ホステス等に支払う報酬・料金の源泉徴収税額の計算方法

 ホステス等に報酬・料金を支払うときは、所得税および復興特別所得税(以下「所得税等」といいます)を源泉徴収しなければなりません。

 業務委託契約を締結したホステス等に支払う報酬・料金は原則として外注費に該当し、このようなホステス等の報酬に係る所得税等の源泉徴収税額の計算方法は、源泉徴収税額表を用いて計算する給与や賞与の場合と異なります。

 以下では、ホステス等に支払う報酬・料金の源泉徴収税額の計算方法を確認します。

ただし、その内容が給与や賞与に該当するものについては、外注費(事業所得や雑所得)ではなく給与所得として源泉徴収を行います。
 外注費と給与のどちらに該当するかについては、「外注費か給与か・・・国税庁の判断基準」をご参照ください。

1.ホステス等の報酬とは?

 ホステス等に支払う報酬・料金として、所得税等を源泉徴収しなければならないのは、次に該当する場合です。

(1) バーやキャバレーの経営者が、そこで働くホステスなどに報酬・料金を支払う場合

(2) いわゆるバンケットホステス・コンパニオン等を、ホテル、旅館その他飲食をする場所に派遣して接待等の役務の提供を行わせることを内容とする事業を営む者が、そのバンケットホステス・コンパニオン等に報酬・料金を支払う場合

バンケットホステス・コンパニオン等とは、ホテル、旅館、飲食店その他飲食をする場所で行われるパーティー等の飲食を伴う会合において、専ら客の接待等の役務の提供を行うことを業務とする人をいいます。

2.ホステス報酬の源泉徴収税額の計算方法

(1) 月払いの場合

 源泉徴収すべき所得税等の額は、報酬・料金の額から同一人に対し1回に支払われる金額について、5千円にその報酬・料金の「計算期間の日数」を乗じて計算した金額(同月中に給与等の支払がある場合には、その計算した金額からその計算期間の給与等の支給額を控除した金額)を差し引いた残額に10.21パーセントの税率を乗じて算出します。
(注)求めた税額に1円未満の端数があるときは、これを切り捨てます。

 なお、「計算期間の日数」とは、「営業日数」または「出勤日数」ではなく、ホステス報酬の支払金額の計算の基礎となった期間の初日から末日までの全日数です。

 源泉徴収税額={(ホステス報酬-5千円×計算期間の日数)-給与等の支給額}×10.21%

 具体的には、以下のように計算します。

〈計算例〉
・ホステス報酬の支払金額:30万円
・ホステス報酬の支払金額の計算の基礎期間:7月1日から7月31日(31日間)
・営業日数:25日間
・出勤日数:10日間
・7月中の給与支給額:なし

 源泉徴収税額=(30万円-5千円×31日)×10.21%=14,804円(1円未満切り捨て)

(2) 日払いの場合

 上記(1)の計算例は、ホステス報酬を月払い(月末締・翌月10日払い等)することを前提としていましたが、ホステス報酬をその日のうちに支払う日払いのケースもあります。

 この場合の源泉徴収税額は、どのように計算するのでしょうか?

 源泉徴収すべき所得税等の額は、報酬・料金の額から同一人に対し1回に支払われる金額について計算することとなっていますので、日払いの場合の「計算期間の日数」は1日となり、報酬を支給する毎に源泉徴収をしなければなりません。

 源泉徴収税額={(ホステス報酬-5千円)-給与等の支給額}×10.21%

 具体的には、以下のように計算します。

〈計算例〉
・ホステス報酬の支払金額:3万円
・ホステス報酬の支払金額の計算の基礎期間:7月1日から7月31日(31日間)
・営業日数:25日間
・出勤日数:1日(7月7日)
・7月7日の給与支給額:なし

 源泉徴収税額=(3万円-5千円)×10.21%=2,552円(1円未満切り捨て)

3.留意事項

 ホステス等に支払った報酬・料金から源泉徴収した所得税等は、支払った月の翌月10日までに納付しなければなりません。
 支払者が源泉所得税の納期の特例の適用を受けている場合であっても、ホステス等に支払う報酬・料金については、納期の特例の対象とはなりませんのでご注意ください。

 また、ホステス等の報酬・料金について、同一人に対するその年中の支払金額の合計額が50万円を超えるものについては、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を税務署に提出しなければなりません。

※ 関連記事:「外交員報酬に係る源泉徴収税額の計算方法」、「セミナー講師料を支払った場合の源泉徴収

「従たる給与についての扶養控除等申告書」とは?

1.どんな場合に提出するのか?

出所:国税庁ホームページ

 「従たる給与についての扶養控除等(異動)申告書」は、2か所以上から給与等の支払を受ける人で、主たる給与等の支払者から支給される給与だけでは扶養控除等の人的所得控除が控除しきれないと見込まれる人が、従たる給与の支払者(主たる給与の支払者以外の給与の支払者)から支給される給与から配偶者(特別)控除(源泉控除対象配偶者について控除を受けるものに限ります)や扶養控除を受けるために提出する書類です。

 主たる給与とは、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人に支払われる給与をいい、主たる給与の源泉徴収税額は源泉徴収税額表の「甲欄」で求めます(扶養控除等申告書の書き方については、本ブログ記事「令和6年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の書き方と記載例」をご参照ください)。

 従たる給与とは、従たる給与の支払者から支払われる給与をいい、従たる給与の源泉徴収税額は源泉徴収税額表の「乙欄」で求めます。

 この従たる給与の支払者のもとで、配偶者(特別)控除や扶養控除を受けるためには、「従たる給与についての扶養控除等申告書」を提出する必要があります。
 具体的には、2か所以上の給与の支払者から給与の支払を受ける人で、その年中の主たる給与等の金額(給与所得控除後の給与等の金額)が次の(1)と(2)の金額の合計額に満たないと見込まれる場合に提出します。

(1) 主たる給与につき控除される社会保険料及び小規模企業共済等掛金の見積額
(2) その人に適用される障害者控除額、寡婦控除額、ひとり親控除額、勤労学生控除額、配偶者(特別)控除額、扶養控除額および基礎控除額の合計額

 なお、主たる給与の支払者に申告した源泉控除対象配偶者や控除対象扶養親族を、年の中途で従たる給与の支払者に申告替えすることはできますが、従たる給与の支払者に申告した源泉控除対象配偶者や控除対象扶養親族を、年の中途で主たる給与の支払者に申告替えすることはできません。

※ 2023(令和5)年度税制改正により、源泉徴収手続の簡素化を図り納税者利便を向上させる観点から、2025(令和7)年1月1日以後に支給される給与等について提出する「給与所得者の扶養控除等申告書」及び「従たる給与についての扶養控除等申告書」に「簡易な申告書」が創設されました。詳細については、本ブログ記事「簡易な扶養控除等申告書とは?」をご参照ください。

2.「従たる給与についての扶養控除等申告書」が提出されている場合の源泉徴収

 「従たる給与についての扶養控除等申告書」の提出がある場合に、月額表の乙欄を使用して給与や賞与に対する源泉徴収税額を求めるときは、乙欄に記載されている税額から申告されている扶養親族等の数に応じ、扶養親族等1人につき1,610円を控除します。

 また、日額表の乙欄を使って源泉徴収税額を求めるときは、乙欄に記載されている税額から申告されている扶養親族等の数に応じ、扶養親族等など1人につき50円を控除します。

 なお、源泉徴収税額表の使い方については、本ブログ記事「源泉徴収税額表の『月額表』『日額表』の使い方と『甲欄』『乙欄』『丙欄』」をご参照ください。

不動産外交員の歩合給と「給与課税されない固定給」とは?

1.歩合給と固定給の税法上の取扱い

 不動産外交員の報酬は、販売実績に基づく歩合給(変動給)であることが一般的です。そのため、販売実績がよかった月は多額の報酬を得ることが可能ですが、仮に販売実績がなかった月は報酬も0になります。

 そこで、不動産外交員の生活保障のために、歩合給とは別に固定給を支給する場合があります。固定給は販売実績とはかかわりなく支給され、例えば販売実績がなくても支給されます。

 歩合給と固定給では税法上の取扱いが異なり、歩合給を支給した場合は消費税法上の課税取引となるので仕入税額控除ができますが、固定給を支給した場合は給与課税され仕入税額控除はできません。

 また、歩合給と固定給では、所得税の源泉徴収税額の計算方法も異なります。歩合給の場合は、外交員に支払う報酬の金額から12万円を控除した残額に10.21%(復興税を含む)を乗じて計算します(具体的な計算方法の詳細については、本ブログ記事「外交員報酬に係る源泉徴収税額の計算方法」をご参照ください)。

 一方、固定給の場合は、「給与所得の源泉徴収税額表」を使用して、給与に対する源泉徴収税額を求めます。

 このように、不動産外交員に支払う固定給は基本的には給与として課税されますが、所得税基本通達204-22には「給与課税されない固定給」が記載されています。

2.所得税基本通達204-22

 所得税基本通達204-22には、外交員又は集金人の業務に関する報酬又は料金について、次のように規定されています(下線は筆者による)。

 外交員又は集金人がその地位に基づいて保険会社等から支払を受ける報酬又は料金については、次に掲げる場合に応じ、それぞれ次による。

(1) その報酬又は料金がその職務を遂行するために必要な旅費とそれ以外の部分とに明らかに区分されている場合  法第9条第1項第4号《非課税所得》に掲げる金品に該当する部分は非課税とし、それ以外の部分は給与等とする。

(2) (1)以外の場合で、その報酬又は料金が、固定給(一定期間の募集成績等によって自動的にその額が定まるもの及び一定期間の募集成績等によって自動的に格付される資格に応じてその額が定めるものを除く。以下この項において同じ。)とそれ以外の部分とに明らかに区分されているとき  固定給(固定給を基準として支給される臨時の給与を含む。)は給与等とし、それ以外の部分は法第204条第1項第4号に掲げる報酬又は料金とする。

(3) (1)及び(2)以外の場合  その報酬又は料金の支払の基因となる役務を提供するために要する旅費等の費用の額の多寡その他の事情を総合勘案し、給与等と認められるものについてはその総額を給与等とし、その他のものについてはその総額を法第204条第1項第4号に掲げる報酬又は料金とする。

 上記通達のとおり、固定給は給与として取り扱われますが、(2)の下線部のものは給与課税される固定給から除くとされています(つまり、「給与課税されない固定給」です)。

 下線部の「一定期間の募集成績等によって自動的にその額が定まるもの及び一定期間の募集成績等によって自動的に格付される資格に応じてその額が定めるもの」とは、具体的には「前月の販売実績により、その一定割合の固定給(上限額あり)を当月に支払う場合」などが該当します。

 例えば、前月の販売実績が100万円の場合は、その一定割合(5%)の固定給5万円を当月に支給し、前月の販売実績が1,000万円の場合は、その一定割合(5%)の固定給20万円(上限額20万円とします)を当月に支給します。

 この支給方法によると、仮に当月の販売実績が0でも、前月の販売実績によっては当月に報酬が支給されます。当月の販売実績に基づいた報酬ではないため「固定給」という名称を用いていますが、当然その支給額は月によって増減しますので実質的には歩合給(変動給)であり、給与ではなく外交員報酬といえます。

 したがって、実質的には歩合給であることから、上記通達の(2)では、給与として取り扱われる固定給から除くものとされています。

3.給与課税されない固定給の源泉徴収税額の計算方法

 給与課税される固定給であれば、先に述べたように「給与所得の源泉徴収税額表」を使用して、給与に対する源泉徴収税額を求めます。

 所得税基本通達204-22における「給与課税されない固定給」は、実質的には歩合給(変動給)である外交員報酬ですので、その源泉徴収税額は、外交員報酬に係る源泉徴収税額の計算方法によって算出します。

 例えば、当月の販売実績に基づく歩合給が30万円、前月の販売実績に基づく固定給(給与課税されない固定給)が5万円だとしたら、当月の源泉徴収税額は次のようになります。

 源泉徴収税額={(30万円+5万円)-12万円}×10.21%=23,483円

テレワークで支出した費用は特定支出控除の対象となるか?

 新型コロナウイルス感染症の影響により、時間や場所を固定しない柔軟な働き方であるテレワーク(在宅勤務)が社会全体で急速に普及・定着しつつあります。
 そこで気になるのが、テレワークを取り入れる企業のサラリーマン(給与所得者)がテレワークのために支出した費用は、特定支出控除の対象になるかどうか、ということです。
 今回は、コロナ禍における特定支出控除について確認します。

1.特定支出控除の概要

 特定支出控除とは、給与所得者が次のような支出(以下「特定支出」といいます)をした場合、その年の特定支出の合計額が給与所得控除額の2分の1を超える場合、その超える部分について、確定申告により給与所得の金額の計算上控除することができる制度です。

項目 内容
通勤費 一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出
職務上の旅費 勤務する場所を離れて職務を遂行するために直接必要な旅費
転居費 転任に伴う転居のために通常必要であると認められる支出のうち一定のもの
研修費 職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出
資格取得費 職務に直接必要な資格を取得するための支出
帰宅旅費 単身赴任等で場合で、勤務地と自宅の間の旅行のために通常必要な支出のうち一定のもの
勤務必要経費 職務に関連する書籍・定期刊行物等の図書費、制服・事務服等の衣類及び職務上関係ある者に対する接待・供応・贈答等のための支出

2.特定支出控除の対象となるか?

 テレワーク(在宅勤務)を命じられたことに伴い、職務の遂行に直接必要なものとして次の費用を支出した場合、特定支出控除の対象となる勤務必要経費に該当するでしょうか?

(1) 机・椅子・パソコン等の備品購入のための費用
(2) 文房具等の消耗品の購入のための費用
(3) 電気代等の水道光熱費やインターネット回線使用のための費用
(4) インターネット上に掲載されている有料記事購入のための費用

 結論を先に述べると、上記のうち(4)のみが勤務必要経費に該当し、特定支出控除の対象になります。

 勤務必要経費は、①職務に関連する図書(書籍、新聞・雑誌その他の定期刊行物、不特定多数の者に販売することを目的として発行される図書)、②勤務場所において着用することが必要とされる衣服を購入するための支出、③給与等の支払者の得意先や仕入先などの職務上関係のある者に対する接待等のための支出のうち、その支出がその人の職務の遂行に直接必要なものとして給与等の支払者により証明されたものとされています。
 上記(1)~(4)の各費用のうち「(4) インターネット上に掲載されている有料記事」については、一般的に不特定多数の者に販売することを目的として発行されるものですので、勤務必要経費(図書費)に該当します。
 しかし、その他の費用は、上記①~③の勤務必要経費のいずれの支出にも該当しませんので、特定支出とはなりません。