JAの建物更生共済の掛金の内訳は必ず共済掛金領収証で確かめましょう

掛金が同じでも内訳は変わる

 JAの建物更生共済の掛金の内訳(必要経費・損金算入部分と積立部分)は、掛金が同額でも毎年一定ではないので注意しなければなりません。
 例えば、法人が掛金50万円を支払ったとき、前年に次のような仕訳をしていたとします。

借方 金額 貸方 金額
保 険 料 275,000 現金預金 500,000
保険積立金 225,000    

 この法人が今年も50万円の掛金を支払った場合、掛金が前年と同額なので仕訳も前年と同じでいいかというと、そうではありません。 

内訳は共済掛金領収証に載っている

 共済掛金領収証には、支払った共済掛金のうち必要経費・損金への対象となる額が「必要経費・損金対象額」として表示されています。
 この額が前年は275,000円でしたが、今年は280,000円になっていたとしたら、今年の仕訳は次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
保 険 料 280,000 現金預金 500,000
保険積立金 220,000    

 法人の場合の仕訳は上記のようになりますが、個人事業主の場合は上記仕訳の「保険積立金」が「事業主貸」になります(保険料280,000円は事業割合100%を前提としています)。

非課税所得と勘違いしやすい給付金

 所得税が課税されないものとして、雇用保険法の「失業給付」や「再就職手当」などがよく知られています。
 また、求職者支援制度に基づき厚生労働省から支給される「職業訓練受講給付金」なども非課税所得です。
 これらの非課税所得のイメージ(役所から支給されるもの=非課税)から、本来は課税所得であるにもかかわらず、次のように非課税所得と混同されやすいものがあります(参考:国税庁ホームページ・文書回答事例)。

1.厚生労働省から支給される「訓練・生活支援給付金」は雑所得

 緊急人材育成支援事業による職業訓練等を受講する者に支給される訓練・生活支援給付金は、非課税ではなく雑所得となります。

2.厚生労働省による「訓練・生活支援資金融資による貸付金の返済免除益」は一時所得

 厚生労働省では、上記1の給付金の支給のみでは生活費が不足する者等を対象に、訓練・生活支援資金融資を実施し、生活に必要な資金を貸し付けています。
 この訓練・生活支援資金の融資を受けた訓練受講者が、訓練受講後に一定の要件を満たすこととなったときには、貸付元本額の50%に相当する額の返済が免除されます。
 この返還債務が免除されたことによる経済的利益は、非課税ではなく一時所得となります。

消費税の各種届出書の提出期限と効力

1.消費税の各種届出書の提出期限が日曜日等の場合

 消費税の届出書には、消費税課税事業者選択届出書や消費税簡易課税制度選択届出書など各種ありますが、これらの届出書の提出期限は、その適用を受けようとする課税期間の初日の前日までとされています。
 では、これらの届出書の提出期限が土曜日、日曜日の休日と重なった場合、納税申告書のように提出期限が月曜日にまで延長されるのでしょうか?

 答は「否」です。
 提出期限が課税期間の初日の前日までとされている届出書については、該当日が日曜日等の国民の休日に当たる場合であっても、その日までに提出がなければそれぞれの規定の適用を受けることができませんのでご注意下さい。 

 ただし、これらの届出書が郵便又は信書便(レターパック)により提出された場合には、その郵便物又は信書便物の通信日付印により表示された日に提出されたものとみなされます(発信主義)。
 従来、納税申告書及びその添付書類以外は到達主義によるものとされていましたが、2006年度(平成18年度)税制改正により国税通則法が改正され、2006年(平成18年)4月1日以後は発信主義によるものとされました(不適用届出書も同じです)。
 郵便又は信書便以外(ゆうパックや宅急便等)は、税務署に到着した日が提出の日となりますのでご注意下さい。

2.消費税課税事業者選択届出書の効力

 消費税の免税事業者は、課税事業者を選択することにより、課税仕入れ等に係る消費税額の還付を受けることができます。
 課税事業者を選択する場合は、課税事業者選択届出書を納税地の所轄税務署長に提出します。
 この届出書の効力は、通常はその提出日の属する課税期間の翌課税期間の初日から発生します(つまり、翌課税期間から課税事業者になります)。  

 一方、事業を開始した課税期間等に届出書を提出した場合は、その提出日の属する課税期間又はその翌課税期間の初日から効力が発生します(つまり、提出日の属する課税期間又はその翌課税期間から課税事業者になることを選択できます)。
 この場合、課税事業者選択届出書の「適用開始課税期間」の欄で、その適用を受けようとする課税期間を選択します。

3.間違って提出した消費税の選択届出書は取下げ可能?

 消費税の課税事業者選択届出書や簡易課税制度選択届出書の効力は、通常はこれらの届出書を提出した課税期間の翌課税期間の初日から発生します。
 もし、間違ってこれらの届出書を提出してしまった場合でも、提出した課税期間の末日まで(選択の効力が発生するまで)は、その取下げが可能であると解されています。
 ただし、これらの届出書を設立の日の属する課税期間等に提出し、その提出課税期間から適用を受ける場合は、取下げは難しいと思われます。

中小企業等経営強化法の認定が必要な設備投資税制

 2017(平成29)年度税制改正によって、中小企業投資促進税制の上乗せ措置が改組され、新たに「中小企業経営強化税制」が創設されました。
 この中小企業経営強化税制をはじめ、2019(平成31)年3月31日までに取得した資産に適用される設備投資税制には以下のものがあります。

 ①中小企業投資促進税制
 ②中小企業経営強化税制
 ③固定資産税の特例
 ④商業・サービス業・農林水産業活性化税制

 上記のうち、中小企業等経営強化法の認定が必要な税制は②と③、認定がなくても活用できる税制は①と④です。
 前回は、認定がなくても活用できる①中小企業投資促進税制と④商業・サービス業・農林水産業活性化税制について述べました。今回は、認定が必要な②中小企業経営強化税制と③固定資産税の特例について述べていきます。

※ 2021(令和3)年度税制改正で、中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制の見直しが行われています。改正内容については、本ブログ記事「令和3年度改正後の中小企業投資促進税制」及び「令和3年度改正後の中小企業経営強化税制」をご参照ください。なお、(中小企業経営強化法による)固定資産税の特例と商業・サービス業・農林水産業活性化税制は、適用期限の到来をもって廃止されています。

1.中小企業経営強化税制

 まず、中小企業経営強化税制(中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除)について、その概略を記していきます。

(1) 制度概要

 青色申告書を提出する中小企業者等(従業員1,000人以下の個人事業主を含む)が、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき一定の新品設備を取得し指定事業の用に供した場合、即時償却又は10%の税額控除(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)を選択適用するこ とができます。

(2) 適用期間

 2017(平成29)年4月1日~2019(平成31)年3月31日に取得した資産

※2019(平成31)年度税制改正によって、適用期限が2021(平成33)年3月31日まで2年延長されることになりました。

(3) 指定事業

 中小企業投資促進税制の対象事業及び商業・サービス業・農林水産業活性化税制の対象事業

(4) 対象設備

 ① 生産性向上設備(A類型)・・・生産性が旧モデル比年平均1%以上向上する設備
 イ.機械及び装置・・・160万円以上(10年以内に販売開始)
  ロ.測定工具及び検査工具・・・30万円以上(5年以内に販売開始)
 ハ.器具備品・・・30万円以上(6年以内に販売開始)
 ニ.建物附属設備・・・60万円以上(14年以内に販売開始)
 ホ.ソフトウェア(情報を収集・分析・指示する機能)・・・70万円以上(5年以内に販売開始)

 ② 収益力強化設備(B類型)・・・投資利益率が年平均5%以上の投資計画に係る設備
 イ.機械及び装置・・・160万円以上
 ロ.工具・・・30万円以上
 ハ.器具備品・・・30万円以上
 ニ.建物附属設備・・・60万円以上
 ホ.ソフトウェア・・・70万円以上

※2019(平成31)年度税制改正によって、2分の1超の売電を見込む太陽光発電設備を対象設備から除外するとともに、売電を予定している場合には計画の申請時に一定の書類添付が義務付けられることとなりました。

(5) 確認者

 ① A類型・・・工業会等の証明
 ② B類型・・・経済産業局の確認
 なお、A類型・B類型ともにその業種を所轄する主務大臣に対し、中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定が必要です。

(6) 措置内容

 即時償却又は税額控除(取得価額×10%)
 税額控除額は、当期の法人税額の20%が上限です。
(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%の税額控除のみ)

(7) 留意事項

 中小企業経営強化税制は、適用できない業種(映画業を除く娯楽業、電気業、水道業、鉄道業、航空運輸業、銀行業等)があります。
 太陽光発電などのいわゆる売電は電気業に該当しますので、そのための設備は対象になりません。
 太陽光発電システム自体は対象設備ですので、自社工場用など売電ではないもの等については対象となります。
(太陽光発電設備の優遇税制については、本ブログ記事「中小企業等経営強化法に基づく太陽光発電設備の優遇税制について」を参照)

2.固定資産税の特例

 上記の中小企業経営強化税制と同じく、2017(平成29)年度税制改正により中小企業等経営強化法に係る固定資産税の特例も拡充され、従来は対象設備が機械装置に限定されていたのに対し、高効率の冷蔵陳列棚、省エネ空調等の器具備品、建物附属設備が対象設備に追加されました。
 以下では、固定資産税の特例(経営力向上計画に係る固定資産税の特例措置)について、その概略を記していきます。

(1) 制度概要

 青色申告書を提出する中小企業者等(従業員1,000人以下の個人事業主を含む)が、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき一定の新品設備を取得等した場合、固定資産税(償却資産税)が3年間にわたって2分の1に軽減されます。
 要件や手続きは中小企業経営強化税制のA類型とほぼ同じため、一緒に手続きをすることが可能です。

(2) 適用期間

 2016(平成28)年7月1日~2019(平成31)年3月31日に取得した資産

(3) 指定事業

 中小企業投資促進税制の対象事業及び商業・サービス業・農林水産業活性化税制の対象事業

(4) 対象設備

 生産性向上設備(A類型)・・・生産性が旧モデル比年平均1%以上向上する設備
 ① 機械及び装置・・・160万円以上(10年以内に販売開始)
 ② 測定工具及び検査工具・・・30万円以上(5年以内に販売開始)
 ③ 器具備品・・・30万円以上(6年以内に販売開始)
 ④ 建物附属設備・・・60万円以上(14年以内に販売開始)

 中小企業経営強化税制の対象設備であるソフトウェアは、固定資産税(償却資産税)の課税客体ではありません。

 2017(平成29)年度税制改正により対象に追加された設備(2017(平成29)年4月1日以降に取得した測定工具及び検査工具、器具備品、建物附属設備)については、対象地域・対象業種が一部限定されます。
 業種が限定される地域は、最低賃金が全国平均以上の7都府県(埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、京都、大 阪)です。上記以外の40道県においては全業種が対象です。
 機械装置については、引き続き全国・全業種で対象になります。

(5) 確認者

 工業会等の証明
 なお、その業種を所轄する主務大臣に対し、中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定が必要です。

(6) 措置内容

 固定資産税の課税標準が、3年間 2分の1に軽減。

(7) 留意事項

 2017(平成29)年度税制改正により対象に追加された設備(2017(平成29)年4月1日以降に取得した測定工具及び検査工具、器具備品、建物附属設備)については、対象地域・対象業種が一部限定されます。
 いわゆる売電用の太陽光発電システムも対象設備になります。

 なお、経営力向上計画に係る固定資産税の特例措置は、2019(平成31)年3月31日をもって終了します(期限の延長は行われません)。
 2019(平成31)年4月1日以降に取得等をした設備は、この特例措置の対象外となりますのでご注意ください。

※固定資産税の特例の廃止に伴い、2018(平成30)年度税制改正で創設された新固定資産税の特例については、本ブログ記事「生産性向上特別措置法による新固定資産税の特例」を参照してください。

中小企業等経営強化法の認定が不要の設備投資税制

 2017年度(平成29年度)税制改正によって、中小企業投資促進税制の上乗せ措置が改組され、新たに「中小企業経営強化税制」が創設されました。
 この中小企業経営強化税制をはじめ、2019年(平成31年)3月31日までに取得した資産に適用される設備投資税制には以下のものがあります。
 ①中小企業投資促進税制
 ②中小企業経営強化税制
 ③固定資産税の特例
 ④商業・サービス業・農林水産業活性化税制
 上記のうち、中小企業等経営強化法の認定が必要な税制は②と③、認定がなくても活用できる税制は①と④です。
 今回から2回に分けて、①~④の税制の概要を記していきます。今回は、認定がなくても活用できる①中小企業投資促進税制と④商業・サービス業・農林水産業活性化税制について述べていきます。

※ 2021(令和3)年度税制改正で、中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制の見直しが行われています。改正内容については、本ブログ記事「令和3年度改正後の中小企業投資促進税制」及び「令和3年度改正後の中小企業経営強化税制」をご参照ください。なお、固定資産税の特例と商業・サービス業・農林水産業活性化税制は、適用期限の到来をもって廃止されています。

1.中小企業投資促進税制

 まず、中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)について、その概略を記していきます。

※ 2021(令和3)年度税制改正で、中小企業投資促進税制に商業・サービス業・農林水産業活性化税制を盛り込む形で制度を一本化した上で、中小企業投資促進税制の適用期限が2023(令和5)年3月31日まで延長されました。改正内容等については、本ブログ記事「令和3年度改正後の中小企業投資促進税制」をご参照ください。

(1) 制度概要

 青色申告書を提出する中小企業者等(従業員数1,000人以下の個人事業主を含む)が、新品の機械装置等を取得等し指定事業の用に供した場合に、その指定事業の用に供した日を含む事業年度において、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除が選択適用できます。
 ただし、資本金3,000万円超1億円以下の法人は、税額控除の適用はありません。
 なお、従来の上乗せ措置(生産性向上設備等を取得した場合の即時償却又は10%(7%)税額控除)が改組されて、中小企業経営強化税制が創設されました。

(2) 適用期間

 1998年(平成10年)6月1日~2019年(平成31年)3月31日に取得した資産

※2019年度(平成31年度)税制改正によって、適用期限が2021年(平成33年)3月31日まで2年延長されることになりました。

(3) 指定事業

 製造業、建設業、農業、卸売業、小売業、サービス業等の一定の事業
不動産業、物品賃貸業、電気業、水道業、娯楽業(映画業を除く)、飲食店業のうち料亭・バー・キャバレー・ナイトクラブその他これらに類する事業、等は対象になりません。
 また、性風俗関連特殊営業に該当する事業も対象となりません。

(4) 対象設備

 ① 機械及び装置・・・1台160万円以上
 ② 測定工具及び検査工具・・・1台120万円以上、1台30万円以上かつ複数合計120万円以上
 ③ 一定のソフトウェア・・・一のソフトウェアが70万円以上、複数合計70万円以上
 ④ 貨物自動車(車両総重量3.5トン以上)
 ⑤ 内航船舶(取得価格の75%が対象)

(5) 措置内容

 特別償却(取得価額×30%)又は税額控除(取得価額×7%)
 税額控除額は、当期の法人税額の20%が上限です。
 (資本金3,000万円超1億円以下の法人は、税額控除の適用はありません)

(6) 留意事項

 中小企業等経営強化法の認定がなくても活用できます。

2.商業・サービス業・農林水産業活性化税制

 次に、商業・サービス業・農林水産業活性化税制(特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は税額控除)について、その概要を記していきます。

※ 2021(令和3)年度税制改正で、商業・サービス業・農林水産業活性化税制は適用期限の到来をもって廃止され、中小企業投資促進税制に一本化されました。改正内容等については、本ブログ記事「令和3年度改正後の中小企業投資促進税制」をご参照ください。

(1) 制度概要

 認定経営革新等支援機関等(認定を受けた税理士、公認会計士、商工会議所等)から経営改善に関する指導及び助言を受けた青色申告書を提出する中小企業者等(従業員数1,000人以下の個人事業主を含む)が、新品の経営改善に資する器具備品や建物附属設備を導入した場合に、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除が選択適用できます。
 なお、資本金3,000万円超1億円以下の法人は、税額控除の適用はありません。

(2) 適用期間

 2013年(平成25年)4月1日~2019年(平成31年)3月31日に取得した資産

※2019年度(平成31年度)税制改正によって、適用期限が2021年(平成33年)3月31日まで2年延長されることになりました。

(3) 指定事業

 卸売業、小売業、農林水産業、サービス業等
製造業、建設業、医療業、娯楽業(映画業を除く)、等は対象になりません。
 また、風俗営業法上の風俗営業に該当する料亭・バー・キャバレー・ナイトクラブその他これらに類する事業については、生活衛生同業組合の組合員が事業を行う場合に限り対象となります。
 なお、性風俗関連特殊営業に該当する事業については対象となりません。

(4) 対象設備

 ① 器具備品・・・1台の取得価額が30万円以上
 ② 建物附属設備・・・一の取得価額が60万円以上

(5) 確認者

 認定経営革新等支援機関等(認定を受けた税理士、公認会計士、商工会議所等)

※2019年度(平成31年度)税制改正で、経営改善設備の投資計画の実施を含む経営改善により、売上高又は営業利益の伸び率が年2%以上となる見込みであることについて認定経営革新等支援機関等の確認を受けることが適用要件に加わりました。
 この改正は、2019年(平成31年)4月1日以後に取得等をする経営改善設備に適用されます。
 なお、同日前に交付を受けた経営改善指導助言書類に係る経営改善設備のうち同年9月30日までに取得等をしたものについては、上記の確認を受けることを不要とする経過措置が講じられます。

(6) 措置内容

 特別償却(取得価額×30%)又は税額控除(取得価額×7%)
 税額控除額は、当期の法人税額の20%が上限です。
 (資本金3,000万円超1億円以下の法人は、税額控除の適用はありません)

(7) 留意事項

 中小企業等経営強化法の認定がなくても活用できます。

個人住民税の特別徴収と納期の特例

1.個人住民税の特別徴収の徹底

 1月の会計事務所の主要業務として、税務署に提出する法定調書の作成以外に、市町村に提出する給与支払報告書の作成があります。この給与支払報告書に基づいて、各市町村が個人住民税の計算をします。
 2019年度(平成31年度)の個人住民税は、2019年(平成31年)1月1日現在において、市区町村内に住所を有する人に均等割と所得割が課税されます。 
 この個人住民税については、特別徴収の推進が全国的に図られています。例えば、大阪府と大阪府内すべての市町村では、2018年度(平成30年度)から個人住民税の特別徴収が徹底されています。
 特に大阪市については、2017年度(平成29年度)から次の2つの要件を満たす給与支払者(事業主)を特別徴収義務者として指定しています。
(1)2016年度(平成28年度)個人住民税について、給与支払報告書を4名分以上提出している
(2)2016年度(平成28年度)個人住民税について、特別徴収実績を有しない
 この2要件を満たす給与支払者には、2017年(平成29年)5月下旬に特別徴収税額決定通知書が送付されています。

2.個人住民税の納期の特例

 特別徴収義務者となった給与支払者は、従業員の給与から個人住民税を毎月天引きして、翌月10日までに納付しなければなりません。
 この毎月納付の手間を減らす方法として、国税(源泉所得税)と同じように、従業員が常時10人未満である給与支払者には納期を年2回とする「納期の特例」が個人住民税にも認められています。
 源泉所得税の納期限は7月10日(1月~6月徴収分)と1月20日(7月~12月徴収分)ですが、個人住民税の納期限は6月10日(12月~5月徴収分)と12月10日(6月~11月徴収分)です。
 源泉所得税と個人住民税では納期限が異なりますので、注意が必要です。

3.普通徴収にできる場合

 特別徴収の対象となる従業員は、原則として、正規従業員だけでなく、アルバイト・パートなどの非正規雇用者も含まれます。
 ただし、次の要件を満たす従業員は特別徴収の対象外(普通徴収)とすることができます。
 ① 退職された方又は給与支払報告書を提出した年の5月末日までに退職予定の方
 ② 給与支給額が少なく、個人住民税を特別徴収しきれない方
 ③ 給与の支払が不定期(毎月支給されていない)な方
 ④ 他から支給される給与から特別徴収されている方(乙欄適用者等)

事前確定届出給与の届出期限と支給額の注意点

 従来は臨時的ないわゆる役員賞与については損金算入が認められていませんでしたが、事前確定届出給与の制度を利用すれば、臨時的な給与(賞与)であっても一定の要件を満たせば損金算入が可能です。
 事前確定届出給与は、その役員の職務につき、所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与で、一定の日までに納税地の所轄税務署長に対して、あらかじめ確定している支給時期、支給金額のほか必要事項を記載した届出をしている場合の当該給与をいいます。 

1.事前確定届出給与に関する届出書の提出期限

 この制度を利用するには、「事前確定届出給与に関する届出書」を納税地の所轄税務署長に提出する必要があるのですが、その提出期限に注意しなければなりません。
 以下では、3月決算法人が2019年(平成31年)5月27日に定時株主総会を開催した場合について、届出書の記載文言の内容を確認しながら、提出期限がいつになるかを述べていきます。

①「事前確定届出給与に係る株主総会等の決議をした日及びその決議をした機関等」は、「株主総会」や「取締役会」など事前確定届出給与に関する決議をした機関名と決議日を記入します。
 今回の例では、「決議をした日」が2019年(平成31年)5月27日、「決議をした機関等」が株主総会となります。

②「事前確定届出給与に係る職務の執行を開始する日」は、一般的に役員給与は定時株主総会から次の定時株主総会までの間の職務執行の対価であると考えられるため、定時株主総会開催日を記入します。
 今回の例では、2019年(平成31年)5月27日となります。

③「届出期限」欄の「①又は②に記載した日のうちいずれか早い日から1月を経過する日」は、①又は②の翌日を起算日として暦に従って計算します。
 今回の例では、①②ともに5月27日ですので、その翌日の5月28日が起算日となり6月27日が「1月を経過する日」になります。

④「届出期限」欄の「会計期間4月経過日等」は、会計期間開始の日から4月を経過する日を記入します。
 今回の例では、会計期間開始日が2019年(平成31年)4月1日ですので2019年(平成31年)7月31日となります。

⑤ 以上より、届出期限は③と④のうちいずれか早い日となりますので、今回の例では、2019年(平成31年)6月27日が届出期限となります。

2.支給額に超過額又は未払額が発生した場合

 事前確定届出給与は、届出通りの日に届出通りの金額を支給しなければなりません。
 この届出支給金額よりも多く支給した場合には、超過部分だけではなく、届出支給金額部分も含めた支給金額全額が損金不算入となります。
  また、届出支給金額よりも少なく支給した場合にも、当該支給金額全額が損金不算入となります。 未払部分をその後一括して又は数回に分割して支給し、当該支給金額との合計が届出支給金額と一致したとしても、その全額が損金不算入となります。
 事前確定届出給与は、支給時期及び支給金額が事前に確定していることが要件となっているため、超過額や未払額が発生するということは事前に確定していなかったということであり、したがって事前確定届出給与には該当せず、損金不算入となります。


短期前払費用の損金算入の注意点

1.年払い契約と決算月の支払いが必要

 顧問先であるA社(3月決算、5月申告)から、次のような相談がありました。
「契約している駐車場の家賃を2月に1年分(4月分~翌年3月分)前払いして、当期の費用として計上することに問題はないか?」
 A社は、法人税基本通達2-2-14(短期の前払費用)を適用し、その支払額の全額をその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入することを考えているようでした。
 短期前払費用は、次の要件を満たす場合は、その支払時に損金算入することが認められています。

(1) 一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるものであること(等質・等量のサービスであることが必要です)

(2) その支払った日から1年以内に提供を受ける役務にかかるものであること

(3) 継続的に支払事業年度において経費処理していること

(4) 収益の計上と対応させる必要があるものでないこと 

 A社の事例を上記要件にあてはめて考えてみると、上記のうち(1)~(3)の要件に該当しない可能性がありました。

(1) A社は契約に基づいて家賃を月払いしているため、貸主の承諾なしに年払いに変えたとしても、要件を満たしません。契約を年払いに変更する必要があります。

(2) 2月に1年分(4月〜翌年3月分)を前払いしても、支払った日から1年を越える期間を対象とする前払費用であるため、要件を満たしません。決算月の3月に1年分を前払いする必要があります。
 なお、4月~翌年3月分を例えば3月20日に前払いする場合、翌年3月20日以降の分は終期が1年を超えるように思われますが、国税庁の質疑応答事例において適用して差し支えない事例として例示されています。

(3) 継続的な経費処理(支払)を前提条件とすることから、利益が出たから今期だけまとめて1年分支払うというような利益操作のための支出は認められません。来期以降も継続して1年分の家賃を前払いして経費処理する必要があります。

 なお、(4)の要件に抵触するのは、例えば賃借しているマンション等を転貸(又貸し)することによって賃貸料収入を得ている場合です。このようなケースで支払う家賃は、収益(賃貸料収入)に直接対応する費用であるため、短期前払費用の特例を受けることはできません。

2.前払対象期間が1年超の場合は不適用

 短期前払費用について、もう1点補足すべき点があります。それは、前払対象期間が1年超となる場合は、1年以内部分と1年超部分に分けたとしても、1年以内部分だけを損金算入することは認められないということです。

 例えば、当期首に火災保険料を360,000円(3年分)支払った場合、当期に対応する保険料は360,000円×12ヶ月/36ヶ月=120,000円となり、これを損金算入できます。
 残りの2年分(360,000円-120,000円=240,000円)については、翌期以降に対応する(前払対象期間が1年超となる)保険料となりますので損金算入することはできず、全額を資産計上しなければなりません。 

 ただし、貸借対照表へは、1年以内部分と1年超部分に分けて表示しなければなりません。
 1年基準(ワン・イヤー・ルール)によって、貸借対照表日(決算日)の翌日から起算して1年以内に費用となる120,000円は「前払費用(流動資産)」、1年を超える期間を経て費用となる120,000円は「長期前払費用(投資その他の資産)」として表示します。

給与所得者と公的年金等受給者の確定申告不要制度の注意点

 2019年(平成31年)の確定申告期間は、2019年2月18日(月)~3月15日(金)です。この期間内に2018年分(平成30年分)の確定申告を行いますが、給与所得者と年金受給者には、他に所得があった場合でも確定申告を不要とする制度があります。
 今回は、この申告不要制度の主な注意点を述べていきます。

1.給与所得者の確定申告不要制度

 給与の収入金額が2,000万円以下の給与所得者は、通常はその給与について源泉徴収や年末調整が行われるため、給与所得及び退職所得以外の所得金額の合計額が20万円以下の場合は、確定申告は不要です。
 しかし、給与所得者がこの申告不要規定を適用するにあたっては、以下の注意が必要です。

(1) この場合の確定申告不要の給与とは、居住者に対し国内において支払われる給与(源泉徴収された又はされるべき場合)をいいますので(所得税法121条1項)、給与所得及び退職所得以外の所得が20万円以下であっても確定申告が必要なケースがあります(所得税基本通達121-5)。
 例えば、国外から直接支払を受けた給与所得と10万円の雑所得がある場合は、給与所得及び退職所得以外の所得が20万円以下であっても確定申告をしなければなりません。

(2) この規定は確定申告を行う場合にも、20万円以下の所得を申告しなくてもよいという規定ではありません。確定申告を行う場合は、20万円以下の所得も申告しなければなりません。
 例えば、医療費控除を受けるため等の還付申告を行う場合は、その20万円以下の所得も併せて確定申告をする必要があります。

(3) 20万円以下所得の申告不要規定を適用するにあたって注意しなければならないのは、20万円以下の所得が一時所得の場合です。
 一時所得の金額は、次の算式で計算します。

 一時所得の金額=総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額

 例えば、年末調整をした給与所得者が、給与所得者本人が保険料を負担する生命保険の満期返戻金を受け取り、特別控除後の一時所得の金額が40万円となった場合に、20万円を超えているので確定申告が必要と考えるのは誤りです。
 一時所得の場合は、課税対象額(所得金額の2分の1に相当する金額)が20万円以下であれば、申告不要とすることができます。したがって、一時所得の金額が40万円でも、その2分の1の金額が20万円以下ですので、確定申告は不要です。

(4) 同族会社の役員及びその親族等が、その同族会社から給与の他に貸付金の利子や不動産の賃貸料、機械・器具の使用料などを受け取っている場合は、これらの所得金額が20万円以下であっても確定申告が必要になります(所得税法施行令262の2)

2.公的年金等受給者の確定申告不要制度

 年金受給者の確定申告の負担を減らすため、公的年金等についても確定申告不要制度が設けられています。
 この制度の対象になるのは、次の2要件を満たす年金受給者です。

(1) 公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下であり、かつ、その公的年金等の全部が源泉徴収の対象となる
(2) 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である

 ここで注意しなければならないのは、(1)の「その公的年金等の全部が源泉徴収の対象となる」という点です。
 例えば、外国の制度に基づき国外において支払われる年金等は、源泉徴収の対象となりません。そのような源泉徴収の対象とならない年金を含む公的年金等の収入金額が400万円以下の場合は、上記(2)の要件を満たしても、確定申告をする必要があります。 

 なお、税務署に確定申告書を提出して所得税を納めた後に、確定申告不要制度の対象であることに気づいた場合は、提出した確定申告書の撤回の手続をすることができ、納めた所得税の還付を受けることができます(所得税基本通達121-2)。

3.住民税の申告は必要

 給与所得者と公的年金等受給者の確定申告不要制度は、所得税(国税)における規定であり、住民税(地方税)にはこの規定はありません。
 したがって、所得税では申告不要とされた20万円以下の所得は、住民税では申告が必要です。

妻が契約者でも夫の生命保険料控除の対象にできるか?

 生命保険料控除は、保険料を支払った人自身が受けることができます。通常は生命保険料は契約者が支払うものですが、契約者でない人が保険料を支払う場合もあります。
 例えば、妻が契約者である生命保険契約について夫が保険料を支払っている場合などです。
 このような場合、夫が支払った保険料は夫の生命保険料控除の対象となるのでしょうか?それとも契約者である妻の生命保険料控除の対象となるのでしょうか?

契約者ではなく保険金受取人が重要

 保険の契約には、その契約に関する一切の権利と義務を持つ「契約者」、その保険の対象とされる「被保険者」、契約者から保険金の受取人に指定された「保険金受取人」の3つの名義があります。これらのうち、生命保険料控除の対象となるかどうかを考えるうえで重要なのは「保険金受取人」です。 

 生命保険料控除の対象となるのは、一般の生命保険契約等については保険金受取人のすべてがその保険料の払込みをする人自身か又はその配偶者その他の親族(6親等内の血族と3親等内の姻族)となっていることが必要であり、個人年金保険契約等については保険料の払込みをする人自身か又はその配偶者となっていることが必要です(ちなみに、保険金受取人は、保険料の払込みをする人と生計を一にしていなくても差し支えありません)。
 つまり、生命保険料控除の対象になるかどうかは、保険金受取人が誰になっているかが重要であり、契約者が誰であるかは要件とされていません。
 したがって、妻が契約者である生命保険契約であっても、夫が支払った保険料はその事実が明らかである限り、夫の生命保険料控除の対象となります。

 なお、妻が契約者である保険の保険料を実際に夫が支払っているかどうかについては、夫名義の口座から保険料が引き落とされていれば問題ありません。
 しかし、妻名義の口座から保険料が引き落とされている場合は、たとえ夫が保険料を負担していたとしても外見上疑義が生じかねませんので、支払い口座を夫名義のものに変更してはいかがでしょうか?

個人年金保険契約等は贈与税に注意

 一方、妻が契約者の個人年金保険契約等を夫の生命保険料控除の対象とした場合は、贈与税に注意が必要です。 夫の生命保険料控除の対象とすることによって、保険料負担者(夫)と受取人(妻)が異なることが明確になってしまうからです。
 その結果、保険料負担者(夫)から年金の受取人(妻)に対して、年金を受け取る権利が贈与されたものとみなされ、給付事由発生時点(受給開始時)で妻に贈与税が課税されます。