3 特別農業所得者(その年において農業所得の金額が総所得金額の7割を超え、かつ、その年9月1日以後に生じる農業所得の金額がその年の農業所得の金額の7割を超える者)については、第2期分予定納税額(11月)から控除されます。

2.予定納税額の減額申請書の書き方と記載例

 同一生計配偶者及び扶養親族分の定額減税額の追加のみが減額申請書の提出理由となる場合は、簡易的な記載方法で申請することが認められています。
 以下では、次の家族構成(いずれも居住者)を前提として、本人が同一生計配偶者及び扶養親族分の定額減税額を追加する場合の減額申請書の書き方について確認します。

・給付 椎名(本人 合計所得金額の見積額は1,805万円以下)
・給付 瀬名(妻 平成7年7月7日生まれ パート給与収入見積額は100万円)
・給付 瀬世(子 令和3年3月3日生まれ 所得なし)


① 提出先の税務署、提出年月日、住所、氏名、職業、電話番号を記入します。

② 「通知を受けた金額」欄及び「申請金額」欄は、次のように記入します。


 「通知を受けた金額」欄のa、b、cは、税務署から通知された「令和6年分の所得税及び復興特別所得税の予定納税額の通知書」から転記します。

 参考までにb、cの金額は次のように計算されています。
 b=a予定納税基準額181,800円÷3-本人分の定額減税額30,000円=30,600円
 c=a予定納税基準額181,800円÷3=60,600円

 「申請金額」欄のA、B、Cは、次のとおり記入します。

 Aは、aと同額を記入します。

 Bは、b第1期分30,600円-同一生計配偶者・扶養親族分の定額減税額60,000円=△29,400円となるので0と記入します(計算結果が0円以下となる場合は0と記入します)。

 Cは、c第2期分60,600円-Bで引ききれなかった29,400円=31,200円を記入します(計算結果が0円以下となる場合は0と記入します)。

③ 「減額申請の理由」は、予定納税特別控除額を〇で囲みます。
 「減税申請の具体的理由」には、同一生計配偶者等の氏名、続柄、生年月日を記入します。

④ 「本人分㊵」欄は、30,000と記入します。
 「同一生計配偶者等分㊶」欄は、同一生計配偶者・扶養親族1人につき3万円の金額を記入します(記載例では、30,000円×2人=60,000円)。
 「合計㊷」欄は、㊵欄と㊶欄の合計額を記入します。
 ㊴欄、㊸欄、㊹欄は、上記②で計算した「申請金額」欄のA、B、Cの金額を記入します。

3.減額申請書の提出期間

 令和6年分所得税の定額減税の実施に伴い、7月減額申請(第1期分及び第2期分の減額申請)の期限が変更され、令和6年7月1日(月)から同年7月31日(水)までとなっています(通常であれば、その年の7月1日から7月15日までに減額申請書を提出します)。

給与収入103万円以下の青色事業専従者は自分の定額減税を受けることができるか?

 2024(令和6)年6月1日以後最初に支払われる給与・賞与から、所得税の定額減税(月次減税)が開始されます。
 所得税の定額減税額の計算においては、給与所得者本人だけではなく、その同一生計配偶者と扶養親族についても対象とされています※1

 定額減税額の計算対象である同一生計配偶者と扶養親族は、年間の合計所得金額が48万円(給与所得だけの場合は給与の収入金額が103万円)以下であることが要件となっており、扶養の範囲内で働きたい人や自ら所得税を負担したくない人などは、給与収入が103万円以下となるように就業調整をしているものと思われます※2

 給与収入103万円以下で働く同一生計配偶者と扶養親族については、これらの同一生計配偶者等を扶養している所得者本人の定額減税額の計算対象となるため、自ら定額減税を受けること(重複して定額減税を受けること)はできません※3
 
 一方、給与の支払いを受けている青色事業専従者は、所得者本人の定額減税額の計算対象外とされていますが、青色事業専従者自身は定額減税を受けることができます※4

 この青色事業専従者についても、自身の所得税負担が生じないように専従者給与を103万円以下に設定している場合があります(所得税だけではなく住民税負担も生じないように専従者給与を100万円以下に設定している場合もあります)。

 給与収入103万円超で働く青色事業専従者は、令和6年6月1日以後最初に支給される給与から所得税の定額減税(月次減税)を受けることができます。
 では、所得税負担がかからないように給与収入103万円以下で働く青色事業専従者も自らの定額減税(月次減税)を受けることができるのでしょうか?

 現時点での答えは「否」です※5

 給与収入103万円以下で働く人のうち、誰かの同一生計配偶者や扶養親族になっている人は自らの定額減税は受けられないものの、その誰かの定額減税の対象とされていますので間接的に定額減税を受けているといえます。

 しかし、103万円以下で働く青色事業専従者は、誰かの同一生計配偶者や扶養親族になることができないため間接的に定額減税を受けることができず、かつ、定額減税の制度設計上、自らの定額減税も受けることができないとされています。

 現時点では、給与収入103万円以下の青色事業専従者は、定額減税の蚊帳の外となっています。
 しかし、この点を問題視し、財務省や内閣府に対して是正を要請する動きもありますので、今後何らかの措置が講じられるかもしれません※5

※1 関連記事:「定額減税と年末調整で異なる『同一生計配偶者』『扶養親族』の範囲に注意!

※2 関連記事:「パート・アルバイトの税制上と社会保険制度上の年収の壁

※3 関連記事:「給与収入103万円以内で働く人は自分の定額減税を受けることができるか?

※4 関連記事:「青色事業専従者自身の定額減税について

※5 関連記事:「給与収入103万円以下の青色事業専従者は調整給付(不足額給付)を受けられる!

青色申告を取り消されても過去の繰越欠損金は控除できる!

 法人も個人も青色申告にはいろんな特典がありますので、通常は法人設立時又は個人事業開業時に青色申告の承認申請書を税務署に提出するものと思われます。

 この青色申告については、無申告や期限後申告の場合は取り消されるというのが一般的な認識のようですが、個人事業主の場合は無申告や期限後申告の場合でも青色申告は取り消されません(詳細については、本ブログ記事「無申告でも所得税の青色申告は取り消されない」をご参照ください)。

 一方、法人については、2期連続で無申告や期限後申告となると青色申告が取り消されます。
 この場合に気になるのが、青色申告が取り消されて白色申告となった場合に、青色申告時代の繰越欠損金が控除できるのか否かということです。

 以下では、この点について確認します。

1.法人は2期連続期限後申告・無申告で青色申告取り消し

 法人の青色申告の承認の取り消しについては、次の法人税法第127条第1項に定められています。

第121条第1項(青色申告)の承認を受けた内国法人につき次の各号のいずれかに該当する事実がある場合には、納税地の所轄税務署長は、当該各号に定める事業年度まで遡つて、その承認を取り消すことができる。この場合において、その取消しがあつたときは、当該事業年度開始の日以後その内国法人が提出したその承認に係る青色申告書(納付すべき義務が同日前に成立した法人税に係るものを除く。)は、青色申告書以外の申告書とみなす。

第1号 その事業年度に係る帳簿書類の備付け、記録又は保存が前条第1項に規定する財務省令で定めるところに従つて行われていないこと

第2号 その事業年度に係る帳簿書類について前条第2項の規定による税務署長の指示に従わなかつたこと

第3号 その事業年度に係る帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽し又は仮装して記載し又は記録し、その他その記載又は記録をした事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由があること

第4号 第74条第1項(確定申告)の規定による申告書をその提出期限までに提出しなかつたこと


 また、上記法人税法第127条第1項第4号の規定による取り消しは、国税庁ホームページの事務運営指針によると、「2事業年度連続して期限内に申告書の提出がない場合に行うものとする。この場合、当該2事業年度目の事業年度以後の事業年度について、その承認を取り消す。」とされています。

 つまり、法人については、2期連続して期限後申告(無申告を含む)をすると、2期目から青色申告が取り消されます

2.青色取消後の3期間は白色申告となる

 上記1のように、法人は2期連続で期限後申告又は無申告となると青色申告が取り消されますが、注意しなければならないのは2期目から青色申告が取り消されるということです。

 例えば、設立3期目の法人が前期(第2期)に期限後申告をし、当期(第3期)も期限後申告となった場合は、前期(第2期)までは青色申告が適用されますが、当期(第3期)から青色申告が取り消されます。次期(第4期)から取り消されるのではない点に注意が必要です。


 さらに注意点として、期限後申告となる当期(第3期)から青色申告が取り消されることがわかっていても、一旦は青色申告書を提出するということです。
 青色申告書を提出した後に、税務署から「青色申告承認申請の取り消し通知」(以下「取消通知」といいます)が届いて、当期(第3期)から白色申告という扱いになります。
 この場合、当期(第3期)に新たに欠損金が生じていたり、課税所得に影響があるような会計処理(30万円未満の少額減価償却資産の特例の適用など)をしているときは、白色申告で修正申告を行います

 なお、税務署から「取消通知」が届いた後で期限後申告をする場合は、はじめから白色申告書を提出します。

 また、青色申告を取り消された場合でも、青色申告の承認申請書を再提出すれば青色申告に戻すことができます。

 取消通知が届くのは、第3期の期限後申告を行った第4期です。この取消通知が届いてから1年経過後の第5期に、青色申告の承認申請書を提出することができるようになります。
 ただし、青色申告の承認申請書は、適用を受けたい事業年度開始の日の前日までに提出しなければなりませんので、第5期に提出したとしても青色申告に戻れるのは第6期からとなります。
 青色申告が取り消されると、少なくとも3期間は白色申告となります。

3.青色申告時代の繰越欠損金は白色申告になっても控除可能

 期限後申告(無申告を含む)2期目から青色申告が取り消されますが、この場合、過去の繰越欠損金はどうなるのでしょうか?
 
 例えば、欠損金の状況が次のような設立3期目の法人を例にします。

 
 前々期(第1期)に200万円、前期(第2期)に100万円の欠損金が生じていますが、期限後申告となった前期(第2期)の100万円の欠損金は、青色申告が適用されるため、当期(第3期)以降に繰り越すことができます。
 しかし、期限後申告2期目の当期(第3期)に生じた欠損金50万円は、青色申告が取り消されて白色申告となるため、次期(第4期)以降へ繰り越すことができません。
 また、第5期に生じた欠損金50万円も、同じ理由から、次期(第6期)以降に繰り越すことはできません。

 一方、第4期に利益が100万円発生していますが、この利益100万円と第1期に生じた200万円の欠損金のうち100万円を繰越控除(相殺)することができます。
 その結果、第4期終了時点における繰越欠損金は、合計200万円(第1期分100万円、第2期分100万円)となります。
 青色申告が取り消されて白色申告となった場合でも、青色申告時代に生じた繰越欠損金は控除することができます。

 なお、上記の例では期限後申告2期目となる当期(第3期)に50万円の欠損金が生じていますが、第3期に50万円の利益が発生した場合は、この利益50万円と第1期の繰越欠損金200万円のうち50万円を繰越控除(相殺)することができます。
 その結果、第3期終了時点における繰越欠損金は、合計250万円(第1期分150万円、第2期分100万円)となります。

法人設立届出書の書き方と記載例

 法人を設立した場合には、納税地を所轄する役所(税務署、都道府県税事務所、市町村役場)に対して、法人の設立に伴う様々な届出書や申請書を提出しなければなりません。
 以下では、それらのうち税務署に提出しなければならない法人設立届出書の書き方について確認します。

1.税務署へ提出する書類

 法人(消費税の免税事業者であることを前提とします)を設立した場合に、税務署に提出する書類は以下のとおりです((3)~(8)は必要に応じて提出します)。

(1) 法人設立届出書
(2) 源泉所得税関係の届出書
(3) 青色申告の承認申請書
(4) 棚卸資産の評価方法の届出書
(5) 減価償却資産の償却方法の届出書
(6) 有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出方法の届出書
(7) 申告期限の延長の特例の申請書
(8) 事前確定届出給与に関する届出書

 上記書類の内容や提出期限については、本ブログ記事「会社設立時に提出する税務上の書類」をご参照ください。

2.法人設立届出書の書き方と記載例

 内国法人(国内に本店または主たる事務所を有する法人)である普通法人または協同組合等を設立した場合は、設立の日(設立登記の日)以後2か月以内に「法人設立届出書」を納税地の所轄税務署長に1部(調査課所管法人は2部)提出しなければなりません。
 この法人設立届出書には、「定款、寄附行為、規則または規約等の写し」を1部(調査課所管法人は2部)添付します。

 以下の法人設立届出書の記載例を見ながら、その書き方について確認します。

① 法人設立届出書を提出した日と所轄税務署を記入します。

② 整理番号はまだ付番されていませんので、記入不要です(※印のある欄は記入不要です)。

③ 本店又は主たる事務所の所在地を登記(履歴事項全部証明書の「本店」欄)のとおりに記入します。電話番号は固定電話がなければ携帯電話を記入し、郵便番号も忘れずに記入します。

④ 納税地に関する特別の届出をしていない場合は、③の本店又は主たる事務所の所在地と同じです。

⑤ 法人名を登記(履歴事項全部証明書の「商号」欄)のとおり記入します。フリガナも忘れずに記入します。

⑥ 13桁の法人番号を記入します。提出日時点において法人番号の指定を受けていない場合は、記入しなくてもかまいません。

⑦ 代表者の氏名を登記(履歴事項全部証明書の「役員に関する事項」(合同会社の場合は「社員に関する事項」)欄)のとおり記入します。フリガナも忘れずに記入します。

⑧ 代表者の住所を登記(履歴事項全部証明書の「役員に関する事項」(合同会社の場合は「社員に関する事項」)欄)のとおり記入します。電話番号は固定電話がなければ携帯電話を記入し、郵便番号も忘れずに記入します。

⑨ 設立年月日は登記(履歴事項全部証明書の「会社成立の年月日」欄)のとおり記入します。

⑩ 定款に記載されている事業年度を記入します。

⑪ 資本金を登記(履歴事項全部証明書の「資本金の額」欄)のとおり記入します。

⑫ ⑪の設立時の資本金の額又は出資金の額が1千万円以上である場合に、⑨の設立年月日を記入します。この欄に設立年月日を記入した場合には、「消費税の新設法人に該当する旨の届出書」を提出する必要はありません。

⑬ 事業の目的の「(定款等に記載しているもの)」は、定款(または履歴事項全部証明書の「目的」欄)に記載されている事業の目的のうち主要なものを記入します。
 事業の目的の「(現に営んでいる又は営む予定のもの)」は、「(定款等に記載しているもの)」と通常は同じですので、同上と記入します。

⑭ 本店以外に支店・出張所・工場等がある場合は、登記の有無に関わらず全ての支店・出張所・営業所・事務所・工場等を記入します。支店・出張所・工場等がない場合は、記入不要です。

⑮ 設立の形態は、該当する形態の番号を○で囲みます。法人成りの場合は1を〇で囲み、個人事業主のときの所轄税務署と整理番号を記入します。現金預金の払込みによる設立の場合は5を〇で囲み、( )内に金銭出資による設立などと記入します。

⑯ ⑮の設立の形態が2から4までである場合に、適格かその他のどちらかを〇で囲みます。

⑰ 法人設立後、事業を開始した年月日または事業を開始する見込みの年月日を記入します。通常は⑨の設立年月日と同じになります。

⑱ 「給与支払事務所等の開設届出書」の提出の有無のいずれかの該当のものを○で囲みます(法人設立届出書と一緒に提出する場合または既に別途に提出している場合は「有」を○で囲みます)。

⑲ 1を〇で囲み、定款、寄附行為、規則または規約等の写しを添付します。

⑳ 関与税理士がいる場合に記入します。いない場合は記入不要です。

㉑ この法人設立届出書を税理士または税理士法人が作成した場合は、その税理士等が署名します。

㉒ 税務署処理欄ですので、記入不要です(※印のある欄は記入不要です)。

給与収入103万円以内で働く人は自分の定額減税を受けることができるか?

 2024(令和6)年6月1日以後最初に支払われる給与・賞与から、所得税の定額減税(月次減税)が開始されます。

 所得税の定額減税額の計算においては、給与所得者本人だけではなく、その同一生計配偶者と扶養親族についても計算対象とされています※1

 一方、これらの同一生計配偶者や扶養親族となっている人は、その所得が48万円(給与収入が103万円)以下で源泉徴収税額がないと見込まれても、原則として給与支払者の月次減税事務の対象となっています※2

 つまり、誰かの同一生計配偶者や扶養親族となっている人は、その誰かの定額減税額の計算対象であると同時に、自らは給与所得者として給与支払者の月次減税事務の対象でもあるということです。

 今回は、このような同一生計配偶者や扶養親族となっている人が、自らの定額減税を受けることができるかどうかについて確認します※3
 
※1 定額減税における同一生計配偶者と扶養親族については、本ブログ記事「定額減税と年末調整で異なる『同一生計配偶者』『扶養親族』の範囲に注意!」をご参照ください。

※2 給与支払者の月次減税事務については、「給与支払者の定額減税の方法(月次減税事務:計算から納付まで)」をご参照ください。

※3 専従者給与を103万円以下としている青色事業専従者の定額減税については、「給与収入103万円以下の青色事業専従者は自分の定額減税を受けることができるか?」をご参照ください。

1.重複して定額減税は受けられない

 定額減税額の計算対象である同一生計配偶者と扶養親族は、年間の合計所得金額が48万円(給与所得だけの場合は給与等の収入金額が103万円)以下であることが要件となっており、扶養の範囲内で働きたい人や自ら所得税を負担したくない人などは、給与収入が103万円以下となるように就業調整をしているものと思われます。

 これら103万円以内で働く給与所得者の源泉徴収票にどのように定額減税額を記載するかについては、国税庁の「令和6年分所得税の定額減税Q&A」10-6に次のように示されています(下線は筆者による)。

問 同一生計配偶者や扶養親族となっている給与所得者の源泉徴収票には、定額減税額等をどのように記載しますか。
 また、ある月の給与について、源泉徴収税額があるため月次減税を行ったが、年末調整で合計所得金額が48万円以下となった給与所得者の源泉徴収票には、定額減税額等をどのように記載しますか。

[A]
 同一生計配偶者や扶養親族となっている人については、令和6年分の合計所得金額が 48万円以下となり、源泉徴収税額が発生しないため、「給与所得の源泉徴収票」の「(摘要)」欄には「源泉徴収時所得税減税控除済額0円」「控除外額30,000円」と記載してください。
 令和6年6月以降に支払う給与について、一部源泉徴収税額が発生し月次減税を行った給与所得者で、令和6年分の合計所得金額が48万円以下となり、最終的に年間の源泉徴収税額が発生しなかった人についても「給与所得の源泉徴収票」の記載は同様となります。
(注) 同一生計配偶者や扶養親族となっている人の源泉徴収票に記載された控除外額は、その人の定額減税としてではなく、その同一生計配偶者や扶養親族を扶養している居住者の定額減税の計算において加味されます。

 このQ&Aでは、所得税負担のない同一生計配偶者や扶養親族についても、源泉徴収票に「源泉徴収時所得税減税控除済額0円」「控除外額30,000円」と記載することが示されています。
 「控除外額30,000円」を記載するということは、通常であれば個人住民税の課税団体である市町村からの給付があることを意味しますが、同一生計配偶者や扶養親族となっている場合でも給付されるのでしょうか?

 答えは「否」です。上記Q&Aの下線部に注目すると、「その人の定額減税としてではなく、その同一生計配偶者や扶養親族を扶養している居住者の定額減税の計算において加味されます。」とあります。

 つまり、誰かの同一生計配偶者や扶養親族となっている人は、自ら定額減税を受けることはできないということです。
 定額減税を受ける本人の方で同一生計配偶者・扶養親族の分についても減税を受けますので、重複して減税を受けることはできません。

2.なぜ源泉徴収票に控除外額3万円の記載が必要か?

 では、何のために源泉徴収票に「控除外額30,000円」と記載するのでしょうか?

 これは、定額減税を受ける本人の方で、漏れなく同一生計配偶者分・扶養親族分の減税を受けているかどうかを市町村で確認するためです。

 上記Q&Aの下線部が「給付されます」ではなく「加味されます」という表現になっているのは、市町村で確認した結果、定額減税を受ける本人が同一生計配偶者分・扶養親族分の減税を受けていないのであれば給付されますし、既に減税を受けているのであれば給付はないためです。

令和6年6月1日から軽減税率8%の対象となる給食の金額基準が変更されます

 2024(令和6)年6月1日より、消費税の軽減税率8%の対象となる給食の一食当たりの金額基準が変更されます。
 有料老人ホームの設置者や運営者、各種学校の設置者、給食調理業者など、関係する事業者の方はご注意ください。

1.対象となる施設は変更なし

 有料老人ホームや小中学校等で提供される飲食料品(以下「給食」といいます)は、これらの施設で日常生活や学校生活を営む入居者や生徒等に対してその施設の設置者等が調理等をして提供するものですから、本来はケータリングサービス※1に該当し標準税率10%が適用されます。

 しかし、このような特定の施設で提供される給食は、入居者や生徒等がその都度自ら選択できるものではなく、日常生活や学校生活を営む場において他の形態で食事をとることが難しいことから、給食を食べざるを得ないという面があります。

 そこで、以下の特定の施設で提供される給食についてはケータリングサービスに該当しないものとされ、軽減税率8%が適用されます。

(1) 有料老人ホームにおいて、当該有料老人ホームの設置者又は運営者が、当該有料老人ホームの一定の入居者※2に対して行う飲食料品の提供

(2) サービス付き高齢者向け住宅(以下「サ高住」といいます)において、当該サ高住の設置者又は運営者が、当該サ高住の入居者に対して行う飲食料品の提供

(3) 義務教育諸学校の施設において、当該義務教育諸学校の設置者が、その児童又は生徒の全て※3に対して学校給食として行う飲食料品の提供

(4) 夜間課程を置く高等学校の施設において、当該高等学校の設置者が、当該夜間過程において、生徒の全て※3に対して夜間学校給食として行う飲食料品の提供

(5) 特別支援学校の幼稚部又は高等部の施設において、当該特別支援学校の設置者が、幼児又は生徒の全て※3に対して学校給食として行う飲食料品の提供

(6) 幼稚園の施設において、当該幼稚園の設置者が、教育を受ける幼児の全て※3に対して学校給食に準じて行う飲食料品の提供

(7) 特別支援学校に設置される寄宿舎において、当該寄宿舎の設置者が、寄宿する幼児、児童又は生徒に対して行う飲食料品の提供

※1 ケータリングサービスとは、相手方が指定した場所において行う加熱、調理又は給仕等の役務を伴う飲食料品の提供をいいます。

※2 ①60歳以上の者、②要介護認定・要支援認定を受けている60歳未満の者、③ ①又は②に該当する者と同居している配偶者(事実上婚姻関係にある者を含みます)に限られます。

※3 アレルギーなどの個別事情により全ての児童又は生徒に対して提供することができなかったとしても軽減税率の適用対象となります。

2.一食当たり640円から670円に変更

 上記1.(1)~(7)の施設において提供される給食の全てが軽減税率8%の対象となるのではなく、一食当たりの基準額と一日当たりの上限額(累計額)が設けられています。

 これらの基準額が、2024(令和6)年6月1日から次のように変更されます。

変更前
同一の日同一の者に対して行う飲食料品の提供の対価の額(税抜)が・・・
一食当たり640円以下(1日累計1,920円まで)※4
変更後
同一の日同一の者に対して行う飲食料品の提供の対価の額(税抜)が・・・
一食当たり670円以下(1日累計2,010円まで)※4

※4 一日当たりの上限額は、原則として、その日の一番初めに提供される食事の対価の額から累計して判定することになりますが、各施設の設置者等が、算定対象となる飲食料品の提供をあらかじめ書面により明らかにしている場合は、当該明らかにしている飲食料品の提供の対価の額の累計額によって一日当たりの上限額を判定することも可能とされています。

定額減税と年末調整で異なる「同一生計配偶者」「扶養親族」の範囲に注意!

 2024(令和6)年6月1日以後最初に支払う給与・賞与から、所得税の定額減税(月次減税)が開始されます。

 給与支払者は、従業員等から提出された「令和6年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」(以下「扶養控除等申告書」といいます)の記載内容に基づき定額減税を行いますが、定額減税における「同一生計配偶者」と「扶養親族」の範囲が年末調整の場合と一致しないことに注意しなければなりません。

 今回は、定額減税における「同一生計配偶者」と「扶養親族」の内容について確認します。

1.所得税の定額減税額

 所得税の定額減税額は、次の金額の合計額です。

(1) 本人(居住者に限ります)・・・3万円
(2) 同一生計配偶者及び扶養親族(居住者に限ります)※1・・・1人につき3万円

 例えば、「同一生計配偶者:有、扶養親族:2人」の場合は、3万円(本人分)+3万円×3人(同一生計配偶者と扶養親族の分)=12万円が本人の定額減税額(月次減税額)となります。
 
※1 青色申告者の事業専従者としてその年に給与の支払を受けている人または白色申告者の事業専従者を除きます。
 なお、青色事業専従者自身は定額減税の対象となります。詳しくは、本ブログ記事「青色事業専従者自身の定額減税について」をご参照ください。

2.同一生計配偶者の範囲

 月次減税額の計算対象となる同一生計配偶者であるかどうかは、扶養控除等申告書の「源泉控除対象配偶者」欄で確認します。
 扶養控除等申告書に記載されている源泉控除対象配偶者は、次の①~④の要件を満たす人です※2

① 本人の所得金額が900万円以下である(給与収入のみならば年収1,095万円以下)
② 配偶者の所得金額が95万円以下である(給与収入のみならば年収150万円以下)
③ 本人と生計を一にする配偶者である
④ 青色事業専従者として給与の支払を受ける人及び白色事業専従者のいずれにも該当しない配偶者

 一方、定額減税における同一生計配偶者は、次の①~④の要件を満たす人です。

居住者に限る
② 配偶者の所得金額が48万円以下である(給与収入のみならば年収103万円以下)
③ 本人と生計を一にする配偶者である
④ 青色事業専従者として給与の支払を受ける人及び白色事業専従者のいずれにも該当しない配偶者

 扶養控除等申告書に記載された源泉控除対象配偶者と定額減税における同一生計配偶者を比較すると、次のイ~ハのことがわかります。

イ.源泉控除対象配偶者の所得が95万円以下であるのに対し、同一生計配偶者の所得は48円以下である
ロ.源泉控除対象配偶者は居住者に限定されないが、同一生計配偶者は居住者に限る
ハ.源泉控除対象配偶者の要件に給与所得者本人の所得制限(900万円以下)がついているのに対し、同一生計配偶者の要件には給与所得者本人の所得制限はない

 したがって、給与支払者が扶養控除等申告書の記載内容に基づいて定額減税額の計算を行うにあたっては、以下の2点に注意しなければなりません。

 第一に、イ・ロより、定額減税における同一生計配偶者に該当するかどうかは、扶養控除等申告書に記載されている源泉控除対象配偶者の「令和6年中の所得の見積額」が48万円以下であること、及び「非居住者である家族」欄で居住者であることを確認する必要があります。

 第二に、ハより、本人の令和6年中の所得金額の見積額が900万円超の場合、その同一生計配偶者は令和6年中の所得の見積額が48万円以下であっても源泉控除対象配偶者に該当しないため、扶養控除等申告書に記載されていません。
 そのため、同一生計配偶者を月次減税額の計算対象とするには、本人から同一生計配偶者についての記載がある「源泉徴収に係る定額減税のための申告書」の提出を受け、その配偶者の所得の見積額が48万円以下で居住者であることを確認しなければなりません。

※2 令和6年分の扶養控除等申告書の記載内容については、本ブログ記事「令和6年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の書き方と記載例」をご参照ください。

3.扶養親族の範囲

 月次減税額の計算対象となる扶養親族であるかどうかも、扶養控除等申告書の記載内容で確認します。

 扶養控除等申告書に記載されている控除対象扶養親族は、次の①~⑤の要件を満たす人です。

① 親族の所得金額が48万円以下である(給与収入のみならば年収103万円以下)
② 本人と生計を一にする親族である
③ 配偶者、青色事業専従者として給与の支払を受ける人及び白色事業専従者のいずれにも該当しない
④ 居住者のうち、年齢16歳以上である人(平成21年1月1日以前生)
⑤ 非居住者のうち、次のイ~ハのいずれかに該当する人
イ 年齢16歳以上30歳未満の人(平成7年1月2日から平成21年1月1日までの間に生まれた人)
ロ 年齢70歳以上の人(昭和30年1月1日以前に生まれた人)
ハ 年齢30歳以上70歳未満の人(昭和30年1月2日から平成7年1月1日までの間に生まれた人)のうち、「留学により国内に住所及び居所を有しなくなった人」、「障害者」又は「本人から令和6年中において生活費又は教育費に充てるための支払を38万円以上受ける人」

 一方、定額減税における扶養親族は現行の所得税法の定義によりますが、居住者に限ることとされていますので、月次減税額の計算対象に含めることができるのは、上記のうち①~④の要件を満たす人です(⑤は非居住者ですので対象外です)。

 ただし、①~④に該当する控除対象扶養親族以外に、居住者に該当する「16歳未満の扶養親族」についても月次減税額の計算に含めることができますので注意が必要です。

 16歳未満の扶養親族については、所得税の扶養控除の適用を受けることができないことから、扶養控除等申告書に記載していない従業員がいるかもしれません。

 このような場合は、令和6年6月1日以後最初の給与・賞与の支払日の前日までに、扶養控除等申告書の「住民税に関する事項」に16歳未満の扶養親族を記載して再提出を受けることで、その扶養親族を月次減税額の計算に含めることができます。

 また、扶養控除等申告書の再提出に代えて、「源泉徴収に係る定額減税のための申告書」の提出を受けることによっても、16歳未満の扶養親族を月次減税額の計算に含めることができます。
 ただし、この場合には、年末調整の際にその16歳未満の扶養親族を記載した「年末調整に係る定額減税のための申告書」の提出を受ける必要があります。

※ 給与所得者に係る月次減税については、本ブログ記事「給与支払者の定額減税の方法(月次減税事務:計算から納付まで)」をご参照ください。

インボイス制度導入後の経過措置期間中の簡易課税制度における税抜経理方式による会計処理

 2023(令和5)年10月1日からインボイス制度(適格請求書等保存方式)が開始されました。
 インボイス制度導入後は、インボイス発行事業者以外からの仕入れは原則として仕入税額控除ができませんが、インボイスの保存がなくても帳簿のみの保存で仕入税額控除ができる場合もあり、例えば、経過措置や簡易課税制度などが該当します
 
 今回は、インボイス発行事業者以外の者からの課税仕入れについて、簡易課税制度を選択し、かつ、税抜経理方式を採用している場合の会計処理について確認します。

※ 詳細については、本ブログ記事「インボイスの保存がなくても仕入税額控除できる15のケース」をご参照ください。

1.経過措置期間における本来の会計処理

 免税事業者などのインボイス発行事業者以外の者からの課税仕入れについては、2023(令和5)年10月1日から2026(令和8)年9月30日までの3年間は仕入税額相当額の80%、2026(令和8)年10月1日から2029(令和11)年9月30日までの3年間は仕入税額相当額の 50%を仕入税額控除できる経過措置が設けられています。

 この経過措置期間の最初の3年間に、課税事業者(簡易課税制度及び税抜経理方式を適用)が免税事業者から1,100円(税率10%)の課税仕入れを行ったときの会計処理は、原則として次のようになります。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
仕入 1,020 現金預金 1,100
仮払消費税等 80    

 上記の会計処理は、本則課税(原則課税)を適用している課税事業者と同じになります。
 このような会計処理をするためには、交付された請求書等がインボイスの要件を満たしているかどうか、換言すれば、取引相手がインボイス発行事業者であるかどうかを確認しなければなりません。
 そのうえで(インボイスではないことを確認したうえで)、仕入税額相当額100円(1,100円×100/110)の80%である80円を仮払消費税等として計上します。

2.経過措置期間における簡便な会計処理

 しかし、簡易課税制度を適用している事業者は、インボイスの有無にかかわらず、課税売上げに係る税額にみなし仕入率を乗じて計算した金額の仕入税額控除が認められており、仕入税額控除をするに当たってインボイスの有無は要件とされていません。

 こうしたことを踏まえ、2023(令和5)年12月の消費税経理通達の改正において、税抜経理方式を適用している簡易課税制度適用事業者が課税仕入れを行った場合に、その取引相手がインボイス発行事業者かインボイス発行事業者以外の者かを厳密に区分する事務負担を軽減する観点から、簡便な会計処理が認められることとなりました。

 つまり、簡易課税制度を適用している課税期間を含む事業年度における継続適用を条件として、インボイスの有無にかかわらず全ての課税仕入れについて、課税仕入れに係る支払対価の額に110分の10(軽減税率の対象となるものは108分の8)を乗じて算出した金額を仮払消費税等の額とすることも認められました。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
仕入 1,000 現金預金 1,100
仮払消費税等 100    

3.事務負担軽減のために税込経理方式も

 上記2のとおり、2023(令和5)年12月の消費税経理通達の改正では、税抜経理方式を適用している場合の日々の記帳における事務負担軽減措置が講じられましたが、税抜経理方式を適用している以上は、一定の事務負担(法人税法上の税務調整等)が発生することは避けられないものと考えられます。

 こうしたことから、簡易課税制度適用事業者や計算構造が簡易課税制度と同じである2割特例適用事業者は、税込経理方式を採用することにより事務負担の軽減を図ることも考えられます。

 この点について、事業者が採用する会計処理は原則として継続適用が求められますが、インボイス制度導入を契機としてその会計処理を税込経理方式に変更する場合は特に問題とはなりません。

免税事業者がインボイス登録した場合の「基準期間の課税売上高」の計算方法

 2023(令和5)年10月1日から消費税のインボイス制度がスタートしました。このインボイス制度の導入によって、本来は免税事業者であるにもかかわらず、インボイス発行事業者として登録して課税事業者となった方も多いと思われます。

 今回は、免税事業者である個人事業者がインボイス発行事業者になった場合の基準期間の課税売上高の計算方法について確認します。

1.基準期間における課税売上高とは?

 消費税の納税義務があるかどうかを判定するための基準の一つとして「基準期間における課税売上高」があり、消費税申告書に参考事項として記載することになっています。

 基準期間とは、法人の場合は「その事業年度の前々事業年度」をいいます。前々事業年度が1年未満の場合は、1年分へ換算します
 例えば、前々事業年度(3か月)が免税事業者の場合でその間の課税売上高が330万円(税率は10%とします)のときは、基準期間における課税売上高は330万円×12か月/3か月=1,320万円となります(税抜処理をしません)。
 前々事業年度が課税事業者の場合は、330万円×100/110×12か月/3か月=1,200万円となります(税抜処理をします)。

 個人事業者の基準期間は、「その年の前々年」をいいます。前々年が1年未満の場合でも1年分への換算はしません
 例えば、前々年(3か月)が免税事業者の場合でその間の課税売上高が330万円のときは、基準期間における課税売上高は330万円となります(年換算も税抜処理もしません)。
 前々年が課税事業者の場合は、330万円×100/110=300万円となります(年換算はせず税抜処理をします)。

 このように、基準期間における課税売上高の計算方法は、法人と個人や免税事業者と課税事業者で異なりますが、以下では、免税事業者である個人事業者を前提として、基準期間における課税売上高の計算方法を確認します。

※ 他に「特定期間における課税売上高」がありますが、ここでの説明は省略します。

2.課税期間の中途からインボイス発行事業者となった場合

 本来は免税事業者であるにもかかわらず、インボイス制度がスタートした2023(令和5)年10月1日から課税事業者になった個人事業者は、令和5年10月1日から同年12月31日までの3か月間を消費税の集計期間として令和5年分の消費税申告を行いました。

 この個人事業者が2025(令和7)年分の消費税申告を行うにあたって、その基準期間は前々年である2023(令和5)年となります。
 では、その基準期間における課税売上高はどのように計算するのでしょうか?

 課税事業者となった令和5年10月から12月までの課税売上高を計算すればいいのでしょうか?
 それとも免税事業者であった令和5年1月から9月までの課税売上高も含めて計算するのでしょうか?

 結論は、免税事業者であった令和5年1月から9月までの課税売上高と、課税事業者となった令和5年10月から12月までの課税売上高との合計額を基準期間における課税売上高とします。
 また、免税事業者であった令和5年1月から9月までの課税売上高については、税抜処理を行わないことにも留意する必要があります。

 次の簡単な計算例で確認します(税率は10%とします)。

・令和5年1月~9月の課税売上高・・・550万円
・令和5年10月~12月の課税売上高・・・330万円

 令和7年分申告における「基準期間における課税売上高」は、次のように計算します。
 550万円(税抜処理しない)+330万円×100/110(税抜処理する)=850万円

 なお、上記計算例では、基準期間における課税売上高が850万円(1,000万円以下)となりましたので、この個人事業者は令和7年分の申告において2割特例を適用することができます。

※ 2割特例については、本ブログ記事「『売上税額の2割納税の特例』の適用期間の留意点」、「売上税額の2割納税の特例と簡易課税制度はどちらが有利か?」等をご参照ください。