オープンイノベーション促進税制

 自社にないハイテクノロジーやビジネスモデルを持つベンチャー企業と提携し、相乗効果を高め、より利益の源泉となるイノベーションを起こしやすくするようにするオープンイノベーション促進税制が創設されました。
 既存企業が従前の閉鎖的でコストの高い自己開発にこだわることなく、自社の持つ技術等とベンチャー企業が持つ技術やノウハウを組み合わせ、新分野に進出するなど事業構造を転換できる見通しがついていることが条件となります。

1.概要

 青色申告書を提出する法人で特定事業活動を行うもの(以下「対象法人」といいます)が、2020年(令和2年)4月1日から2022年(令和4年)3月31日までの間に、設立10年未満の非上場ベンチャー企業などに出資(大企業は1億円以上、中小企業は1,000万円以上の出資が対象。海外のベンチャー企業への出資は5億円以上が対象。)することにより特定株式を取得し、かつ、これをその取得した日を含む事業年度末までに有している場合において、その特定株式の取得価額の25%以下の金額を特別勘定の金額として経理したときは、その事業年度の所得の金額を上限として、その経理した金額の合計額を損金算入できるというものです。

2.適用要件

(1) 出資を行う事業会社の要件

① 国内事業会社又は国内事業会社によるCVC

※「CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)」とは、事業会社又はその子会社が運営し、持分の過半数以上を所有するファンドなどのことです。

② 1件当たり1億円以上の大規模出資(中小企業が出資する場合は1,000万円以上。海外ベンチャー企業への出資は5億円以上。)

③ 5年間の株式保有

④ 1年間の出資案件に関して、「各出資が事業会社、ベンチャー企業双方の事業革新に有効であり、制度を濫用するものでないこと」を、決算期にまとめて経済産業省に報告すること

(2) 出資を受けるベンチャー企業の要件

① 新規性・成長性のある設立10年未満の非上場ベンチャー企業(新設企業は対象外)

② 出資を行う事業会社又は他の企業グループに属さないベンチャー企業

3.出資から5年以内に株式を手放した場合

 出資した事業会社が出資から5年以内に株式を手放した場合は、優遇税制の適用によって受けた税優遇分を国に返還する措置が盛り込まれています。これは企業が税優遇を得ることだけを目的に出資するのを防ぐためです。

4.特別勘定の取崩し

(1) 特別勘定の取崩し事由

 特別勘定の金額は、次に掲げる特定株式の譲渡その他の取崩し事由に該当することとなった場合には、その事由に応じた金額を取崩して益金算入します。ただし、その特定株式の取得から5年を経過した場合は、この限りではありません。

① 特定株式につき経済産業大臣の証明が取り消された場合

② 特定株式の全部又は一部を有しなくなった場合

③ 特定株式につき配当を受けた場合

④ 特定株式の帳簿価額を減額した場合

⑤ 特定株式を組合財産とする投資事業有限責任組合等の出資額割合の変更があった場合

⑥ 特定株式に係る特別新事業開拓事業者が解散した場合

⑦ 対象法人が解散した場合

⑧ 特別勘定の金額を任意に取り崩した場合

(2) 特別勘定の経理処理

 例えば、出資額(特定株式の取得価額)が1億円の場合は、所得金額からの控除額は1億円×25%=2,500万円となりますが、これを仕訳で表すと次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
特別勘定繰入額 2,500万円 特別勘定 2,500万円

 また、特定株式を売却したなどの取崩し事由に該当した場合の仕訳は次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
特別勘定 2,500万円 特別勘定取崩益 2,500万円

期限後申告でも中小企業投資促進税制、中小企業経営強化税制、商業・サービス業等活性化税制の適用はある!

 中小企業の投資促進を後押しする既存の制度には、中小企業投資促進税制、中小企業経営強化税制、商業・サービス業・農林水産業活性化税制があり、2019年度(令和元年度)税制改正で適用期限がいずれも2021年(令和3年)3月31日まで延長されました。

 これらの3税制について、期限後申告であっても各要件を具備している場合は、その適用を受けることができます。

 今回は、意外と知られていない期限後申告と投資促進3税制との関係について確認します。

1.中小企業投資促進税制の適用手続

 中小企業投資促進税制の特別償却と税額控除の適用を受けるためには、確定申告書等に下記の書類を添付する必要があります(特別償却と税額控除を重複適用することはできません)。

特別償却の場合 税額控除の場合
適用額明細書 同左
別表16(1)又は(2) 別表6(15)
特別償却の付表(3)

2.中小企業経営強化税制の適用手続

 中小企業経営強化税制の特別償却と税額控除の適用を受けるためには、確定申告書等に下記の書類を添付する必要があります(特別償却と税額控除を重複適用することはできません)。

特別償却の場合 税額控除の場合
適用額明細書 同左
別表16(1)又は(2) 別表6(24)
特別償却の付表(9)
経営力向上計画の写し 同左
経営力向上計画に係る認定書の写し 同左

3.商業・サービス業・農林水産業活性化税制の適用手続

 商業・サービス業・農林水産業活性化税制の特別償却と税額控除の適用を受けるためには、確定申告書等に下記の書類を添付する必要があります(特別償却と税額控除を重複適用することはできません)。

特別償却の場合 税額控除の場合
適用額明細書 同左
別表16(1)又は(2) 別表6(23)
特別償却の付表(8)
経営改善指導助言書類の写し 同左

4.確定申告書等は期限後申告書を含む

 上記1~3で見たように、投資促進3税制の適用を受けるためには、確定申告書等にそれぞれの税制で定められた書類を添付しなければなりません。
 ところで、この確定申告書等とは、仮決算をした場合の中間申告書と確定申告書(期限後申告書を含む)をいいます(下記条文参照)。

確定申告書(租税特別措置法第2条第27号)

法人税法第2条第30号に規定する中間申告書で同法第72条第1項各号に掲げる事項を記載したもの及び同法第144条の4第1項各号又は第2項各号に掲げる事項を記載したもの並びに同法第2条第31号に規定する確定申告書をいう。

確定申告書(法人税法第2条第31号)

第74条第1項(確定申告)又は第144条の3第1項若しくは第2項(中間申告)の規定による申告書(当該申告書に係る期限後申告書を含む。)をいう。

 したがって、何らかの事情により確定申告書の提出が期限後申告となった場合であっても、それぞれの税制で定められた書類を添付して提出した場合にはその適用を受けることができます。

医療機器は中小企業経営強化税制の適用対象外!

 2017年度(平成29年度)改正で、2019年(平成29年)3月末で廃止された生産性向上設備投資促進税制(B類型)では、医療機器を含むすべての器具及び備品が適用対象となっていました。
 しかし、新設された中小企業経営強化税制では、医療保健業を行う事業者(医療法人や個人開業医等)が取得する医療機器は、A類型及びB類型ともに適用対象外となりました
 今回は、医療業と中小企業経営強化税制との関係について述べていきます。

1.「医療保健業を行う事業者」とは?

 「医療保健業を行う事業者」とは、医療業及び保健衛生業を行う事業者、すなわち、医療業(日本標準産業分類の「大分類P-医療、福祉」・「中分類83-医療業」医師又は歯科医師等が患者に対して医業又は医業類似行為を行う事業所及びこれに直接関連するサービスを提供する事業所)及び保健衛生業(日本標準産業分類の「大分類P-医療、福祉」・「中分類84-保健衛生」保健所、健康相談施設、検疫所(動物検疫所、植物防疫所を除く)など保健衛生に関するサービスを提供する事業所)を行う事業者のことをいいます。

2.適用対象資産

 医療保険業を行う事業者(医療法人や個人開業医等)が取得又は制作をする医療機器、建物附属設備は経営力向上設備等から除外されています

 中小企業経営強化税制の適用対象資産は、中小企業等経営強化法施行規則第8条第2項の経営力向上設備等に該当することが必要ですが、その経営力向上設備等の「器具及び備品」と「建物附属設備」では、生産性向上設備(A類型)・収益力強化設備(B類型)ともに、「医療保険業を行う事業者が取得又は制作をする器具及び備品中の医療機器と建物附属設備」は除かれています(中小企業等経営強化法第19条第3項、中小企業等経営強化法施行規則第8条第2項)。

 したがって、医療法人や個人開業医が取得する医療機器(器具及び備品に該当)及び建物附属設備は、中小企業経営強化税制の適用対象とはなりません。

3.医療機器とは?

 ここで、医療機器とは、耐用年数省令別表第一の「器具及び備品」「8医療機器」に掲げられる消毒殺菌用機器、手術機器、血液透析又は血しょう交換用機器、ハバードタンクその他の作動部分を有する機能回復訓練機器、調剤機器、歯科診療用ユニット、光学検査機器及びレントゲンその他の電子装置を使用する機器等が該当し、病院、診療所等における診療用又は治療用の器具及び備品をいいます(耐用年数取扱通達2-7-13)。

 また、建物附属設備は、耐用年数省令別表第一の「建物附属設備」に掲げられているものが該当します。

 なお、医療保健業を営む者が取得する医療用の機械及び装置並びに器具及び備品については、別途、医療用機器の特別償却(租税特別措置法45の2)の検討が必要です。

変更契約書に貼る印紙はいくら?

 建設業を営むA社から、次のような問い合わせがありました。

「請負契約の金額を減額することになり覚書を交わすことになったが、この覚書に印紙を貼らなければならないか?」

 すでに成立している契約の内容を変更する場合には、A社のように覚書や念書を作成して後々のトラブルを未然に防ぐ必要があります。その際、印紙を貼るべきか、また、貼るならいくらの印紙を貼らなければならないか、という疑問が生じます。
 そこで、このような事例における印紙の取扱いについて述べていきます。

1.印紙税法上の契約書とは

 今回のように「覚書」や「念書」等の表題を用いて原契約書の内容を変更する文書を作成する場合がありますが、これらの文書は印紙税法上の「契約書」にあたるのでしょうか?
 印紙税法上の契約書とは、契約の成立、更改、内容の変更又は補充の事実を証明する目的で作成する文書をいいます。したがって、文書のタイトルが「覚書」や「念書」となっていても、そこに内容の変更(請負契約金額の変更)に関する事項が書かれているのであれば、印紙税法上は「契約書」と判断されます。
 収入印紙が必要かどうかは、あくまでも文書の内容によって判断されますので、タイトルは関係ないということです。

2.変更契約書に印紙を貼るのはどんな場合?

 A社が今回作成する覚書は、印紙税法上の契約書(以下、「変更契約書」といいます)にあたります。では、変更契約書であれば必ず印紙を貼らなければならないのでしょうか?
 印紙を貼るべき文書を課税文書といいますが、変更契約書が課税文書に該当するかどうかは、その変更契約書に「重要な事項」が含まれているかどうかにより判定します。
 つまり、原契約書により証されるべき事項のうち、重要な事項を変更するために作成した変更契約書は課税文書となり、印紙を貼る必要があります。重要な事項を含まない場合は課税文書に該当しませんので、印紙を貼る必要はありません。

3.重要な事項とは

 請負に関する契約書(第2号文書)の変更についての重要な事項は以下のとおりです。

(1) 請負の内容
(2) 請負の期日または期限
(3) 契約金額(消費税額を含む)
(4) 取扱数量
(5) 単価
(6) 契約金額の支払方法又は支払期日
(7) 割戻金等の計算方法又は支払方法
(8) 契約期間
(9) 契約に付される停止条件又は解除条件
(10) 債務不履行の場合の損害賠償の方法

 したがって、A社が作成する覚書(請負契約金額の減額)は上記(3)の重要な事項を含むため、印紙を貼らなければなりません。

4.記載金額を変更する場合の印紙

 では、A社はいくらの印紙を貼ればいいのでしょうか?これについては、変更前の契約金額を記載した契約書が作成されていること、及び変更契約書において変更金額が明らかであるか否かによって、次のようなルールがあります。

(1) 変更前の契約金額を記載した契約書が作成されていることが明らかな場合

①変更金額が明らかである場合

 変更金額が明らかで増額変更の場合は、増額した金額が記載金額になり、その増額した金額に応じた印紙を貼ります。例えば、次のような変更契約書を作成した場合です。

               変更契約書

 注文者甲と請負者Aは、令和元年11月25日に締結した建築工事請負契約について、以下のように変更する。

 既定金額   5,000万円
 変更金額   6,000万円
 増額     1,000万円

 この変更契約書には、変更前契約書の締結年月日(令和元年11月25日)が記載されていますので、変更前の契約金額を記載した契約書が作成されていることが明らかであり、かつ、変更金額(6,000万円)の記載があることから変更金額も明らかです。したがって、増額した金額(1,000万円)が記載金額となり、貼る印紙は5,000円となります。

 また、変更金額が明らかで減額変更の場合は、記載金額なしとなり、契約金額の記載のないもの(第2号文書)として200円の印紙を貼ります。例えば、次のような変更契約書を作成した場合です。

               変更契約書

 注文者甲と請負者Aは、令和元年11月25日に締結した建築工事請負契約について、以下のように変更する。

 既定金額   5,000万円
 変更金額   4,000万円
 減額     1,000万円

 この変更契約書には、変更前契約書の締結年月日(令和元年11月25日)が記載されていますので、変更前の契約金額を記載した契約書が作成されていることが明らかであり、かつ、変更金額(4,000万円)の記載があることから変更金額も明らかです。したがって、減額(1,000万円)した場合は記載金額なしとなり、貼る印紙は200円となります。
 A社はこのケースに該当しますので、A社の貼るべき印紙は200円になります。

②変更金額が明らかでない場合

 変更金額が明らかでない場合は、変更後の契約金額が記載金額となり、その変更後の金額に応じた印紙を貼ります。例えば、次のような変更契約書を作成した場合です。

               変更契約書

 注文者甲と請負者Aは、令和元年11月25日に締結した建築工事請負契約について、仕様変更に伴い契約金額を6,000万円に変更する。

 この変更契約書には、仕様を変更したことに伴い契約金額を6,000万円に変更したことが記載されています。
 先の2つの例のように、原契約書に記載された契約金額がわかれば6,000万円との差額がこの変更契約書の記載金額となります。しかし、この契約書からは変更前の金額がわからないため、増減額が明らかではありません。したがって、この変更契約書の記載金額は6,000万円と判断され、貼る印紙は30,000円となります。

(2) 変更前の契約金額を記載した契約書が作成されていることが明らかでない場合

①変更金額のみが記載されている場合

 増額・減額を問わず、その変更金額が記載金額となります。

②契約金額の記載がある場合

 変更後の契約金額が記載金額となります。

ピーク時の解約返戻率が50%超の定期保険等の税務取扱いの見直し

 2019年(平成31年)2月13日に国税庁から各生命保険会社に対して、「法人契約の定期保険等の税務取扱について見直しを検討している」旨の連絡がありました。
 これを受けて、翌14日から大手生命保険会社をはじめ、他の生命保険会社も当該商品の販売を一斉に停止しました。

1.見直しの具体的な内容は?

 今回、税務取扱の見直しの対象になったのは、「ピーク時の解約返戻率が50%超」の法人契約の定期保険等です。
 これに該当する保険商品は、支払保険料の全額又は一部が損金算入でき、かつ、ピーク時の解約返戻率が80%超に設定されており、中途解約すれば、払込保険料の多くを解約返戻金として受け取ることができるタイプのものです(今回の見直しの対象となった保険商品による節税と税務上のリスクについては、本ブログ記事「『低解約返戻金型逓増定期保険』の節税の仕組みと税務上のリスク」を参照)。

 現時点では検討段階であるため、具体的な改正内容や改正時期については未定とのことですが、これらの保険契約にかかる支払保険料の経理処理について、損金算入できる金額が縮小される方向性が示されています。 

2.既契約の保険料の経理処理は?

 今回の見直しが、既契約の保険商品の経理処理にも及ぶのかどうかについては、現時点では不明です。

 2008年(平成20年)の逓増定期保険、2012年(平成24年)のがん保険の改正の際は、通達改正日以降の新契約が対象となっており、既契約については従来の経理処理が認められました。

 しかし、1996年(平成8年)の逓増定期保険に関する通達改正の際は、既契約であっても通達改正日以降に払い込む保険料から影響する取扱いとなりました。

※国税庁は2019年(平成31年)4月11日に、節税保険に対応した法人税基本通達の改正案を公表しました。改正案については、本ブログ記事「法人向け節税保険の改正後の税務取扱い」を参照してください。

先端設備等導入計画の認定がとれました―申請書類等の実際の記載例を紹介します

1.生産性向上特別措置法による支援

 2018年(平成30年)6月6日に施行された生産性向上特別措置法では、2020年度(平成32年度)までを生産性革命・集中投資期間と位置づけ、中小企業の生産性革命の実現のため、市区町村の認定を受けた中小企業の設備投資を支援しています。

 具体的には、中小企業者等が「先端設備等導入計画」を作成し、国から導入促進基本計画の同意を受けている市区町村に提出して同計画について認定を受けた場合は、税制支援、金融支援、予算支援を受けることができるといったものです。

 税制支援とは、導入した設備の固定資産税(償却資産税)の課税標準を、3年間にわたってゼロ以上2分の1以下の範囲内で軽減する制度です(固定資産税の軽減措置については、本ブログ記事「生産性向上特別措置法による新固定資産税の特例」を参照)。

 金融支援とは、先端設備等導入計画に基づく事業について、必要な資金繰りを支援(信用保証)する制度です。

 予算支援とは、認定事業者に対する一部補助金における採択を優先(審査時の加点)する制度です。

 先日、製造業を営むA社から、上記のうち税制支援を受けたいというご相談がありました。設備取得まで土曜日曜を含めて10日しかない状況でしたが、B市の担当者に事前確認した上で必要書類を提出し、無事認定を受けることができました。

 今回は、その際に得られた書類記載上の注意点等について述べていきます。

2.B市に確認したこと

 先端設備等導入計画は、設備取得前に認定を受けなければなりません。設備取得まで時間がなかったので、書類作成に先立って、B市の担当者に以下の点について確認しました。

(1) 認定に間に合うか?

 B市のホームページには、計画認定までの目安として2週間程度と記載されていました。
 そこで、設備の取得まで10日しかない状況で申請して、認定が間に合うかどうか尋ねたところ、明後日までに書類がB市に届くなら審査はできるとのことでした(つまり、土曜日曜を除く6日間で審査をすることは可能ということです)。

(2) 書類提出方法は郵送だけか?

 B市のホームページには、書類の提出は郵送のみとありました。時間がなかったので、作成した申請書類をB市に持参するつもりだったのですが、郵送でしか受け付けられないとのことでした。

 郵送の場合、速達で出してもB市に到着するまで1日かかります。すると、認定までのスケジュールを考えると、申請書類は1日で仕上げる必要がありました。

 設備取得まで10日-土曜日曜の2日-郵送にかかる1日-審査にかかる6日=1日

(3) 書類に不備があった場合は?

 提出した書類に不備があった場合は、A社へメールで連絡が入るとのことでした。
 その後、修正した書類が届くまで審査は中断されるとのことでしたので、不備は許されない状況でした。
 実は、「先端設備等導入計画」に1か所不備があったのですが、押印が不要な書類でしたので、修正したものは郵送によらずメール送信にて済ますことができました。 

3.書類記載上の注意点

 このような状況のもと、1日で以下の申請書類を仕上げなくてはなりません。

(1) 先端設備等導入計画に係る認定申請書
(2) 先端設備等導入計画
(3) 先端設備等導入計画に関する確認書
(4) B市暴力団排除条例に係る誓約書
(5) 申請書提出用チェックシート

 なお、税制支援を受ける場合は、上記以外に工業会証明書(写し)も必要ですが、A社は事前に入手されていました。

 では、これらの書類について、記載上の主な注意点と記載例を紹介していきます。

(1) 先端設備等導入計画に係る認定申請書

① 「宛名」(認定申請書の提出先)は、先端設備等が所在する市区町村長宛となります(B市市長 〇〇〇〇様)。本店の所在地を管轄する市区町村長ではありません。

② 「住所」(認定申請書の申請者)は、本店所在地を記載します。支店等で手続きをする場合でも、支店等の所在地ではなく本店の所在地を記載します。

③ 「名称及び代表者の氏名」で注意を要するのは、「代表者の氏名」です。名称は「A株式会社」、代表者の氏名は「代表取締役 〇〇〇〇」と記載します。

 B市によると、この代表取締役という役職名が抜けている場合は、修正の対象になるそうです。あらかじめB市担当者からよくある間違いとして聞いていましたが、聞いていなければ抜かしていたかもしれません。

(2) 先端設備等導入計画

「先端設備等導入計画」の記載要領は、上記(1)の「先端設備等導入計画に係る認定申請書」に載っています。
 主な注意点は次のとおりです。

① 「1 名称等」

(イ) 「2 代表者名(事業者が法人の場合)」欄には、念のため「代表取締役 〇〇〇〇」と記載しました。

(ロ) 「5 常時使用する従業員の数」欄に、役員は含めません。また、正社員以外のパート、アルバイト、契約社員等を従業員数に含めるかどうかは、個別判断とされています(含めても含めなくてもよい)。

② 「2 計画期間」

 計画期間は、3年間、4年間、5年間とされています。先端設備等導入計画の実施時期の月から起算して36か月、48か月、60か月のいずれかの期間を設定します。
 A社の場合は3年間の計画とし、「平成31年3月~平成34年2月」と記載しました。

 気をつけなければならないのは、例えば「平成31年3月~平成34年3月」のような期間設定はできないということです(年号が問題なのではありません)。
 「平成31年3月~平成34年3月」は37か月であり、年単位に端数が生じています。計画期間は3年間(36か月)、4年間(48か月)、5年間(60か月)のいずれかしか設定できません。
 B市によると、この間違いも多いそうです。

③ 「3 現状認識」

(イ) 「①自社の事業概要」は、適用を受ける業種の内容を記載します。A社の場合は、次のように記載しました。

「創業〇〇年の法人事業者で、アルミなどの非鉄金属の切削・表面処理を中心に、精密機器等の部品加工及び製造を行う。」

(ロ) 「②自社の経営状況」は、売上高や営業利益率の推移による経営分析を行い、自社の特徴や経営上の課題、改善点、目標などを記載します。
 A社の場合は、概ね次のように記載しました。

「売上は平成29年3月期が〇〇千円、平成30年3月期が〇〇千円と減少しているが、営業利益は〇〇千円から〇〇千円に増加しており、営業利益率も〇.〇%から〇.〇%へ改善されている。
 他方で、〇〇、〇〇が、今後、当社の生産性を高め、業績を伸ばしていく上での課題である。」

④ 「4 先端設備等導入の内容」

(イ) 「(1) 事業の内容及び実施時期」欄には、「① 具体的な取組内容」と「② 将来の展望」を記載します。
 「① 具体的な取組内容」は、具体的な設備内容と導入による効果を記載します。
 注意しなければならないのは、先端設備等の導入による「人員削減のための計画」は、先端設備等の導入に関する指針に定める「雇用への配慮」の観点から認められないということです。
 A社の場合は、次のように記載しました。

「従来のNC工作機械の老朽化に伴い、本社工場に立形マシニングセンタを導入する。当該設備の導入により、手動式であった工具交換を自動化し、製造時の省力化によるコスト削減を図る。
 また、立形マシニングセンタは、加工物の複数面に同時に数種類の加工を連続して行うことができ、これまでよりも複雑な形状の加工も可能となるため、受注の変化に応じた柔軟な生産体制を構築することができる。」

 「② 将来の展望」は、上記の「①具体的な取組内容」の結果、期待される自社の生産性向上などを記載します。
 A社の場合は、次のように記載しました。

「新設備の導入で作業の自動化・省力化が進み、熟練工以外の工員であっても作業可能領域が広がるため、人的資源を適切に配置することができるようになる。人的資源の適切な配置によって製品の品質が向上し、より多くの受注にも柔軟な対応が可能となるため、生産性向上の実現が可能となる。」

(ロ)「(2) 先端設備等の導入による労働生産性向上の目標」

現状(A) 計画終了時の目標(B) 伸び率(B-A/A)
〇〇千円 〇〇千円 9.0%

 労働生産性の伸び率は、設備導入の直近の事業年度末から計画終了時において、年平均3%以上向上する必要があります。
 A社の場合、計画期間を3年に設定しましたので、伸び率が9%(3%×3年)以上向上している必要があります。

 労働生産性は、以下の算式により算定します。

 労働生産性=(営業利益+人件費+減価償却費)/労働投入量

 上記算式の人件費は、製造原価の労務費だけではなく販管費の人件費も対象になります。役員報酬を含めるかどうかは、個別判断とされています(含めても含めなくてもよい)。

 減価償却費は会計上の減価償却費が対象となり、製造原価及び販管費の減価償却費の合計となります。会計上の減価償却費は費用配分の原則に基づくことから、税務上認められている即時償却を予定している場合は計画終了時の労働生産性が正しく算定されないこともあるため、計算上は各計画期間に配分されるようにします。

 労働投入量は、「労働者数」又は「労働者数×1人当たりの年間就業時間」となります。労働者数は、上記算式の人件費の計算の基礎となった人数にします(人件費に役員報酬を含めた場合は、労働者数にも役員を含めます)。
 A社の場合は、労働者数を労働投入量としました。

 労働生産性の「現状(A)」欄は、設備導入の直近の事業年度末の決算書から数字を拾います。「計画終了時の目標(B)」欄は、A社の場合、伸び率が9.0%以上となるように逆算して算定しました。

 B市によると、労働生産性の算定にあたっては、現状と計画終了時において期間比較性が確保されるように、算定条件は必ず同一にしなければならないとのことでした(例えば、「現状(A)」欄の人件費に役員報酬を含めたのであれば、「計画終了時の目標(B)」欄にも役員報酬を含める必要があります)。
 また、計画終了時に9.0%以上の伸び率が達成できなかったとしても、罰則等はありません。

(ハ)「先端設備等の種類及び導入計画時期」

  設備名/型式 導入時期 所在地
1 マシニングセンタ/MT-12R 平成31年3月 〇〇県〇〇市〇〇3-4-5
2      
  設備等の種類 単価(千円) 数量 金額(千円) 証明書等の文書番号
1 機械装置 30,000 1 30,000 31-6147
2          
  設備等の種類 数量 金額(千円)
設備等の種類別小計 機械装置 1 30,000
合計   1 30,000

 「設備名/型式」欄は、工業会証明書に記載されている「設備の名称」と「設備型式」を転記します。
 「所在地」欄は、取得予定の先端設備等が設置される住所を記載します。〇〇県や〇〇府から記載します。
 「設備等の種類」欄と「証明書等の文書番号」欄は、工業会証明書に記載されている「減価償却資産の種類」と「整理番号」を転記します。
 「金額」欄は千円単位となっていますので、ご注意下さい。

⑤ 「5 先端設備等導入に必要な資金の額及びその調達方法」

使用・用途 資金調達方法 金額(千円)
先端設備等購入資金 融資 25,000
  自己資金 5,000

 「使用・用途」欄は、「先端設備等購入資金」と記載します。
 「資金調達方法」欄は、「自己資金」「融資」「補助金」のいずれかを記載します。
 「金額」欄は、上記④(ハ)下段の表にある「合計」欄と必ず一致するように記載します。実は、B市から修正の指摘を受けたのは、この箇所でした。
 当初、金額欄には融資を受ける25,000千円だけを記載していましたが、取得設備の合計金額30,000千円と一致していないとの指摘でした。残りの5,000千円についてA社に確認したところ自己資金で賄うとのことでしたので、上記のように修正してB市にメール送信しました。
 時間がなくあせっていたとはいえ、金額の不一致に気づかなかった私のケアレスミスでした。

(3) 先端設備等導入計画に関する確認書

 この書類は、税理士事務所等の認定経営革新等支援機関が、中小企業者等が作成した先端設備等導入計画の内容を確認し発行するものです。

 B市によると、間違いが多いのは日付だそうです。確認書の日付は、必ず申請書の日付より前の日付としなければなりません。

 「宛名」は、先端設備等導入計画を申請する「A株式会社 代表取締役 〇〇〇〇殿」と記載します。
 認定支援機関の「代表者役職」は、個人の税理士事務所に複数の税理士(所属税理士)がいる場合は、「所長税理士」などと記載します。

 「1.認定経営革新等支援機関担当者名等」の「①認定経営革新等支援機関担当者名」は、先端設備等導入計画事案を直接担当するのであれば、所長税理士、所属税理士以外に、税理士資格を持たない職員でもいいとのことでした。

 「2.先端設備等導入計画の実施に対する所見」は、導入する先端設備等が生産・販売活動等に直接利用されているか、先端設備等の導入によって労働生産性向上の目標に寄与するかといった観点から内容を確認します。

 A社の場合は、次のように3つの観点から記載しました。

「(1) 導入する先端設備等が生産活動に直接供されるかどうかについて
 マシニングセンタの導入により、作業の自動化・省力化によるコスト削減が可能となる。
 また、当該設備の導入により複雑な形状の加工も可能となるため、受注の変化に応じた柔軟な生産体制を構築することができるようになる。
 よって、今回導入する設備は、労働生産性の向上に資するものであり、生産に直接供される設備である。

(2) 先端設備等の導入の確実性について
 導入時期については、平成31年3月を見込んでおり、納入業者との調整もできていることから、問題ない。
 また、日本政策金融公庫からの設備資金2,500万円の融資の実行が確実であり、自己資金も潤沢であることから、導入に特段の問題はなく、導入は確実である。

(3) 労働生産性向上の目標達成見込について
 平成30年3月期において、営業利益〇〇千円、人件費〇〇千円、減価償却費〇〇千円、実労働者数〇〇人、労働生産性〇〇千円であった。
 先端設備等を導入することによって、計画期間終了後には、営業利益〇〇千円、人件費〇〇千円、減価償却費〇〇千円、実労働者数〇〇人、労働生産性〇〇千円となり、3年間で労働生産性の向上率9%を達成する計画である。
 雇用を確保しながら売上増による営業利益の増加が想定されることから、当該計画は妥当であり、労働生産性向上の目標達成見込みは高い。」

(4) B市暴力団排除条例に係る誓約書

 「宛名」は、「先端設備等導入計画に係る認定申請書」の宛名と同じく、先端設備等が所在する市区町村長宛となります(B市市長 〇〇〇〇様)。

 「商号又は名称」と「氏名又は職及び代表者名」は、フリガナを付けます。代表者名には、「代表取締役 〇〇〇〇」と記載しました。

 なお、この誓約書はB市独自の提出書類ですので、すべての市区町村で必要ということではありません。

(5) 申請書提出用チェックシート

 記入上の注意点は特にありませんが、「事業者名」は「A株式会社 代表取締役 〇〇〇〇」、「代表者名」は「代表取締役 〇〇〇〇」というように、役職名を記載しました。
 「申請者チェック」欄に✔を付けて提出します。

4.まとめ

 今回は申請までのスケジュールがタイトで大変でしたが、事前に市の担当者に確認・相談することが重要であると感じました。
 市区町村によって、提出書類や提出方法等が異なる場合もありますので、事前の確認は重要です。
 また、設備の取得が10日後に迫っていることを相談した上で申請しましたので、市の担当者も迅速に対応してくれたのだと思います。
 認定は、設備取得日の前日にとれました。 

税制改正による2019年4月1日以降の設備投資税制

 中小企業者等の設備投資を引き続き促進するため、中小企業投資促進税制、商業・サービス業・農林水産業活性化税制及び中小企業経営強化税制について、次のような改正が行われました(2019年度(平成31年度)税制改正)。

1.中小企業投資促進税制

(1) 制度概要

 この制度は、青色申告書を提出する中小企業者等(従業員数1,000人以下の個人事業主を含む)が、新品の機械装置等を取得等し指定事業の用に供した場合に、その指定事業の用に供した日を含む事業年度において、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除が選択適用できるというものです( ただし、資本金3,000万円超1億円以下の法人は、税額控除の適用はありません)。

(2) 改正内容

 この制度については、適用期限が2021年(平成33年)3月31日まで2年延長されました。

 中小企業投資促進税制については、本ブログ記事「中小企業等経営強化法の認定が不要の設備投資税制」を参照して下さい。 

2.商業・サービス業・農林水産業活性化税制

(1) 制度概要

 この制度は、認定経営革新等支援機関等(認定を受けた税理士、公認会計士、商工会議所等)から経営改善に関する指導及び助言を受けた青色申告書を提出する中小企業者等(従業員数1,000人以下の個人事業主を含む)が、新品の経営改善に資する器具備品や建物附属設備を導入した場合に、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除が選択適用できるというものです(資本金3,000万円超1億円以下の法人は、税額控除の適用はありません)。

(2) 改正内容

 この制度については、経営改善設備の投資計画の実施を含む経営改善により、売上高又は営業利益の伸び率が2%以上となる見込みであることについて認定経営革新等支援機関等の確認を受けることを適用要件に加えた上で、適用期限が2021年(平成33年)3月31日まで2年延長されました。
 この改正は、2019年(平成31年)4月1日以後に取得等をする経営改善設備に適用されます。
 なお、同日前に交付を受けた経営改善指導助言書類に係る経営改善設備のうち同年9月30日までに取得等をしたものについては、上記の確認を受けることを不要とする経過措置が講じられます。

 商業・サービス業・農林水産業活性化税制については、本ブログ記事「中小企業等経営強化法の認定が不要の設備投資税制」を参照して下さい。 

3.中小企業経営強化税制

(1) 制度概要

 この制度は、青色申告書を提出する中小企業者等(従業員1,000人以下の個人事業主を含む)が、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき一定の新品設備を取得し指定事業の用に供した場合、即時償却又は10%の税額控除(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)を選択適用できるというものです。

(2) 改正内容

 この制度については、特定経営力向上設備等の範囲の明確化及び適正化を行った上で、適用期限が2021年(平成33年)3月31日まで2年延長されました。

「特定経営力向上設備等の範囲の明確化及び適正化」とは、具体的には、2分の1超の売電を見込む太陽光発電設備を対象設備から除外することを意味します。

 全量売電を目的とした太陽光発電設備は中小企業経営強化税制の対象になりませんが、発電した電気の一部を指定事業に使用(例えば自社の製造工場で使用)し、余った電気を売電(余剰売電)する場合は対象となります。
 ところが、最近では、太陽光発電設備の敷地に自動販売機を設置し、そこにわずかな電気を使うことで形式的に指定事業に係る要件を満たすといった、制度趣旨に反するような事例がみられるようになったことから、2分の1超の売電を見込む設備については対象設備から除外されることとなりました。

 また、売電を予定している場合には、経営力向上計画の認定申請時に一定の書類(発電の用に供する設備の概要や当該設備による発電量等の見込みを記載)の添付が義務付けられました。

 中小企業経営強化税制については、本ブログ記事「中小企業等経営強化法の認定が必要な設備投資税制」を参照して下さい。

使用人賞与を未払計上する場合の注意点

1.損金算入の要件

 利益が出ている法人では、決算対策として使用人賞与を未払計上することがあります(いわゆる決算賞与です)。
 この決算賞与を損金算入するためには、以下の賞与の類型に応じて、それぞれの要件を満たすことが必要です。

(1) 支給予定日がすでに到来している賞与

  就業規則等で定められている支給予定日が到来している賞与については、次の要件を満たす必要があります。

① 使用人に支給額の通知をしていること
② その支給予定日又はその通知をした日の属する事業年度においてその支給額につき損金経理していること

 上記2要件を満たす使用人賞与については、支給予定日又は通知日のいずれか遅い日の属する事業年度に損金算入することができます。

(2) 翌期の1か月以内に支払う賞与

 翌期に支給する使用人賞与については、次の要件を満たす必要があります。

① 支給額を各人別に、かつ、全員に通知をしていること
② 翌期首から1か月以内に賞与を支給すること
③ その支給額につき①の通知をした日の属する事業年度において損金経理をしていること

 上記3要件を満たす使用人賞与については、通知日の属する事業年度に損金算入することができます。

2.決算賞与の留意点

 決算賞与を未払計上するにあたっての留意点は以下のとおりです。

(1) 使用人賞与の額には、使用人兼務役員に対して支給する賞与のうち使用人としての職務に対応する部分の金額が含まれます。

(2) 例えば「基本俸給×〇か月×業績割合」などのような支給額の算式を通知しても、支給額を通知したことにはなりません。業績割合が確定していないため、支給額も決定したものとはいえないためです。
 また、「基本俸給×〇か月」などのような支給額の算式は、使用人自身が支給額を計算できますが、法令上はあくまでも「支給額」の通知を求めていますので、具体的な支給額を通知することが望ましいといえます。

(3) 税務調査では、個々の使用人に対して実際に通知されたか否かが確認事項となりますので、すべての使用人別に書面やメールで支給額を通知して証拠資料を残しておくことが必要です。

(4) 所得拡大促進税制の適用にあたって決算賞与の未払計上によって賃金要件を充足している場合、税務調査で決算賞与の損金算入が否認されると所得拡大促進税制の適用も否認されてしまうリスクがあります。

中小企業等経営強化法と生産性向上特別措置法の固定資産税の特例の比較

1.両制度の比較の意義

 2018年度(平成30年度)税制改正で、新たに生産性向上特別措置法(2018年(平成30年)6月6日施行)による固定資産税の特例(以下、「新固定資産税の特例」といいます)が創設されました。
 この創設に伴い、中小企業等経営強化法による固定資産税の特例(以下、旧固定資産税の特例」といいます)は、2019年(平成31年)3月31日をもって終了します。
 両制度とも地方税における設備投資税制であり、赤字企業でも減税が受けられるなど基本的には同様の制度といえますが、特例措置の内容など異なる点もあります。
 旧固定資産税の特例の廃止を間近に控えた今、両制度を比較することによって、新固定資産税の特例に対する理解も深まるものと思われますので、今回は両制度の比較を行います。

2.両制度の相違点

 両制度の主な相違点は、以下のとおりです。

項目 旧固定資産税の特例 新固定資産税の特例
適用法律 中小企業等経営強化法 生産性向上特別措置法
適用期限 2019年(平成31年)3月31日 2021年(平成33年)3月31日
対象地域 全国(一部地域で業種の限定あり) 導入促進基本計画の同意を受けた市区町村
計画書 経営力向上計画 先端設備等導入計画
労働生産性 5年計画の場合、5年後の伸び率は2%以上 3年計画の場合、3年後の伸び率は9%以上(年平均3%以上)
申請先 主務大臣(担当省庁) 市区町村
認定支援機関の事前確認 不要 必要
設備取得後の申請 可能(取得後60日以内) 不可
工業会証明書の追加提出 不可 可能
減免割合 2分の1 ゼロ~2分の1(市区町村による)
その他 国税における特別償却又は税額控除あり 金融支援(追加保証)、予算支援(補助金審査時の加点)あり

 なお、旧固定資産税の特例については本ブログ記事「中小企業等経営強化法の認定が必要な設備投資税制」を、新固定資産税の特例については「生産性向上特別措置法による新固定資産税の特例」を参照してください。

 

生産性向上特別措置法による新固定資産税の特例

 中小企業等経営強化法による固定資産税の特例は、中小企業者等が中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき、2019年(平成31年)3月31日までに取得した新品の機械装置等について、固定資産税(償却資産税)の課税標準が3年間にわたり2分の1に軽減される制度です。
 この制度は2019年(平成31年)3月31日をもって終了します(期限の延長は行われません)。

 これに代わり、2018年度(平成30年度)税制改正で、生産性向上特別措置法による固定資産税の特例(以下、「新固定資産税の特例」といいます)が創設されました。
 2019年(平成31年)4月1日以後に取得した資産については、新固定資産税の特例が適用されます。

 今回は、この新固定資産税の特例について、その概要を確認します。

1.制度概要

 新固定資産税の特例は、中小企業者等が市区町村から認定を受けた先端設備等導入計画に基づき、2021年(平成33年)3月31日までに取得した新品の機械装置等について、固定資産税(償却資産税)の課税標準が3年間にわたりゼロ以上2分の1以下の範囲内において軽減される制度です。

2.適用期間

 2018年(平成30年)6月6日~2021年(平成33年)3月31日に取得した資産

3.適用対象者

 適用対象者である中小企業者等は、次のとおりです(租税特別措置法第42条の4第8項第6号)。

(1) 資本金又は出資金の額が1億円以下の法人
(2) 資本又は出資を有しない法人のうち、常時使用する従業員数が1,000人以下の法人 
 ただし、以下の法人は対象になりません。
① 同一の大規模法人から2分の1以上の出資を受ける法人
② 2以上の大規模法人から3分の2以上の出資を受ける法人
※大規模法人とは、資本金又は出資金の額が1億円超の法人(資本又は出資を有しない場合は常時使用する従業員数が1,000人超の法人)をいいます。

 なお、先端設備等導入計画の認定を受けることができる中小企業者(中小企業等経営強化法第2条第1項)は、上記の新固定資産税の特例における中小企業者と規模要件が異なり、例えば、製造業などは、資本金の額もしくは出資の総額が3億円以下又は常時使用する従業員数が300人以下とされています。

4.対象設備

 (1)生産性向上要件及び(2)販売開始要件を満たす下表の設備(新品に限る)が対象となります。

(1) 生産性向上要件
 旧モデルと比較して、生産効率、エネルギー効率、精度その他の生産性の向上に資するものの指標が年平均1%以上向上するもの
(2) 販売開始要件
 一定期間内に販売されたモデルであること(最新モデルである必要はありませんが、中古資産は対象外になります)

設備の種類 用途又は細目 最低価額 販売開始時期
機械装置 全て 160万円以上 10年以内
工具 測定工具及び検査工具 30万円以上 5年以内
器具備品 全て 30万円以上 6年以内
建物附属設備※ 全て 60万円以上 14年以内

※償却資産として課税されるものに限ります。

5.適用手続

 新固定資産税の特例の適用を受けるためには、次の手続きが必要です。

(1) 工業会証明書を取得
※計画の申請・認定前に取得できなかった場合は、認定後から賦課期日(1月1日)までに誓約書とあわせて追加提出することができます。
(2) 経営革新等支援機関の事前確認書を取得
(3) 市区町村に先端設備等導入計画の認定を申請
(4) 市区町村から先端設備等導入計画の認定書を取得
(5) 設備取得 
※設備取得後の計画申請は一切認められませんので、注意が必要です。
(6) 市区町村に税務申告(償却資産申告書を提出)

6.措置内容

 固定資産税(償却資産税)の課税標準が3年間にわたり、ゼロ以上2分の1以下の範囲内において市町村が定めた割合に軽減されます。

7.留意事項

 工業会証明書の追加提出が賦課期日(1月1日)に間に合わなかった場合は、減税期間が短縮されます。
 例えば、2019年(平成31年)に取得した設備について2020年(平成32年)の1月1日までに工業会証明書を追加提出できず、2021年(平成33年)の1月1日までに提出した場合、2020年(平成32年)は減税を受けられず、減税期間は2年になります。